説明

回線制御システム及びその方法

【課題】同一のデータを複数の通信ネットワークで同時に伝送し、受信側では最初に受信したデータを採用する回線制御システム及びその方法を提供すること。
【解決手段】複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信装置とからなり、送信装置は、電文から伝送用電文データを作成する伝送用電文データ作成部と、伝送用電文データ作成部により作成された伝送用電文データから1つ以上の通信データを作成する通信データ作成部と、通信データ作成部により作成された通信データを送信する複数の送信機からなる送信機群とを備え、受信装置は、通信データを受信する複数の受信機を含む受信機群と、複数の受信機が受信した通信データから伝送用電文データを復元する受信制御部と、受信制御部が復元した伝送用電文データを格納するバッファと、バッファに格納された伝送用電文データを取り出して電文を抽出する電文処理部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線制御システム及びその方法に係り、特に、同一のデータを複数の通信ネットワークで同時に伝送し、受信側では最初に受信したデータを採用する回線制御システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号制御のような高い信頼性が要求されるシステムの伝送は、従来は専用の方式が使われていたが、一般的な通信ネットワークを使えればコストが大幅に低減する。しかし、そのような通信ネットワークは信頼性が低いため、複数の通信ネットワークを用意して、同時に伝送を行うことにより、どこかの通信ネットワークに障害が発生しても伝送を継続できるようにすることが求められている。これを解決するため、通信システムにおいて複数経路を設定し、状況に応じて経路を切り換え、複数経路ごとに受信バッファに蓄積して経路切替時にはアプリケーション層に渡すときに通番が連続するようにしてバッファから取り出すものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−130152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のシステムにおいては、複数の経路で同時に同じデータを送るものの、通常はある経路のデータだけを使いその経路に異常が発生したら別の経路から届いているデータを使い始めるため、データの連続性は確保できるが障害発生の検出までは切替が起こらず遅延が発生してしまう。このため、データの連続性を極力確保した上でしかも遅延の生じない通信システムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)そこで、本発明の回線制御システムは、複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信装置とからなる回線制御システムであって、前記送信装置は、電文から伝送用電文データを作成する伝送用電文データ作成部と、前記伝送用電文データ作成部により作成された伝送用電文データから1つ以上の通信データを作成する通信データ作成部と、前記通信データ作成部により作成された前記通信データを送信する複数の送信機からなる送信機群とを備え、
前記受信装置は、前記複数の送信機と対応して通信ネットワークを介して接続され、前記通信データを受信する複数の受信機を含む受信機群と、前記複数の受信機が受信した前記通信データから伝送用電文データを復元する受信制御部と、前記受信制御部が復元した前記伝送用電文データを格納するバッファと、前記バッファに格納された前記伝送用電文データを取り出して電文を抽出する電文処理部とを備える。なお、前記伝送用電文データに時刻情報を付加してもよい。
【0006】
(2)また、本発明の回線制御システムは、前記電文処理部が、前記バッファに格納された前記伝送用電文データに付された時刻情報を読み取って前記時刻情報に含まれる時刻と現時点の時刻と差が所定の閾値を超える場合に、前記バッファに格納された伝送用電文データを削除するものであってもよい。
【0007】
(3)また、本発明の回線制御システムは、前記送信装置に、前記送信機群と接続されている通信ネットワークのネットワーク状態を判断して格納する通信状態テーブルを備え、前記通信状態テーブルに基づいて、複数の通信ネットワークのうちネットワーク状態の良好なものを選択する伝送路選択部を備えていてもよい。
【0008】
(4)また、本発明の回線制御システムは、前記受信装置が前記通信データを受信した場合に、前記通信データを受信した前記受信機に接続する前記通信ネットワークを介して、前記通信データの内容のエコーバックを返信するものであってもよい。
【0009】
