回折画像表示体及びラベル付き物品
【課題】回折画像表示体を用いた偽像防止技術でより高い偽造防止効果を達成する。
【解決手段】本発明の回折画像表示体10は、回折格子パターン12aを備え、回折格子パターン12aは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に回折格子パターン12aが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする。
【解決手段】本発明の回折画像表示体10は、回折格子パターン12aを備え、回折格子パターン12aは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に回折格子パターン12aが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折画像表示体及びラベル付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
回折画像表示体は、回折格子を含んでいる。回折格子の表示色は、照明方向及び/又は観察方向等に応じて変化する構造色である。すなわち、回折格子は、カラーシフトを生じる。このような特徴は、通常の印刷技術で再現することは不可能である。そのため、回折画像表示体は、特許文献1に記載されているように、主として物品の偽造を防止する目的で使用されている。
【0003】
この目的のためには、回折画像表示体の偽造が困難であることが必要である。しかしながら、技術の発展に伴い、回折格子を形成する難易度は低下しつつある。そのため、回折画像表示体には、より高い偽像防止効果が望まれている。
【特許文献1】特開平10−153702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、回折画像表示体を用いた偽像防止技術でより高い偽造防止効果を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面によると、第1回折格子パターンを備え、前記第1回折格子パターンは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に前記第1回折格子パターンが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする回折画像表示体が提供される。
【0006】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る回折画像表示体と、これを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、回折画像表示体を用いた偽像防止技術でより高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一態様に係る回折画像表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す回折画像表示体のII−II線に沿った断面図である。なお、図1及び図2において、X方向は表示面に平行な方向であり、Y方向は表示面に平行であり且つX方向と直交した方向であり、Z方向はX方向及びY方向と直交した方向である。
【0010】
この回折画像表示体10は、図2に示すように、基材11と回折格子形成層12と反射層13とを含んでいる。
【0011】
基材11は、例えば、樹脂フィルム又は樹脂シートなどの樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル、又はポリカーボネートを使用することができる。基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材11は、例えば、回折画像表示体10を後述する転写箔の一部として使用する場合には省略することができる。
【0012】
回折格子形成層12は、基材11上に形成されている。回折格子形成層12の表面には、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。この凹構造及び/又は凸構造は、レリーフ型の回折格子パターン12aを形成している。回折格子パターン12aが表示する画像については、後で説明する。
【0013】
回折格子形成層12の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂又はビニル樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂又はフェノール樹脂を使用することができる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル樹脂、エポキシメタクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンメタクリレート樹脂を使用することができる。これら樹脂は、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。また、回折格子形成層12は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0014】
回折格子形成層12は、例えば、以下に説明するように、版を用いた転写により形成することができる。
【0015】
まず、表面に凹構造及び/又は凸構造を有するマスター版を製造する。マスター版は、例えば、光学的な撮影を利用した方法又は電子線描画を利用した方法により製造する。
【0016】
次に、上述した方法により製造したマスター版を用いて、プレス版を製造する。プレス版は、例えば、マスター版の凹構造及び/又は凸構造が設けられている面に、電気めっき法を利用してニッケル層を形成することにより製造する。
【0017】
その後、このプレス版を用いて回折格子形成層12を形成する。
回折格子形成層12の材料として熱可塑性樹脂を使用する場合には、まず、基材11上に熱可塑性樹脂層を形成する。次いで、この熱可塑性樹脂層にプレス版を押し当てると共に、熱可塑性樹脂層を加熱する。これにより、プレス版に設けられた凹構造及び/又は凸構造を、熱可塑性樹脂層に転写する。その後、熱可塑性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0018】
回折格子形成層12の材料として熱硬化性樹脂を使用する場合には、まず、未硬化の熱硬化性樹脂層を間に挟んで、基材11とプレス版とを重ね合わせる。次いで、この状態で、熱硬化性樹脂層を加熱し、これを硬化させる。その後、熱硬化性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0019】
回折格子形成層12の材料として光硬化性樹脂を使用する場合には、まず、未硬化の光硬化性樹脂層を間に挟んで、基材11とプレス版とを重ね合わせる。次いで、この状態で、光硬化性樹脂層に紫外線又は電子線などのエネルギー線を照射し、これを硬化させる。その後、光硬化性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0020】
