説明

回路基板検査装置および回路基板検査方法

【課題】検査効率を向上させる。
【解決手段】導体パターンを有する基板に電子部品が搭載された回路基板100における複数の接触点に対してプロービングされたプローブ21を介して入出力する電気信号Sに基づいて電子部品の良否を判定する検査処理を実行すると共に、検査処理において電子部品が不良と判定したときにはプロービングの再実行後に検査処理を再実行する制御部18を備え、制御部18は、検査処理を再実行する際に、直前の検査処理において不良と判定したときの不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として電子部品の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板における導体パターンの導通状態、導体パターン間の絶縁状態、および電子部品の良否を判定する検査処理を実行する回路基板検査装置並びに回路基板検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板検査装置として、特開2001−66351号公報に開示された回路基板検査装置が知られている。この回路基板検査装置は、フィクスチャおよび接続計測部を備えて、回路基板における各導体パターン(ランドパターン)の導通検査、導体パターン間の絶縁検査、および回路基板に実装された電子部品の検査(定数検査)を実行可能に構成されている。この場合、フィクスチャは、下側フィクスチャおよび上側フィクスチャを備えて構成され、下側フィクスチャには、導体パターンや電子部品の配置位置に対応して複数のプローブピンが突出形成されている。この回路基板検査装置では、下側フィクスチャと上側フィクスチャとの間に回路基板を挟み込むことによって下側フィクスチャのプローブピンを各導体パターンや電子部品の端子などに設定された検査ポイントに接触(プロービング)させ、各検査ポイントの中から指定された検査ポイントに対してプローブピンを介して信号を供給した状態で、接続計測部がプローブピンを介して入力する信号に基づいて上記の導通検査、絶縁検査および定数検査などを行う。
【0003】
この場合、この種の回路基板検査装置では、フィクスチャに数多くのプローブピンが配設されており、これらのプローブピンの一部が検査ポイントに接触しない接触不良が発生することがある。このようなプローブピンの接触不良が発生したときには、正確な検査結果を得ることができないこととなる。このため、発明者は、検査精度を向上させるために、検査において、電子部品の1つ以上が不良と判定されたとき(再検査条件を満たしたとき)には、プロービングを再実行した後に、全ての電子部品に対して同じ検査を再実行する回路基板検査装置を既に開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−66351号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、発明者が既に開発している上記の回路基板検査装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、上記の回路基板検査装置では、再検査条件を満たしたときに、全ての電子部品に対して同じ検査を再実行している。このため、この回路基板検査装置には、数多くの電子部品を有する回路基板の検査を行うときには、検査時間が長くなり、検査効率の向上が困難となるという課題が存在し、この点の改善が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、検査効率を向上し得る回路基板検査装置および回路基板検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の回路基板検査装置は、導体パターンを有する基板に電子部品が搭載された回路基板における複数の接触点に対してプロービングされたプローブを介して入出力する電気信号に基づいて当該電子部品の良否を判定する検査処理を実行すると共に、前記検査処理において前記電子部品が不良と判定したときには前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する検査部を備えた回路基板検査装置であって、前記検査部は、前記検査処理を再実行する際に、直前の前記検査処理において不良と判定したときの当該不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として当該電子部品の良否を判定する。
【0008】
また、請求項2記載の回路基板検査装置は、請求項1記載の回路基板検査装置において、前記検査部は、前記検査処理において前記電気信号に基づいて前記電子部品の良否および前記導体パターンの導通状態の良否の双方を判定すると共に、前記検査処理において前記導体パターンの導通状態および前記電子部品の少なくとも一方が不良と判定したときに前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する。
【0009】
また、請求項3記載の回路基板検査装置は、請求項2記載の回路基板検査装置において、前記検査部は、直前の前記検査処理において前記電子部品が接続されている前記導体パターンの導通状態が良好と判定したときには、前記検査処理を再実行する際の良否を判定する対象から当該電子部品を除外する。
【0010】