(5)また、本発明の回線制御方法は、複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信装置とからなる回線制御システムの回線制御方法であって、データの送信の際に、データの通番を付与する通番付与ステップと、データの許容紛失度に応じて使用する通信ネットワーク数を決定する回線数決定ステップと、通信ネットワークの状態に応じて通信ネットワークを選択する回線選択ステップと、前記回線数決定ステップにより決定された通信ネットワーク数と同じ個数の同一データを作成する同一データ作成ステップと、前記同一データ作成ステップにより作成されたデータにそれぞれ誤り検出符号を付与する誤り検出符号付与ステップと、
前記誤り検出符号付与ステップにより付与されたそれぞれのデータを前記回線選択ステップにより選択された通信ネットワークに送信する送信ステップとを含む。
【0010】
(6)また、本発明の回線制御方法は、複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信データを格納するバッファを備えた受信装置とからなる回線制御システムにおける、発信元及び宛先のアドレスが同一の受信データが複数存在する場合の回線制御方法であって、データの受信の際に、バッファに格納されたデータのうち最も通番の小さいデータを取り出すデータ取得ステップと、前記データ取得ステップにより取り出されたデータの通番(S)と、直近に処理したデータの通番(N)とを対比する対比ステップと、前記対比ステップにより対比した結果、前記データ取得ステップにより取得したデータの通番が、直近に処理したデータの通番の次の番号となる場合(S=N+1の場合)にのみデータの処理を行うデータ処理ステップとを含む。
【0011】
(7)また、本発明の回線制御方法は、前記データ処理ステップが、前記対比ステップの結果がS≦Nの場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータを消去し、前記対比ステップの結果がS≧N+2の場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータを保持するステップを含んでもよい。
【0012】
(8)また、本発明の回線制御方法は、前記データ処理ステップが、前記対比ステップの結果がS≧N+2の場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータの保持を所定期間のみとし、所定期間を経過した場合にはデータの処理を行うステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信ネットワークに障害が発生しても遅延の生じない安定した通信の確保を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る回線制御システムの全体構成図である。
【図2】本発明に係る回線制御システムの全体構成図である。
【図3】本発明に係る回線制御システムの送信装置のブロック図である。
【図4】本発明に係る回線制御システムの送信装置のブロック図である。
【図5】通信状態テーブルと送信機との接続を示した図である。
【図6】送信伝送制御装置において作成される通信データの構造を示す図である。
【図7】本発明に係る回線制御システムに用いられる受信装置のブロック図である。
【図8】本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る回線制御方法について受信の際に行う処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る回線制御システムの全体構成図である。図1には、複数の通信ネットワーク100、101を介して送信装置200と受信装置300とを含む通信装置120、140とで構成される回線制御システム10が図示されている。
【0016】
通信装置120、140は、それぞれ送信装置200と受信装置300とを含む。また、本明細書においては二者間の通信を例として説明するが、二者間の通信に限定されるものでないことはもちろんである。
【0017】
通信ネットワーク100、101には、実際の伝送路、モデム、アクセスポイント(図示せず)等が含まれている。通信装置間で例えばTCP又はUDPによる通信を行う。このような通信ネットワークの例としては、直結した通信ケーブル、イントラネット等があるが、これに限定されるものではない。
【0018】
図1には通信装置120と140とを2つの通信ネットワークで接続した状態を示したが、2つの通信ネットワークに限定されるわけではなく、当然、本発明の目的に応じて3つ以上の通信ネットワークで本件回線制御システムを構築することができる。また、通信ネットワークの個数は任意であり、同時に送信できる最大限の通信ネットワークを選択することもできる。
