説明

回路基板及び回路モジュール

【課題】突出した端子を備えた回路基板であって、高さの低い回路基板及び回路モジュールを提供することである。
【解決手段】IC50が回路基板10上に実装された回路モジュール60。IC50は、IC本体52と、IC本体52の実装面上に形成されたはんだバンプ54と、を含む。回路基板10は、IC50が実装される実装面の一部を窪ませることにより形成された凹部15を有する基板本体12と、前記はんだバンプ54と電気的に接続される端子14であって、前記基板本体12の実装面から突出するように前記凹部15内に形成された端子14と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板及び回路モジュール、より特定的には、電子部品が実装される回路基板及び回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板上にIC等の電子部品を実装する場合には、以下のような実装方法が行われていた。回路基板の主面上には、平板状の電極パッドがアレイ状に形成される。一方、ICの主面上には、はんだバンプがアレイ状に形成される。電極パッド上にはんだバンプが位置するように回路基板上にICを搭載し、リフローする。これにより、はんだバンプが溶融し、はんだバンプと電極パッドとが固定され、回路基板上にICが実装される。
【0003】
しかしながら、前記実装方法では、回路基板とICとの熱膨張係数が異なるため、例えば、回路基板が熱により歪んでしまい、回路基板とICとの間に接続不良が発生するおそれがある。そこで、特許文献1や特許文献2に記載の半導体素子基板では、平板状の電極パッドを半導体素子基板に形成するのではなく、半導体素子基板の主面から突出する柱状バンプを形成している。
【0004】
前記柱状バンプは、電極パッドに比べて高さを有しているので、伸縮性を有する。従って、回路基板が熱により歪んでしまったとしても、柱状バンプが歪みを吸収できる。その結果、特許文献1や特許文献2に記載の半導体素子基板は、回路基板とICとの間に接続不良が発生することを抑制できる。
【0005】
しかしながら、前記半導体素子基板では、柱状バンプの高さの分だけ回路基板の高さが高くなってしまうという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3203731号公報
【特許文献2】特開2005−45143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、突出した端子を備えた回路基板であって、高さの低い回路基板及び回路モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の絶縁体層及び内部導体層が積層されて構成され、第1の電子部品が実装される回路基板において、前記第1の電子部品が実装される実装面を構成する前記絶縁体層の一部を除去することなく圧縮して変形させて窪ませることにより形成された凹部を有する基板本体と、前記第1の電子部品に形成されたバンプと電気的に接続される端子であって、前記基板本体の実装面から突出するように前記凹部内に形成された端子と、を備えること、を特徴とする。本発明において、第2の電子部品が実装される電極であって、前記実装面上であってかつ前記凹部外に形成された電極を、更に備えていてもよい。
【0009】
また、本発明は、複数の絶縁体層及び内部導電層が積層されて構成された回路基板と、第1の電子部品が該回路基板上に実装された回路モジュールにおいて、前記第1の電子部品は、電子部品本体と、前記電子部品本体に形成されたバンプと、を含み、前記回路基板は、前記第1の電子部品が実装される実装面を構成する前記絶縁体層の一部を除去することなく圧縮して変形させて窪ませることにより形成された凹部を有する基板本体と、前記バンプと電気的に接続される端子であって、前記基板本体の実装面から突出するように前記凹部内に形成された端子と、を含むこと、を特徴とする。
【0010】
本発明によれば、基板本体の実装面の一部が窪ませられることにより凹部が形成され、該凹部内に端子が形成されている。そのため、回路基板の下面から端子の先端までの距離(すなわち、回路基板の高さ)は、基板の実装面が平らな半導体素子基板の高さに比べて低くなる。その結果、回路基板及び回路基板が用いられた回路モジュールの低背化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記電子部品本体は、前記基板本体の法線方向から見たときに、前記凹部内に収まった状態で実装されていてもよい。
【0012】
本発明において、前記電子部品本体は、前記基板本体の法線方向から見たときに、前記凹部からはみ出した状態で実装されており、前記電子部品本体は、前記基板本体に接触していてもよい。
