説明

回折デバイスの形成方法

観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する回折認証デバイスを形成する方法を開示する。この方法は、複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと、前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、この二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数の回折素子を有する回折格子微小構造によって提供される。認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記回折格子微小構造の所定の回折素子による回折効果を、少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、オーストラリア国暫定特許出願2003903502に基づいて優先権を主張し、その開示を参考文献として本明細書に含める。
【0002】
(発明の分野)
本発明は回折デバイスに関するものである。
【0003】
本発明の好適例により作製したデバイスを光源によって照射すると、これらのデバイスは1つ以上の画像を生成し、これらの画像は、デバイスの周りの特定の画角範囲(視野角)内で観測される。本発明の好適例のデバイスは、多数の異なる用途に用いることができ、そしてID(Identification:身分証明)証書上の偽造防止セキュリティ・デバイスとしての特定用途を有し、例えば運転免許証、クレジットカード、ビザ、パスポート、及び印刷、電子コピー、及びコンピュータのスキャン技術による偽造に耐える方法での個人の安全な識別が要求される他の有価証券である。
【0004】
本発明の好適例は、銀行券、小切手、クレジットカード、及び株券のような他の金融取引証券用の低コストの偽造防止デバイスとしての特定用途も有する。
【0005】
(背景技術)
なお、本明細書において従来技術文献を参照する場合には、こうした参照は、こうした文献が、オーストラリア国及び他国における従来技術の一般常識的な知識の一部をなすことを認めるものではない。
【0006】
1997年に最初に発行されたアメリカンエキスプレス(登録商標)社の米ドル・トラベラーズチェックの新シリーズは、アメリカンエキスプレスのセンチュリオン(古代兵士の隊長)ロゴ(商標)の回折格子箔(フォイル)の画像を偽造防止機能として採用している。この回折格子箔デバイスが光源によって照射され、異なる画角から観測されると、センチュリオンの画像がアメリカンエキスプレス社のボックス(四角枠で囲んだ)ロゴの画像に切り換わる。このデバイスのこうした光学的可変性は、通常の電子コピーまたはカメラ技術によってコピーすることが不可能であることを保証する。
【0007】
【特許文献1】米国特許 5,825,547
【特許文献2】米国特許 6,088,161
【特許文献3】欧州特許 EP 330,738
【特許文献4】欧州特許 EP 105,099
【0008】
この可変の光学的挙動を示す回折格子デバイスは、光学的可変デバイス(OVD:Optically Variable Device)と称され、有価証券を保護するための偽造防止方策としてのその利用は成長し続けている。知的所有権のある特定の光学的可変デバイス及び今日までの応用は、ハンガリー銀行券の新シリーズ、アメリカンエキスプレス社の米ドル及びユーロ・トラベラーズチェック、ウクライナ国のビザを保護するために使用されているEXELGRAM(登録商標)デバイス、及びスイス銀行券の現シリーズ及び低額のユーロ銀行券を保護するために使用されているKINEGRAM(登録商標)デバイスを含む。EXELGRAMデバイスは米国特許番号5,825,547及び6,088,161に記載され、KINEGRAMデバイスは欧州特許EP 330,738及びEP 105,099に記載されている。
【0009】
【特許文献5】欧州特許 EP 0 490 923 B1
【特許文献6】米国特許 5,428,479
【0010】
EXELGRAM及びKINEGRAMデバイスは、公式文書の偽造に対する高度に有効な防止手段であることが証明されている箔ベースの回折構造の例である。このクラスの光学的回折の偽造防止デバイスは、欧州特許番号EP0 490 923 B1及び米国特許番号5,428,479に記載されているPIXELGRAM(登録商標)デバイスも含む。PIXELGRAMデバイスは、相対回折構造を生成することによって製造され、この構造では、光学的に不変の画像の各画素が、PIXELGRAMデバイス上の対応する小さい回折画素領域にマッピング(写像、対応付け)される。
【0011】
これらの箔ベースの回折の光学的可変デバイスは、その産業上の有効性もかかわらず、パスポートまたは運転免許証の写真、あるいは身分証明(ID)カードの画像の場合のような個人の画像の安全な識別が要求される小体積の応用及び一度限りの応用には、特定の不足点を有する。
【0012】
現時点では、ID文書上の個人の顔写真の画像を保護する技術は、この個人に特有のOVD画像の生成、人物の写真を透明なOVDラミネート(積層)フィルムでカバーすること、あるいは標準的なOVD画像をID文書上の文書に隣接した領域内に含めることを含む。最初の場合には、そのプロセスは、個人毎に新たなOVDの原版を生産し、そしてエンボス(打出し、浮彫り)技術によってホット(熱間)スタンプ箔を生産する必要性により極めて高価かつ時間を要する。セキュリティ目的用のOVD原版のコストは、技術の種類及び要求されるセキュリティ(安全性)のレベルに依存して5,000米ドルから50,000米ドルまで変化するので、ID用途向けの個人特有のOVD原版の使用は、コスト上の理由だけで見込みがない。
【0013】
一般的に言って、OVD原版の高コストは、この種の偽造防止技術は大量生産用途にしか適していないことを意味し、大量生産用途では原版のコストは、同一のホットスタンプ箔を大量生産するうちに償却することができる。透明OVD被せ(オーバレイ)フィルムの使用及び一般的なOVD画像の使用は、ID用途向けの箔を生産するうちにOVD原版のコストを償却するために現在採用されている方法である。しかし、これらの場合には、透明被せフィルムまたはOVD画像は個人特有ではなく、従って、異なる個人がこのID文書を使用可能にすべく、透明フィルムをはがして、元の写真画像を代わりの画像に置き換えることによって、代用または偽造の文書を生成することができるというリスクが存在する。
【0014】
【特許文献7】米国特許 5,374,976
【非特許文献1】”Optical Document Security, Second Edition”
【0015】
応用のセキュリティのために開発された他の技術は、スクリーン角度変調(”SAM”:Screen)、またはその微小版である”μ−SAM”として知られ、米国特許5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに詳述されている。この技術では、周期的に配列された細く短い線のセグメント(区分)のパターン中に、これらのセグメントの角度を互いに対して連続的か段階的かのいずれかで変化させることによって潜像を生成する。このパターンは、巨視的に見れば一様な中間的な色またはグレースケール(中間調)として見えるが、このパターンを非変調の同じパターンと共に透明基板上に重ねると、潜像が観測される。