反射層13は、回折格子形成層12上に形成されている。反射層13は、光反射性を有している層であって、回折格子形成層12が発現させる構造色をより視認し易くする層である。
【0021】
反射層13としては、例えば、金属反射層を使用することができる。金属反射層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、銅及び金などの金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0022】
反射層13は、光反射性に加え、光透過性をさらに有していてもよい。そのような反射層13としては、例えば、回折格子形成層12の反射層13と接触している部分と比較してより大きな屈折率を有している高屈折率層を使用することができる。高屈折率層の材料としては、例えば、硫化亜鉛又は二酸化チタンを使用することができる。
【0023】
反射層13は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。反射層13は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0024】
反射層13は、省略してもよい。或いは、反射層13は、パターニングされていてもよい。パターニングされた反射層13は、例えば、エッチング又はレーザ光照射を利用して形成することができる。
【0025】
次に、回折格子パターン12aが表示する画像について、図1及び図3を参照しながら説明する。
図3は、図1及び図2に示す回折画像表示体の斜視図である。
【0026】
この回折画像表示体10において、回折格子パターン12aは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に回折格子パターン12aが保持している情報を識別でき且つ表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に先の情報の識別が第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有している。
【0027】
図1及び図3に示す例では、回折格子パターン12aは、文字情報「ABCDE」を保持しており、Y方向に延びた形状を有している。そして、回折格子パターン12aが保持している情報は、Z方向から観察した場合には、図1に示すように識別が困難又は不可能であり、X方向に対して垂直であり且つ表示面に対して斜めの或る方向から観察した場合には、図3に示すように識別が容易である。
【0028】
一般に、回折画像表示体は、その正面から観察する。それゆえ、回折格子パターン12aが文字情報等を保持していることを知らない者は、回折画像表示体10を観察しても、回折格子パターン12aが文字情報等を保持していることには気付き難い。これに気付かないまま回折画像表示体10の偽像を試みた場合、回折格子パターン12aが保持している文字情報等を正確に再現できない可能性が高い。文字情報等を正確に再現できていない偽造品と真正品との判別は容易である。したがって、本態様によると、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【0029】
回折格子パターン12aに保持させる情報は、文字情報でなくてもよい。例えば、回折格子パターン12aには、バーコード及び標章などの図形情報や写真などの映像情報を保持させてもよい。或いは、回折格子パターン12aには、それらの組み合わせを保持させてもよい。
【0030】
回折格子パターン12aの格子線は、例えば、第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線と交差させる。この場合、典型的には、回折格子パターン12aの格子線は、先の交線と略直交させる。なお、用語「格子線」は、回折格子を構成している溝を意味している。こうすると、回折格子パターン12aを構成している格子線の空間周波数を適宜設定すれば、例えば、第1方向から回折画像表示体10を照明し且つこれを第2方向から観察した場合に、回折格子パターン12aからの回折光を観察者に知覚させることができる。
【0031】
この回折画像表示体10では、第1方向から回折画像表示体10を照明した場合に回折格子パターン12aがより広角に1次回折光を射出するほど、回折格子パターン12aが情報を保持していることは気付かれ難くなる。回折格子の格子定数は、回折角の正弦を波長で割った値に等しく、格子線の空間周波数の逆数である。格子線の空間周波数を、約1600本/mm乃至約3000本/mmの範囲内,例えば、約2000本/mm,とすると、回折格子パターン12aが情報を保持していることを極めて気付かれ難くすることができる。
【0032】
また、この回折画像表示体10では、第2方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aの形状と観察者に知覚させるべき画像の形状,すなわち、第1方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aの形状,との相違が大きいほど、回折格子パターン12aが情報を保持していることは気付かれ難くなる。第2方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aは、例えば、観察者に知覚させるべき画像を、第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線に平行な方向,ここではY方向,に5倍以上延ばした形状とする。
【0033】
但し、この比を過剰に大きくすると、第2方向から回折画像表示体10を観察したときに、回折格子パターン12aが保持している情報を識別し難くなる。したがって、この比は、例えば、20倍以下とする。
【0034】
この回折画像表示体10には、様々な変形が可能である。
図4は、図1及び図2に示す回折画像表示体の一変形例を概略的に示す平面図である。図5は、図4に示す回折画像表示体の斜視図である。
【0035】
図4に示す回折画像表示体10は、回折格子パターン12aに加え、回折格子パターン12bをさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した回折画像表示体と同様の構造を有している。
【0036】
回折格子パターン12bは、回折格子パターン12aと表示面に平行な方向に隣り合っている。例えば、回折格子パターン12bは、回折格子形成層12の反射層13側の面に設けられた凹構造及び/又は凸構造によって構成されている。回折格子パターン12bは、回折格子パターン12aとは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっている。
【0037】
