説明

回路基板、及び、ノイズ対策部品の配置方法

【課題】 回路基板のレイアウトを変更することなくノイズレベルを低減することが可能な回路基板を提供する。
【解決手段】 回路基板10は、電波を送受信するアンテナ20と、ノイズ発生源31と、ノイズ発生源31の近傍に、かつ、ノイズ発生源31に流れる電流によって生じる磁界の向きとループの中心軸とが略並行となる位置に配置される閉じた環状のループ状導体40とを備える。回路基板10によれば、ループ状導体40に誘起される誘導電流によって、ノイズ発生源31による磁束密度の変化が妨げられることにより、ノイズ発生源31から回路基板10に漏洩する電流が減少する。そのため、ノイズ発生源31とアンテナ20とのカップリングを低減することができ、アンテナ20の受信感度を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、及び、ノイズ対策部品の配置方法に関し、特に、ノイズ対策部品が実装される回路基板、及び、当該ノイズ対策部品の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器の小型化、薄型化、高速駆動化などに伴い、携帯電子機器内のデジタル回路から発生したノイズがアンテナを経由して受信回路に混入し、受信感度を劣化させる現象、所謂自家中毒(self−contamination)が問題になっている。ここで、非特許文献1には、自家中毒問題(self−contamination problem)において、ノイズ源の最適配置場所をノイズ源とアンテナの磁界分布の重なり度合い(相関)から評価する技術が開示されている。
【0003】
非特許文献1記載の技術によれば、アンテナの磁界分布と、ノイズ源の磁界分布とから算出した相関係数に基づいて、ノイズ源の最適配置場所を設定できることが示されている。すなわち、この技術によれば、例えばICや配線などのノイズ源の磁界分布とアンテナの磁界分布との重なりが小さくなるようにレイアウトすることでノイズ対策を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】前川智哉、岩城秀樹、山田徹、小川晃一、「近傍磁界分布を用いたノイズ源最適配置推進法の提案」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、EMCJ2008−14(2008−6)、p41−46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、非特許文献1に記載の技術によれば、回路基板のレイアウトを変更することでノイズ対策を行うことができる。しかしながら、回路基板のレイアウトを変更するには大きな労力・工数を要するおそれがある。また、レイアウトを変更しないとノイズ対策を行うことができないとすると、回路基板設計の自由度が阻害されるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、回路基板のレイアウトを変更することなくノイズレベルを低減することが可能な回路基板、及び、ノイズ対策部品の配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回路基板は、複数の電子部品が実装される回路基板において、複数の電子部品に含まれ、ノイズ源となる電子部品と、ノイズ源となる電子部品の近傍に、かつ、ノイズ源に流れる電流によってノイズ源の周囲に生じる磁界が通過する位置に配置される閉じた環状のループ状導体とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る回路基板によれば、ノイズ源となる電子部品の近傍に、かつ、ノイズ源に流れる電流によってノイズ源の周囲に生じる磁界が通過する位置に閉じた環状のループ状導体が配置される。ところで、ノイズ源から生じた磁界が閉じた環状のループ状導体のループ内を通過するとき、ループ状導体には、磁束密度の変化に応じて誘導電流が誘起される。この誘導電流は、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げる方向に流れる。そのため、この誘導電流によって、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げることにより、ノイズ源から回路基板に漏洩する電流を減少させることができる。その結果、回路基板のレイアウトを変更することなく、ノイズレベルを低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る回路基板では、ループの中心軸が、前記ノイズ源に流れる電流によって生じる磁界の向きと略平行となる位置に、上記ループ状導体が配置されることが好ましい。
【0010】
この場合、ループ状導体によって囲われた領域を通過する磁束が多くなり、それに伴い磁束密度の変化量も大きくなる。そのため、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げるようにループ状導体に誘起される誘導電流が増大する。よって、より効果的にノイズを低減することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る回路基板は、電波を受信及び/又は送信するアンテナが取り付けられていることが好ましい。
