説明

回転体の摩耗状態検知機構

【課題】タイヤといった表面に凹凸を有する回転体の凸部の摩耗状態を容易に、かつ精度よく検知することができる検知機構を提供する。
【解決手段】摩耗状態検知機構1は、タイヤ100のトレッド溝101部分に埋め込まれる検知部10と、検知部10を利用して凸部102の摩耗状態の判定処理を行う処理部20とを有する電気回路で構成される。検知部10は、その埋め込み箇所が摩耗して路面などに接触して自らが破損することで摩耗状態を検知する。処理部20は、検知部10が破損して電気回路の導通状態が変化することで凸部の摩耗状態を判定する判定部と、この判定結果(摩耗状態情報)を表示可能な外部装置の受信部31に送信する送信部とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用タイヤといった回転体の摩耗状態を検知する検知機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車や普通乗用車などの自動車のタイヤにおいてトレッド部(路面に接する凸部を具える領域)の摩耗状態の検知は、トレッド溝の深さ(凸部の高さ)を目視したり、計測器をトレッド溝に差し込んで溝の深さを測定することが従来行われている。
【0003】
普通乗用車のタイヤは、トレッド部が車体のタイヤハウスで覆われていることが多く、上記目視や測定が行い難い。また、使用者が直接検知する手法では、検知を怠ったり、失念する恐れがある。そこで、タイヤにセンサを取り付けて、センサからの情報により、摩耗状態の検知を行うことが検討されている。特許文献1には、トレッド部の凸部に無線型のタグ(誘導電流によるコイル型センサ)を埋め込んだ構成、特許文献2には、トレッド溝の底部に形成した装着用孔に圧力センサーを嵌め込んだ構成、特許文献3には、トレッド溝に無線機(誘導電流によるコイル型センサ)を貼り付けた構成が開示されている。特許文献1に記載のシステムは、タイヤハウスに設けた質問機がタグに電波を送信し、電波を受信したタグが所定のデータを質問機に発信するか否かにより車体側に設けられた処理ユニットが摩耗状態を判定する構成であり、凸部の摩耗によりタグが破損してタグが所定のデータを質問機に発信しないとき、処理ユニットは摩耗大と判定する。
【0004】
【特許文献1】特開2005-345322号公報
【特許文献2】特開2005-106605号公報
【特許文献3】特開2007-40705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成では、適切に摩耗状態を検知できない恐れがある。
【0006】
トレッド部の凸部は、種々の外力による変形、例えば、発進時の加速や減速時の減速に伴う変形(捩れ)、旋回時の変形が生じ易い。そのため、特許文献1に記載されるように、トレッド部の凸部にセンサを埋設していると、上記変形に伴う応力によりセンサが破損して、摩耗状態を誤認する恐れがある。
【0007】
特許文献2に記載される圧力センサーでは、トレッド溝に砂利などが嵌って圧力が作用することで、摩耗状態を誤認する恐れがある。
【0008】
自動車のタイヤは、風雨や太陽光(熱)などの環境に曝されるため、特許文献3に記載されるように、センサを接着剤などで貼り付ける構成では、センサが外れて、摩耗状態を検知できない恐れがある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、摩耗状態を容易にかつ適切に検知することができる回転体の摩耗状態検知機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表面に凹凸を有する回転体の凸部の摩耗状態を検知する回転体の摩耗状態検知機構に係るもので、検知部と、判定部と、送信部とを有する電気回路を具える。上記検知部は、凹凸の凹部において、その底面と上記凸部の表面との間に埋め込まれる。上記判定部は、凸部の摩耗により上記検知部が破損したことに伴う上記電気回路の導通状態の変化を判定する。上記送信部は、上記判定部からの判定情報に基づく凸部の摩耗状態情報を表示可能な外部装置に判定情報を送信する。
【0011】
この構成によれば、検知部が凹部部分に埋め込まれるため、凸部の変形に伴って検知部が損傷し難く、かつ接着剤などにより貼付した場合のように、回転体の摩耗以外の要因で検知部が脱落することが無い。また、この構成は、凸部の摩耗に従い埋め込み箇所も摩耗して、路面などに接触することで検知部自らが破損して摩耗状態を検知するため、圧力センサーを用いた場合と比較して誤認し難い。従って、本発明摩耗状態検知機構は、検知の信頼性が高い。更に、この構成は、凸部の摩耗状態を電気的に検知し、外部装置により摩耗状態を表示することで、運転者といった回転体の使用者は、外部装置を介して摩耗状態を容易に把握することができる。
【0012】
