説明

回転コネクタ装置

【課題】砂塵などの塵埃が回転コネクタ装置の内部に混入した状態で内側ケースが外側ケースに対して相対的に回転して、フラットケーブルがケーブル収納部内で揺動しても、フラットケーブルの断線を防ぎ、大型化を避けて構造を単純化できる回転コネクタ装置を提供する。
【解決手段】外側ケース11と内側ケース12とが相対的に回転する際に折り返し部分60がスペーサー13をケーブル収納部40内で押し回す押し回し部材90を備え、押し回し部材90は、押し回し部材90とフラットケーブル15の折り返し部分60の間に入った塵埃を回収する塵埃回収部100を有し、折り返し部分60に接触する塵埃回収部100の接触部70〜73は、フラットケーブルの折り返し部分60の曲面とほぼ同等のU字型の滑らかな曲面80を有し、接触部70〜73には、フラットケーブル15に付着した塵埃を取り込む凹型形状部分85が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転コネクタ装置に関し、特に回転体と固定体との間で、電気信号や光信号などの信号、あるいはこれらの信号と電力を同時に伝送するのに用いられる回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタ装置は、回転体とそれを支える固定体との間に配置されて、回転体と固定体を例えば電気的に接続する場合などに使用される。回転コネクタ装置が例えば自動車に使用される場合には、回転コネクタ装置は、自動車の車体側からステアリングに装備されたエアバッグシステム等に電気信号を伝達する。この場合には、回転体はステアリングであり、固定体は車体側の部材である。
【0003】
このように自動車に用いられる回転コネクタ装置は、通常例えば固定部品としての外側ケースと、可動部品としての内側ケースを有している。内側ケースは、この外側ケースの内側において外側ケースに対して相対的に回転自在に設置されている。外側ケースの内周面と内側ケースの外周面との間には、環状のケーブル収納部が形成されている。内側ケースと外側ケースの間のケーブル収納部には、スペーサーとほぼU字型に折り返されたフラットケーブルが収納されている。
【0004】
ところで、回転コネクタ装置を使用していると、外側ケースと内側ケースの内部には砂塵などの塵埃が混入する場合がある。塵埃が回転コネクタ装置の内部に混入した状態で、内側ケースが外側ケースに対して相対的に回転されて、フラットケーブルがケーブル収納部内で繰り返して揺動されると、ケーブル収容部内のスペーサーとほぼU字型に折り返されたフラットケーブルとの間には塵埃が入ってしまう。このため、塵埃の存在によりフラットケーブルの摩耗が促進されてフラットケーブルが断線し易くなり、回転コネクタ装置は信号の伝送や電力の伝送ができなくなってしまうおそれがある。
【0005】
塵埃が回転コネクタ装置の内部に混入するのを防止する関連技術が、特許文献1と特許文献2に開示されている。
特許文献1には、外部からケーブル収容空間に侵入した塵埃が侵入直後に凹部に入って溜められることで、隙間を小さくしないで相対回転部分の間への塵埃の侵入を防止することが開示されている。
特許文献2には、同心円状の2つの環状リブを設けることで、可動体と固定体の摺動用の空隙から埃などがフラットケーブル収容室内へ侵入するのを堰き止めることで、部品点数及び作業工数を増大させずに防塵対策を図っていることが開示されている。
(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−142345号公報
【特許文献2】特開2003−59610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示されている防塵技術では、回転コネクタ装置は、凹部を形成しているガイドリングを内蔵しなければならず、回転コネクタ装置の構造が複雑になり大型化が避けられない。また、特許文献2に開示されている防塵技術では、同心円状の2つの環状リブを全周にわたって設ける必要があるので、回転コネクタ装置の構造が複雑になり大型化が避けられない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、砂塵などの塵埃が回転コネクタ装置の内部に混入した状態で、内側ケースが外側ケースに対して相対的に回転することでフラットケーブルがケーブル収納部内で揺動しても、フラットケーブルが塵埃により摩耗するのを防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができ、大型化を避けて構造を単純化することができる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するために、本発明の回転コネクタ装置は、外側ケースと、