【0013】
本発明において、第2の電子部品を、更に備え、前記回路基板は、前記実装面上であってかつ前記凹部外に形成され、かつ、前記第2の電子部品がはんだ層を介して実装されている電極を、更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板本体の実装面の一部が窪ませられることにより凹部が形成され、該凹部内に端子が形成されているので、回路基板の高さは、基板の実装面が平らな半導体素子基板の高さに比べて低くなる。その結果、回路基板及び回路基板が用いられた回路モジュールの低背化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るICが回路基板上に位置合わせされた状態を示した断面構造図である。
【図2】図2(a)は、IC及び回路基板からなる回路モジュールの断面構造図である。図2(b)は、該回路モジュールを平面視したときの図である。
【図3】回路基板の製造過程における工程断面図である。
【図4】回路基板の製造過程における工程断面図である。
【図5】回路基板の製造過程における工程断面図である。
【図6】回路基板の製造過程における工程断面図である。
【図7】参考例に係る回路モジュールの断面構造図である。
【図8】図8(a)は、第2の実施形態に係るIC及び回路基板からなる回路モジュールの断面構造図である。図8(b)は、該回路モジュールを平面視したときの図である。
【図9】第3の実施形態に係るIC及び回路基板からなる回路モジュールの断面構造図である。
【図10】図10(a)は、セラミックグリーンシートの断面構造図である。図10(b)は、セラミックグリーンシートの上視図である。
【図11】回路基板の製造過程を示した工程断面図である。
【図12】回路基板の参考例に係る製造工程を示した工程断面図である。
【図13】回路基板の参考例に係る製造工程を示した工程断面図である。
【図14】第4の実施形態に係るIC及び回路基板からなる回路モジュールの断面構造図である。
【図15】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図16】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図17】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図18】参考例に係る回路基板の断面構造図である。
【図19】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図20】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図21】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図22】回路モジュールの製造過程における工程断面図である。
【図23】参考例に係る回路基板の断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る回路基板及び回路モジュールについて説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
(回路基板の構成について)
以下に、第1の実施形態に係る回路基板及び回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図1は、半導体集積回路(以下ICと称す)50が回路基板10上に位置合わせされた状態を示した断面構造図である。図2(a)は、IC50及び回路基板10からなる回路モジュール60の断面構造図である。図2(b)は、回路モジュール60を平面視したときの図である。なお、以下では、回路モジュール60の法線方向から見ることを単に平面視すると言う。
【0018】
回路基板10は、電子部品であるIC50が表面実装される基板であり、図1に示すように、基板本体12、端子14及び内部導電層16を備える。基板本体12は、絶縁体である複数のセラミック層が積層されて構成される。基板本体12は、IC50が実装される実装面の一部を窪ませることにより形成された凹部15を有する。以下では、基板本体12の上側の面を実装面とし、基板本体12の下側の面を下面とする。また、本実施形態において、実装面とは、基板本体12を平面視したときに見える面を指し、具体的には、凹部15が形成された部分以外の面及び凹部15内の面を指す。なお、窪ませるとは、回路基板10の一部を圧縮して変形させることを言う。
【0019】