【0012】
上述したように、ループ状導体に誘起する誘導電流によって、ノイズ源による磁束密度の変化が妨げられることにより、ノイズ源から回路基板に漏洩する電流が減少する。そのため、ノイズ源とアンテナとのカップリングを低減することができる。その結果、アンテナの受信電力のS/N比が改善され、受信感度を向上することが可能となる。
【0013】
本発明に係る回路基板では、上記ループ状導体が、導体が複数回、巻回されるとともに、該導体の始端と終端とが巻回されたループの内側を通って接続されるように形成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、導体が複数回巻回されてループ状導体が形成されているため、ループ状導体に誘起される誘導電流を増大させることができる。よって、ノイズ低減効果をさらに高めることが可能となる。また、ループ状導体の始端と終端とがループの内側を通って接続されるように構成されているため、ループで囲まれた面積をより大きくすることができる。よって、サイズが制限されている場合であっても、より効率よくノイズを低減することができる。
【0015】
また、上記ループ状導体は、導体が複数回、巻回されるとともに、該導体の始端と終端とが巻回されたループの外側を通って接続されるように形成されていてもよい。
【0016】
この場合、導体が複数回巻回されてループ状導体が形成されているため、ループ状導体に誘起される誘導電流を増大させることができる。よって、ノイズ低減効果をさらに高めることが可能となる。また、ループ状導体の始端と終端とがループの外側を通って接続されるように構成されているため、製造が容易であり、生産効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る回路基板では、ループ状導体のループの途中に集中定数部品が挿入されていることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、ループ状導体自身の形状を変更することなく、ループ全体のインピーダンスをコントロールすることが可能となる。例えば、集中定数部品として、コイル(インダクタンス)又はコンデンサ(キャパシタンス)を挿入することにより、ループ状導体の共振周波数をコントロールすることができるため、例えば、ノイズの周波数に対して、共振周波数を合わせることができる。その場合、共振周波数を中心とする狭帯域に該当するノイズに対して、インピーダンスが最大となるため、より効果的にノイズを低減することができる。また、例えば、集中定数部品として、抵抗を挿入することにより、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げるように誘導電流が誘起されたときに、該誘導電流を熱に変えることができる。
【0019】
また、本発明に係る回路基板では、ループ状導体が、回路基板に形成された配線パターンを含み、該配線パターンを介してループが形成されていることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、ループ状導体と回路基板との間の隙間が無くなるため、ループ状導体が回路基板から離れて配置されている場合と比較して、ループ状導体と回路基板との間を通過する磁界がなくなる。そのため、ノイズ低減効果を向上させることができる。また、ループ状導体が回路基板に直接取り付けられるため、取り付けの信頼性、及び、取り付け位置の精度を向上することができる。
【0021】
また、本発明に係る回路基板では、上記配線パターンの途中に集中定数部品が挿入されていることが好ましい。
【0022】
この場合も、上述したように、ループ状導体自身の形状を変更することなく、ループ全体のインピーダンスをコントロールすることが可能となる。例えば、集中定数部品として、コイル(インダクタンス)又はコンデンサ(キャパシタンス)を挿入することにより、共振周波数をコントロールすることができるため、例えば、ノイズの周波数に対して、共振周波数を合わせることができる。また、例えば、集中定数部品として、抵抗を挿入することにより、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げるように誘導電流が誘起されたときに、該誘導電流を熱に変えることができる。さらに、この場合、集中定数部品として、チップコンデンサやチップ抵抗等のチップ型電子部品を用いることにより、実装の際にチップ型電子部品のマウンタを利用することができるため、生産性を向上させることができる。
【0023】
本発明に係るノイズ対策部品の配置方法は、複数の電子部品が実装された回路基板に含まれるノイズ源を特定するノイズ源特定ステップと、ノイズ源特定ステップにおいて特定されたノイズ源に流れる電流によって該ノイズ源の周囲に生じる磁界の方向を特定する磁界方向特定ステップと、ノイズ源の近傍に、かつ、磁界方向特定ステップにおいて特定されたノイズ源の磁界の方向と、ループの中心軸とが略平行となる位置に閉じた環状のループ状導体を配置する配置ステップとを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るノイズ対策部品の配置方法によれば、ノイズ源の近傍に、かつ、ノイズ源に流れる電流によってノイズ源の周囲に生じる磁界が通過する位置に閉じた環状のループ状導体が配置される。そのため、ループ状導体に誘起される誘導電流によって、ノイズ源による磁束密度の変化が妨げられることにより、ノイズ源から回路基板に漏洩する電流を減少させることができる。その結果、回路基板のレイアウトを変更することなく、ノイズレベルを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ノイズ源の近傍に、かつ、ノイズ源に流れる電流によって生じる磁界が通過する位置に閉じた環状のループ状導体を配置する構成としたため、回路基板のレイアウトを変更することなくノイズレベルを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る回路基板の構成を示す斜視図及び要部拡大図である。
