説明

四級化アミノ基を有する架橋ポリマー由来のポリマー微粒子と核酸の複合体

【課題】核酸の効果的な動物細胞への導入手段の提供。
【解決手段】エチレン性不飽和重合性基から形成される主鎖を有し、側鎖に四級化された第三級アミン部分を有する架橋ポリマー由来のポリマー微粒子と、核酸分子の複合体であり、精製水中に分散させて動的光散乱粒子解析(DLS)を行った場合に平均粒径が30nm〜10μmの範囲にあり、該核酸がプラスミドDNA、siRNA、アンチ−microRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムからなる群より選ばれる複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和重合性基から形成される主鎖を有し、側鎖に四級化された第三級アミン部分を有する架橋ポリマー由来のポリマー微粒子と核酸の複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内での遺伝子発現やその機能のコントロールにおいて、アンチセンスDNA、small interfering RNA(siRNA)、micro RNA(miRNA)といった塩基対の短い一本鎖、もしくは二本鎖のDNA、RNAが非常に重要な役割を示すことが明らかとなり、そのメカニズムの解明のみならず疾病治療への応用を目指した研究開発が活発に行われている。中でも18〜27塩基対程度の比較的短い二本鎖RNA(siRNA)がセントラルドグマ中間体であるmRNAを配列特異的に切断し、当該遺伝子の発現を選択的に抑制するRNA干渉(RNAi)は、癌、HIV、C型肝炎をはじめとした難治性疾患に対する遺伝子レベルでの治療方法として注目を集め、その実用化が期待されている。一方で、このsiRNAはすでに分子生物学や細胞生物学の創薬開発の分野では遺伝子やタンパク質の機能解明のためのツールとして利用されている。
【0003】
しかしながら、DNAやRNAといった核酸分子はリン酸基がマイナス電荷を有するため、同様にアニオン性の細胞膜との相互作用が低く、単独では細胞内導入が困難である。この問題を解決するためにカチオン性の脂質からなるリポソームがオリゴ核酸導入用試薬としてすでに市販されており、このカチオン性リポソームを用いた細胞内導入が最も一般的方法である。同様に、より安価に大量合成が可能なポリエチレンイミン、ポリ−L−リシン、ポリアミドアミンデンドリマーに代表されるカチオン性合成高分子を用いた方法も提唱されている。しかしながら、これらのカチオン性リポソームやカチオン性ポリマーはポリカチオンに由来する細胞毒性を示すことが知られており本来の目的の妨げになるばかりでなく、血清成分や共存するタンパク質の影響を受けやすいため、細胞実験の際に血清不含の特殊な培地などの消耗品を必要とする場合があり、その利用範囲がin vitroの実験に限定されるといった問題がある。
【0004】
これらの問題に対し、血清成分との非特異的な相互作用の抑制や、核酸との複合体の水溶性向上、また細胞毒性の低減を目的として、ポリエチレングリコール(PEG)に代表される水溶性高分子で修飾したカチオン荷電性ポリマーが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、PEGなどの水溶性高分子は、一般的に、同時に核酸分子の細胞内への導入を妨げることが知られており(非特許文献1)、オリゴ核酸の細胞内導入には不向きである場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−188541号公報
【特許文献2】特開2001−146556号公報
【特許文献3】WO2006/085664
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S.Mishra et al.Eur.J.Cell Biol.2004,83,97−111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、核酸分子、特に、短鎖またはオリゴ核酸と称される、例えば、ヌクレオチド約18〜30を有する、場合によれば、それよりさらに短鎖の核酸分子の、低毒性かつ、効果的な細胞内への導入手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明者等は、各種ポリマーもしくは各種ポリマー微粒子、またはそれらの修飾体の製造、並びにそれらの核酸担体としての機能について検討してきた。その結果、意外にも、本発明者等の一部により半導体超微粒を固定または内包せしめるために開発された、水性媒体中でコア−シェル型のポリマー微粒子を形成する架橋ポリマー(特許第4086188号公報参照)は、そのコア部に存在すると理解されている第三級アミン部分が制御された態様で容易に四級化されること、こうして四級化された架橋ポリマーが短鎖またはオリゴ核酸分子であってもそれらを細胞内に導入するための担体として効果的に使用できることが今ここに見出された。かような四級化された架橋ポリマーは、また、胆汁酸の吸着能を有することも知られているが(日本バイオマテリアル学会シンポジウム2008予稿集 328ページ)、未四級化架橋ポリマーに比べて動物細胞に対する毒性が有意に低く、かつ、核酸分子と一緒になって動物細胞に効果的に取り込まれ、しかも遊離の該酸分子が本来有している機能を該細胞内で奏することが確認された。
