説明

回路基板、電子機器及びそれらの製造方法

【課題】カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品を、回路基板上に押圧して着脱自在に低接触抵抗で搭載する構造体を提供する。
【解決手段】回路基板1上に設けられ、カーボンナノチューブ23の先端が接触して第1の電極21と電気的に接続する第2の電極11を有する回路基板1であって、第2の電極11は、回路基板1上面に設けられた電極パッド12と、電極パッド12上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起13とを有する。カーボンナノチューブ23の弾性限界内の低い押圧でも、カーボンナノチューブ23が突起と側面で線状に接触するので接触抵抗が低い。また、カーボンナノチューブ23の塑性変形がないので再度の接続が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、その回路基板を用いた電子機器及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品をカーボンナノチューブを介して回路基板に搭載する電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図5は従来の電子機器断面図であり、カーボンナノチューブが植設された第1の電極を有する電子部品を、回路基板上にフエイスダウン接続する電子機器の主要部を表している。
【0004】
図5を参照して、この従来の電子機器200では、電子部品2の本体20、例えば半導体チップの主面(図5中の下面)に、下方にほぼ垂直に伸びる一群のカーボンナノチューブ23が形成された電極パッド22からなるフエイスダウン接続用の第1の電極21が設けられている。
【0005】
他方、従来の回路基板210は、多層配線基板からなり、その上面に多層配線基板内の配線に接続された第2の電極211が、第1の電極21に対向する位置に設けられている。電子部品2は、第1の電極21が第2の電極211に対向するように従来の回路基板210上に位置決めされ、次いで、第1の電極21の電極パッド22に植設されたカーボンナノチューブ23の先端を第2の電極211に接触させた状態で、電子部品2は回路基板211上へ押圧して搭載される。
【0006】
この電子機器200では、第1電極21と第2電極211とが、カーボンナノチューブを介して押圧されて接触することで電気的に接続される。従って、押圧を解除すると第2電極211とカーボンナノチューブ23は分離するので、従来の回路基板210から電子部品2を容易に除去することができる。即ち、この電子部品2は従来の回路基板210上に着脱自在に搭載される。このため、電子部品2の交換による電子機器200の修理又は改良が容易である。また、第1及び第2の電極21、211間は可撓性の大きなカーボンナノチューブで接続されるので、電子部品と回路基板の電極間をはんだバンプで固定する通常のフエイスダウンボンディングに比べて接続部の応力による層間絶縁膜の破壊が少なく、信頼性の高い接続が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−311700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1本のカーボンナノチューブに流すことができる電流密度は、従来のバンプに用いられる金属材料に比べて2〜3桁ほど高い。このため、上述したカーボンナノチューブを用いて接続する従来の電子機器では、低い接触抵抗を有する接続が期待できる。
【0009】
しかし、本発明の発明者は、実験により、カーボンナノチューブを介して接続するフエイスダウン実装において、低い接触抵抗を実現することが難しい場合があることを見いだした。本発明の発明者は、この実験結果に基づき、低い接触抵抗が実現されない理由を以下のように考察する。
【0010】
図6は従来の電極の接続部分の拡大断面図であり、カーボンナノチューブ23の先端が従来の回路基板210上面に設けられた第2の電極211の表面に接触した状態を表している。なお、現実の第2の電極211の表面は、微視的に見ればミクロンレベルの凹凸を有する。しかし、その凹凸はカーボンナノチューブの径に比べて十分大きいため、概念的に平坦面として扱うことができるので、以下では平坦面として説明する。
【0011】
カーボンナノチューブ23は、通常、触媒を用いたCVD法により製造される。しかし、CVD法により製造されるカーボンナノチューブでは、数%〜10%程度の長さのばらつきが発生する。従って、図6を参照して、平坦な第2の電極211の表面に先端が当接するカーボンナノチューブ23は全体の一部の少数に過ぎず、多数のカーボンナノチューブ23は先端が第2の電極211に到達することなく第2の電極211上方で途絶えてしまう。このように、第2の電極211に接触して電気的接続に寄与するカーボンナノチューブ23の割合が少ないため、期待されるような低い接触抵抗が実現されない。