【図2】第1実施形態に係る回路基板における磁界の向き(磁力線)を示す平面図である。
【図3】ループ状導体がない場合の磁界の向き(磁力線)を示す平面図である。
【図4】挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】第2実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体を示す図である。
【図6】第3実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体を示す図である。
【図7】第4実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体を示す図である。
【図8】第5実施形態に係る回路基板に取り付けられたループ状導体を示す図である。
【図9】第6実施形態に係る回路基板に取り付けられたループ状導体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
[第1実施形態]
まず、図1を用いて、実施形態に係る回路基板10の構成について説明する。図1は、回路基板10の構成を示す斜視図及び要部拡大図である。
【0029】
回路基板10は、矩形の両面基板である。回路基板10は、例えばFR−4などの誘電体からなる矩形の基板(絶縁層)11を有する。この基板11の両面には、銅箔などの導体からなる回路パターン、電源パターン、及びグランドパターンを含む配線層12,13がエッチングなどの方法によって形成されている。ここで、本実施形態では、配線層12は、ベタのグランド層とした(以下、配線層12をグランド層12と呼ぶこともある)。なお、図1では、パターンの詳細については図示を省略した。また、回路基板10の形状は、矩形には限られない。さらに、回路基板10は、両面基板に限られることなく、片面基板や多層基板でもよい。
【0030】
回路基板10の上端部には、アンテナ20が接続されている。本実施形態では、アンテナ20として、銅線(φ=1mm)を用いて形成したモノポールアンテナを用いた。また、回路基板10には、ノイズ源となるIC30、及び複数の電子部品(図示省略)がはんだ付けなどによって実装されている。
【0031】
ノイズ源となるIC30としては、例えば、スイッチングレギュレータに用いられる電源ICなどが挙げられる。電源ICでは、例えば、電源IC内のグランドと、該電源ICのグランド端子が接続される回路基板10側のグランドとの間で電流が流れることにより、ノイズが発生する。このようにして発生したノイズがアンテナ20に入ると受信感度の劣化を引き起こすおそれがある。
【0032】
回路基板10上において、ノイズ源となるIC30の近傍(図1では左隣)には、閉じた環状のループ状導体40が、粘着材や接着剤、又は、はんだ付けなどによって取り付けられている。ループ状導体40は、断面が矩形の例えば銅などの金属(導体)からなる線材によって、「口」の字状に形成されている。なお、用いられる線材の断面形状は、矩形に限られず、例えば、円形や楕円形、多角形などでもよい。また、ループの形状も、「口」の字状に限られず、例えば、リング状や多角形などであってもよい。ループ状導体40のサイズは、任意に設定することができる。ただし、例えば、SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)で採用されている、0603サイズ(0.6×0.3×0.3mm)又は1005サイズ(1.0×0.5×0.5mm)などの標準サイズに統一されていることが好ましい。
【0033】
ループ状導体40は、回路基板10に取り付けられる際に、ノイズ源となるIC30のグランドに流れる電流によってIC30の周囲に生じる磁界が通過する位置、より好ましくは、ループ状導体40の中心軸がノイズ源によって生じる磁界の向きと略平行となる位置(すなわち、ループの開口面と磁界とが略直交する位置)に配置される。なお、ループ状導体40は、その中心軸がIC30の周囲に生じる磁界の向きに対して略平行する位置に配置されていればよく、その配置は、図1に示されるように、IC30の左隣に限られることなく、例えばIC30の上下・前後左右のいずれであってもよい。
【0034】
ここで、ループ状導体40の配置方法について説明する。まず、回路基板10に実装された電子部品の中から、ノイズ源となるIC30(以下単に「ノイズ源30」ともいう)が特定される(ノイズ源特定ステップ)。より具体的には、ノイズ源30は、電流が流れたときに発生する磁界を測ることにより特定することができる。なお、磁界に代えて、電界を測定することによりノイズ源30を特定してもよい。