回折格子パターン12a及び12bを互いに隣り合うように配置すると、回折画像表示体10を第2方向から観察した場合に回折格子パターン12aが情報を保持していることをより気付かれ難くすることができる。すなわち、回折格子パターン12bに、先の情報の識別を妨げるダミーパターンとしての役割を担わせることができる。したがって、この構成を採用すると、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【0038】
また、回折格子パターン12a及び12bは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっているので、図5に示すように第1方向から回折画像表示体10を観察した場合、回折格子パターン12bは見えないか又は回折格子パターン12aとは異なる色に見える。すなわち、回折格子パターン12aが保持している情報の識別が回折格子パターン12bによって不可能となることはない。
【0039】
回折格子パターン12aと回折格子パターン12bとでは、例えば、格子線の空間周波数を8本/mm以上異ならしめる。こうすると、第1方向から回折画像表示体10を観察した場合に、回折格子パターン12aが保持している情報を容易に識別することができる。
【0040】
図4に示すように、1つの領域内に回折格子パターン12aと回折格子パターン12bとを混在させてもよい。こうすると、それらを別々の領域に配置した場合と比較して、回折画像表示体10を第2方向から観察したときに回折格子パターン12aが情報を保持していることをさらに気付かれ難くすることができる。
【0041】
回折画像表示体10に表示させる画像、二次元的に配列した複数の画素で構成することが有利である。これについて、以下に説明する。
【0042】
図6は、複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している回折画像表示体の一例を概略的に示す平面図である。
【0043】
この回折画像表示体10は、12個の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している。画素PXaは同一の構造を有しており、画素PXbは同一の構造を有しており、画素Xcは同一の構造を有している。画素PXaは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12aに対応した部分と同様の構造を有している。画素PXbは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12bに対応した部分と同様の構造を有している。画素PXcは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12a及び12bが設けられていない部分と同様の構造を有している。
【0044】
このように、図6に示す回折画像表示体10では、3種の画素PXa乃至PXcを並べて画像を形成している。これら画素PXa乃至PXcの各々の視覚効果が分かっていれば、それらの並べ替えによって得られる像の予想は容易である。それゆえ、デジタル画像データから、各画素に採用すべき構造を容易に決定することができる。したがって、回折画像表示体10に画素構造を採用すると、回折画像表示体10の設計が容易になる。
【0045】
なお、図6に示す回折画像表示体10には、3種の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を採用しているが、2種又は4種以上の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を採用してもよい。画素の種類を多くすると、より複雑な像を表示することができる。
【0046】
図6に示す回折画像表示体10には、12個の画素をマトリクス状に配列してなる画像構造を採用しているが、画素構造が含む画素の数は2以上であればよい。但し、画素の数を多くすると、より高精細な画像を表示することができる。
【0047】
図1乃至図6を参照しながら説明した回折画像表示体10は、様々な形態で使用され得る。ここでは、これら回折画像表示体10の用途を、図1及び図2に示す回折画像表示体10を例に説明する。
【0048】
図7は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル20は、回折画像表示体10と、その背面上に設けられた粘着層21とを含んでいる。この粘着ラベル20は、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付ける。こうすると、例えば、回折画像表示体10が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であることを確認できる。
【0049】
この粘着ラベル20は、脆性であってもよい。そのような粘着ラベル20は、例えば、回折画像表示体10に、切欠き及び/又はミシン目を形成することにより得られる。粘着ラベル20が脆性である場合、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けた粘着ラベル20を剥がすと、回折画像表示体10は容易に破壊する。したがって、粘着ラベル20の貼り替えが困難となる。
【0050】
粘着ラベル20は、剥離紙に支持させてもよい。すなわち、粘着層21は、剥離紙で被覆してもよい。こうすると、粘着ラベル20の取り扱いが容易になる。
【0051】
図8は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図である。この転写箔30は、基材31と、剥離保護層32と、回折画像表示体10と、粘着層33とを含んでいる。回折画像表示体10は、図2に示す基材11を含んでおらず、回折格子形成層12と反射層13とを含んでいる。
【0052】
基材31は、剥離保護層32と回折画像表示体10と粘着層33とを形成するための下地としての役割を果たす。基材31の材料としては、例えば、図2に示す基材11に関して例示した材料を使用することができる。
【0053】
剥離保護層32は、基材31と回折格子形成層12との間に介在している。剥離保護層32は、回折画像表示体10から基材31を剥離する際に、回折格子形成層12が破損するのを防止する役割を果たす。剥離保護層32の材料としては、例えば、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、スチレン樹脂、及び塩素化ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂、又は、これにシリコーン油などの剥離助剤を添加してなる混合物を含有した塗料を使用することができる。
【0054】
この転写箔30の使用時には、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付け、その後、回折画像表示体10から基材31を剥離する。これにより、回折画像表示体10を、先の物品に支持させる。こうすると、例えば、回折画像表示体10が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であることを確認できる。
