説明

回転式マイクロ波焼成炉及びその焼成方法

【課題】生石灰が均一かつ高い焼成率で得られ、焼成温度と焼成時間を自由に制御することができ、炭酸塩鉱物の大きさに制限されずに焼成することができる回転式マイクロ波焼成炉及びその焼成方法を提供する。
【解決手段】回転式マイクロ波焼成炉は、マイクロ波が照射される密閉した空間を形成するキャビティと、キャビティの内部にマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置と、内部に被焼成体が収容され、キャビティの内部に所定の角度だけ傾斜したまま回転可能に設置され、マイクロ波の照射によって発熱される発熱体と、発熱体に被焼成体を順次供給する被焼成体供給装置と、発熱体の回転のための動力を提供する発熱体回転装置と、被焼成体供給装置による被焼成体供給量と前記発熱体回転装置による発熱体回転速度を制御するための制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰石、方解石、及び白雲石等の炭酸塩鉱物をマイクロ波の照射によって焼成する焼成炉及びその焼成方法に関し、より詳しくは、炭酸塩鉱物を回転させながら連続的に焼成する回転式マイクロ波焼成炉及びその焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石灰石、方解石、及び白雲石等の炭酸塩鉱物を高温で焼成すると、二酸化炭素(CO)が熱分解される脱炭酸化反応を経て生石灰(CaO)が生成する。
【0003】
炭酸塩鉱物の焼成、すなわち炭酸塩鉱物の熱分解では、870℃付近から吸熱反応による熱分解が始まり、950℃付近で発熱反応が進行し、最終的に970℃付近で熱分解が終了する。しかしながら、普通、焼成炉では、熱分解温度よりも高い温度、すなわち焼成温度1000℃以上を、焼成時間である約1〜12時間の間維持し、脱炭酸化反応を経て生石灰が製造される。
【0004】
一般に、炭酸塩鉱物を焼成して生石灰を製造するための焼成炉は、無煙炭または石油等の化石燃料を用いる溶鉱炉と回転炉とが広く用いられている。
【0005】
ところが、溶鉱炉と回転炉は、焼成燃料として化石燃料を用いるため、燃料の燃焼中に、代表的な温室ガスと知られている二酸化炭素(CO)が多量に排出され、環境汚染を生じてしまう。また、近年の化石燃料の枯渇により、生石灰を製造するための費用増加をもたらしてしまう。
【0006】
また、溶鉱炉と回転炉は、焼成される炭酸塩鉱物の大きさにより、その使用が制限される。
【0007】
溶鉱炉は、主に大塊(120〜80mm)または中塊(80〜45mm)を焼成するために用いられるが、小塊(45〜20mm)または小粒(20〜5mm)を焼成する場合は、充填率が高いために焼成率が低くなるという短所がある。回転炉は、石油等の流体燃料を用いるので燃料コストが高く、大塊、中塊等に焼成するのに限界があり、普通、小塊及び小粒の大きさに焼成するのに用いられるが、製造された生石灰の粉化率が高いという短所があった。
【0008】
なお、炭酸塩鉱物のうち、方解石は、溶鉱炉でも回転炉でも焼成することができない。これは、方解石が結晶質であり、壊れやすい特性を有するため、塊または小粒の大きさに焼成せず、重質炭酸カルシウムとして活用されるからである。
【0009】
このように、炭酸塩鉱物を焼成して生石灰を製造するための焼成炉として広く用いられている溶鉱炉及び回転炉では、化石燃料の使用による環境汚染の誘発、装置のランニングコストの増加、焼成炉に装入される鉱物粒子の大きさの制限、及び方解石等の炭酸塩鉱物に対する焼成の難しさ等という問題点が多くある。そこで、最近は、焼成熱源として化石燃料ではなくマイクロ波を用いるマイクロ波焼成炉の研究が盛んに行われている。
【0010】
マイクロ波焼成炉は、焼成空間を提供する発熱体にマイクロ波を照射し、発熱体の自己発熱によって被焼成体を焼成する方式であり、焼成熱源として化石燃料の燃焼を必要とせず、環境的かつ経済的であるということで、最近、その活用が注目されている。
【0011】
ところが、これまで開発されてきたマイクロ波焼成炉は、図1に示すように、被焼成体を連続的に焼成するのではなく、一定量ずつに分けて固定式で焼成するバッチ式であり、下記の理由により、その使用が制限されるという問題点があった。
【0012】
まず、発熱体が固定された状態でマイクロ波が照射されると、マイクロ波が発熱体の全体に均一に照射されるのではなく、局部的に集中して照射される。したがって、発熱体の全体で均一な温度分布は得られず、局部的に温度が上昇するという発熱体の熱爆炎が発生してしまい、所望の製品(生石灰)の均一な焼成率が得られないという問題点があった。
【0013】
また、被焼成体を一定量ずつに分けて焼成するバッチ式の場合は、連続的に炭酸塩鉱物を焼成することができず、多量の生石灰を製造するのに限界があるという問題点があった。
【0014】
一方、マイクロ波焼成炉は、マイクロ波を発生させて発熱体を加熱すると、発熱体と被焼成体との間において対流及び伝導によって被焼成体に熱が伝達される方式を用いている。バッチ式のマイクロ波焼成炉は、発熱体と被焼成体が一定の距離だけ離れた状態で熱伝達が行われるため、実際の焼成時、被焼成体の熱温度が設定温度よりも低くなり、所望の焼成温度までに上昇し難いという限界により、被焼成体、すなわち炭酸塩鉱物の大きさが制約を受けるという問題点があった。
【0015】
このような問題点のため、既存のマイクロ波焼成炉は、特許文献1に開示の通り、ファインセラミックス材料のように、高い焼成温度を要しない焼成にのみ限定的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2010‐0102181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、その目的は、焼成空間を提供するとともにマイクロ波によって自己発熱する発熱体において、全体的に均一に温度が上昇するようにし、生石灰が均一かつ高い焼成率で得られ、また炭酸塩鉱物を焼成するための焼成温度と焼成時間を自由に制御することができ、炭酸塩鉱物の大きさに関わらず焼成することができるマイクロ波焼成炉及びその焼成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明による回転式マイクロ波焼成炉は、マイクロ波が照射される密閉した空間を形成するキャビティと、前記キャビティの外側に設置され、前記キャビティの内部にマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置と、内部に前記被焼成体が収容され、前記キャビティの内部に傾斜したまま回転可能に設置され、マイクロ波の照射によって発熱され、前記被焼成体が焼成される焼成室を提供する発熱体と、前記キャビティの外側に設置され、前記発熱体の投入口側に連結され、前記発熱体に被焼成体を順次供給する被焼成体供給装置と、前記キャビティの外側に設置され、前記発熱体の排出口側に連結され、前記発熱体の回転のための動力を提供する発熱体回転装置と、前記被焼成体供給装置による被焼成体の供給量と前記発熱体回転装置による発熱体の回転速度を制御するための制御部と、を備え、回転する発熱体にマイクロ波を照射し、全体的に均一な温度上昇が行われるようにした。
