説明

回転コネクタと舵角センサの連結構造

【課題】 騒音の低減化が図れる回転コネクタと舵角センサの連結構造を提供すること。
【解決手段】 回転コネクタ1の第1ロータ部材(ロータハウジング)4と舵角センサ2の第2ロータ部材(回転部材)11との連結構造において、金属弾性板からなる中継部材12の筒状部12aを第2ロータ部材11の内周面に固定し、この中継部材12の鍔部12bを固定部材13の上面に摺接させると共に、鍔部12bに形成した複数の切起こし片12c〜12eを第1ロータ部材4の下端部に弾接させる。また、鍔部12bに形成した長孔12gとフレキシブル係合孔12hに第1ロータ部材4側の突起9d,9eを係合させることによって、第1ロータ部材4に必要な遊びに起因する中心軸のズレを許容しつつ、第1および第2ロータ部材4,11を回転方向に位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリング装置に組み込まれてエアーバッグシステム等の電気的接続手段として使用される回転コネクタとステアリングホイールの回転情報検出手段である舵角センサとの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、ステータ部材に対してロータ部材を回転自在に連結し、これらステータ部材とロータ部材との間に画成される環状空間内に可撓性ケーブルを収納・巻回したものであり、ステアリングホイールに連動してロータ部材を回転させることにより、可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締めまたは巻き戻されるようになっている。ここで、回転コネクタのロータ部材とステータ部材間には比較的大きな遊び(回転軸と直交する面内方向のクリアランス)が確保されており、これによりステアリングホイールに連動してロータ部材が安定的に回転できるようになっている。一方、舵角センサは、固定部材に対してコード板を有するロータ部材を回転自在に連結すると共に、この固定部材の内部にフォトインタラプタ等を収納したものであり、ステアリングホイールに連動してロータ部材とコード板を回転させることにより、フォトインタラプタから回転量の検出信号が出力されるようになっている。ここで、舵角センサのロータ部材は固定部材に対して遊びの少ない状態で支持する必要があり、これによりロータ部材に一体化されたコード板の軸線方向(アキシャル方向)と径方向(ラジアル方向)のガタが抑制されるため、フォトインタラプタから安定した検出信号が出力されるようになっている。
【0003】
従来より、このような回転コネクタと舵角センサとを予めユニット化しておき、このユニット体をステアリング装置へ組み込むことにより、回転コネクタをステアリングホイールに装着されたエアバッグシステム等の電気的接続手段として使用すると共に、舵角センサをステアリングホイールの回転情報検出手段として使用するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる従来技術では、回転コネクタのロータ部材(第1ロータ部材)と舵角センサのロータ部材(第2ロータ部材)のいずれか一方に突起が設けられると共に、いずれか他方に径方向へ延びる長孔が設けられており、回転コネクタと舵角センサとをユニット化する場合は、第1および第2ロータ部材間にコイルばねを介在させた状態で前記突起を長孔に係合させることにより、第1および第2ロータ部材を同軸上で連結すると共に、回転コネクタの構成部品であるステータ部材に舵角センサの構成部品である固定部材をねじ止め等で固定するようにしている。そして、このユニット体をステアリング装置へ組み込む場合は、第1および第2ロータ部材をステアリングシャフトに挿通した後、上段側に位置する回転コネクタの第1ロータ部材にステアリングホイールが連結されるようになっている。
【0005】
