説明

回折光学素子及びそれを用いた光学系

【課題】不要回折光によるフレアの発生を極力抑制することを可能とした回折光学素子を提供する。
【解決手段】第1及び第2の材料により各々形成された回折格子が互いの格子面で接して、前記第1、第2の材料のd線における屈折率をnd1、nd2とし、アッベ数をνd1、νd2とし、g線をF線の部分分散比をθgF1、θgF2とし、互いに接している回折格子の格子厚をhとした時、1.45≦nd1≦1.60--(1)、30≦νd1≦50--(2)、0.35≦θgF1≦0.50--(3)、1.50≦nd2≦1.65--(4)、40≦νd2≦60--(5)、0.45≦θgF2≦0.65--(6)、nd2-nd1>0--(7)、νd2-νd1>0--(8)、θgF2-θgF1>0--(9)、h≧30(um)--(10)を全て満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子に関し、特に光学系や光学機器に用いられる回折光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硝材の組み合わせによりレンズ系の色収差を減じる方法に対して、レンズの表面やレンズ系の一部に回折作用を有する回折光学素子を設けることで、レンズ系の色収差を減じる方法が知られている。この回折光学素子を用いる方法は、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。また、回折光学素子は、その周期的構造の周期を適宜変化させることで、非球面レンズ的な効果を持たせることができるので、色収差以外の諸収差の低減にも効果がある。
【0003】
一般的に、回折光学素子は格子斜面と格子壁面から構成されるブレーズ構造より成っている。このようなブレーズ構造の回折光学素子は、特定の一つの次数(以下、「特定次数」又は「設計次数」とも言う)の回折光と特定の波長に対して高い効率で光を回折させることができる。この特定次数の回折効率を、可視波長帯域全域で十分高く得るための回折光学素子構成が知られている。
【0004】
具体的には、2つの回折格子を密着配置すると共に、各回折格子を構成する材料や回折格子の高さを適切に設定することで(以下、このような回折光学素子を「密着2層DOE」という)、所望の次数の回折光に対し、広い波長帯域で高い回折効率を実現している。また、複数の回折格子を積層配置すると共に、各回折格子を構成する材料や各回折格子の高さを適切に設定することで(以下、このような回折光学素子を「積層DOE」という)、所望の次数の回折光に対し、広い波長帯域で高い回折効率を実現している。なお、回折効率は全入射光束の光量に対する各次数の回折光の光量の割合で表される。
【0005】
このような回折光学素子を用いた光学系において、入射する光線の一部が格子壁面にて反射、屈折などを起こし、不要光(フレア)となって射出するため、光学系の結像性能を低下させる問題があった。それに対して、この格子壁面での不要光を抑制するようにした回折光学素子が知られている(特許文献1〜3)。
【0006】
例えば、特許文献1に開示された回折光学素子は、主光束入射角度(設計入射角度、撮影光入射角度)より斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束において、格子壁面の角度を最適化させることで、格子壁面で発生する不要光が像面に到達することを抑制している。
特許文献2、3に開示された回折光学素子は、格子壁面に不透明膜または吸収膜等の遮光手段を設けることによって、格子壁面に入射する光束を遮光することで、格子壁面で発生する不要光を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−292571号公報
【特許文献2】特開2003−240931号公報
【特許文献3】特開2004−126394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の回折光学素子は、格子斜面と格子壁面に入射する光束の振る舞いを分離して考え、格子斜面についてはブレーズ構造による回折現象、格子壁面については幾何光学現象として捉えていた。この格子斜面と格子壁面を分離して扱うことは困難であることが最近分かってきている。このため、従来の手法では、斜入射角度(画面外光入射角度)の光束に対する像面に到達する不要光の抑制と設計入射角度(撮影光入射角度)の光束の回折効率を両立することが困難であった。
【0009】
前記特許文献1に開示されている回折光学素子の不要光の低減手法は、格子壁面の角度を主光束入射角度(設計入射角度、撮影光入射角度)より斜入射角度(画面外光入射角度)側で最適化することで、格子壁面で発生する不要光が像面に到達するのを低減することである。しかしながら、この手法は、主光束入射角度と斜入射角度での光学性能上のバランスから、格子壁面の角度を完全に斜入射角度側にすることはできなく、像面に到達する不要光の低減が十分とは言い難かった。また型及び成形品を作製する上で、格子壁面の角度が加工しづらかったり、離型しづらくなることが懸念された。
【0010】
特許文献2、3に開示されている回折光学素子の不要光の低減手法は、回折光学素子の格子壁面部に塗料に代表される吸収膜を設け、格子壁面部に入射する光束を遮光することにより、不要光の発生を抑制している。しかしながら、不要光の発生原因の十分な開示はなく、また、吸収膜に関して透過、反射、吸収の程度についての具体的な詳細構成についての開示はないため、不要光の低減効果が不明確である。吸収膜はそれを構成している材料の消衰係数kが大きいほど吸収膜の膜厚を薄くすることができ、設計次数の回折効率の減少を抑えることができるが、同時に界面の反射率が増加して反射光が発生しフレアとなってしまう。逆に、消衰係数kが小さいほど反射率が減少して反射光が低減するが、吸収膜の膜厚を厚くしなければ入射光を吸収できなくなり、設計次数の回折効率が減少してしまう。このため、吸収膜の材料選択性が低く好ましくない。
【0011】
また、後述するように不要光として主に影響を及ぼす不要光は高屈折率媒質と低屈折率媒質の界面で発生する全反射に起因する不要光である。特に密着2層DOEのような密着された2つの材料の屈折率が小さい場合、この高屈折率媒質と低屈折率媒質の界面で発生する全反射に関して、特許文献2、3において想定されていない。このため、特許文献2、3は不要光を抑制する効果が不十分であった。
【0012】
次に、従来の回折光学素子の格子壁面の振る舞いについての課題に関し説明する。図2は回折光学素子の正面図及び側面図である。回折光学素子2は平板又はレンズより成る基板2、3の面に回折格子部10を設けて形成されている。そして、回折格子部10が形成されている基板2、3の面は、曲面となっている。回折格子部10は光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状からなり、レンズ作用を有している。図3は図2の回折光学素子1を図中A−A′断面で切断した断面形状の一部の拡大図である。格子形状を分かりやすくするために、図3は格子深さ方向にかなりデフォルメされた図となっている。また、格子数も実際よりは少なく描かれている。図2、図3において、回折光学素子1の回折格子部10は、第1の回折格子11と第2の回折格子12とが密着した構成(密着2層DOE)となっている。各回折格子11、12は、各々格子斜面11a、12aと格子壁面11b、12bから構成される同心円状のブレーズ構造の回折格子からなっている。光軸Oから外周部にいくに従って、格子ピッチを徐々に変化させることで、レンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を有するようにしている。
【0013】
また、各回折格子11、12は格子斜面11a、12aおよび格子壁面11b、12bは互いに隙間なく接しており、第1及び第2の回折格子11、12は、全体で1つの回折光学素子10として作用する。また、ブレーズ構造にすることで、回折光学素子1に入射した入射光は、回折格子部10で回折せずに透過する0次回折方向に対し、特定の回折次数(図では1次)方向に集中して回折する。また、図3中の矢印a、b、cは、ある回折格子に入射する光線を表しており、図中の矢印aが格子先端部の包絡面(図中点線)に対する面法線方向を表しており、それを0degとする。これに対して、反時計周りの角度(図中θ(+))を正としたときの光線bを表し、時計周りの角度(図中θ(−))を負としたときの光線cを各々表している。尚、これらの関係は、光軸に対して反対側(図3中不表示で、図3中の光軸Oより下の部分)では、対称となる(時計周りが正で光線b、反時計周りが負で光線cとなる。)。
【0014】
今後の説明をわかりやすくするために、図1に示すように、基板2、3の回折格子部10が形成される面を平面とする。このとき、回折格子部10の格子先端部を連ねた包絡面は光軸Oに垂直な平面となる。さらに、前述の格子先端部での包絡面の面法線は、全て光軸Oと平行な方向になる。また、図1中の矢印a、b、cは、前記図3と同様に、ある回折格子に入射する光線を表しており、図中の矢印aが格子先端部の包絡面(図中点線)に対する法線方向(光軸Oと平行)を表しており、それを0degとする。これに対して、反時計周りの角度(図中θ(+))を正としたときの光線bを表し、時計周りの角度(図中θ(−))を負としたときの光線cを各々表している。尚、これらの関係は、光軸に対して反対側(図1中不表示で、図1中の光軸Oより下の部分)では、対称となる(時計周りが正で光線b、反時計周りが負で光線cとなる。)。また図1中のPは回折格子の格子ピッチを、hは回折格子の格子厚を表している。
【0015】
従来の回折光学素子は一般的にスカラ回折理論を用いて回折効率を計算し、設計評価を行っている。しかしながら、それは回折格子の格子斜面による回折現象の振る舞いを記述しているのみであり、回折格子の格子壁面の振る舞いについては考慮されていない。実際の回折光学素子には格子斜面のみではなく格子壁面も設けられているため、壁面部も考慮する必要がある。回折光学素子の壁面部も考慮して計算できる手法として、厳密電磁場計算が挙げられる。厳密電磁場計算はMaxwell方程式を数値的に解くことにより、任意形状の構造物に対する各次数の透過回折光、反射回折光の回折効率を厳密に計算することができる。従来、厳密電磁場計算はスカラー理論の精度が悪くなる格子ピッチが波長と比べて小さい場合によく用いられているが、格子ピッチが波長と比べて十分大きい場合に対しても厳密な回折効率を求めることが可能である。また、任意形状に対して計算可能であるため、回折格子のスカラ回折理論計算では考慮されていなかった格子壁面の振る舞いを考慮した計算が可能である。我々は厳密電磁場計算のうち厳密結合波解析(以下、RCWA:Regorous Coupled Wave Analysis)を用いて回折光学素子の計算を行った。RCWA計算を用いることによって、格子壁面による振る舞いが回折次数に換算され、高次の回折光として計算することができる。尚、RCWA計算においての計算パラメータである計算次数は、不要回折光が無視できるほど十分に収束する次数以上とし、レベル数(回折格子分割段数)はレベル数に応じた回折光が計算誤差として発生してしまうため、計算次数以上としている。