【0009】
したがって、本発明によれば、側鎖に四級化された第三級アミン部分を有する架橋ポリマー、該ポリマーに由来するポリマー微粒子と核酸の複合体が提供される。具体的には、該微粒子は、下記マクロモノマー(a)、コモノマー(b)および架橋剤を含んでなるモノマーを共重合せしめて得られる架橋ポリマーを、次いで四級化することにより製造できる。
【0010】
マクロモノマー(a)は、式I:
【0011】
【化1】

【0012】
式中、Xは水素原子、−COOZ(ここで、Zは水素原子または有機基を表す)、−CHR(ここで、RおよびRは、独立して、C1−6アルキルオキシ基、フェニルオキシ基もしくはフェニル−C1−3アルキルオキシ基を表すか、またはRおよびRは一緒になって−OCHR′−CHO−であって、R′が水素原子もしくはC1−6アルキル基である基を表す)または−CH=Oを表し、
は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、
はメチレン基またはカルボニル基を表し、
はカルボニル基、C1−3アルキレン基またはC1−3アルキルフェニレン基を表すか、あるいは
【0013】
【化2】

【0014】
は、一体となって水素原子またはC1−6アルキル基を表し、
nは2〜10,000の整数であり、そして
pは1〜5の整数である、
で表される。コモノマー(b)は、式II:
【0015】
【化3】

【0016】
式中、RおよびRは、独立してC1−6アルキル基を表し、Rは水素原子またはC1−6アルキル基を表し、Yは−O−または−NH−を表し、そしてqは2〜6の整数である、
で表される。架橋剤(c)は、1分子中に2個または3個以上の重合性不飽和基を有する化合物である。
【0017】
四級化は、C1−6アルキル基もしくはハロゲン原子により1以上置換されていてもよいフェニル置換もしくは未置換C1−6アルキル基またはアリル基により、上記式(II)の第三級アミン部分の少なくとも10%が四級化されておればよい。こうして得られるエチレン性不飽和重合性基から形成される主鎖を有し、側鎖に四級化された第三級アミン部分を有する架橋ポリマーは、例えば、精製水中に分散させて動的光散乱粒子解析(DLS)を行った場合に平均粒径が30nm〜10μmの範囲にある微粒子を形成することに特徴がある。
【0018】
このような四級化された微粒子または架橋ポリマーは、上記第三級アミン部分が四級化されていない場合の微粒子または架橋ポリマーに比べて、核酸分子を導入する標的とする動物細胞に対する毒性が著しく低く、一方では、複合体を形成する核酸分子を有意に効果的に該動物細胞内に導入することができる。
【0019】
<発明の詳細な記述>
以下、本発明または本明細書で用いる用語等について詳述するが、技術用語は、特記しない限り、当該技術分野で普通に使用されているか、または当業者に常用されている技術用語辞典(例えば、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology Second Edition Pal Singleton et al.,John Wiley & Sons 1987;生化学辞典 第4版 監修 今堀和友 外、東京化学同人 2007等)に説明されている意味または内容有するものとして記載されている。
【0020】
上記の式Iおよび式IIにおける、C1−6アルキルを含め、本明細書で使用するところのアルキル基およびアルキルオキシ基におけるアルキル部分は、直鎖または分枝のアルキルを意味する。したがって、C1−6のアルキル基およびアルコキシのアルキル部分としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル等が挙げられる。これらのうち、式IにおけるRおよびRにいうアルキルオキシのアルキル部分、ならびに式IIにおけるR、RおよびRのアルキル基は、特にC1−3アルキルが好ましい。
【0021】
したがって、RおよびRにいうアルコキシ基として特に好ましいものとしてはメト
キシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられる。その他、RおよびRはフェニルオキシ基またはフェニルC1−3アルキルオキシ基、特にベンジルオキシ基もしくはフェネチルオキシ基、を好ましいものとして挙げることができる。これらの基は、同一または異なっていてもよいが、好ましくは同一の基である。また、RおよびRは、一緒になって、C1−6アルキルで置換されていてもよい1,2−エチレンジオキシ基(−OCH(R′)−CHO−:ここでR′はC1−6アルキル基である)であってもよいが、好ましくは、1,2−エチレンジオキシ基、1−メチル−1,2−エチレンジオキシ基、1−エチル−1,2−エチレンジオキシ基である。
