説明

回路構成体およびそれを備えた機能カード、回路構成体の製造方法

【課題】 小型化の要求を満たすことができるとともに、量産性と信頼性を向上させることが可能な機能パターン層を備えた回路構成体とその製造法、その回路構成体を備えた機能カードを提供することである。
【解決手段】 アンテナ回路構成体は、樹脂フィルム基材20と、樹脂フィルム基材20の上に形成され、かつ、グラビア印刷で形成されたレジストインキ層のパターンに従って所定の機能を有するように一部分がエッチングされた金属箔を含むアンテナ回路パターン層100とを備えた回路構成体であって、ICチップを搭載する箇所において、アンテナ回路パターン層100が200μm以下の間隔で離れたパターン層スリット端縁部106と107を有し、パターン層スリット端縁部106と107の間隔の最大値と最小値の差が40μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路構成体およびそれを備えた機能カード、回路構成体の製造方法に関し、特定的には、機能パターン層がグラビア印刷で形成されたパターンに従ったエッチングによって形成された回路構成体およびそれを備えたICタグ、ICカード等の機能カード、回路構成体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICタグ、ICカード等の機能カードは、目覚しい発展を遂げ、盗難防止用タグ、出入者チェック用タグ、テレフォンカード、クレジットカード、プリペイドカード、キャッシュカード、IDカード、カードキー、各種会員カード、図書券、診察券、定期券等に使用され始めている。これらの機能カード用アンテナ回路構成体は、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムからなる基材と、基材の表面上に形成された金属箔からなるアンテナ回路パターン層とから構成される。アンテナ回路パターン層は、基材の片面または両面に接着剤を介在して金属箔をドライラミネート法等によって接着した後、その金属箔にエッチング処理を施すことにより、基材の表面上に形成される。
【0003】
上記のような構成の従来のアンテナ回路構成体とそれを備えた機能カード、アンテナ回路構成体の製造方法は、特開2004−140587号公報(特許文献1)に記載されている。
【0004】
ところで、従来の非接触型のICタグやICカードでは、短波長の周波数が13.56MHzの電波を利用して情報の送受信が行われることが多い。このようなICタグやICカードに内蔵される回路構成体として、樹脂フィルム上にアンテナ回路パターン層としてループ状の金属製アンテナコイル部を形成し、IC等の必要な半導体装置(デバイス)を搭載したものが使用されてきた。このような構成では、金属製のアンテナコイル部自体がある程度の大きさ(たとえば名刺サイズ)を有しており、ICタグやICカードをさらに小型化するには限界があった。このため、機能カードの用途が制約されるという問題があった。
【0005】
近年では、ICタグやICカードをさらに小型化するために、さらに短波長の周波数が2.45GHzのマイクロ波を利用し、従来のループ状のアンテナ回路パターン層に代わって非ループ状(たとえば矩形状のダイポールアンテナ)のアンテナ回路パターン層を採用することが検討されている。このような小型化に伴い、回路の寸法精度も厳しくなってきており、回路パターン層における導体層間の距離が200μm以下という精密な回路構成体が要求されている。
【0006】
特開2004−140587号公報(特許文献1)に記載されているように従来の製造方法では、金属箔の表面上にグラビア印刷で形成されたレジストインキ層のアンテナ回路パターンをマスクとして用いて金属箔の少なくとも一部をエッチングすることにより、金属製のアンテナ回路パターン層を形成する。
【特許文献1】特開2004−140587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の製造方法では、上記のような精密な回路パターン層を備えた回路構成体を低コストで安定して量産することができなかった。
【0008】
また、従来の製造方法で上記のような精密な回路パターン層を備えた回路構成体を製造すると、導体層間でショート(短絡)が生じ、または機能カードが誤作動し、要求品質を充分に満たす回路構成体を製造することができず、製品歩留まりが非常に低下するという問題があった。
【0009】