【0055】
粘着層33は、剥離紙で被覆してもよい。こうすると、転写箔30の取り扱いが容易になる。
【0056】
図9は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図である。この記録媒体40は、紙41と、この中に埋め込まれた回折画像表示体10とを含んでいる。紙41のうち回折画像表示体10の前面を被覆している部分には開口が設けられている。これにより、回折画像表示体10が表示する画像の視認性を高めている。なお、この画像を視認可能であれば、紙41に先の開口は設けなくてもよい。
【0057】
この記録媒体40は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体のための用紙として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、後述する粘着ラベルの一部として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ又はその一部として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することができる。
【0058】
記録媒体40は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に回折画像表示体10を挟みこむことにより得られる。このような方法で得られる記録媒体40は、偽造等が難しい。
【0059】
図10は、図9の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル50は、記録媒体40と、その背面上に設けられた粘着層51とを含んでいる。この粘着ラベル50は、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。
【0060】
図11は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。このラベル付き物品100は、物品101と回折画像表示体10とを含んでいる。
【0061】
物品101は、真正品であることが確認されるべき物品である。物品101は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体である。物品101は、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品でもよい。例えば、物品101は、工芸品又は美術品であってもよい。或いは、物品101は、包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装品であってもよい。
【0062】
回折画像表示体10は、物品101に支持されている。例えば、回折画像表示体10は、物品101に貼り付けられる。この場合、例えば、図7に示す粘着ラベル20又は図10に示す粘着ラベル50を物品101に貼り付けること或いは図8に示す転写箔30を用いることにより、回折画像表示体10を物品101に支持させることができる。
【0063】
回折画像表示体10は、他の方法で物品101に支持させてもよい。
例えば、物品101が紙を含んでいる場合、この紙の中に回折画像表示体10を埋め込んでもよい。この場合、ラベル付き物品100は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に回折画像表示体10を挟みこみ、その後、必要に応じて紙面への印刷等を行うことにより得られる。なお、潜像の可視化を容易にすべく、紙のうち回折画像表示体10の前面を被覆している部分には開口を設けてもよい。また、紙に埋め込む回折画像表示体10の形状に特に制限はない。例えば、スレッド状の回折画像表示体10を紙に埋め込んでもよい。
【0064】
回折画像表示体10を含んだタグを物品101に取り付けることにより、回折画像表示体10を物品101に支持させてもよい。物品101へのタグの付け替えが一般ユーザにとって困難であれば、回折画像表示体10は、物品101の真正を確認するのに十分に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一態様に係る回折画像表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す回折画像表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す回折画像表示体の斜視図。
【図4】図1及び図2に示す回折画像表示体の一変形例を概略的に示す平面図。
【図5】図4に示す回折画像表示体の斜視図。
【図6】複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している回折画像表示体の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図8】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図9】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】図9の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図11】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0066】
10…回折画像表示体、11…基材、12…回折格子形成層、12a…回折格子パターン、12b…回折格子パターン、13…反射層、20…粘着ラベル、21…粘着層、30…記録媒体、31…紙、40…粘着ラベル、41…粘着層、100…ラベル付き物品、101…物品。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折画像表示体及びラベル付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
回折画像表示体は、回折格子を含んでいる。回折格子の表示色は、照明方向及び/又は観察方向等に応じて変化する構造色である。すなわち、回折格子は、カラーシフトを生じる。このような特徴は、通常の印刷技術で再現することは不可能である。そのため、回折画像表示体は、特許文献1に記載されているように、主として物品の偽造を防止する目的で使用されている。
【0003】
この目的のためには、回折画像表示体の偽造が困難であることが必要である。しかしながら、技術の発展に伴い、回折格子を形成する難易度は低下しつつある。そのため、回折画像表示体には、より高い偽像防止効果が望まれている。