使用に際して運転者がステアリングホイールを回転操作すると、それに伴って回転コネクタの第1ロータ部材と舵角センサの第2ロータ部材とが一体的に回転するため、回転コネクタの可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締め/巻き戻されると共に、舵角センサからステアリングホイールの回転情報を検出することができる。この場合、比較的大きな遊びを必要とする回転コネクタの第1ロータ部材と、極力遊びを小さくする必要のある舵角センサの第2ロータ部材とは、一方のロータ部材に設けられた突起が他方のロータ部材に設けられた長孔に係合した状態で連結されており、互いの中心軸が多少ズレた状態で連結されたとしても、このズレは突起と長孔の係合によって吸収されるため、第1ロータ部材と第2ロータ部材は滑らかに回転することができる。また、第1ロータ部材と第2ロータ部材とは両者間に介在されたコイルばねによって互いに離反する方向へ弾性付勢されているため、舵角センサの第2ロータ部材に一体化されたコード板のアキシャル方向のガタ付きが抑えられ、舵角センサから安定した検出信号を得ることができる。
【特許文献1】特開平11−135221号公報(第4−6頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、従来の回転コネクタと舵角センサの連結構造では、回転コネクタのロータ部材と舵角センサのロータ部材との間にコイルばねを介在させているため、コイルばねによって両ロータ部材間のアキシャル方向のガタ付きを抑えて安定した検出信号を得ることができる。しかしながら、コイルばねを介在させた状態で両ロータ部材を連結する必要があるため、回転コネクタと舵角センサをユニット化する際の組立作業性が悪いという問題があると共に、自動車の走行中にコイルばね自体が振動してばね鳴きと呼ばれる異音を発生するという問題があった。
【0007】
また、前述した従来技術においては、舵角センサのロータ部材を上下両端に鍔部を有する2つの分割体で構成し、コード板を挟んで両分割体を一体化してロータ部材となすことにより、固定部材である上カバーと下カバーの各ガイド孔にロータ部材が回転可能に支持されるようになっているため、コード板とロータ部材の一体品を構成するのに最低でも3つの部材(コード板と一対の分割体)が必要であり、舵角センサの部品点数が増加してコストアップを招来するという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、騒音の低減化が図れる回転コネクタと舵角センサの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明による回転コネクタと舵角センサの連結構造は、ステアリングホイールに連動して回転する中空軸構造の第1ロータ部材を有し、この第1ロータ部材がステータ部材に回転可能に支持されている回転コネクタと、中空軸部の外周面にコード板を設けた第2ロータ部材を有し、この第2ロータ部材が固定部材に回転可能に支持されている舵角センサと、前記第1ロータ部材の回転を前記第2ロータ部材に伝達する中継部材とを備え、前記中継部材が金属弾性板からなり、この中継部材に前記中空軸部の内周面に固定される筒状部と、この筒状部の上端から前記固定部材の上面に沿って延びる鍔部とを設けると共に、この鍔部に複数の切起こし片と径方向へ延びる長孔とを形成し、前記各切起こし片を前記第1ロータ部材の下端部に弾接させることにより、前記第1ロータ部材と前記第2ロータ部材とを互いに離反する方向へ弾性付勢し、かつ、前記長孔に前記第1ロータ部材の下端部に設けられた突起を挿入することにより、前記第1ロータ部材と前記第2ロータ部材とを回転方向に位置決めするように構成した。
【0010】
このような構成によれば、回転コネクタの第1ロータ部材と舵角センサの第2ロータ部材とを連結したときに、中継部材の鍔部に形成された複数の切起こし片の弾発力によって両ロータ部材が互いに離反する方向へ付勢されると共に、鍔部に形成された長孔と第1ロータ部材に設けられた突起との係合によって両ロータ部材の中心軸のズレが吸収されるため、両ロータ部材間のガタ付きを抑えて安定した検出信号を得ることができるのみならず、ばね鳴きと呼ばれる振動音をなくして騒音の低減化を実現できる。また、金属弾性板からなる中継部材の鍔部は固定部材の上面を摺動面として回転するが、これら中継部材と固定部材は異種材料同士の摺動となるため、中継部材の摺動性を高めて第2ロータ部材の滑らかな回転を実現できる。
【0011】