内部導電層16は、基板本体12の内部においてセラミック層と共に積層される。また、内部導電層16同士は、図示しないビア導体により接続され、回路を構成している。
【0020】
端子14は、基板本体12の実装面から突出するように前記凹部15内にアレイ状に複数形成され、内部導電層16からなる回路とIC50とを電気的に接続する役割を果たす。そのため、端子14の一端は、基板本体12内において、内部導電層16に電気的に接続されている。端子14の高さは、基板本体12の実装面であって凹部15以外の部分よりも低く形成される。
【0021】
一方、IC50は、IC本体52及びはんだバンプ54を備える。IC本体52は、シリコン基板に回路(図示せず)が形成されたものである。はんだバンプ54は、IC本体52の下側の面上にアレイ状に複数形成され、IC本体52に形成された回路と端子14とを電気的に接続する端子としての役割を果たす。なお、以下では、IC本体52の上側の面を上面と称し、IC本体52の下側の面を実装面と称す。
【0022】
以上のように構成された回路基板10及びIC50は、図1に示すように、端子14とはんだバンプ54とが接触するように位置合わせされた状態で配置され、リフローが施される。これにより、はんだバンプ54は、図2(a)に示すように、溶融して端子14を覆うように変形する。その結果、IC50は、回路基板10上に実装される。
【0023】
ここで、凹部15の外形は、平面視した状態では、IC本体52の外形よりも小さく形成されている。そのため、図2(b)に示すように、回路モジュール60を平面視した場合には、IC本体52は、凹部15からはみ出した状態で実装される。このとき、図2(a)に示すように、IC本体52の実装面と基板本体12の実装面とは、接触している。
【0024】
(回路基板の製造方法)
以上のように構成された回路基板10の製造方法について、以下に図面を参照しながら説明する。図3ないし図6は、回路基板10の製造過程における工程断面図である。
【0025】
まず、酸化バリウム、酸化ケイ素及びアルミナを含むセラミック原料粉末にバインダー、可塑剤及び溶剤を混合したスラリーを準備する。次に、ドクターブレード法などのシート成形方法を用いて、このスラリーをキャリアフィルム上にシート状に成形してセラミックグリーンシートを得る。このセラミックグリーンシートは、所定サイズに裁断される。
【0026】
セラミックグリーンシートが完成したら、基板本体12を構成する各層を作製する。まず、図3(a)に示すように、セラミックグリーンシート20に対して、打ち抜き加工を施して、貫通孔24を形成する。この後、図3(b)に示すように、CuやAg等の導体を主成分とする導体ペーストを貫通孔24に充填して、ビア導体34を形成する。
【0027】
次に、CuやAg等の導体を主成分とする導体ペーストをセラミックグリーンシート20の主面上にスクリーン印刷して、所定のパターンの内部導電層16を形成する。図3(a)〜図3(c)に示す工程により、基板本体12を構成する層の一層分が完成する。図3(a)〜図3(c)に示す工程は、基板本体12を構成する全ての層が完成するまで繰り返される。
【0028】
次に、基板本体12の最上層に積層される層を、セラミックグリーンシートを用いて作製する。具体的には、図4(a)に示すように、ポリプロピレン、ブチラール、アクリル等を主成分とする樹脂ペーストをセラミックグリーンシート20の主面上の一部にスクリーン印刷して、マスク層30を形成する。
【0029】
マスク層30の形成後、図4(b)に示すように、セラミックグリーンシート20及びマスク層30に対して、打ち抜き加工を施して、セラミックグリーンシート20及びマスク層30を貫通する貫通孔32を形成する。この後、図4(c)に示すように、CuやAg等の導体を主成分とする導体ペーストを貫通孔32に充填して、端子14を形成する。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、マスク層30が最上層に位置し、その下に、複数のセラミックグリーンシート20が位置するように、マスク層30及びセラミックグリーンシート20を積層する。なお、実際に積層される際には、セラミックグリーンシート20からキャリアフィルム22を剥がし、積層する。これにより、未焼成の積層体40が得られる。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、得られた未焼成の積層体40をベース金型42に入れ、セラミックグリーンシート20及びマスク層30を上側から金型蓋44により圧力をかけて、未焼成の積層体40を圧着する。金型蓋44の温度が70℃、金型蓋44の圧力が400kg/cm2の条件で圧着した。この圧着により、マスク層30が形成された領域の直下に存在するセラミックグリーンシート20がマスク層30により積層方向に圧縮され、図6に示すように、マスク層30が最上層のセラミックグリーンシート20に埋没する。これにより、凹部15が形成される。この際、内部導電層16は、図6に示すように、マスク層30が形成された領域の下側に存在する部分が下方向に沈み込むように湾曲する。図6では、セラミックグリーンシート20の境界及びビア導体34は省略してある。