また、請求項4記載の回路基板検査装置は、請求項1から3のいずれかに記載の回路基板検査装置において、前記検査部は、前記電気信号に基づいて測定された物理量の測定値と予め決められた当該物理量の基準値との大小関係が前記電子部品の種類毎に予め決められた再実行条件を満たすときに前記特定の内容に該当すると判定する。
【0011】
また、請求項5記載の回路基板検査方法は、導体パターンを有する基板に電子部品が搭載された回路基板における複数の接触点に対してプロービングしたプローブを介して入出力する電気信号に基づいて当該電子部品の良否を判定する検査処理を実行すると共に、前記検査処理において前記電子部品が不良と判定したときには前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する回路基板検査方法であって、前記検査処理を再実行する際に、直前の前記検査処理において不良と判定したときの当該不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として当該電子部品の良否を判定する。
【0012】
また、請求項6記載の回路基板検査方法は、請求項5記載の回路基板検査方法において、前記検査処理において前記電気信号に基づいて前記電子部品の良否および前記導体パターンの導通状態の良否の双方を判定すると共に、前記検査処理において前記導体パターンの導通状態および前記電子部品の少なくとも一方が不良と判定したときに前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する。
【0013】
また、請求項7記載の回路基板検査方法は、請求項6記載の回路基板検査方法において、直前の前記検査処理において前記電子部品が接続されている前記導体パターンの導通状態が良好と判定したときには、前記検査処理を再実行する際の良否を判定する対象から当該電子部品を除外する。
【0014】
また、請求項8記載の回路基板検査方法は、請求項5から7のいずれかに記載の回路基板検査方法において、前記電気信号に基づいて測定された物理量の測定値と予め決められた当該物理量の基準値との大小関係が前記電子部品の種類毎に予め決められた再実行条件を満たすときに前記特定の内容に該当すると判定する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の回路基板検査装置、および請求項5記載の回路基板検査方法では、検査処理を再実行する際に、直前の検査処理において不良と判定したときのその不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として良否を判定する。このため、この回路基板検査装置および回路基板検査方法では、検査処理を再実行する際に全ての電子部品について良否判定を行う構成および方法と比較して、検査処理を再実行する際の良否判定の対象とする電子部品の数を少なくすることができる。したがって、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、検査処理を再実行する際の処理時間を十分に短縮することができる結果、検査効率を十分に向上させることができる。
【0016】
また、請求項2記載の回路基板検査装置、および請求項6記載の回路基板検査方法では、検査処理において電子部品の良否および導体パターンの導通状態の良否の双方を判定すると共に、検査処理において導体パターンの導通状態および電子部品の少なくとも一方が不良と判定したときにプロービングの再実行後に検査処理を再実行する。したがって、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、検査処理を再実行する際に電子部品の良否および導体パターンの導通状態の良否の双方を判定する場合においても、再実行する検査処理において全ての電子部品について良否判定を行う構成および方法と比較して、良否判定の対象とする電子部品の数を少なくすることができるため、検査効率を十分に向上させることができる。
【0017】
また、請求項3記載の回路基板検査装置、および請求項7記載の回路基板検査方法では、直前の検査処理において電子部品が接続されている導体パターンの導通状態が良好と判定したときには、直前の検査処理においてその電子部品が不良と判定され、かつ不良の内容が特定の内容に該当するとしても、その不良の判定がプローブの接触不良に起因する誤った判定である可能性がないため、検査処理を再実行する際の良否を判定する対象からその電子部品を除外する。このため、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、検査処理を再実行する際に良否判定の対象とする電子部品の数をさらに少なくすることができるため、検査処理を再実行する際の処理時間をさらに短縮することができる結果、検査効率をさらに向上させることができる。
【0018】
また、請求項4記載の回路基板検査装置、および請求項8記載の回路基板検査方法では、電子部品についての物理量の測定値と基準値との大小関係が再実行条件を満たすときに不良の内容が特定の内容に該当すると判定する。このため、この回路基板検査装置および回路基板検査方法によれば、検査処理を再実行する際に良否判定の対象とすべき電子部品を物理量の測定値と基準値とを比較する簡易な処理で確実に特定することができるため、検査処理を再実行する際の処理効率を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】回路基板検査装置1の構成を示す構成図である。