上記の構成において、切起こし片の数は限定されないが、切起こし片が鍔部の円周方向に沿う略等間隔位置に少なくとも3つ以上形成されていると、第1および第2ロータ部材を互いに離反する方向へバランス良く弾性付勢することができて好ましい。この場合、鍔部に各切起こし片と長孔とを別々に形成しても良いが、長孔が切起こし片に穿設されていると、鍔部の限られたスペースに切起こし片と長孔を効率良く形成することができると共に、鍔部の板面を切起こして形成された切起こし片によって突起と長孔との係合が確実になる。
【0012】
また、上記の構成において、長孔が第2ロータ部材の回転中心を介して180度対向する2箇所に形成されていると共に、いずれか一方の長孔が突起を鍔部の円周方向から弾性的に挟持するフレキシブル係合孔であると、第1ロータ部材の回転が第2ロータ部材に確実に伝達されて好ましい。この場合、長孔とフレキシブル係合孔がそれぞれ切起こし片に穿設されていると、鍔部の限られたスペースに各切起こし片と長孔およびフレキシブル係合孔を効率良く形成することができる。
【0013】
また、上記の構成において、第2ロータ部材が中空軸部の外周面にコード板を一体成形した合成樹脂成形品であることが好ましい。この場合、中継部材は筒状部が第2ロータ部材の中空軸部の内周面に固定され、該筒状部の上端に設けられた鍔部が固定部材の上面に沿って延びることにより、第2ロータ部材が固定部材に対してアキシャル方向へ位置規制されるため、コード板と第2ロータ部材を合成樹脂で一体成形することが可能となり、舵角センサの部品点数を削減して低コスト化が図れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による回転コネクタと舵角センサの連結構造は、回転コネクタの第1ロータ部材と舵角センサの第2ロータ部材とを連結したときに、中継部材の鍔部に形成された複数の切起こし片の弾発力によって両ロータ部材が互いに離反する方向へ付勢されると共に、鍔部に形成された長孔と第1ロータ部材に設けられた突起との係合によって両ロータ部材の中心軸のズレが吸収されるため、両ロータ部材間のガタ付きを抑えて安定した検出信号を得ることができると共に、ばね鳴きと呼ばれる振動音をなくして騒音の低減化を実現できる。また、金属弾性板からなる中継部材の鍔部は固定部材の上面を摺動面として回転するが、これら中継部材と固定部材は異種材料同士の摺動となるため、中継部材の摺動性を高めて第2ロータ部材の滑らかな回転を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る回転コネクタと舵角センサの連結ユニットを示す断面図、図2は図1のII−II線に沿う要部断面図、図3は該連結ユニットの分解斜視図、図4は該連結ユニットに備えられる中継部材の平面図、図5は該中継部材の断面図である。
【0016】
本実施形態例に係る連結ユニットは回転コネクタ1と舵角センサ2とで構成されており、後述するように、これら回転コネクタ1と舵角センサ2は上下2段に積層・一体化された状態で自動車のステアリング装置に組み込まれるようになっている。
【0017】
回転コネクタ1はステアリングホイールに装着されたエアバッグシステム等の電気的接続手段として使用されるもので、この回転コネクタ1は、ステータ部材であるステータハウジング3と、第1ロータ部材である中空軸構造のロータハウジング4と、これらステータハウジング3とロータハウジング4の間に画成される環状空間10内に収納・巻回された可撓性ケ−ブル5とを備えている。ステータハウジング3は、円筒状の外筒ケース6と、この外筒ケース6の下端に固定された円環状の底板7とで構成されており、これら外筒ケース6および底板7は合成樹脂で成形されている。ロータハウジング4は、円筒状の内筒部8aの上端から外方へ向かって円環状の上板部8bを延出させた上部ロータ8と、この上部ロータ8の内筒部8aにスナップ結合されて一体的に回転する下部ロータ9とで構成されており、これら上部ロータ8および下部ロータ9も合成樹脂で成形されている。また、下部ロータ9には、上端にスナップ爪9aが形成された中空状筒体9bと、この中空状筒体9bの下端から外方へ向かって延出する円環状の下板部9cとが設けられており、図3に示すように、下板部9cの底面には円周方向に沿って180度離れた2箇所に太さの異なる一対の突起9d,9eが下向きに突出形成されている。