【0022】
このような基からなる−CHR基(アセタール化もしくはケタール化ホルミル基に相当する。)は、例えば、酸で処理することにより、RおよびRが一緒になって、オキシ(=O)すなわち、Xが−CH=Oを表すホルミル基(またはアルデヒド基)に容易に転化できる。従って、Xが水素原子または−CH=O基以外を表す式(I)のマクロモノマーを用いて架橋ポリマーを製造した後、ポリマーを酸(例えば酢酸)で処理することによっても、PEG鎖の分子の片末端にホルミル基(またはアルデヒド基)またはカルボキシル基を有する架橋ポリマーを提供できる。
【0023】
およびRは、独立して、好ましくはメチル基または水素原子であり、また、RおよびRは、独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることが好ましい。
【0024】
また、Lはカルボニル基(=C=O)、C1−3アルキレン基またはC1−3アルキルフェニレン基
【0025】
【化4】

【0026】
(ここで、tは1〜3の整数である)
であるが、好ましくはカルボニル基、メチレンおよびベンジレン基
【0027】
【化5】

【0028】
である。
【0029】
nは2〜10,000の整数であることができる。したがって、本発明にいうポリマーの語「ポリマー」または「マクロモノマー」は、オリゴマーを包含する概念で使用している。
【0030】
上記マクロモノマーは式Iの構造を参照し、多様な方法で製造できる。市販のPEGを、例えば、(メタ)アクリル酸クロライド、ビニルベンジルクロリド、アリルクロリドを用いる脱ハロゲン化水素反応により、部分的に末端を修飾することにより製造できるが、例えば、いわゆるリビング重合によって製造すると、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(オキシエチレン)セグメントは、重合開始剤に対してエチレンオキシドの使用量を調整することによって一峰性の分子量をもつセグメントとすることが可能である。したがってnは、2〜10,000の範囲内で、極めて分布の狭い数(単分散)とすることができ、好ましくは10〜200のいずれかの整数であることができる。pは、1〜5の整数である。好ましくは、1〜3の整数を挙げることができる。
【0031】
式IIのコモノマーは、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルアミドまたはエステルである。R、RおよびRについて上記したとおりの定義を有するものであるが、特に好ましいものとしては、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートもしくはメタクリルアミド、およびN,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレートもしくはメタクリルアミド、ならびにこれらの対応するアクリレートもしくはアクリルアミドを挙げることができる。
【0032】
(c)の架橋剤は2個または3個以上の重合性不飽和基を有する多官能性のモノマーであって、式Iおよび式IIのモノマーと共重合でき、本発明の目的を達成できるものであればいかなる架橋剤であってもよい。また、多種多様な市販されている架橋剤がそのまま使用できる。好ましいものとしては、限定されるものでないが、式III:
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、Rは水素原子またはC1−6アルキル基を表し、Y′は原子価結合、CO−または−NH−を表し、Aはフェニレン基−(CH−(ここで、rは1〜4の整数である)または−(OCHCHO)−(ここで、sは1〜4の整数である)で表される架橋剤を挙げることができる。より具体的に、特に好ましい架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンおよびN,N′−メチレンビスアクリルアミドである。
【0035】
本発明の架橋ポリマーはさらに場合により、1種以上の、好ましくは1種の重合性不飽和基を有する希釈モノマー由来の反復単位を含むことができる。限定されるものでないが、希釈モノマーとしては、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸アミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、イソプレン、ブタジエン等を挙げることができる。以上の例示から理解できるとおり、本明細書で「(メタ)アクリレート」および「(メタ)アクリル酸」と称す場合、メタクリレートもしくはアクリレートおよびメタクリル酸もしくはアクリル酸を、それぞれ意味する。
【0036】
