説明

回転コネクタ

【課題】ロータ部材を回動中立位置に保持可能であって、ステアリング装置に組み付ける時に破断可能な合成樹脂製のロック部材を安価に製造できる回転コネクタを提供する。
【解決手段】ロック部材6は、上下方向に延びる支柱部61と、支柱部61の上端から側方へ突設された指掛け部62と、支柱部61の下端から側方へ突設された係合片63と、支柱部61に切欠き65を設けることによって形成された薄肉部66とを有する。ロータ部材2の天板部21には指掛け部62と係合可能な突起部25,26が設けられている。ステータ部材1の外筒部11の外周面には挿通孔13を有する取付部12が突設されており、この取付部12の下面には挿通孔13を貫通させた係合片63と係合可能な突起部が設けられている。そして、ロック部材6を挿通孔13に挿入して回転すると、指掛け部62と係合片63がそれぞれ突起部25,26間と突起部間に入り込んで位置規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動自在に連結されたロータ部材とステータ部材との間を可撓性ケーブルを介して電気的に接続する回転コネクタに係り、特に、回転コネクタを自動車のステアリング装置に組み付けるまでロック部材によってロータ部材を回動中立位置に保持し、組み付け完了後に該ロック部材を破断することによってロータ部材が回動可能となるようにした回転コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転コネクタは、回動自在に連結された一対のハウジングと、両ハウジング間に画成される環状空間内に収納・巻回された可撓性ケーブルとで概略構成されており、この可撓性ケーブルの両端はそれぞれ両ハウジングに固定された状態で外部に導出されている。両ハウジングの一方はステータ部材、他方はロータ部材であり、ロータ部材をステータ部材に対して正逆いずれかの方向へ回転させると、その回転方向に応じて可撓性ケーブルが環状空間内で巻き締めあるいは巻き戻され、いずれの状態においてもロータ部材とステータ部材間の電気的接続が可撓性ケーブルを介して維持されるようになっている。このように概略構成された回転コネクタは、ステータ部材をステアリングコラム側に固定すると共にロータ部材をハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用される。この場合において、回転コネクタのロータ部材はハンドルの回動中立位置を基準にして正逆両方向にほぼ同量ずつ回転できなければならず、そのため、回転コネクタをステアリング装置に組み付けるまでロータ部材を回動中立位置にロックしておく必要があり、かかるロック機構を付設した回転コネクタが一般的となっている。
【0003】
この種のロック機構付き回転コネクタの一例として、ステータ部材に対してロータ部材を回動中立位置に位置合わせした状態で合成樹脂製のロック部材を装着することによって、ステータ部材に対するロータ部材の自由な回転が阻止されるようになし、ステアリング装置への組み付けが完了した段階で、ロック部材をその薄肉部で破断させることによってロータ部材がステータ部材に対して回動可能となるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
かかる従来の回転コネクタにおいて、ステータ部材はリング状の外筒部を有する有底形状に形成されており、この外筒部の外周面にスロットを有する保持壁が突設されている。また、ロータ部材は外筒部の上部開放端を蓋閉する天板部とその中央部から垂下する内筒部とを有する形状に形成されており、天板部上に係合突起が立設されている。一方、ロック部材には、係合孔を有して横向きに延びる腕部と、この腕部の一端側から上方へ突設された指掛け部と、腕部の他端側から薄肉部を介して垂設された固定残部とが一体形成されており、固定残部には一対のスナップ片が設けられている。このロック部材は、ステータ部材に対してロータ部材を回動中立位置に位置合わせした状態で、固定残部のスナップ片をステータ部材側の保持壁のスロットに挿入してスナップ結合させると共に、腕部の係合孔にロータ部材側の係合突起を挿入することによって、ステータ部材に対するロータ部材の自由な回転を阻止することができる。そして、回転コネクタをステアリング装置に組み付ける際に、ロック部材の指掛け部に指や治具を引っ掛けて持ち上げると、ロック部材が機械的強度の弱い薄肉部で破断して、固定残部を保持壁にスナップ結合させたまま指掛け部と腕部を回転コネクタから除去することができる。こうしてロック部材が薄肉部で破断されると、ロータ部材がステータ部材に対して回動自在となるため、ハンドルの回転動作に連動してロータ部材が回転可能となる。