【図2】検査工程50のフローチャートである。
【図3】検査処理60のフローチャートである。
【図4】回路基板100の平面図である。
【図5】検査工程50を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、回路基板検査装置および回路基板検査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、回路基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す回路基板検査装置1は、複数の導体パターン101を有する基板に複数の電子部品102が搭載されて構成された回路基板100(図4参照)に対する検査を後述する回路基板検査方法に従って検査可能に構成されている。具体的には、回路基板検査装置1は、一例として、図1に示すように、基板保持部11、プローブユニット12、移動機構13、検査用信号出力部14、スキャナ部15、測定部16、記憶部17および制御部18を備えて構成されている。
【0022】
基板保持部11は、一例として、保持台と、保持台に取り付けられて回路基板100の端部を挟み込んで固定するクランプ機構(いずれも図示せず)とを備えて、回路基板100を保持可能に構成されている。
【0023】
プローブユニット12は、回路基板100の各導体パターン101上において予め決められた複数の接触点P(図4参照)にそれぞれ接触(プロービング)させる複数のプローブ21を備えて治具型に構成されている。移動機構13は、制御部18の制御に従い、プローブユニット12を上下方向に移動させることによって各プローブ21を各接触点Pにそれぞれ接触させるプロービングを実行する。
【0024】
検査用信号出力部14は、制御部18の制御に従い、電気信号Sを出力する。この場合、検査用信号出力部14は、検査の内容(導体パターン101の導通状態の良否判定、導体パターン101間の絶縁状態の良否判定、および電子部品102(図4参照)の良否判定)、並びに検査対象の電子部品102の種類に応じて、異なる種類の電気信号Sを出力可能に構成されている。
【0025】
スキャナ部15は、複数のスイッチ(図示せず)を備えて構成され、制御部18の制御に従って各スイッチをオン状態またはオフ状態に移行させることにより、プローブユニット12の各プローブ21と検査用信号出力部14との接断(接続および切断)、およびプローブ21と測定部16との接断を行う。
【0026】
測定部16は、回路基板100の各接触点Pに接触しているプローブユニット12のプローブ21を介して入出力する電気信号Sに基づいて物理量(例えば、電圧、電流、抵抗および容量など)を測定する測定処理を実行する。
【0027】
記憶部17は、制御部18によって行われる検査工程50(図2参照)において用いられる回路基板データを記憶する。この回路基板データには、一例として、回路基板100の各導体パターン101および電子部品102を識別する情報、各導体パターン101に設けられている接触点Pの数を示す情報、および検査時において各導体パターン101の各接触点Pに接触されるプローブ21を識別可能な情報などが含まれている。
【0028】
また、記憶部17は、検査工程50において用いられる判定用データを記憶する。この判定用データには、一例として、導体パターン101間の絶縁状態の良否判定、および導体パターン101の導通状態の良否判定を行う際に、測定部16によって測定された抵抗の測定値と比較する比較値を示す情報が含まれている。また、この判定用データには、電子部品102の良否判定を行う際に、測定部16によって測定された物理量の測定値と比較する各電子部品102毎の基準範囲(図5参照)を示す情報が含まれている。
【0029】
制御部18は、図外の操作部から出力される操作信号に従って回路基板検査装置1を構成する各構成要素を制御する。また、制御部18は、検査部として機能し、図2に示す検査工程50を行う。この検査工程50では、制御部18は、移動機構13によるプロービングを制御する。また、制御部18は、検査用信号出力部14による電気信号Sの出力を制御する。また、制御部18は、測定部16による測定処理を制御する。
【0030】
また、制御部18は、検査工程50において、回路基板100における各導体パターン101の導通状態の良否、各導体パターン101間の絶縁状態の良否、および電子部品102の良否を判定する検査処理60を実行する。また、制御部18は、検査処理60において、導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したときには、検査処理60を再実行する。この場合、制御部18は、再実行した検査処理60において再びこの判定をしたときには、検査処理60を再実行するが、このような検査処理60の再実行が際限なく繰り返されないよう、この回路基板検査装置1では、検査処理60の実行の回数(再実行を含めた合計の実行回数)が、一例として5回に規定されている。
【0031】
また、制御部18は、検査処理60を再実行する際に、直前の検査処理60において電子部品102が不良と判定したときには、その不良の内容がプローブ21の接触不良に起因する可能性があるとして予め決められた特定の内容(以下、単に「特定の内容」ともいう)に該当する電子部品102だけを対象としてその良否判定を行う。言い換えると、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、直前の検査処理60において不良と判定した電子部品102が予め決められた条件を満たすときに、その電子部品102だけを検査処理60を再実行する際の良否判定の対象とする。
