回折X線検出方法およびX線回折装置
【課題】ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる回折X線検出方法およびX線回折装置を提供する。
【解決手段】ポリキャピラリで形成されたラスタ素子10を介して行なう回折X線検出方法であって、試料により回折させたX線をラスタ素子10に入射させ、試料中心S0からの距離を維持しX線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を変えつつ、ラスタ素子10を通過したX線を検出器20により検出する。これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射X線回折測定で分解能を向上させたりする測定を有効に行なうことができる。
【解決手段】ポリキャピラリで形成されたラスタ素子10を介して行なう回折X線検出方法であって、試料により回折させたX線をラスタ素子10に入射させ、試料中心S0からの距離を維持しX線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を変えつつ、ラスタ素子10を通過したX線を検出器20により検出する。これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射X線回折測定で分解能を向上させたりする測定を有効に行なうことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリキャピラリを平面的に集積することにより形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法およびX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広い範囲に出射したX線を集光できるクマコフレンズが知られている。クマコフレンズはポリキャピラリを集積したハニカム構造を有し、ガラス管を束ねて繰り返し引き延ばして作られ、微細で平行な孔が無数に開いている。このような微細な孔にX線が入射した場合、小さい角度で入ってきたX線は壁で全反射し通過するが、それ以外は壁に吸収される。これを利用してX線の軌道をキャピラリに沿って曲げることにより、レンズを構成することができる。なお、上記のようなポリキャピラリを集積したハニカム構造は、断面六角形または円形の筒を隙間なく格子状に並べた形状を有している。
【0003】
また、上記のようなガラスポリキャピラリの一部を切り出し、所望の曲率で湾曲させて、球面状に加工すれば、所定の中心に対して径方向に平行な微細な穴が無数に開いたコリメータとしても利用できる。このようなコリメータは、ラスタ素子と呼ばれ、これを用いた回折X線測定方法が知られている。図14は、一般的なラスタ素子の構成を示す斜視図である。
【0004】
例えば、特許文献1記載のX線回折測定用の検出ユニットは、検出器の前に設置されたコリメートシステムを備えている。そして、コリメートシステムは湾曲したポリキャピラリのハニカム構造を有し、検出器の検出面に対してその位置を調整できる機構を有している。このコリメートシステムの位置調整機構は、X線の選択的通過を調整するためのものである(第7欄45−61行参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7149279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような検出ユニットを用いて、回折X線を検出しようとした場合、ラスタ素子および検出器を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。図15は、ラスタ素子の有り無しのそれぞれの場合における検出方法によるバックグラウンドの強度を示すグラフである。
【0007】
図15に示すようにラスタ素子無しで、検出器を固定したままデータを取得した場合には、均一なバックグラウンドのデータを検出できている。一方、ラスタ素子を通過したバックグラウンドの強度を測定した場合には、強度に細かい凹凸が表れており、ハニカム構造に起因する強度ムラが生じていることが分かる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる回折X線検出方法およびX線回折装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の回折X線検出方法は、ポリキャピラリで形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法であって、試料により回折させたX線をラスタ素子に入射させ、試料中心からの距離を維持し前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を変えつつ、前記ラスタ素子を通過したX線を検出器により検出することを特徴としている。
【0010】
これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射回折測定で分解能を向上させたりする測定を有効に行なうことができる。
【0011】
(2)また、本発明の回折X線検出方法は、前記検出器が、TDIスキャン可能な検出器であり、前記ラスタ素子を前記検出器のTDIスキャンに同期して移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴としている。これにより、TDIスキャンを行ない、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【0012】