そこで、この発明の一つの目的は、小型化の要求を満たすことができるとともに、量産性と信頼性を向上させることが可能な機能パターン層を備えた回路構成体とその製造法を提供することである。
【0010】
また、この発明のもう一つの目的は、小型化の要求を満たすことができるとともに、量産性と信頼性を向上させることが可能な回路構成体を備えた機能カードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従った回路構成体は、樹脂を含む基材と、この基材の上に形成され、かつ、グラビア印刷で形成されたレジストインキ層のパターンに従って所定の機能を有するように一部分がエッチングされた金属箔を含む機能パターン層とを備えた回路構成体であって、ICチップを搭載する箇所において、機能パターン層が200μm以下の間隔で離れた第1と第2のパターン層部分を有し、第1と第2のパターン層部分の当該間隔の最大値と最小値の差が40μm以下である。
【0012】
この発明の回路構成体では、機能パターン層のICチップを搭載する箇所のうち、第1と第2のパターン層部分の間が200μm以下の微小な間隔で離れていても、第1と第2のパターン層部分の当該間隔の最大値と最小値の差が40μm以下に制御されているので、パターン層部分間で短絡が生じるのを防止することができる。これにより、回路構成体の信頼性を向上させることができる。
【0013】
この発明の回路構成体において、機能パターン層がアンテナ回路パターン層を含むのが好ましい。この場合、回路構成体の小型化に伴って機能パターン層を非ループ状のダイポールアンテナに適用することができる。
【0014】
また、この発明の回路構成体において、機能パターン層が金属箔の上に形成されたレジストインキ層を含んでいてもよい。この場合、金属箔のエッチングの際にマスクとして用いられるレジストインキ層を回路構成体の目的や用途に応じて除去しないで残存させることができる。
【0015】
この発明に従った機能カードは、上述のいずれかの構成を有する回路構成体を備える。好ましくは、機能カードは、第1と第2のパターン層部分の間隔を跨ぐように機能パターン層の上に搭載されたICチップをさらに備える。また、好ましくは、機能カードはICタグである。
【0016】
この発明に従った回路構成体の製造方法は、パターンを有するレジストインキ層を金属箔の上にグラビア印刷する工程と、グラビア印刷されない金属箔の表面の上に樹脂を含む基材を固着する工程と、レジストインキ層をマスクとして用いて金属箔の少なくとも一部をエッチングすることによって、金属箔を含み、かつ、200μm以下の間隔で離れた第1と第2のパターン層部分を有する機能パターン層を形成する工程とを備える。グラビア印刷の工程では、パターンの周縁部を印刷するグラビアロールの部分に、パターンの他の部分を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセルを連ねて版孔(グラビアセルともいう)を形成すること、または、200μmよりも小さい幅の凹部パターンを連ねて版孔を形成することの少なくともいずれかを行ったグラビアロールを用いてグラビア印刷する。
【0017】
この発明の回路構成体の製造方法では、グラビア印刷の工程において、パターンの周縁部を印刷するグラビアロールの部分に上記の所定のセルまたはパターンを連ねて版孔を形成することにより、製版の段階で精密なパターンを得るための処理を行うことができるので、200μm以下の間隔で離れた第1と第2のパターン層部分間で短絡が生じるのを防止することができる。これにより、回路構成体の量産性と信頼性を向上させることができる。
【0018】
この発明の回路構成体の製造方法は、機能パターン層を形成した後、レジストインキ層を除去する工程をさらに備えてもよい。この場合、金属箔のエッチングの際にマスクとして用いたレジストインキ層を回路構成体の目的や用途に応じて除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、この発明によれば、小型化の要求を満たすことができるとともに、量産性と信頼性を向上させることが可能な機能パターン層を備えた回路構成体とその製造方法、回路構成体を備えた機能カードを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はこの発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体、たとえばICタグ用ダイポール形のアンテナ回路構成体の要部を示す平面図、図2は図1においてIIで示す箇所を拡大して示す部分拡大平面図、図3は図1のIII−III線に沿った方向から見た機能カード用アンテナ回路構成体の部分断面図である。