【0032】
最後に、セラミックグリーンシート20等からなる未焼成の積層体40を焼成する。この際、マスク層30は、高温により焼失し(焼き飛ばされ)、凹部15が露出する。なお、990℃の温度で1時間の焼成を行った。以上の工程を経て、図1に示すような、回路基板10が完成する。
【0033】
(効果)
回路基板10によれば、基板本体12の実装面の一部が窪ませられることにより凹部15が形成され、該凹部15内に端子14が形成されている。そのため、回路基板10の下面から端子14の先端までの距離(すなわち、回路基板の高さ)は、特許文献1に示すような基板の実装面が平らな半導体素子基板の高さに比べて低くなる。その結果、回路基板10及び回路モジュール60の低背化を図ることができる。以下に、詳しく説明する。
【0034】
特許文献1に記載の半導体素子基板では、基板から突出した柱状バンプを形成するために、マスク層30に相当するバンプ形成用シートが最上層に全面に積層されていた。そのため、圧着時には、基板の実装面に略均等に圧力が加わり、基板の実装面に凹部が形成されない。
【0035】
一方、回路基板10では、圧着時において、マスク層30が形成された領域の下側のセラミックグリーンシート20には、他の領域の下側のセラミックグリーンシート20に比べて高い圧力がかかる。そのため、マスク層30が形成された領域の下側のセラミックグリーンシート20の積層方向における圧縮量は、その他の領域の下側のセラミックグリーンシート20の積層方向における圧縮量及び特許文献1に記載の基板の積層方向における圧縮量に比べて、マスク層30の厚みの分だけ大きくなる。その結果、回路基板10の高さは、マスク層30の厚みの分だけ半導体素子基板の高さに比べて低くなる。すなわち、回路基板10及びこの回路基板10を備えた回路モジュール60の低背化を図ることができる。
【0036】
また、図2(b)に示すように、平面視した状態で、凹部15がIC本体52よりも小さく形成されているので、IC50が回路基板10に実装される際に、IC本体52の実装面が基板本体12の実装面に当接するようになる。そのため、基板本体12とIC本体52とが近づきすぎることによってはんだバンプ54が押し潰されすぎて、隣接するはんだバンプ54間においてショートが発生することが防止される。以下に、図2及び図7を用いて説明する。図7は、参考例に係る回路モジュール360の断面構造図である。ここで、図2(a)において、基板本体12の実装面とIC本体52の実装面との距離をh1とする。また、図7において、基板本体312の実装面とIC本体352の実装面との距離をh2とする。
【0037】
図7に示す回路モジュール360では、実装面に凹部が形成されていない回路基板310にIC350が実装されている。この場合、IC本体352の実装面が基板本体312の実装面に当接することがないので、図2に示す回路モジュール60よりも、端子314をはんだバンプ354の奥まで挿入できる。そのため、基板本体312の実装面とIC本体352の実装面との距離h2は、基板本体12とIC本体52との距離h1よりも小さくなる。
【0038】
ここで、実装前において、はんだバンプ54とはんだバンプ354とが同じ体積である場合には、図2に示す回路モジュール60の方が図7に示す回路モジュール360よりも、はんだバンプ54内に存在する端子14の体積が小さい。そのため、図2に示す回路モジュール60のはんだバンプ54の外形は、図7に示す回路モジュール360のはんだバンプ354の外形よりも小さくなる。これにより、回路モジュール60では回路モジュール360よりも、はんだバンプ54間の距離が大きくなり、はんだバンプ54間でのショートが発生しにくくなる。
【0039】
また、回路モジュール60では、図4(b)に示す工程において、セラミックグリーンシート20とマスク層30に対して同時に貫通孔32を形成している。そのため、セラミックグリーンシート20に形成された貫通孔32とマスク層30に形成された貫通孔32とがずれることが防止される。以下に説明する。
【0040】