(3)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料に対する前記検出器の位置を固定し、前記検出器に対して前記ラスタ素子を移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴としている。これにより、所定の回折角度付近で検出器を固定して測定する場合でも、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【0013】
(4)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出することを特徴としている。これにより、たとえばドームのような温度制御用の機構からの散乱線をラスタ素子により遮断し、試料からの回折X線のみを検出することができる。
【0014】
(5)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料の表面にX線を微小角で入射させて、前記試料表面に垂直な回転軸周りに回折したX線を検出することを特徴としている。これにより、いわゆる微小角入射測定において、照射領域が長く延びることに起因するX線回折像の広がりによって生じる分解能の低下を防止することができる。
【0015】
(6)また、本発明のX線回折装置は、試料にX線を照射し、回折X線を検出するX線回折装置であって、ポリキャピラリで形成され、試料により回折されたX線が入射するラスタ素子と、前記ラスタ素子を通過したX線を検出する検出器と、を備え、前記ラスタ素子は、前記検出器に対して固定されており、前記検出器とともに前記試料中心を中心とした揺動操作が可能であることを特徴としている。これにより、TDIスキャンを行ない、キャピラリのハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るX線回折装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るX線回折装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】温度制御用の機構を用いた測定を行なう場合の構成を示す側面図である(実施例)。
【図4】ラスタ素子無しで温度制御用の機構を用いて得た回折像である(比較例)。
【図5】ラスタ素子を設けて温度制御用の機構を用いて得た回折像である(実施例)。
【図6】ラスタ素子無しで温度制御用の機構を用いて得たX線強度プロファイルである(比較例)。
【図7】ラスタ素子を設けて温度制御用の機構を用いて得たX線強度プロファイルである(実施例)。
【図8】ラスタ素子および検出器を固定して得た回折像である(比較例)。
【図9】ラスタ素子および検出器を揺動して得た回折像である(実施例)。
【図10】ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をする構成を示す平面図である(比較例)。
【図11】ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をする構成を示す平面図である(実施例)。
【図12】ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をしたときの回折像である(比較例)。
【図13】ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をしたときの回折像である(実施例)。
【図14】一般的なラスタ素子の構成を示す斜視図である。
【図15】ラスタ素子の有り無しのそれぞれの場合における検出方法によるバックグラウンドの強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(回折X線検出方法の原理)
図1、図2は、それぞれX線回折装置5の構成を模式的に示す斜視図および側面図である。図1、図2に示すように、X線回折装置5は、集中法光学系に基づいて構成され、X線源、試料台、ラスタ素子10、検出器20およびアーム30を備えている。X線源は、たとえばCuターゲットを備えるX線管のX線焦点である。また、X線管から放射されたX線の発散を発散スリット等により規制し、線状または点状のX線源とすることもできる。
【0020】
試料台は、ゴニオメータを有し、θ回転台およびθ回転台と同軸に設けられた2θ回転台により支持されている。θ回転機構及び2θ回転機構は、それぞれ、θ回転台及び2θ回転台を微細な角度精度で回転させることができる。試料台には、試料ホルダが設けられ、試料ホルダの所定位置に試料が設置される。
【0021】
アーム30は、2θ回転台に連結されており、アーム30上には、ラスタ素子10および検出器20が設けられている。このような構成により、試料をθ回転し、検出器をθ回転と同じ方向へ2倍の角速度で2θ回転させる。
【0022】
X線回折装置5は、上記の構成により試料で回折されたX線のデータ収集に用いられ、ラスタ素子10を通過した回折X線R0を検出する。図に示すように、本発明の回折X線検出方法では、入射X線I0が試料により回折され、回折X線R0にラスタ素子10を通過させる。
【0023】