【0012】
また、第2の電極211表面が平坦なため、以下に述べるように、カーボンナノチューブ23の先端が第2の電極211に接触する面積が極めて小さい。そのため、接触抵抗が高くなる。
【0013】
図7は従来の電極とカーボンナノチューブの接触を説明する図(1)であり、第2の電極211と接触するカーボンナノチューブ23(CNT)を表している。
【0014】
図7を参照して、第1の電極21の電極パッド22の下面からほぼ垂直に垂下するカーボンナノチューブ23は、第2の電極211の上面にほぼ垂直に垂下され、その先端が第2の電極211に当接して電気的に接触する。カーボンナノチューブ23の先端は、例えばドーム状をなすので、平坦な第2の電極211と点接触をする。また、図7に示すように、先端が欠損して先端が円筒形に開放されている場合は、円筒先端の開放端をなす円周の一点で点接触する。このように、カーボンナノチューブ23の先端と平坦な第2の電極211とは点接触による僅かな接触面積を介して電気的接続がなされる。このため、カーボンナノチューブ23の許容電流密度から期待されるような低い接触抵抗が実現されない。
【0015】
かかるカーボンナノチューブ23の長さの不揃い及び点接触に起因する接触抵抗の増大を抑制するために、従来は電子部品2を従来の回路基板210上に押圧して実装していた。
【0016】
押圧して実装すると、押圧前に第2の電極211上に当接していたカーボンナノチューブ23は押圧されて撓み、押圧前には接触していなかった短いカーボンナノチューブ23も第2の電極23に接触するようになる。このため、電気的接触に寄与するカーボンナノチューブ23の本数が増加し、接触抵抗が低下する。
【0017】
さらに、以下に説明するように、カーボンナノチューブ23と第2の電極211との接触面積が増加し、接触抵抗が低下する。
【0018】
図8は従来の電極とカーボンナノチューブの接触を説明する図(2)であり、押圧下のカーボンナノチューブの先端形状を表している。
【0019】
図8を参照して、カーボンナノチューブ23の先端が平坦な第2の電極211に当接した後、さらにカーボンナノチューブ23を押圧すると、カーボンナノチューブ23は全体が撓むと同時に、第2の電極211に当接する先端が屈曲してその先端部分が第2の電極211上面に延在するように変形する。その結果、カーボンナノチューブ23の先端は、第2の電極211と例えば側面で線状に接触して接触面を増することとなる。このため、点接触に比べて接触面積が増加し、接触抵抗が低くなる。
【0020】
実験によると、カーボンナノチューブ23を押圧して50%以上撓ませた場合、第1の電極21と第2の電極211との接触抵抗は、撓みが20%の押圧の場合の1/10以下になる。従って、従来の回路基板210上への電子部品2の搭載において十分に接触抵抗を低くするには、50%以上撓ませるだけの押圧が必要であった。
【0021】
なお、本明細書では、撓みを(Lo −L)/Loと定義している。ここで、Loは、最長に近い長さを有する一群のカーボンナノチューブ23の先端が第2の電極211表面に接触して一応の電気的接触がなされたとき、例えば電子部品2が従来の回路基板210上に載置されその電子部品2上に熱拡散板が載置されたときの、第1の電極21を構成する電極パッド22と第2の電極211間の距離Lo であり、Lは、押圧により短縮した後の電極パッド22と第2の電極211間の距離Lである。
【0022】
例えば、5層程度のマルチウオールで5nm 〜10nmφのカーボンナノチューブ23の弾性限界は撓み20%〜30%程度の範囲にあり、この弾性限界を超えて押圧すると、カーボンナノチューブは塑性変形して形状回復が不能になる。一旦このようなカーボンナノチューブの塑性変形が生じた電子部品2を、再び従来の回路基板210上に搭載しても信頼性ある電子機器を製造することは難しい。言い換えれば、カーボンナノチューブが搭載時に塑性変形するのでは信頼性ある着脱自在の接続は実現されない。
【0023】
このように、平坦な第2の電極211を有する従来の回路基板210では、カーボンナノチューブの撓みが弾性限界内に留まる押圧、例えば撓みが20%〜30%以下の押圧としたのでは、十分に低い接触抵抗は得られない。一方、カーボンナノチューブの撓みが塑性変形を起こす押圧、例えば撓みが50%以上の押圧としたのでは、着脱自在の接続を実現することができないという問題がある。
【0024】