【特許文献1】特開平10−153702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、回折画像表示体を用いた偽像防止技術でより高い偽造防止効果を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面によると、第1回折格子パターンを備え、前記第1回折格子パターンは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に前記第1回折格子パターンが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする回折画像表示体が提供される。
【0006】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る回折画像表示体と、これを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、回折画像表示体を用いた偽像防止技術でより高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一態様に係る回折画像表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す回折画像表示体のII−II線に沿った断面図である。なお、図1及び図2において、X方向は表示面に平行な方向であり、Y方向は表示面に平行であり且つX方向と直交した方向であり、Z方向はX方向及びY方向と直交した方向である。
【0010】
この回折画像表示体10は、図2に示すように、基材11と回折格子形成層12と反射層13とを含んでいる。
【0011】
基材11は、例えば、樹脂フィルム又は樹脂シートなどの樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル、又はポリカーボネートを使用することができる。基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材11は、例えば、回折画像表示体10を後述する転写箔の一部として使用する場合には省略することができる。
【0012】
回折格子形成層12は、基材11上に形成されている。回折格子形成層12の表面には、凹構造及び/又は凸構造が設けられている。この凹構造及び/又は凸構造は、レリーフ型の回折格子パターン12aを形成している。回折格子パターン12aが表示する画像については、後で説明する。
【0013】
回折格子形成層12の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂又はビニル樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂又はフェノール樹脂を使用することができる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル樹脂、エポキシメタクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンメタクリレート樹脂を使用することができる。これら樹脂は、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。また、回折格子形成層12は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0014】
回折格子形成層12は、例えば、以下に説明するように、版を用いた転写により形成することができる。
【0015】
まず、表面に凹構造及び/又は凸構造を有するマスター版を製造する。マスター版は、例えば、光学的な撮影を利用した方法又は電子線描画を利用した方法により製造する。
【0016】
次に、上述した方法により製造したマスター版を用いて、プレス版を製造する。プレス版は、例えば、マスター版の凹構造及び/又は凸構造が設けられている面に、電気めっき法を利用してニッケル層を形成することにより製造する。
【0017】
その後、このプレス版を用いて回折格子形成層12を形成する。
回折格子形成層12の材料として熱可塑性樹脂を使用する場合には、まず、基材11上に熱可塑性樹脂層を形成する。次いで、この熱可塑性樹脂層にプレス版を押し当てると共に、熱可塑性樹脂層を加熱する。これにより、プレス版に設けられた凹構造及び/又は凸構造を、熱可塑性樹脂層に転写する。その後、熱可塑性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0018】
回折格子形成層12の材料として熱硬化性樹脂を使用する場合には、まず、未硬化の熱硬化性樹脂層を間に挟んで、基材11とプレス版とを重ね合わせる。次いで、この状態で、熱硬化性樹脂層を加熱し、これを硬化させる。その後、熱硬化性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0019】
回折格子形成層12の材料として光硬化性樹脂を使用する場合には、まず、未硬化の光硬化性樹脂層を間に挟んで、基材11とプレス版とを重ね合わせる。次いで、この状態で、光硬化性樹脂層に紫外線又は電子線などのエネルギー線を照射し、これを硬化させる。その後、光硬化性樹脂層からプレス版を取り除く。以上のようにして、回折格子形成層12を得る。
【0020】
反射層13は、回折格子形成層12上に形成されている。反射層13は、光反射性を有している層であって、回折格子形成層12が発現させる構造色をより視認し易くする層である。
【0021】
反射層13としては、例えば、金属反射層を使用することができる。金属反射層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、銅及び金などの金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0022】
反射層13は、光反射性に加え、光透過性をさらに有していてもよい。そのような反射層13としては、例えば、回折格子形成層12の反射層13と接触している部分と比較してより大きな屈折率を有している高屈折率層を使用することができる。高屈折率層の材料としては、例えば、硫化亜鉛又は二酸化チタンを使用することができる。
【0023】
反射層13は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。反射層13は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0024】
反射層13は、省略してもよい。或いは、反射層13は、パターニングされていてもよい。パターニングされた反射層13は、例えば、エッチング又はレーザ光照射を利用して形成することができる。
【0025】
次に、回折格子パターン12aが表示する画像について、図1及び図3を参照しながら説明する。
図3は、図1及び図2に示す回折画像表示体の斜視図である。
【0026】
この回折画像表示体10において、回折格子パターン12aは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に回折格子パターン12aが保持している情報を識別でき且つ表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に先の情報の識別が第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有している。
