説明

回路基板に実装する部品の固定金具

【課題】半田接合板部の面積は変わらない場合でも、半田接合面の全面に十分な量の半田を保持しておくことができ、それにより、高い接合強度を発揮することのできる、回路基板に実装する部品の固定金具を提供する。
【解決手段】回路基板の表面にクリーム半田を用いて半田付け固定される半田接合板部11と、回路基板上に実装しようとするコネクタに固定される部品固定部12とを有し、半田接合板部11の下面11Bの半田接合面に、毛細管現象により回路基板の表面に塗布されたクリーム半田を吸い上げるV溝13が形成されると共に、半田接合板部11の上面11Aから下面11Bに向けて、V溝の先細り部分に連通すると共に毛細管現象によりクリーム半田を吸い上げることの可能な連通孔14が、V溝13の延びる方向に離間して複数穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板実装コネクタ等の部品を半田付けにより回路基板上に固定するための固定金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の固定金具の従来例が特許文献1に記載されている。
図3はその従来例の固定金具を示す図で、(a)は固定金具の斜視図、(b)はその固定金具を用いてコネクタを回路基板上に固定している状態を示す斜視図である。
【0003】
この固定金具110は、回路基板101上に実装される基板実装コネクタ102(回路基板に実装される部品)の両側部に取り付けられる断面L字形に折曲形成された板状のもので、回路基板101の表面にクリーム半田を用いて半田付け固定される半田接合板部111と、コネクタ102のコネクタハウジング103の両側部の金具装着部106に差し込み固定される部品固定部112とを有している。
【0004】
コネクタ102は、前面に相手側コネクタの嵌合口105を有するコネクタハウジング103の後壁部に多数の端子104を装着したものであり、コネクタハウジング103の嵌合口105の内部に各端子104の前端が露出しており、コネクタハウジング103の後方に延びる各端子104の後足部を、回路基板101の回路導体に接続することにより、回路基板101上に実装されている。また、それだけでは取付強度が不十分であるので、コネクタハウジング103の両側部に取り付けた固定金具110の半田接合板部111を、回路基板1上にクリーム半田を用いて半田付けすることにより、回路基板101上に固定されている。
【0005】
この場合の固定金具110の半田接合板部111は、半田接合される外周縁のトータル長さが長くなるように、U字状の切欠113を有した2本の接合足111Aに分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−48971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図3に示した従来の固定金具110は、U字状の切欠113の付いた2本の接合足111Aを有するので、半田で接合する面積は増えるのであるが、半田接合面の全体に十分な量の半田が行き渡らないことがあり、十分な接合強度を発揮できない可能性があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、半田接合板部の面積は変わらない場合でも、半田接合面の全面に十分な量の半田を保持しておくことができ、それにより、高い接合強度を発揮することのできる、回路基板に実装する部品の固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 回路基板の表面にクリーム半田を用いて半田付け固定される半田接合板部と、回路基板上に実装しようとする部品に固定される部品固定部とを有し、
前記半田接合板部の下面の半田接合面に、毛細管現象により前記回路基板の表面に塗布されたクリーム半田を吸い上げる溝が形成されると共に、前記半田接合板部の上面から下面に向けて、前記溝に連通すると共に毛細管現象により前記クリーム半田を吸い上げることの可能な連通孔が、前記溝の延びる方向に離間して複数穿設されていることを特徴とする回路基板に実装する部品の固定金具。
【0010】
(2) 前記溝が、先細り断面のV溝として形成されると共に、前記連通孔が、前記半田接合板部の上面から下面に向かうほど先窄まりの断面形状に形成され、前記V溝の先細り部分に前記連通孔の先窄まり部分が連通していることを特徴とする上記(1)に記載の回路基板に実装する部品の固定金具。
【0011】
(3) 前記V溝が、前記半田接合板部の外周縁の複数箇所から反対側の外周縁に向けて互いに間隔を開けて直線的に形成されていることを特徴とする上記(2)に記載の回路基板に実装する部品の固定金具。
【0012】
上記(1)の構成の固定金具によれば、半田接合板部に形成された溝と連通孔の組み合わせにより、十分な量の半田を毛細管現象により吸い上げることができ、それにより、半田接合面の全面に半田を十分に行き渡らせることができて、リフロー後の接合力のアップを図ることができる。
