説明

回転埋設鋼管杭用ビット

【課題】内径の異なる複数種の鋼管杭のいずれに対しても溶接による接合を容易にかつより確実にすることができる回転埋設鋼管杭用ビットを得る。
【解決手段】回転埋設鋼管杭用ビット1のビット本体2は、胴部6と、鋼管杭4の埋設先端部5との間で溶接用の開先15を全周に亘って形成する環状の斜面14を持ち、胴部6に設けられた開先斜面部11と、開先斜面部11の周方向へ互いに間隔を置いて斜面14上に設けられた複数のストッパ13とを有している。各ストッパ13は、埋設先端部5をストッパ面17で受けた状態で、開先15におけるルート間隔Gを確保する。斜面14は開先斜面部11の径方向内側から外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜し、ストッパ面17は、斜面14からの距離を胴部6の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部11の径方向内側から外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管杭の埋設先端部に全周に亘る突き合わせ溶接により接合される回転埋設鋼管杭用ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭として地盤に埋設される鋼管杭は、回転させながら地盤中に貫入させるために、螺旋羽根を持つ先端部材を鋼管杭の先端に接合した構造が知られている。鋼管杭と先端部材との接合は、鋼管杭の先端の内側に先端部材の継手部材を嵌合させて、鋼管杭と先端部材との継ぎ目を全周溶接することにより行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、外面がテーパ面とされた絞込部を第2鋼管杭の端部に設け、第1鋼管杭の端面とテーパ面との間に形成された開先を埋めるように全周溶接することにより、第1鋼管杭と第2鋼管杭とを接合した構造も知られている。溶接用の開先は、第1鋼管杭の端面の内周部がテーパ面に接触した状態で、第1鋼管杭の端面とテーパ面との間に形成される(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−169502号公報
【特許文献2】特開2005−76415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されている鋼管杭では、鋼管杭と先端部材との継ぎ目において適切な隙間が確保されないまま溶接が行われるので、溶接作業に手間がかかるだけでなく、溶接による接合強度も低下してしまう。
【0006】
また、特許文献2に示されている第1鋼管杭と第2鋼管杭との接合構造では、第1鋼管杭の端面の内周部がテーパ面に接触した状態で全周溶接されるので、開先内においては、第1鋼管杭の内側に近づくほど隙間が狭くなり、溶接を行うための適切な隙間が開先の一部で確保されなくなってしまう。これにより、溶接作業に手間がかかるだけでなく、溶接による接合強度も低下してしまう。また、第1鋼管杭の内径が大きくなると、第1鋼管杭の内周部も径方向外側へずれていくので、開先自体が小さくなり、溶接を行うための適切な隙間を確保することがさらにできなくなってしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、内径の異なる複数種の鋼管杭のいずれに対しても溶接による接合を容易にかつより確実にすることができる回転埋設鋼管杭用ビットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の回転埋設鋼管杭用ビットは、鋼管杭の埋設先端部に全周に亘って突き合わせ溶接されるビット本体、及びビット本体の外周部から突出する螺旋羽根板を備えた回転埋設鋼管杭用ビットであって、ビット本体は、螺旋羽根板が設けられた胴部と、埋設先端部との間で溶接用の開先を全周に亘って形成する環状の斜面を持ち、胴部に設けられた開先斜面部と、胴部の軸線に垂直な平面に対して傾斜するストッパ面をそれぞれ持ち、開先斜面部の周方向について互いに間隔を置いて斜面上に設けられ、埋設先端部をストッパ面で受けた状態で、開先におけるルート間隔を確保する複数のストッパとを有し、斜面は、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜しており、ストッパ面は、斜面からの距離を胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜している。