例えば、マスク層30の形成に樹脂ペーストの代わりに樹脂シートを用いた場合、マスク層30への貫通孔32の形成とセラミックグリーンシート20への貫通孔32の形成とを別々の工程で行うことになる。この場合、貫通孔32をセラミックグリーンシート20及びマスク層30に形成した後に、セラミックグリーンシート20上にマスク層30を積層することになる。そのため、積層時の位置合わせ精度が悪いと、セラミックグリーンシート20に形成された貫通孔32とマスク層30に形成された貫通孔32とがずれてしまうおそれがある。一方、回路モジュール60では、セラミックグリーンシート20とマスク層30とに対して貫通孔32が同時に形成されるので、貫通孔32のずれの問題が発生しない。
【0041】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る回路基板及び回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図8(a)は、IC150及び回路基板110からなる回路モジュール160の断面構造図である。図8(b)は、回路モジュール160を平面視したときの図である。なお、以下では、第1の実施形態に係る回路モジュール60と回路モジュール160との相違点を中心に説明する。
【0042】
回路モジュール160では、凹部115の外形は、平面視した状態において、IC本体152の外形よりも大きく形成されている。そのため、図8(b)に示すように、回路モジュール160を平面視した場合には、IC本体152は、凹部115内に収まった状態で実装される。このとき、図8(a)に示すように、IC本体152の実装面は、基板本体112の凹部115以外の実装面よりも下方に位置するようになる。従って、基板本体112の下面からIC本体152の上面までの距離(すなわち、回路モジュール160の高さ)が、基板本体12の下面からIC本体52の上面までの距離(すなわち、回路モジュール60の高さ)よりも低くなる。すなわち、回路モジュール160では、回路モジュール60よりも更に低背化が図られる。なお、回路モジュール160の高さは、はんだバンプ154間の距離が小さくなりすぎてはんだバンプ154間でショートが発生しない程度に設定されることが好ましい。
【0043】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る回路基板及び回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図9は、IC250及び回路基板210からなる回路モジュール260の断面構造図である。なお、以下では、第1の実施形態に係る回路モジュール60と回路モジュール260との相違点を中心に説明する。
【0044】
回路基板210には、基板本体212の実装面の周縁において該実装面から上方に突出する枠部217が形成されている。この枠部217は、平面視した場合に、基板本体212の実装面を取り囲む環状となる形状を有する。更に、枠部217の上面は、IC本体252の上面よりも上方に位置するように形成される。これにより、枠部217内に樹脂を流し込んでIC250を封止することが可能となる。なお、基板本体212の実装面は、枠部217に囲まれた部分を指し、枠部217の上面を含まない。
【0045】
枠部217の上面は、IC本体252の上面よりも高く形成される必要がある。回路基板210によれば、回路基板10と同様に、基板本体212の下面からIC本体252の上面までの距離を低くすることができる。これにより、IC本体252が低くなった分だけ枠部217の上面を低くすることができる。その結果、回路モジュール260において、基板本体212の下面から枠部217の上面までの距離(すなわち、回路モジュール260の高さ)を小さくすることができる。すなわち、回路基板210及び回路モジュール260の低背化が図られる。
【0046】
前記回路基板210は、以下に示す製造方法によって作製可能である。以下に、回路基板210の製造方法について図10及び図11を参照しながら説明する。図10(a)は、セラミックグリーンシート221の断面構造図である。図10(b)は、セラミックグリーンシート221の上視図である。図11は、回路基板210の製造過程を示した工程断面図である。
【0047】
セラミックグリーンシート221は、枠部217を構成し、図10(b)に示すように、長方形の中央が打ち抜かれた形状を有する。セラミックグリーンシート221の裏面には、キャリアフィルム222が貼り付けられている。該セラミックグリーンシート21は、図6に示す未焼成の積層体40上に、キャリアフィルム222が剥がされた状態で積層及び圧着される。圧着は、200kg/cm2の圧力で行った。これにより得られた積層体を未焼成の積層体240と称す。未焼成の積層体240では、2枚のセラミックグリーンシート221が積層されている。
【0048】
