説明

回転入力装置

【課題】 組立て性が良く、小型化が可能な回転入力装置を提供する。
【解決手段】 回転操作される回転体2と、回転体2を回転自在に保持する基台1と、回転体2の回転操作に伴いクリック感を付与するクリック機構4とを備え、回転体2と基台1の間には周方向に間隙部16を設けると共に、間隙部16にはボール31を回転体2の回転軸方向から収納自在な収納部17を形成し、クリック機構4は間隙部16の収納部17に納められるボール31と、回転体2の回転と連動してボール31に係脱するカム山24bと、ボール31を回転体2の回転軸方向からカム山24bに向かって付勢する弾性部材30とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転を検出する回転入力装置に関し、特にクリック機構により回転体の回転にクリック感触を与える回転入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から携帯電話機等の小型電子機器において用いられ、回転体からなる操作部を回転させ、その回転を検出してメニューのセレクト等の操作を行う回転入力装置が知られている。このような回転入力装置においては、操作に伴ってクリック感触を与えるために、クリック機構が設けられる。クリック機構が設けられた回転入力装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【特許文献1】特開2004−327218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に挙げたような従来の回転入力装置では、回転体の回転に伴いコイルバネにより付勢された鋼球が係合凹部と係脱を繰り返すことでクリック感触を得るようにしていた。しかし、従来の回転入力装置におけるクリック機構は、回転体の径方向に配置された筒状または箱状の保持部内にコイルバネを保持させる必要があるために、組立て性が悪く、小型化が困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、組立て性が良く、小型化が可能な回転入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る回転入力装置は、回転操作される回転体と、該回転体を回転自在に保持する基台と、上記回転体の回転操作に伴いクリック感を付与するクリック機構とを備えた回転入力装置において、
上記回転体と基台の間には周方向に間隙部を設けると共に、該間隙部にはボールを上記回転体の回転軸方向から収納自在な収納部を形成し、
上記クリック機構は上記間隙部の収納部に納められるボールと、上記回転体の回転と連動して上記ボールに係脱するカム山と、上記ボールを上記回転体の回転軸方向から上記カム山に向かって付勢する弾性部材とからなることを特徴として構成されている。
【0006】
また、本発明に係る回転入力装置は、上記収納部は上記基台の間隙部側周面を切り欠いて形成され、上記回転体は操作部と該操作部に連動して回転するカム山部材とからなり、上記カム山は上記カム山部材の間隙部側周面に形成されることを特徴として構成されている。
【0007】
さらに、本発明に係る回転入力装置は、上記カム山部材は外周面に外側に向かって下り傾斜状の段部を備え、該段部の上面に上記カム山が形成されてなることを特徴として構成されている。
【0008】
さらにまた、本発明に係る回転入力装置は、上記収納部とボールは上記間隙部の周方向に所定間隔でそれぞれ複数設けられることを特徴として構成されている。
【0009】
そして、本発明に係る回転入力装置は、上記弾性部材は複数の上記ボールを一部材で付勢する板バネからなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回転入力装置によれば、回転体と基台の間には周方向に間隙部を設け、間隙部にはボールを回転体の回転軸方向から収納自在な収納部を形成し、クリック機構は間隙部の収納部に納められるボールと、回転体の回転と連動してボールに係脱するカム山と、ボールを回転体の回転軸方向からカム山に向かって付勢する弾性部材とからなることにより、ボールと弾性部材を回転体の回転軸方向から取付けることができるので、組立てを容易にすることができる。
【0011】
また、本発明に係る回転入力装置によれば、収納部は基台の間隙部側周面を切り欠いて形成され、回転体は操作部とそれに連動して回転するカム山部材とからなり、カム山はカム山部材の間隙部側周面に形成されることにより、周方向位置を変えることなく回転体の回転に伴ってボールを回転させることができ、スムーズな操作感覚を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る回転入力装置によれば、カム山部材は外周面に外側に向かって下り傾斜状の段部を備え、段部の上面にカム山が形成されてなることにより、カム山によりボールが外側に押された状態となるため、ボールとカム山部材の無用な摩擦を避けることができ、ボールを安定して回転させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る回転入力装置によれば、収納部とボールは間隙部の周方向に所定間隔でそれぞれ複数設けられることにより、クリック感触のための力を周方向に分散させることができるので、回転体のがたつきを防止しスムーズな回転操作を行うことができる。
【0014】