【0019】
ここで、前記発熱体の傾斜角度は3°〜5°とし、発熱体の内部に長手方向に長く螺旋状溝を形成し、被焼成体が発熱体の傾斜による自由落下と発熱体の回転による排出が行われ、被焼成体の大きさに応じて発熱体の回転速度を調節して焼成し、発熱体の内部に形成された螺旋状溝によって被焼成体の移送排出を円滑にしている。
【0020】
一方、前記キャビティの内部と前記発熱体との間には、断熱体をさらに設置し、前記マイクロ波が透過されると共に、前記発熱体から発生する熱の放出を遮断し、焼成率を向上させた。
【0021】
また、前記発熱体回転装置と連結される前記発熱体の投入口側には、耐火物材質からなり、周りに被焼成体が排出される排出孔が形成され、発熱体回転装置の回転軸と結合される耐火物カバー体を有し、発熱体の熱が回転軸に伝達されることを遮断し、回転軸が熱変形によって損傷することを防止した。
【0022】
また、前記断熱体には、前記耐火物カバー体が設置された位置に対応する位置に、前記耐火物カバー体の排出孔から排出される被焼成体を、前記キャビティの外部に排出するための排出孔が形成され、前記排出孔には、キャビティの外部から貫通して連結された排出管が連結され、発熱体への被焼成体の供給と排出が追加の作業無しに連続的に行われるようにした。
【0023】
また、前記発熱体の下部の両側左右には、発熱体の外周面と接触し、発熱体の荷重を支持すると共に、発熱体の回転を助ける一対のガイドローラをさらに有する。
【0024】
一方、本発明による回転式マイクロ波焼成方法は、被焼成体が配置されて焼成空間を形成する発熱体が、一定の角度だけ傾斜したまま回転する状態で、前記発熱体にマイクロ波を照射して被焼成体を焼成するようになる。
【0025】
また、制御部によって、被焼成体の種類及び大きさに応じて、前記発熱体の回転速度を調節することにより、発熱体の内部に装入された被焼成体の滞留時間(焼成時間)を調節しながら焼成するようになる。
【0026】
また、前記発熱体の流入口側には、前記発熱体に被焼成体を自動供給するための被焼成体供給装置が連結され、前記発熱体が回転して被焼成体を焼成する工程中でも、発熱体への被焼成体の移送と発熱体からの焼成が完了した被焼成体の排出が連続的に行われながら焼成する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した用に、本発明によれば、第一に、発熱体が360°回転しながらマイクロ波が照射されるので、発熱体の全体に均一な温度上昇による均一な温度分布が得られるため、局部的な熱爆炎が生じず、所望の製品(生石灰)の均一な焼成率が得られる。
【0028】
第二に、焼成空間を提供する発熱体が360°回転するので、発熱体の内部に配置された被焼成体が発熱体の内周面に直接接触した状態で熱を伝達され、焼成温度を高くすることができ、温度を所望の焼成温度により近く維持することができるため、焼成率とエネルギー効率が向上する。
【0029】
第三に、被焼成体の大きさに応じて発熱体の回転速度を調節することにより、被焼成体の滞留時間(焼成時間)を自由に制御することができるため、被焼成体の大きさに関わらず均一な焼成が得られる。
【0030】
第四に、焼成中、発熱体への被焼成体の投入と排出が連続的に行われるので、製品(生石灰)の量産に能動的に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のバッチ式(固定式)マイクロ波焼成炉を示した概念図である。
【図2】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉を示した側面図である。
【図3】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉を示した正面図である。
【図4】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉のキャビティに設置された発熱体と発熱体回転装置の結合関係を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施例による発熱体の傾斜した構造を説明するための概念図である。
【図6】本発明の一実施例による発熱体の投入口に耐火物カバー体が結合された状態を示した部分斜視図である。
【図7】本発明の一実施例による発熱体をガイドローラが支持している構造を示した側断面図及び正断面図である。
【図8】本発明の一実施例による発熱体をガイドローラが支持している構造を示した側断面図及び正断面図である。
【図9】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の構成を示したシステムブロック図である。
【図10】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法を示したフローチャートである。
【図11a】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図11b】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図11c】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図12a】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図12b】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図12c】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図13】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図14】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図15a】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