【0016】
上述したように、これらの技術は、変調されたアレイをこれに対応する非変調のアレイに重ねるか、あるいはその逆を行って潜像を出現させることを含む。
【0017】
この技術の変調及び非変調のアレイは通常、印刷技術によって生成される。この理由により、この技術は回折のOVDほど安全ではない、というのは、この技術は、回折OVDのずっと小規模な微小構造よりもリバース・エンジニアリング(製品分析)が行いやすいからである。
【0018】
(発明の概要)
本発明は、その第1の広い態様では、観測の角度に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する回折認証デバイスを形成する方法に関するものであり、この方法は:
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、この二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、各々が少なくとも2つの異なる種類である回折素子を有する回折格子微小構造によって提供され、
前記認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記回折格子微小構造の所定の回折素子による回折効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンを提供する。
【0019】
一部の好適例では、前記一次パターンを、前記二次パターン上に重ねることによって提供する。
【0020】
他の好適例では、前記微小構造の一部分を光学的に無効にすることによって前記一次パターンを提供する。好適例によっては、前記微小構造を(例えばレーザー・アブレーション(レーザーによる瞬間的除去)を用いて)物理的に除去するか、あるいは、前記微小構造が強度な回折を行わない程度にそのコントラストを低減することによって、光学的に無効にすることができる。
【0021】
さらに他の好適例では、前記一次パターンを、バックグランド(背後)微小構造の最上面に印刷することによって提供する。このことは、箔の表面上に印刷することによってもフォトレジスト層上に印刷することによっても行うことができる。
【0022】
前記2種類の回折格子領域は一般に、規則的なパターンで提供する。一般に、この規則的なパターンは、少なくとも2種類の回折格子領域を、画素化した回折格子領域かトラック状の回折格子領域のいずれかの形に配列することによって提供する。画素化した回折格子領域の例はチェッカーボード(市松模様)パターンであり、ここでは2種類の複数の回折格子領域が矩形アレイの形に配列され、これら2種類の領域は水平軸及び垂直軸の各方向に交互する。
【0023】
本発明の方法は、電子ビーム・リソグラフィーまたはレーザービーム干渉の製造技術によって前記回折格子微小構造を生成することを含むことができる。
【0024】
ここでは、前記回折格子微小構造の事前選択した領域からの回折光の強度を他の領域と比べて、これらの事前選択した領域による回折効果が解消されるか大幅に低減される意味で、前記回折格子微小構造が「光学的に無効」にされる。
【0025】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねることによって提供する好適例では、前記一次パターンを透明基板上に設け、前記二次パターンを箔ベースの回折の光学的可変デバイス(OVD)の形で提供し、前記方法は、前記一次パターンを前記OVDの二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、光源での照射時に、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、複数の特定画角において異なる視覚値を有するものとして観測される。好適例によっては、前記一次パターンの前記画像要素を透明及び不透明、あるいは有色画像要素にすることができる。前記画像要素は局所的に周期的にすることもしないこともできる。従って、前記異なる視覚値は異なる色にすることも異なるグレーの陰影にすることもできる。
【0026】
この好適例では、OVD箔を、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化することができ、重ねられる一次パターンは、特定の潜像に特有の画像情報を伴って、(OVD箔の)フィルムを文書からはがすと前記潜像が消失する方法で符号化される。この技術は、現在のOVDラミネーション(積層)技術に対してIDのセキュリティを大幅に強化する、というのは、OVD箔も符号化された重ね(オーバレイ)スクリーンも、現在の写真または印刷技術を用いた改変に対して無防備ではないからである。
【0027】
前記一次パターンをアブレーションによって提供する本発明の好適例では、前記回折格子微小構造の、前記一次パターンによって決まるOVD領域内の選択位置におけるレーザーまたは他のアブレーションによって、前記一次パターンを直接、前記OVD箔内に入れる。本発明のこの好適例は、ID画像の耐久性及びセキュリティを共に改善する、というのは、符号化された画像情報を前記箔の表面から消去する可能性が存在しないからである。
【0028】
前記一次パターンを印刷する本発明の好適例では、前記一次パターン中に符号化された画像情報を、一般的なOVD箔の最上面に直接印刷し、これにより、箔及びこれに重ねられたスクリーン境界面をはがすことによるリバース・エンジニアリングを防止することによって、増加されたセキュリティを提供する。
【0029】
本発明のさらに他の代案の好適例では、大量生産された箔内に金属化(メタライゼーション)した前記二次パターン上に感光ポリマー層を設けることによって、前記符号化された画像情報をOVD箔の一部分として作製する。そして、前記感光層の選択的な照射によって、前記一次パターンを一度限りのベースで印刷する。
【0030】
多数の技術を用いて、適切な一次及び二次パターンを生成することができる。これらの技術は、潜像を符号化する変調された画像要素のアレイ(一次パターン)、及びこれに対応し、前記変調されたアレイと位置整合された際に前記潜像を復号化する非変調の画像要素のアレイ(二次パターン)を生成する特徴を共用する。前記変調及び非変調のアレイは共に、複数の離散画像要素に分割されるので、これらの変調及び非変調のアレイは「ディジタル」画像と称するにふさわしい。従って、本明細書ではこの種の技術を集合的に、「変調ディジタル画像(MDI:Modulated Digital Images)」と称する。適切なMDI技術の例は、SAM、μ−SAM、並びにPHASEGRAM(登録商標)、BINAGRAM(登録商標)、及びTONAGRAM(登録商標)を含む。
【0031】
【特許文献8】オーストラリア国暫定特許出願 2003905861
【0032】
PHASEGRAMは、オーストラリア国暫定特許出願番号200305861、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2003年10月24日出願に記載され、これに対応するPCT出願は、2004年7月7日に出願されている。この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0033】
【特許文献9】国際特許出願 PCT/AU2004/00746
【0034】