【0013】
つまり、半田接合面に溝が形成されていると、毛細管現象により溝の内部に半田が吸い上げられるが、溝だけでは吸い上げの効果が弱い。また、半田接合板部に孔が穿設されていると、毛細管現象により孔の内部に半田が吸い上げられるが、孔だけでは吸い上げの効果が弱い。
【0014】
ところが、溝と孔が連通した関係で組み合わされていると、溝と孔の両方の毛細管現象による吸い上げ作用が加算され、十分な量の半田が吸い上げられるようになる。この場合、離れた位置にある複数の孔(連通孔)が溝により繋がれた形になるので、全ての孔に半田が吸い上げられることになる。その結果、接合力のアップが図れる。
【0015】
また、連通孔が開いていることにより、リフロー時に連通孔を通して、下面側の半田に熱が伝わりやすくなるので、半田付け性が向上する。
【0016】
上記(2)の構成の固定金具によれば、V溝から連通孔に至る経路の中間部に断面の細い部分が存在することにより、半田が吸い上げられやすくなる。従って、半田接合面に保持する半田量が多くなり、固定金具の接合力がアップする。
【0017】
上記(3)の構成の固定金具によれば、互いに間隔をおいて設けられた複数のV溝が、半田接合板部の外周縁から反対側の外周縁に向けて延びているので、広い領域から半田を吸い上げることができ、半田接合面の全体に効果的に十分な量の半田を行き渡らせることができる。
【0018】
また、半田接合板部の下面に直線的な溝が設けられているので、この溝の補強作用により、製造時における半田接合板部の平面度の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半田接合板部の面積は変わらない場合でも、半田接合面の全面に十分な量の半田を保持しておくことができ、それにより、高い接合強度を発揮することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の固定金具の構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(b)で示す部分の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の固定金具を用いて基板実装コネクタを回路基板上に固定した状態を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)はその要部の拡大斜視図である。
【図3】従来例の固定金具を示す図で、(a)は固定金具の斜視図、(b)はその固定金具を用いてコネクタを回路基板上に固定している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の固定金具の構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(b)で示す部分の斜視図、図2は同固定金具を用いて基板実装コネクタを回路基板上に固定した状態を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)はその要部の拡大斜視図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、この実施形態の固定金具10は、回路基板1上に実装される基板実装コネクタ2(回路基板に実装される部品)の両側部に取り付けられる断面L字形に折曲形成された板状のもので、回路基板1の表面にクリーム半田を用いて半田付け固定される半田接合板部11と、コネクタ2のコネクタハウジング3の両側部の金具装着部6に差し込み固定される部品固定部12とを有している。
【0023】
コネクタ2は、前面に相手側コネクタの嵌合口5を有するコネクタハウジング3の後壁部に多数の端子4を装着したもので、コネクタハウジング3の嵌合口5の内部に各端子4の前端が露出しており、コネクタハウジング3の後方に延びる各端子4の後足部を、回路基板1の回路導体に接続することにより、回路基板1上に実装される。
【0024】
また、それだけでは取付強度が不十分であるので、コネクタハウジング3の両側部に取り付けた固定金具10の半田接合板部11の下面(半田接合面)11Bを、回路基板1上にクリーム半田を用いて半田付けすることにより、回路基板1上に固定される。
【0025】
この場合、図1に示すように、固定金具10の半田接合板部11の下面11Bの半田接合面には、毛細管現象により回路基板1の表面に塗布されたクリーム半田を吸い上げるV溝13が形成されると共に、半田接合板部11の上面11Aから下面11Bに向けて、V溝13に連通すると共に毛細管現象によりクリーム半田を吸い上げることの可能な角形の連通孔14が、V溝13の延びる方向に離間して複数穿設されている。
【0026】