図15b】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図15c】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図15d】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図16a】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図16b】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図16c】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図16d】本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図17a】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図17b】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図17c】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図18a】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図18b】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図18c】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図19】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図20】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図21a】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図21b】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図21c】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図21d】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図22a】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図22b】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図22c】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【図22d】従来のバッチ式マイクロ波焼成炉の焼成方法によって製造された生石灰または軽焼白雲石のXRDグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に基づき、本発明について詳述する。
【0033】
ここで、本明細書及び請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的または辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念として解釈されなければならない。
【0034】
以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「長手方向」、またはこれらに相当する用語は、添付図面において図示された方向に基づくものである。
【0035】
また、以下に説明する焼成の対象となる石灰石、方解石、白雲石等の炭酸塩鉱物の粉体については、これらを統合する用語として「被焼成体」を用いる。
【0036】
図2は、本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の全体構造を示した側面図であり、図3は、本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉の全体構造を示した正面図であり、図4は、本発明の一実施例による回転式マイクロ波焼成炉のキャビティに設置された発熱体と発熱体回転装置の結合関係を示した断面図である。
【0037】
図2〜図4に示すように、本発明によるマイクロ波焼成炉100は、マイクロ波が照射される密閉空間を形成するキャビティ10と、キャビティ10の内部に設置され、マイクロ波の照射によって自己発熱し、その内部に装入された被焼成体の焼成空間(焼成室31)を提供する発熱体30と、キャビティ10の外部に設置され、キャビティ10の内部にマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置20と、を備える。
【0038】
このように構成された本発明の一実施例は、発熱体30が回転する状態でマイクロ波を照射し、被焼成体を連続的に焼成する回転式マイクロ波焼成炉を提供する。
【0039】
このため、本発明は、発熱体30をキャビティ10の内部に回転可能に設置し、発熱体30の一端には発熱体30の回転力を提供する発熱体回転装置50が、発熱体30の他端には発熱体30に被焼成体を連続的に供給する被焼成体供給装置40が、キャビティ10の外側にそれぞれ設置される。
【0040】
ここで、被焼成体供給装置40、キャビティ10、及び発熱体回転装置50は、地面に設置され、一定の高さを有する四角形のベースフレーム70の上部に、ベースフレーム70の長手方向に、すなわち、図2において左側から右側に順次連結設置される。
【0041】
ベースフレーム70は、被焼成体供給装置40が設置される一側(図2において左側)から、発熱体回転装置50が設置される他側(図2において右側)へ行くほど高さが低くなる傾斜構造を有する。
【0042】
これにより、ベースフレーム70の上部に設置される被焼成体供給装置40と、キャビティ10と、発熱体回転装置50とは、全体的に被焼成体供給装置40から発熱体回転装置50へ行くほど高さが低くなる傾斜構造となり、また、キャビティ10の内部に設置された発熱体30も、傾斜して設置される。
【0043】
ベースフレーム70の内部の一側には、マイクロ波を発生するマグネトロン21等に電源を供給するための電源供給装置71が設置され、他側には、焼成が完了した被焼成体を回収する回収筒72が設置される。また、ベースフレーム70の底面のそれぞれの角には、焼成炉装置の全体を移動可能なように回転するローラ73が設置される。