【0027】
図1及び図3に示す例では、回折格子パターン12aは、文字情報「ABCDE」を保持しており、Y方向に延びた形状を有している。そして、回折格子パターン12aが保持している情報は、Z方向から観察した場合には、図1に示すように識別が困難又は不可能であり、X方向に対して垂直であり且つ表示面に対して斜めの或る方向から観察した場合には、図3に示すように識別が容易である。
【0028】
一般に、回折画像表示体は、その正面から観察する。それゆえ、回折格子パターン12aが文字情報等を保持していることを知らない者は、回折画像表示体10を観察しても、回折格子パターン12aが文字情報等を保持していることには気付き難い。これに気付かないまま回折画像表示体10の偽像を試みた場合、回折格子パターン12aが保持している文字情報等を正確に再現できない可能性が高い。文字情報等を正確に再現できていない偽造品と真正品との判別は容易である。したがって、本態様によると、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【0029】
回折格子パターン12aに保持させる情報は、文字情報でなくてもよい。例えば、回折格子パターン12aには、バーコード及び標章などの図形情報や写真などの映像情報を保持させてもよい。或いは、回折格子パターン12aには、それらの組み合わせを保持させてもよい。
【0030】
回折格子パターン12aの格子線は、例えば、第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線と交差させる。この場合、典型的には、回折格子パターン12aの格子線は、先の交線と略直交させる。なお、用語「格子線」は、回折格子を構成している溝を意味している。こうすると、回折格子パターン12aを構成している格子線の空間周波数を適宜設定すれば、例えば、第1方向から回折画像表示体10を照明し且つこれを第2方向から観察した場合に、回折格子パターン12aからの回折光を観察者に知覚させることができる。
【0031】
この回折画像表示体10では、第1方向から回折画像表示体10を照明した場合に回折格子パターン12aがより広角に1次回折光を射出するほど、回折格子パターン12aが情報を保持していることは気付かれ難くなる。回折格子の格子定数は、回折角の正弦を波長で割った値に等しく、格子線の空間周波数の逆数である。格子線の空間周波数を、約1600本/mm乃至約3000本/mmの範囲内,例えば、約2000本/mm,とすると、回折格子パターン12aが情報を保持していることを極めて気付かれ難くすることができる。
【0032】
また、この回折画像表示体10では、第2方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aの形状と観察者に知覚させるべき画像の形状,すなわち、第1方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aの形状,との相違が大きいほど、回折格子パターン12aが情報を保持していることは気付かれ難くなる。第2方向から回折画像表示体10を観察したときの回折格子パターン12aは、例えば、観察者に知覚させるべき画像を、第1及び第2方向を含む平面と表示面との交線に平行な方向,ここではY方向,に5倍以上延ばした形状とする。
【0033】
但し、この比を過剰に大きくすると、第2方向から回折画像表示体10を観察したときに、回折格子パターン12aが保持している情報を識別し難くなる。したがって、この比は、例えば、20倍以下とする。
【0034】
この回折画像表示体10には、様々な変形が可能である。
図4は、図1及び図2に示す回折画像表示体の一変形例を概略的に示す平面図である。図5は、図4に示す回折画像表示体の斜視図である。
【0035】
図4に示す回折画像表示体10は、回折格子パターン12aに加え、回折格子パターン12bをさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した回折画像表示体と同様の構造を有している。
【0036】
回折格子パターン12bは、回折格子パターン12aと表示面に平行な方向に隣り合っている。例えば、回折格子パターン12bは、回折格子形成層12の反射層13側の面に設けられた凹構造及び/又は凸構造によって構成されている。回折格子パターン12bは、回折格子パターン12aとは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっている。
【0037】
回折格子パターン12a及び12bを互いに隣り合うように配置すると、回折画像表示体10を第2方向から観察した場合に回折格子パターン12aが情報を保持していることをより気付かれ難くすることができる。すなわち、回折格子パターン12bに、先の情報の識別を妨げるダミーパターンとしての役割を担わせることができる。したがって、この構成を採用すると、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【0038】
また、回折格子パターン12a及び12bは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっているので、図5に示すように第1方向から回折画像表示体10を観察した場合、回折格子パターン12bは見えないか又は回折格子パターン12aとは異なる色に見える。すなわち、回折格子パターン12aが保持している情報の識別が回折格子パターン12bによって不可能となることはない。
【0039】
回折格子パターン12aと回折格子パターン12bとでは、例えば、格子線の空間周波数を8本/mm以上異ならしめる。こうすると、第1方向から回折画像表示体10を観察した場合に、回折格子パターン12aが保持している情報を容易に識別することができる。
【0040】
図4に示すように、1つの領域内に回折格子パターン12aと回折格子パターン12bとを混在させてもよい。こうすると、それらを別々の領域に配置した場合と比較して、回折画像表示体10を第2方向から観察したときに回折格子パターン12aが情報を保持していることをさらに気付かれ難くすることができる。
【0041】
回折画像表示体10に表示させる画像、二次元的に配列した複数の画素で構成することが有利である。これについて、以下に説明する。
【0042】
図6は、複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している回折画像表示体の一例を概略的に示す平面図である。
【0043】