ラスタ素子10は、ポリキャピラリを平面的に集積することにより形成されている。ラスタ素子10は、厚さ1.5mm程度のポリキャピラリの集合体である。多数のポリキャピラリは、所定の中心点を向くようにラスタ素子全体が球面状に加工されており、ポリキャピラリの孔の軸が中心点に向く(径方向)ように設計されている。ラスタ素子10は、装置の受光側に設置され、位置調整機構を有し、上記の中心点がゴニオセンタS0(試料中心)に一致するように事前に設置位置が調整されている。すなわち、このときゴニオセンタS0からラスタ素子10までの距離が、ラスタ素子10の曲率半径と一致している。
【0024】
なお、ポリキャピラリは、それ自体が鉛ガラスで形成されているか、その内壁が鉛や他の重元素でコーティングされた材質で形成されており、内壁の材質の全反射臨界角よりも大きな角度で入射したX線は吸収される。したがって、ラスタ素子10は、内壁に当たらずキャピラリを通る成分と内壁で全反射された成分以外のX線を通さない。
【0025】
ラスタ素子10は、検出器20に対して固定され、検出器20とともに試料中心S0を中心とした揺動操作が可能であることが好ましい。たとえば、図2に示すように、検出器20が固定されたアーム30にラスタ素子10も固定し、このアーム30を動かすことで、ラスタ素子10および検出器20の試料中心S0を中心とした揺動操作が可能となる。アーム30による揺動方向Cは、試料中心S0を中心とする円弧方向である。なお、検出器20は固定し、ラスタ素子10のみを揺動して測定してもよい。
【0026】
検出器20は、1次元または2次元検出器であり、ラスタ素子10を通過した回折X線を検出する。1次元または2次元検出器は、検出器自体が位置分解能を持っているため、検出器の前には位置分解能を持たせるための細いスリットは設定せずオープンディテクタとして使用する。検出器20が、オープンディテクタであるために、試料からの回折成分のみならず、そのまわりからの散乱線も検出し、結果的には異なる情報も得てしまう。そこで、ラスタ素子10を設け、検出器20がラスタ素子10を通過した回折X線を検出することで、ゴニオセンタS0(試料中心)から生じた回折線のみ検出することが可能になっている。
【0027】
検出器20は、TDI(Time Delay Integration)スキャン可能な検出器であることが好ましく、検出器20の揺動を伴う場合には、TDIスキャン用の構成が必要になる。たとえば、図2に示すように検出器20がアーム30に固定され、同じくアーム30に固定されたラスタ素子10とともに検出器20を揺動することで、TDIスキャンが可能になる。さらに、ラスタ素子10を検出器20のTDIスキャンに同期して移動させることで、X線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を移動させることができる。
【0028】
これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子10を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射X線回折測定で分解能を向上させたりすることができる。
【0029】
なお、図2に示す例では、ラスタ素子10および検出器20がアーム30に固定されているが、必ずしもアーム30による揺動が必要となるわけではない。要は、試料により回折させたX線R0をラスタ素子10に入射させ、試料中心S0からの距離を維持しX線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を変えつつ、ラスタ素子10を通過したX線を検出器20により検出すればよい。したがって、検出器20を試料中心S0に対して固定し、ラスタ素子10を揺動させて撮影してもよい。
【0030】
(第1の実施例)
上記方法の実施例として、試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出する場合を、比較例と対比しつつ説明する。図3は、温度制御用の機構を用いた測定を行なう場合の構成を示す側面図である。図3に示すX線回折装置6は、温度制御用の機構として、高温アタッチメントとしてのドーム40を有している。その場合はドーム40内の試料下部のヒータにて試料の温度を制御することができ、In−situでの測定が可能になる。このとき、検出器20としては2次元検出器を用いることができるが、1次元検出器を用いてもよい。このとき、1次元または2次元検出器はオープンディテクタであるため、試料以外の散乱線が検出される。
【0031】
そこで、この実施例においては、試料のみの回折線を検出するために、ラスタ素子10を受光側に設置したX線回折装置6の構成を採用する。これにより、ドーム40による回折線や散乱線をラスタ素子10により遮断することができる。しかし、ラスタ素子10や検出器20を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子10のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。強度ムラの問題を解決するために、検出器とラスタを同時に揺動させること(TDIスキャン)で、強度を均一化する。
【0032】
(実験1−1)
試料にはAl2O3粉末を用いた。高温アタッチメントのドームのアタッチメントで試料を覆い、ラスタ素子10を設置した場合と設置しない場合とで、回折X線を検出した。図4は、ラスタ素子10無しで得た回折像(比較例)、図5は、ラスタ素子10を設けて得た回折像(実施例)である。また、図6は、ラスタ素子10無しで得たX線強度プロファイル(比較例)、図7は、ラスタ素子10を設けて得たX線強度プロファイル(実施例)である。図6、図7は、それぞれ図4、図5の2次元像から1次元データ変換したプロファイルである。