【0019】
図2は、本発明に係る回線制御システムの全体構成図である。図1で図示した通信装置120、140のうち、左側を送信側、右側を受信側として考えた場合の全体構成を図示したものであり、送信装置200と受信装置300とが通信ネットワーク100、101を介して接続されている。
【0020】
送信装置200は、送信伝送制御装置204、送信機206、208を含み、受信装置300は、受信伝送制御装置304、受信機306、308を含む。
【0021】
信号装置202からの指令等の情報(本明細書及び特許請求の範囲において、「電文」という)を送信するに際し、フレームロスや伝送遅延の影響を抑えるために、送信の際には送信機206、送信機208を用いて複数の通信ネットワークを使って1つの電文から作成した通信データを同時に複数送信する。なお、電文には、伝送に際しての許容紛失度を表すデータを含んでもよい。許容紛失度は、例えば高/低で表される。
【0022】
受信の際には、複数の通信ネットワークから送信された同一の電文から作成された通信データのうち、最も速く到着した通信データを採用する。なお、図2においては信号装置202と送信伝送制御装置204を一対一の対応関係で示したが、送信伝送制御装置204は、複数の信号装置で共用するような構成にすることもできる。
【0023】
また、通信データを受信した受信伝送装置は、前記通信データを受信した前記受信機に接続する前記通信ネットワークを介して、受信した通信データの内容のエコーバックを返すような構成としてもよい。
【0024】
図3は、本発明に係る回線制御システムの送信装置のブロック図である。図3には、送信伝送制御装置204に電文を転送する信号装置202と、所定の情報から伝送用電文データを作成する伝送用電文データ作成部215及び伝送用電文データ作成部により作成された伝送用電文データに誤り検出符号を付加して通信データを作成する通信データ作成部220を含む送信伝送制御装置204と、通信データ作成部により作成されたデータを送信する複数の送信機(206、208)からなる送信機群(230)とを含む送信装置(200)が図示されている。
【0025】
信号装置202は、送信伝送制御装置204に電文を転送する。ここで信号装置202としては、信号機と連動装置等が考えられる。送信伝送制御装置204は、伝送用電文データ作成部215と通信データ作成部220とを含む。
【0026】
伝送用電文データ作成部215は、電文から伝送用電文データを作成する。通信データ作成部220は、伝送用電文データ作成部により作成された伝送用電文データに誤り検出符号を付加して通信データを作成する。
【0027】
送信機群(230)は、複数の送信機(206、208)を含んでおり、通信データ作成部により作成された送信データを送信する。
【0028】
図4は、本発明に係る回線制御システムの送信装置の別のブロック図である。図3と同符号は同じ意味である。図4に図示した送信装置200は、図3の送信装置に、送信機群と接続されている通信ネットワークのネットワーク状態を格納する通信状態テーブル(240)を備え、通信状態テーブルに基づいて、複数の通信ネットワークのうちネットワーク状態の良好なものを選択する伝送路選択部(250)と、電文ごとに使用する通信ネットワークの数を算定する許容紛失度判定部260とを備えている。
【0029】
図5は、通信状態テーブルと送信機群、送信伝送制御装置204、通信状態テーブル240との接続を示した図である。図4と同符号のものは同じ意味である。通信状態テーブル240は、送信機群と接続されている通信ネットワークのネットワーク状態を格納する。テーブルに記載する項目としては、(a)接続状態として、接続/切断、(b)フレームロス率 例えば「大」「小」、(c)伝送遅延時間 例えば「速」「遅」がある。接続状態は、送信機の動作状態から判断する。フレームロス率は、通信ネットワークに接続された受信装置において一定期間の間に受信した通信データの数と、期間の最後に受信した通信データの通番と期間の最初に受信した通信データの通番の差の比から計算される、逆方向のフレームロス率から評価する。
【0030】
伝送遅延時間は、現在時刻と通信ネットワークに接続された受信装置において受信した通信データの時刻情報の差から計算される、逆方向の伝送遅延時間から評価する。また、送信装置は周期的にダミー電文を送信して測定することができる。また、受信装置がエコーバックを返すように構成されていれば、送信した通信データに対するエコーバックの受領の有無及びエコーバックを受領するまでの時間により、フレームロス率と伝送遅延時間を計算することができる。
【0031】