この回折画像表示体10は、12個の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している。画素PXaは同一の構造を有しており、画素PXbは同一の構造を有しており、画素Xcは同一の構造を有している。画素PXaは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12aに対応した部分と同様の構造を有している。画素PXbは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12bに対応した部分と同様の構造を有している。画素PXcは、図4に示す回折画像表示体10の回折格子パターン12a及び12bが設けられていない部分と同様の構造を有している。
【0044】
このように、図6に示す回折画像表示体10では、3種の画素PXa乃至PXcを並べて画像を形成している。これら画素PXa乃至PXcの各々の視覚効果が分かっていれば、それらの並べ替えによって得られる像の予想は容易である。それゆえ、デジタル画像データから、各画素に採用すべき構造を容易に決定することができる。したがって、回折画像表示体10に画素構造を採用すると、回折画像表示体10の設計が容易になる。
【0045】
なお、図6に示す回折画像表示体10には、3種の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を採用しているが、2種又は4種以上の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を採用してもよい。画素の種類を多くすると、より複雑な像を表示することができる。
【0046】
図6に示す回折画像表示体10には、12個の画素をマトリクス状に配列してなる画像構造を採用しているが、画素構造が含む画素の数は2以上であればよい。但し、画素の数を多くすると、より高精細な画像を表示することができる。
【0047】
図1乃至図6を参照しながら説明した回折画像表示体10は、様々な形態で使用され得る。ここでは、これら回折画像表示体10の用途を、図1及び図2に示す回折画像表示体10を例に説明する。
【0048】
図7は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル20は、回折画像表示体10と、その背面上に設けられた粘着層21とを含んでいる。この粘着ラベル20は、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付ける。こうすると、例えば、回折画像表示体10が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であることを確認できる。
【0049】
この粘着ラベル20は、脆性であってもよい。そのような粘着ラベル20は、例えば、回折画像表示体10に、切欠き及び/又はミシン目を形成することにより得られる。粘着ラベル20が脆性である場合、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けた粘着ラベル20を剥がすと、回折画像表示体10は容易に破壊する。したがって、粘着ラベル20の貼り替えが困難となる。
【0050】
粘着ラベル20は、剥離紙に支持させてもよい。すなわち、粘着層21は、剥離紙で被覆してもよい。こうすると、粘着ラベル20の取り扱いが容易になる。
【0051】
図8は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図である。この転写箔30は、基材31と、剥離保護層32と、回折画像表示体10と、粘着層33とを含んでいる。回折画像表示体10は、図2に示す基材11を含んでおらず、回折格子形成層12と反射層13とを含んでいる。
【0052】
基材31は、剥離保護層32と回折画像表示体10と粘着層33とを形成するための下地としての役割を果たす。基材31の材料としては、例えば、図2に示す基材11に関して例示した材料を使用することができる。
【0053】
剥離保護層32は、基材31と回折格子形成層12との間に介在している。剥離保護層32は、回折画像表示体10から基材31を剥離する際に、回折格子形成層12が破損するのを防止する役割を果たす。剥離保護層32の材料としては、例えば、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、スチレン樹脂、及び塩素化ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂、又は、これにシリコーン油などの剥離助剤を添加してなる混合物を含有した塗料を使用することができる。
【0054】
この転写箔30の使用時には、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付け、その後、回折画像表示体10から基材31を剥離する。これにより、回折画像表示体10を、先の物品に支持させる。こうすると、例えば、回折画像表示体10が表示する画像を観察することにより、その物品が真正品であることを確認できる。
【0055】
粘着層33は、剥離紙で被覆してもよい。こうすると、転写箔30の取り扱いが容易になる。
【0056】
図9は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図である。この記録媒体40は、紙41と、この中に埋め込まれた回折画像表示体10とを含んでいる。紙41のうち回折画像表示体10の前面を被覆している部分には開口が設けられている。これにより、回折画像表示体10が表示する画像の視認性を高めている。なお、この画像を視認可能であれば、紙41に先の開口は設けなくてもよい。
【0057】
この記録媒体40は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体のための用紙として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、後述する粘着ラベルの一部として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ又はその一部として使用することができる。或いは、この記録媒体40は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することができる。
【0058】
記録媒体40は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に回折画像表示体10を挟みこむことにより得られる。このような方法で得られる記録媒体40は、偽造等が難しい。
【0059】
図10は、図9の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル50は、記録媒体40と、その背面上に設けられた粘着層51とを含んでいる。この粘着ラベル50は、例えば、真正品であることが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。
【0060】
図11は、図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。このラベル付き物品100は、物品101と回折画像表示体10とを含んでいる。