【0035】
続いて、特定されたノイズ源30に流れる電流によってノイズ源30の周囲に生じる磁界の方向が特定される(磁界方向特定ステップ)。より具体的には、ノイズ源30に磁界プローブを当てる際に、該磁界プローブの方向性から磁界の方向を特定することができる。
【0036】
そして、ノイズ源30の近傍に、かつ、特定されたノイズ源30の磁界の向きに対して、ループの中心軸と略平行となる位置に閉じた環状のループ状導体40が配置される(配置ステップ)。
【0037】
以上説明したように、回路基板10によれば、ループ状導体40は、ノイズ源となるIC30の近傍に、かつ、IC30のグランドに流れる電流によってIC30の周囲に生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0038】
ここで、回路基板10の上方50mmにおける、IC(ノイズ源)30におけるノイズ発生源(ノイズ発生が特定される部分)31及びループ状導体40周辺の磁界の向き(磁力線)を図2に示す。また、ループ状導体40がない場合のノイズ発生源31周辺の磁界の向き(磁力線)を図3に示す。なお、図2、図3において、ノイズ発生源31は、IC30内のグランドと回路基板10のグランドとの間を接続する配線を模擬したものであり、板金、あるいは、針金を用いて、先端が短絡されたループ状(1mm×1mm)に形成した。
【0039】
図3に矢印で示されるように、ループ状導体40がない場合、ノイズ発生源31の磁界(磁力線)は、ノイズ発生源31の一端からY軸方向に出て、乱されることなく、円(又は楕円)を描くようにノイズ発生源31の他端へ向かう。一方、ノイズ発生源31の近傍に、かつ、ループの中心軸がY軸(すなわち磁界の向き)と平行となる位置(図2ではノイズ発生源31の上側)にループ状導体40が配置された場合、ノイズ発生源31による磁束密度の変化を妨げるようにループ状導体40に誘導電流が誘起されるため、図2に示されるように、Y軸方向に出たノイズ発生源31の磁界(磁力線)が、ループ状導体40により、歪められて乱される。このように、ループ状導体40に誘起される誘導電流によって、ノイズ発生源31の電流によって励起される磁界が乱されることにより、ノイズ発生源31から回路基板10に漏洩する電流が減少する。そのため、ノイズ発生源31とアンテナ20とのカップリングが低減する。その結果、アンテナ20の受信電力のS/N比が改善され、受信感度が向上する。
【0040】
本実施形態に係る回路基板10のノイズ対策効果を確認するために、電磁界シミュレーションによって、アンテナ20とノイズ発生源31との間のアイソレーションを定量的に示す量である挿入損失を解析した。続いて、図4を参照しつつ、本実施形態に係る回路基板10、及びループ状導体40が設けられていない回路基板(比較例)それぞれのノイズ対策効果について、シミュレーション結果を示して説明する。ここで、シミュレーションにおいては、回路基板10のサイズを、長さL:80mm、幅W:40mm、厚みt:1mm、アンテナ20のサイズを、径φ:1mm、長さL:80mm、ノイズ発生源31のサイズを、長さL:1mm、幅W:0.5mm、厚みt:1mmと設定した。また、ループ状導体40のサイズを、長さL:1mm、幅W:1mm、厚みt:1mmと設定した。
【0041】
図2に示される本実施形態に係る回路基板10、及び、図3に示されるループ状導体40が設けられていない回路基板(比較例)を用いて、SパラメータのS21を求め、その結果から、回路基板10及び比較例それぞれのノイズ対策効果を評価した。なお、S21は、port1(ノイズ発生源31)に信号を入力したときにport2(アンテナ20)に伝達される割合、すなわち順方向の伝達係数である。よって、このS21の値が小さいほど、挿入損失が大きく、すなわち、ノイズ対策効果が大きいと評価することができる。
【0042】
図2に示される本実施形態に係る回路基板10、及び、図3に示されるループ状導体40が設けられていない回路基板(比較例)それぞれのシミュレーション結果を図4に示す。図4に示されたグラフの横軸は周波数(GHz)であり、縦軸はS21(dB)である。また、図4のグラフでは、回路基板10のシミュレーション結果(S21)を実線で、比較例のシミュレーション結果(S21)を破線で示した。
【0043】
図4に示されるように、本実施形態に係る回路基板10では、ループ状導体40が設けられていない回路基板(比較例)と比較して、0.7〜1.1GHzの周波数領域において、約3〜6dB程度、S21が減少し(すなわち、挿入損失が増大し)、アンテナ20とノイズ発生源31とのアイソレーション(カップリング)が改善されることが確認された。
【0044】