上記検知部の埋設位置は、凹部に所定の摩耗限界部が設けられている場合、この摩耗限界部よりも、凹部の底面からの高さが高いことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、摩耗限界部が摩耗を示すよりも前に、検知部が凸部の摩耗を検知することができる。従って、回転体の使用者は、摩耗限界に達する前に凸部が摩耗していることを認識できるため、凸部が十分に残存する状態で回転体の交換などを行える。その結果、摩耗限界近くの回転体を使用することによる危険(例えば、回転体が自動車のタイヤの場合、ハイドロプレーニング現象の発生)を回避できると期待される。
【0014】
上記検知部は、フレキシブルプリント配線板(FPC)の導体配線から構成されることが好ましい。
【0015】
上記導体配線が電気回路の一部を構成することで、検知部の破損の有無により回路の抵抗が変化して、回路の導通状態が変化する。具体的には、通電時、凸部の摩耗により検知部が破損すると、回路の一部を構成する検知部の抵抗が無限となり、この部分(検知部近傍)に実質的に電流が流れない状態(非導通状態)となる。破損程度が小さかったり、破損していなければ検知部を含む回路全体に電流が流れた状態(導通状態)が維持される。従って、判定部は、導通状態の変化に伴う電気的変化(電流値や電圧値)を判定することで、凸部の摩耗状態を評価できる。この電気回路には、この回路に電流を流すための電源部を具えておく。この電源部は、判定部や送信部への電力供給にも利用することができる。
【0016】
可撓性のあるFPCで検知部を構成することで、凸部の変形に伴う応力が凹部に付与されても、FPCが変形することで検知部の破損を抑制し、摩耗以外の原因で検知部が破損したことによって摩耗状態を誤認することを効果的に低減できる。
【0017】
上記検知部は、回転体の幅方向に沿って複数埋設されている構成とすることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、幅方向に均一的に摩耗しているか、即ち、偏摩耗の有無を検知できる。複数の検知部は、周方向の同一位置に一直線上に並ぶように配置されてもよいし、周方向の異なる位置に並ぶように配置されてもよい。
【0019】
上記検知部は、回転体の周方向に沿って複数埋設されている構成とすることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、周方向の複数箇所で検知できるため、検知の信頼性を高められる上、周方向に均一的に摩耗しているかも検知できる。
【0021】
上記回転体としては、乗用車、自動二輪車、自転車といった車両のタイヤ、特に自動車用タイヤ、上記凹部は、トレッド溝が挙げられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明回転体の摩耗状態検知機構は、車両用タイヤといった凹凸を有する回転体の凸部の摩耗状態の検知を容易にかつ精度よく行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る回転体の摩耗状態検知機構について、自動車用タイヤにこの検知機構を配置した場合を例に詳細に説明する。
【0024】
<実施形態1>
図1は、本発明摩耗状態検知機構を具える自動車用タイヤの概略構成図、図2は、この検知機構の機能ブロック図である。検知機構1が設けられるタイヤ100は、合成ゴムなどのゴム材料からなり、その表面側に、タイヤの周方向に連続するトレッド溝(凹部)101がタイヤの幅方向に複数並んで設けられており、隣り合う溝101間に存在する複数の凸部102が路面に接触する。これらトレッド溝101及び凸部102が存在する領域は、トレッド部TRと呼ばれる。このタイヤ100は、乗用車のタイヤハウスTHに収納されている。
【0025】
本実施形態の摩耗状態検知機構1は、上記トレッド溝101部分に埋め込まれる検知部10と、検知部10を利用して凸部102の摩耗状態の判定処理を行う処理部20と、検知部10と処理部20とを接続する配線13とを有する電気回路により構成される。図1では配線13を1本の実線で示すが、実際には+極用配線及び−極用配線の2本が存在する。
【0026】
検知部10は、凸部102の摩耗に伴って検知部10の埋め込み箇所が摩耗していき、路面に接触して自らが破損することで凸部102の摩耗状態を検知する。ここでは、検知部10として、図3に示すようなFPCを利用している。この検知部10は、絶縁樹脂などから構成される絶縁フィルム12間に銅や銅合金からなる箔状の導体配線11を具える。導体配線11は、配線13(図1)が接続される線状部11a,11bと、両線状部11a,11bが接続される肥大部11cとを具える。導体配線11は、全体を線状部で構成してもよいが、一部を大きくして破損される面積を大きくとることで、摩耗以外の原因(例えば、凸部102(図1)の変形など)で断線して摩耗状態を誤認することを低減できる。一つの極用の配線13に接続される線状部の数は適宜選択でき、1本でもよいが、図3に示すように2本以上の複数とすると、上記断線に伴う摩耗状態の誤認を防止できる。導体配線11と配線13とは、例えば、半田などで接続する。