【0032】
次に、回路基板検査装置1を用いて回路基板100を検査する回路基板検査方法、およびその際の回路基板検査装置1の動作について、図面を参照して説明する。
【0033】
まず、検査対象の回路基板100を基板保持部11の保持台(図示せず)に載置し、次いで、基板保持部11のクランプ機構(図示せず)で回路基板100の端部を挟み込んで固定する。これにより、回路基板100が基板保持部11に保持される。続いて、図外の操作部を用いて検査開始操作を行う。この際に、制御部18が、操作部から出力された操作信号に従い、図2に示す検査工程50を行う。
【0034】
この検査工程50では、制御部18は、まず、移動機構13を制御してプロービングを実行させる(ステップ51)。これにより、プローブユニット12の各プローブ21の先端部が各導体パターン101における各接触点Pにそれぞれ接触する。
【0035】
次いで、制御部18は、図3に示す検査処理60を実行する(ステップ52)。この検査処理60では、制御部18は、開始した検査処理60が1回目か2回目以降かを判別する(ステップ61)。この時点では、この検査処理60が1回目であるため、制御部18は、各導体パターン101間の絶縁状態の良否判定を行う(ステップ62)。
【0036】
この絶縁状態の良否判定では、制御部18は、検査用信号出力部14を制御して、電気信号S(一例として、電圧値が200V程度の直流電圧信号)を出力させる。続いて、制御部18は、スキャナ部15を制御して、1つの導体パターン101の接触点Pに接触しているプローブ21を検査用信号出力部14に接続させると共に、他の1つの導体パターン101の接触点Pに接触しているプローブ21を基準電位(例えば、グランド電位)に接続させる。
【0037】
次いで、制御部18は、測定部16に対して、プローブ21を介して入出力する電気信号Sに基づいて各導体パターン101間の抵抗を測定させる。続いて、制御部18は、記憶部17から判定用データを読み出して、判定用データに含まれる比較値と測定部16によって測定された抵抗の測定値とを比較して絶縁状態の良否を判定する。この場合、制御部18は、測定値が比較値以上のときには、絶縁状態が良好と判定し、測定値が比較値よりも小さいときには、絶縁状態が不良と判定する。次いで、制御部18は、同様にして、回路基板100における全ての導体パターン101の中から一対を選択する全ての組み合わせについて、各導体パターン101間の絶縁状態の良否判定を行う。
【0038】
続いて、制御部18は、上記のステップ62において絶縁状態が不良と判定したか否かを判別する(ステップ63)。この場合、制御部18は、絶縁状態が不良と判定した(絶縁状態が不良の導体パターン101が1組以上存在した)ときには、検査処理60を終了し、絶縁状態が不良と判定しなかった(絶縁状態が良好と判定した)ときには、各導体パターン101の導通状態の良否判定を行う(ステップ64)。
【0039】
この導通状態の良否判定では、制御部18は、検査用信号出力部14を制御して、電気信号S(一例として、電圧値が1〜5V程度の直流電圧信号)を出力させる。次いで、制御部18は、スキャナ部15を制御して、2つ以上の接触点Pを有する導体パターン101(例えば、図4に示す導体パターン101a)における1つの接触点P(例えば、同図に示す接触点P1)に接触しているプローブ21を検査用信号出力部14に接続させると共に、他の1つの接触点P(例えば、同図に示す接触点P2)に接触しているプローブ21を基準電位(例えば、グランド電位)に接続させる。
【0040】
続いて、制御部18は、測定部16に対して各導体パターン101間の抵抗を測定させ、次いで、抵抗の測定値と比較値とを比較して導通状態の良否を判定する。この場合、制御部18は、測定値が比較値以下のときには、導通状態が良好と判定し、比較値よりも大きいときには、導通状態が不良と判定する。続いて、制御部18は、同様にして、2以上の接触点Pを有する他の導体パターン101について、導通状態の良否判定を行う。
【0041】
次いで、制御部18は、上記のステップ64において導通状態が不良と判定したか否かを判別する(ステップ65)。この場合、制御部18は、導通状態が不良と判定した(導通状態が不良の導体パターン101が1つ以上存在した)ときには、検査処理60を終了し、導通状態が不良と判定しなかった(導通状態が良好と判定した)ときには、全ての電子部品102の良否判定を行う(ステップ66)。
【0042】
この電子部品102の良否判定では、制御部18は、検査用信号出力部14を制御して、判定対象の電子部品102の種類に応じた電気信号Sを出力させる。一例として、図4に示す電子部品102a,102b(抵抗器)を判定対象とするときには、電気信号Sとしての直流電圧信号を出力させ、同図に示す電子部品102c,102d(コンデンサ)を判定対象とするときには、電気信号Sとしての交流電流信号を出力させる。
【0043】
続いて、制御部18は、スキャナ部15を制御して、電子部品102の1つ(例えば、図4に示す電子部品102a)が接続されている1つの導体パターン101(例えば、同図に示す導体パターン101a)における各接触点P(この例では、同図に示す接触点P1,P2)に接触しているプローブ21を検査用信号出力部14に接続させると共に、他の1つの導体パターン101(この例では、同図に示す導体パターン101b)における各接触点P(この例では、同図に示す接触点P3,P4)に接触しているプローブ21を基準電位(例えば、グランド電位)に接続させる。