【0005】
なお、上記の従来例では、ステータ部材に対してロータ部材をロック解除した後にも保持壁にロック部材の固定残部が残るため、ステアリング装置へ組み付けるまでロータ部材が回動中立位置に保持されていたことを目視で瞬時に判別することができる。
【特許文献1】特開平11−97141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の回転コネクタに用いられるロック部材は、一対のスナップ片を有する固定残部や係合孔を有する腕部等を合成樹脂で一体成形する必要があるため、このロック部材を成形する金型がスライドコア等を必要とする複雑な構造になってしまうという問題があった。それゆえ、かかる従来例ではロック部材を安価に製造することが困難で、このことが回転コネクタのトータルコストを押し上げる要因となっていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ロータ部材を回動中立位置に保持可能であって、ステアリング装置に組み付ける時に破断可能な合成樹脂製のロック部材を安価に製造できる回転コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、外筒部を有する有底形状のステータ部材と、内筒部および天板部を有して前記ステータ部材に回動自在に連結されたロータ部材と、これらステータ部材とロータ部材間を電気的に接続する可撓性ケーブルと、前記ロータ部材を前記ステータ部材に対して回動中立位置に保持可能なロック部材とを備え、装着状態にある前記ロック部材をその薄肉部で破断することによって前記ロータ部材が前記ステータ部材に対して回動可能となる回転コネクタにおいて、前記ロック部材が、上下方向に延びる支柱部と、この支柱部の上端部から側方へ突設された第1係合部と、前記支柱部の下端部から側方へ突設された第2係合部と、前記第1係合部の下方で前記支柱部に形成された切欠き形状の前記薄肉部とを有しており、前記天板部に前記第1係合部と係合可能な第1係止部を設け、前記外筒部の外周面に前記第2係合部を上方から挿通可能な挿通孔が形成された取付部を突設すると共に、この取付部の下面に前記第2係合部と係合可能な第2係止部を前記ステータ部材に設け、前記ロック部材を前記挿通孔に挿入して前記支柱部の周方向へ回転することによって、前記第1係合部と前記第2係合部がそれぞれ前記第1係止部と前記第2係止部に係合して位置規制されるように構成した。
【0009】
このように構成された回転コネクタは、ステータ部材の取付部の挿通孔にロック部材の支柱部を挿入して、第2係合部が該挿通孔を貫通してからロック部材を回転することによって、ロータ部材の第1係止部にロック部材の第1係合部を係合させ、かつステータ部材の第2係止部にロック部材の第2係合部を係合させることができるため、ステータ部材に対するロータ部材の自由な回転をロック部材によって阻止することができる。また、このロック部材は、第1係合部に引っ張り力を加えて切欠きを押し広げることにより薄肉部を破断させることができる。そして、このロック部材は、支柱部の上下端部から側方へ第1係合部と第2係合部が突設された単純な形状でよく、スナップ片や係合孔等を設ける必要がないため、スライドコア等が不要な単純構造の成形金型によってロック部材を安価に製造することができる。
【0010】
上記の構成において、ステータ部材の取付部に挿通孔の上端側の一部を拡幅してなる段部が形成されていると共に、ロック部材の支柱部に挿通孔への挿入を不能とする大径部が形成されており、段部に大径部を当接させることによってロック部材の挿通孔への挿入量が規定されるようにしてあると、ロック部材の支柱部を取付部の挿通孔へ挿入する際に、第2係合部が挿通孔を貫通した時点で大径部の挿入が段部によって規制されるように設定できる。その結果、支柱部を取付部の挿通孔へ押し込んで回転するだけで、ロック部材がステータ部材およびロータ部材に係合可能となるため、ロック部材を回転コネクタに容易に装着できるようになる。
【0011】