前記外側ケースの内側に配置されて前記外側ケースに対して相対的に回転可能である内側ケースと、
前記外側ケースと前記内側ケースの間に形成されたケーブル収納部に配置されてU字型に折り返されている折り返し部分を有するフラットケーブルと、
前記ケーブル収納部に配置されているスペーサーと、
前記外側ケースと前記内側ケースとが相対的に回転する際に、前記フラットケーブルの前記折り返し部分が前記スペーサーを前記ケーブル収納部内で押し回すために前記スペーサーに設けられた押し回し部材と、を備え、
前記押し回し部材は、前記押し回し部材と前記フラットケーブルの前記折り返し部分との間に入った塵埃を回収する塵埃回収部を有しており、
前記フラットケーブルの前記折り返し部分に接触する前記塵埃回収部の接触部は、前記フラットケーブルの前記折り返し部分の曲面と滑らかに接触する曲面を有しており、
前記塵埃回収部の前記接触部には、前記フラットケーブルに付着した前記塵埃を取り込むための凹型形状部分が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の回転コネクタ装置は、好ましくは前記塵埃回収部の前記接触部には、複数の前記凹型形状部分が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の回転コネクタ装置は、好ましくは前記凹型形状部分には、前記取り込んだ前記塵埃を前記ケーブル収納部内から前記ケーブル収容部外に出すための穴部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の回転コネクタ装置は、好ましくは前記ケーブル収納部には円環状の前記スペーサーが配置されており、前記塵埃は前記凹型形状部分の前記穴部を通じて、前記ケーブル収納部内から前記スペーサーの外部に排出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転コネクタ装置によれば、砂塵などの塵埃が回転コネクタ装置の内部に混入した状態で、内側ケースが外側ケースに対して相対的に回転することでフラットケーブルがケーブル収納部内で揺動しても、フラットケーブルが塵埃により摩耗するのを防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができ、大型化を避けて構造を単純化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の回転コネクタ装置の好ましい実施形態を示す平面図である。図2は、図1に示す回転コネクタ装置を示す斜視図である。図3は、図1に示す回転コネクタ装置を別の角度から示す斜視図である。
【0014】
図1〜図3に示す回転コネクタ装置10は、例えば自動車のステアリング装置に組み込まれて、ステアリング側(回転体側)と車体側(固定体側)との間を、電気的に接続するのに用いることができる。より詳しく説明すれば、回転コネクタ装置10は、例えばステアリング側のエアバッグと車体側の制御部とを電気的に接続して、エアバックに作動制御用の信号を供給する。
【0015】
図1に示すように、回転コネクタ装置10は、外側ケース11と、内側ケース12と、円環状のスペーサー13と、5つのガイドローラ45と、1つの反転ローラ45Rと、1枚のフラットケーブル15と、複数のガイド部材46と、そして押し回し部材90と、を有している。
【0016】
図1に示す外側ケース11は、円環状の外部筒体を構成しており、ステーター(固定部品)側である例えば自動車の車体側に固定される。外側ケース11は、中心軸Cを中心として円環状に形成されており、図2と図3に示すように、外側保持壁部21と内側保持壁部24と円環状の底板23を有しており、23は21と24を接続して固定している。内側保持壁部24は、中空部22を有している。
【0017】
この外側保持壁部21は、フラットケーブル15の第1部分15Bを押し付けるための内周壁21aを有する。外側保持壁部21と内側保持壁部24は、中心軸Cを中心として同心円状に全周囲にわたって連続して形成されている。図2と図3に示すように、外側保持壁部21と23をあわせた中心軸C方向の形成高さH1は、内側保持壁部24の中心軸C方向の形成高さH2に比べて大きく設定されている。
【0018】
図1に示すように、内側ケース12は、内部筒体を構成しており、内側ケース12は外側ケース11に対して中心軸Cを中心として相対的に回転可能に連結されている。内側ケース12は、ロテータ(回転部品)側である例えば自動車のステアリング側に固定される。内側ケース12は、円筒部31と図示しない天板を有している。円筒部31は、内側保持壁部24の外周面に接した状態ではめ込まれており、円筒部31と内側保持壁部24は、中心位置Cを中心として共に同心円状に連続して形成されている。