【0044】
次いで、制御部18は、測定部16に対して電子部品102aの抵抗(物理量の一例)を測定させ、続いて、抵抗の測定値と基準値データに含まれる基準範囲(図5参照)とを比較して電子部品102aの良否を判定する。この場合、制御部18は、測定値が基準範囲内のときには、電子部品102aが良好と判定し、測定値が基準範囲外のときには、電子部品102aが不良と判定する。次いで、制御部18は、同様にして、回路基板100における全ての電子部品102についての良否判定を行い、検査処理60を終了する。続いて、制御部18は、検査工程50のステップ53を実行する(図2参照)。この検査工程50のステップ53では、制御部18は、直前の検査処理60において導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したか否かを判別する。
【0045】
この場合、制御部18は、直前の検査処理60において導体パターン101間の絶縁状態が不良と判定したときには、導体パターン101の導通状態の良否判定、および電子部品102の良否判定のいずれも行わずに検査処理60を終了している。このため、制御部18は、このときには、検査工程50のステップ53において、導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良であるとの条件を満たしていないと判別し、移動機構13を制御してプロービングを解除(プローブユニット12を上方に移動)させて(ステップ58)、検査工程50を終了する。この場合、制御部18は、直前の検査処理60において絶縁状態の不良と判定しているため、検査対象の回路基板100を不良と判定する。
【0046】
また、制御部18は、直前の検査処理60において、各導体パターン101間の絶縁状態、各導体パターン101の導通状態、および各電子部品102のいずれもが良好と判定したときには、ステップ53において、その旨を判別して検査工程50を終了する。この場合、制御部18は、検査対象の回路基板100を良好と判定する。
【0047】
一方、制御部18は、直前の検査処理60において、導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したときには、検査工程50のステップ53においてその旨を判別して、次いで、移動機構13を制御してプローブユニット12を上方に移動(プロービングを解除)させた後に(ステップ54)、プロービングを再実行させる(ステップ55)。続いて、制御部18は、検査処理60を再実行する(ステップ56)。
【0048】
検査処理60を再実行する際には、制御部18は、上記した検査処理60のステップ61を実行する(図3参照)。この際に、この検査処理60が2回目であるため、制御部18は、次いで、直前の検査処理60において導体パターン101の導通状態が不良と判定したか否か(導通状態の不良があったか否か)を判別する(ステップ67)。
【0049】
この場合、制御部18は、直前の検査処理60において導通状態が不良と判定したときには、再実行している検査処理60のステップ67においてその旨を判別し、上記したステップ64〜ステップ66を実行して、再実行している検査処理60を終了する。
【0050】
ここで、プロービングの実行時にプローブ21が各接触点Pに確実に接触していないとき、言い替えればプローブ21の接触不良(プロービング不良)が生じているときには、導通状態の良否判定の際に抵抗の測定値が大きい値となり、実際には導通状態が良好であるにも拘わらず不良と判定されるおそれがある。つまり、検査処理60の上記したステップ64において導通状態が不良と判定されたときには、その判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性がある。この場合、この回路基板検査装置1では、直前の検査処理60において導通状態が不良と判定したときには、上記したように、プロービングを再実行した後に検査処理60(導体パターン101の導通状態の良否判定)を再実行する。このため、この回路基板検査装置1では、プローブ21の接触不良に起因する誤判定を低減して検査の信頼性を向上させることが可能となっている。
【0051】
また、制御部18は、直前の検査処理60において導通状態が良好で、電子部品102が不良と判定しているときには、再実行している検査処理60のステップ67においてその旨を判別し、続いて、電子部品102の不良の内容がプローブ21の接触不良に起因する可能性があるとして予め決められた特定の内容に該当するか否かを判別する(ステップ68)。
【0052】
ここで、プローブ21の接触不良が生じている状態で電子部品102としての抵抗器(例えば、図4,5に示す電子部品102b)の抵抗(物理量の一例)を測定したときには、その測定値が予め決められた基準値(例えば、図5に示す電子部品102bの基準範囲の上限値)と比較して大きい値となる。つまり、電子部品102としての抵抗器の抵抗の測定値が基準値と比較して大きいためにその電子部品102が不良と判定されたときには(同図参照)、その判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性がある。このため、この回路基板検査装置1では、抵抗の測定値が基準値よりも大きいとの再実行条件(電子部品102の種類毎に予め決められた再実行条件の一例)を満たしたときには、制御部18が、不良の内容が特定の内容に該当するとして、検査処理60を再実行する際に、電子部品102の良否判定を再実行する。