【0016】
尚、本発明の回折光学素子の具体的な構成は、前記図1のような密着2層DOEにおいて、回折格子11を形成する格子形成材料に微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂、回折格子12を形成する格子形成材料に格子形成材料に微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂を用いている。
【0017】
より具体的に説明するために、従来例として次の回折光学素子を例に挙げ説明する。第1の回折格子11の材料として微粒子を混合させた樹脂(nd=1.514、νd=15.4、θgF=0.386、n550=1.521)、第2の回折格子12の材料として微粒子を混合させた樹脂(nd=1.583、νd=45.8、θgF=0.572、n550=1.586)を用い、格子厚hは8.45μm、設計次数は+1次とする。尚、前記n550とは波長550nmにおける各材料の屈折率を表している。
【0018】
図18に、この回折光学素子の設計入射角度である入射角度0度(図1、3のa)、格子ピッチP=400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示す。図18(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図18(b)は図18(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。回折角は図1、3の下向きを負の方向としている。図18(a)から設計次数である+1次回折光に回折効率がおよそ集中していることがわかるが、回折効率は99.66%(回折次数+1次、回折角-0.20度)で100%になっていない。残りの光は不要光となる。この不要光は図25のように入射光束のうち、格子壁面付近に入射する成分a’が格子壁面において高屈折率材料側に回り込む回折現象によると考えられる。しかし、この設計入射角度(撮影光入射角度)において、日中の太陽等の高輝度光源を直接撮影することは稀であるため、この不要光はほとんど影響せず、結果として問題とはならない。
【0019】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の正側(θ(+))に入射する光束(図1、3のb)を想定して、入射角度+10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図19に示す。図19(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図19(b)は図19(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図19(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は99.29%(回折次数+1次、回折角+9.39度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図19(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略−10度方向、略+17度方向にも小さなピークを持っており、この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の透過光の射出方向+9.39度と反射光の射出方向−10度に略等しいことがわかる。また、格子壁面に対しては低屈折率材料側から高屈折率材料側に+80度で入射するため、透過光の透過率は91%、反射光の反射光は9%であり、略+17度方向のピークが大きく、略−10度方向のピークが小さいことと対応している。また、この不要光はピークから高角度範囲に広がっており、図26に示すように入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分b’が格子壁面において透過光と反射光に別れて伝播しており、さらに各ピークを中心に広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近まで広がってなく、回折効率の数値も極小のため、画面外光+10度入射の不要光が像面に到達し像性能を低下させる影響は小さいことを示している。
【0020】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の負側(θ(-))に入射する光束(図1、3のc)を想定して、入射角度-10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図20に示す。図20(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図20(b)は図20(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図20(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は99.24%(回折次数+1次、回折角−9.79度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図20(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略+10度方向にピークを持っており、この伝播方向は格子面で+1次光に回折した後、格子壁面に入射する画面外入射角度−9.79度光束の成分が全反射にして伝播する射出方向+9.79度方向と略等しいことがわかる。格子壁面に対しては高屈折率材料側から低屈折率材料側に臨界角74.2度以上の+80.4度で入射するため全反射が発生している。また、この不要光は略+10度方向のピークから高角度範囲に広がっており、図27に示すように入射光束のうち格子面で回折した後、格子壁面付近に入射する成分c’が格子壁面において全反射して+10度方向に伝播しており、さらに全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近(図27のc’’)まで広がっている。回折角0度(図27のc’’)は設計入射角0度(図1、3のa)による+1次回折光の回折角−0.20度(図2の+1次光)にほぼ等しい。このため、画面外光−10度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光が像面に到達することを示している。なお、回折光学素子より像面側に配置された光学系によって、画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度が異なってくる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになる。
【0021】
図21から図24に、画面外入射角度(θ)が+15度、−15度、+20度、−20度の結果を、前記図18から図20の画面外入射角度(θ)が0度、+10度、−10度と同様に示した。ここでは、詳細の説明は割愛するが、基本的に+15度、+20度の結果は前記+10度の結果と、−15度、−20度の結果は前記−10度の結果と同様に説明できる。
【0022】
また、ここでの不要光の透過光は幾何光学的に計算される透過光の射出方向をピークに持ち、射出角に広がりをもって伝播する光束領域としている。また、ここでの不要光の反射光は幾何光学的に計算される反射光の射出方向をピークに持ち、射出角に広がりをもって伝播する光束領域としている。
【0023】
従来の手法では格子壁面に入射する光束を幾何光学現象として扱っているが、その場合は格子壁面に入射する光はスネルの法則に従って特定の方向にのみ射出し伝播することになる。しかしながら、格子斜面と格子壁面を同時に考慮して厳密電磁場計算を行うと、格子壁面に入射して射出する光はスネルの法則による射出方向を略一致するが、完全にはスネルの法則に従わず、射出光が広がりをもって射出することがわかった。
【0024】
なお、ここでは格子ピッチ400μmの回折効率を対象としている。さらに格子ピッチの広い輪帯においては壁面の寄与が小さくなるため、設計次数の回折効率は高く、不要光の回折効率は低くなる。また、図示してはいないが、この不要光の伝播方向については格子ピッチに依存せず、伝播方向は同じである。このため、ひとつの基準として格子ピッチ400μmの回折効率を示している。
【0025】
次に、実際の光学系へ、上記回折光学素子を適用した場合の画面外光が入射した際の不要光について説明する。図28は回折光学素子を用いた望遠タイプの撮影光学系でf=392.0mm、Fno=4.12、半画角3.16度であり、第2面に回折面が設けられている。図29は図28の光学系における回折光学素子の不要光の模式図、図30に回折光学素子1を切断した断面形状の拡大図を示す。格子形状を分かりやすくするために、図30は格子厚方向にかなりデフォルメされた図となっている。また、格子数も実際よりは少なく描かれている。図29、図30において、光軸Oに対して入射角ωで入射した画面外光束B、B’は、第1の回折光学素子11の基板2を通過後、それぞれ光軸Oから図の上方向に数えてm番目、図の下方向に数えてm番目の回折格子であるm格子、m’格子に入射する(図29で光軸に対してωで入射した光線は、図30ではm、m’格子に入射するθに当たる。)。画面外光束B、B’のm格子、m’格子に対しての入射角度は主光線方向に対して角度θi、θi’である。また、格子壁面1b、1b’方向は主光線方向と等しい場合としている。
【0026】
ここでは画面外光束B、B’の入射角は略-10度以上(光軸方向に対する入射角ωは-13.16度以上)を想定する。この入射角度より小さい角度ではレンズ表面や結像面反射によるゴーストやレンズ内部、表面微小凹凸による散乱が多いため回折光学素子の不要光は比較的目立たない。また、特に本発明が対象としている望遠レンズ系では、このような低角度(つまり高輝度光源を画面内角度に近づけた状態)で撮影することは稀なので、本発明ではこの範囲の角度における性能の比重は落としている。一方、この入射角度より大きい角度範囲では、レンズ面のコートによる反射やレンズ鏡筒によるゴーストに、回折光学素子の不要光によるフレアが重なってしまうため、改善の必要が生じてくる。このため、本発明はこの入射角度(±10度)以上での回折光学素子の不要光によるフレアの改善を主目的にしている。