本実施形態によれば、ノイズ発生源31(ノイズ源30)の近傍に、かつ、ノイズ発生源31に流れる電流によって生じる磁界が通過する位置に閉じた環状のループ状導体40が配置される。そのため、ノイズ発生源31による磁束密度の変化を妨げるようにループ状導体40に誘導電流が誘起され、ノイズ発生源31による磁界(磁力線)が、ループ状導体40により、歪められて乱される。このように、ループ状導体40に誘起される誘導電流によって、ノイズ発生源31の電流によって励起される磁界が乱されることにより、ノイズ発生源31から回路基板10に漏洩する電流が減少する。その結果、回路基板10のレイアウトを変更することなく、アンテナ20を経由して受信回路に混入するノイズレベルを下げることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、ループの中心軸が、ノイズ発生源31(ノイズ源30)に流れる電流によってノイズ発生源31の周囲に生じる磁界の向きと略平行となる位置に、ループ状導体40が配置される。そのため、ループ状導体40によって囲われた領域(ループの内側)を通過する磁束が多くなり、それに伴い磁束密度の変化量も大きくなる。そのため、ノイズ発生源31による磁束密度の変化を妨げるようにループ状導体40に誘起される誘導電流が増大する。よって、より効果的にノイズを低減することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、上述したように、ループ状導体40に誘起される誘導電流によって、ノイズ発生源31(ノイズ源30)による磁束密度の変化が妨げられることにより、ノイズ発生源31から回路基板10に漏洩する電流が減少する。そのため、ノイズ発生源31とアンテナ20とのカップリングを低減することができる。その結果、アンテナ20の受信電力のS/N比が改善され、受信感度を向上することが可能となる。
【0047】
[第2実施形態]
上述した回路基板10では、巻回数が1回(一重)のループ状導体40を用いたが、ループ状導体の巻回数は1回には限られず、複数回、巻回されていてもよい。次に、図5を参照しつつ、第2実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体の構成について説明する。図5は、本実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体41の構成を示す図である。なお、その他の回路基板の構成は、上述した第1実施形態と同一であるので、図示を省略した。
【0048】
ループ状導体41は、断面が矩形の線状の導体が3回巻回されて形成されている点で、上述したループ状導体40と異なっている。また、ループ状導体41では、線状の導体の始端と終端とが巻回されたループの外側を通って接続されている。なお、巻回の回数は3回には限られず、2回又は4回以上であってもよい。その他の構成は上述したループ状導体40と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。ループ状導体41も、ノイズ源となるIC30の近傍に、かつ、IC30のグランドに流れる電流によってIC30の周囲に生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0049】
本実施形態によれば、線状の導体が3回巻回されてループ状導体41が形成されているため、ループ状導体41に誘起される誘導電流を増大させることができる。よって、ノイズ低減効果をさらに高めることが可能となる。また、ループ状導体41の始端と終端とがループの外側を通って接続されるように構成されているため、製造が容易であり、生産効率を向上させることができる。
【0050】
[第3実施形態]
上述した、ループ状導体41では、線状の導体の始端と終端とが巻回されたループの外側を通って接続されていたが、ループの内側を通って接続される構成とすることもできる。次に、図6を参照しつつ、第3実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体の構成について説明する。図6は、本実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体42の構成を示す図である。なお、その他の回路基板の構成は、上述した第1実施形態と同一であるので、図示を省略した。
【0051】
ループ状導体42は、断面が矩形の線状の導体が3回巻回されている点では上述したループ状導体41と同一であるが、線状の導体の始端と終端とが巻回されたループの内側を通って接続されている点で、上述したループ状導体41と異なっている。その他の構成は上述したループ状導体41と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。ループ状導体42も、ノイズ源となるIC30の近傍に、かつ、IC30のグランドに流れる電流によってIC30の周囲に生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0052】
本実施形態によれば、線状の導体が3回巻回されてループ状導体42が形成されているため、ループ状導体42に誘起される誘導電流を増大させることができる。よって、ノイズ低減効果をさらに高めることが可能となる。また、ループ状導体42の始端と終端とがループの内側を通って接続されるように構成されているため、ループで囲まれた面積をより大きくすることができる。よって、サイズが制限されている場合であっても、より効率よくノイズを低減することができる。
【0053】
[第4実施形態]
続いて、図7を参照しつつ、第4実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体の構成について説明する。図7は、本実施形態に係る回路基板に用いられるループ状導体43の構成を示す図である。なお、その他の回路基板の構成は、上述した第1実施形態と同一であるので、図示を省略した。