【0033】
図に示すように、ラスタ素子10を設置しない場合は、高温アタッチメントのドームの材質のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)による回折線P2が多数検出されるが、ラスタ素子10を設置するとPEEKの回折線P2が除去され、試料のAl2O3粉末の回折線P1のみ検出されている。このように、ラスタ素子10を設置した場合には、ドーム40からの回折線P2を完全に除去できた。
【0034】
(実験1−2)
また、ラスタ素子10および検出器20をアーム30に固定したX線回折装置6を用いて、アーム30を固定した場合とアーム30を揺動させた場合のそれぞれで回折像を検出した。図8は、ラスタ素子10および検出器20を固定して得た回折像、図9は、ラスタ素子10および検出器20を揺動して得た回折像である。図8に示すように、固定の場合はラスタ素子10のハニカム格子による強度ムラが観察できるが、図9に示すように、揺動することで強度ムラが均一化されていることが分かった。
【0035】
(第2の実施例)
別の実施例として、試料の表面にX線を微小角で入射させて、微小角で出射した回折X線を検出する場合を、比較例と対比しつつ説明する。図10は、ラスタ素子10無しで微小角入射X線回折測定を行なう場合の構成を示す平面図(比較例)であり、図11は、ラスタ素子10を設けて微小角入射X線回折測定を行なう場合の構成を示す平面図(実施例)である。
【0036】
微小角入射の例では、検出器20として2次元検出器が用いられる。図10に示すようにラスタ素子を持たないX線回折装置7で微小角入射X線回折測定のように2次元検出器で微小角入射するX線を検出する場合には、通常、試料位置でのX線の広がり41が原因で、取得される回折成分の2次元像の広がり42が生じ、分解能が悪くなる。すなわち、微小角入射の影響で2次元像が横長になる。これに対し、図11に示すラスタ素子10を設置したX線回折装置8では、ラスタ素子10を通過した回折X線43を検出することで、回折像の広がり42を防止でき、分解能を改善できる。
【0037】
しかし、この場合も、ラスタ素子10や検出器20を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子10のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。この強度ムラの問題を解決するために、本実施例では、検出器とラスタを同時に揺動させるか(TDIスキャン)、もしくはラスタのみを揺動させ、強度を均一化する。
【0038】
(実験2)
まず、ラスタ素子10無しで、2次元検出器を利用して微小角入射X線回折測定をした。図12は、ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をしたときの回折像(比較例)である。図中の数値は、格子面の指数を示している。微小角入射X線回折測定は、X線の試料への入射角度が1deg以下と非常に小さいため、試料上でのX線照射幅が広がる。その状態で2次元検出器にて微小角入射X線回折を測定した場合、照射幅の広がりの効果がそのまま検出器に反映され、X線回折像は照射幅に比例し広がった像となっている。
【0039】
これに対し2次元検出器の直前にラスタ素子を導入して測定した。図13は、ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をしたときの回折像(実施例)である。図中の数値は、格子面の指数を示している。ゴニオセンタ付近の回折線のみしか素子を通過できないという特徴があるため、ラスタ素子無しの状態と比較するとスポット上に観測され、結果的に微小角入射X線回折測定の分解能が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0040】
5〜8 X線回折装置
10 ラスタ素子
20 検出器
C 揺動方向
30 アーム
40 ドーム
41 試料位置でのX線の広がり
42 回折成分の2次元像の広がり
43 ラスタ素子を通過した回折X線
P1 Al2O3回折線
P2 PEEK回折線
I0 入射X線
R0 回折X線
S0 ゴニオセンタ(試料中心)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリキャピラリを平面的に集積することにより形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法およびX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広い範囲に出射したX線を集光できるクマコフレンズが知られている。クマコフレンズはポリキャピラリを集積したハニカム構造を有し、ガラス管を束ねて繰り返し引き延ばして作られ、微細で平行な孔が無数に開いている。このような微細な孔にX線が入射した場合、小さい角度で入ってきたX線は壁で全反射し通過するが、それ以外は壁に吸収される。これを利用してX線の軌道をキャピラリに沿って曲げることにより、レンズを構成することができる。なお、上記のようなポリキャピラリを集積したハニカム構造は、断面六角形または円形の筒を隙間なく格子状に並べた形状を有している。
【0003】
また、上記のようなガラスポリキャピラリの一部を切り出し、所望の曲率で湾曲させて、球面状に加工すれば、所定の中心に対して径方向に平行な微細な穴が無数に開いたコリメータとしても利用できる。このようなコリメータは、ラスタ素子と呼ばれ、これを用いた回折X線測定方法が知られている。図14は、一般的なラスタ素子の構成を示す斜視図である。