図9は図2におけるICチップを搭載する箇所(2点鎖線で示す。)のスリット端縁部をさらに拡大して示す部分拡大平面図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、アンテナ回路構成体は、樹脂フィルム基材20と、樹脂フィルム基材20の表面上に形成された接着剤層30と、接着剤層30の表面上に所定のパターンに従って形成された金属箔からなるアンテナ回路パターン層100とから構成されている。アンテナ回路パターン層100は、パターン層外周縁部101、102、103、104および105によって外周縁が形成され、パターン層スリット端縁部106および107とパターン層スリット内周縁部108および109とから形成される略L字形のスリット部を有することにより、ダイポールアンテナを構成している。アンテナ回路パターン層100のパターン層スリット端縁部106と107との間の間隔Gと、パターン層スリット内周縁部108と109との間の間隔は200μm以下である。また、図9に示すように間隔Gの最大値Gmaxと最小値Gminの差は40μm以下に制御されている。図2に示すように、パターン層スリット端縁部106と107の間隔Gを跨ぐようにICチップ50が搭載される。
【0022】
このようにアンテナ回路構成体では、アンテナ回路パターン層100のうち、パターン層スリット端縁部106と107の間、パターン層スリット内周縁部108と109との間が200μm以下の微小な間隔で離れていても、パターン層間で短絡が生じるのを防止することができる。また、ICチップを搭載する箇所の当該間隔の最大値と最小値の差が40μm以下に制御されているので、これにより、アンテナ回路構成体の信頼性を向上させることができる。
【0023】
なお、アンテナ回路パターン層100は、グラビア印刷工程において形成されるレジストインキ層をマスクとして金属箔をエッチングすることにより形成されるが、この製造工程については後述する。
【0024】
また、図1〜図3に示される本発明の一つの実施の形態では、アンテナ回路パターン層100の上では、金属箔のエッチングの際にマスクとして用いられたレジストインキ層は除去されているが、ICカード、ICタグ等の機能カードの製品の目的や用途によっては、レジストインキ層を除去しないで残存させてもよい。
【0025】
図4はこの発明のもう一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体、たとえばICタグ用ダイポール形の機能カード用アンテナ回路構成体を示す平面図、図5は図4においてVで示す箇所を拡大して示す部分拡大平面図である。なお、図3は図4のIII−III線に沿った方向から見た機能カード用アンテナ回路構成体の部分断面図である。
【0026】
図3〜図5に示すように、アンテナ回路構成体は、樹脂フィルム基材20と、樹脂フィルム基材20の表面上に形成された接着剤層30と、接着剤層30の表面上に所定のパターンに従って形成された金属箔からなるアンテナ回路パターン層200とから構成されている。アンテナ回路パターン層200は、分離して形成された二つの島状のパターン層から構成され、パターン層外周縁部201〜212および215〜218によって外周縁が形成され、パターン層間隙端縁部213および214から形成される間隙部を有することにより、ダイポールアンテナを構成している。アンテナ回路パターン層200のパターン層間隙端縁部213と214の間のICチップを搭載する箇所の間隔Gは200μm以下である。また、間隔Gの最大値と最小値の差は40μm以下に制御されている。図5に示すように、パターン層間隙端縁部213と214の間の間隔Gを跨ぐようにICチップ50が搭載されている。
【0027】
このようにアンテナ回路構成体では、アンテナ回路パターン層200のうち、パターン層間隙端縁部213と214の間が200μm以下の微小な間隔で離れていても、パターン層間で短絡が生じるのを防止することができる。また、ICチップを搭載する箇所の当該間隔の最大値と最小値の差が40μm以下に制御されているので、これにより、アンテナ回路構成体の信頼性を向上させることができる。
【0028】
上述した実施の形態においてアンテナ回路パターン層100または200を構成する金属箔は、アルミニウム箔、銅箔等が用いられる。金属箔の中でも経済性、汎用性、信頼性の観点からアルミニウム箔をアンテナ回路パターン層100または200の構成材料に用いるのが最も好ましい。ここで、アルミニウム箔とは、純アルミニウム箔に限定されるものではなく、アルミニウム合金箔も含む。