【0044】
キャビティ10は、マイクロ波が照射される密閉した空間であり、ベースフレーム70の中央上部に設置され、全体として一定の長さを有し、中空の直方体状であり、ステンレス鋼等の金属で形成される。また、キャビティ10の内面には、マイクロ波の反射効率が向上するように反射層が形成されることが好ましい。
【0045】
また、キャビティ10は、全体として密閉した構造をなし、被焼成体供給装置40の移送管42、発熱体回転装置50の回転軸51、マイクロ波発生装置20から発生するマイクロ波を導入する導波管23、及び発熱体30で焼成が完了した被焼成体が外部に排出されるように案内する排出管74がそれぞれ貫設されるように複数の貫通孔が形成される。
【0046】
発熱体30は、キャビティ10の内部に設置され、焼成時、その内部に被焼成体が配置され、被焼成体が焼成される焼成空間、すなわち、焼成室31を提供する。発熱体30は、一定の長さを有し、中空の円筒状であり、キャビティ10の内部に回転可能に設置される。
【0047】
図5は、本発明の一実施例による発熱体の傾斜した構造を説明するための概念図であり、図6は、本発明の一実施例による発熱体の投入口に耐火物カバー体が結合された状態を示した部分斜視図である。
【0048】
図5を参照すると、発熱体30は、上述したように、全長において、水平面を基準として一定の角度で傾斜して設置される。より詳しくは、発熱体30は、被焼成体が供給される投入口33から焼成が完了した被焼成体が排出される排出口34へ行くほど下方に傾斜して設置される。
【0049】
このように、本発明の一実施例では、発熱体30が一定の角度だけ傾斜したまま回転しながら、マイクロ波の照射によって自己発熱し、その内部に収容された被焼成体を焼成する回転式焼成方式であり、発熱体30の内部に流入した被焼成体の排出は、発熱体30の投入口33と排出口34までの高低差と、発熱体30の回転によって行われる。
【0050】
発熱体30の傾斜角度は3°〜5°である。傾斜角度は、発熱体30の内部に装入された被焼成体が、発熱体30の端部に位置した排出口34へ重力によって自由落下することを誘導するために設けられる。傾斜角度として上記の範囲が望ましいのは、傾斜角度が3°よりも小さい場合は自由落下を誘導し難く、また5°よりも大きい場合は後述するように発熱体の回転速度による焼成時間(発熱体の内部における被焼成体の滞留時間)の制御が難しくなるという問題があるためである。また、傾斜角度が5°よりも大きくなると、マイクロ波発生装置からのマイクロ波の照射距離を維持し難くなり、装置全体の規模が大きくなるという問題も生じる。
【0051】
また、発熱体30の内面には、発熱体30の投入口33から排出口34の方向に下向き傾斜した螺旋状溝35が、発熱体30の周方向に連続的に形成されている。かかる螺旋状溝35は、発熱体30の回転時に被焼成体が螺旋状溝35に引っ掛かることによって、被焼成体の排出口34の方向への流動性を向上させ、被焼成体の排出をより円滑にすることができる。
【0052】
発熱体30は、マイクロ波の照射によって自己発熱する材質である炭化ケイ素(SiC)または窒化ケイ素(Si)などからなる。
【0053】
このように、本発明の一実施例では、被焼成体の焼成室31を提供する発熱体30が、キャビティ10の内部において傾斜したまま回転可能に設置されることにより、発熱体30の内部に装入された被焼成体が発熱体30の内壁面に常時接触した状態で熱伝達が行われ、従来の発熱体が固定された方式に比べ焼成温度を向上させることができるという利点がある。
【0054】
特に、発熱体30が360°回転しながら発熱体30の全部にマイクロ波が均一に照射されるので、発熱体30の全体に均一な温度分布が得られ、発熱体の一部で温度が異常に上昇する熱爆炎が生じず、被焼成体の均一な焼成が行われる。
【0055】
一方、図6に示すように、発熱体回転装置50側と連結される発熱体の排出口34には、発熱体30の開放した端部をカバーするとともに発熱体回転装置50の回転軸51と結合されるカバー体36が設けられる。
【0056】
また、図7に示すように、カバー体36は、前面に発熱体が挟まれる段差付き収容溝36aが形成され、後面に回転軸51が挿入結合される軸ハブ36bが突設された構造を有する。発熱体30は、収容溝36aの大径部まで挟まれた状態で結合される。発熱体30が挟まれていない収容溝36aの小径部側には、その周方向に複数の排出孔36cが所定の間隔で穿孔され、焼成が完了した被焼成体は、この排出孔36cから、後述する断熱体80に排出される。
【0057】
ここで、カバー体36は、その材質が耐火物からなり、発熱体の熱が回転軸に伝導されることを防止する。
【0058】
また、図7及び図8に示すように、発熱体30の下部の両側左右には、発熱体30の外周面と接触して発熱体30の荷重を支持するとともに、発熱体30の円滑な回転を助けるための一対のガイドローラ83が、発熱体30の中央を基準として前後に所定の間隔を置いてそれぞれ設置される。
【0059】
ガイドローラ83は、発熱体30で発生する熱によって損傷することを防止するために耐火物からなることが望ましい。
【0060】
かかるガイドローラ83は、発熱体30の長さに応じて、異なる数だけ設置されうる。例えば、発熱体30の長さが比較的長い場合には、一対のガイドローラ83が発熱体30の長手方向に所定の間隔を置いて複数設置されてもよい。発熱体30の長さが短い場合は、発熱体30の中央部に一対のガイドローラ83のみが設置されてもよい。
【0061】
ここで、ガイドローラ83は、断熱体80の内面に固定支持されるブラケット81を水平方向に貫通する支持軸82を中心として回転可能に設置される。
【0062】
一方、図2及び図4に示すように、発熱体30とキャビティ10との間には、発熱体30の全体を取り囲み、中空の断面四角状の断熱体80が設置される。ここで、断熱体80は、マイクロ波を透過しながら、発熱体30で発熱した熱がキャビティ10の外部に放出されることを防止する。
【0063】
ここで、断熱体80は、全体として密閉した構造をなしている。発熱体回転装置50の回転軸51が貫通する孔と、被焼成体供給装置40の移送管42が貫通する孔とが、断熱体80の両端にそれぞれ形成されている。特に、カバー体36の排出孔36cが形成された位置に対応する位置には、カバー体36の排出孔36cから排出される被焼成体をキャビティ10の外部に排出するための排出孔80aが形成されており、この排出孔80aには、被焼成体を案内してベースフレーム70に設けられた被焼成体回収筒72まで排出するための排出管74が連結される。
【0064】