テーブルの内容は、随時更新する。この通信状態テーブル240は、図5に示すように一つのテーブルで接続されているすべての通信ネットワークの状態を示すテーブルでも良く、また、通信ネットワーク毎にテーブルを設けても良い。要は、回線の状態を管理することが可能なテーブルであればよい。
【0032】
図4に戻る。伝送線路選択部250は、通信状態テーブルに基づいて、複数の通信ネットワークのうちネットワーク状態の良好なものを選択する。選択できる通信ネットワークは、接続状態が接続のものだけである。複数本使う場合には、例えば、「フレームロス率小、伝送遅延時間小」、「フレームロス率小、伝送遅延時間大」、「フレームロス率大、伝送遅延時間小」、「フレームロス率大、フレームロス率小」、「伝送遅延時間大、フレームロス率大」の順序で良い方から順にF本の通信ネットワークを選択するように設定することができる。
【0033】
図6は、送信伝送制御装置204において作成される通信データ500の構造を示す図である。宛先アドレス530、発信元アドレス540、送信通番550、時刻情報560、電文570、誤り検出符号510から構成される。また、伝送用電文データは、宛先アドレス530、発信元アドレス540、送信通番550、時刻情報560、電文570から構成される。
【0034】
まず、伝送用電文データ作成部215は、信号装置202から受領した電文に、送信通番550、時刻情報560、宛先アドレス530及び発信元アドレス560を付した伝送用電文データを作成し、通信データ作成部220へ渡す。送信通番は、宛先アドレス/発信元アドレスの組ごとに管理できるようにする。通信データ作成部220は、伝送用電文データに誤り検出符号を付加し、通信データを作成する。
【0035】
図7は、本発明に係る回線制御システムに用いられる受信装置のブロック図である。図7には、複数の送信機と対応して通信ネットワークを介して接続され、通信データを受信する複数の受信機(306、308)を含む受信機群(310)と、伝送用電文データを格納するバッファ(320)と、複数の受信機が受信した通信データから伝送用電文データを抽出してバッファに格納する受信制御部330と、バッファに格納された伝送用電文データから電文を抽出する電文処理部(340)と、バッファに格納された伝送用電文データを消去するタイミングを与えるタイマ350とを備えた受信装置300が図示されている。
【0036】
受信機群(310)は、複数の送信機と対応して通信回線を介して接続され、通信データを受信する複数の受信機(306、308)を含む。バッファ(320)は、伝送用電文データを格納する。
【0037】
受信制御部(330)は、複数の受信機が受信した通信データから伝送用電文データを抽出してバッファに格納する。また受信制御部(330)は、通信データを受信した受信機に接続する通信ネットワークを介して、受信した通信データの内容のエコーバックを返信してもよい。
【0038】
電文処理部(340)は、バッファに格納された伝送用電文データから電文を抽出する。
【0039】
このように構成された回線制御システムの動作について以下、説明する。電文が転送された送信装置200において以下のような送信側処理を行う。
【0040】
図8は、本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。図8には、複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置200と受信装置300とからなる回線制御システムの送信装置の回線制御方法が示されており、データの送信の際に、データの通番を付与する通番付与ステップ(S710)と、データの許容紛失度に応じて使用する通信ネットワーク数を決定する回線数決定ステップ(S720)と、通信ネットワークのネットワーク状態に応じて通信ネットワークを選択する回線選択ステップ(S730)と、回線数決定ステップにより決定された回線数と同じ個数の同一データを作成する同一データ作成ステップ(S740)と、同一データ作成ステップにより作成されたデータにそれぞれ誤り検出符号を付与する誤り検出符号付与ステップ(S750)と、誤り検出符号付与ステップにより付与されたそれぞれのデータを回線選択ステップにより選択された回線に送信するステップ(S760)とを含む。
【0041】
通番付与ステップ(S710)では、データの送信通番、宛先アドレス、発信元アドレス及び時刻情報を電文に付与して伝送用電文データを作成する。送信通番は、宛先アドレス/発信元アドレスの組ごとに管理し、同一の宛先アドレス/発信元アドレスのデータでは、送信通番の値は付与するたびに1づつ増加するようにする。時刻情報には、現在時刻を設定する。また、回線数決定ステップ(S720)では、データの許容紛失度に応じて使用する通信ネットワーク数を決定する。通番付与ステップ(S710)が作成した伝送用電文データごとに、何本の通信ネットワークを使って伝送するかを決める。許容紛失度「低」の伝送用電文データは、F本の複数通信ネットワークで同時に伝送する。Fは、事前に定義しておく。それ以外の伝送用電文データは、1本だけで伝送する。