【0018】
この回転コネクタ1のロータハウジング4は、中空状筒体9bのスナップ爪9aを内筒部8aの内周壁にスナップ結合することによって上部ロータ8と下部ロータ9とが一体化されており、図1に示すように、上板部8bの外縁部を外筒ケース6の上端部に摺接させ、かつ、下板部9cの外縁部を底板7の下面に摺接させた状態で、ロータハウジング4がステータハウジング3に回転自在に支持されている。そして、ステータハウジング3側の外筒ケース6やロータハウジング4側の上部ロータ8等によって環状空間10が画成され、この環状空間10の内部に可撓性ケ−ブル5が例えば渦巻き状(あるいは途中で巻回方向を逆にした反転状)に巻回されて収納されている。なお、この可撓性ケ−ブル5の両端は外筒ケース6と上部ロータ8の内筒部8aにそれぞれ固定された後、図示せぬダイレクトコネクタ等を介して外部に電気的に導出されている。
【0019】
舵角センサ2はステアリングホイールの回転情報検出手段として使用されるもので、この舵角センサ2は、第2ロータ部材である回転部材11と、この回転部材11に取り付けられたステンレス等の金属弾性板からなる中継部材12と、回転部材11を回転自在に支持する固定部材13と、フォトインタラプタ14を実装して固定部材13の内部に組み込まれた回路基板15とを備えている。回転部材11は、円筒状の中空軸部11aと、この中空軸部11aの外周面の中央付近から外方へ突出する円環状のコード板11bとで構成されており、これら中空軸部11aとコード板11bは合成樹脂で一体成形されている。中継部材12は、中空軸部11aの内周面に固定される筒状部12aと、筒状部12aの上端から外方へ向かって延出する円環状の鍔部12bとで構成されており、鍔部12bに3種類の切起こし片12c〜12eが形成されている。固定部材13は互いに接合・一体化された上カバー16と下カバー17とからなり、これら上カバー16と下カバー17はいずれも合成樹脂で成形されている。フォトインタラプタ14は図示せぬ発光素子と受光素子とを有する光学素子であり、これら発光素子と受光素子は凹部14aを介して対向している。
【0020】
回転部材11の中空軸部11aの内周面には係止爪11cが突設されており、図2に示すように、この係止爪11cを筒状部12aの係止孔12fに嵌入させることによって、中継部材12が中空軸部11aの内周面に固定されている。また、中継部材12の鍔部12bは上カバー16の上面に沿って延びており、この鍔部12bを上カバー16の上面に摺接させ、かつ、中空軸部11aの係合段部11d(図1参照)を下カバー17の内壁上端部に摺接させた状態で、回転部材11および中継部材12が固定部材13に回転自在に支持されている。なお、回転部材11のコード板11bには円周方向に沿って多数の遮光部11eが所定の間隔で形成されており、回転部材11の回転に伴ってこれら遮光部11eがフォトインタラプタ14の凹部14a内を通過するようになっている。これにより、発光素子から受光素子へ向かう光が凹部14a内で遮断されてロー信号とハイ信号が交互に出力されるため、この出力信号に基づいて回転部材11の回転情報を検出することができる。
【0021】
また、図4に示すように、中継部材12には鍔部12bの円周方向に沿って等間隔な6箇所に、4つの切起こし片12cと、径方向へ延びる長孔12gが穿設された切起こし片12dと、同じく径方向へ延びる長孔状のフレキシブル係合孔12hが穿設された切起こし片12eとが形成されている。これら切起こし片12c〜12eはいずれも鍔部12bの板面を上向きに切り起こして形成されたものであって、このうち切起こし片12dと切起こし片12eは円周方向に沿って180度離れた位置に形成されており、切起こし片12eの先端部はフレキシブル係合孔12hを介して対向する一対の弾性細片12iとなっている。そして、各切起こし片12cが下部ロータ9の下板部9cの下端面に弾接していると共に、切起こし片12d,12eの長孔12gとフレキシブル係合孔12hにそれぞれ下部ロータ9側から太めの突起9dと細めの突起9eが挿入されて係合しており、各突起9d,9eは挿入された長孔12gまたはフレキシブル係合孔12hに対して径方向への移動は許容されているものの回転方向にはガタを生じないように寸法設定されている。具体的には、突起9dの外径と長孔12gの幅狭方向の内径とが略同等に設定されていると共に、突起9eの外径とフレキシブル係合孔12h内の弾性細片12i同士の間隔とが略同等に設定されており、この突起9eは両弾性細片12iにより円周方向に沿って弾性的に挟持されている。