被焼成体供給装置40は、図2に示すように、被焼成体が投入貯蔵されるホッパー41と、一端がホッパー41の下部に連結され、他端がキャビティ10の内部に貫通され、発熱体30の投入口33側に連結設置されてホッパー41から供給される被焼成体を発熱体30の内部に移送するための移送経路を提供する移送管42と、移送管42の内部に回転可能に設置されるとともに発熱体30の投入口側まで長く設置された移送スクリュー43と、移送スクリュー43の回転力を提供するモータ44と、を備えて構成される。
【0065】
移送管42が連結されるホッパー41の下部には、外周面に複数のブレード45aが一定の間隔で設けられた軸構造物45が回転可能に設置される。この際、軸構造物45に設けられたブレード45aは、軸構造物45の回転によって、移送管42の上部に積載された被焼成体をかき回し、移送管42の内部、すなわち移送スクリュー43への被焼成体の供給を円滑にする。
【0066】
移送スクリュー43は、一端がベアリングで支持され、回転可能な構造で移送管42の内部に設置される。移送スクリュー43の端部には、第1のスプロケット(図示せず)が設置されており、モータ44の回転軸に設けられたスプロケット(図示せず)とチェーンで連結されて回転力を伝達される。
【0067】
一方、移送スクリュー43の端部には、第2のスプロケット(図示せず)がさらに設置されており、ホッパー41の下端に連結された軸構造物45の端部に設置されたスプロケット(図示せず)ともチェーンで連結されている。
【0068】
つまり、図示された例では、モータ44の回転によって、移送スクリュー43と、これと電動可能に連結された軸構造物45が一緒に回転する構造になっている。
【0069】
発熱体回転装置50は、図2及び図4に示すように、一端がキャビティ10の内部に貫通されて発熱体30のカバー体36と軸結合される回転軸51と、回転軸51に回転力を提供するモータ52と、回転軸51の回転を円滑にするとともに回転軸51を支持固定する軸受ベアリング53と、を備えて構成される。
【0070】
ここで、モータ52による回転軸51の動力伝達は、回転軸51とモータ52軸にそれぞれ設けられたスプロケット51a、52aと、各スプロケット51a、52aを連結するチェーンの構造で行われる。
【0071】
軸受ベアリング53は、複数個が、所定の間隔でベースフレーム70の上部に設置されるモータ内蔵ボックス75の上端に設置される。
【0072】
マイクロ波発生装置20は、図2に示すように、キャビティ10の下端に設けられた導波管23の端部に連結された密閉ボックスに内蔵され、実質的にマイクロ波を発生するマグネトロン21と、マグネトロン21に電気的に連結され、マグネトロン21に電源を供給するマイクロ波電源供給装置22とからなる。
【0073】
本発明では、マグネトロン21が複数個(4個)設けられ、複数のマグネトロン21は、所定の間隔を置いてキャビティ10の下部側のベースフレーム70に支持されて設置される。
【0074】
ここで、マグネトロンの構造及び照射原理は、従来公知の技術が用いられうるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
一方、本発明において、被焼成体供給装置40の移送管42と、発熱体回転装置50の回転軸51と、被焼成体の外部排出を案内する排出管74とが貫通設置されるキャビティ10の各連結部分には、キャビティ10の内部に照射されるマイクロ波と、発熱体30で発熱される熱とがキャビティ10の外部に放出されることを遮断するための遮蔽部材11a、11b、11cが設置される(図2参照)。
【0076】
また、ベースフレーム70の上部には、焼成炉の全体に電源を印加するための電源部と、被焼成体の種類及び大きさ、焼成時間、マイクロ波の照射強度、及び照射時間等を入力する入力部と、入力部の入力データからこれに該当する駆動部を制御するための制御部60とが内蔵されたコントロールボックス90が設置される(図3参照)。
【0077】
ここで、制御部60は、図9に示すように、使用者が、入力部61から被焼成体の種類及び大きさ、焼成時間、マイクロ波の照射強度、及び照射時間等を入力すると、入力されたデータに応じて、発熱体回転装置50のモータ52、被焼成体供給装置のモータ44、及びマイクロ波発生装置20のマグネトロン21の各駆動部62を制御し、被焼成体の種類及び大きさに基づく発熱体30の回転速度の調節によって、発熱体30の内部に配置された被焼成体の滞留時間(焼成時間)を調節するとともに、発熱体30の内部に投入される被焼成体の量とマイクロ波の照射強度および照射時間とを制御する。
【0078】
以下、上記のように構成される回転式マイクロ波焼成炉を用いた焼成方法について説明する。
【0079】
図10は、本発明による焼成方法を示すフローチャートである。
【0080】
まず、ホッパーに被焼成体を供給する(ステップS10)。ここで、被焼成体は、石灰石、白雲石、及び方解石等の炭酸塩鉱物の粉体であり、被焼成体の粒子の大きさは、得ようとする生石灰(CaO)の種類及び品質によって異なる。
【0081】
次に、ホッパー41に供給された被焼成体は、移送管42の内部に投入され、移送スクリュー43の回転によって発熱体の内部に供給される(ステップS20)。この際、移送スクリュー43からの被焼成体の供給は、発熱体の内部の全体空間の10〜20%程度が満たされるように順次供給することが望ましい。
【0082】
これは、発熱体30の内部に被焼成体が20%以上まで満たされると、炭酸塩鉱物の焼成温度及び焼成時間による脱炭酸化反応に伴う二酸化炭素の排出によって内部分圧が高くなり、脱炭酸化反応がうまく行かず、また、10%以下しか満たされないと、炭酸塩鉱物の脱炭酸化反応に伴う二酸化炭素の排出によって内部分圧が低くなり、二酸化炭素の排出が容易になって生石灰(CaO)の表面が過少の生石灰となるためである。
【0083】
次に、発熱体30は、キャビティ10の内部において、3°〜5°の範囲で傾斜したまま回転する。この状態で、マイクロ波を発熱体30に照射し、発熱体30の発熱により、その内部に装入された被焼成体を焼成する(ステップS30)。
【0084】
次に、制御部60によって、発熱体30の内部に装入された被焼成体の大きさに応じて発熱体30の回転速度(焼成時間)を調節する(ステップS40)。
【0085】
ここで、発熱体30の傾斜角度の範囲内において、被焼成体が自由落下しながら排出されるまでの被焼成体の滞留時間(焼成時間)を被焼成体の大きさによる発熱体の回転速度によって調節することができる。発熱体30の回転速度が速いと、滞留時間(焼成時間)が短くなり、回転速度が遅いと、滞留時間(焼成時間)が長くなる。
【0086】