この後、第1の実施形態に係る回路基板10と同様に、未焼成の積層体240を焼成する。この際、マスク層230は、高温により焼き飛ばされて除去され、凹部215が露出する。以上の工程を経て、図9に示すような、回路基板210が完成する。
【0049】
前記回路基板210の製造方法によれば、枠部217を有する回路基板210を作製できる。以下に、図12及び図13を参照しながら説明する。図12及び図13は、回路基板210の参考例に係る製造工程を示した工程断面図である。回路基板210の参考例に係る製造方法では、マスク層430は、樹脂ペーストではなく、樹脂シートにより形成される。以下に、詳しく説明する。
【0050】
回路基板210の参考例に係る製造方法では、図12に示すように、最も上層に積層されるセラミックグリーンシート220の上面全体を覆うようにマスク層430が積層される。更に、枠部217となるセラミックグリーンシート221は、マスク層430の上に積層される。この後、セラミックグリーンシート220、セラミックグリーンシート221及びマスク層430が圧着されて、未焼成の積層体が得られる。未焼成の積層体には、焼成が施される。この際、マスク層430は、高温により焼き飛ばされて除去される。ここで、セラミックグリーンシート221は、図12に示すように、マスク層430上に積層されていたので、マスク層430が除去されると、図13に示すように、基板本体212から分離してしまう。従って、樹脂シートを用いた回路基板210の製造方法では、回路基板210を作製することはできない。
【0051】
これに対して、第3の実施形態に係る回路基板210の製造方法によれば、樹脂ペーストによりマスク層230がセラミックグリーンシート220の上面の一部に形成される。そのため、セラミックグリーンシート220とセラミックグリーンシート221との間にマスク層230が介在しない。その結果、焼成後に、枠部217と基板本体212とが分離することはない。
【0052】
(第4の実施形態)
以下に、第4の実施形態に係る回路基板及び回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図14は、IC450及び回路基板410からなる回路モジュール460の断面構造図である。なお、以下では、第2の実施形態に係る回路モジュール60と回路モジュール460との相違点を中心に説明する。
【0053】
回路モジュール60と回路モジュール460の相違点は、回路モジュール60では回路基板10にIC50のみが実装されていたのに対して、回路モジュール460では回路基板410にIC450及び電子部品470が実装されている点である。より詳細には、基板本体412は、電子部品470が実装されるための電極であって、実装面上であってかつ凹部415外に形成されているランド電極418を有している。電子部品470は、ランド電極418上に、はんだ層472を介して実装されている。
【0054】
以上のように構成された回路モジュール460の製造方法について、以下に図面を参照しながら説明する。図15ないし図17は、回路モジュール460の製造過程における工程断面図である。
【0055】
まず、図3ないし図6に示す工程については、第1の実施形態に係る回路基板10の製造工程と同じであるので説明を省略する。次に、図15に示すように、実装面上であってかつ凹部415外にランド電極418を形成する。ランド電極418は、例えば、Cuを主成分とする導電性ペーストを塗布し、焼成することにより形成される。なお、ランド電極418の焼成は、積層体の焼成と同時に行われてもよい。
【0056】
次に、図16に示すように、端子414及びランド電極418と一致する位置に開口を有するメタルマスク480を、回路基板410上に位置合わせをしてセットする。そして、メタルマスク480上を矢印の方向にスキージ482を移動させて、メタルマスク480を介してはんだペースト484を印刷する。これにより、図17に示すように、端子414及びランド電極418上にはんだ層472,474が印刷される。この後、電子部品470及びIC450が実装されて、図14に示す回路モジュール460が完成する。
【0057】
本実施形態に係る回路基板410によれば、以下に図面を参照しながら説明するように、製造時に端子414が折れることを抑制できると共に、はんだ層472に印刷ずれやにじみが生じることを抑制できる。図18は、参考例に係る回路基板510の断面構造図である。
【0058】
図18に示す回路基板510は、凹部415が形成されていない点において図14に示す回路基板410と相違点を有する。このような回路基板510において、端子514及びランド電極518上にはんだ層を印刷する場合には、メタルマスク580を回路基板510上にセットし、スキージ582によりはんだペースト584を印刷する。
【0059】