【0029】
金属箔は、厚みが7μm以上60μm以下であるのが好ましく、より好ましくは厚みが15μm以上50μm以下であるのが好ましい。
【0030】
上述した実施の形態において樹脂フィルム基材20を構成する樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が用いられ、厚みが5μm以上80μm以下であるのが好ましい。樹脂フィルム基材を構成する樹脂の種類と厚みは、通常、最終的に製造される機能カードの目的や用途によって選択される。ICタグまたはICカードの用途では、加工とコストの観点から樹脂の種類としてPETまたはPEN等が選択され、25〜50μm程度の厚みで使用される。
【0031】
上述した実施の形態においては、アンテナ回路パターン層100または200を構成する金属箔を樹脂フィルム基材20に積層固着するために接着剤層30を介在させている。この場合、接着剤を用いてドライラミネート法によって金属箔を樹脂フィルム基材に固着する。
【0032】
次に、この発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の製造方法について説明する。図6〜図8はこの発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の製造工程を示し、図1のIII−III線に沿った方向から見た部分断面図である。
【0033】
図6に示すように、グラビア印刷されない金属箔10の一方の表面の上に接着剤層30を形成し、この接着剤層30を介在させて樹脂フィルム基材20を固着する。たとえば、金属箔10として幅が500〜1000mmの帯状のアルミニウム箔、樹脂フィルム基材20としてPETフィルム、接着剤層30としてドライラミネート用接着剤を用いる。このようにして、金属箔10と樹脂フィルム基材20との積層体を準備する。
【0034】
図7に示すように、所定のアンテナ回路パターンに従ってレジストインキ層40を金属箔10の表面上にグラビア印刷する。
【0035】
上記の工程において、図7に示すように所定のアンテナ回路パターンに従ってレジストインキ層40を金属箔10の表面上にグラビア印刷した後、図6に示すようにグラビア印刷されない金属箔10の一方の表面の上に接着剤層30を形成し、この接着剤層30を介在させて樹脂フィルム基材20を固着してもよい。
【0036】
ところで、アルミニウム箔などの金属箔にエッチングするためのマスクとして用いられるレジストインキをグラビア印刷する場合、線数が1cm当たり80線程度の密度でセルが形成されたグラビアロールを用いることが多い。この場合、セルの一辺の幅は125μm程度である。従って、このようなグラビアロールを用いることによって、パターン周縁部において線幅または線間隔の変動が100μm程度の滑らかな細密な印刷をすることは困難である。
【0037】
この問題を解決するために、セルを細かくして、たとえば線数が1cm当たり200線程度の密度で細かいセルが形成されたグラビアロールを用いて製版すれば、セルの一辺の幅が50μm程度になり、見かけ上、周縁部の凸凹は少なくなり、周縁部が滑らかになる。しかし、セルの深さが浅くなるので、レジストインキの転写付着量が少なくなり、たとえば、エッチングのマスクとして用いられるレジストインキの印刷には適さない。
【0038】
グラビア版の製版方法として、一般的には版胴としてのグラビアロールの表面にフォトレジストを塗布してマスキングし、レーザーで露光して硬化させる。その後、エッチングしてセルを形成する。版孔の耐磨耗性を向上させるためにグラビアロールの表面にクロムメッキ処理を施す方法がある。複数の異なる形状のセルを組み合わせて版孔を形成することも可能である。
【0039】
そこで、この発明の実施の形態では、この組み合わせ法を利用してパターン周縁部を滑らかにする。すなわち、パターンの周縁部を印刷するグラビアロールの部分に、パターンの他の部分を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセルを連ねて版孔を形成すること、または、200μmよりも小さい幅の凹部パターンを連ねて版孔を形成することの少なくともいずれかを行ったグラビアロールを用いてグラビア印刷する。
【0040】