【0053】
また、プローブ21の接触不良が生じている状態で電子部品102としてのコンデンサ(例えば、図4,5に示す電子部品102d)の容量(物理量の一例)を測定したときには、その測定値が予め決められた基準値(例えば、図5に示す電子部品102dの基準範囲の下限値)と比較して小さな値となる。つまり、電子部品102としてのコンデンサの容量の測定値が基準値と比較して小さいためにその電子部品102が不良と判定されたときには(同図参照)、その判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性がある。このため、この回路基板検査装置1では、容量の測定値が基準値よりも小さいとの再実行条件(電子部品102の種類毎に予め決められた再実行条件の一例)を満たしたときには、制御部18が、不良の内容が特定の内容に該当するとして、検査処理60を再実行する際に、電子部品102の良否判定を再実行する。
【0054】
一方、電子部品102としての抵抗器(例えば、図4,5に示す電子部品102a)の抵抗の測定値が基準範囲の下限値と比較して小さいためにその電子部品102aが不良と判定されたとき(つまり、抵抗の測定値が基準値よりも大きいとの再実行条件を満たさないとき)には(図5参照)、その判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性はない。また、電子部品102としてのコンデンサ(例えば、図4,5に示す電子部品102c)の容量の測定値が基準範囲の上限値と比較して大きいためにその電子部品102cが不良と判定されたとき(つまり、容量の測定値が基準値よりも小さいとの再実行条件を満たさないとき)には(図5参照)、その判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性はない。つまり、検査処理60を再実行する際に、このような電子部品102の良否判定を再実行する必要性はないこととなる。
【0055】
この回路基板検査装置1では、検査処理60を再実行する際の処理時間を短縮するため、制御部18が、良否判定の再実行の必要性がない上記のような電子部品102を良否判定を再実行する対象から除外している。具体的には、制御部18は、ステップ68において、物理量の測定値と基準値との大小関係が上記の再実行条件を満たしたときに、不良の内容が特定の内容に該当すると判別し、このように判別した電子部品102だけを対象としてその良否判定を再実行して(ステップ69)、再実行している検査処理60を終了する。
【0056】
一方、上記したように、物理量の測定値と基準値との大小関係が再実行条件を満たしていない電子部品102については良否判定を再実行する必要性はない。このため、制御部18は、ステップ68において、不良の内容が特定の内容に該当しない(不良の内容が特定の内容に該当する電子部品102が存在しない)と判別したときには、電子部品102の良否判定を再実行することなく検査処理60を終了する。
【0057】
次いで、制御部18は、検査工程50のステップ57を実行する。このステップ57では、制御部18は、検査処理60を合計で5回実行したか否かを判別する。この場合、制御部18は、検査処理60の実行回数が4回以下のときには、上記したステップ52を実行し、5回のときには、移動機構13を制御してプロービングを解除させて(ステップ58)、検査工程50を終了する。この場合、制御部18は、検査処理60を再実行した結果、各導体パターン101間の絶縁状態、各導体パターン101の導通状態、および各電子部品102のいずれもが良好と判定したときには、ステップ53において、その旨を判別して検査工程50を終了する。また、制御部18は、この際に、検査対象の回路基板100を良好と判定する。
【0058】
また、制御部18は、5回目の検査処理60において、依然として導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したときには、検査対象の回路基板100を不良と判定する。
【0059】
この回路基板検査装置1では、上記したように、直前の検査処理60において電子部品102が不良と判定した場合において、その不良の内容が特定の内容に該当するときには、検査処理60を再実行する際に、特定の内容に該当する電子部品102だけを対象として良否判定を行うため、検査処理60の処理時間が短縮される。
【0060】
以上により、回路基板100の検査が終了する。続いて、他の回路基板100を検査する際には、終了した回路基板100に代えて他の回路基板100を基板保持部11に保持させ、検査開始操作を行う。これに応じて、制御部18が、上記した検査工程50を行う。
【0061】
このように、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、検査処理60を再実行する際に、直前の検査処理60において不良と判定したときのその不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品102だけを対象として良否を判定する。このため、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、検査処理60を再実行する際に全ての電子部品102について良否判定を行う構成および方法と比較して、検査処理60を再実行する際の良否判定の対象とする電子部品102の数を少なくすることができる。したがって、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、検査処理60を再実行する際の処理時間を十分に短縮することができる結果、検査効率を十分に向上させることができる。