例えば、被焼成体、すなわち、炭酸塩鉱物の大きさが大塊(120〜80mm)である場合、回転速度を緩め、焼成時間を長く維持して焼成し(6〜24時間程度)、炭酸塩鉱物の大きさが中塊(80〜45mm)である場合、回転速度を大塊の回転速度よりも速くし、焼成時間を大塊の焼成時間よりも短く維持して焼成し(6〜3時間)、炭酸塩鉱物の大きさが小塊(45〜20mm)である場合、焼成時間を中塊の回転速度よりもさらに速くし、焼成時間を中塊の焼成時間よりも極めて短く維持して焼成し(3〜2時間)、炭酸塩鉱物の大きさが小粒(20〜5mm)である場合、小塊の回転速度よりもさらに速くし、焼成時間を短く維持して焼成する(2〜1時間)ことができる。
【0087】
つまり、被焼成体(炭酸塩鉱物)の大きさが、大塊、中塊、小塊、小粒の大きさである場合に応じて発熱体の回転速度を調整して焼成時間を異ならせることにより、それぞれの大きさに合わせて焼成することができる。
【0088】
最後に、発熱体の回転速度に合う焼成時間(滞留時間)で焼成が完了した被焼成体は、発熱体の排出口から排出されるとともに、排出管からキャビティの外部に設けられた回収筒に貯蔵される(ステップS50)。
【0089】
上記の方法では、発熱体が回転しながら被焼成体を焼成する工程中でも、発熱体への被焼成体の移送と、発熱体からの焼成が完了した被焼成体の排出が連続的に行われる。
【0090】
このように、本発明の一実施例では、被焼成体の焼成空間を提供する発熱体が、キャビティの内部において傾斜したまま回転可能に設置されることにより、被焼成体の大きさに応じて回転速度を調節しながら焼成時間を維持することができる。これにより、被焼成体(炭酸塩鉱物)の大きさに制限されず、所望の製品(生石灰)が均一な焼成率で得られる。
【0091】
以下、本発明における回転式マイクロ波焼成炉による生石灰の製造と関連した各実施例と、各実施例と同一の条件で実験した従来のバッチ式(固定式)マイクロ波焼成炉の比較例を互いに比較しながら説明する。
【0092】
これに先立って、炭酸塩鉱物の焼成による焼成率について簡単に説明すると、焼成率とは、炭酸塩鉱物が熱分解されてCaO(生石灰)となるもので、炭酸塩鉱物のうち石灰石、方解石は、CaCOで構成され、純粋な石灰石、方解石は、CaO56%、CO44%で構成される。
【0093】
しかし、自然界に存在する石灰石、方解石は、不純物を含有する。不純物が1〜2%であるものは高品位の生石灰、方解石であって、CaOは55%〜54%である。不純物が3〜4%であるものは中品位の石灰石、方解石であって、CaOは53%〜52%である。不純物が4%以上であるものは低品位の石灰石、方解石であって、CaOは51%以下である。
【0094】
この石灰石、方解石の焼成率は、不純物を含めて、重量減少、すなわち、CaCOが950℃で脱炭酸化してCaOとなり、二酸化炭素は、100%が放出されると、焼成率は、100%である。言い換えれば、CaOが100%である。XRD分析によると、CaCOが一定の割合存在すると、未焼成(脱炭酸化反応が生じなかった石灰石、方解石)の石灰石、方解石が含有される。
【0095】
(式1)
焼成率(%)=焼成時損失したCOの重量/石灰石中のCOの初期重量×100
【0096】
しかし、回転式及び連続式では、上記の焼成率の式で求め難いので、XRD定量を行う。XRD定量分析によって分析されたCaO、CaCOが一定の%であれば、上記焼成率の式で求められた値とほぼ一致する。すなわち、焼成率が95%であれば、CaCOが5%程度未焼成のまま残る。
【0097】
これは、白雲石も同様である。ただし、白雲石は、CaCO、MgCOで構成された非金属鉱物である。純粋な白雲石は、CaO30.4%、MgO21.7%、CO47.9%である。熱分解されて800℃付近で、まずMgCOが脱炭酸化反応してCOを放出し、次に950℃の付近で熱分解されてCOを放出する。
【0098】
この場合も、上述と同様に、CaCOがXRD定量分析において残っていると、それは未焼成のまま残ったものである。
【0099】
本発明の実験例1〜4に適用された各実施例と比較例の、生石灰、軽焼白雲石を製造することができる炭酸塩鉱物(石灰石、白雲石)の成分結果のXRFは、下記の表1の通りである。
【0100】
【表1】

【0101】
実験例1.生石灰の製造
図11a〜図11cは、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、石灰石25mmのもの(CaO:55%(a)、53%(b)、52%(c))を、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例1)。
【0102】
図17a〜図17cは、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、石灰石25mmのもの(CaO:55%(a)、53%(b)、52%(c))を焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例1)。
【0103】
図11a〜図11c及び図17a〜図17cのXRDグラフにおいて、X軸はX線回折によるCaCO、CaO、MgO等の結晶状による回折度であり、Y軸はCaCO、CaO、MgO等の結晶状による回折度(角度)の強度である。これは、図12〜図22のXRDグラフでも同一である。
【0104】
図11a〜図11c及び図17a〜図17cによる本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表2の通りである。
【0105】
【表2】

【0106】
表2の通り、石灰石53%の場合を除いては、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも優れていることが分かる。
【0107】
実験例2.生石灰の製造
図12a〜図12cは、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、石灰石25mmのもの(CaO:55%(a)、53%(b)、52%(c))を、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例2)。
【0108】
図18a〜図18cは、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、石灰石25mmのもの(CaO:55%(a)、53%(b)、52%(c))を焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例2)。
【0109】