【0054】
ループ状導体43は、ループの途中に集中定数部品50が挿入され、該集中定数部品50を介してループが形成されている点で上述したループ状導体42と異なっている。その他の構成は上述したループ状導体42と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。ここで、集中定数部品50としては、コイル(インダクタンス)、コンデンサ(キャパシタンス)、抵抗が挙げられる。また、本実施形態では、上述したループ状導体42に集中定数部品50を挿入したが、ループ状導体42に代えて、上述したループ状導体40又はループ状導体41に集中定数部品50を挿入する構成としてもよい。
【0055】
ループ状導体43も、ノイズ源となるIC30の近傍に、かつ、IC30のグランドに流れる電流によってIC30の周囲に生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0056】
本実施形態によれば、ループ状導体43自身の形状を変更することなく、ループ全体のインピーダンスをコントロールすることが可能となる。例えば、集中定数部品50として、コイル(インダクタンス)又はコンデンサ(キャパシタンス)を挿入することにより、ループ状導体43の共振周波数をコントロールすることができるため、例えば、ノイズの周波数に対して、共振周波数を合わせることができる。その場合、共振周波数を中心とする狭帯域に該当するノイズに対して、インピーダンスが最大となるため、より効果的にノイズを低減することができる。また、例えば、集中定数部品50として、抵抗を挿入することにより、ノイズ源30(ノイズ発生源31)による磁束密度の変化を妨げるように誘導電流が誘起されたときに、該誘導電流を熱に変えることができる。
【0057】
[第5実施形態]
次に、図8を参照しつつ、第5実施形態に係る回路基板の構成について説明する。図8は、本実施形態に係る回路基板10Dに取り付けられたループ状導体44の構成を示す図である。なお、図8において、上述した第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0058】
ループ状導体44は、開ループ状導体44Oと、該開ループ状導体44Oの両端部を接続する回路基板10Dに形成された配線パターン(本実施形態ではグランド層12)とを含み、該配線パターン(グランド層12)を介してループが形成されている点で上述したループ状導体40と異なっている。その他の構成は上述したループ状導体40と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
開ループ状導体44Oは、回路基板10D側に開口部が向けられた「コ」の字状に形成された導電性の部材である。上述したように、ループ状導体44では、開ループ状導体44Oとグランド層(配線パターン)12とによってループが形成されている。開ループ状導体44Oの両端部は、はんだ付けによって、回路基板10Dのグランド層12に接続されている。なお、本実施形態では、開ループ状導体44Oの両端を接続する配線パターンとして、グランド層12を用いたが、専用の配線パターンを回路基板上に形成してもよい。また、開ループ状導体44Oの形状は、「コ」の字状に限られることなく、例えば「U」の字状などであってもよい。
【0060】
開ループ状導体44Oのサイズは、任意に設定することができる。ただし、例えば、SMDで採用されている、0603サイズや1005サイズなどの標準サイズに統一されていることが好ましい。なお、開ループ状導体44Oは、例えば、一般的なSMDと同様に、クリームはんだ印刷機による回路基板10上へのはんだ印刷が行われた後に、チップマウンターによって実装され、その後、リフロー炉ではんだが溶かされることにより、回路基板10に固定される。なお、ループ状導体44も、ノイズ発生源31の近傍に、かつ、ノイズ発生源31に流れる電流によって生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0061】
本実施形態によれば、ループ状導体44と回路基板10Dとの間の隙間が無くなるため、ループ状導体が回路基板から離れて配置されている場合と比較して、ループ状導体44と回路基板10Dとの間を通過する磁界がなくなる。そのため、ノイズ低減効果を向上させることができる。また、ループ状導体44が、はんだ付けによって回路基板10Dに直接取り付けられるため、取り付けの信頼性、及び、取り付け位置の精度を向上することができる。
【0062】
[第6実施形態]
次に、図9を参照しつつ、第6実施形態に係る回路基板の構成について説明する。図9は、本実施形態に係る回路基板10Eに取り付けられたループ状導体45の構成を示す図である。なお、図9において、上述した第5実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0063】