【0027】
図1に示すように検知部10をトレッド溝101部分に埋設するには、所定の位置に検知部10の埋設凹部を設けたタイヤの成形型を用いて、タイヤを製造するとよい。具体的には、検知部10に配線13を接続させてから上記成形型に配置し、配線13がタイヤの内周面から突出するようにタイヤを形成する。或いは、タイヤの形成材料と同質のゴム材料で検知部10を覆った嵌込部材を別途作製し、トレッド溝近傍にこの嵌込部材が嵌め込まれる嵌合穴を設けたタイヤを作製し、このタイヤに嵌込部材を嵌め込むことで、検知部10をトレッド溝101部分に埋設させた状態としてもよい。このとき、検知部10には配線13を接続させておき、嵌込部材を嵌め込むと共に、配線13を嵌合穴からタイヤの内周面に挿通させる。検知部10が埋設されたトレッド溝101は、その周方向の溝の深さが部分的に異なり、埋設箇所の溝の深さは、他の部分よりも浅くなる。
【0028】
処理部20は、図2に示すように、凸部102の摩耗により検知部10が破損して電気回路の導通状態が変化することで凸部の摩耗状態を判定する判定部21aを有する制御部21と、判定部21aからの情報を外部装置30に送信する送信部22と、回路に電流を流すための電源部23とを具える。
【0029】
制御部21は、タイマ機能を有しており、検知部10の破断(破損)の有無に伴う導通状態の変化を周期的に判定するように判定部21aを制御する他、得られた判定情報を外部装置30に送信するように送信部22を制御する。このような制御部21は、市販のCPUが利用できる。送信部22は、無線により外部装置30(受信部31)に判定情報を送信できるものが利用できる。これら制御部21や送信部22は、電源部23により電力が供給されて駆動する。電源部23は、市販のボタン型電池が利用できる。特に、直径φ12〜20mm程度、厚さ1〜5mm程度、重量0.3〜3g程度の電池であれば、制御部21や送信部22を含めた処理部20の重量を15〜18g程度にできるため、タイヤ100内に処理部20を配置しても、タイヤ100の重量バランスを十分に調整できる。
【0030】
上記制御部21、送信部22、電源部23の各部材は、接続配線(図示せず)により接続され、更に、この接続配線に配線13(図1)が接続されて、検知部10を含む電気回路が構成されている。配線13は、図1に示すようにタイヤ100の内外(表裏)を貫通しており、一端が検知部10に接続され、タイヤ100の内周面から突出する他端が処理部20の接続配線に接続される。処理部20は、上記制御部などの部材をケース20aに収納させており、タイヤ100の内周面のうち、配線13の他端の近傍に配置させている。
【0031】
車体側に配置される外部装置30は、図2に示すように受信部31と、受信部31が受け取った情報を表示する表示部32と、受信部31及び表示部32を制御する車体側制御部33とを具える。受信部31、表示部32、車体側制御部33の各部材は、車体に具える電源(図示せず)から電力が供給されて駆動する。受信部31は、無線により送信部22からの情報を受信できるものが利用でき、受信し易いようにタイヤハウスTHにおける処理部20の対向位置に取り付けている(図1)。表示部32は、受信した情報を視覚的に表示できるものでも、聴覚的に表示できるものでもよい。視覚的に表示する場合、例えば、発光ダイオード(LED)などを運転席のコントロールパネルなどに設け、点灯の有無により摩耗状態を運転者に知らせることが挙げられる。
【0032】
上記構成を具える摩耗状態検知機構1を用いて、凸部102の摩耗状態を検知するには、以下の手順で行う。図4は、摩耗状態の検知手順を示すフローチャートである。
【0033】
処理部の判定部は、所定の時刻(t=x)となったら(ステップS1)、電気回路の一部である検知部の導通状態(電流が流れているか否か)を電流値の変化により判定する(ステップS2)。検知部に電流が流れている場合、検知部は破損程度が小さい又は破損していないことになる。即ち、検知部の埋設箇所の摩耗が少ない又は摩耗していないと考えられ、結果的に凸部の摩耗が少ないと言える。そこで、判定部は、導通状態であると判定したら、この結果(判定情報)から凸部の摩耗が少ないと判定し、この結果(摩耗状態情報)を送信部に送信する(ステップS3)。その後、判定部は、タイマをリセットして(ステップS4)、ステップS1以降を繰り返す。
【0034】