本発明は、カーボンナノチューブが植設された第1の電極を有する電子部品を、第2の電極を有する回路基板上に、第1及び第2の電極を着脱自在にかつ低接触抵抗で接続することができる回路基板およびかかる回路基板を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の課題を解決するために、本発明の回路基板は、カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品を上面に押圧して前記電子部品を着脱自在に搭載する回路基板において、前記回路基板上に設けられ、前記カーボンナノチューブの先端が接触して前記第1の電極と電気的に接続する第2の電極を有し、前記第2の電極は、前記回路基板上面に設けられた電極パッドと、前記電極パッド上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起とを有することを特徴として構成する。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、回路基板の第2の電極上面に剣山状に導電性の錐体状突起が形成されている。錐体状突起の間に挿入されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの先端側面が錐体状突起の錐面に線接触する。また、複数本のカーボンナノチューブの先端が錐体上突起の間に挿入され、互いに押し合う。このため、カーボンナノチューブが互いに側面で接触し相互に導通するので、短いカーボンナノチューブも電気的接続に寄与する。
【0027】
このように、本発明によると、線接触で接触面積が広く、かつ、短いカーボンナノチューブも電気的接続に寄与するから、押圧をカーボンナノチューブの弾性限界内に留めて着脱自在な接触を行っても、低い接触抵抗の接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の電子機器断面図
【図2】本発明の実施形態の電子機器の電極近傍の拡大断面図
【図3】本発明の実施形態の電子機器の電極表面を表す図
【図4】本発明の実施形態の接続部分の拡大断面図
【図5】従来の電子機器断面図
【図6】従来の電極の接続部分拡大断面図
【図7】従来の電極とカーボンナノチューブの接触を説明する図(1)
【図8】従来の電極とカーボンナノチューブの接触を説明する図(2)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を、複数の半導体チップを回路基板上面にフエイスダウンで搭載した電子機器に関する実施形態を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は本発明の実施形態の電子機器断面図であり、図1(a)は搭載前の各部品の位置関係を、図1(b)は搭載後の電子機器100を表している。
【0031】
図1を参照して、本実施形態の電子機器100は、電子部品2としてフエイスダウン接続用の第1の電極21が設けられた半導体チップ20を用い、その電子部品2が回路基板1の上面にフエイスダウン接続により搭載されている。
【0032】
第1の電極21は、電子部品2の下面(半導体チップ20の主面)に形成され、電子部品2の下面に設けられた電極パッド22と、その電極パッド22の下面にほぼ垂直に延在するように植設されたカーボンナノチューブ23とから構成されている。
【0033】
かかる第1の電極21は、周知のカーボンナノチューブの製造方法、例えば以下に述べるCVD法(化学気相堆積法)により製造することができる。
【0034】
導電性金属電極、例えばAl電極の表面に、Ti膜を介して触媒金属膜、例えばNi膜で被覆された電極パッド22を形成する。次いで、電極パッド22下面に垂直な電界を印加し、温度400℃〜700℃で原料ガスを流入する。その結果、電極パッド22にほぼ垂直方向に伸びるカーボンナノチューブ23が成長する。これにより、電極パッド22にカーボンナノチューブ23が植設された第1の電極が形成される。原料ガスとして、例えば、アセチレン、メタン等の炭化水素ガス、あるいは、エタノール、メタノール等のアルコール系材料を用いることができる。
【0035】
本実施形態では、直径約10nm、平均長約100μmのカーボンナノチューブ23を成長した。このとき、隣接するカーボンナノチューブ23間の平均間隔は約50nmであった。カーボンナノチューブ23の長さは、成長時間により制御することができる。なお、カーボンナノチューブ23の長さは、標準偏差で5〜10%のばらつきがあった。よく知られているように、カーボンナノチューブ23の直径及び平均間隔は、触媒金属膜、成長温度等の成長条件により制御することがてきる。
【0036】