【0019】
図2と図3に示すように、円筒部31の中心軸C方向の形成高さH3は、外側保持壁部21の中心軸C方向の形成高さH1と同じであるが、内側保持壁部24の中心軸C方向の形成高さH2に比べて大きく設定されている。
これにより、ステアリングを回すことにより、内側ケース12は外側ケース11に対して、内側保持壁部24に倣って中心軸Cを中心として、R1方向(時計方向)とその逆のR2方向(反時計方向)に沿って相対的に確実に回転できる。
【0020】
図1に示すように、内側ケース12の円筒部31と外側ケース11の外側保持壁部21とは、中心軸Cを中心として同心円状に配置され、全周囲にわたって対面している。
外側保持壁部21と円筒部31の間には、円環状のケーブル収納部40が形成されている。外側保持壁部21は、フラットケーブル15の第1部分(外側部分)15Bを巻き付かせるための壁部分である。円筒部31は、フラットケーブル15の第2部分(内側部分)15Cを巻き付かせるための壁部分である。円筒部31の肉厚は、強度を確保するために外側保持壁部21の肉厚に比べてやや大きくなっている。
【0021】
次に、図1と図4を参照して、スペーサー13と、5つのガイドローラ45と、1つの反転ローラ45Rと、押し回し部材90について説明する。図4は、スペーサー13と、5つのガイドローラ45と、1つの反転ローラ45R、押し回し部材90を示す斜視図である。
【0022】
図1と図4に示すスペーサー13は、円環状の平板部材であり、スペーサー13は、図1に示すケーブル収納部40内においてR1方向とR2方向に回転移動できるように配置されている。図4に示すように、スペーサー13は、第1面部13Aと反対側の第2面部13Bを有している。第1面部13A側には複数個のガイドローラ45と1つの反転ローラ45Rが、所定の角度毎に配置されている。図1に示すように、それぞれのガイドローラ45と反転ローラ45Rはスペーサー13の第1面部13Aにおいて回転中心Mを中心として回転可能である。
【0023】
図4の例では、同じ大きさの5つのガイドローラ45と1つの反転ローラ45Rが、60度毎に配置されているが、スペーサー13には、隣接するガイドローラ45とガイドローラ45の間にほぼU字型のガイド部材46がそれぞれ固定されている。また、スペーサー13には、ガイドローラ45と反転ローラ45Rの間に別のガイド部材46Tが固定されている。
【0024】
図1に示すように、各ガイド部材46とガイド部材46Tは、フラットケーブル15の第2部分15Cに対面する対面部分47を有しており、各対面部分47は、内側ケース12の円筒部31の曲面と同じような曲面に形成されており、円筒部31に対して間隔Dをおいて対面している。つまり、各対面部分47は円筒部31の曲率に対応して半径方向外側に湾曲しており、各対面部分47と円筒部31の間には、フラットケーブル15の第2部分15Cが案内される。
【0025】
図1に示す各ガイドローラ45と反転ローラ45Rは、内側ケース12が外側ケース11に対して相対的に回転する場合に、フラットケーブル15の第1部分15Bを、外側ケース11の外側保持壁部21に押し付けて保持し、しかもフラットケーブル15の第2部分15Cを、内側ケース12の円筒部31に押し付けて保持する役割を果たす。しかも、反転ローラ45Rは、フラットケーブル15の折り返し部分60を折り返して反転させる。
【0026】
図1〜図3に示すフラットケーブル15は、複数の電気配線を電気絶縁部材で被覆したものであり、柔軟性を有しており弾性変形することで、内側ケース12と外側ケース11が相対的に回転しても追従できる材質で作られている。フラットケーブル15は、フレキシブルフラットケーブルあるいはフレキシブル配線部材等とも呼ぶことができる。
図1に示すフラットケーブル15の第1部分15Bの一端部15Dは、外側ケース11の外側保持壁部21に固定されており、外側保持壁部21から外部の例えばエアバックに対して電気的に接続できる。フラットケーブル15の第1部分15Bは、外側ケース11の外側保持壁部21に対して巻き付かせてある。
【0027】
図1に示すように、フラットケーブル15の第2部分15Cの他端部15Eは、内側ケース12の円筒部31に固定されており、円筒部31から外部の例えば制御部に電気的に接続できるようになっている。フラットケーブル15の第2部分15Cは、内側ケース12の円筒部31に対して巻き付かせてある。
【0028】
フラットケーブル15は、第1部分15Bと第2部分15Cの途中部分には、内側ケース12と外側ケース11が相対的に回転に追従できるようにするために、U字型に弾性変形して折り返された折り返し部分60を有する。フラットケーブル15におけるこの折り返し部分60の位置は、外側ケース11と内側ケース12との相対的な回転によりR方向又はR2方向に沿って移動する。