【0027】
m格子は、図30中の下から上に回折格子11の格子厚が増加する(回折格子12の格子厚が減少する)格子形状で、入射した画面外入射光束Bは下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θiは略-10、-15、-20度となる。このm格子と画面外入射光束Bの関係は図27の関係に相当する。このため、格子壁面1bで全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播することになる。この不要光の広がりが図27のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角-0.20度付近まで広がっている。このため、画面外光−10度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光(図29のBm)が結像面41に到達することを示している。図20の回折角-0.20度付近の回折効率は図20のRCWA計算結果から、回折次数−188(回折角-0.20度)の回折効率が0.00068%くらいである。この回折効率の数値は低い値であるが、日中の太陽などの高輝度光源が撮影時に画面外にあった場合には影響は無視できなくなる。画面外光-10度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のBm-、不要光のピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光-10度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のBm+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子より像面側の光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のBm-〜Bm〜Bm+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のBm)は像面に到達するため、結像性能の低下を招くことになる。
【0028】
m’格子は図30中の下から上に回折格子11の格子厚が減少する(回折格子12の格子厚が増加する)格子形状で、入射した画面外入射光束B’は下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θi’は略+10度となる。このm’格子と画面外入射光束B’の関係は図27の上下を逆にした場合で、図26に相当する。このため、格子壁面1b’で透過光射出方向中心と反射光射出方向中心に不要光が広がって伝播し、透過光射出方向の不要光が大幅に大きいことになる。この不要光の広がりが図19のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角0度付近まで広がっていない。このため、画面外光+10度入射の不要光のうち、回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)が結像面41に到達するが、回折効率の数値は極小である。より具体的な数値は図19のRCWA計算結果から、回折次数+196(回折角+0.19度)の回折効率が0.00014%である。この回折効率の数値は、日中の太陽などの高輝度光源があった場合においても先程の画面外入射角度+10度に比べて影響は小さい。画面外光+10度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のB’m−、+1次回折光および不要光ピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光+10度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のB’m+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子より像面側に配置された光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のB’m−〜B’m〜B ’m+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のB’m)は像面に到達する。m’格子では回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)の広がりが小さく、回折効率の値は極小のため影響は小さい。
【0029】
以上のように、回折光学素子を適用した光学系において、画面外入射角略10度の光束が入射した場合、図29、図30に示すm格子による回折角0度付近に射出する不要光が大きく、m’格子による回折角0度付近に射出する不要光が小さい。そのため、結像性能の低下に対しては、m格子の寄与が大きいことになる。実際に回折光学素子および光学系を作成し、実写したところ、像面に不要光が到達し、像性能の低下が確認できた。
【0030】
また図21から図24の画面外入射角度±15、±20度に関しても、同様にして求めることができ、像面に到達する回折次数の回折効率は次の通りである。-15度では回折効率が6.50×10-4%、-20度で1.33×10-4%であり、+15度で1.07×10-5%、+20度で7.25×10-6%である。
【0031】
従来の手法では格子壁面に入射する光束を幾何光学現象として扱っているが、その場合は格子壁面に入射する光はスネルの法則に従って特定の方向にのみ射出し伝播することになる。図29、図30のように、光学系に回折光学素子を適用し、画面外入射角略10から20度の光束が入射した場合、m格子では全反射のみ、m’格子では91%の透過光および9%の反射光が発生する。しかし、その場合はいずれも絞り40で遮光されるため、結像面41へ到達しないことになる。以上のように、従来の手法では不要光の抑制に対しては不十分であり、抑制すべき不要光が十分考慮されていなかったといえる。
【0032】
そこで、本発明の目的は、上記問題を鑑みて、主光束入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束において発生する不要光を低減しつつ、設計入射角度(撮影光入射角度)で入射する光束の回折効率の劣化を低減することである。それにより、不要回折光によるフレアの発生を極力抑制することを可能とした回折光学素子およびそれを有する光学系を提供することである。また、その際その実施形態を作成する過程及び形状が比較的簡易であることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するために、本発明は、第1及び第2の材料により各々形成された回折格子が互いの格子面で接して形状をなしている回折光学素子であって、前記第1の材料のd線における屈折率をnd1、アッベ数をνd1、g線をF線の部分分散比をθgF1とし、前記第2の材料のd線における屈折率をnd2、アッベ数をνd2、g線をF線の部分分散比をθgF2とし、互いに接する回折格子の格子厚をhとした時、

1.45 ≦ nd1 ≦ 1.60 -------------- (1)
30 ≦ νd1 ≦ 50 -------------- (2)
0.35 ≦ θgF1 ≦ 0.50 -------------- (3)
1.50 ≦ nd2 ≦ 1.65 -------------- (4)
40 ≦ νd2 ≦ 60 -------------- (5)
0.45 ≦ θgF2 ≦ 0.65 -------------- (6)
nd2 - nd1 > 0 -------------- (7)
νd2 - νd1 > 0 -------------- (8)
θgF2 - θgF1 > 0 -------------- (9)
h ≧ 30 (um) -------------- (10)

上記の各条件式を全て満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、主光束入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)で入射する光束において発生する不要光を低減しつつ、設計入射角度(撮影光入射角度)で入射する光束の回折効率の劣化を低減することができる。それにより、不要回折光によるフレアの発生を極力抑制することを可能とした回折光学素子およびそれを有する光学系を提供することができる。また、その際基本的は作成法及び形状は従来と同じなので、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】回折光学素子の素子構造の模式図
【図2】回折光学素子の要部概略図
【図3】回折光学素子の素子構造の断面拡大図
【図4】実施例1の回折光学素子の設計入射光束に対する回折効率のグラフ
【図5】実施例1の回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する回折効率のグラフ
【図6】実施例1の回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する回折効率のグラフ
【図7】実施例1の回折光学素子の画面外入射+15度光束に対する回折効率のグラフ
【図8】実施例1の回折光学素子の画面外入射−15度光束に対する回折効率のグラフ
【図9】実施例1の回折光学素子の画面外入射+20度光束に対する回折効率のグラフ
【図10】実施例1の回折光学素子の画面外入射−20度光束に対する回折効率のグラフ
【図11】実施例2の回折光学素子の設計入射光束に対する回折効率のグラフ
【図12】実施例2の回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する回折効率のグラフ
【図13】実施例2の回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する回折効率のグラフ
【図14】実施例2の回折光学素子の画面外入射+15度光束に対する回折効率のグラフ
【図15】実施例2の回折光学素子の画面外入射−15度光束に対する回折効率のグラフ
【図16】実施例2の回折光学素子の画面外入射+20度光束に対する回折効率のグラフ
【図17】実施例2の回折光学素子の画面外入射−20度光束に対する回折効率のグラフ