BINAGRAMは、国際特許出願番号PCT/AU2004/00746、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2004年6月4日出願に記載されている。この技術では、画像を隣接または近接した画素の対に分割し、これらの画素対は局所的に周期的にすることもしないこともできる。そして、各対における一方の画素を、相補的なグレースケールまたは色特性に変調する。透明基板上で等価な非変調のパターン上に、あるいはこのパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の度合い次第で、潜像またはその陰画が可視になる。
【0035】
本明細書に規定する一次パターンは一般に、二次パターンの変調版(バージョン)である。一次パターンは潜像または画像を符号化するかあるいは含み、これらの潜像または画像は、この一次パターンが対応する二次パターン上に重ねられた際のみに(本発明の好適例ではOVDの形で)現われる。一般に、一次パターンは矩形であり、従って、その画像要素は矩形アレイの形に編成される。しかし、画像要素は他の方法で配列することができる。画像要素は一般に、周期的な形に配列され、例えば一列おきまたは一行おきに交互する、というのは、このことは重ね合わせにおいて二次パターンを一次パターンに最も容易に位置整合させることを可能にするからである。しかし、画像要素のランダムまたはスクランブル(混ぜ合わせ)された配列を用いることもできる。
【0036】
本明細書では、「二次パターン」とは2つの文脈で用い、即ち、(この一次パターンの性質次第で)一次パターンに重ねるか一次パターンを重ねた際に、この一次パターンを復号化するパターンを述べるか、あるいは、こうした二次パターンを微小構造に適用したものを述べるかのいずれかである。本明細書に記載の回折格子微小構造を形成すべく二次パターンを適用した際には、この二次パターンは、特定の観測角において光の回折を有効にする画像要素(「オン」回折素子)または光の回折を無効にする画像要素(「オフ」回折素子)のいずれかに対応する回折素子から成る。これらの回折素子は、潜像を符号化するために用いる一次パターンに対応する二次パターンの形に配列することもできる。さらに、物理的な二次パターン中の回折素子の物理的寸法は、使用する一次パターンに対応する二次パターン画像の画像要素の物理的寸法と同一である。前記「オン」及び「オフ」回折素子は、光源で照射された際に、潜像または潜像に関連する画像が現われる一次パターン内の画像要素が明暗付けされるように配列する。デバイスの光学的可変性は、画角を他の特定画角に変化させ、すべての「オフ」回折素子が「オン」画素に変化するかあるいはその逆になる際に達成される。要求されるコントラストを達成するためには、すべての「オン」回折素子があらゆる特定観測角において光を回折させなければならず、そしてこの角度においてすべての「オフ」画素(回折素子)が光を回折させないことが必要である。
【0037】
二次パターンは一般に、「オン」及び「オフ」回折素子の矩形アレイである。例えば、二次パターンはトラック状の回折格子領域から成る矩形アレイ、即ち、「オン」回折素子の垂直ライン複数本とすることができ、各ラインは1つの回折素子の幅であり、同一幅の「オフ」回折素子の垂直ラインによって互いに分離されている。他の代表的な二次パターンは、「オン」及び「オフ」回折素子のチェッカーボード(市松模様)とすることができる。しかし、(一次パターンとの)適正な位置整合時に、二次パターン中の「オン」回折素子が、潜像が現われる一次パターン中のすべての画像要素を明暗付け可能であり、残りの画素がない限りは、ランダム及びスクランブルされたアレイを用いることもできる。
【0038】
二次パターンを微小構造に適用した際には、本明細書ではこのことを「バックグランドOVD微小構造」または「バックグランドOVD」とも称する。
【0039】
【特許文献10】オーストラリア国暫定特許出願 2004900187
【0040】
二次パターンから一次パターンを生成するために用いることのできる他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国国暫定特許出願 2004900187、”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載されている。
【0041】
この技術では、BINAGRAMまたはPHASEGRAMのようなMDIを数学的に、顔写真のような公開画像と数学的に組み合わせ、これにより、公開画像及び1つ以上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。この一次パターンを対応する二次パターンと重ねると、潜像が現われる。同じ方法で、本明細書に記載する種類の回折構造から成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ね合わせて、これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバス回折構造を、TONAGRAMアルゴリズムに従って、選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見ることのできる公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見ることのできる1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0042】
本発明は、回折認証デバイスのような回折デバイス、あるいは以上の方法によって生産される新案物にも拡張され、並びに、こうした回折デバイスを内蔵する文書または証券にも拡張される。
【0043】
本発明の他の広い態様では、本発明は、観測角に応じて変化する光学的に可変な画像を生成する回折デバイスに関するものであり、この回折デバイスは、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に、前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、この二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数の回折素子を有する回折格子微小構造によって提供され、
認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記回折格子微小構造の所定の回折素子による回折効果を、少なくとも1つの観測角において光学的に無効にするように、前記一次パターンが設けられている。
【0044】
以上で概説したように、MDI二次パターンの配列にパターン化されているが、印刷されたMDIパターンの代わりに2種類の回折格子ルールを用いる箔ベースのOVDは、対応するMDI一次パターンによってマスクして、例えば一意的な多色OVD効果の形態のMDI潜像を生成することができる。結果的なハイブリッド(混成)OVD−MDI(本明細書ではID−OVDまたはVIODと称する)は光学的に可変の属性を表示し、この属性は偽造が困難であるが、それにもかかわらず容易にカスタマイズ(顧客対応)できる、というのは、前記一次パターンは容易に印刷可能であり、OVDベースの前記二次パターンは一般的な形に大量生産可能だからである。
【0045】