V溝13は、先細りのV字形断面を有するものであり、連通孔14は、半田接合板部11の上面11Aから下面11Bに向かうほど先窄まりの断面形状に形成されている。そして、V溝13の先細り部分に連通孔14の先窄まり部分が連通されている。また、V溝13は、半田接合板部11の部品固定部12から遠い位置にある外周縁11Cの複数箇所から反対側の外周縁11Eに向けて、外周縁11Cの延在方向に一定間隔を開けて互いに平行に直線的に形成されており、連通孔14も縦横方向に一定間隔で配置されている。
【0027】
この固定金具10を用いてコネクタ2を回路基板1に実装する場合は、固定金具10の半田接合板部11を載置する部分にクリーム半田を塗布しておき、その上に固定金具10の半田接合板部11を載せて、リフロー槽に通すことで、半田接合板部11を回路基板1のランド上に接合する。その際、半田接合板部11に形成されたV溝13と連通孔14の組み合わせにより、十分な量の半田を毛細管現象により吸い上げることができ、それにより、半田接合面(半田接合板部11の下面)の全面に半田を十分に行き渡らせることができて、リフロー後の接合力のアップを図ることができる。
【0028】
つまり、半田接合面にV溝13が形成されていると、毛細管現象によりV溝13の内部に半田が吸い上げられるが、V溝13だけでは吸い上げの効果が弱い。また、半田接合板部11に連通孔14が穿設されていると、毛細管現象により連通孔14の内部に半田が吸い上げられるが、連通孔14だけでは吸い上げの効果が弱い。
【0029】
ところが、V溝13と連通孔14とが互いに連通した関係で組み合わされていると、V溝13と連通孔14の両方の毛細管現象による吸い上げ作用が加算され、十分な量の半田が吸い上げられるようになる。この場合、離れた位置にある複数の連通孔14がV溝13により繋がれた形になるので、全ての連通孔14に半田が吸い上げられることになる。その結果、接合力のアップが図れる。
【0030】
また、連通孔14が開いていることにより、リフロー時に連通孔14を通して、下面側の半田に熱が伝わりやすくなるので、半田付け性が向上する。
【0031】
また、V溝13から連通孔14に至る経路の中間部に断面の細い部分が存在することにより、半田が一層吸い上げられやすくなる。従って、半田接合面に保持する半田量が多くなり、固定金具10の接合力がよりアップする。
【0032】
また、互いに間隔をおいて設けられた複数のV溝13が、半田接合板部11の外周縁11Cから反対側の外周縁11Eに向けて直線状に延びているので、広い領域から半田を効果的に吸い上げることができ、半田接合面の全体に効果的に十分な量の半田を行き渡らせることができる。
【0033】
また、半田接合板部11の下面11Bに直線的なV溝13が設けられていることにより、このV溝13の補強作用を得ることができ、製造時における半田接合板部11の平面度の低下を防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0035】
例えば、上記実施形態では、溝がV溝13である場合に付いて述べたが、他の断面形状の溝を設けることもできる。また、連通孔14が角孔である場合について述べたが、円孔であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 回路基板
2 コネクタ(回路基板上に実装しようとする部品)
10 固定金具
11 半田接合板部
11A 上面
11B 下面
11C,11E 外周縁
12 部品固定部
13 V溝
14 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の表面にクリーム半田を用いて半田付け固定される半田接合板部と、回路基板上に実装しようとする部品に固定される部品固定部とを有し、
前記半田接合板部の下面の半田接合面に、毛細管現象により前記回路基板の表面に塗布されたクリーム半田を吸い上げる溝が形成されると共に、前記半田接合板部の上面から下面に向けて、前記溝に連通すると共に毛細管現象により前記クリーム半田を吸い上げることの可能な連通孔が、前記溝の延びる方向に離間して複数穿設されていることを特徴とする回路基板に実装する部品の固定金具。
【請求項2】
前記溝が、先細り断面のV溝として形成されると共に、前記連通孔が、前記半田接合板部の上面から下面に向かうほど先窄まりの断面形状に形成され、前記V溝の先細り部分に前記連通孔の先窄まり部分が連通していることを特徴とする請求項1に記載の回路基板に実装する部品の固定金具。
【請求項3】
前記V溝が、前記半田接合板部の外周縁の複数箇所から反対側の外周縁に向けて互いに間隔を開けて直線的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回路基板に実装する部品の固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−33436(P2012−33436A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173763(P2010−173763)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】