また、上記の構成において、ロック部材の第1および第2係合部が支柱部に対して同じ向きに突設されていると、ロック部材を成形する金型構造が一層単純化できる。この場合において、第1係合部が輪状の指掛け部として形成されていると、ロック部材を薄肉部で破断させる際に第1係合部に指や治具を引っ掛けて持ち上げやすくなるため、ロック部材の切欠きを押し広げて薄肉部に剪断応力を集中させることが容易となる。
【0012】
また、上記の構成において、第1係止部がロータ部材の天板部上に突設された一対の突起部からなり、このうち一方の突起部にロック部材の第1係合部を両突起部間へ導き入れるための傾斜面が形成されていると、ロック部材をロータ部材に係合させやすくなって好ましい。
【0013】
また、上記の構成において、第2係止部がステータ部材の底面に突設された一対の突起部からなり、このうち一方の突起部にロック部材の第2係合部を両突起部間へ導き入れるための傾斜面が形成されていると、ロック部材をステータ部材に係合させやすくなって好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の回転コネクタに用いられたロック部材は、支柱部の上下端部から側方へ第1係合部と第2係合部が突設された単純な形状でよく、スナップ片や係合孔等を設ける必要がないため、スライドコア等が不要な単純な金型構造でロック部材を成形できる。また、このロック部材は、ステータ部材の取付部の挿通孔に支柱部を所定量挿入してから回転することによって、第1および第2係合部を第1および第2係止部に係合させることができると共に、第1係合部に引っ張り力を加えて切欠きを押し広げることにより薄肉部を破断させることができる。それゆえ、ロータ部材を回動中立位置に保持可能な合成樹脂製のロック部材を安価に製造できることとなり、回転コネクタのトータルコストを無理なく抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る回転コネクタとそのロック部材を示す外観図、図2は図1に示す回転コネクタの要部でロック部材用の取付部を示す説明図、図3は該取付部の挿通孔にロック部材が挿入された状態を示す説明図、図4は該ロック部材の側面図、図5は該ロック部材を装着した回転コネクタを斜め上方から見た斜視図、図6は図5に示す回転コネクタを斜め下方から見た斜視図、図7は該ロック部材を破断させてロック解除した状態を示す説明図である。なお、図2の要部説明図において、同図(A)は上面図、同図(B)は下面図、同図(C)は断面図をそれぞれ示している。
【0016】
これらの図に示すように、本実施形態例に係る回転コネクタは、ステータ部材であるステータハウジング1と、ロータ部材であるロータハウジング2と、これらステータハウジング1とロータハウジング2を回動自在に連結するサブロータ3と、ステータハウジング1およびロータハウジング2によって画成される環状空間4内に収納・巻回された可撓性ケーブル5(図7参照)とで主に構成されており、ロック部材6を装着することによりロータハウジング2がステータハウジング1に対して回動中立位置に保持できるようになっている。
【0017】
ステータハウジング1は合成樹脂製で、リング状の外筒部11を有する有底形状に形成されており、外筒部11の外周面には取付部12とダイレクトコネクタ取付部17とが突設されている。取付部12は外筒部11と同等の高さに形成されており、図2と図3に示すように、この取付部12内には上下に貫通する長孔状の挿通孔13と、挿通孔13の上端側の一部を円形に拡幅してなる段部14とが設けられている。また、図6に示すように、取付部12の下面はステータハウジング1の底面と同一平面にあり、この取付部12の下面には一対の係止部15,16が突設されている。これら係止部15,16は外筒部11の周方向に沿って所定間隔離れて配置されており、一方の係止部15には傾斜面15aが形成されている。なお、このステータハウジング1の外筒部11と取付部12およびダイレクトコネクタ取付部17は一体成形されている。
【0018】