回路基板1は、例えば多層配線基板からなり、上面に多層配線と接続する複数の第2の電極11が形成されている。この第2の電極11は、実装される電子部品2の第1の電極21に対応する位置に配置されている。また、回路基板1の上面両端に、ヒンジ4bにより開閉可能に支持される鉤4aを含む押し付け機構4が設けられている。
【0037】
図1(a)を参照して、電子機器100の組立は、まず、押し付け機構4の鉤4aを回路基板1の外側に開いた状態で、電子部品2を回路基板1上に、第2の電極11の直上に第1の電極21が対向するように位置決めして、即ちカーボンナノチューブ23の先端が第2の電極11上面に当接する位置に位置決めして、載置する。次いで、電子部品2 の背面(図1中の上側の面)に熱拡散板3を載置する。
【0038】
次いで、図1(b)を参照して、熱拡散板3の上面に押し付け機構4の鉤4aを掛け、押し付け機構4により熱拡散板3を回路基板1の方向に押圧する。これにより、電子部品2は回路基板1上に押圧されて固定され、電子機器100として組み立てられる。このとき、第1の電極21の電極パッド22と第2の電極11は、互いに対向して配置され、その間の電気的接続はカーボンナノチューブ23を介してなされる。
【0039】
なお、押圧は、カーボンナノチューブ23が塑性変形を起こさない範囲、例えば押圧により生ずるカーボンナノチューブ23の撓みが30%以下が好ましく、20%以下の圧力がより好ましい。他方、押圧は、接触抵抗を低くする観点からは高いことが望ましい。とくに、カーボンナノチューブ23の長さの標準偏差以上の撓みを付与することが、カーボンナノチューブ23の長さのばらつきに起因して生ずる接触抵抗の増加を抑制するという観点から好ましい。この観点から、押圧は、カーボンナノチューブ23に10%以上の撓みを付与する圧力が好ましく、20%以上の撓みを付与する圧力がより好ましい。
【0040】
以下、上述した本発明の実施形態にかかる回路基板1の第2の電極11について詳細に説明する。
【0041】
図2は本発明の実施形態の電子機器の電極近傍の拡大断面図であり、第2の電極11の表面形状を模式的に表している。なお、図2中のカーボンナノチューブ23は、第2の電極11上面に対向して配置された第1の電極21から垂下するカーボンナノチューブ23を表している。図3は本発明の実施形態の電子機器の電極表面を表す図であり、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察された第2の電極の表面形状を表している。
【0042】
図2を参照して、第2の電極11は、回路基板1の上面に形成され、回路基板1の多層配線に接続する電極パッド12と、電極パッド12の上面に形成された突起13とを有する。
【0043】
突起13は、上端より下端方向に太くなる錐体状の形状を有し、電極パッド12上面を剣山状に密生して被覆するように形成される。かかる錐体状の突起13は、例えば、以下のような条件下の電解めっきにより形成することができる。
【0044】
銅又は銅合金からなる電極パッド12の上面に、塩化ニッケル(NiCl2 ・6H2 O)の電解液に、緩衝剤としてほう酸(H3 BO3 )を加え、さらに結晶制御剤としてエチレンジアミンジハイドロクロライド(EDA)を加えためっき液を用いて、電解めっきによりニッケルめっきを施す。その結果、電極パッド12の上面に、図3に図示するような錐体状の突起13が剣山状に密生したニッケルめっき層が形成される。
【0045】
なお、上記の電解めっき工程前に、電極パッド12表面を10%濃度の塩酸で数十秒間洗浄した後、純水でリンスする前処理を施した。
【0046】
また、上記めっき液は、1Lの水に、200gの塩化ニッケル、35gのほう酸、200gのエチレンジアミンジハイドロクロライドを溶解して調合した。さらに、このめっき液のPHを、10%濃度の塩酸及び10%濃度のアンモニア水を用いてPH4となるように調整した。
【0047】
上記の電解めっきは、めっき液の温度60℃、電流密度1.0A/dm2 〜2.0A/dm2 の条件下で、100秒間〜1000秒間継続し、電極パッド12上に錐体状の突起13を形成した。これにより、表面に突起13を有する第2の電極11が作製された。この方法で形成された突起13は、例えば平均高さが500nm、隣接する突起間の平均間隔(即ち突起13の下端の平均直径)が150nmであった。なお、突起13の高さ及び下端の直径は、エチレンジアミンジハイドロクロライドの濃度、めっき液の温度、電流密度及びめっき時間により制御することができる。
【0048】
突起13の形成後、突起13が形成された第2の電極11の上面に、蒸着により例えば厚さ10nmの金層を形成した。この金層は、カーボンナノチューブ23との接触抵抗を低下すると同時に、ニッケルめっき層からなる突起13の腐食を抑制する。