【0022】
すなわち、舵角センサ2の回転部材11は中継部材12を介して回転コネクタ1のロータハウジング4に連結されており、長孔12gとフレキシブル係合孔12hにそれぞれ突起9dと突起9eが係合して回転方向に位置決めされているため、回転部材11とロータハウジング4は一体的に回転すると共に、ステータハウジング3に対してロータハウジング4に必要な遊びに起因する中心軸のズレが許容されるようになっており、さらに、下部ロータ9に対する各切起こし片12c〜12eの弾発力によって回転部材11とロータハウジング4は互いに離反する方向へ弾性付勢されている。また、上カバー16と底板7をねじ止めやスナップ結合等の手段を用いて固定することにより、舵角センサ2の固定部材13と回転コネクタ1のステータハウジング3とが一体化されている。
【0023】
このように回転コネクタ1と舵角センサ2を上下2段に積層・一体化して構成される連結ユニットは、そのまま自動車のステアリング装置に組み込むことができる。かかるステアリング装置への組み付けに際しては、回転部材11の中央貫通孔とロータハウジング4の中央貫通孔にステアリングシャフトを挿通した後、回転コネクタ1側のステータハウジング3および舵角センサ2側の固定部材13をステアリングコラム等の設置母材に固定すると共に、回転コネクタ1の上部ロータ8に立設された図示せぬ連結ピンをステアリングホイールに連結すればよい。
【0024】
また、使用に際して運転者がステアリングホイールを時計回りまたは反時計回りに回転操作すると、ステアリングホイールの回転に伴ってロータハウジング4と回転部材11が一体的に回転し、回転コネクタ1と舵角センサ2がそれぞれ動作する。すなわち、回転コネクタ1については、ロータハウジング4が回転することによって可撓性ケ−ブル5が巻き締めあるいは巻き戻し動作され、舵角センサ2については、コード板11bを有する回転部材11が回転することによってフォトインタラプタ14から回転量の検出信号が出力される。
【0025】
以上説明したように、本実施形態例に係る回転コネクタ1と舵角センサ2の連結構造においては、一体的に回転するロータハウジング(第1ロータ部材)4と回転部材(第2ロータ部材)11が、中継部材12の鍔部12bに形成された複数の切起こし片12c〜12eの弾発力によって互いに離反する方向へ付勢されていると共に、鍔部12bに形成された一対の長孔(長孔12gとフレキシブル係合孔12h)に下部ロータ9の突起9d,9eを係合させることによって、これら第1および第2ロータ部材4,11が回転方向に位置決めされているため、両ロータ部材4,11間のガタ付きを抑えて舵角センサ2から安定した検出信号が得られる。また、ガタ付き防止用のコイルばねが不要なため、ばね鳴きと呼ばれる振動音をなくして騒音の低減化が実現できると共に、組立作業性が向上する。しかも、ロータハウジング4側の突起9d,9eが回転部材11側の長孔12g内やフレキシブル係合孔12h内で径方向へ移動可能であり、これら両ロータ部材4,11の中心軸のズレが許容される構造にしてあるため、比較的大きな遊びを必要とする回転コネクタ1を高精度な舵角センサ2と連結しつつ、両ロータ部材4,11をそれぞれ滑らかに回動させることができる。
【0026】
また、本実施形態例における舵角センサ2は、中継部材12によって回転部材11を固定部材13に対しアキシャル方向へ位置規制することができるため、コード板11bを突設した回転部材11を合成樹脂で一体成形することができ、部品点数や組立工数の削減による低コスト化が図れる。しかも、中継部材12はステンレス等の金属弾性板からなり、この中継部材12の鍔部12bが固定部材11の上カバー16の上面を摺動面として回転するので、中継部材12と固定部材13は異種材料同士の摺動となり、中継部材12の摺動性を高めて回転部材11の滑らかな回転が実現できる。