一方、検知部に電流が流れていない場合、検知部は破損していることになる。即ち、検知部の埋設箇所が摩耗していると考えられ、結果的に凸部の摩耗が多いと言える。そこで、判定部は、非導通状態であると判定したら、この結果(判定情報)から凸部の摩耗が多いと判定し、この結果(摩耗状態情報)を送信部に送信する(ステップS5)。その後、判定部は、タイマをリセットして(ステップS4)、ステップS1以降を繰り返す。
【0035】
摩耗状態情報を受け取った送信部は、外部装置の受信部にこの情報を送信し、車体側制御部は、受信部が受け取った情報を表示するように表示部に命令する。表示部をLEDとし、その点灯の有無により摩耗状態を表示する場合、車体側制御部は、例えば、摩耗が多いときは点灯し、摩耗が少ないときは、消灯しておくように命令する。
【0036】
なお、判定部は、検知部の導通状態の変化に関する情報(判定情報)のみを送信部に送信し、この情報を受信した車体側制御部で摩耗状態を判定し、その結果(摩耗状態情報)を表示部で表示する構成とすることもできる。
【0037】
上記構成を具える摩耗状態検知機構を利用することで、運転者は、目視や直接的な測定などを行うことなく、容易に摩耗状態を把握できる。特に、この構成では、トレッド溝に検知部を埋設しているため、凸部の変形に伴う応力により検知部が損傷し難く、摩耗以外の原因による誤認を低減して、高精度に摩耗状態を検知できる上、検知部が脱落し難く、摩耗状態を検知できない場合を低減できる。
【0038】
この構成において、凹部における検知部10の埋め込み位置(埋め込み深さ)は、適宜選択することができ、埋め込み深さに応じて具体的な摩耗状態(摩耗量)を検知することができる。ここでは、図1に示すように摩耗限界を示すスリップラインS(摩耗限界部)よりもトレッド溝101の底面101aからの高さが高い位置に検知部10が埋め込まれている。スリップラインSは、通常、トレッド溝101の底面101aからの高さが1.6mmの位置に設けられており、例えば、トレッド溝101の残りが3〜4mmの位置に検知部10を設ける。通常、タイヤメーカーは、タイヤの交換推奨目安となる凸部の高さ(>1.6mm)を設けており、この目安に応じた位置に検知部10を配置することで、凸部102の摩耗によるハイドロプレーニング現象の低減などに大いに寄与することができると期待される。
【0039】
一方、スリップラインSの高さと同位置に検知部10を設けると、検知部10による摩耗状態の検知が行われることで、スリップラインSを直接目視することを失念などしても、運転者に摩耗限界であることを認識させ易く、凸部102の摩耗によるハイドロプレーニング現象の発生の低減などに寄与することができると期待される。
【0040】
また、この構成では、間歇的に検知を行う構成であるため、処理部の過剰な電力消費を抑制できる。検知周期は、適宜選択することができ、所望の検知頻度(例えば、1回/1週間)となるように周期を調整するとよい。
【0041】
更に、この構成では、主要な構成部材がタイヤ100内に収納されるため、これら構成部材が風雨や太陽光といった環境により損傷することを防止できる。
【0042】
本例の変形例としては、複数の検知部10をタイヤの幅方向に並んで埋設させる構成が挙げられる。この構成により、タイヤの偏摩耗を検知することができる。処理部は、検知部10ごとに設けてもよいが、複数の検知部10に対して一つの処理部を共用する構成とすると、部品点数を少なくできる(後段の複数の検知部を周方向に並べた構成も同様)。一つの処理部を共用する場合、いずれの検知部10からの情報かを処理部が判別できるようにしておく。
【0043】
その他の変形例としては、複数の検知部10をタイヤの周方向に並んで埋設させる構成が挙げられる。この構成により、周方向に均一的に摩耗しているか否かも検知可能である。
【0044】
その他の変形例としては、トレッド溝の深さ方向に複数の検知部10を並べて埋設する構成が挙げられる。この構成により、詳細な摩耗状態を検知できる。例えば、トレッド溝の深さ方向において浅い側(溝の開口部側)に配置された検知部10が破損し、深さ方向において深い側(底面側)に配置された検知部10が破損していない場合、摩耗が少なく、底面側に埋設された検知部10が破損していくに従って摩耗が多く、凸部の残りが少なくなっている。従って、破損した検知部10に基づく情報を運転者側に提供することで、運転者は、摩耗状態をより具体的に把握することができる。また、スリップラインSの上に検知部10を並べて埋設してもよい。
【0045】
その他の変形例としては、タイヤ側及び車体側の双方に送受信部を設け、車体側制御部は、運転者の指示を受けて、タイヤ側送受信部に情報取得を命令できる構成とし、処理部の判定部は、情報取得命令に基づき、判定を行う構成とすると、運転者は、任意のタイミングで摩耗状態を把握することができる。
【0046】
<実施形態2>