【0009】
また、この発明の回転埋設鋼管杭用ビットは、鋼管杭の埋設先端部に全周に亘って突き合わせ溶接されるビット本体、及びビット本体の外周部から突出する螺旋羽根板を備えた回転埋設鋼管杭用ビットであって、ビット本体は、螺旋羽根板が設けられた胴部と、埋設先端部との間で溶接用の開先を全周に亘って形成する環状の斜面を持ち、胴部に設けられた開先斜面部と、胴部の軸線に垂直な複数のストッパ面によって階段状に形成された階段部をそれぞれ持ち、開先斜面部の周方向について互いに間隔を置いて斜面上に設けられ、各ストッパ面のいずれかで埋設先端部を受けた状態で、開先におけるルート間隔を確保する複数のストッパとを有し、斜面は、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜しており、階段部は、各ストッパ面のそれぞれと斜面との距離を胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜している。
【発明の効果】
【0010】
この発明の回転埋設鋼管杭用ビットでは、開先斜面部の周方向について互いに間隔を置いて配置された複数のストッパが開先斜面部の斜面上に設けられ、各ストッパのストッパ面は、斜面からの距離を胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜しているので、鋼管杭の埋設先端部が各ストッパ面のいずれの位置に接触しても、埋設先端部の端面と斜面との間の軸線方向距離を適切に保つことができる。従って、内径が互いに異なる複数種の鋼管杭のいずれを回転埋設鋼管杭用ビットに組み合わせても、開先におけるルート間隔を適切に保つことができる。これにより、複数種の鋼管杭のいずれに対しても回転埋設鋼管杭用ビットの溶接による接合を容易にかつより確実にすることができる。
【0011】
この発明の回転埋設鋼管杭用ビットでは、胴部の軸線に垂直な複数のストッパ面によって階段状に形成された階段部が各ストッパにそれぞれ設けられ、階段部は、各ストッパ面のそれぞれと斜面との距離を胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって胴部に近づく方向へ傾斜しているので、各ストッパ面のうち、鋼管杭の内径に応じたいずれかのストッパ面に鋼管杭の埋設先端部を接触させることができ、開先におけるルート間隔を適切に保つことができる。これにより、内径が互いに異なる複数種の鋼管杭のいずれに対しても回転埋設鋼管杭用ビットの溶接による接合を容易にかつより確実にすることができ、鋼管杭に対する溶接の接合強度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1による回転埋設鋼管杭用ビットを示す側面図である。
【図2】図1の回転埋設鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の溶接継手部を示す拡大斜視図である。
【図4】図2のIV部を溶接ビードを除去して示す拡大断面図である。
【図5】図4の鋼管杭の肉厚(t=4.2mm)よりも薄い肉厚(t=3.2mm)を持つ鋼管杭がストッパ面に接触している状態を示す縦断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2による回転埋設鋼管杭用ビットの溶接継手部を示す縦断面図である。
【図7】図6の鋼管杭の肉厚(t=4.2mm)よりも薄い肉厚(t=3.2mm)を持つ鋼管杭がストッパ面に接触している状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による回転埋設鋼管杭用ビットを示す側面図である。また、図2は、図1の回転埋設鋼管杭用ビットが鋼管杭に接合されている状態を示す縦断面図である。図において、回転埋設鋼管杭用ビット1は、中空のビット本体2と、ビット本体2の外周部から径方向外側へ突出する螺旋羽根板3とを有している。回転埋設鋼管杭用ビット1は、図2に示すように、ビット本体2が鋼管杭4の埋設先端部5に溶接されることにより、鋼管杭4に同軸に接合される。
【0014】
鋼管杭4の埋設先端部5の端面は、鋼管杭4の軸線に対して垂直になっている。回転埋設鋼管杭用ビット1は、外径が同一で肉厚tが互いに異なる(即ち、外径が同一で内径が互いに異なる)複数種の鋼管杭4のいずれにも接合可能になっている。回転埋設鋼管杭用ビット1が接合される複数種の鋼管杭4としては、例えば肉厚tが3.2mm、4.2mm及び6.0mmの鋼管杭4が挙げられる。図2では、肉厚tが4.2mmの鋼管杭4に回転埋設鋼管杭用ビット1が接合されている。