従って、本発明の好適例は、顔写真画像の光学的に可変の側面と身分証明の側面とを分離して、これら2つの側面を別個に製造して上重ね(オーバレイ)の方法で再結合可能にすることによって、セキュリティ文書上の顔写真画像の保護へのより一般的かつ有用な取り組みを提供する。本発明の特定の好適例は、一般的な種類の回折OVD箔内にOVD保護を取り入れ、このOVD箔は保護すべき文書上にホットスタンプされ、そしてこの箔は、符号化されたID情報を含む透明フィルムと重ね合わされるか、このID情報パターンと位置整合されて印刷される。これら2つの効果の組合せにより、符号化された顔写真が、OVD効果を表わす潜像として現われる。
【0046】
本明細書に開示する本発明の特定の好適例は、MDI技術の低コストの個人顔写真生成機能を利用し、この利用は、これらの機能を、特別に設計したバックグランド回折格子キャンバスを、デバイスの画角が変化すると共に複数の画像が生成されるような方法でマスクするマスキング(マスク処理)パターンに変換することによって行う。
【0047】
MDI型のマスキング・スクリーンと特別に設計した回折バックグランド・キャンバスの増加したセキュリティ属性との組合せは、個人の画像を一度限りのベースで安全にするための低コストの手段を提供する。本明細書では、個人の画像を安全にすることは、画像が差し替え、改変、あるいは写真印刷またはコンピュータ・スキャン技術によるコピー(複写)によって変更されることを防止することを意味する。
【0048】
従って、MDIの特徴とOVDの特徴とを組み合わせた好適例のデバイスは、OVDの特徴は偽造が非常に困難であるが、MDIの特徴は生成される画像全体を容易にカスタマイズさせるという利点を有する。特に、OVDセクション(区分、部分)をMDI二次パターンの形に大量生産し、この二次パターンを対応するMDI一次パターンと重ねあわせる(さもなければこの一次パターンで修正する)、低コストで個人化したOVDの提供を可能にするものと見込まれる。
【0049】
本発明のさらなる特徴は、以下の本発明の好適な実施例より明らかになる。
【0050】
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しながら説明する。
【0051】
最初に、本発明の好適な実施例を、MDI一次パターンを回折格子微小構造の形態の二次パターンと組み合わせることによって生成可能な視覚効果に関連して説明する。この説明に続いて、回折認証デバイスを構成するいくつかの可能な技術について説明する。
【0052】
(好適な実施例の説明)
図1に、バックグランドOVD微小構造(または二次パターン)の例を示す。図1では、異なる陰影を有する画素領域が2つの異なる種類の回折格子微小構造を表わし、この構造は拡大部分10で最も良くわかる。簡単のため、これらの陰影を、赤色(レッド、明るい方の陰影)及び青色(ブルー、暗い方の陰影)と称する。回折格子画素領域の代表的な寸法は30ミクロン×30ミクロンまたは60ミクロン×60ミクロンである。一部の用途では、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。
【0053】
図2に、バックグランドOVD微小構造または二次パターンの他の構成を示す。図2では、赤色及び青色のストリップまたはトラック領域が、2つの異なる種類の回折格子微小構造を表わし、この構造は拡大部分20で最も良くわかる。代表的には、これらの回折格子トラックの幅は30ミクロンまたは60ミクロンである。一部の用途では、用途に要求される画像解像度に応じて、この寸法をこれらの図より小さくすることも大きくすることもできる。これらのトラックの長さは、用途に要求される画像領域の関数であり、20mmまたはそれ以上とすることができる。
【0054】
MDI二次パターンの選定は実施例に依存する。
【0055】
図3に、第1の好適な実施例の一次パターンを示し、このパターン中に、図2に示す二次パターンの変調によって画像を符号化する。変調されたディジタル画像(MDI)を形成する方法は、BINAGRAMの方法である。拡大部分30には、一次パターン中の左目部分の画像を示す。
【0056】
BINAGRAMでは、一次パターンは一般に、原画像からのものである。原画像が写真である例では、次にこの原画像をディザ処理して、一組の一次視覚特性のうちの1つを有する画像要素にする。この一次視覚特性は、実施例次第でグレースケール値または色相である。好適な実施例では、前記画像要素を対応する二次パターンと重ねた際に、各対における一方の画像要素が赤色トラックに対応し、他方の画像要素が青色トラックに対応するように、前記画像要素を対にする。そしてこれらの画像要素を変換する。代表的な変換では、各対における一方の画素は、この対の視覚特性の平均値をとり、他方の画素には相補的な視覚特性が割り当てられる。従って、各対における一方の画素は原画像からの情報を担うべく作用し、他方の画素はこの情報を隠す。
【0057】
一次パターンを形成する代わりの方法は、Adobe Photoshop(登録商標)のようなコンピュータグラフィックス・プログラムを使用して、入力画像(例えば顔写真)の陽画調及び陰画調のバーション(版)を共に生成するものである。そしてこれらの陽画調及び陰画調の画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、前記陽画調画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記陽画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陽画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、前記陰画調画像に、この陰画調画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記陰画調画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された陰画調画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記陰画調画像及び前記陽画調画像の両方を重ね合わせて、入力された顔写真画像の結果的な一次パターン・バージョンを得る。
【0058】
図4に、図3の一次パターンを図2の二次パターンに単純加算したものを示し、ここでブラック(黒色)画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分40を参照すれば最も良く見ることができる。
【0059】
図5に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVDトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分50で最も良くわかる。図6に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従って明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子は拡大部分60で最も良くわかる。
【0060】
図5及び図6に光学的に可変の効果が印刷技術によって生成される様子を示し、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループの回折格子から成るOVD微小構造(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い顔写真画像が陽画調から陰画調に切り換わるスイッチに相当する。