【0042】
回線選択ステップ(S730)では、通信ネットワークのネットワーク状態に応じて通信ネットワークを選択する。具体的にどの通信ネットワークを使うかを決める。選択できる通信ネットワークは、接続状態が接続のものだけである。複数本使う場合には、例えば、「フレームロス率小、伝送遅延時間小」、「フレームロス率小、伝送遅延時間大」、「フレームロス率大、伝送遅延時間小」、「フレームロス率大、フレームロス率小」、「伝送遅延時間大、フレームロス率大」の順序で良い方から順にF本の通信ネットワークを選択するように設定することができる。
【0043】
同一データ作成ステップ(S740)では、回線数決定ステップにより決定された通信ネットワーク数と同じ個数の同一伝送用電文データを作成する。
【0044】
誤り検出符号付与ステップ(S750)では、同一データ作成ステップにより作成された伝送用電文データにそれぞれ誤り検出符号を付与して通信データを作成する。誤り検出符号としては、CRC(Cyclic Redundancy Check)、デジタル署名、DES等による暗号化等があるが、これに限定されるものではない。また、通信ネットワークごとに異なる誤り検出符号を付与してもよい。
【0045】
送信ステップ(S760)では、誤り検出符号付与ステップにより付与されたそれぞれの通信データを回線選択ステップにより選択された通信ネットワークに送信する。回線数決定ステップ(S720)にて決定されたF本の通信ネットワークを使って、通信データを送信する。
【0046】
図9は、本発明に係る回線制御方法について受信の際に受信制御部が行う処理を示すフローチャートである。受信した通信データが暗号化されている場合には、まず、暗号を解読する(S810)。解読結果が不正であれば、「通信データの改ざん」または「なりすまし」が発生したことになり、通信データを廃棄する(S840)。
【0047】
また、必要に応じて、CRC検査を行う(S810)。チェックエラーが発生すれば、「通信データの改ざん」が発生したことになり、通信データを廃棄する(S840)。
【0048】
さらに、発信元アドレスが正しいかをチェックする(S820)。正しいかどうかの判定のために、自分に通信データを送ってくる通信装置のアドレスのリストを持っていてもよい。また、宛先アドレスが自アドレスと等しいかチェックする。正しくなければ「通信データの挿入」が発生したことになり、通信データを廃棄する(S840)。これらのチェックでエラーが発生しなければ、伝送用電文データを抽出してバッファに格納する(S830)。さらに、通信データを受信した受信機に接続する通信ネットワークを介して、受信した通信データの内容のエコーバックを返信してもよい。
【0049】
図10は、本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。図10には、複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信データを格納するバッファを備えた受信装置とからなる回線制御システムにおける、発信元及び宛先のアドレスが同一の受信データが複数存在する場合の電文処理部における回線制御方法が図示されており、バッファに格納されたデータのうち最も送信通番の小さいデータを取り出すデータ取得ステップ(S910)と、取り出したデータを処理すべきかの判定を行うデータ判定ステップ(S930)とを含む。
【0050】
データ取得ステップ(S910)は、バッファに格納されたデータのうち最も送信通番の小さいデータを取り出す。
【0051】
データ判定ステップ(S930)は、データ取得ステップにより取得したデータを処理すべきかの判定を行う。このデータ判定の詳細は図11に示す。
【0052】
図11は本発明に係る回線制御方法を示すフローチャートである。対比ステップ(S920)は、データ取得ステップにより取り出されたデータの通番(S)と、直近に処理したデータの通番(N)とを対比する。S=N+1の場合には、Nの値をSにセットしてタイマーを停止してタイマをリセットする(S1100、S1120、S1130)。そしてデータを処理する(S1180)。データの処理とは、伝送用電文データから電文を抽出し、信号装置302に送信することである。
【0053】
さらに、対比ステップ(S920)の結果がS≦Nの場合には、データ取得ステップ(S910)により取得したバッファ内のデータを消去する(S1170)。対比ステップ(S920)の結果がS≧N+2の場合には、タイマが動作していなければタイマをスタートし、データ取得ステップ(S910)により取得したバッファ内のデータを保持する(S1140、S1190,S1160)。