【0004】
例えば、特許文献1記載のX線回折測定用の検出ユニットは、検出器の前に設置されたコリメートシステムを備えている。そして、コリメートシステムは湾曲したポリキャピラリのハニカム構造を有し、検出器の検出面に対してその位置を調整できる機構を有している。このコリメートシステムの位置調整機構は、X線の選択的通過を調整するためのものである(第7欄45−61行参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7149279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような検出ユニットを用いて、回折X線を検出しようとした場合、ラスタ素子および検出器を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。図15は、ラスタ素子の有り無しのそれぞれの場合における検出方法によるバックグラウンドの強度を示すグラフである。
【0007】
図15に示すようにラスタ素子無しで、検出器を固定したままデータを取得した場合には、均一なバックグラウンドのデータを検出できている。一方、ラスタ素子を通過したバックグラウンドの強度を測定した場合には、強度に細かい凹凸が表れており、ハニカム構造に起因する強度ムラが生じていることが分かる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる回折X線検出方法およびX線回折装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の回折X線検出方法は、ポリキャピラリで形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法であって、試料により回折させたX線をラスタ素子に入射させ、試料中心からの距離を維持し前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を変えつつ、前記ラスタ素子を通過したX線を検出器により検出することを特徴としている。
【0010】
これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射回折測定で分解能を向上させたりする測定を有効に行なうことができる。
【0011】
(2)また、本発明の回折X線検出方法は、前記検出器が、TDIスキャン可能な検出器であり、前記ラスタ素子を前記検出器のTDIスキャンに同期して移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴としている。これにより、TDIスキャンを行ない、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【0012】
(3)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料に対する前記検出器の位置を固定し、前記検出器に対して前記ラスタ素子を移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴としている。これにより、所定の回折角度付近で検出器を固定して測定する場合でも、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【0013】
(4)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出することを特徴としている。これにより、たとえばドームのような温度制御用の機構からの散乱線をラスタ素子により遮断し、試料からの回折X線のみを検出することができる。
【0014】
(5)また、本発明の回折X線検出方法は、前記試料の表面にX線を微小角で入射させて、前記試料表面に垂直な回転軸周りに回折したX線を検出することを特徴としている。これにより、いわゆる微小角入射測定において、照射領域が長く延びることに起因するX線回折像の広がりによって生じる分解能の低下を防止することができる。
【0015】
(6)また、本発明のX線回折装置は、試料にX線を照射し、回折X線を検出するX線回折装置であって、ポリキャピラリで形成され、試料により回折されたX線が入射するラスタ素子と、前記ラスタ素子を通過したX線を検出する検出器と、を備え、前記ラスタ素子は、前記検出器に対して固定されており、前記検出器とともに前記試料中心を中心とした揺動操作が可能であることを特徴としている。これにより、TDIスキャンを行ない、キャピラリのハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラスタ素子のハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るX線回折装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るX線回折装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】温度制御用の機構を用いた測定を行なう場合の構成を示す側面図である(実施例)。
【図4】ラスタ素子無しで温度制御用の機構を用いて得た回折像である(比較例)。
【図5】ラスタ素子を設けて温度制御用の機構を用いて得た回折像である(実施例)。
【図6】ラスタ素子無しで温度制御用の機構を用いて得たX線強度プロファイルである(比較例)。