【0061】
バックグランドOVDキャンバスを用いて印刷画像を光学的に可視の形態に変換するこうした原理は、2チャンネルOVD画像の場合に拡張することができる。以下、こうしたプロセスの例について説明する。
【0062】
図7に、2チャンネル画像から成る一次パターン、即ち2つの画像を符号化する一次パターンを示す。この場合には、この一次パターンは、図1に示す二次パターンの変調形態であり、2つの別個の潜像を符号化する。画像の2面が重なる(オーバラップする)所の詳細を拡大部分70に示す。
【0063】
2チャンネル画像に対応する一次パターンは、Adobe Photoshopのようなコンピュータグラフィックス・プログラムを用いて提供することもできる。2つの入力画像は、次のことによって一次パターンに組み合わせることができる;
最初に、第1画像を二次スクリーンの「オン」画素でフィルタ処理し(即ち、前記二次スクリーン上の「オフ」画素の位置に対応するすべての画素を前記第1画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第1画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
2番目に、第2画像に、この第2画像を前記二次パターンの「オフ」画素でフィルタ処理することによる逆の手順を適用し(即ち、前記二次スクリーン上の「オン」画素の位置に対応するすべての画素を前記第2画像から除去し)、そして、結果的なフィルタ処理された前記第2画像を、前記コンピュータグラフィックス・プログラム内のディザ処理のオプションを用いることによってビットマップ・バージョンに変換し、
最後に、フィルタ処理しディザ処理したバージョンの前記第1画像及び前記第2画像の両方を重ね合わせて、前記2つの入力画像に対応する結果的な2チャンネル一次パターンを得る。
【0064】
図8に、図7と図1との加算を示し、ここでブラック画素は消去されることによって光学的に無効にされ、ダークグレー画素は保持された元の青色画素を示し、ライトグレー画素は保持された元の赤色画素を示し、この様子は拡大部分80を参照すれば最も良く見ることができる。
【0065】
図9に、1つの特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、赤色のOVD画素は「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、青色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分90に示す。
【0066】
図10に、他の特定範囲の画角において観測者に見える画像を示し、青色のトラックは「オン」状態であり、従ってより明確にするために白色で表わし、赤色の画素はこの角度では「オフ」状態であり、従って図では黒色に見え、この様子を拡大部分100に示す。
【0067】
図9及び図10は、2チャンネルの光学的に可変の効果は印刷技術によっても生成可能であることを確証するものであり、これは、バックグランド・キャンバスが、2グループの回折格子から成るOVD微小構造(即ち、二次パターン)で構成される場合である。これらの図に示すOVD効果は、画角の変化に伴い1つの陽画調顔写真から他の陽画調顔写真に切り換わるスイッチに相当する。
【0068】
図1〜10に示す例は、この新規の発明の2つの特定実施例を示すことを意図したものである。本発明の他の多くの実施例が可能であり、これらの応用の一般性は、本発明を、ID文書用、また銀行券、小切手、及び印刷、コンピュータ・スキャン、及びカラーコピー技術によって偽造される恐れのある他の金融取引文書の認証のための身元検証の領域に特に適したものとする。
【0069】
本発明の別な実施例は、上述した2チャンネルのメカニズムが、2チャンネルにおける画像用のバーコード・パターンを用いることによって、個別の方法でのデータ符号化の可能性をもたらす、ということを認識することによって実現することができる。その結果は回折バーコードの形になり、第1バーコード・パターンがレーザーによって第1画角において読取り可能であり、これと異なる第2バーコード・パターンが第2画角において読取り可能である。データのセキュリティ(安全性)及び完全性は、2つのバーコード成分が関与するソフトウェア相関プロセスによって保証される。データの書込みは、2つのバーコードを回折格子のバックグランド(背後)上に、2つの異なる溝周期の回折格子トラックのインタレース(織り交ぜ)の形にインタレースする(織り交ぜる)ことを含む印刷プロセスによって達成される。
【0070】
上述した概念は、2チャンネル画像の場合を含むように拡張することもでき、ここで1つのチャンネルの画像は、二次パターン微小構造を製造した時点で固定の一般的な画像である。そして第2チャンネルの画像は、コンピュータグラフィックス・プログラムを用いて、デバイスの使用時点で個性化可能な一次パターンを生成することによって構成される。この種の応用の例がパスポートの応用である。オーストラリア国のパスポートの場合には、前記一般的画像はオーストラリア国の紋章とすることができ、前記第2チャンネル画像はパスポート保有者の顔写真画像であり、前記箔デバイスはパスポートのデータページ中に内蔵させることができる。このデータページの画角が変化すると共に、認証デバイスによって生成される画像は、パスポート保有者の画像から前記紋章の画像に変化し、これにより、パスポート保有者がオーストラリア国の市民であることを確かに確証する。
【0071】
二次パターンが図2に示すものとすれば、一次パターンは下記のプロセスによって生成することができる:
原画像の陽画調バージョンをスライス(薄切り)または細分して多数のストリップまたはトラックにし、すべての奇数番目のトラックを除去し、そしてバイナリ(2進数)ディザまたはサンプリングの技法によって半透明バージョンの結果を生成し、そして結果的な陽画調画像のスライスされバイナリ・ディザ処理されたバージョンに、主題の陰画調画像に基づいて、スライスされバイナリ・ディザ処理された第2画像を重ね(オーバレイし)、この場合には、この陰画調画像のすべての偶数番目のトラックを除去して、これらの領域を、主題の陽画調画像の対応するバイナリ・ディザ処理されたトラックが占めることを可能にする。
【0072】
2チャンネルの場合には、一次パターンは下記のプロセスによって生成することができる:
第1原画像の陽画調バージョンをスライスまたは細分して多数のストリップまたはトラックにし、すべての奇数番目のトラックを除去し、そしてバイナリ・ディザまたはサンプリングの技法によって半透明バージョンの結果を生成し、そして結果的なこの第1画像のスライスされバイナリ・ディザ処理されたバージョンに、第2原画像に基づいて、スライスされバイナリ・ディザ処理された第2陽画調画像を重ねる。この第2原画像については、この第2画像のすべての偶数番目のトラックを除去して、これらの領域を、前記第1原画像の対応するバイナリ・ディザ処理されたトラックが占めることを可能にする。
【0073】
上述したBINAGRAM技術に付け加えれば、そのさらなる詳細は国際特許出願PCT/AU2004/00746、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、2004年7月4日出願に記載され、その開示は参考文献として本明細書に含める。適切な一次パターンを生成するために、他の多くの技術を用いることができる。