【0029】
図1〜図3に示すように、1つのガイド部材46Tは、フラットケーブル15の折り返し部分60の付近に配置されている。1つのガイド部材46Tは、他のガイド部材46とは形状が異なり、図1の部分Bで示すように、押し回し部材90を有する。すなわち、押し回し部材90はスペーサー13の1つのガイド部材46Tに設けられている。
内側ケース12が外側ケース11に対して相対的にR1方向に回転する際に、折り返し部分60が、押し回し部材90をR1方向に押すことで、スペーサー13をケーブル収納部40内でR1方向に押し回すことができる。
【0030】
図5は、図1の部分R内の押し回し部材90と塵埃回収部100を拡大して示している。
図5に示すように、押し回し部材90は、押し回し部材90とフラットケーブル15の折り返し部分60との間に入った砂塵などの塵埃を回収してフラットケーブル15から排除するための塵埃回収部100を有している。
【0031】
塵埃回収部100は、折り返し部分60に接触する複数の接触部70〜73を有している。これらの接触部70〜73は、破線で示すとおり、接触部70〜73のそれぞれを滑らかな曲線で結ぶことができ、フラットケーブル15の折り返し部分60とほぼ同等の曲率半径を有する、U字型の滑らかな曲面80を形成している。すなわち、フラットケーブル15のU字型の折り返し部分の外面と滑らかに接触する。この接触部70〜73の間には、フラットケーブル15に付着した塵埃を除去して取り込むための凹型形状部分85が形成されている。図1〜図3及び図5に示すように、押し回し部材90と塵埃回収部100は、ケーブル収納部40内において、フラットケーブル15の折り返し部分60に対して常に対面するように配置されている。
【0032】
塵埃回収部100は、フラットケーブル15の折り返し部分60に接触する接触部70〜73を有している。これらの接触部70〜73は、折り返し部分60とほぼ同等のU字型の滑らかな曲面80となっている。しかも、この滑らかな曲面80を形成している接触部70〜73には、フラットケーブル15に付着した砂塵などの塵埃を取り込むための凹型形状部分85が形成されている。図示例では、複数の凹型形状部分85が滑らかな曲面80に沿って平行に配列されている。
【0033】
図5に示すように、各凹型形状部分85において、スペーサー13の各凹型形状部分85に当接する部分に穴部88を有する。これらの穴部88は、各凹型形状部分85内に取り込んだ塵埃DSを、矢印Gで示すようにケーブル収納部40内のスペーサー13の第1面部13A側から裏面側の第2面部13B側に、すなわちスペーサー13の外側(図1の紙面垂直方向下側)に落とすために、各凹型形状部分85に形成されている。
なお、外側ケース11と、内側ケース12と、スペーサー13と、複数のローラ45,反転ローラ45Rと、押し回し部材90は、例えば電気絶縁被覆した金属、あるいは電気絶縁性を有するプラスチックで作られている。
【0034】
次に、上述した回転コネクタ装置10の動作例を説明する。
図1に示すように、外側ケース11の外側保持壁部21には、フラットケーブル15の第1部分15Bが巻き付かせてあり、内側ケース12の円筒部31にはフラットケーブル15の第2部分15Cが巻き付かせてある。
【0035】
内側ケース12が外側ケース11に対して中心軸Cを中心としてR1方向あるいはR2方向に相対的に回転される場合に、各ガイドローラ45と反転ローラ45Rは、フラットケーブル15の第1部分15Bを、外側ケース11の外側保持壁部21に押し付けて保持し、フラットケーブル15の第2部分15Cを、内側ケース12の円筒部31に押し付けて保持する。反転ローラ45Rは、フラットケーブル15の折り返し部分60を外側保持壁部21から円筒部31側に折り返して反転させる。
【0036】
ガイド部材46の各対面部分47は円筒部31の曲率に対応して湾曲しており、各対面部分47と円筒部31の間には、フラットケーブル15の第2部分15Cが案内される。
内側ケース12が外側ケース11に対して中心軸Cを中心としてR1方向に相対的に回転されると、フラットケーブル15の折り返し部分60は、フラットケーブル15の全長方向に関して移動していくが、折り返し部分60は押し回し部材90の塵埃回収部100の接触部70〜73に接触して、押し回し部材90を介してスペーサー13をケーブル収容部40内において、R1方向に押し回すことができる。
【0037】