【0061】
物品101は、真正品であることが確認されるべき物品である。物品101は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体である。物品101は、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品でもよい。例えば、物品101は、工芸品又は美術品であってもよい。或いは、物品101は、包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装品であってもよい。
【0062】
回折画像表示体10は、物品101に支持されている。例えば、回折画像表示体10は、物品101に貼り付けられる。この場合、例えば、図7に示す粘着ラベル20又は図10に示す粘着ラベル50を物品101に貼り付けること或いは図8に示す転写箔30を用いることにより、回折画像表示体10を物品101に支持させることができる。
【0063】
回折画像表示体10は、他の方法で物品101に支持させてもよい。
例えば、物品101が紙を含んでいる場合、この紙の中に回折画像表示体10を埋め込んでもよい。この場合、ラベル付き物品100は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に回折画像表示体10を挟みこみ、その後、必要に応じて紙面への印刷等を行うことにより得られる。なお、潜像の可視化を容易にすべく、紙のうち回折画像表示体10の前面を被覆している部分には開口を設けてもよい。また、紙に埋め込む回折画像表示体10の形状に特に制限はない。例えば、スレッド状の回折画像表示体10を紙に埋め込んでもよい。
【0064】
回折画像表示体10を含んだタグを物品101に取り付けることにより、回折画像表示体10を物品101に支持させてもよい。物品101へのタグの付け替えが一般ユーザにとって困難であれば、回折画像表示体10は、物品101の真正を確認するのに十分に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一態様に係る回折画像表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す回折画像表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す回折画像表示体の斜視図。
【図4】図1及び図2に示す回折画像表示体の一変形例を概略的に示す平面図。
【図5】図4に示す回折画像表示体の斜視図。
【図6】複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有している回折画像表示体の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図8】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図9】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図10】図9の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図11】図1及び図2に示す回折画像表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0066】
10…回折画像表示体、11…基材、12…回折格子形成層、12a…回折格子パターン、12b…回折格子パターン、13…反射層、20…粘着ラベル、21…粘着層、30…記録媒体、31…紙、40…粘着ラベル、41…粘着層、100…ラベル付き物品、101…物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回折格子パターンを備え、前記第1回折格子パターンは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に前記第1回折格子パターンが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする回折画像表示体。
【請求項2】
各々が回折格子を含んだ複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の回折画像表示体。
【請求項3】
前記第1回折格子パターンと前記表示面に平行な方向に隣り合った第2回折格子パターンをさらに備え、前記第1及び第2回折格子パターンは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっており、前記第2回折格子パターンは前記第2方向から観察した場合に前記情報の識別を妨げるダミーパターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の回折画像表示体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の回折画像表示体と、これを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
【請求項1】
第1回折格子パターンを備え、前記第1回折格子パターンは、表示面に対して斜めの第1方向から観察した場合に前記第1回折格子パターンが保持している情報を識別でき且つ前記表示面に対して垂直な第2方向から観察した場合に前記情報の識別が前記第1方向から観察した場合と比較してより困難又は不可能となるように前記第1及び第2方向を含む平面と前記表示面との交線に平行な方向に延びた形状を有していることを特徴とする回折画像表示体。
【請求項2】
各々が回折格子を含んだ複数の画素をマトリクス状に配列してなる画素構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の回折画像表示体。
【請求項3】
前記第1回折格子パターンと前記表示面に平行な方向に隣り合った第2回折格子パターンをさらに備え、前記第1及び第2回折格子パターンは格子線の方位及び/又は空間周波数が異なっており、前記第2回折格子パターンは前記第2方向から観察した場合に前記情報の識別を妨げるダミーパターンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の回折画像表示体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の回折画像表示体と、これを支持した物品とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−256856(P2008−256856A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97575(P2007−97575)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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