【0074】
【特許文献11】オーストラリア国暫定特許2002952220
【0075】
一次パターンは、”SAM”または”μ−SAM”として知られている技術によって生成することができ、この技術は、参考文献として本明細書に含める米国特許番号5,374,976、及びSybrand Spannenbergによる著書”Optical Document Security, Second Edition”(Rudolph L. van Renesse編集、ロンドンのArtech House発行、1998年)の第8章の169〜199ページに記載され、あるいは、PHASEGRAMとして知られている技術(オーストラリア国暫定特許、発明の名称”Method of Encoding a Latent Image”、オーストラリア国暫定特許番号2002952220(2003年10月24日))によって生成することができ、これについては、本願の出願人により国際特許出願が2004年7月7日に出願され、その開示は参考文献として本明細書に含める。
【0076】
この技術では、パターンの周期性を選択的に変化させることによって、画像を局所的に周期的なパターンに符号化している。透明基板上で元のパターン上に、あるいは元のパターンと重ねると、(重ね合わせの)位置整合の正確さ次第で、潜像、あるいは潜像の陰画の種々の陰影が観測者にとって可視になる。
【0077】
画像の周期性は、画像要素を位相シフト(移相)させて符号化した画像を生成することによって変化させられる。即ち、視覚特性の値(例えば色合いのグレースケール値)に応じて異なる変位を画像要素に与える。PHASEGRAMの実施例は一般に、N個の回折素子の幅で回折素子の種類が交互する複数列に配列された二次パターンを利用する。このことは、N+1個の視覚特性値を符号化することを可能にする。
【0078】
潜像(視覚可能になることを所望される画像)は、原画像を取得し、視覚特性の許容値の集合中の1つのみをとる画像要素に分割することによって形成される。従って潜像は、予備的な一次パターンに関連し、この一次パターンは、二次パターンの画像要素に対応する画像要素を有する。そしてこの一次パターンの画像要素を、各画像要素に関連する潜像要素の視覚特性の値との関係に応じて変位させて、この潜像を符号化する最終的な一次パターンを形成する。
【0079】
種々の異なる変位方式を用いることができる。その一例では、M個の陰影または色相が存在し、第1の陰影または色相に関連する画像要素は1つの画像要素分(例えば、回折素子の幅に相当する距離)だけ変位され、第2の陰影または色相に関連する画像要素は2つの画像要素分だけ変位され、等とし、M番目の陰影または色相に関連する画像要素はM個の画像要素分だけ変位される。
【0080】
二次パターンから一次パターンを生成するために使用可能な他の技術はTONAGRAMとして知られ、オーストラリア国暫定特許出願2004900187、発明の名称”Method of Concealing an Image”、2004年1月17日出願に記載され、参考文献として本明細書に含める。
【0081】
この技術では、MDI、例えばBINAGRAMまたはPHASEGRAMを公開画像、例えば顔写真と数学的に組み合わせて、これにより、この公開画像及び1つ上の隠蔽された潜像を共に含む一次パターンにする。(この一次パターンを)対応する二次パターンと重ねると、この潜像が現われる。同じ方法で、本願で説明した種類の回折構造から成る二次パターンを、印刷されたTONAGRAMの一次パターンと重ねて、これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDにすることができる。あるいはまた、二次パターンとして作用する空白キャンバスの回折構造を、TONAGRAMアルゴリズムにより選択した領域内で光学的に無効にすることができる。これにより、すべての観測角で見える公開画像を含み、かつ選択した観測角のみで見える1つ以上の潜像を含むOVDが生成される。
【0082】
2チャンネルの場合には、ここで二次パターンは図1に示すものとすれば、一次パターンは次のプロセスによって生成することができる:
第1原画像の陽画調バージョンを細分してチェッカーボードのパターンにし、このチェッカーボードの交互するセルの一方をすべて(例えばすべての「ブラック(黒色)」セルを)除去し、そしてバイナリ・ディザまたはサンプリングの技法によって残りの画像の半透明バージョンを生成し、そして結果的な第1陽画調画像の細分されバイナリ・ディザ処理されたバージョンに、第2の陽画調原画像に基づいて、チェッカーボードに細分されバイナリ・ディザ処理された第2画像を重ね、この第2画像については、細分されたチェッカーボードのセルの逆の方をすべて(例えばすべての「ホワイト(白色)」セルを)除去して、これらの領域を、前記主題の第1画像の対応するバイナリ・ディザ処理された(「ブラック」)セルが占めることを可能にする。
【0083】
さらなる代わりの2チャンネル技術は、独立しているが同一の2つ以上の潜像を符号化することを含むことができ、これらの潜像は少しオフセットした(離れた)2つの観測角で観測可能である。このオフセットは、人間の観測者が適切な画像表面からの距離で観測した際に、立体(ステレオ)効果によって観測者が三次元画像を知覚できるように選定する。
【0084】
従って、別な実施例では、2つ以上の同一画像を符号化するマスク(例えば一次パターン)を生成することができ、このマスクは、適切な二次パターン、例えば本明細書に開示する二次パターンと重ねた際に、これらの画像を互いにオフセットした(離れた)観測角で観測可能にする方法で、これらの画像を符号化する。
【0085】
種々の異なる技法を用いて、本発明の方法による認証デバイスを生産することができることは、当業者にとって明らかである。例えば、回折格子微小構造または「バックグランドOVD微小構造」は、電子ビーム・リソグラフィーまたはレーザー境界面製造技術のいずれかによって形成することができる。この微小構造は一般に、薄いアルミニウム箔上に形成される。
【0086】
そして一次パターンは、多数の異なる方法で、二次パターン、即ちバックグランド回折微小構造と組み合わせることができる。例えば、一次パターンを別な透明ポリマー基板上に印刷して、この基板を前記箔に重ねて付着させることができる。この透明基板は、前記バックグランド微小構造と適切に位置整合されて、これにより所定の観測角で潜像が見えるように重ねられる。
【0087】
あるいはまた、一次パターンをバックグランド微小構造の最上面に印刷することができる。例えば、画像を直接、箔の最上面に印刷する。あるいはまた、フォトレジスト層を大量生産された箔内に入れて照射して、適切な一次パターンを生成することができる。
【0088】
さらに他の実施例では、バックグランド微小構造の選択領域のレーザーまたは他のアブレーションを用いて、これらの領域を光学的に無効にすることができる。従って、これらの領域は非回折であるか、あるいは回折光の強度が大幅に低下する。
【0089】
一次パターンを提供して、潜像を符号化することが要求される位置でバックグランド回折微小構造を光学的に無効にする他の可能な技法が存在することは、当業者にとって明らかである。
【0090】
上述したすべてのMDI技術において、各トラックまたはストライプが1ミクロン以上の幅を有し、少なくとも1つのストリップまたはトラックの長さが1mm以上であることが一般に望ましい。