【0049】
次に、本発明の第2の電極11とカーボンナノチューブ23との電気的接続について説明する。
【0050】
図2を参照して、第2の電極11の上面に上方から垂下する一群のカーボンナノチューブ23を押し当てると、錐体状突起13の先端(上端)が一群のカーボンナノチューブ23の中に分け入り、カーボンナノチューブ23の先端を突起13の外側に押しやる。押しやられたカーボンナノチューブ23の先端は、突起13の側面を滑落して下方に移動する。その結果、カーボンナノチューブ23の先端は、突起13の間、即ち複数の隣接する錐体状の突起13が形成する底が狭窄する窪み(図4に示す窪み13a− 1〜13a−3)の中に差し込まれるように挿入される。
【0051】
図4は本発明の実施形態の接続部分拡大断面図であり、第2の電極11の上面に押圧されたカーボンナノチューブ23が第2の電極11と接続する様子を模式的に表している。
【0052】
図4を参照して、一群のカーボンナノチューブ23−1〜23−8が第2の電極11の上面に押圧されている。このとき、カーボンナノチューブ23相互の平均間隔は50nmであり、突起13相互の平均間隔(突起13の中心間の平均距離)は150nmであるから、多くの場合、錐体状の突起13が形成する窪み13a−1〜13a−3のそれぞれの窪みの中に複数のカーボンナノチューブ23が挿入される。
【0053】
カーボンナノチューブ23のうちの1本の長いカーボンナノチューブ23−3は、窪み13a−1の中に、先端を窪み13a−1の底に当接させて挿入されている。この長いカーボンナノチューブ23−3は押圧により屈曲して撓み、その先端部分の側面を円錐状の突起13の錐面(即ち側面)に線状に接触させている。
【0054】
カーボンナノチューブ23−3より短く、先端が窪み13a−1の底に到達しない2本のカーボンナノチューブ23− 1、23−2は、同じ窪み13a−1に挿入されて撓んだカーボンナノチューブ23−3により、突起13の側面方向に押し付けられている。その結果、カーボンナノチューブ23−1は、カーボンナノチューブ23−2を挟んで、カーボンナノチューブ23−3により突起13の側面に押圧される。従って、3本のカーボンナノチューブ23−1〜23−3は互いに側面を線状に接触させて電気的に接続される。また、カーボンナノチューブ23−1及びカーボンナノチューブ23−3は突起13と線状に接触する。
【0055】
上述したように、長いカーボンナノチューブ23−3は、その先端が窪み13a−1の底に当接して屈曲し、その先端側面で線状に突起13の側面に接触する。また、短いカーボンナノチューブ23−1は、撓みにより屈曲したカーボンナノチューブ23−3により短いカーボンナノチューブ23−2を介して突起13の側面に押し付けられ、突起13の側面と線状に接触する。さらに、突起13の側面に直接接しない短いカーボンナノチューブ23−2は、これを挟む2本のカーボンナノチューブ23−1、32−3と互いに側面で線状に接触する。
【0056】
即ち、窪み13a−1に挿入された3本のカーボンナノチューブ23−1〜23−3は全て、互いに線接触により電気的に接続される。さらに、突起13に接するカーボンナノチューブ23−1,23−3はその側面で突起13と線状に接触して電気的に接続される。
【0057】
このように、短いカーボンナノチューブ23−1も、長いカーボンナノチューブ23−2と同様に突起13の側面と線接触して電気的接触がなされる。また、直接突起13に触れない短いカーボンナノチューブ23−2は、互いに側面で線接触するカーボンナノチューブ23−1、23−3を介して突起13と電気的に接触する。従って、従来の回路基板210では第2の電極211に到達しない又は先端のみが当接するような短いカーボンナノチューブ23−1、23−2が、本実施形態では電気的接続に寄与する。また、カーボンナノチューブ23−1〜23−3及び突起13との接触は線接触でなされるため、従来の第2の電極にカーボンナノチューブ23の組成変形を生じさせる押圧を印加したときと同様の低い接触抵抗が、カーボンナノチューブ23の弾性変形内の押圧で実現される。
【0058】
カーボンナノチューブ23−4、23−5は短く、窪み13a−2の底まで到達していない。しかし、それらの先端は錐体状の突起13に押しやられ、突起13の側面を滑落して移動した結果、先端の側面は突起13の側面に延在して線状に接触している。
【0059】
かかる短いカーボンナノチューブ23−4、23−5は、撓みが弾性変形内の押圧の場合、表面が平坦な従来の第2の電極では点接触乃至非接触となり、低抵抗の接続を実現することができなかった。本実施形態の第2の電極11は、このようなカーボンナノチューブ23−4、23−5でも線接触して電気的接続に寄与するので、低い接触抵抗が実現される。