【0015】
ビット本体2は、軸線を持つ円筒状の胴部6と、胴部6の軸線方向一端部(接合側の端部)に設けられ、鋼管杭4の埋設先端部5に全周に亘って突き合わせ溶接される溶接継手部7と、胴部6の軸線方向他端部に設けられ、胴部6の他端部の開口を閉塞するドーム状の閉端部(底部)8とを有している。
【0016】
閉端部8には、複数の掘削刃9が設けられている。胴部6の外径は、鋼管杭4の外径と同一とされている。回転埋設鋼管杭用ビット1は、鋳造によって作製されている。従って、ビット本体2、螺旋羽根板3及び各掘削刃9は、一体の単一部品として成型されている。
【0017】
螺旋羽根板3は、螺旋を描きながら胴部6を巻くように胴部6の外周面に設けられている。また、螺旋羽根板3は、全体として胴部6の径方向内側から径方向外側に向かって閉端部8に近づくように傾斜している。胴部6の軸線に垂直な平面と、螺旋羽根板3の下面(即ち、螺旋羽根板3の閉端部8側の面)とがなす傾斜角度は、図2に示すように、所定の角度αとされている。従って、螺旋羽根板3の形状は、円錐面を螺旋状に配置した形状とされている。螺旋羽根板3の板厚は、螺旋羽根板3の胴部6に固定された根元部で最も厚く、胴部6から離れて周縁部に近づくに従って連続的に薄くなっている。また、螺旋羽根板3の周縁部には、閉端部8側へ曲げられた立ち下がり縁部10が設けられている。
【0018】
図3は、図1の溶接継手部7を示す拡大斜視図である。また、図4は、図2のIV部を溶接ビードを除去して示す拡大断面図である。溶接継手部7は、胴部6の接合側の端部に全周に亘って設けられた開先斜面部11と、開先斜面部11の鋼管杭4側の端部に全周に亘って設けられ、鋼管杭4の埋設先端部5内に挿入される円筒状の挿入部12と、開先斜面部11の周方向について互いに間隔を置いて配置され、開先斜面部11に設けられた複数(この例では、3つ)のストッパ(突起)13とを有している。
【0019】
開先斜面部11は、胴部6の接合側の端部から鋼管杭4に近づく方向へ外径及び内径が連続的に小さくなる先細りの円筒部とされている。従って、開先斜面部11は、胴部6の軸線に垂直な平面に対して傾斜する円錐面である環状の斜面14を外周面として持っている。斜面14は、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜している。この例では、胴部6の軸線に垂直な平面に対する斜面14の傾斜角度θ1が45度となっている。斜面14は、図4に示すように、鋼管杭4の埋設先端部5の端面との間で溶接用の開先15を全周に亘って形成する。
【0020】
挿入部12は、斜面14から胴部6の軸線に沿って延びる外周面16を持っている。挿入部12の外径は、鋼管杭4の内径以下の寸法とされている。
【0021】
各ストッパ13は、斜面14上に固定されている。また、各ストッパ13は、鋼管杭4の埋設先端部5を受けるストッパ面17をそれぞれ持っている。各ストッパ面17には、挿入部12が鋼管杭4内に挿入された状態で、埋設先端部5の端面の内周部が接触するようになっている。各ストッパ13は、図4に示すように、鋼管杭4の埋設先端部5を各ストッパ面17で受けた状態で、開先15におけるルート間隔Gを確保する。ルート間隔Gは、埋設先端部5の端面の内周部と斜面14との間の軸線方向距離である。鋼管杭4の埋設先端部5が各ストッパ面17に接触している状態では、ルート間隔Gが溶接継手部7の全周に亘って一定に保たれる。
【0022】
各ストッパ面17は、胴部6の軸線に垂直な平面に対して傾斜している。また、各ストッパ面17は、斜面14からの距離を胴部6の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜している。これにより、溶接継手部7の全周に亘ってルート間隔Gが適切な距離に保たれ、ルート間隔Gが狭くなりすぎることが防止される。
【0023】
この例では、図4に示すように、各ストッパ面17の縦断面形状(即ち、胴部6の軸線を含む平面における断面形状)は直線となっている。また、この例では、ストッパ面17と斜面14との間の距離を胴部6の軸線方向について一定の距離S(2mm)に保ちながら、各ストッパ面17が斜面14に沿って傾斜している。従って、この例では、胴部6の軸線に垂直な平面に対する各ストッパ面17の傾斜角度θ2が、斜面14の傾斜角度θ1と同じ45度となっている。