図12a〜図12c及び図18a〜図18cによる本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表3の通りである。
【0110】
【表3】

【0111】
表3の通り、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも優れていることが分かる。特に、55%の石灰石の場合と53%の石灰石の場合、焼成率が100%であり、完全焼成が行われたことが分かる。
【0112】
実験例3.軽焼白雲石の製造
図13は、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、白雲石25mmの大きさのもの(CaO:33%、MgO:21%)を、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例3)。
【0113】
図19は、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、白雲石25mmの大きさのもの(CaO:33%、MgO:21%)を焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例3)。
【0114】
図13及び図19による本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表4の通りである。
【0115】
【表4】

【0116】
表4の通り、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも優れていることが分かる。
【0117】
実験例4.軽焼白雲石の製造
図14は、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、白雲石25mmの大きさのもの(CaO:33%、MgO:21%)を、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例4)。
【0118】
図20は、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、白雲石25mmの大きさのもの(CaO:33%、MgO:21%)を焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例4)。
【0119】
図14及び図20による本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表5の通りである。
【0120】
【表5】

【0121】
表5の通り、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも優れていることが分かる。
【0122】
本発明の実験例5及び6に適用された各実施例と比較例による炭酸塩鉱物のうち方解石の20〜100メッシュ分級は、下記の表6の通りである。
【0123】
【表6】

【0124】
実験例5.生石灰の製造
図15a〜図15dは、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、方解石(CaO54%)の20〜100メッシュ分級の方解石のうち、20メッシュ、35メッシュ、65メッシュ、100メッシュのものを、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例5)。
【0125】
図21a〜図21dは、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間30分で、方解石(CaO54%)の20〜100メッシュ分級の方解石のうち、20メッシュ、35メッシュ、65メッシュ、100メッシュのものを焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例5)。
【0126】
図15a〜図15d及び図21a〜図21dによる本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表7の通りである。
【0127】
【表7】

【0128】
表7の通り、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、20〜100メッシュ分級の方解石の全体において、焼成率100%に達することが分かり、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも遥かに優れていることが分かる。
【0129】
実験例6.生石灰の製造
図16a〜図16dは、本発明の回転式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、方解石(CaO54%)の20〜100メッシュ分級の方解石のうち、20メッシュ、35メッシュ、65メッシュ、100メッシュのものを、発熱体の傾斜角度を3°として回転した状態で焼成して製造された生石灰のXRD図である(実施例6)。
【0130】
図22a〜図22dは、従来の固定式マイクロ波焼成炉による焼成温度950℃、焼成時間60分で、方解石(CaO54%)の20〜100メッシュ分級の方解石のうち、20メッシュ、35メッシュ、65メッシュ、100メッシュを焼成して製造された生石灰のXRD図である(比較例6)。
【0131】
図16a〜図16d及び図22a〜図22dによる本発明と比較発明の実験結果である焼成率は、下記の表8の通りである。
【0132】
【表8】

【0133】
表8の通り、本発明の回転式マイクロ波焼成炉の焼成率は、20〜100メッシュ分級の方解石の全体において、焼成率100%に達することが分かり、既存の固定式マイクロ波焼成炉の焼成率よりも遥かに優れていることが分かる。
【0134】
結論として、本発明の回転式マイクロ波焼成炉における石灰石及び白雲石の焼成によるその粒子の大きさにかかわらず、従来のバッチ式マイクロ波焼成炉による焼成に比べて、石灰石及び軽焼白雲石の焼成率が顕著に向上していることが分かる。
【0135】
以上、説明した本発明は、上述した実施例及び添付図面に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を外れない範囲内において様々な置換、変形及び変更が可能であることは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって明白であろう。
【符号の説明】
【0136】
10 キャビティ
11a,11b,11c 遮蔽部材
20 マイクロ波発生装置
21 マグネトロン
23 導波管
30 発熱体
31 焼成室
35 螺旋状溝