そして、本発明に係る回転入力装置によれば、弾性部材は複数のボールを一部材で付勢する板バネからなることにより、組立てが容易であると共に、小型化及び薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における回転入力装置の斜視図を示している。本実施形態における回転入力装置は、背の低い円筒状部を有した基部1の上面に回転自在な回転体2を有しており、内部に回転体2の回転角度を検出する検出部3と、回転体2の回転に伴ってクリック感触を付与するクリック機構4とを備えてなるものである。
【0016】
図2には、回転入力装置の分解斜視図を示している。この図に示すように回転入力装置は、基台1と、その内部に納められる弾性部材30と、金属球体からなるボール31と、ベアリング32と、回転体2を構成する各部材とからなる。また回転体2は、基台1の外部に露出する中央操作部20と周辺操作部21と、基台1の内部に納められ中央操作部20と連係する駆動体22と、カム山部材24と、周辺操作部21とカム山部材24とを連係させる連係板23とからなっている。このうちクリック機構4は、弾性部材30とボール31とカム山部材24に形成されるカム山24bとから構成される。
【0017】
基台1の内部は同心円状に配置された内側壁13と中間壁14及び外側壁15により3つの部屋に仕切られており、内側壁13により内側収容部10が、内側壁13と中間壁14により中間収容部11が、中間壁14と外側壁15により外側収容部12が、それぞれ形成されている。内側収容部10には駆動体22とクリック板を兼用する可動接点22aと基台1に接点部分を露出させて埋設された固定接点22bとからなる押釦スイッチ部が納められる。中間収容部11にはベアリング32とカム山部材24が納められる。外側収容部12には防水シール33が納められる。また、中間収容部11の底面にはフォトセンサ等の非接触センサからなる検出部3が設けられており、カム山部材24の底面へ照射した光の反射光を検出することでその回転を検出するようにしている。
【0018】
カム山部材24は、ベアリング32を介して基台1に対して回転自在とされており、また連係板23とも連係している。カム山部材24の上面には突起状の係合部24cが複数形成されており、これが連係板23に複数形成された孔状の被係合部23aと係合し連係する。また、連係板23の中央部に形成された中空円筒状の案内部23bは、駆動体22の周面を案内し、これによって中央操作部20の押し込み操作時に駆動体22をスムーズに昇降させるようにしている。
【0019】
また、基台1の中間壁14の内周面にはボール31を納めるために切欠状の収納部17が形成されている。収納部17は、中間壁14の上面に達するように形成されており、ボール31を回転体2の回転軸方向である上方から納めることができるように構成されている。回転体2を構成するカム山部材24の外周面と中間壁14の内周面の間には、間隙部16が形成され、収納部17に納められたボール31は、回転体2の回転軸方向から下方に向かって板バネからなる弾性部材30により付勢され、間隙部16において回転体2の回転に伴いカム山部材24と係脱する。
【0020】
図3には、回転入力装置のボール31が見える状態における平面図を示している。この図に示すように、回転体2を構成するカム山部材24の外周面と基台1の中間壁14の内周面との間は、全周に渡って所定間隔を有するように間隙部16が形成されている。収納部17は、中間壁14の間隙部16側周面に周方向3個所同じ間隔で配置され、それぞれにボール31が納められる。
【0021】
図4には、図3の状態に対し弾性部材30を取付けた状態における平面図を示している。この図に示すように、板バネからなる弾性部材30は、間隙部16の全周を回転体2の回転軸方向である上方から略覆うようなリング状に形成されており、一部材で全てのボール31を付勢している。
【0022】
図5には、カム山部材24の正面図を示している。この図に示すように、カム山部材24の外周面には、外側に向かって下り傾斜状に形成された段部24aが形成されており、段部24aの上面にはさらに山状のカム山24bが全周に渡って形成されている。カム山24bは、回転入力装置内においてカム山部材24の回転に伴って下方に付勢されたボール31と係脱を繰り返し、回転操作にクリック感触を付与することができる。
【0023】
図6には回転入力装置の断面図を、図7にはボール31がカム山24bの頂部にある場合におけるボール31付近の拡大断面図を、それぞれ示している。回転体2は中央操作部20が周辺操作部21の腕部によって昇降自在に保持されて一体化しており、駆動体22は中央操作部20の下面に配置され、その押し込み操作時に一体的に昇降可能としている。
【0024】
カム山部材24は、上述のように係合部24cと連係板23の被係合部23aが係合すると共に、図7に示すように周辺操作部21の下面に形成された係止片21aが連係板23の貫通孔23cを介して係止されて板厚方向へ抜け止め、カム山部材24の逃げ穴24d内に収容される。さらに、カム山部材24はベアリング34の外周面に固定されており、回転体2全体は基台1に対して回転自在とされると共に、カム山部材24の外周面と基台1の中間壁14の内周面との間には間隙部16が形成されている。
【0025】