【0024】
また、この例では、各ストッパ13が開先斜面部11の周方向について等間隔に配置されている。さらに、この例では、図3及び図4に示すように、各ストッパ13が、開先斜面部11の斜面14上だけでなく、挿入部12の外周面16にも固定されている。
【0025】
図5は、図4の鋼管杭4の肉厚(t=4.2mm)よりも薄い肉厚(t=3.2mm)を持つ鋼管杭4がストッパ面17に接触している状態を示す縦断面図である。図4及び図5に示すように、鋼管杭4の肉厚tが4.2mmである場合と、鋼管杭4の肉厚tが3.2mmである場合とのいずれの場合であっても、ルート間隔Gは一定の2mmとなっている。即ち、肉厚tが互いに異なる(即ち、内径が互いに異なる)複数種の鋼管杭4のいずれを回転埋設鋼管杭用ビット1に組み合わせても、ルート間隔Gが一定の2mmに保たれる。また、開先15の深さ(開先深さ)は、鋼管杭4の肉厚tと同じ寸法であるので、鋼管杭4の肉厚tが薄くなるほど浅くなっている。
【0026】
回転埋設鋼管杭用ビット1は、各ストッパ面17を鋼管杭4の埋設先端部5に接触させた状態で、鋼管杭4の埋設先端部5に全周に亘って突き合わせ溶接される。開先15には、鋼管杭4の全周に亘る突き合わせ溶接により、開先15を埋める溶接ビード18が溶接継手部7の全周に亘って形成される。開先15に形成される溶接ビード18は、埋設先端部5の端面の内周部と斜面14との間に各ストッパ13により空間が存在しているので、鋼管杭4の内側(内周面側)にも及ぶこととなる。
【0027】
次に、回転埋設鋼管杭用ビット1を鋼管杭4に突き合わせ溶接するときの手順について説明する。まず、鋼管杭4の埋設先端部5が各ストッパ面17に当たるまで、ビット本体2の挿入部12を鋼管杭4の埋設先端部5内に挿入する。これにより、埋設先端部5の端面と斜面14との間に溶接用の開先15が全周に亘って形成される。この状態では、埋設先端部5の端面と斜面14との間の距離が各ストッパ13により適切に保たれており、適切なルート間隔Gが開先15の全周に亘って確保されている。
【0028】
この後、開先15を埋める溶接ビード18を形成しながら、溶接継手部7の全周に亘って溶接を行う。このとき、溶接作業の周回を1周行った段階で開先15の全体が溶接ビードで埋まらない場合には、開先15の全体が溶接ビード18で埋まるまで、複数周の溶接作業を行って溶接ビードを重ねる。これにより、回転埋設鋼管杭用ビット1が鋼管杭4の埋設先端部5に接合される。開先15の全体が溶接ビードで埋まるまでの溶接作業の周回数は、通常、鋼管杭4の肉厚tが3.2mmの場合で1周であり、鋼管杭4の肉厚tが4.2mmの場合で1〜2周である。
【0029】
このような回転埋設鋼管杭用ビット1では、開先斜面部11の周方向について互いに間隔を置いて配置された複数のストッパ13が開先斜面部11の斜面14上に設けられ、各ストッパ13のストッパ面17は、斜面14からの距離を胴部6の軸線方向について所定の距離Sに保ちながら、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜しているので、鋼管杭4の埋設先端部5が各ストッパ面17のいずれの位置に接触しても、埋設先端部5の端面と斜面14との間の軸線方向距離を適切に保つことができる。従って、肉厚tが互いに異なる(即ち、内径が互いに異なる)複数種の鋼管杭4のいずれを回転埋設鋼管杭用ビット1に組み合わせても、開先15におけるルート間隔Gを適切に保つことができる。これにより、内径が互いに異なる複数種の鋼管杭4のいずれに対しても回転埋設鋼管杭用ビットの溶接による接合を容易にかつより確実にすることができ、鋼管杭に対する溶接の接合強度の低下を防止することができる。
【0030】
また、鋼管杭4の肉厚tが薄くなるほど(即ち、鋼管杭4の内径が大きくなるほど)、開先15における開先深さが浅くなるので、鋼管杭4の肉厚tが薄くなれば(即ち、鋼管杭4の内径が大きくなれば)、溶接作業の周回数を少なくすることができ、溶接作業をさらに容易にすることができる。また、開先15における開先深さが浅くなると、溶接ビードの量も少なくすることができるので、コストの低減も図ることができる。
【0031】