【図18】従来実施例の回折光学素子の設計入射光束に対する回折効率のグラフ
【図19】従来実施例の回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する回折効率のグラフ
【図20】従来実施例の回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する回折効率のグラフ
【図21】従来実施例の回折光学素子の画面外入射+15度光束に対する回折効率のグラフ
【図22】従来実施例の回折光学素子の画面外入射−15度光束に対する回折効率のグラフ
【図23】従来実施例の回折光学素子の画面外入射+20度光束に対する回折効率のグラフ
【図24】従来実施例の回折光学素子の画面外入射−20度光束に対する回折効率のグラフ
【図25】回折光学素子の設計入射光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図
【図26】回折光学素子の画面外入射+10度光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図
【図27】回折光学素子の画面外入射−10度光束に対する不要光の伝播の様子を示す模式図
【図28】回折光学素子を有する光学系の要部レンズ断面図
【図29】回折光学素子を有する光学系における不要光の光線の概念図
【図30】回折光学素子の素子構造と画面外入射光束の関係を示す模式図
【図31】実施例1、2の回折光学素子を構成する材料の屈折率特性(nd-νd特性)を示すグラフ
【図32】実施例1、2の回折光学素子を構成する材料の屈折率特性(θgF-νd特性)を示すグラフ
【図33】実施例1、2の回折光学素子を構成する材料の屈折率特性(n−λ特性)を示すグラフ
【図34】実施例1の回折光学素子の設計次数及び設計次数±1次での回折効率特性を示すグラフ
【図35】実施例2の回折光学素子の設計次数及び設計次数±1次での回折効率特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
以下、図1〜3、図4〜10、図25〜30を参照して、本発明の第1の実施例による回折光学素子について説明する。
【0038】
図2は実施例1の回折光学素子の正面図及び側面図である。回折光学素子1は平板又はレンズより成る基板2、3の面に回折格子部10を設けて形成されている。そして、本実施例では、回折格子部10が形成されている基板2、3の面は曲面となっているが、これに限るものではない(図1のように平面であっても良い。)。回折格子部10は光軸Oを中心とした同心円状の回折格子形状からなり、レンズ作用を有している。図1、3、30は図2の回折光学素子1を図中A−A′断面で切断した断面形状の一部の拡大図である。格子形状を分かりやすくするために、各図とも格子深さ方向にかなりデフォルメされた図となっている。また、格子数も実際よりは少なく描かれている。図1、3、30において、回折光学素子1の回折格子部10は、第1の回折格子11と第2の回折格子12とが密着した構成となっている。各回折格子11、12はそれぞれ格子斜面11a、12aと格子壁面11b、12bから構成される同心円状のブレーズ構造の回折格子からなり、光軸Oから外周部にいくに従って格子ピッチを徐々に変化させることで、レンズ作用(光の収斂作用や発散作用)を有するようにしている。また、各回折格子11、12は格子斜面11a、12aおよび格子壁面11b、12bは互いに隙間なく接しており、第1及び第2の回折格子11、12は、全体で1つの回折光学素子10として作用する。また、ブレーズ構造にすることで、回折光学素子1に入射した入射光は、回折格子部10で回折せずに透過する0次回折方向に対し、特定の回折次数(図では+1次)方向に集中して回折する。
【0039】
また、本実施例の回折光学素子の使用波長領域は可視域である。このため、可視領域全体で設計次数の回折光の回折効率が高くなるように、第1の回折格子11及び第2の回折格子12を構成する材料及び格子厚を選択している。すなわち、複数の回折格子(回折格子11、12)を通過する光の最大光路長差(回折部の山と谷の光学光路長差の最大値)が使用波長域内で、その波長の整数倍付近となるよう、各回折格子の材料及び格子厚が定められている。このように回折格子の材料、形状を適切に設定することによって、使用波長全域で高い回折効率が得られる。
【0040】
なお、一般的に、回折格子の格子厚は、格子周期方向に垂直な方向(面法線方向)の格子先端と格子溝の高さで定義される。また、格子壁面が面法線方向からシフトしているときや格子先端が変形しているとき等の場合は、格子面の延長線と面法線との交点との距離で定義される。
【0041】
ここで、本発明に使用した第1の回折格子11及び第2の回折格子12の材料範囲(請求項1における条件式(1)〜(10))について説明する。まず、各条件式の関係をイメージし易くするため、図31、32を用いて説明する。図31はndとνdの関係を、図32はθgFとνdの関係を各々示している。これらの図において、縦軸は各々nd、θgFを示し、横軸は全てνdを示す。そして、図31及び図32に、本発明で使用した各材料の値と条件式(1)〜(6)の範囲をプロットしてある。回折光学素子の具体的な構成は、第1の回折格子11を形成する格子形成材料に、微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂(nd=1.539、νd=34.67、θgF=0.490、n550=1.542)を使用している。一方第2の回折格子12を形成する格子形成材料に、同じく微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂(nd=1.554、νd=49.0、θgF=0.562、n550=1.556)を用いている。格子厚hは40μm、設計次数は+1次とする。
【0042】
これらの各数値は、前記条件式(1)〜(10)を全て満足している。下記に、本実施例1の各値を併記して各条件式を示す。
1.45 ≦ (nd1 = 1.539) ≦ 1.60 -------------- (1)
30 ≦ (νd1 = 34.67) ≦ 50 -------------- (2)
0.35 ≦ (θgF1 = 0.490) ≦ 0.50 -------------- (3)
1.50 ≦ (nd2 = 1.554) ≦ 1.65 -------------- (4)
40 ≦ (νd2 = 49.0) ≦ 60 -------------- (5)
0.45 ≦ (θgF2 = 0.562) ≦ 0.65 -------------- (6)
(nd2 - nd1 = 0.015) > 0 -------------- (7)
(νd2 - νd1 = 14.3) > 0 -------------- (8)
(θgF2 - θgF1 = 0.072) > 0 -------------- (9)
(h = 40) ≧ 30 (um) -------------- (10)
上記各条件式(1)から(10)について、前記図31、32を用いて説明する。上記各条件式は、第1、第2の回折格子に使用する材料1、2の材料範囲をnd-νd、θgF-νdの切り口で規定したものである。図31、32をみれば分かるように、実施例1、2とも材料2に関しては、従来の一般的な硝材の特性とあまり変わらず、材料1に関しては、従来の一般的な硝材の特性とは異なる材料特性を有していることが分かる。この材料1の特性について説明する前に、本実施例のような密着2層構造を持つ回折光学素子の回折効率について説明する。
【0043】
その原理は、基本的には単層型DOEの原理と同じであり、全層を通して1つの回折光学素子として作用させることを考える。各層を構成する材料の境界に形成された回折格子の山と谷での光学光路長差を求め、この光学光路長差を全回折格子にわたって加算する。そして、この加算した光学光路長差が、波長の整数倍になるように格子形状の寸法を決定する。
【0044】
したがって、図1に示した回折光学素子10において、設計波長がλ0の場合に、m次回折光の回折効率が最大になる条件は次のようになる。
±(n01-n02)×h = m×λ0 -------------- (13)
ここで、n01は第1の回折格子11を形成する材料の波長λ0の光に対する屈折率であり、n02は第2の回折格子12を形成する材料の波長λ0の光に対する屈折率である。また、hは回折格子11、12の共通の格子厚である。図1中の0次回折光から斜め下向きに回折する光の回折次数を正の回折次数とし、0次回折光に対して斜め上向きに回折する光の回折次数を負の回折次数とする。この場合、(13)式での加減の符号は次のようになる。図中の上から下に格子厚が増加する格子形状を持つ回折格子の場合は正となり、逆に上から下に格子厚が減少する格子形状を持つ回折格子の場合は負となる。図1に示したような格子形状は後者にあたる。
【0045】
図1に示す構成において、設計次数λ0以外の波長λでの回折効率η(λ)は次式で表すことができる。
η(λ) = sinc2 (π×[ m - {-(n1(λ)-n2(λ))×h/λ}])
= sinc2 (π×(m-φ(λ)/λ)) -------------- (14)
φ(λ)= -(n1(λ)-n2(λ))×h -------------- (15)
ここで、mは回折次数、n1(λ)は第1の回折格子11を形成する材料の波長λでの屈折率、n2(λ)は第2の回折格子12を形成する材料の波長λでの屈折率である。また、hは第1及び第2の回折格子11、12の共通の格子厚である。また、sinc2(x)={sin(x)/x}2で表される関数である。
【0046】
次に、本実施例の回折光学素子10において、高い回折効率を得るための条件について説明する。使用波長領域の全域にわたって高い回折効率を得るためには、(14)式で表される値η(λ)が全ての使用波長に対して、1に近づけばよい。言い換えれば、設計次数mでの回折効率を高めるには、上記(14)式中のφ(λ) /λがmに近づけばよい。例えば、設計次数mを1次とした場合、φ(λ)/λが1に近づけばよい。さらに、格子形状から得られる光学光路長差φ(λ)は、上記関係から波長λに比例して線形に変化する、すなわち(15)式の右辺の項が線形性を有することが必要となる。つまり、第1の回折格子11を形成する材料の波長による屈折率の変化に対する第2の回折格子12を形成する材料の波長による屈折率の変化が、使用波長領域全域で一定の比率であることが必要である。
【0047】