カム山部材24の段部24aには、上述のようにボール31が載置されており、回転体2の回転に伴ってカム山24bの凹凸に対して係脱を繰り返す。ボール31の上方には弾性部材30が配置される。弾性部材30は、図2に示すように3個所に脚部30aが形成されており、図6に示すように脚部30aを略L字状に折り曲げて基台1に対して固定される。
【0026】
上述のように構成された本実施形態における回転入力装置は、使用者が周辺操作部21を回転操作することによって回転体2が回転し、そのカム山部材24の回転を検出部3で検出して、検出した電気信号を上位装置へ送出することにより、電子機器への回転入力が行われる。また、使用者が中央操作部20を可動接点22aのバネ力に抗して押し込み操作することによって、駆動体22が可動接点22aを反転させて固定接点22bと導通させ、検出した電気信号を上位装置へ送出することにより、電子機器への押圧操作入力が行われる。 このような回転入力装置によれば、例えば電子機器のメニュー画面に表示された表示内容の選択を周辺操作部21の回転操作により行い、中央操作部20の押圧操作によって確定入力することができ、スムーズな入力操作を行うことができる。
【0027】
そして、本実施形態における回転入力装置は回転操作時に図7に示すように、カム山24bにボール31が乗り上げると、ボール31は上方に移動するが、ボール31は弾性部材30により下方に付勢されているので、抵抗力が働く。このようにボール31がカム山24bに乗り上げることで抵抗力に伴うクリック感触が付与される。カム山24bはカム山部材24の外周面において同じピッチで全周に渡って形成されているので、回転体2がカム山24bのピッチ分回転する度にボール31に対して抵抗力が働き、クリック感触を付与することができる。
【0028】
ここで、段部24aはカム山部材24の外周面において外側に向かう下り傾斜状に形成されているので、カム山24bに係脱するボール31は常に外側に押し出される方向の力を受けている。したがって、ボール31はカム山部材24の外周面のうち垂直面に対してはほとんど接触せず、カム山24b及び基台1側の収納部17に接触した状態で係脱を繰り返す。このため、ボール31を安定して回転させることができる。
【0029】
このように、クリック機構4を構成する弾性部材30及びボール31を回転体2の回転軸方向から取付けられるような構造としたことにより、回転入力装置の組立てが容易であり、また弾性部材30を板バネにより構成したことで、回転入力装置の小型化及び薄型化をも図ることができる。
【0030】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用はこれら実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態における回転入力装置の斜視図である。
【図2】回転入力装置の分解斜視図である。
【図3】回転入力装置のボールが見える状態の平面図である。
【図4】図3に弾性部材を取付けた状態の平面図である。
【図5】カム山部材の正面図である。
【図6】回転入力装置の断面図である。
【図7】図6においてボールがカム山に乗り上げた状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 基台
2 回転体
3 検出部
4 クリック機構
16 間隙部
17 収納部
20 中央操作部
21 周辺操作部
22 駆動体
23 連係板
23a 係合部
23b 連係部
24 カム山部材
24a 段部
24b カム山
24c 被係合部
30 弾性部材
31 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される回転体と、該回転体を回転自在に保持する基台と、上記回転体の回転操作に伴いクリック感を付与するクリック機構とを備えた回転入力装置において、
上記回転体と基台の間には周方向に間隙部を設けると共に、該間隙部にはボールを上記回転体の回転軸方向から収納自在な収納部を形成し、
上記クリック機構は上記間隙部の収納部に納められるボールと、上記回転体の回転と連動して上記ボールに係脱するカム山と、上記ボールを上記回転体の回転軸方向から上記カム山に向かって付勢する弾性部材とからなることを特徴とする回転入力装置。
【請求項2】
上記収納部は上記基台の間隙部側周面を切り欠いて形成され、上記回転体は操作部と該操作部に連動して回転するカム山部材とからなり、上記カム山は上記カム山部材の間隙部側周面に形成されることを特徴とする請求項1記載の回転入力装置。
【請求項3】
上記カム山部材は外周面に外側に向かって下り傾斜状の段部を備え、該段部の上面に上記カム山が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の回転入力装置。
【請求項4】
上記収納部とボールは上記間隙部の周方向に所定間隔でそれぞれ複数設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転入力装置。
【請求項5】
上記弾性部材は複数の上記ボールを一部材で付勢する板バネからなることを特徴とする請求項4記載の回転入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−73451(P2007−73451A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261482(P2005−261482)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】