ここで、はんだペースト584の印刷の際に、はんだ層の印刷ずれを防止するためには、メタルマスク580を基板本体510の実装面に近づける必要がある。ところが、図18に示す回路基板510では、基板本体512の実装面から上方に端子514が突出している。そのため、印刷ずれやにじみを防止するためにメタルマスク580を回路基板510の実装面に近づけすぎると、はんだ層の印刷の際に、スキージ582が端子514に接触して、端子514が折れてしまうおそれがある。一方、端子514が折れることを防止するためにメタルマスク580を回路基板510の実装面から遠ざけすぎると、はんだ層の印刷の際に、メタルマスク580と端子514及びランド電極518との距離が大きくなりすぎて、印刷ずれやにじみが生じる。
【0060】
これに対して、回路基板410では、凹部415が設けられているので、端子414が凹部415の内部に納まっている。その結果、ランド電極418にメタルマスク480を近づけたとしても、スキージ582がランド電極418に接触する可能性が低くなる。更に、図16及び図18に示すように、回路基板410では、回路基板510に比べて、ランド電極418とメタルマスク480との距離を小さくできるので、特に、ランド電極418でのはんだ層472の印刷ずれやにじみを防止することが可能となる。
【0061】
なお、第4の実施形態に係る回路基板410及び回路モジュール460は、以下に説明する製造方法によっても製造可能である。図19ないし図22は、回路モジュール460の製造過程における工程断面図である。
【0062】
まず、図3ないし図6に示す工程については、第1の実施形態に係る回路基板10の製造工程と同じであるので説明を省略する。次に、図15に示すように、実装面上であってかつ凹部415外にランド電極418を形成する。ランド電極418は、例えば、Cuを主成分とする導電性ペーストを塗布し、焼成することにより形成される。なお、ランド電極418の焼成は、積層体の焼成と同時に行われてもよい。
【0063】
次に、図19に示すように、ランド電極418と一致する位置に開口を有するメタルマスク480を、回路基板410上に位置合わせをしてセットする。該メタルマスク480は、端子414と一致する位置に開口を有していない。そして、メタルマスク480上を矢印の方向にスキージ482を移動させて、メタルマスク480を介してはんだペースト484を印刷する。これにより、図20に示すように、ランド電極418上にはんだ層472が印刷される。
【0064】
次に、図21に示すように、ランド電極418上に電子部品470がはんだ層472を介して実装される。この後、図22に示すように、はんだバンプ454にフラックス456が塗布されたIC450を、端子414上に実装する。電子部品470及びIC450の実装の際のリフロー温度は、例えば、260℃である。以上の工程により、回路モジュール460が完成する。
【0065】
本実施形態に係る回路基板410によれば、以下に図面を参照しながら説明するように、製造時に端子414の先端が押し潰されることを抑制できると共に、はんだ層472に印刷ずれやにじみが生じることを抑制できる。図23は、参考例に係る回路基板610の断面構造図である。
【0066】
図23に示す回路基板610は、凹部415が形成されていない点において図14に示す回路基板410と相違点を有する。このような回路基板610において、端子614及びランド電極618上にはんだ層を印刷する場合には、メタルマスク680を回路基板610上にセットし、スキージ682によりはんだペースト684を印刷する。
【0067】
ここで、はんだペースト684の印刷の際に、はんだ層の印刷ずれを防止するためには、メタルマスク680を基板本体610の実装面に近づける必要がある。ところが、図23に示す回路基板610では、基板本体612の実装面から上方に端子614が突出している。そのため、印刷ずれやにじみを防止するためにメタルマスク680を回路基板610の実装面に近づけすぎると、はんだ層の印刷の際に、メタルマスク680が端子614に押し付けられて、端子614の先端が押し潰されてしまうおそれがある。一方、端子614が押し潰されることを防止するためにメタルマスク680を回路基板610の実装面から遠ざけすぎると、はんだ層の印刷の際に、メタルマスク680と端子614及びランド電極618との距離が大きくなりすぎて、印刷ずれやにじみが生じる。
【0068】
これに対して、回路基板410では、凹部415が設けられているので、端子414が凹部415の内部に納まっている。その結果、ランド電極418にメタルマスク480を近づけたとしても、メタルマスク480がランド電極418に接触する可能性が低くなる。更に、図19及び図23に示すように、回路基板410では、回路基板610に比べて、ランド電極418とメタルマスク480との距離を小さくできるので、特にランド電極418でのはんだ層472の印刷ずれやにじみを防止することが可能となる。