ロータハウジング2も合成樹脂製であり、中央開口2aを有する円板状の天板部21と、天板部21の中央部から垂下する円筒状の内筒部22とを有する形状に形成されている。天板部21は外筒部11の上部開放端を蓋閉しており、この天板部21上には、一対の係合ピン23,24と一対の係止部25,26およびダイレクトコネクタ27とがそれぞれ所定位置に突設されている。このロータハウジング2は2本の係合ピン23,24を介してハンドル側に連結されるようになっている。また、天板部21の外周縁近傍に設けられた係止部25,26は、天板部21の周方向に沿って所定間隔離れて配置されており、一方の係止部25には傾斜面25aが形成されている。なお、このロータハウジング2の天板部21と内筒部22、係合ピン23,24、係止部25,26、ダイレクトコネクタ27等はすべて一体成形されている。
【0019】
サブロータ3も合成樹脂製である。このサブロータ3をステータハウジング1の底面の内周部と重なり合うように配置して、ロータハウジング2の内筒部22とスナップ結合にて一体化することにより、ロータハウジング2がステータハウジング1に対して回動自在に連結された状態となり、両ハウジング1,2間に環状空間4が画成される。
【0020】
可撓性ケーブル5は環状空間4内において途中で巻回方向を反転させている。この可撓性ケーブル5の両端はそれぞれ外筒部11と内筒部22に固定された後、ダイレクトコネクタ取付部17,ダイレクトコネクタ27を介して外部に導出されている。なお、図示省略されているが、環状空間4内には回動自在なホルダが配置されており、このホルダに軸支されたローラに可撓性ケーブル5の前記反転部がループされている。
【0021】
ロック部材6は合成樹脂製であり、上下方向に延びる支柱部61と、支柱部61の上下両端からそれぞれ側方へ突設された指掛け部62と係合片63とが一体成形されている。ロック部材6の支柱部61の上部は大径部64となっており、この大径部64の途中に切欠き65を設けることによって薄肉部66が形成されている。支柱部61の上端から側方へ突出する輪状の指掛け部62は、支柱部61の下端から側方へ突出する係合片63に比べてはるかに大きいが、これら指掛け部62と係合片63は支柱部61に対して同じ向きに突設されており、係合片63の真上に指掛け部62が位置している。
【0022】
このロック部材6は、ステータハウジング1の取付部12に開設されている挿通孔13へ上方から係合片63を挿入していくことができるが、支柱部61の大径部64は挿通孔13の段部14に当接する位置までしか挿入できず、係合片63が挿通孔13を貫通した時点で大径部64の挿入が段部14によって規制されるようになっている。つまり、取付部12の挿通孔13へロック部材6の支柱部61を挿入する際に、段部14に大径部64を当接させることによってロック部材6の挿通孔13への挿入量が規定されるようにしてある。また、係合片63が挿通孔13を貫通している状態でロック部材6を一方向(上から見て時計回り方向)へ回転することによって、ステータハウジング1の係止部15,16間に係合片63を入り込ませて位置規制できると共に、回動中立位置に設定されているロータハウジング2の係止部25,26間に指掛け部62を入り込ませて位置規制できるようになっている。このとき、係合片63は係止部15の傾斜面15aに沿って徐々に弾性変形するため両突起部15,16間へ無理なく導き入れることができ、同様に指掛け部62は係止部25の傾斜面25aに沿って徐々に弾性変形するため両突起部25,26間へ無理なく導き入れることができる。ロック部材6は、こうして指掛け部62と係合片63をそれぞれ突起部25,26間と突起部15,16間に入り込ませることによって、ステータハウジング1とロータハウジング2に係合させた装着状態となり、この状態で両ハウジング1,2の相対的な自由な回転はロック部材6によって阻止される。
【0023】
このように構成された回転コネクタは、ステータハウジング1をステアリングコラム側に固定すると共にロータハウジング2をハンドル側に連結した状態で自動車のステアリング装置に組み付けられ、ハンドルに装着されたエアーバッグシステムやホーン回路等の電気的接続手段として使用されるが、かかるステアリング装置への組み付けに際して、ロータハウジング2はハンドルの回動中立位置を基準にして正逆両方向にほぼ同量ずつ回転できなければならない。そこで上記の回転コネクタでは、ステアリング装置に組み付けるまでロータハウジング2を回動中立位置にロックしておくために、取付部12の挿通孔13に挿入したロック部材6を回転して両ハウジング1,2に係合させておき、組み付け作業の適宜段階でロック部材6を薄肉部66で破断させることによって、ロータハウジング2がステータハウジング1に対して回動可能となるようにしてある。