具体的には、図1に示されるアンテナ回路パターンにおいて、パターン層外周縁部101、102、103、104および105、パターン層スリット端縁部106および107、ならびに、パターン層スリット内周縁部108および109からなるパターン周縁部を印刷するグラビアロールの部分に、パターンの他の部分、たとえば、アンテナ回路パターン層100の中央部を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセルを連ねて版孔を形成すること、または、200μmよりも小さい幅の凹部パターンを連ねて版孔を形成することの少なくともいずれかを行ったグラビアロールを用いてグラビア印刷する。
【0041】
一方、グラビア印刷では、レジストインキがドクターで摺り切りされながら転写されていくので、転写されたレジストインキのパターン形状は印刷対象物としての基材(本発明の実施の形態では金属箔、または樹脂フィルム基材と金属箔の積層体)の進行方向によって形状や寸法に差が生じる場合が多い。印刷方向に平行に配置されたパターン周縁部は凹凸が少なく滑らかに印刷されるが、印刷方向に直交するように配置されたパターン周縁部は大きな凹凸が生じるように印刷される。
【0042】
上記の現象を考慮して、図1に示されるアンテナ回路パターンにおいて、印刷方向Pに直交するパターン周縁部としてパターン層外周縁部102および103、パターン層スリット内周縁部108および109を印刷するグラビアロールの部分に、パターンの他の部分、たとえば、アンテナ回路パターン層100の中央部を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセル、たとえば、線数が1cm当たり80線程度の密度で形成されたセルよりも小さいセルとして、線数が1cm当たり200線程度の密度で形成された細かいセルを連ねて版孔を形成すること、または、200μmよりも小さい幅の凹部パターンを連ねて版孔を形成することの少なくともいずれかの処理(以下、「周縁処理」という)を行えば、凹凸が少なく、高い精度で周縁部を形成するのにより効果的である。また、ICチップ50が搭載される間隔Gを規定するパターン層スリット端縁部106と107を印刷するグラビアロールの部分にも、上記の処理を行えば、凹凸が少なく、高い精度で周縁部を形成するのにより効果的である。
【0043】
このようにしてグラビア印刷によって形成されたレジストインキ層40をマスクとして用いて金属箔10をエッチングすることにより、図8に示すようにアンテナ回路パターン層100を形成する。パターン層スリット端縁部106と107の間隔は200μm以下で、ICチップを搭載する箇所の当該間隔の最大値と最小値の差が40μm以下に制御されたアンテナ回路パターン層100が形成される。
【0044】
その後、図3に示すように、レジストインキ層40を除去する。この場合、機能カードの目的や用途に応じてレジストインキ層40を残存させてもよい。
【0045】
なお、図4〜図5に示されるアンテナ回路パターン層200も上記と同様にして形成されるが、この場合、印刷方向は図4にて矢印Pで示される方向にすればよい。
【実施例】
【0046】
以下、グラビアロールに周縁処理を施してグラビア印刷したレジストインキ層をマスクとして用いてエッチングすることにより、以下の実施例1〜3に従ってアンテナ回路構成体を作製した。また、グラビアロールに周縁処理を施さないでグラビア印刷したレジストインキ層をマスクとして用いてエッチングすることにより、以下の比較例1に従ってアンテナ回路構成体を作製した。
【0047】
(グラビアロールの周縁処理)
図1に示される矩形短冊型のダイポール形アンテナ回路パターンをグラビア印刷するためにグラビアロールに周縁処理を施した。図1に示されるアンテナ回路パターンにおけるスリット部の寸法として、パターン層スリット端縁部106と107の間隔、パターン層スリット内周縁部108と109の間隔をそれぞれ0.10mmに設定(ICチップを搭載する箇所の当該間隔も0.10mmに設定)して設計した。
【0048】
版孔の設計としては、図1に示されるアンテナ回路パターンの形状(外形寸法:1.50mm×50.00mm、上記の間隔:0.10mm)の版孔を形成するために、線数が1cm当たり80線程度の密度で形成されたセルを用いた。比較例1においてグラビアロールに周縁処理を施さないでグラビア印刷する場合は、上記のセルだけで形成されたグラビアロールを用いて版孔を形成した。
【0049】