この関係を本実施例に当てはめて考えると、図33に示すような関係になる。図33は、横軸が波長(nm)、縦軸が屈折率となっており、実施例1、2の第1、2格子材料である材料1、2の分散特性を示している。図33において、実施例1の材料1を◇で、材料2を◆で、また材料2を固定し、垂直入射、格子厚40μmのときの可視域全域で回折効率100%(前記(14)、(15)より算出)となる材料1の仮想特性を×で示してある。図33を見れば分かるように、本実施例の材料1及び材料2の屈折率特性グラフはその傾きが異なっているように見えるが、波長の変化に対する屈折率の変化はほぼ一定である。また、前記(14)、(15)式より算出した可視域全域で回折効率100%となる仮想材料1の特性と本発明の材料1の特性がほぼ一致していることから、本発明が高い性能を表していることが分かる。因みに、その際のスカラ計算での1次及び0次、2次の回折効率の計算結果を図34に参考で示した。設計次数である1次光の回折効率は、可視域全域で約99.5%以上、設計次数±1である0、2次の不要回折次数光の回折効率は約0.1%以下とかなり抑制されている。
【0048】
この時、スカラ計算でのm次(ここでは設計次数である+1次)のF線、d線、C線の回折効率がほぼ100%近くであることを表した条件式(11)も満足している。
0.92 ≦ ({m(λF)+m(λd)+m(λC)} / 3 = 0.998) ≦ 1.08 -------------- (11)
続いて、本発明の回折光学素子の素子構成および不要光について説明する。
【0049】
図4に、この回折光学素子の設計入射角度である入射角度0度(図1、3のa)、格子ピッチP=400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示す。図4(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図4(b)は図4(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。回折角は図1、3の下向きを負の方向としている。図4(a)から設計次数である+1次回折光に回折効率がおよそ集中していることがわかるが、回折効率は99.3%(回折次数+1次、回折角-0.20度)で100%になっていない。残りの光は不要光となって、図4(b)のように特定角度方向(+5deg付近)になだらかなピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は図25のように入射光束のうち、格子壁面付近に入射する成分a’が格子壁面において高屈折率材料側に回り込む回折現象によると考えられる。しかし、この設計入射角度(撮影光入射角度)において、日中の太陽等の高輝度光源を直接撮影することは稀であるため、この不要光はほとんど影響せず、結果として問題とはならない。
【0050】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の正側(θ(+))に入射する光束(図1、3のb)を想定して、入射角度+10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図5に示す。図5(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図5(b)は図5(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図19(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は96.4%(回折次数+1次、回折角+9.88度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図5(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略−10度方向、略+17度方向にも小さなピークを持っており、この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の透過光の射出方向+9.5度と反射光の射出方向−10度に略等しいことがわかる。また、格子壁面に対しては低屈折率材料側から高屈折率材料側に+80度で入射するため、透過光の透過率は91%、反射光の反射光は9%であり、略+17度方向のピークが大きく、略−10度方向のピークが小さいことと対応している。また、この不要光はピークから高角度範囲に広がっており、図26に示すように入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分b’が格子壁面において透過光と反射光に別れて伝播しており、さらに各ピークを中心に広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近まで広がってなく、回折効率の数値も極小のため、画面外光+10度入射の不要光が像面に到達し像性能を低下させる影響は小さいことを示している。上記結果より、画面外光+10度入射では、従来例の図19(b)よりも改善していることが分かる。
【0051】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の負側(θ(-))に入射する光束(図1、3のc)を想定して、入射角度-10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図6に示す。図6(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図6(b)は図6(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図6(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は96.40%(回折次数+1次、回折角−10.30度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図6(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略+10度方向にピークを持っており、この伝播方向は格子面で+1次光に回折した後、格子壁面に入射する画面外入射角度−10.30度光束の成分が全反射にして伝播する射出方向+10.30度方向と略等しいことがわかる。格子壁面に対しては高屈折率材料側から低屈折率材料側に臨界角74.2度以上の+80.4度で入射するため全反射が発生している。また、この不要光は略+10度方向のピークから高角度範囲に広がっており、図27に示すように入射光束のうち格子面で回折した後、格子壁面付近に入射する成分c’が格子壁面において全反射して+10度方向に伝播しており、さらに全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近(図27のc’’)まで広がっている。回折角0度(図27のc’’)は設計入射角0度(図1、3のa)による+1次回折光の回折角−0.20度(図2の+1次光)にほぼ等しい。このため、画面外光−10度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光が像面に到達することを示している。なお、回折光学素子より像面側に配置された光学系によって、画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度が異なってくる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになる。
【0052】
図7から図10に、画面外入射角度(θ)が+15度、−15度、+20度、−20度の結果を、前記図4から図6の画面外入射角度(θ)が0度、+10度、−10度と同様に示した。ここでは、詳細の説明は割愛するが、基本的に+15度、+20度の結果は前記+10度の結果と、−15度、−20度の結果は前記−10度の結果と同様に説明できる。
【0053】
次に、実際の光学系へ、上記回折光学素子を適用した場合の画面外光が入射した際の不要光について説明する。図28は回折光学素子を用いた望遠タイプの撮影光学系でf=392.0mm、Fno=4.12、半画角3.16度であり、第2面に回折面が設けられている。図29は図28の光学系における回折光学素子の不要光の模式図、図30に回折光学素子1を切断した断面形状の拡大図を示す。格子形状を分かりやすくするために、図30は格子深さ方向にかなりデフォルメされた図となっている。また、格子数も実際よりは少なく描かれている。図29、図30において、光軸Oに対して入射角ωで入射した画面外光束B、B’は、第1の回折光学素子11の基板2を通過後、それぞれ光軸Oから図の上方向に数えてm番目、図の下方向に数えてm番目の回折格子であるm格子、m’格子に入射する。画面外光束B、B’のm格子、m’格子に対しての入射角度は主光線方向に対して角度θi、θi’である。また、格子壁面1b、1b’方向は主光線方向と等しい場合としている。
【0054】
ここで、回折光学素子を用いた望遠レンズにおいて、前記回折光学素子を設けた回折面と前記回折面に入射する光線の角度の関係について述べる。図28、29より、前記望遠レンズの最も物体側にあるレンズの物体側のレンズ面の光軸に対する物体距離無限遠時の入射角度をωとした時、望遠レンズの略半画角(=tan-1(y/f))以下の光線について考える。図28に示した望遠レンズでは、半画角は3.16度になり、ここでは前記入射角度ωが3.16度以下の範囲を考える。つまり、画面内光束について考える。回折光学素子を設けた回折面の曲率半径をRdo(mm)とし、回折面の半径方向の最大光線有効径rmax(mm)の位置を通過した光線を考える。その位置における面法線角度をε(=sin-1(rmax/Rdo))度、その位置における光線の面法線に対する入射角度をθ度とし、θ=3.16度の場合を考える。また図28に示した望遠レンズでは、Rdo=319.64(mm)、rmax=47.8(mm)となる。
(Rdo = 319.64) ≦ (rmax / sin( |θ| ) = | 867.4 | ) -------------- (12)
上記(12)の条件式を満足していれば、画面内光束の回折面に入射する各光線が面法線に対してほぼ垂直のコンセントリックな条件となる。
【0055】
因みに、前記入射角度ωが半画角以上(前記望遠レンズでは3.16度以上)を画面外光束である。今後説明する光線はこの画面外光束であり、特に±(半画角+10度)以上の範囲について議論する(∵本発明が対象としているのは、焦点距離が300mm以上の望遠レンズである。望遠レンズにおいて、画面内光束及び±(画面外光束+10度)以内に高輝度光源があるシーンを撮影することは稀であるため。)。
【0056】