36 カバー体
40 被焼成体供給装置
41 ホッパー
42 移送管
43 移送スクリュー
44 モータ
50 発熱体回転装置
51 回転軸
52 モータ
53 軸受ベアリング
60 制御部
70 ベースフレーム
72 回収筒
74 排出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用いて被焼成体を焼成するマイクロ波焼成炉において、
マイクロ波が照射される密閉した空間を形成するキャビティ10と、
前記キャビティ10の外側に設置され、前記キャビティ10の内部にマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置20と、
内部の焼成室31に前記被焼成体が収容され、前記キャビティ10の内部に傾斜したまま回転可能に設置され、前記傾斜によってより高くなっている一端には前記被焼成体が投入される投入口が形成され、前記傾斜によって低くなっている他端には前記被焼成体が排出される排出口が形成され、前記マイクロ波の照射によって発熱して前記焼成室31に収容された前記被焼成体を焼成する発熱体30と、
前記キャビティ10の外側に設置され、前記発熱体30の前記投入口側に連結され、前記発熱体30に前記被焼成体を順次供給する被焼成体供給装置40と、
前記キャビティ10の外側に設置され、前記発熱体30の前記排出口側に連結され、前記発熱体30の回転のための動力を提供する発熱体回転装置50と、
前記被焼成体供給装置40による前記被焼成体の供給量と前記発熱体回転装置50による前記発熱体30の回転速度とを制御するための制御部60と、
を備えたことを特徴とする回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項2】
前記発熱体30の傾斜角度が3°〜5°であることを特徴とする請求項1に記載の回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項3】
前記発熱体30は、円筒形状を有し、前記円筒形状の内周面には、前記発熱体30の回転時、内部に収容された被焼成体を移送排出するように螺旋状溝35が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項4】
前記キャビティ10の内部と前記発熱体30との間には、前記マイクロ波が透過されると共に、前記発熱体30から発生する熱の放出を遮断する断熱体80がさらに設けられることを特徴とする請求項1に記載の回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項5】
前記発熱体回転装置50は、
一端がキャビティ10の内部に貫通され、前記発熱体30の投入口側と連結された回転軸51と、
前記回転軸51に回転力を提供するモータ52と、
前記回転軸51の下端に設置され、回転軸51の回転を円滑にする軸受ベアリング53と、
を備え、
前記発熱体回転装置50に連結される前記発熱体30の投入口33側には、耐火物材質からなり、前記発熱体30の端部をカバーすると共に、前記発熱体回転装置50の回転軸51と結合する耐火物カバー体36が設けられ、
前記耐火物カバー体36には、焼成が完了した被焼成体が前記断熱体80側に排出されるように、周方向に複数の排出孔36cが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項6】
前記発熱体30の下部の両側には、発熱体30の外周面と接触して発熱体30の荷重を支持するとともに発熱体30の回転を円滑にする一対のガイドローラ83がさらに設けられることを特徴とする請求項1に記載の回転式マイクロ波焼成炉。
【請求項7】
マイクロ波を用いて被焼成体を焼成するマイクロ波焼成方法において、
前記被焼成体が配置される焼成空間を形成する発熱体が、所定の角度だけ傾斜したまま回転した状態で、前記発熱体にマイクロ波を照射して前記被焼成体を焼成することを特徴とする回転式マイクロ波焼成方法。
【請求項8】
前記発熱体の傾斜によってより高くなっている一端には、前記被焼成体が流入する流入口が形成され、前記発熱体の傾斜によって低くなっている他端には、前記被焼成体が排出される排出口が形成され、前記発熱体の回転速度の調節によって、前記発熱体の内部に装入された前記被焼成体の滞留時間(焼成時間)を調節しながら前記マイクロ波を照射することを特徴とする請求項7に記載の回転式マイクロ波焼成方法。
【請求項9】
前記被焼成体は、前記発熱体の内部に形成された螺旋状溝に沿って排出されることを特徴とする請求項8に記載の回転式マイクロ波焼成方法。
【請求項10】
前記発熱体の前記排出口をカバーするとともに前記発熱体を回転させるための回転軸と結合される耐火物カバー体に、前記被焼成体が排出される排出孔が形成され、焼成が完了した前記被焼成体が前記排出孔から排出されることを特徴とする請求項8に記載の回転式マイクロ波焼成方法。
【請求項11】
前記発熱体の前記流入口側には、前記発熱体に前記被焼成体を自動供給するための被焼成体供給装置が連結され、前記発熱体が回転して前記被焼成体を焼成する工程中でも、前記発熱体への前記被焼成体の移送と前記発熱体からの焼成が完了した被焼成体の排出が連続的に行われることを特徴とする請求項8に記載の回転式マイクロ波焼成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図15d】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図21d】
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【図22a】
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【図22b】
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【図22c】
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【図22d】
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【公開番号】特開2012−220183(P2012−220183A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113106(P2011−113106)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(511123474)株式会社柳林イーエヌジー (1)
【Fターム(参考)】