本発明の四級化された架橋ポリマーは、上記の各モノマー、架橋剤に由来するポリマー主鎖および側鎖を含み、かつ、式IIで表されるコモノマーの第三級アミン部分(RN−(CH−)がC1−6アルキル基もしくはハロゲン原子により1以上置換されていてもよいフェニル置換もしくは未置換C1−6アルキル基またはアリル基により四級化されている。かような四級化に用いられる基はC1−3アルキル基であることが好ましい。該アミン部分の四級化率は、総アミノ基の中の少なくとも約10%、好ましくは約30%、より好ましくは約50%、特に好ましくは約100%であることができる。
【0037】
好ましい態様の架橋ポリマーまたはポリマー微粒子を構成するのに必須の(a)のマクロモノマー(ポリマー微粒子の(ii)の側鎖をもたらす。)と(b)コモノマー(ポリ
マー微粒子の(i)の側鎖をもたらす。)は、モル比で1/400、好ましくは1/200、特に好ましくは1/100〜2/1の範囲内で使用することができる。そして、(a)のマクロモノマーと(b)のコモノマーの総量に対し、架橋剤(c)は0.1〜25モル%の割合で使用することができる。
【0038】
これらのモノマー、架橋剤の共重合反応は、ラジカル重合が起こる条件下、例えば、溶媒として、必要により水混和性の有機溶媒、メタノール、エタノールが混合されていてもよい水、好ましくは水単独で、開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸等を用いて、必要により加熱下に行うことができる。反応体の混合溶液は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)により脱気を行った状態で、激しく攪拌しながら反応を行えばよい。反応は、反応混合物のアリコートを、例えばガスクロマトグラフィーで分析し、未反応のモノマーが消失するまで行う。こうして、一般的には、架橋ポリマーが微粒子(またはビーズ)状で得られる。
【0039】
四級化された架橋ポリマーは、可能であれば、上記式IIで表されるコモノマーの第三級アミン部分(RN−(CH−)が予め四級化されたものを、上記式(I)のマクロモノマーおよび架橋剤と共重合することにより得られるものであってもよい。しかし、四級化された架橋ポリマーは、都合よくは、該マクロモノマー、コモノマーおよび架橋剤を含んでなるモノマーを、例えば、重合に悪影響を及ぼさない溶媒(水、または水と水混和性溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、エタノール等との混合液)中でラジカル共重合せしめ、こうして得られる架橋ポリマーを低級アルカノール、またはテトラヒドロフラン、等の溶媒中で上記C1−6アルキル基もしくはハロゲン原子により1以上置換されていてもよいフェニル置換もしくは未置換C1−6アルキル基またはアリル基に対応するハロゲン化物(例えば、ヨウ化物、臭化物等)を用いて四級化することにより得ることができる。
【0040】
こうして得られる四級化された架橋ポリマーの微粒子の粒径は、反応において、(a)のマクロモノマーと(b)のコモノマーと(c)の架橋剤の使用割合を選ぶことにより、また、(a)のマクロモノマーのPEGの分子量を選ぶことにより、粒径を約30nm、好ましくは50nm〜約1μmに調整することができ、必要により、さらに1μm以上、10μm以下にも調整することができる。したがって、微粒子はナノスフェアもしくはミクロスフェアと称することもできる。さらに、上述したとおりこれらの粒径は、水性媒体のpHを変化されることにより調節することもできる。通常、コモノマーの配合比を増加させることにより大きい粒径の微粒子を形成できる。他方、架橋剤の使用割合を変化させることにより、網目の疎密を調整できる。また、希釈剤モノマーとして、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)を併用すると微粒子の水溶性を向上させることができ、例えば、スチレンを併用すると微粒子に屈折率の向上特性を付与することができる。
【0041】
本発明に従う四級化された架橋ポリマーは、三次元ポリマーまたは網目ポリマーとも称され、殆どが、実質的には水を初めとする溶媒に不溶であり、一方では、水性媒体中(緩衝化された脱イオン水等を包含する)で高度の分散されたポリマー微粒子を形成する。水中ではPEGマクロモノマーに由来するPEGセグメントの作用により、分子全体または粒子が可溶化され、恰も、通常の意味に用いる溶液のごとき外観を呈する。したがって、本明細書で溶液と称するときは、上記のごとく溶質ポリマー全体またはポリマー微粒子が可溶化され、恰も溶液のごとき外観を呈する場合を包含する。上述したとおり、架橋ポリマーまたは四級化された架橋ポリマーは、それらの水溶液中で微粒子またはビーズ状の形態で可溶化または分散された状態で存在しうる。また、このような微粒子は、遠心分離、濾過、その他の方法により、固体粒子として溶液から分離することもできる。
【0042】
上述のごとく、四級化された架橋ポリマー微粒子は、精製水中に分散させて動的光散乱粒径解析(DLS)を行った場合に平均粒径が30nm〜10μm、好ましくは50nm〜1μmの範囲にあるとの特有の構成要件または特性を有する。
【0043】
本発明に従う複合体を構成する核酸分子(または核酸)は、上記四級化された架橋ポリマー微粒子と安定な複合体を形成し、当該技術分野で研究のツールとして、また、何らかの疾患の治療または予防上で有用な核酸分子であれ制限されることなく使用できる。本発明にいう核酸は、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味し、オリゴもしくはポリ一本鎖RNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNA、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、また同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ二本鎖核酸、同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ一本鎖核酸が含まれる。また、核酸に含有されるヌクレオチドは天然型であっても、化学修飾された非天然型であってもよく、またアミノ基、チオール基、蛍光化合物等が付加されたものであってもよい。限定されるものでないが、核酸は、上記の何らかの機能をするものであればいかなる鎖長を有するものであってもよい。しかし、一般的には、5〜30,000塩基、好ましくは10〜15,000塩基、他の核酸のベクターに比べてより顕著に本発明の特徴を発揮しるものとしては、5〜30塩基からなるものであることができる。
【0044】
かような核酸分子の機能を考慮すると、核酸分子には、例えば、プラスミドDNA、mRNA、siRNA、アンチセンス核酸、アンチ−micro RNA、デコイ核酸、アプタマー、およびリボザイムが包含される。限定されるものでないが、siRNAは、一般的に18〜27塩基対の二本鎖RNAであり細胞内導入によって配列特異的に標的mRNAが分解を誘起し指標的遺伝子の発現を抑制するものとして知られているものであり、アンチセンス核酸は、一般的に特定のmRNAに結合して遺伝子発現を阻止したり,mRNAのスプライシングを操作するものとして知られているものであり、アンチ−micro RNAは、一般的に内在性のmiRNAの機能を阻害するものとして知られているものであり、デコイ核酸は、一般的に標的蛋白質を捕捉することにより遺伝子の活性化に重要な転写因子を阻害する二本鎖核酸として知られているものであり、アプタマーは、一般的に特異的な三次元構造をとる化学合成の短い核酸で蛋白質など特定の化合物に結合するものとして知られているものであり、リボサイムは、一般的にRNAを切断する生体触媒としての活性を持つ配列を持った核酸として知られるものである。
【0045】
四級化された架橋ポリマーまたは該ポリマー微粒子は、その中の第三級アミン部分のN原子と核酸のリン酸部分のP原子の比、N/Pは、一般的に0.1〜50、好ましくは0.5〜30、より好ましくは1.0〜20、特に好ましくは3.0〜20となるように、核酸がポリマー粒子に担持されている状態にある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】架橋ポリマー−siRNA複合体のポリアクリルアミド電気泳動結果を示す図面に代わる写真。
【図2】ナノゲル−siRNA複合体のゼータ電位測定結果のグラフ表示である。
【図3】siRNA担持四級化架橋ポリマーの細胞内siRNA導入量分析結果のグラフ表示である。
【図4】siRNA担持四級化架橋ポリマーの細胞内siRNA導入量分析結果のグラフ表示である。
【図5】四級化架橋ポリマーの微粒子のsiRNA複合体の遺伝子発現抑制効果のグラフ表示である。
【図6】四級化架橋ポリマーの微粒子の細胞毒性のグラフ表示である。
【0047】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0048】
内核(コア)にカチオン性固定電荷を有する四級化架橋ポリマーの製造
【0049】
【化7】

【0050】
100mLナスフラスコに反応性官能基としてアセタール基、重合性官能基としてビニルベンジル基を主鎖末端にそれぞれ有するポリエチレングリコール(acetal−PEG−vinylbenzyl:数平均分子量7,870)を94.9μmol(750mg)、開始剤として82.7μmol(22.4mg)の過硫酸カリウム(KPS)を入れて、窒素置換後に脱気した蒸留水を30.5mL加え、架橋剤としてエチレンジメタクリレート(EDMA)を81.9μmol(17.8μL 1.0mol%)加えて溶解させた。その後、水溶性高分子架橋体の内核部位となる2−(N,N−ジチルアミノ)エチルメタクリレート(DEAEMA)を8.09mmol(1.63mL)加え室温にて一晩攪拌し、乳化重合を行った(重量比PEG:DEAEMA=1:2、高分子架橋体75mg/mL仕込み)。精製はメタノールを用いて限外濾過(分画分子量;200,000)により行い未反応のポリマー等の除去を行い、その後超純水で置換し、0.2μmのフィルターに通して滅菌処理を行った。高分子架橋体水溶液の重量濃度は凍結乾燥後の重量より算出した。さらに、元素分析測定により窒素含有量を測定した。
【0051】
その後、高分子架橋体に換算して210mg相当の高分子架橋体水溶液(3mL)を27mLのメタノールに分散させ、ヨウ化メチルを1.5mmol(93.3μL)加え室温にて一晩以上攪拌し、内核アミノ基の四級化を行った(高分子架橋体中のアミノ基に対するヨウ化メチル添加量は2倍モル当量)。精製はメタノールにて限外濾過(分画分子量;200,000)を行い未反応のヨウ化メチルの除去を行い、その後超純水で置換し、0.2μmのフィルターに通して滅菌処理を行った。得られた四級化高分子架橋体を凍結乾燥後、重量測定により重量濃度を算出した。さらに、元素分析測定により窒素含有量と対イオンであるヨウ素含有量をそれぞれ測定し、内核アミノ基の四級化率を算出した。ま
たナノゲルの内核アミノ基数に対するヨウ化メチル添加量を様々変化させ、四級化率の制御を行った。その結果を下記表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1より、ナノゲルの内核アミノ基数に対するヨウ化メチル添加量を様々変化させることで、四級化率の制御が可能であることが確認できた。
【実施例2】
【0054】
内核にカチオン性固定電荷を有する四級化架橋ポリマーの物性評価
実施例1に従い製造した、四級化率の異なる高分子架橋体をpH=7.4の10mMトリス−塩酸緩衝溶液に100μg/mLとなるように分散させ、ゼータサイザー(Malvern社製)を用いて、粒子径とゼータ電位の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
四級化率の増加に伴い、pH=7.4における粒子径とゼータ電位が供に増加する傾向が確認できた。内核アミノ基をカチオン性の固定電荷(四級アミノ基)へと変換することで、その電荷によりゼータ電位は上昇し、また固定電荷同士の静電反発力によるゲルの膨潤により粒子径が増大したと推測される。
【実施例3】
【0057】
架橋ポリマー/siRNA複合体の調製とポリアクリルアミド電気泳動による評価
この実施例では、本発明に従う四級化架橋ポリマーが四級化処理を施していない架橋ポリマーに比べより多くのsiRNAを粒子中に担持可能であることを示す。
【0058】
siRNA(Dharmacon社製)を6μMの濃度となるようにpH=7.4の1
0mMトリス−塩酸緩衝溶液に溶解させた。次いで架橋ポリマーを様々な濃度でpH=7.4の10mMトリス−塩酸緩衝溶液に溶解させた。siRNAに対し二倍の体積量の架橋ポリマーを加え、室温で30分間以上静置し四級化架橋ポリマー中へのsiRNAの担持を行った(最終siRNA濃度:2μM)。この際、架橋ポリマー中のアミノ基数とsiRNA中のリン酸基数をさまざまな比率(N/P比)で変化させて調製を行った。その後、12%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を3.3mMトリス−ホウ酸−EDTA緩衝溶液(pH=7.4)を使用して100V、1時間行った。0.5μg/mLの臭化エチジウムにポリアクリルアミドゲルを浸漬させ染色を行った後、UVトランスイルミネーターを用いてsiRNA担持架橋ポリマー中に含まれる遊離のsiRNAの検出を行った。結果を図1に示す。
【0059】
図1によると、架橋ポリマーとsiRNAを各種N/P比で混合した際の、複合化に関与しない遊離のsiRNAをポリアクリルアミドゲル電気泳動により検出した結果である。四級化処理を施していない架橋ポリマーとsiRNAはN/P=1.5で遊離のsiRNAのバンドが消失するが、四級化架橋ポリマーとsiRNAはN/P=1とより低いN/P比において遊離のsiRNAのバンドが消失した。すなわち、四級化高分子架橋体は粒子中により多くのsiRNAを担持可能である。
【実施例4】
【0060】
siRNA担持四級化高分子架橋体のゼータ電位評価
この実施例では、本発明に従う四級化架橋ポリマー−siRNA複合体の生理条件(pH7.4)におけるゼータ電位が、四級化率により制御可能であることを示す。
【0061】
ここでは、様々なN/P比で調製したsiRNA担持高分子架橋体に関して、ゼータサイザー(Malvern写生)を用いて、pH=7.4トリス−塩酸緩衝溶液中でゼータ電位の測定を行った。結果を図2に示す。
【0062】
図2より、N/P比を高くすることであらゆる四級化率においてより大きな正のゼータ電位を示すことがわかり、N/P比3以上ではほぼ同等のゼータ電位を示した。また四級化率の増加に伴いより大きな正のゼータ電位を示すことが示された。すなわち、架橋ポリマー微粒子の内核アミノ基の四級化率を制御することでsiRNA担持後の高分子架橋体複合体のゼータ電位の制御が可能であることが示された。
【実施例5】
【0063】
siRNA担持四級化高分子架橋体による細胞内siRNA導入量の評価
この実施例では、本発明に従うsiRNA担持四級化架橋ポリマーが、細胞内へのsiRNA送達に関して未四級化体や市販の遺伝子導入試薬等に比べ優れること示す。
【0064】
24穴ポリスチレン製細胞培養プレート(Falcon社製)に、人肝癌細胞(HuH−7細胞)を100,000cells/well播種し、24時間培養した後、センス鎖5’末端をフルオレセインで修飾したホタルルシフェラーゼ遺伝子に対する配列を有するsiRNA(Dharmacon社製、sense鎖配列:5’−CUU ACG CUG AGU ACU UCG AdTdT−3’,antisense鎖配列:5’−UCG AAG UAC UCA GCG UAA GdTdT−3’)を内包した高分子架橋体(実施例3で調製した)の溶液を所定量加え(培地濃度換算[siRNA]=200nM)、24時間10%血清存在下で細胞と接触させた。その後、細胞をトリプシン処理により回収しフローサイトメーターにより細胞内siRNA導入量を評価した(n=3)。
【0065】
図3より僅か2.6%の四級化処理においても、未四級化体を比較して有意に細胞内s
iRNA導入量の増加が認められる。100%の四級化処理においては、市販のオリゴ核酸導入試薬であるOligofectamine(Invitrogen社製)やLipofectamine2000(Invitrogen社製)ならびに同N/P比における分岐型ポリエチレンイミン(B−PEI、重量平均分子量25,000、シグマ−アルドリッチ社製)を凌ぐ細胞内siRNA導入量を示した。これはカチオン性のOligofectamine、Lipofectamine2000、B−PEIは培地中に含まれる血清由来タンパク質との相互作用によって取り込みが阻害されるのに対し、四級化高分子架橋体は表面をPEG化処理してあるため、タンパク質との非特異的相互作用を抑えるためであると推測される。
【0066】
また、各四級化率の高分子架橋体を、様々なN/P比において蛍光ラベル化siRNAの担持を行い、フローサイトメトリー測定より得られる細胞のヒストグラム(図3)の平均蛍光強度を計算した結果が図4である。四級化率が高く、またN/P比が高いほど細胞内siRNA導入量が増大するという知見を得た。つまり、siRNA担持四級化高分子架橋体のゼータ電位が高いものほど、負電荷を有する細胞膜との静電的な相互作用が増加し、細胞内siRNA導入量の向上が起こったと推測される。
【実施例6】
【0067】
架橋ポリマー/siRNA複合体による遺伝子発現抑制効果の評価
この実施例では、本発明に従う四級化架橋ポリマー−siRNA複合体の遺伝子発現抑制効果を市販の遺伝子導入試薬との比較に関して示す。
【0068】
24穴ポリスチレン製細胞培養プレート(Falcon社製)に、人肝癌細胞(HuH−7細胞)を50,000cells/well播種し、24時間培養した後、市販の遺伝子導入試薬であるLipofectamine2000(Invitrogen社製)を用い、ホタル由来ルシフェラーゼプラスミドDNA(pGL3−control,80ng/well,Promega社製)とウミシイタケ由来ルシフェラーゼプラスミドDNA(pRL−TK,400ng/well,Promega社製)のレポーター遺伝子をOpti−MEM I(Invitrogen社製)中で細胞にトランスフェクションした。次に、ホタルルシフェラーゼ遺伝子に対する配列を有するsiRNA(Dharmacon社製、sense鎖配列:5’−CUU ACG CUG AGU ACU UCG AdTdT−3’,antisense鎖配列:5’−UCG AAG UAC UCA GCG UAA GdTdT−3’)を内包した架橋ポリマー(実施例3で調製した)の溶液を所定量加え(培地濃度換算(siRNA)=100nM)、24時間10%血清存在下で細胞と接触させた。培地交換後、さらに24時間培養した後、細胞を回収し両レポーター遺伝子の発光量をDual Luciferase Reporter Assay System(Promega社製)により測定し遺伝子発現抑制(RNAi)効果を評価した(n=3)。
【0069】
実施例5において最も細胞内siRNA導入量に優れていた100%四級化体と、未四級化体を用いた際の、遺伝子発現抑制効果を調べ図5にまとめた。100%四級化体はN/P比の増加に伴い顕著な遺伝子発現抑制効果を示し、N/P=10ではOligofectamine以上の抑制効果を示し、N/P=20においてはLipofectamine2000以上の効果を示した。一方、細胞内siRNA導入量の少ない未四級化体はN/P=3において最大の遺伝子発現抑制効果を示し、その値はOligofectamineより僅かに優れる程度であった。すなわち細胞内siRNA導入量に優れる四級化架橋ポリマーほどより高い遺伝子発現抑制効果を示した。
【実施例7】
【0070】
細胞に対する毒性評価
この実施例では、本発明に従う四級化架橋ポリマーと未四級化体や未架橋体の細胞毒性との比較に関して示す。
【0071】