【図7】ラスタ素子を設けて温度制御用の機構を用いて得たX線強度プロファイルである(実施例)。
【図8】ラスタ素子および検出器を固定して得た回折像である(比較例)。
【図9】ラスタ素子および検出器を揺動して得た回折像である(実施例)。
【図10】ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をする構成を示す平面図である(比較例)。
【図11】ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をする構成を示す平面図である(実施例)。
【図12】ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をしたときの回折像である(比較例)。
【図13】ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をしたときの回折像である(実施例)。
【図14】一般的なラスタ素子の構成を示す斜視図である。
【図15】ラスタ素子の有り無しのそれぞれの場合における検出方法によるバックグラウンドの強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(回折X線検出方法の原理)
図1、図2は、それぞれX線回折装置5の構成を模式的に示す斜視図および側面図である。図1、図2に示すように、X線回折装置5は、集中法光学系に基づいて構成され、X線源、試料台、ラスタ素子10、検出器20およびアーム30を備えている。X線源は、たとえばCuターゲットを備えるX線管のX線焦点である。また、X線管から放射されたX線の発散を発散スリット等により規制し、線状または点状のX線源とすることもできる。
【0020】
試料台は、ゴニオメータを有し、θ回転台およびθ回転台と同軸に設けられた2θ回転台により支持されている。θ回転機構及び2θ回転機構は、それぞれ、θ回転台及び2θ回転台を微細な角度精度で回転させることができる。試料台には、試料ホルダが設けられ、試料ホルダの所定位置に試料が設置される。
【0021】
アーム30は、2θ回転台に連結されており、アーム30上には、ラスタ素子10および検出器20が設けられている。このような構成により、試料をθ回転し、検出器をθ回転と同じ方向へ2倍の角速度で2θ回転させる。
【0022】
X線回折装置5は、上記の構成により試料で回折されたX線のデータ収集に用いられ、ラスタ素子10を通過した回折X線R0を検出する。図に示すように、本発明の回折X線検出方法では、入射X線I0が試料により回折され、回折X線R0にラスタ素子10を通過させる。
【0023】
ラスタ素子10は、ポリキャピラリを平面的に集積することにより形成されている。ラスタ素子10は、厚さ1.5mm程度のポリキャピラリの集合体である。多数のポリキャピラリは、所定の中心点を向くようにラスタ素子全体が球面状に加工されており、ポリキャピラリの孔の軸が中心点に向く(径方向)ように設計されている。ラスタ素子10は、装置の受光側に設置され、位置調整機構を有し、上記の中心点がゴニオセンタS0(試料中心)に一致するように事前に設置位置が調整されている。すなわち、このときゴニオセンタS0からラスタ素子10までの距離が、ラスタ素子10の曲率半径と一致している。
【0024】
なお、ポリキャピラリは、それ自体が鉛ガラスで形成されているか、その内壁が鉛や他の重元素でコーティングされた材質で形成されており、内壁の材質の全反射臨界角よりも大きな角度で入射したX線は吸収される。したがって、ラスタ素子10は、内壁に当たらずキャピラリを通る成分と内壁で全反射された成分以外のX線を通さない。
【0025】
ラスタ素子10は、検出器20に対して固定され、検出器20とともに試料中心S0を中心とした揺動操作が可能であることが好ましい。たとえば、図2に示すように、検出器20が固定されたアーム30にラスタ素子10も固定し、このアーム30を動かすことで、ラスタ素子10および検出器20の試料中心S0を中心とした揺動操作が可能となる。アーム30による揺動方向Cは、試料中心S0を中心とする円弧方向である。なお、検出器20は固定し、ラスタ素子10のみを揺動して測定してもよい。
【0026】
検出器20は、1次元または2次元検出器であり、ラスタ素子10を通過した回折X線を検出する。1次元または2次元検出器は、検出器自体が位置分解能を持っているため、検出器の前には位置分解能を持たせるための細いスリットは設定せずオープンディテクタとして使用する。検出器20が、オープンディテクタであるために、試料からの回折成分のみならず、そのまわりからの散乱線も検出し、結果的には異なる情報も得てしまう。そこで、ラスタ素子10を設け、検出器20がラスタ素子10を通過した回折X線を検出することで、ゴニオセンタS0(試料中心)から生じた回折線のみ検出することが可能になっている。
【0027】
検出器20は、TDI(Time Delay Integration)スキャン可能な検出器であることが好ましく、検出器20の揺動を伴う場合には、TDIスキャン用の構成が必要になる。たとえば、図2に示すように検出器20がアーム30に固定され、同じくアーム30に固定されたラスタ素子10とともに検出器20を揺動することで、TDIスキャンが可能になる。さらに、ラスタ素子10を検出器20のTDIスキャンに同期して移動させることで、X線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を移動させることができる。
【0028】