このようには、折り返し部分60が押し回し部材90に接触して押し回し部材90を介してスペーサー13を押し回す際に、フラットケーブル15の折り返し部分60に接触する接触部70〜73は、折り返し部分60とほぼ同等のU字型の滑らかな曲面80を形成していることから、押し回し部材90の接触部70〜73がフラットケーブル15に対して損傷を与えることを防ぐことができる。
【0038】
しかも、図5に示すように、押し回し部材90の塵埃回収部100は、フラットケーブル15に付着した砂塵などの塵埃を取り込むための凹型形状部分85を有しているので、フラットケーブル15に砂塵などの塵埃が付着しても、この塵埃は複数の凹型形状部分85を通じて、矢印G方向に沿って穴部88からスペーサー13の外側(図1の紙面垂直方向下側)に落として排除することができる。
また、図1に示す内側ケース12が外側ケース11に対してR1方向とは逆のR2方向に回転する場合には、フラットケーブル15の折り返し部分60は、反転ローラ45RをR2方向に押すことで、スペーサー13をケーブル収容部40内において、R2方向に押し回すことができる。
【0039】
これにより、砂塵などの塵埃が回転コネクタ装置10の内部に混入した状態で、内側ケース12が外側ケース11に対して相対的に回転することでフラットケーブルがケーブル収納部40内でR1方向とR2方向に揺動しても、フラットケーブル15が塵埃により摩耗するのを防いでフラットケーブル15の断線を防ぐことができる。
しかも、押し回し部材90に対して塵埃回収部100を設けるだけで済むので、回転コネクタ装置の大型化を避けて回転コネクタ装置の構造を単純化することができる。
なお、押し回し部材90に設けられた塵埃回収部100は、例えば砂塵を回転コネクタ装置の内部から外部に排出するための砂逃げ構造部とも言うことができる。
【0040】
本発明の実施形態の回転コネクタ装置10は、外側ケース11と、外側ケース11の内側に配置されて外側ケース11に対して相対的に回転可能である内側ケース12と、外側ケース11と内側ケース12の間に形成されたケーブル収納部40に配置されてU字型に折り返されている折り返し部分60を有するフラットケーブル15と、ケーブル収納部40に配置されているスペーサー13と、外側ケース11と内側ケース12とが相対的に回転する際に折り返し部分60がスペーサー13をケーブル収納部40内で押し回すためにスペーサー13に設けられた押し回し部材90と、を備える。
【0041】
この押し回し部材90は、押し回し部材90とフラットケーブル15の折り返し部分60との間に入った塵埃を回収する塵埃回収部100を有しており、折り返し部分60に接触する塵埃回収部100の接触部70〜73は、フラットケーブルの折り返し部分60の曲面とほぼ同等のU字型の滑らかな曲面80を有している。塵埃回収部100の接触部70〜73には、フラットケーブル15に付着した塵埃を取り込むための凹型形状部分85が形成されている。
【0042】
これにより、接触部70〜73は、フラットケーブルの折り返し部分60の曲面とほぼ同等のU字型の滑らかな曲面80を有しているので、押し回し部材90がフラットケーブル15に対して損傷を与えることを防ぐことができる。しかも、フラットケーブル15に砂塵などの塵埃が付着しても、この塵埃は複数の凹型形状部分85を通じて、穴部88からスペーサー13の外側に排除することができるので、フラットケーブル15の摩耗を防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができる。
【0043】
また、回転コネクタ装置10では、塵埃回収部100の接触部70〜73には、複数の凹型形状部分85が形成されている。これにより、複数の凹型形状部分85は、フラットケーブル15に砂塵などの塵埃が付着しても、この塵埃を確実に回収できるので、フラットケーブル15の摩耗を防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができる。
【0044】
回転コネクタ装置10では、凹型形状部分85には、取り込んだ塵埃をケーブル収納部40内からケーブル収容部40外に出すための穴部88が形成されている。これにより、複数の凹型形状部分85は、フラットケーブル15に砂塵などの塵埃が付着しても、この塵埃を確実に穴部88を通じてスペーサー13の外部に排出できるので、フラットケーブル15の摩耗を防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができる。
【0045】
回転コネクタ装置10では、ケーブル収納部40には円環状のスペーサー13が配置されており、塵埃は凹型形状部分85の穴部88を通じて、ケーブル収納部40内からスペーサー13の外部に排出される。これにより、フラットケーブル15の摩耗を防いでフラットケーブルの断線を防ぐことができる。