次に、画面外光束B、B’の入射角は略-10度(光軸方向に対する入射角ωは-13.16度)を想定する。この入射角度より小さい角度ではレンズ表面や結像面反射によるゴーストやレンズ内部、表面微小凹凸による散乱が多いため回折光学素子の不要光は比較的目立たない。また、特に本発明が対象としている望遠レンズ系では、このような低角度(つまり高輝度光源を画面内角度に近づけた状態)で撮影することは稀なので、本発明ではこの範囲の角度における性能の比重は落としている。一方、この入射角度より大きい角度範囲では、レンズ面のコートによる反射やレンズ鏡筒によるゴーストに、回折光学素子の不要光によるフレアが重なってしまうため、改善の必要が生じてくる。このため、本発明はこの入射角度(±10度)以上での回折光学素子の不要光によるフレアの改善を主目的にしている。
【0057】
m格子は、図30中の下から上に回折格子11の格子厚が増加する(回折格子12の格子厚が減少する)格子形状で、入射した画面外入射光束Bは下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θiは負の角度(-10、-15、-20度)となる。このm格子と画面外入射光束Bの関係は図27の関係に相当する。このため、格子壁面1bで全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播することになる。この不要光の広がりが図27のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角-0.20度付近まで広がっている。このため、画面外光−10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光(図29のBm)が結像面41に到達することを示している。より具体的な数値は、図6より、画面外入射角度-10度における回折角-0.20度付近の回折効率は図6(b)のRCWA計算結果から、回折次数−193次(回折角-0.18度)の回折効率が7.66×10-5%くらいである。また図8より、画面外入射角度-15度における回折角-0.20度付近の回折効率は8(b)のRCWA計算結果から、回折次数−289次(回折角-0.20度)の回折効率が1.87×10-6%くらいである。更に図10より、画面外入射角度-20度における回折角-0.20度付近の回折効率は10(b)のRCWA計算結果から、回折次数−383次(回折角-0.21度)の回折効率が3.62×10-7%くらいである。この回折効率の数値は、どの角度についても従来例よりかなり低い値となっている(従来例では、画面外入射角度-10度で回折効率が6.80×10-4%、-15度で回折効率が6.50×10-4%、-20度で1.33×10-4%であり、本実施例の10〜1000倍高い。)。これによって、日中の太陽などの高輝度光源が撮影時に画面外にあった場合には影響はかなり低減できる。画面外光-10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のBm-、不要光のピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光-10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のBm+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子の後の光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のBm-〜Bm〜Bm+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のBm)は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになるが、本発明で低減することができる。
【0058】
m’格子は図30中の下から上に回折格子11の格子厚が減少する(回折格子12の格子厚が増加する)格子形状で、入射した画面外入射光束B’は下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θi’は正の角度(+10、+15、+20度)となるとなる。このm’格子と画面外入射光束B’の関係は図27の上下を逆にした場合で、図26に相当する。このため、格子壁面1b’で透過光射出方向中心と反射光射出方向中心に不要光が広がって伝播し、透過光射出方向の不要光が大幅に大きいことになる。この不要光の広がりが図5のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角0度付近まで広がっていない。このため、画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)が結像面41に到達するが、回折効率の数値は極小である。より具体的な数値は、図5より、画面外入射角度+10度における回折角-0.20度付近の回折効率は図5(b)のRCWA計算結果から、回折次数+201次(回折角-0.23度)の回折効率が1.58×10-5%くらいである。また図7より、画面外入射角度+15度における回折角-0.20度付近の回折効率は7(b)のRCWA計算結果から、回折次数+297次(回折角-0.20度)の回折効率が1.26×10-6%くらいである。更に図9より、画面外入射角度+20度における回折角-0.20度付近の回折効率は9(b)のRCWA計算結果から、回折次数+391次(回折角-0.20度)の回折効率が3.37×10-7%くらいである。この回折効率の数値は、どの角度についても従来例よりかなり低い値となっている(従来例では、画面外入射角度+10度で回折効率が1.37×10-4%、+15度で回折効率が1.07×10-5%、+20度で7.25×10-6%であり、本実施例の10〜100倍高い。)。これによって、日中の太陽などの高輝度光源が撮影時に画面外にあった場合には影響はかなり低減できる。画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のB’m−、+1次回折光および不要光ピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のB’m+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子の後の光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のB’m−〜B’m〜B ’m+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のB’m)は像面に到達する。m’格子では回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)の広がりが小さく、回折効率の値は極小のため影響は小さい。
【0059】
以上のように、回折光学素子を適用した望遠レンズにおいて、画面外入射角略10度以上の光束が入射した場合、図29、図30に示すm、m’格子による回折角0度付近に射出する不要光が、従来例に約1/10〜1/1000倍くらいとかなり改善していることが分かる。これにより、不要回折光にフレアがかなり低減され、結像性能の劣化もかなり改善することが予想される。
【0060】
[実施例2]
以下、図1〜3、図11〜17、図25〜30を参照して、本発明の第2の実施例による回折光学素子について説明する。基本的に前記第1の実施例と同じなので、異なる部分をメインに説明することにする。
【0061】
まず本実施例2の回折光学素子の具体的な構成は、第1の回折格子11を形成する格子形成材料に、微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂(nd=1.544、νd=31.38、θgF=0.475、n550=1.548)を使用している。一方第2の回折格子12を形成する格子形成材料に、同じく微粒子を混合させた紫外線硬化樹脂(nd=1.563、νd=48.23、θgF=0.561、n550=1.556)を用いている。各材料の関係は、前記実施例1と同様に図31、32に表記してある。格子厚hは30μm、設計次数は+1次とする。
【0062】
これらの各数値は、前記条件式(1)〜(10)を全て満足している。下記に、本実施例2の各値を併記して各条件式を示す。
1.45 ≦ (nd1 = 1.544) ≦ 1.60 -------------- (1)
30 ≦ (νd1 = 31.38) ≦ 50 -------------- (2)
0.35 ≦ (θgF1 = 0.475) ≦ 0.50 -------------- (3)
1.50 ≦ (nd2 = 1.563) ≦ 1.65 -------------- (4)
40 ≦ (νd2 = 48.23) ≦ 60 -------------- (5)
0.45 ≦ (θgF2 = 0.561) ≦ 0.65 -------------- (6)
(nd2 - nd1 = 0.019) > 0 -------------- (7)
(νd2 - νd1 = 16.8) > 0 -------------- (8)
(θgF2 - θgF1 = 0.086) > 0 -------------- (9)
(h = 30) ≧ 30 (um) -------------- (10)
上記各条件式(1)から(10)について、前記図31、32を用いて説明する。上記各条件式は、第1、第2の回折格子に使用する材料1、2の材料範囲をnd-νd、θgF-νdの切り口で規定したものである。図31、32をみれば分かるように、実施例1、2とも材料2に関しては、従来の一般的な硝材の特性とあまり変わらず、材料1に関しては、従来の一般的な硝材の特性とは異なる材料特性を有していることが分かる。これについて説明したのが、図33である。図33は、横軸が波長(nm)、縦軸が屈折率となっており、実施例1、2の第1、2格子材料である材料1、2の分散特性を示している。図33において、実施例2の材料1を○で、材料2を●で、また材料2を固定し、垂直入射、格子厚30μmのときの可視域全域で回折効率100%(前記(14)、(15)より算出)となる材料1の仮想材料特性を*で示してある。図33を見れば分かるように、本実施例2の材料1及び材料2の屈折率特性グラフはその傾きが異なっているように見えるが、波長の変化に対する屈折率の変化はほぼ一定である。また、前記(14)、(15)式より算出した可視域全域で回折効率100%となる仮想材料2の特性と本実施例2の材料1の特性がほぼ一致していることから、本発明が高い性能を表していることが分かる。因みに、その際のスカラ計算での1次及び0次、2次の回折効率の計算結果を図35に参考に示した。設計次数である1次光の回折効率は、可視域全域で約99.5%以上、設計次数±1である0、2次の不要回折次数光の回折効率は約0.1%以下とかなり抑制されている。