次に、検知部を実施形態1と異ならせた本発明の実施形態を説明する。本形態は、検知部がコイルで構成される点を除いて、他の構成は実施形態1と同様である。以下の説明は、相違点を中心に行う。
【0047】
この実施形態において検知部は、無線機として市販されているコイルで形成されており、コイルの各端部に配線が接続され、この配線が判定部及び送信部に接続されて、摩耗状態検知機構を構成する電気回路が構築される。車体側には、送受信部を具えており、この送受信部は、送信部からの情報を受信すると共に、コイルに電波を発信し、コイルは、この電波に基づく電磁誘導により、上記電気回路の電源部としても機能する。従って、この実施形態における電気回路は、電池などの電源部材が不要である。
【0048】
この構成では、車体側の送受信部が電波を発信したとき、コイルが破損していなければ、電磁誘導によりコイルが電源部となって電気回路が導通状態となり、判定部は、導通状態であると判定して、その結果(判定情報)を送信部により送受信部に返信することができる。車体側制御部は、返信がある場合、コイルが破損しておらず、摩耗が少ないと判定し、その結果(摩耗状態情報)を表示するように表示部に命令する。一方、返信が無い場合、車体側制御部は、コイルが摩耗により破損し、摩耗が多いと判定し、その結果(摩耗状態情報)を表示するように表示部に命令する。車体側制御部に上記判定を行う判定部を具えることで、凸部の摩耗状態を検知することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の回転体の摩耗状態検知機構は、自動車のタイヤといった回転体の摩耗状態の検知に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1に係る摩耗状態検知機構をタイヤに配置した状態を示す概略構成図である。
【図2】実施形態1に係る摩耗状態検知機構の機能ブロック図である。
【図3】実施形態1に係る摩耗状態検知機構に具える検知部(FPC)の概略構成図である。
【図4】実施形態1に係る摩耗状態検知機構を利用して凸部の摩耗状態を検知する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 摩耗状態検知機構
10 検知部 11 導体配線 11a,11b 線状部 11c 肥大部
12 絶縁フィルム 13 配線
20 処理部 20a ケース 21 制御部 21a 判定部 22 送信部
23 電源部
30 外部装置 31 受信部 32 表示部 33 車体側制御部
100 タイヤ 101 トレッド溝 101a 底面 102 凸部
TH タイヤハウス TR トレッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する回転体の凸部の摩耗状態を検知する回転体の摩耗状態検知機構であって、
検知部と、判定部と、送信部とを有する電気回路を具え、
前記検知部は、前記凹凸の凹部において、その底面と前記凸部の表面との間に埋め込まれ、
前記判定部は、凸部の摩耗により前記検知部が破損したことに伴う前記電気回路の導通状態の変化を判定し、
前記送信部は、前記判定部からの判定情報に基づく凸部の摩耗状態情報を表示可能な外部装置に判定情報を送信することを特徴とする回転体の摩耗状態検知機構。
【請求項2】
前記凹部には、所定の摩耗限界部が設けられており、
前記検知部は、前記摩耗限界部よりも凹部の底面からの高さが高い位置に埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の摩耗状態検知機構。
【請求項3】
前記検知部は、フレキシブルプリント配線板の導体配線で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転体の摩耗状態検知機構。
【請求項4】
前記検知部は、回転体の幅方向に沿って複数埋設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転体の摩耗状態検知機構。
【請求項5】
前記検知部は、回転体の周方向に沿って複数埋設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転体の摩耗状態検知機構。
【請求項6】
前記回転体は、自動車用タイヤであり、
前記凹部は、トレッド溝であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転体の摩耗状態検知機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−198233(P2009−198233A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38320(P2008−38320)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】