これにより、回折角度ごとに生じるハニカム格子による影響が分散され、ハニカム格子に起因する強度ムラを均一化することができる。その結果、ラスタ素子10を応用し、試料の周りからの散乱線を排除したり、いわゆる微小角入射X線回折測定で分解能を向上させたりすることができる。
【0029】
なお、図2に示す例では、ラスタ素子10および検出器20がアーム30に固定されているが、必ずしもアーム30による揺動が必要となるわけではない。要は、試料により回折させたX線R0をラスタ素子10に入射させ、試料中心S0からの距離を維持しX線の回折角度に対するラスタ素子10の位置を変えつつ、ラスタ素子10を通過したX線を検出器20により検出すればよい。したがって、検出器20を試料中心S0に対して固定し、ラスタ素子10を揺動させて撮影してもよい。
【0030】
(第1の実施例)
上記方法の実施例として、試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出する場合を、比較例と対比しつつ説明する。図3は、温度制御用の機構を用いた測定を行なう場合の構成を示す側面図である。図3に示すX線回折装置6は、温度制御用の機構として、高温アタッチメントとしてのドーム40を有している。その場合はドーム40内の試料下部のヒータにて試料の温度を制御することができ、In−situでの測定が可能になる。このとき、検出器20としては2次元検出器を用いることができるが、1次元検出器を用いてもよい。このとき、1次元または2次元検出器はオープンディテクタであるため、試料以外の散乱線が検出される。
【0031】
そこで、この実施例においては、試料のみの回折線を検出するために、ラスタ素子10を受光側に設置したX線回折装置6の構成を採用する。これにより、ドーム40による回折線や散乱線をラスタ素子10により遮断することができる。しかし、ラスタ素子10や検出器20を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子10のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。強度ムラの問題を解決するために、検出器とラスタを同時に揺動させること(TDIスキャン)で、強度を均一化する。
【0032】
(実験1−1)
試料にはAl2O3粉末を用いた。高温アタッチメントのドームのアタッチメントで試料を覆い、ラスタ素子10を設置した場合と設置しない場合とで、回折X線を検出した。図4は、ラスタ素子10無しで得た回折像(比較例)、図5は、ラスタ素子10を設けて得た回折像(実施例)である。また、図6は、ラスタ素子10無しで得たX線強度プロファイル(比較例)、図7は、ラスタ素子10を設けて得たX線強度プロファイル(実施例)である。図6、図7は、それぞれ図4、図5の2次元像から1次元データ変換したプロファイルである。
【0033】
図に示すように、ラスタ素子10を設置しない場合は、高温アタッチメントのドームの材質のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)による回折線P2が多数検出されるが、ラスタ素子10を設置するとPEEKの回折線P2が除去され、試料のAl2O3粉末の回折線P1のみ検出されている。このように、ラスタ素子10を設置した場合には、ドーム40からの回折線P2を完全に除去できた。
【0034】
(実験1−2)
また、ラスタ素子10および検出器20をアーム30に固定したX線回折装置6を用いて、アーム30を固定した場合とアーム30を揺動させた場合のそれぞれで回折像を検出した。図8は、ラスタ素子10および検出器20を固定して得た回折像、図9は、ラスタ素子10および検出器20を揺動して得た回折像である。図8に示すように、固定の場合はラスタ素子10のハニカム格子による強度ムラが観察できるが、図9に示すように、揺動することで強度ムラが均一化されていることが分かった。
【0035】
(第2の実施例)
別の実施例として、試料の表面にX線を微小角で入射させて、微小角で出射した回折X線を検出する場合を、比較例と対比しつつ説明する。図10は、ラスタ素子10無しで微小角入射X線回折測定を行なう場合の構成を示す平面図(比較例)であり、図11は、ラスタ素子10を設けて微小角入射X線回折測定を行なう場合の構成を示す平面図(実施例)である。
【0036】
微小角入射の例では、検出器20として2次元検出器が用いられる。図10に示すようにラスタ素子を持たないX線回折装置7で微小角入射X線回折測定のように2次元検出器で微小角入射するX線を検出する場合には、通常、試料位置でのX線の広がり41が原因で、取得される回折成分の2次元像の広がり42が生じ、分解能が悪くなる。すなわち、微小角入射の影響で2次元像が横長になる。これに対し、図11に示すラスタ素子10を設置したX線回折装置8では、ラスタ素子10を通過した回折X線43を検出することで、回折像の広がり42を防止でき、分解能を改善できる。
【0037】
しかし、この場合も、ラスタ素子10や検出器20を固定したままデータを取得すると、ラスタ素子10のハニカム格子に起因する強度ムラが生じる。この強度ムラの問題を解決するために、本実施例では、検出器とラスタを同時に揺動させるか(TDIスキャン)、もしくはラスタのみを揺動させ、強度を均一化する。
【0038】
(実験2)
まず、ラスタ素子10無しで、2次元検出器を利用して微小角入射X線回折測定をした。図12は、ラスタ素子無しで微小角入射X線回折測定をしたときの回折像(比較例)である。図中の数値は、格子面の指数を示している。微小角入射X線回折測定は、X線の試料への入射角度が1deg以下と非常に小さいため、試料上でのX線照射幅が広がる。その状態で2次元検出器にて微小角入射X線回折を測定した場合、照射幅の広がりの効果がそのまま検出器に反映され、X線回折像は照射幅に比例し広がった像となっている。