【0063】
この時、スカラ計算でのm次(ここでは設計次数である+1次)のF線、d線、C線の回折効率がほぼ100%近くであることを表した条件式(11)も満足している。
0.92 ≦ ({m(λF)+m(λd)+m(λC)} / 3 = 0.998) ≦ 1.08 -------------- (11)
続いて、本発明の回折光学素子の素子構成および不要光について説明する。
【0064】
図11に、この回折光学素子の設計入射角度である入射角度0度(図1、3のa)、格子ピッチP=400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を示す。図11(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図11(b)は図11(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。回折角は図1、3の下向きを負の方向としている。図11(a)から設計次数である+1次回折光に回折効率がおよそ集中していることがわかるが、回折効率は99.4%(回折次数+1次、回折角-0.20度)で100%になっていない。残りの光は不要光となって、図11(b)のように特定角度方向(+5deg付近)になだらかなピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は図25のように入射光束のうち、格子壁面付近に入射する成分a’が格子壁面において高屈折率材料側に回り込む回折現象によると考えられる。しかし、この設計入射角度(撮影光入射角度)において、日中の太陽等の高輝度光源を直接撮影することは稀であるため、この不要光はほとんど影響せず、結果として問題とはならない。
【0065】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の正側(θ(+))に入射する光束(図1、3のb)を想定して、入射角度+10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図12に示す。図12(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図12(b)は図12(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図12(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は97.3%(回折次数+1次、回折角+9.91度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図12(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略−10度方向、略+17度方向にも小さなピークを持っており、この伝播方向は格子壁面に入射する画面外入射角度+10度光束の透過光の射出方向+9.91度と反射光の射出方向−10度に略等しいことがわかる。また、格子壁面に対しては低屈折率材料側から高屈折率材料側に+80度で入射するため、透過光の透過率は91%、反射光の反射光は9%であり、略+17度方向のピークが大きく、略−10度方向のピークが小さいことと対応している。また、この不要光はピークから高角度範囲に広がっており、図26に示すように入射光束のうち格子壁面付近に入射する成分b’が格子壁面において透過光と反射光に別れて伝播しており、さらに各ピークを中心に広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近まで広がってなく、回折効率の数値も極小のため、画面外光+10度入射の不要光が像面に到達し像性能を低下させる影響は小さいことを示している。上記結果より、画面外光+10度入射では、従来例の図19(b)よりも改善していることが分かる。
【0066】
次に、この回折光学素子の設計入射角度より斜入射角度(画面外光入射角度)の負側(θ(-))に入射する光束(図1、3のc)を想定して、入射角度-10度、格子ピッチ400μm、波長550nmにおけるRCWA計算結果を図13に示す。図13(a)は設計次数である+1次回折光付近での回折効率である。横軸は回折次数、縦軸は回折効率である。図13(b)は図13(a)の縦軸の回折効率の低い部分を拡大し、横軸を回折次数から回折角にして高回折角度範囲について表示した結果である。図13(a)から設計次数である+1次回折光の回折効率が集中していることがわかるが、回折効率は97.29%(回折次数+1次、回折角−10.33度)で設計入射角度である0度から傾いているため先程の値より低下している。この画面外光入射角度の+1次回折光は像面に到達することはないため影響は小さい。残りの不要光は図13(b)のように特定角度方向にピークをもつ不要光となって伝播していることがわかる。この不要光は略+10度方向にピークを持っており、この伝播方向は格子面で+1次光に回折した後、格子壁面に入射する画面外入射角度−10.33度光束の成分が全反射にして伝播する射出方向+10.33度方向と略等しいことがわかる。格子壁面に対しては高屈折率材料側から低屈折率材料側に臨界角74.2度以上の+80.4度で入射するため全反射が発生している。また、この不要光は略+10度方向のピークから高角度範囲に広がっており、図27に示すように、入射光束のうち格子面で回折した後、格子壁面付近に入射する成分c’が格子壁面において全反射して+10度方向に伝播しており、さらに全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播していると考えられる。この不要光の広がりが回折角0度付近(図27のc’’)まで広がっている。回折角0度(図27のc’’)は設計入射角0度(図1、3のa)による+1次回折光の回折角−0.20度(図2の+1次光)にほぼ等しい。このため、画面外光−10度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光が像面に到達することを示している。なお、回折光学素子の後の光学系によって、画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度が異なってくる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになる。
【0067】
図14から図17に、画面外入射角度(θ)が+15度、−15度、+20度、−20度の結果を、前記図11から図13の画面外入射角度(θ)が0度、+10度、−10度と同様に示した。ここでは、詳細の説明は割愛するが、基本的に+15度、+20度の結果は前記+10度の結果と、−15度、−20度の結果は前記−10度の結果と同様に説明できる。
【0068】
次に、回折光学素子を用いた望遠レンズにおいて、前記回折光学素子を設けた回折面と前記回折面に入射する光線の角度の関係について述べる。図28、29と条件式(12)より、前記実施例1と同様に、半画角は3.16度、入射角度はθ=3.16度、Rdo=319.64(mm)、rmax=47.8(mm)となる。
(Rdo = 319.64) ≦ (rmax / sin( |θ| ) = | 867.4 | ) -------------- (12)
上記(12)の条件式を満足していれば、画面内光束の回折面に入射する各光線が面法線に対してほぼ垂直のコンセントリックな条件となる。
【0069】
m格子は、図30中の下から上に回折格子11の格子厚が増加する(回折格子12の格子厚が減少する)格子形状で、入射した画面外入射光束Bは下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θiは負の角度(-10、-15、-20度)となる。このm格子と画面外入射光束Bの関係は図27の関係に相当する。このため、格子壁面1bで全反射射出方向中心に不要光が広がって伝播することになる。この不要光の広がりが図27のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角-0.20度付近まで広がっている。このため、画面外光−10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角−0.20度付近に射出する不要光(図29のBm)が結像面41に到達することを示している。より具体的な数値は、図13より、画面外入射角度-10度における回折角-0.20度付近の回折効率は図6(b)のRCWA計算結果から、回折次数−194次(回折角-0.19度)の回折効率が5.96×10-4%くらいである。また図15より、画面外入射角度-15度における回折角-0.20度付近の回折効率は15(b)のRCWA計算結果から、回折次数−291次(回折角-0.19度)の回折効率が6.87×10-6%くらいである。更に図17より、画面外入射角度-20度における回折角-0.20度付近の回折効率は17(b)のRCWA計算結果から、回折次数−386次(回折角-0.18度)の回折効率が8.56×10-7%くらいである。この回折効率の数値は、前記実施例1よりはやや落ちるものの、どの角度についても従来例よりかなり低い値となっている(従来例では、画面外入射角度-10度で回折効率が6.80×10-4%、-15度で回折効率が6.50×10-4%、-20度で1.33×10-4%であり、本実施例の10〜1000倍高い。)。これによって、日中の太陽などの高輝度光源が撮影時に画面外にあった場合には影響はかなり低減できる。画面外光-10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のBm-、不要光のピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光-10、-15、-20度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のBm+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子より像面側に配置された光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のBm-〜Bm〜Bm+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のBm)は像面に到達するため、像性能の低下を招くことになるが、本発明で低減することができる。