そして、図1に示されるアンテナ回路パターンにおいて、印刷方向Pに直交するパターン周縁部としてパターン層外周縁部101,102および103、パターン層スリット内周縁部108および109を印刷するグラビアロールの部分に、パターンの他の部分、たとえば、アンテナ回路パターン層100の中央部を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセル、すなわち、線数が1cm当たり80線程度の密度で形成されたセルよりも小さいセルとして、線数が1cm当たり200線程度の密度で形成された細かいセルを連ねて、または、200μmよりも小さい幅25μmの凹部パターンを連ねて、版孔を形成した。さらに、ICチップ50が搭載される間隔Gを規定するパターン層スリット端縁部106と107を印刷するグラビアロールの部分にも、上記の処理を行って版孔を形成した。実施例1〜3では、上記のように形成された版孔を有するグラビアロールを用いた。
【0050】
(実施例1)
図6に示すように、金属箔10として厚みが20μmのアルミニウム箔(材質JIS 1N30−H材)を、樹脂フィルム基材20として厚みが38μmのPETフィルムの片面に接着剤層30としてポリウレタン系ドライラミネート接着剤を用いて貼り合せた。この積層体のアルミニウム箔の表面に塩化ビニル‐酢酸ビニル系レジストインキを用いて、図1に示すアンテナ回路パターン(1パターン当たりの大きさ:縦1.5mm×横50mm)に従ってレジストインキ(乾燥後の塗布重量2g/m2)を印刷することにより、図7に示すようにレジストインキ層40を金属箔10の上に形成した。ただし、このとき、上記の周縁処理を施したグラビアロールを用いた。なお、印刷時には、図1の矢印Pで示す方向とグラビアロールの回転方向を一致させた。レジストインキ層を乾燥させた後、レジストインキが印刷されていない部分のアルミニウム箔を塩化第2鉄溶液でエッチング除去することにより、図8に示すようにアンテナ回路構成体を作製した。これにより、多数個のアンテナ回路パターン層100が形成された。
【0051】
得られたアンテナ回路構成体において図1に示すパターン層スリット端縁部106と107の間隔と、パターン層スリット内周縁部108と109の間隔を測定した。具体的には任意の30個のアンテナ回路パターン層100について各アンテナ回路パターン層100に対して上記の間隔1箇所を顕微鏡で測定した。これらの間隔の測定結果を表1に「間隔の平均値」、「間隔の最大値」、「間隔の最小値」として示す。また、パターン層スリット端縁部106と107、または、パターン層スリット内周縁部108と109のいずれかの箇所で接触している場合、短絡しているとみなし、「短絡数」として数えた。
【0052】
また、図1に示すパターン層スリット端縁部106と107のICチップを搭載する箇所の間隔Gに関して、図9に示すように最大値Gmaxと最小値Gminを測定し、30個のアンテナ回路パターン層100のそれぞれについて、その差を算出した。その差の最大値を表1に「間隔Gの凹凸」として示す。
【0053】
(実施例2)
図6に示すように、金属箔10として厚みが10μmのアルミニウム箔(材質JIS 1N30−O材)を、樹脂フィルム基材20として厚みが25μmのPETフィルムの片面に接着剤層30としてポリウレタン系ドライラミネート系接着剤を用いて貼り合せた。この積層体のアルミニウム箔の表面にロジン−マレイン酸樹脂のレジストインキを用いて図7に示すようにレジストインキ層40を金属箔10の上に形成した。印刷およびエッチングは実施例1と同じ条件で行なった。実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
金属箔として厚みが18μmの圧延銅箔(銅の純度:99.5質量%)を用いた以外は、実施例1と同じ条件でアンテナ回路構成体を作製した。実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
実施例1と同じ条件でアンテナ回路構成体を作製した。ただし、グラビア印刷工程においては上記の周縁処理を施さないグラビアロールを用いた。実施例1と同様にして測定した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

表1に示される結果から、比較例1では短絡が観察されるのに対し、本発明に従って作製された実施例1〜3のアンテナ回路構成体では短絡が観察されず、また、各アンテナ回路パターン層においてパターン層部分の間隔が200μm以下の範囲内で大きくばらつくことなく、特にICチップを搭載する箇所のその間隔Gの最大値と最小値の差も40μm以下に制御されていることがわかる。