なお、上記の例では、胴部6の軸線に垂直な平面に対する各ストッパ面17の傾斜角度θ2が、胴部6の軸線に垂直な平面に対する斜面14の傾斜角度θ1と同じになっているが、傾斜角度θ1とθ2とが同じである必要はなく、例えば、胴部6の軸線に垂直な平面に対する各ストッパ面17の傾斜角度θ2が、胴部6の軸線に垂直な平面に対する斜面14の傾斜角度θ1よりも小さくなっていてもよい。
【0032】
また、上記の例では、各ストッパ面17の縦断面形状が直線となっているが、各ストッパ面17の縦断面形状を曲線としてもよい。即ち、各ストッパ面17が曲面となっていてもよい。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、胴部6の軸線に垂直な平面に対して傾斜するストッパ面17が各ストッパ13に設けられているが、胴部6の軸線に垂直な複数のストッパ面によって階段状に形成された階段部を各ストッパ13に設けてもよい。
【0034】
即ち、図6は、この発明の実施の形態2による回転埋設鋼管杭用ビット1の溶接継手部7を示す縦断面図である。図において、各ストッパ13は、胴部6の軸線に垂直な平面に対して傾斜する階段部21をそれぞれ持っている。階段部21は、胴部6の軸線に垂直な複数(この例では、3つ)のストッパ面22を有している。また、階段部21は、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ各ストッパ面22の位置を順次ずらすことにより、階段状に形成されている。
【0035】
階段部21は、各ストッパ面22のそれぞれと斜面14との距離を胴部6の軸線方向について所定の距離(この例では、2mm)以上に保ちながら、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜している。この例では、各ストッパ面22の径方向内側の端部のそれぞれと斜面14との距離が胴部6の軸線方向について2mmとなるように、各ストッパ面22の位置が設定されている。
【0036】
鋼管杭4の埋設先端部5は、鋼管杭4の肉厚t(即ち、鋼管杭4の内径)に応じて、階段部21に含まれる各ストッパ面22のいずれかに接触する。各ストッパ13は、鋼管杭4の埋設先端部5を各ストッパ面22のいずれかで受けた状態で、開先15におけるルート間隔Gを確保する。なお、図6では、鋼管杭4の肉厚tが4.2mmとされている。
【0037】
図7は、図6の鋼管杭4の肉厚(t=4.2mm)よりも薄い肉厚(t=3.2mm)を持つ鋼管杭4がストッパ面22に接触している状態を示す縦断面図である。図6及び図7に示すように、鋼管杭4の肉厚tが4.2mmである場合と、鋼管杭4の肉厚tが3.2mmである場合とで、鋼管杭4の埋設先端部5が互いに異なるストッパ面22に接触している。即ち、鋼管杭4の埋設先端部5は、各ストッパ面22のうち、鋼管杭4の肉厚tの大きさ(即ち、鋼管杭4の内径の大きさ)に応じたストッパ面22に接触している。従って、肉厚tが互いに異なる(即ち、内径が互いに異なる)複数種の鋼管杭4のいずれを回転埋設鋼管杭用ビット1に組み合わせても、開先15におけるルート間隔Gが適切に保たれる。また、開先15の開先深さは、鋼管杭4の肉厚tと同じ寸法であるので、鋼管杭4の肉厚tが薄くなるほど浅くなっている。従って、鋼管杭4の肉厚tが薄くなるほど、溶接作業の周回数が減ることとなる。他の構成及び溶接の手順は、実施の形態1と同様である。
【0038】
このような回転埋設鋼管杭用ビット1では、胴部6の軸線に垂直な複数のストッパ面22によって階段状に形成された階段部21が各ストッパ13にそれぞれ設けられ、階段部21は、各ストッパ面22のそれぞれと斜面14との距離を胴部6の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、開先斜面部11の径方向内側から径方向外側に向かって胴部6に近づく方向へ傾斜しているので、各ストッパ面22のうち、鋼管杭4の内径(即ち、鋼管杭4の肉厚t)に応じたいずれかのストッパ面22に鋼管杭4の埋設先端部5を接触させることができ、開先15におけるルート間隔Gを適切に保つことができる。これにより、内径が互いに異なる複数種の鋼管杭4のいずれに対しても回転埋設鋼管杭用ビット1の溶接による接合を容易にかつより確実にすることができ、鋼管杭4に対する溶接の接合強度の低下を防止することができる。特に、鋼管杭4の肉厚tが薄くなれば(即ち、鋼管杭4の内径が大きくなれば)、開先15における開先深さが浅くなるので、溶接作業の周回数を少なくすることができ、溶接作業をさらに容易にすることができる。また、この場合、溶接ビードの量を少なくすることができ、コストの低減も図ることができる。さらに、各ストッパ面22が胴部6の軸線に垂直になっているので、回転埋設鋼管杭用ビット1を鋼管杭4に組み合わせたときに、回転埋設鋼管杭用ビット1が鋼管杭4の軸線に対して傾くことを防止することができ、回転埋設鋼管杭用ビット1と鋼管杭4とを容易に同軸に配置することができる。これにより、溶接作業をさらに容易にかつより確実にすることができるとともに、鋼管杭4に対する溶接の接合強度の低下もさらに防止することができる。