【0091】
チェッカーボードのパターンを用いる所では、各画像要素が1ミクロン以上のエッジ長を有することが望ましい。
【0092】
回折格子は既知のあらゆる技法により形成することができるが、各回折格子領域内で、格子溝の形状、間隔及び/または曲率または傾斜を変調または変化させることが一般に望ましい。
【0093】
各回折格子領域内の回折格子溝の変調を、これらの領域からの一次回折ビームの回折効率を最大化するように設計することも一般に望ましく、さらに、各回折格子領域内の回折格子溝の変調を、固定の空間頻度であるが、各領域を通して可変の溝曲率または溝角度の溝パターンで描くことも一般に望ましい。
【0094】
1グループの回折格子領域内の回折格子溝を、第2グループの回折格子領域内の回折格子溝に対して直角に配列することも好ましい。
【0095】
さらなる変形も当業者にとって明らかである。例えば、バックグランド微小構造は、一般的な性質で、回折認証デバイスによって認証される人物、物体またはデザインに特有ではない光学的に可変の効果を含むこともできる。
【0096】
デバイスの微小構造は、幅60ミクロン以下のサイズの極めて小規模な画像を含むこともでき、これらの画像は、微小構造の微視的な検査によるより高度な認証またはセキュリティを提供するために用いることができる。
【0097】
適切な回折格子微小構造を構成する方法についてさらに詳しいことは、米国特許US 5,825,547、US 6,088,161、US 5,428,479、欧州特許EP 330,738、EP 105099、及びEP 0 490 923を参照することによって得られ、これらは本明細書の発明の背景の部分で参照している。
【0098】
本発明の範囲を逸脱することなしに、本発明に種々の変形を加え得ることは、当業者にとって明らかである。これら及び他の変形は当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】バックグランドOVD微小構造または二次パターンの特定の構成を示す図である。
【図2】バックグランドOVD微小構造または二次パターンの他の構成を示す図である。
【図3】特定のID用途向けの特定の符号化データファイルに対応する一次パターンの例を示す図である。
【図4】図3の一次パターンを、図2に相当するバックグランドOVD微小構造(二次パターン)に加算した図である。
【図5】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図6】図4の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。
【図7】一次パターンの例を示す図である。
【図8】図7の一次パターンを、図1に相当するバックグランドOVD微小構造(二次パターン)に加算した図である。
【図9】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を特定の画角から観測した図である。
【図10】図8の一次及び二次パターンを重ねることによって生成した画像を他の特定の画角から観測した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する回折認証デバイスを形成する方法において、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンを提供するステップと;
前記一次パターンに対応する二次パターンを提供するステップであって、前記二次パターンは、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にするステップとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数の回折素子を有する回折格子微小構造によって提供され、
前記認証デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記回折格子微小構造の所定の回折素子による回折効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンを提供することを特徴とする回折認証デバイスの形成方法。
【請求項2】
前記一次パターンを前記二次パターン上に重ねるステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小構造の一部分を光学的に無効にして前記一次パターンを形成するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一次パターンを、バックグランド微小構造の最上面に印刷するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一次パターンを、箔の表面上に印刷するステップを具えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一次パターンを、前記微小構造上に重ねた感光層上に印刷するステップを具えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2種類の回折格子領域を規則的なパターンで提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種類の回折格子領域を、画素化された回折格子領域の形に配列するステップを具えていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2種類の回折格子領域を、トラック状の回折格子領域の形に配列するステップを具えていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
2つの異なる種類の複数の回折格子領域を矩形アレイの形に配列して、前記2つの異なる種類の回折格子領域が水平軸及び垂直軸の各方向に交互するステップを具えていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記回折格子微小構造を電子ビーム・リソグラフィーによって生成するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記回折格子微小構造をレーザービーム干渉によって生成するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記一次パターンを透明基板上に提供するステップと、前記二次パターンを、箔ベースの回折の光学的可変デバイス(OVD)の形で提供するステップと、前記一次パターンを前記OVDの二次パターンと位置合わせして適正な位置整合状態にし、これにより、光源による照射時に、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、複数の特定画角において異なる視覚値を有するものとして観測されるステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項14】