96穴ポリスチレン製細胞培養プレート(Falcon社製)に、人肝癌細胞(HuH−7細胞)を10,000cells/well播種し、24時間培養した後、四級化高分子架橋体(四級化率100%)、未四級化体を所定量添加し10%血清存在下で48時間接触させた。その後、Cell Counting Kit−8(同人堂社製)を10μLずつ各ウェルに添加し、37度で1時間静置後マルチウェルプレートリーダーにて吸光度測定を行い、未処理細胞の細胞生存率を100%としたときの細胞生存率を算出した(n=6)。さらに比較対象として、市販のカチオン性ポリマーであるB−PEIおよび、実施例1に従い合成した架橋剤未添加のPEGとPDEAEMAから成る未架橋ポリマーに対しても同様の実験を行った。細胞生存率が50%となる濃度(IC50)を各試料に対して求めたところ、四級化高分子架橋体、未四級化高分子架橋体、未架橋ポリマー、B−PEIの順でIC50値の上昇が確認でき、IC50値はそれぞれ95.7μg/mL、18.4μg/mL、6.4μg/mL、3.1μg/mLとなった(図6)。すなわち、四級化処理を施した高分子架橋体は細胞内へのsiRNAの導入に優れるだけではなく、細胞毒性も優位に低減されていることが確認された。未四級化高分子架橋体と未架橋ポリマーの細胞毒性を比較した場合、架橋構造の効果によりその細胞毒性が低減されることが認められるため、四級化高分子架橋体の低毒性は架橋構造ならびに四級化アミノ基の両者の寄与により達成されたと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和重合性基から形成される主鎖を有し、側鎖に四級化された第三級アミン部分を有する架橋ポリマー由来のポリマー微粒子と、核酸分子の複合体であって、該ポリマー微粒子が、
(a)式I:
【化1】

式中、Xは水素原子、−COOZ(ここで、Zは水素原子または有機基を表す)、−CHR(ここで、RおよびRは、独立して、C1−6アルキルオキシ基、フェニルオキシ基もしくはフェニル−C1−3アルキルオキシ基を表すか、またはRおよびRは一緒になって−OCHR′−CHO−であって、R′が水素原子もしくはC1−6アルキル基である基を表す)または−CH=Oを表し、
は水素原子またはC1−6アルキル基を表し、
はメチレン基またはカルボニル基を表し、
はカルボニル基、C1−3アルキレン基またはC1−3アルキルフェニレン基を表すか、あるいは
【化2】

は、一体となって水素原子またはC1−6アルキル基を表し、
nは2〜10,000の整数であり、そして
pは1〜5の整数である、
で表されるポリ(エチレングリコール)マクロモノマーと、
(b)式II:
【化3】

式中、RおよびRは、独立してC1−6アルキル基を表し、Rは水素原子またはC1−6アルキル基を表し、Yは−O−または−NH−を表し、そしてqは2〜6の整数である、
で表されるコモノマーと、
(c)2個または3個以上の重合性不飽和基を有する架橋剤、
を含んでなるモノマーの共重合により得られ、そして上記式(II)の第三級アミン部分の少なくとも10%がC1−6アルキル基もしくはハロゲン原子により1以上置換されていてもよいフェニル置換もしくは未置換C1−6アルキル基またはアリル基により四級化されており、かつ、
精製水中に分散させて動的光散乱粒子解析(DLS)を行った場合に平均粒径が30nm〜10μmの範囲にある、上記複合体。
【請求項2】
(b)のコモノマーと(a)のマクロモノマーが、モル比で1/2〜400/1である、請求項1記載の複合体。
【請求項3】
架橋剤が、式III
【化4】

式中、Rは水素原子またはC1−6アルキル基を表し、Y′は原子価結合、カルボニル基または−NH−を表し、Aはフェニレン基、−(CH−(ここで、rは1〜4の整数である)または−(OCHCHO)−(ここで、sは1〜4の整数である)を表す、
で表される、請求項1記載の複合体。
【請求項4】
式(II)の第三級アミン部分の少なくとも50%がC1−3アルキル基により四級化されている、請求項1記載の複合体。
【請求項5】
核酸がオリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNAおよびオリゴもしくはポリ一本鎖RNAおよびオリゴペプチド核酸からなる群より選ばれる、請求項1記載の複合体。
【請求項6】
核酸がプラスミドDNA、siRNA、アンチ−micro RNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムからなる群より選ばれる請求項1記載の複合体。
【請求項7】
ポリマー微粒子中の第三級アミン部分のN原子と核酸のリン酸部分のP原子の比、N/Pが0.1〜50となるように、核酸がポリマー粒子に担持されている、請求項1記載の複合体。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−163364(P2010−163364A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4710(P2009−4710)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】