【0070】
m’格子は図30中の下から上に回折格子11の格子厚が減少する(回折格子12の格子厚が増加する)格子形状で、入射した画面外入射光束B’は下向きに入射する光束である。格子に対する入射角度θi’は正の角度(+10、+15、+20度)となるとなる。このm’格子と画面外入射光束B’の関係は図27の上下を逆にした場合で、図26に相当する。このため、格子壁面1b’で透過光射出方向中心と反射光射出方向中心に不要光が広がって伝播し、透過光射出方向の不要光が大幅に大きいことになる。この不要光の広がりが図12のように設計入射角0度による+1次回折光の回折角にほぼ等しい回折角0度付近まで広がっていない。このため、画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)が結像面41に到達するが、回折効率の数値は極小である。より具体的な数値は、図12より、画面外入射角度+10度における回折角-0.20度付近の回折効率は図12(b)のRCWA計算結果から、回折次数+202次(回折角-0.22度)の回折効率が2.21×10-5%くらいである。また図14より、画面外入射角度+15度における回折角-0.20度付近の回折効率は14(b)のRCWA計算結果から、回折次数+299次(回折角-0.22度)の回折効率が1.33×10-6%くらいである。更に図16より、画面外入射角度+20度における回折角-0.20度付近の回折効率は16(b)のRCWA計算結果から、回折次数+393次(回折角-0.18度)の回折効率が2.88×10-7%くらいである。この回折効率の数値は、どの角度についても従来例よりかなり低い値となっている(従来例では、画面外入射角度+10度で回折効率が1.37×10-4%、+15度で回折効率が1.07×10-5%、+20度で7.25×10-6%であり、本実施例の10〜100倍高い。)。これによって、日中の太陽などの高輝度光源が撮影時に画面外にあった場合には影響はかなり低減できる。画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度より低い角度に射出する不要光(図29のB’m−、+1次回折光および不要光ピーク)は絞り40で遮光され、結像面41に到達しない。逆に、画面外光+10、+15、+20度入射の不要光のうち、回折角0度より高い角度に射出する不要光で、且つ結像面41の最大像高位置に到達する不要光(図29のB’m+)までが結像面41に到達することになる。なお、回折光学素子の後の光学系、絞りの位置によって画面外入射光の不要光が像面に到達する回折次数、回折角度(図29のB’m−〜B’m〜B ’m+の関係)が異なる。しかし、いかなる光学系であっても少なくとも設計入射角における設計回折次数が伝播する回折角度に略一致する画面外光による不要光の回折光(図29のB’m)は像面に到達する。m’格子では回折角0度付近に射出する不要光(図29のB’m)の広がりが小さく、回折効率の値は極小のため影響は小さい。
【0071】
以上のように、回折光学素子を適用した望遠レンズにおいて、画面外入射角略10度以上の光束が入射した場合、図29、図30に示すm、m’格子による回折角0度付近に射出する不要光が、従来例に約1/10〜1/1000倍くらいとかなり改善していることが分かる。これにより、不要回折光にフレアがかなり低減され、結像性能の劣化もかなり改善することが予想される。
【0072】
前記実施例1、2を通して、前記条件式(1)から(11)は、画面内光束に対する性能はある程度保ちながら、画面外光束が像面に到達する高次回折光の回折効率を低減させ、不要回折光によるフレアを更に低減させるためには、下記の条件式の範囲にすることが好ましい。
1.50 ≦ nd1 ≦ 1.60 -------------- (1a)
30 ≦ νd1 ≦ 40 -------------- (2a)
0.40 ≦ θgF1 ≦ 0.50 -------------- (3a)
1.50 ≦ nd2 ≦ 1.60 -------------- (4a)
40 ≦ νd2 ≦ 55 -------------- (5a)
0.45 ≦ θgF2 ≦ 0.60 -------------- (6a)
0 < nd2 - nd1 < 0.05 -------------- (7a)
0 < νd2 - νd1 < 20 -------------- (8a)
0 < θgF2 - θgF1 < 0.2 -------------- (9a)
30 (um) ≦ h ≦ 50 (um) -------------- (10a)
0.95 ≦ ({m(λF)+m(λd)+m(λC)} / 3 = 0.998) ≦ 1.05 -------------- (11a)
下記に、各実施例における各条件式の値を示す。
【0073】
【表1】

以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0074】
本発明は、回折光学素子に関し、特に銀塩写真用カメラ、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等の光学系や光学機器に用いられる回折光学素子に関するものである。
【符号の説明】
【0075】
1:回折光学素子
2、3:基板
10:回折格子部
11:第1の回折格子
12:第2の回折格子
11a、12a:格子斜面
11b、12b:格子壁面
40:開口絞り
41:結像面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の材料により各々形成された回折格子が互いの格子面で接して形状をなしている回折光学素子であって、前記第1の材料のd線における屈折率をnd1、アッベ数をνd1、g線をF線の部分分散比をθgF1とし、前記第2の材料のd線における屈折率をnd2、アッベ数をνd2、g線をF線の部分分散比をθgF2とし、互いに接する回折格子の格子厚をhとした時、

1.45 ≦ nd1 ≦ 1.60 -------------- (1)
30 ≦ νd1 ≦ 50 -------------- (2)
0.35 ≦ θgF1 ≦ 0.50 -------------- (3)
1.50 ≦ nd2 ≦ 1.65 -------------- (4)
40 ≦ νd2 ≦ 60 -------------- (5)
0.45 ≦ θgF2 ≦ 0.65 -------------- (6)
nd2 - nd1 > 0 -------------- (7)
νd2 - νd1 > 0 -------------- (8)
θgF2 - θgF1 > 0 -------------- (9)
h ≧ 30 (um) -------------- (10)

上記の各条件式を全て満足することを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
前記第1及び第2の材料は、F線、d線、C線の波長をλF、λd、λCとし、各F線、d線、C線の波長における設計次数であるm次の回折光に対する回折格子の凸部と凹部での光路長の差をその波長で除した値を、各々m(λF) = {h×(nF1-nF2)}/λF、 m(λd) = {h×(nd1-nd2)}/λd、 m(λC) = {h×(nC1-nC2)}/λCとした際、下記の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
0.92 ≦ {m(λF)+m(λd)+m(λC)} / 3 ≦ 1.08 -------------- (11)
【請求項3】
前記回折光学素子において、回折格子の格子ピッチPは400μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
前記回折光学素子は光学系に用いられるとともに、前記光学系の焦点距離が300mm以上の望遠レンズに使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記回折光学素子は光学系の光軸に対して回転対称であるとともに、前記望遠レンズの絞りよりも物体側に設けられており、前記望遠レンズの最も物体側にあるレンズの物体側のレンズ面の光軸に対する物体距離無限遠時の入射角度ωが、望遠レンズの略半画角(=tan-1(y/f))以下の光線に対して、回折光学素子を設けた回折面の曲率半径Rdo(mm)は、回折面の半径方向の最大光線有効径rmax(mm)の位置を通過した際、その位置における面法線角度をε(=sin-1(rmax/R))度、その位置における光線の面法線に対する入射角度をθ度とした際、下記の条件式を満足する請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の望遠レンズ。
Rdo ≦ rmax / sin( |θ| ) -------------- (12)
【請求項6】
前記望遠レンズにおいて、前記回折面は最も物体側に配置されたレンズの接合面に設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の望遠レンズ。
【請求項7】
前記望遠レンズにおいて、前記望遠レンズの最も物体側にあるレンズの物体側のレンズ面の光軸に対する物体距離無限遠時の入射角度ωが、望遠レンズの略半画角(=tan-1(y/f))+10度以上の光線に対して、像面に到達する回折次数の回折効率を低減したことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の回折光学素子。
【請求項8】
前記回折光学素子において、第1、第2の回折格子の形成する材料1、2は、紫外線硬化樹脂に微粒子を分散させた材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の回折光学素子。
【請求項9】
前記微粒子は、ITO、ZrO2、Al2O3から成っていることを特徴とする請求項8に記載の回折光学素子。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の回折光学素子若しくは前記回折光学素子を具備した光学系を有することを特徴とする光学機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−105055(P2013−105055A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249339(P2011−249339)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】