【0060】
窪み13a−3には、3本の長いカーボンナノチューブ23−6〜23−8が挿入されている。カーボンナノチューブ23−6は、その先端が突起13の側面を滑落して窪み13a−3の底に当接する。そして、押圧により弾性変形して、カーボンナノチューブ23−6の側面を突起13の側面に線状に接触するように撓む。また、カーボンナノチューブ23−8は、窪み13a−3の底近くまで挿入され、先端を窪み13a−3の底まで挿入されたカーボンナノチューブ23−6に当接して撓み、その側面を突起13の側面に線状に接触させている。さらに、カーボンナノチューブ23−7は、先端がカーボンナノチューブ23−6の側面に当接して弾性変形して撓み、側面をカーボンナノチューブ2−8の側面に線接触させて密着している。
【0061】
このように、1個の窪み13a−3に複数のカーボンナノチューブに23−6〜23−8が挿入されてたがいに押し合うことにより、カーボンナノチューブ23−6〜23−8は、相互に又は突起13と線接触する。従って、低い接触抵抗が実現される。
【0062】
上述したように、本発明の回路基板1では、カーボンナノチューブ23を押下する際、剣山状に形成された錐体状の突起13が、一群のカーボンナノチューブ23の中に下方から分け入るように挿入される。そして、突起13により囲まれて形成される窪み13a−1〜13a−3の中に複数のカーボンナノチューブ23が挿入される。なお、カーボンナノチューブ23の押下は、カーボンナノチューブ23の弾性限界内でなされる。
【0063】
このとき、カーボンナノチューブ23の先端は突起13の側面を滑落し、カーボンナノチューブ23の先端付近のカーボンナノチューブ側面が突起13の側面に線状に接触する。また、窪み13a−1〜13a−3は、底が狭窄しているため、窪み13a−1〜13a−3に挿入された複数本のカーボンナノチューブ23は、互いに押し合い、互いに又は突起13の側面とチューブ側面で線状に接触する。このため、突起13の底に到達しない短いカーボンナノチューブ23−1、23−2、23−4、23−5も、互いに又は突起13と線状に接触して電気的接続に寄与する。このように、カーボンナノチューブ23の弾性限界内の低い押圧によっても、電気的接続は線状の接触によりなされ、かつ,多くのカーボンナノチューブ23が電気的接続に寄与するため、低い接触抵抗が実現される。
【0064】
本発明の突起13は、底部が太くなり、側面が傾斜面となる形状(本明細書では「錐体状」という。)を有し、例えは円錐体、角錐体、円錐台及び角錐台等の錐体及び錐台を含む形状に形成される。なお、突起13の側面は傾斜面であればよく、錐面の他、錐線が湾曲するもの、例えば垂線が突起13の中心軸方向に凹に湾曲するものが含まれる。
【0065】
このような錐体状突起13とすることで、上方から押下されたカーボンナノチューブ23の先端を突起の側面を摺動して滑落させ、カーボンナノチューブ23の側面と突起13の側面とを線状に接触させることができる。また、窪み13a−1〜13a−3の底(下方)を狭窄させて、窪み13a−1〜13a−3の中に挿入された複数のカーボンナノチューブ23を互いに押し合うように接触させることができる。
【0066】
他方、多数のカーボンナノチューブ23を突起13に線接触させて接触抵抗を低くするという観点からは、一つの窪みに挿入されるカーボンナノチューブ23を少なくして突起13に直接接触しないカーボンナノチューブ23が少なくなるように、突起13の平均間隔を小さくすることが好ましく、例えばカーボンナノチューブ23の平均間隔の10倍以下とすることが好ましい。
【0067】
突起13の底面の直径、即ち隣接する突起13の中心軸間の平均間隔は、1個の窪み13の中に複数のカーボンナノチューブ23を挿入するという観点から、カーボンナノチューブ23の平均間隔の2倍以上とすることが好ましい。
【0068】
突起13の上端は、曲率が小さな例えば尖塔状とすることが、押下の際にカーボンナノチューブ23の先端が滑らかに突起13側面に押し出されるという観点から好ましい。この観点から、突起13先端の曲率半径は、カーボンナノチューブ23の直径(半径の2倍)より小さいことが好ましい。ここで突起13先端の曲率半径は、突起13先端が平坦面からなる場合は、その平坦面の半径を含むものとする。
【0069】
突起13の高さはとくに制限されないが、少なくともカーボンナノチューブ23の先端が突起13側面を容易に滑落する傾斜(例えば傾斜角60度)を有する程度の高さとすることが好ましい。
【0070】
本発明の実施形態では、突起13を電解めっきにより形成したが、これに限らず突起を他の方法により形成しても差し支えない。例えば、無電解めっきあるいはエッチングにより形成してもよい。また、材料もニッケル以外の導電体を用いることもできる。