【0054】
さらに、対比ステップ(S920)及びステップS1100の結果がS≧N+2の場合には、データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータの保持を所定時間のみとし、所定時間を経過した場合にはNの値をSにセットしてタイマーを停止してタイマをリセットする(S1140、S1150、S1120、S1130)。そしてデータを処理する。(S1180)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、同一のデータを複数の通信ネットワークで同時に伝送し、受信側では最初に受信したデータを採用する通信システム及びその方法であるため通信分野での利用が期待される。
【符号の説明】
【0056】
10 回線制御システム
100、101 通信ネットワーク
120、140 通信装置
200 送信装置
202 信号装置
204 送信伝送制御装置
206、208 送信機
215 伝送用電文データ作成部
220 通信データ作成部
230 送信機群
240 通信状態テーブル
250 伝送路選択部
260 許容紛失度判定部
300 受信装置
302 信号装置
304 受信伝送制御装置
306、308 受信機
310 受信機群
320 バッファ
330 受信制御部
340 電文処理部
350 タイマ
500 通信データ
510 誤り検出符号
530 宛先アドレス
540 発信元アドレス
550 送信通番
560 時刻情報
570 電文

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信装置とからなる回線制御システムの回線制御方法であって、データの送信の際に、
データの通番を付与する通番付与ステップと、
データの許容紛失度に応じて使用する通信ネットワーク数を決定する回線数決定ステップと、
通信ネットワークの状態に応じて通信ネットワークを選択する回線選択ステップと、
前記回線数決定ステップにより決定された通信ネットワーク数と同じ個数の同一データを作成する同一データ作成ステップと、
前記同一データ作成ステップにより作成されたデータにそれぞれ誤り検出符号を付与する誤り検出符号付与ステップと、
前記誤り検出符号付与ステップにより付与されたそれぞれのデータを前記回線選択ステップにより選択された通信ネットワークに送信する送信ステップとを含む、
回線制御システムのデータ送信方法。
【請求項2】
複数の通信ネットワークを介して接続された送信装置と受信データを格納するバッファを備えた受信装置とからなる回線制御システムにおける、発信元及び宛先のアドレスが同一の受信データが複数存在する場合の回線制御方法であって、データの受信の際に、
バッファに格納されたデータのうち最も通番の小さいデータを取り出すデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにより取り出されたデータの通番(S)と、直近に処理したデータの通番(N)とを対比する対比ステップと、
前記対比ステップにより対比した結果、データ取得ステップにより取得したデータの通番が、直近に処理したデータの通番の次の番号となる場合(S=N+1の場合)にのみデータの処理を行うデータ処理ステップとを含む、
回線制御方法。
【請求項3】
前記データ処理ステップが、前記対比ステップの結果がS≦Nの場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータを消去し、前記対比ステップの結果がS≧N+2の場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータを保持するステップを含む、請求項記載の回線制御方法。
【請求項4】
前記データ処理ステップが、前記対比ステップの結果がS≧N+2の場合には、前記データ取得ステップにより取得したバッファ内のデータの保持を所定期間のみとし、所定期間を経過した場合にはデータの処理を行うステップを含む、請求項記載の回線制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199884(P2011−199884A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106925(P2011−106925)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【分割の表示】特願2007−5410(P2007−5410)の分割
【原出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】