【0057】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の要部を示す平面図である。
【図2】図1においてIIで示す箇所を拡大して示す部分拡大平面図である。
【図3】図1または図4のIII−III線に沿った方向から見た機能カード用アンテナ回路構成体の部分断面図である。
【図4】この発明のもう一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体を示す平面図である。
【図5】図4においてVで示す箇所を拡大して示す部分拡大平面図である。
【図6】この発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の第1の製造工程を示し、図1のIII−III線に沿った方向から見た部分断面図である。
【図7】この発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の第2の製造工程を示し、図1のIII−III線に沿った方向から見た部分断面図である。
【図8】この発明の一つの実施の形態に従った機能カード用アンテナ回路構成体の第3の製造工程を示し、図1のIII−III線に沿った方向から見た部分断面図である。
【図9】図2におけるスリット端縁部をさらに拡大して示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0059】
10:金属箔、20:樹脂フィルム基材、30:接着剤層、40:レジストインキ層、100,200:アンテナ回路パターン層、101〜105:パターン層外周縁部、106,107:パターン層スリット端縁部、108,109:パターン層スリット内周縁部、201〜212,215〜218:パターン層外周縁部、213,214:パターン層間隙端縁部、G:間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む基材と、
この基材の上に形成され、かつ、グラビア印刷で形成されたレジストインキ層のパターンに従って所定の機能を有するように一部分がエッチングされた金属箔を含む機能パターン層とを備えた回路構成体であって、
ICチップを搭載する箇所において、前記機能パターン層は200μm以下の間隔で離れた第1と第2のパターン層部分を有し、前記第1と第2のパターン層部分の当該間隔の最大値と最小値の差は40μm以下である、回路構成体。
【請求項2】
前記機能パターン層は、アンテナ回路パターン層を含む、請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記機能パターン層は、金属箔の上に形成されたレジストインキ層を含む、請求項1または請求項2に記載の回路構成体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の回路構成体を備えた、機能カード。
【請求項5】
前記第1と第2のパターン層部分の間隔を跨ぐように前記機能パターン層の上に搭載されたICチップをさらに備える、請求項4に記載の機能カード。
【請求項6】
当該機能カードは、ICタグである、請求項5に記載の機能カード。
【請求項7】
パターンを有するレジストインキ層を金属箔の上にグラビア印刷する工程と、
グラビア印刷されない前記金属箔の表面の上に樹脂を含む基材を固着する工程と、
前記レジストインキ層をマスクとして用いて前記金属箔の少なくとも一部をエッチングすることによって、前記金属箔を含み、かつ、200μm以下の間隔で離れた第1と第2のパターン層部分を有する機能パターン層を形成する工程とを備え、
前記グラビア印刷の工程では、前記パターンの周縁部を印刷するグラビアロールの部分に、前記パターンの他の部分を印刷するセルのピッチ寸法よりも小さいピッチ寸法のセルを連ねて版孔を形成すること、または、200μmよりも小さい幅の凹部パターンを連ねて版孔を形成することの少なくともいずれかを行ったグラビアロールを用いてグラビア印刷する、回路構成体の製造方法。
【請求項8】
前記機能パターン層を形成した後、前記レジストインキ層を除去する工程をさらに備える、請求項7に記載の回路構成体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−4306(P2006−4306A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181971(P2004−181971)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】