【0039】
これに対し2次元検出器の直前にラスタ素子を導入して測定した。図13は、ラスタ素子を設けて微小角入射X線回折測定をしたときの回折像(実施例)である。図中の数値は、格子面の指数を示している。ゴニオセンタ付近の回折線のみしか素子を通過できないという特徴があるため、ラスタ素子無しの状態と比較するとスポット上に観測され、結果的に微小角入射X線回折測定の分解能が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0040】
5〜8 X線回折装置
10 ラスタ素子
20 検出器
C 揺動方向
30 アーム
40 ドーム
41 試料位置でのX線の広がり
42 回折成分の2次元像の広がり
43 ラスタ素子を通過した回折X線
P1 Al2O3回折線
P2 PEEK回折線
I0 入射X線
R0 回折X線
S0 ゴニオセンタ(試料中心)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリキャピラリで形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法であって、
試料により回折させたX線をラスタ素子に入射させ、試料中心からの距離を維持し前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を変えつつ、前記ラスタ素子を通過したX線を検出器により検出することを特徴とする回折X線検出方法。
【請求項2】
前記検出器は、TDIスキャン可能な検出器であり、前記ラスタ素子を前記検出器のTDIスキャンに同期して移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴とする請求項1記載の回折X線検出方法。
【請求項3】
前記試料に対する前記検出器の位置を固定し、前記検出器に対して前記ラスタ素子を移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴とする請求項1記載の回折X線検出方法。
【請求項4】
前記試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回折X線検出方法。
【請求項5】
前記試料の表面にX線を微小角で入射させて、前記試料の表面に垂直な回転軸周りに回折した回折X線を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回折X線検出方法。
【請求項6】
試料にX線を照射し、回折X線を検出するX線回折装置であって、
ポリキャピラリで形成され、試料により回折されたX線が入射するラスタ素子と、
前記ラスタ素子を通過したX線を検出する検出器と、を備え、
前記ラスタ素子は、前記検出器に対して固定されており、前記検出器とともに前記試料中心を中心とした揺動操作が可能であることを特徴とするX線回折装置。
【請求項1】
ポリキャピラリで形成されたラスタ素子を介して行なう回折X線検出方法であって、
試料により回折させたX線をラスタ素子に入射させ、試料中心からの距離を維持し前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を変えつつ、前記ラスタ素子を通過したX線を検出器により検出することを特徴とする回折X線検出方法。
【請求項2】
前記検出器は、TDIスキャン可能な検出器であり、前記ラスタ素子を前記検出器のTDIスキャンに同期して移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴とする請求項1記載の回折X線検出方法。
【請求項3】
前記試料に対する前記検出器の位置を固定し、前記検出器に対して前記ラスタ素子を移動させることで、前記X線の回折角度に対する前記ラスタ素子の位置を移動させることを特徴とする請求項1記載の回折X線検出方法。
【請求項4】
前記試料の周りに温度制御用の機構を設け、In−situで回折X線を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回折X線検出方法。
【請求項5】
前記試料の表面にX線を微小角で入射させて、前記試料の表面に垂直な回転軸周りに回折した回折X線を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の回折X線検出方法。
【請求項6】
試料にX線を照射し、回折X線を検出するX線回折装置であって、
ポリキャピラリで形成され、試料により回折されたX線が入射するラスタ素子と、
前記ラスタ素子を通過したX線を検出する検出器と、を備え、
前記ラスタ素子は、前記検出器に対して固定されており、前記検出器とともに前記試料中心を中心とした揺動操作が可能であることを特徴とするX線回折装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−104717(P2013−104717A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247327(P2011−247327)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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