ループ状導体45は、回路基板10E上に形成され、開ループ状導体44Oの一端と集中定数部品50の一端とを接続する配線パターン14、及び、集中定数部品50の他端とグランド層12とを接続する配線パターン15を含んでいる点で上述したループ状導体44と異なっている。また、ループ状導体45では、開ループ状導体44Oの両端を接続する配線パターン14,15(及びグランド層12)の途中に集中定数部品50が挿入されている点で上述したループ状導体44と異なっている。すなわち、ループ状導体45では、開ループ状導体44Oと、配線パターン14,15と、集中定数部品50と、グランド層(配線パターン)12とによってループが形成されている。その他の構成は上述したループ状導体44と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。なお、集中定数部品50としては、上述したように、コイル(インダクタンス)、コンデンサ(キャパシタンス)、抵抗が挙げられる。
【0064】
ループ状導体45も、ノイズ発生源31の近傍に、かつ、ノイズ発生源31に流れる電流によって生じる磁界とループの中心軸とが略平行(より好ましくは平行)となる位置に配置される。
【0065】
本実施形態によれば、上述したように、ループ状導体45自身の形状を変更することなく、ループ全体のインピーダンスをコントロールすることが可能となる。例えば、集中定数部品50として、コイル(インダクタンス)又はコンデンサ(キャパシタンス)を挿入することにより、ループ状導体45の共振周波数をコントロールすることができるため、例えば、ノイズの周波数に対して、共振周波数を合わせることができる。また、例えば、集中定数部品50として、抵抗を挿入することにより、ノイズ源による磁束密度の変化を妨げるように誘導電流が誘起されたときに、該誘導電流を熱に変えることができる。さらに、本実施形態によれば、集中定数部品50として、チップコンデンサやチップ抵抗等のチップ型電子部品を用いることにより、実装の際にチップ型電子部品のマウンタを利用することができるため、生産性を向上させることができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回路基板10,10D,10Eにループ状導体40〜45を1つ配置したが、ループ状導体40〜45は、複数配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10,10D,10E 回路基板
11 基板(絶縁層)
12 配線層(グランド層)
13 配線層
14,15 配線パターン
20 アンテナ
30 IC
31 ノイズ発生源
40,41,42,43,44,45 ループ状導体
44O 開ループ状導体
50 集中定数部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品が実装される回路基板において、
前記複数の電子部品に含まれ、ノイズ源となる電子部品と、
前記ノイズ源となる電子部品の近傍に、かつ、前記ノイズ源に流れる電流によって前記ノイズ源の周囲に生じる磁界が通過する位置に配置される閉じた環状のループ状導体と、を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記ループ状導体は、ループの中心軸が、前記ノイズ源に流れる電流によって生じる磁界の向きと略平行となる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
電波を受信及び/又は送信するアンテナが取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記ループ状導体は、導体が複数回、巻回されるとともに、該導体の始端と終端とが巻回されたループの内側を通って接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記ループ状導体は、導体が複数回、巻回されるとともに、該導体の始端と終端とが巻回されたループの外側を通って接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記ループ状導体のループの途中に集中定数部品が挿入されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項7】
前記ループ状導体は、回路基板に形成された配線パターンを含み、該配線パターンを介してループが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項8】
前記配線パターンの途中に集中定数部品が挿入されていることを特徴とする請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
複数の電子部品が実装された回路基板に含まれるノイズ源を特定するノイズ源特定ステップと、
前記ノイズ源特定ステップにおいて特定された前記ノイズ源に流れる電流によって該ノイズ源の周囲に生じる磁界の方向を特定する磁界方向特定ステップと、
前記ノイズ源の近傍に、かつ、前記磁界方向特定ステップにおいて特定された前記ノイズ源の磁界の方向と、ループの中心軸とが略平行となる位置に閉じた環状のループ状導体を配置する配置ステップと、を備えることを特徴とするノイズ対策部品の配置方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−69784(P2012−69784A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213943(P2010−213943)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】