【0046】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、図示例では、1つのフラットケーブルが環状のケーブル収納部内に配置され、この1つのフラットケーブルに対して塵埃回収部が配置されている。しかし、複数のフラットケーブルが環状のケーブル収納部内に配置されていても良い。この場合には、各フラットケーブルに対応して、スペーサーにはそれぞれ塵埃回収部が配置されることで、各フラットケーブルが塵埃により摩耗して断線するのを防ぐことができる。
【0047】
また、ガイドローラの数やガイド部材の数は、図示例に限定されず、任意に選択できる。
フラットケーブルは、電気信号や電力を伝送する場合には、電気配線材を電気絶縁材料で被覆することで構成されている。また、フラットケーブルが、光信号を伝送する場合には、光ファイバを被覆材で被覆することで構成されている。
回転コネクタ装置におけるフラットケーブルは、外側ケースと内側ケースとが相対的に回転される際に砂塵などの塵埃が混入しても、フラットケーブルの摩耗を防いで、電気信号又は光信号の伝送、電気信号と光信号の双方の信号の伝送、電力の伝送、あるいはこれらの信号と電力を同時に伝送することができる。
塵埃回収部は、塵埃排出部とも言うことができる。塵埃回収部100は、図示例では3つの凹型形状部分85を有しているが、これに限らず、塵埃回収部100は、1つ又は2つ、あるいは4つ以上の凹型形状部分を有するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の回転コネクタ装置の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す回転コネクタ装置を示す斜視図である。
【図3】図1に示す回転コネクタ装置を別の角度から示す斜視図である。
【図4】スペーサーと複数のガイドローラと反転ローラと押し回し部材を示す斜視図である。
【図5】図1の部分Bを拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 回転コネクタ装置
11 外側ケース
12 内側ケース
15 フラットケーブル
40 ケーブル収納部
45 ローラ
45R 反転ローラ
60 フラットケーブルの折り返し部分
80 滑らかな曲面
85 凹型形状部分
88 穴部
90 押し回し部材
100 塵埃回収部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ケースと、
前記外側ケースの内側に配置されて前記外側ケースに対して相対的に回転可能である内側ケースと、
前記外側ケースと前記内側ケースの間に形成されたケーブル収納部に配置されてU字型に折り返されている折り返し部分を有するフラットケーブルと、
前記ケーブル収納部に配置されているスペーサーと、
前記外側ケースと前記内側ケースとが相対的に回転する際に、前記フラットケーブルの前記折り返し部分が前記スペーサーを前記ケーブル収納部内で押し回すために前記スペーサーに設けられた押し回し部材と、を備え、
前記押し回し部材は、前記押し回し部材と前記フラットケーブルの前記折り返し部分との間に入った塵埃を回収する塵埃回収部を有しており、
前記フラットケーブルの前記折り返し部分に接触する前記塵埃回収部の接触部は、前記フラットケーブルの前記折り返し部分の曲面と滑らかに接触する曲面を有しており、
前記塵埃回収部の前記接触部には、前記フラットケーブルに付着した前記塵埃を取り込むための凹型形状部分が形成されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記塵埃回収部の前記接触部には、複数の前記凹型形状部分が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記凹型形状部分には、前記取り込んだ前記塵埃を前記ケーブル収納部内から前記ケーブル収容部外に出すための穴部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記ケーブル収納部には円環状の前記スペーサーが配置されており、前記塵埃は前記凹型形状部分の前記穴部を通じて、前記ケーブル収納部内から前記スペーサーの外部に排出されることを特徴とする請求項3に記載の回転コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−152089(P2009−152089A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329562(P2007−329562)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】