【0062】
また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、検査処理60において電子部品102の良否および導体パターン101の導通状態の良否の双方を判定すると共に、検査処理において導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したときにプロービングの再実行後に検査処理を再実行する。したがって、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、検査処理を再実行する際に電子部品102の良否および導体パターン101の導通状態の良否の双方を判定する場合においても、再実行する検査処理において全ての電子部品102について良否判定を行う構成および方法と比較して、良否判定の対象とする電子部品102の数を少なくすることができるため、検査効率を十分に向上させることができる。
【0063】
また、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法では、電子部品102についての物理量の測定値と基準値との大小関係が電子部品102の種類毎に予め決められた再実行条件を満たすときに不良の内容が予め決められた特定の内容に該当すると判定する。このため、この回路基板検査装置1および回路基板検査方法によれば、検査処理60を再実行する際に良否判定の対象とすべき電子部品102を物理量の測定値と基準値とを比較する簡易な処理で確実に特定することができるため、検査処理60を再実行する際の処理効率を十分に高めることができる。
【0064】
なお、回路基板検査装置および回路基板検査方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、物理量の測定値と基準値との大小関係が再実行条件を満たす電子部品102の全てを検査処理60を再実行する際の良否判定の対象とする構成および方法について上記したが、再実行条件を満たすこれらの電子部品102の一部を良否判定の対象から除外する構成および方法を採用することができる。
【0065】
具体的には、直前の検査処理60において電子部品102が接続されている導体パターン101の導通状態が良好なときには、プローブ21の接触状態は良好であった(接触不良が生じていなかった)と考えられる。このため、その電子部品102が直前の検査処理60において不良と判定され、かつその不良の内容が予め決められた特定の内容に該当したとしても、その不良との判定がプローブ21の接触不良に起因する誤った判定である可能性はない。つまり、その電子部品102は本来的に不良であると考えられ、良否判定を再実行する必要性はないこととなる。
【0066】
このため、直前の検査処理60において導通状態が良好と判定された導体パターン101に接続されている電子部品102については、その電子部品102が直前の検査処理60において不良と判定され、かつその不良の内容が予め決められた特定の内容に該当したとしても、その電子部品102を、検査処理60を再実行する際の良否判定の対象から除外する構成および方法を採用することができる。この構成および方法によれば、検査処理60を再実行する際に良否判定の対象とする電子部品102の数をさらに少なくすることができるため、検査処理60の処理時間をさらに短縮することができる結果、検査効率をさらに向上させることができる。
【0067】
また、電子部品102の良否を判定する際に用いる基準範囲の上限値または下限値を基準値とした例について上記したが、基準値はこれに限定されず任意に規定することができる。例えば、基準範囲の上限値よりも十分に大きい(一例として、上限値の10倍程度)の値を基準値としたり、基準範囲の下限値よりも十分に小さい(一例として、下限値の1/10程度)の値を基準値としたりすることができる。
【0068】
また、電子部品102として抵抗器およびコンデンサが搭載された回路基板100を検査対象とする例について上記したが、これら以外の各種の電子部品102(例えば、コイルやダイオードなど)が搭載された回路基板100を検査対象とする際にも同様の効果を実現することができる。この場合、電子部品102としてのコイルについては、物理量としての電流の測定値が基準値よりも小さいとの条件を再実行条件とすることができる。また、電子部品102としてのダイオードについては、物理量としての順方向電圧の測定値が基準値よりも大きいとの条件を再実行条件とすることができる。
【0069】
また、検査処理において、導体パターン101の導通状態の良否、導体パターン101間の絶縁状態の良否、および電子部品102の良否を判定する構成および方法について上記したが、検査処理において、導体パターン101の導通状態の良否、および電子部品102の良否を判定する構成および方法を採用することもできるし、検査処理において、導体パターン101間の絶縁状態の良否、および電子部品102の良否を判定する構成および方法を採用することもできる。また、検査処理において、電子部品102の良否のみを判定する構成および方法を採用することもできる。また、検査処理において導体パターン101の導通状態および電子部品102の少なくとも一方が不良と判定したときに検査処理を再実行する例について上記したが、電子部品102が不良と判定したときにのみ検査処理を再実行する構成および方法を採用することもできる。