【0024】
すなわち、上記の回転コネクタは、ステータハウジング1に対してロータハウジング2を回動中立位置に位置合わせした状態でロック部材6を装着することによって、両ハウジング1,2の相対的な自由な回転を阻止したロック状態となし、かかるロック状態のまま出荷・搬送されてステアリング装置に組み付けられる。前述したようにロック部材6を装着する際には、ステータハウジング1の取付部12の挿通孔13へ上方から係合片63を挿入していき、大径部64が段部14に当接して係合片63が挿通孔13を貫通した後にロック部材6を支柱部61の周方向へ所定量回すことによって、指掛け部62と係合片63をそれぞれ突起部25,26間と突起部15,16間に入り込ませる。これにより、ロック部材6を両ハウジング1,2に係合させることができるため、ロータハウジング2を回動中立位置に保持しておくことができる。
【0025】
また、上記の回転コネクタをステアリング装置に組み付ける際には、ロック部材6の指掛け部62に指や治具を引っ掛けて持ち上げることによって、図7に示すようにロック部材6を機械的強度の弱い薄肉部66で破断させる。これにより、ロック部材6は支柱部61の上端部や指掛け部62が回転コネクタから除去されるため、ロータハウジング2がロック解除されてステータハウジング1に対し回動自在となり、それゆえハンドルの回転動作に連動してロータハウジング2が回転可能となる。その際、ロック部材6は支柱部61の大部分が取付部12の挿通孔13内に残存し、係合片63も突起部15,16間に残存するが、挿通孔13内の支柱部61は大径部64と係合片63とによってほとんどガタのない抜け止め状態に保たれているため、ステアリング装置へ組み付けた後にロック部材6の残存部分が騒音を発生する虞はない。また、こうしてロータハウジング2がロック解除された後にもロック部材6の一部が取付部12等に残るため、ステアリング装置へ組み付けるまではロータハウジング2が回動中立位置に保持されていたことを、作業者の目視で瞬時に判別することができる。
【0026】
以上説明したように本実施形態例に係る回転コネクタは、ステータハウジング1の取付部12の挿通孔13にロック部材6の支柱部61を挿入して、係合片63が挿通孔13を貫通してからロック部材6を回転することによって、ロータハウジング2の突起部25,26にロック部材6の指掛け部62を係合させ、かつステータハウジング1の突起部15,16にロック部材6の係合片63を係合させることができるため、ステータハウジング1に対するロータハウジング2の自由な回転をロック部材6によって阻止することができる。しかも、ロック部材6を取付部12の挿通孔13へ挿入する際には、係合片63が挿通孔13を貫通した時点で大径部64の挿入が段部14に規制されるようになっている。また、両ハウジング1,2の突起部15,25には、ロック部材6を突起部15,16間や突起部25,26間へ導き入れる傾斜面15a,25aが形成されている。したがって、この回転コネクタは、支柱部61を挿通孔13へ押し込んで回転するだけで簡単にロック部材6をステータハウジング1とロータハウジング2に係合させることができ、ロック部材6の装着作業が容易に行える。
【0027】
また、この回転コネクタは、ステアリング装置へ組み付ける段階でロック部材6を薄肉部66で破断させることができるが、その際、指掛け部62に指や治具を引っ掛けて持ち上げれば、切欠き65が押し広げられて薄肉部66に剪断応力が集中するため、ロック部材6の破断作業も容易に行える。
【0028】
また、この回転コネクタで用いたロック部材6は、支柱部61の上下両端から側方へ指掛け部62と係合片63とが同じ向きに突設された単純形状であり、スナップ片や係合孔等を設ける必要がないため、スライドコア等が不要な単純な金型構造でロック部材6を成形できる。それゆえ、この回転コネクタは、ロック部材6を安価に製造できて、トータルコストが抑制しやすくなっている。
【0029】
なお、ロック部材6の形状は適宜選択可能であり、例えば、支柱部61の側方へ指掛け部62と係合片63とが異なる向きに突設されていても、ロック部材6を単純な金型構造で成形することはできる。また、両ハウジング1,2とロック部材6との係合構造も適宜選択可能であり、例えば、突起部15,16や突起部25,26とは異なる形状の係止部を両ハウジング1,2に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転コネクタとそのロック部材を示す外観図である。