【0069】
なお、はんだバンプ454には、フラックス456の代わりにはんだペーストが塗布されていてもよい。
【0070】
(その他の実施形態)
なお、回路基板10では、貫通孔24,32の形成のために打ち抜き加工が行われているが、貫通孔24,32の形成方法はこれに限らない。例えば、レーザ加工により貫通孔24,32が形成されてもよい。貫通孔32がレーザ加工により形成される場合には、マスク層30側からレーザビームを照射することが好ましい。レーザビームは、セラミックグリーンシート20に貫通孔32を開けながらエネルギーを消耗しながら細っていくので、貫通孔32は、下から上に行くにしたがって径が大きくなる形状をとるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、回路基板及び回路モジュールに有用であり、特に、突出した端子を備えた回路基板であって、高さの低い回路基板及び回路モジュールを提供することである。
【符号の説明】
【0072】
10,110,210,410 回路基板
12,112,212,412 基板本体
14,114,214,414 端子
15,115,215,415 凹部
16,116,216,416 内部導電層
20,220,221 セラミックグリーンシート
22,222 キャリアフィルム
24,32 貫通孔
30,230 マスク層
40,240 未焼成の積層体
50,150,250,450 IC
52,152,252,452 IC本体
54,154,254,454 はんだバンプ
60,160,260,460 回路モジュール
217 枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層及び内部導体層が積層されて構成され、第1の電子部品が実装される回路基板において、
前記第1の電子部品が実装される実装面を構成する前記絶縁体層の一部を除去することなく圧縮して変形させて窪ませることにより形成された凹部を有する基板本体と、
前記第1の電子部品に形成されたバンプと電気的に接続される端子であって、前記基板本体の実装面から突出するように前記凹部内に形成された端子と、
を備えること、
を特徴とする回路基板。
【請求項2】
第2の電子部品が実装される電極であって、前記実装面上であってかつ前記凹部外に形成された電極を、
更に備えること、
を特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
複数の絶縁体層及び内部導電層が積層されて構成された回路基板と、第1の電子部品が該回路基板上に実装された回路モジュールにおいて、
前記第1の電子部品は、
電子部品本体と、
前記電子部品本体に形成されたバンプと、
を含み、
前記回路基板は、
前記第1の電子部品が実装される実装面を構成する前記絶縁体層の一部を除去することなく圧縮して変形させて窪ませることにより形成された凹部を有する基板本体と、
前記バンプと電気的に接続される端子であって、前記基板本体の実装面から突出するように前記凹部内に形成された端子と、
を含むこと、
を特徴とする回路モジュール。
【請求項4】
前記電子部品本体は、前記基板本体の法線方向から見たときに、前記凹部内に収まった状態で実装されていること、
を特徴とする請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記電子部品本体は、前記基板本体の法線方向から見たときに、前記凹部からはみ出した状態で実装されており、
前記電子部品本体は、前記基板本体に接触していること、
を特徴とする請求項3に記載の回路モジュール。
【請求項6】
第2の電子部品を、
更に備え、
前記回路基板は、
前記実装面上であってかつ前記凹部外に形成され、かつ、前記第2の電子部品がはんだ層を介して実装されている電極を、
更に含むこと、
を特徴とする請求項3ないし請求項4のいずれかに記載の回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−267421(P2009−267421A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111745(P2009−111745)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【分割の表示】特願2008−558128(P2008−558128)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】