【0070】
また、治具型に構成されたプローブユニット12を用いる構成および方法に適用した例について上記したが、複数のプローブを個別に移動させてプロービングを行うフライング型のプロービング機構を用いる構成および方法に適用することもできる。この構成および方法では、検査処理60を再実行する際に良否判定の対象から除外した電子部品102が接続されている導体パターン101(接触点P)に対しては、プロービングの回数が減少することとなる。このため、この構成および方法では、上記した効果を実現することができることに加えて、プロービングによる接触点Pにおける摩耗や傷の発生が低減されるという効果を実現することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 回路基板検査装置
16 測定部
18 制御部
21 プローブ
60 検査処理
101 導体パターン
100 回路基板
102a,102b,102c,102d電子部品
P1,P2,P3,P4接触点
S 電気信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンを有する基板に電子部品が搭載された回路基板における複数の接触点に対してプロービングされたプローブを介して入出力する電気信号に基づいて当該電子部品の良否を判定する検査処理を実行すると共に、前記検査処理において前記電子部品が不良と判定したときには前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する検査部を備えた回路基板検査装置であって、
前記検査部は、前記検査処理を再実行する際に、直前の前記検査処理において不良と判定したときの当該不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として当該電子部品の良否を判定する回路基板検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、前記検査処理において前記電気信号に基づいて前記電子部品の良否および前記導体パターンの導通状態の良否の双方を判定すると共に、前記検査処理において前記導体パターンの導通状態および前記電子部品の少なくとも一方が不良と判定したときに前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する請求項1記載の回路基板検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、直前の前記検査処理において前記電子部品が接続されている前記導体パターンの導通状態が良好と判定したときには、前記検査処理を再実行する際の良否を判定する対象から当該電子部品を除外する請求項2記載の回路基板検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記電気信号に基づいて測定された物理量の測定値と予め決められた当該物理量の基準値との大小関係が前記電子部品の種類毎に予め決められた再実行条件を満たすときに前記特定の内容に該当すると判定する請求項1から3のいずれかに記載の回路基板検査装置。
【請求項5】
導体パターンを有する基板に電子部品が搭載された回路基板における複数の接触点に対してプロービングしたプローブを介して入出力する電気信号に基づいて当該電子部品の良否を判定する検査処理を実行すると共に、前記検査処理において前記電子部品が不良と判定したときには前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する回路基板検査方法であって、
前記検査処理を再実行する際に、直前の前記検査処理において不良と判定したときの当該不良の内容が予め決められた特定の内容に該当する電子部品だけを対象として当該電子部品の良否を判定する回路基板検査方法。
【請求項6】
前記検査処理において前記電気信号に基づいて前記電子部品の良否および前記導体パターンの導通状態の良否の双方を判定すると共に、前記検査処理において前記導体パターンの導通状態および前記電子部品の少なくとも一方が不良と判定したときに前記プロービングの再実行後に前記検査処理を再実行する請求項5記載の回路基板検査方法。
【請求項7】
直前の前記検査処理において前記電子部品が接続されている前記導体パターンの導通状態が良好と判定したときには、前記検査処理を再実行する際の良否を判定する対象から当該電子部品を除外する請求項6記載の回路基板検査方法。
【請求項8】
前記電気信号に基づいて測定された物理量の測定値と予め決められた当該物理量の基準値との大小関係が前記電子部品の種類毎に予め決められた再実行条件を満たすときに前記特定の内容に該当すると判定する請求項5から7のいずれかに記載の回路基板検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−76633(P2013−76633A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216566(P2011−216566)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】