【0071】
また、本発明の回路基板は、多層配線基板に限られず、その他の配線基板、例えばシリコン基板を用いた配線基板、集積回路が形成された半導体チップであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明を集積回路を多層配線基板上にフエイスダウン実装する電子機器に適用することで、着脱自在かつ低接触抵抗の接続を実現することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、201 回路基板
2 電子部品
20 本体(半導体チップ)
3 熱拡散板
4 押し付け機構
11、211 第2の電極
12、22 電極パッド
13 突起
13a−1〜13a−3 窪み
21 第1の電極
23 カーボンナノチューブ
100、200 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品を上面に押圧して前記電子部品を着脱自在に搭載する回路基板において、
前記回路基板上に設けられ、前記カーボンナノチューブの先端が接触して前記第1の電極と電気的に接続する第2の電極を有し、
前記第2の電極は、前記回路基板上面に設けられた電極パッドと、前記電極パッド上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起とを有することを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記突起は、前記パッド電極上面に金属の電解めっきにより形成された突起であることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記突起間の平均間隔が、植設された前記カーボンナノチューブの平均間隔の2倍以上かつ10倍以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の回路基板。
【請求項4】
前記突起の先端の平均曲率半径が、前記カーボンナノチューブの平均直径を超えないことを特徴とする請求項1、2又は3記載の回路基板。
【請求項5】
カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品と、
回路基板上面に設けられたパッド電極の上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起を有する第2の電極とを有し、
前記カーボンナノチューブの先端を前記第2の電極に当接した状態で、前記電子部品を前記回路基板上に押圧して前記第1の電極と前記第2の電極を前記カーボンナノチューブを介して電気的に接続した電子機器。
【請求項6】
カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品を上面に押圧して前記電子部品を着脱自在に搭載する回路基板の製造方法において、
前記回路基板上に、前記回路基板の配線に接続された電極パッドを形成する工程と、
電解めっきにより、前記電極パッド上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起を形成する工程とを有することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記錐体状突起はニッケルからなり、
前記電解めっきは、PH4に調整された塩化ニッケル、ほう酸及びエチレンジアミンジハイドロクロライドの水溶液をめっき液とし、電流密度が1.0A/dm2 〜2.0A/dm2 の条件下で、ニッケルからなる錐体状の突起を剣山状に形成することを特徴とする請求項6記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
回路基板上に、前記回路基板の配線に接続された電極パッドを形成する工程と、
電解めっきにより、前記電極パッド上面に剣山状に形成された導電性の錐体状突起を形成して、前記電極パッド上に前記錐体状突起が形成された第2の電極を形成する工程と、 カーボンナノチューブが植設された第1の電極を備える電子部品を、前記カーボンナノチューブの先端が前記第2の電極に接触するように前記回路基板上に載置する工程と、
前記回路基板上に載置された前記電子部品を前記回路基板上に押圧して、前記第1の電極と前記第2の電極とを前記カーボンナノチューブを介して電気的に接続させ、前記電子部品を前記回路基板上に着脱自在に搭載する工程とを有する電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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