【0027】
なお、上記実施形態例では、ロータハウジング4側の突起を係合させるための長孔(長孔12gやフレキシブル係合孔12h)を鍔部12bの切起こし片に形成した場合について説明したが、これら長孔を鍔部12bの平坦面に形成してもよい。ただし、長孔が切起こし片に形成されている場合には、鍔部12bの限られたスペースに各切起こし片と長孔が効率良く形成できると共に、長孔に対する突起の係合が確実になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタと舵角センサの連結ユニットを示す断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図3】該連結ユニットの分解斜視図である。
【図4】該連結ユニットに備えられる中継部材の平面図である。
【図5】該中継部材の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 回転コネクタ
2 舵角センサ
3 ステータハウジング
4 ロータハウジング(第1ロータ部材)
5 可撓性ケ−ブル
8 上部ロータ
9 下部ロータ
9d,9e 突起
10 環状空間
11 回転部材(第2ロータ部材)
11a 中空軸部
11b コード板
11c 係止爪
12 中継部材
12a 筒状部
12b 鍔部
12c〜12e 切起こし片
12g 長孔
12h フレキシブル係合孔
13 固定部材
14 フォトインタラプタ
15 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに連動して回転する中空軸構造の第1ロータ部材を有し、この第1ロータ部材がステータ部材に回転可能に支持されている回転コネクタと、中空軸部の外周面にコード板を設けた第2ロータ部材を有し、この第2ロータ部材が固定部材に回転可能に支持されている舵角センサと、前記第1ロータ部材の回転を前記第2ロータ部材に伝達する中継部材とを備え、
前記中継部材が金属弾性板からなり、この中継部材に前記中空軸部の内周面に固定される筒状部と、この筒状部の上端から前記固定部材の上面に沿って延びる鍔部とを設けると共に、この鍔部に複数の切起こし片と径方向へ延びる長孔とを形成し、前記各切起こし片を前記第1ロータ部材の下端部に弾接させることにより、前記第1ロータ部材と前記第2ロータ部材とを互いに離反する方向へ弾性付勢し、かつ、前記長孔に前記第1ロータ部材の下端部に設けられた突起を挿入することにより、前記第1ロータ部材と前記第2ロータ部材とを回転方向に位置決めするようにしたことを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記切起こし片が前記鍔部の円周方向に沿う略等間隔位置に少なくとも3つ以上形成されていることを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記長孔が前記切起こし片に穿設されていることを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記長孔が前記第2ロータ部材の回転中心を介して180度対向する2箇所に形成されていると共に、いずれか一方の長孔が前記突起を前記鍔部の円周方向から弾性的に挟持するフレキシブル係合孔であることを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記長孔と前記フレキシブル係合孔がそれぞれ前記切起こし片に穿設されていることを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、前記第2ロータ部材が前記中空軸部の外周面に前記コード板を一体成形した合成樹脂成形品であることを特徴とする回転コネクタと舵角センサの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−339108(P2006−339108A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165644(P2005−165644)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】