安全かつ汎用的な光学的可変効果を伴って符号化されたOVD箔を提供するステップと、特定の潜像に特有の画像情報で符号化された一次パターンを、前記OVD箔のフィルムを文書からはがすと前記潜像が消失する方法で重ねるステップとを具えていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記回折格子微小構造の、前記一次パターンに対応するOVD領域内の選択位置をアブレートするステップを具えていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記一次パターンを、変調ディジタル画像技術を用いて提供するステップを具えていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記技術を、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM(登録商標)、TONAGRAM(登録商標)、及びBINAGRAM(登録商標)のグループから選択することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
観測角に応じて変化する光学的に可変の画像を生成する回折デバイスにおいて、
複数の画像要素を有し、潜像を符号化する一次パターンと;
前記一次パターンに対応する二次パターンであって、前記一次パターンを復号化して、前記一次パターンと前記二次パターンとが少なくとも1つの位置整合状態にある際に前記潜像を観測可能にする二次パターンとを具え、前記二次パターンは、少なくとも2つの異なる種類の各々から成る複数の回折素子を有する回折格子微小構造によって提供され、
前記回折デバイスを光源によって照射し、これにより前記潜像を観測可能にする際に、前記一次パターンの所定の画像要素が、前記回折格子微小構造の所定の回折素子による回折効果を少なくとも1つの観測角において光学的に無効にすべく、前記一次パターンが提供されることを特徴とする回折デバイス。
【請求項19】
前記一次パターンが前記二次パターン上に重ねられることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項20】
前記一次パターンが、前記微小構造の一部分を光学的に無効にすることによって提供されることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項21】
前記一次パターンが、バックグランド微小構造の最上面に印刷されることによって提供されることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項22】
前記少なくとも2種類の回折格子領域が規則的なパターンを形成することを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項23】
前記規則的なパターンが、画素化されたパターンであることを特徴とする請求項22に記載の回折デバイス。
【請求項24】
前記規則的なパターンが、回折格子領域のトラック状のパターンであることを特徴とする請求項22に記載の回折デバイス。
【請求項25】
2つの異なる種類の複数の回折格子領域が矩形アレイの形に配列され、前記2つの異なる種類の回折格子領域が水平軸及び垂直軸の各方向に交互し、これによりチェッカーボードのパターンを形成することを特徴とする請求項23に記載の回折デバイス。
【請求項26】
2つの異なる種類の回折素子を具えていることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項27】
前記一次パターンが透明基板上に設けられ、前記二次パターンが、箔ベースの回折の光学的可変デバイス(OVD)の形で設けられ、前記一次パターンが前記OVDの二次パターンと適正な位置整合状態に位置合わせされ、これにより、光源による照射時に、前記一次パターン中に符号化された前記潜像の画像要素が、複数の特定画角において異なる視覚値を有するものとして観測されることを特徴とする請求項19に記載の回折デバイス。
【請求項28】
前記画像要素が透明及び不透明であることを特徴とする請求項27に記載の回折デバイス。
【請求項29】
前記画像要素が透明または有色であることを特徴とする請求項27に記載の回折デバイス。
【請求項30】
前記OVD箔が、安全かつ汎用的な光学的可変効果を生成すべく符号化され、重ねられる前記一次パターンが、特定の潜像に特有の画像情報を伴って符号化されることを特徴とする請求項27に記載の回折デバイス。
【請求項31】
前記回折格子微小構造の、前記一次パターンによって決まる選択位置がアブレートされることを特徴とする請求項20に記載の回折デバイス。
【請求項32】
前記二次パターンがOVD箔上に形成されることを特徴とする請求項21に記載の回折デバイス。
【請求項33】
前記一次パターンの情報が、前記OVD箔の最上面に印刷されることを特徴とする請求項32に記載の回折デバイス。
【請求項34】
前記OVD箔が、前記二次パターンを提供する金属化層上にフォトレジスト層を含み、これにより、前記一次パターンが、前記フォトレジスト層の選択的照射によって印刷可能であることを特徴とする請求項23に記載の回折デバイス。
【請求項35】
前記一次パターンが変調ディジタル画像を具えていることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項36】
前記変調ディジタル画像が、SAM、μ−SAM、PHASEGRAM、TONAGRAM、及びBINAGRAMのうちの1つであることを特徴とする請求項35に記載の回折デバイス。
【請求項37】
回折認証デバイスを構成することを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項38】
新案物を構成することを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項39】
請求項18に記載の回折デバイスを内蔵する文書または証券。
【請求項40】
少なくとも第1画角において第1画像が観測され、少なくとも第2画角において第2画像が観測されるように、前記一次パターン及び前記二次パターンが構成されていることを特徴とする請求項18に記載の回折デバイス。
【請求項41】
前記第1画像が人物の画像であることを特徴とする請求項40に記載の回折デバイス。
【請求項42】
前記第2画像がロゴ、紋章、等の画像であることを特徴とする請求項41に記載の回折デバイス。
【請求項43】
前記第2画像がデータを符号化することを特徴とする請求項41に記載の回折デバイス。
【請求項44】
前記第2画像がバーコードであることを特徴とする請求項43に記載の回折デバイス。
【請求項45】
前記第1画像及び前記第2画像が共に、データを符号化することを特徴とする請求項40に記載の回折デバイス。
【請求項46】
前記第1画像及び前記第2画像が共にバーコードであることを特徴とする請求項45に記載の回折デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−538266(P2007−538266A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517904(P2006−517904)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000916
【国際公開番号】WO2005/002872
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(598152079)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼイション (16)
【Fターム(参考)】