【図2】図1に示す回転コネクタの要部でロック部材用の取付部を示す説明図である。
【図3】該取付部の挿通孔にロック部材が挿入された状態を示す説明図である。
【図4】該ロック部材の側面図である。
【図5】該ロック部材を装着した回転コネクタを斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図5に示す回転コネクタを斜め下方から見た斜視図である。
【図7】該ロック部材を破断させてロック解除した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ステータハウジング(ステータ部材)
2 ロータハウジング(ロータ部材)
3 サブロータ
4 環状空間
5 可撓性ケーブル
6 ロック部材
11 外筒部
12 取付部
13 挿通孔
14 段部
15,16 突起部(第2係止部)
15a 傾斜面
21 天板部
22 内筒部
25,26 突起部(第1係止部)
25a 傾斜面
61 支柱部
62 指掛け部(第1係合部)
63 係合片(第2係合部)
64 大径部
65 切欠き
66 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部を有する有底形状のステータ部材と、内筒部および天板部を有して前記ステータ部材に回動自在に連結されたロータ部材と、これらステータ部材とロータ部材間を電気的に接続する可撓性ケーブルと、前記ロータ部材を前記ステータ部材に対して回動中立位置に保持可能なロック部材とを備え、装着状態にある前記ロック部材をその薄肉部で破断することによって前記ロータ部材が前記ステータ部材に対して回動可能となる回転コネクタであって、
前記ロック部材が、上下方向に延びる支柱部と、この支柱部の上端部から側方へ突設された第1係合部と、前記支柱部の下端部から側方へ突設された第2係合部と、前記第1係合部の下方で前記支柱部に形成された切欠き形状の前記薄肉部とを有しており、
前記天板部に前記第1係合部と係合可能な第1係止部を設け、前記外筒部の外周面に前記第2係合部を上方から挿通可能な挿通孔が形成された取付部を突設すると共に、この取付部の下面に前記第2係合部と係合可能な第2係止部を前記ステータ部材に設け、
前記ロック部材を前記挿通孔に挿入して前記支柱部の周方向へ回転することによって、前記第1係合部と前記第2係合部がそれぞれ前記第1係止部と前記第2係止部に係合して位置規制されるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記取付部に前記挿通孔の上端側の一部を拡幅してなる段部が形成されていると共に、前記支柱部に前記挿通孔への挿入を不能とする大径部が形成されており、前記段部に前記大径部を当接させることによって前記ロック部材の前記挿通孔への挿入量が規定されるようにしたことを特徴とする回転コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記第1および第2係合部が前記支柱部に対して同じ向きに突設されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記第1係合部が輪状の指掛け部として形成されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記第1係止部が前記天板部上に突設された一対の突起部からなり、このうち一方の突起部に前記第1係合部を両突起部間へ導き入れるための傾斜面が形成されていることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、前記第2係止部が前記ステータ部材の底面に突設された一対の突起部からなり、このうち一方の突起部に前記第2係合部を両突起部間へ導き入れるための傾斜面が形成されていることを特徴とする回転コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−238588(P2009−238588A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83317(P2008−83317)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】