【0039】
上記の例では、共通のストッパ13に形成されるストッパ面22の数が3つとされているが、共通のストッパ13に形成されるストッパ面22の数を2つとしてもよいし、4つ以上としてもよい。
【0040】
また、各上記実施の形態では、ストッパ13の数が3つとされているが、ストッパ13の数を4つ以上としてもよい。
【0041】
以上に図示して説明した回転埋設鋼管杭用ビット1は単なる例であって様々な変形が可能であり、またそれぞれの具体例の特徴を全てあるいは選択的に組み合わせて用いることもできる。例えば、実施の形態1のストッパ面17及び実施の形態2の階段部21を共通のストッパ13に設けることもできる。即ち、胴部6の軸線に垂直な平面に対して傾斜するストッパ面17をストッパ13の挿入部12に近い部分(又は、挿入部12から離れた部分)に設け、胴部6の軸線に垂直な複数のストッパ面22を含む階段部21をストッパ13の挿入部12から離れた部分(又は、挿入部12に近い部分)に設けることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 回転埋設鋼管杭用ビット、2 ビット本体、3 螺旋羽根板、4 鋼管杭、5 埋設先端部、7 溶接継手部、11 開先斜面部、12 挿入部、13 ストッパ、14 斜面、15 開先、17,22 ストッパ面、21 階段部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の埋設先端部に全周に亘って突き合わせ溶接されるビット本体、及び
上記ビット本体の外周部から突出する螺旋羽根板
を備えた回転埋設鋼管杭用ビットであって、
上記ビット本体は、
上記螺旋羽根板が設けられた胴部と、
上記埋設先端部との間で溶接用の開先を全周に亘って形成する環状の斜面を持ち、上記胴部に設けられた開先斜面部と、
上記胴部の軸線に垂直な平面に対して傾斜するストッパ面をそれぞれ持ち、上記開先斜面部の周方向について互いに間隔を置いて上記斜面上に設けられ、上記埋設先端部を上記ストッパ面で受けた状態で、上記開先におけるルート間隔を確保する複数のストッパと
を有し、
上記斜面は、上記開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって上記胴部に近づく方向へ傾斜しており、
上記ストッパ面は、上記斜面からの距離を上記胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、上記開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって上記胴部に近づく方向へ傾斜していることを特徴とする回転埋設鋼管杭用ビット。
【請求項2】
鋼管杭の埋設先端部に全周に亘って突き合わせ溶接されるビット本体、及び
上記ビット本体の外周部から突出する螺旋羽根板
を備えた回転埋設鋼管杭用ビットであって、
上記ビット本体は、
上記螺旋羽根板が設けられた胴部と、
上記埋設先端部との間で溶接用の開先を全周に亘って形成する環状の斜面を持ち、上記胴部に設けられた開先斜面部と、
上記胴部の軸線に垂直な複数のストッパ面によって階段状に形成された階段部をそれぞれ持ち、上記開先斜面部の周方向について互いに間隔を置いて上記斜面上に設けられ、各上記ストッパ面のいずれかで上記埋設先端部を受けた状態で、上記開先におけるルート間隔を確保する複数のストッパと
を有し、
上記斜面は、上記開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって上記胴部に近づく方向へ傾斜しており、
上記階段部は、各上記ストッパ面のそれぞれと上記斜面との距離を上記胴部の軸線方向について所定の距離以上に保ちながら、上記開先斜面部の径方向内側から径方向外側に向かって上記胴部に近づく方向へ傾斜していることを特徴とする回転埋設鋼管杭用ビット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate