説明

回転式摩擦ダンパ

【課題】安定で比較的大きな摩擦力を得ることができ、而して、小型化を図ることができる回転式摩擦ダンパを提供すること。
【解決手段】回転式摩擦ダンパ1は、円筒状の内周面2で回転軸3の円筒状の外周面4にR方向に回転しないように固定される内筒本体5及び内筒本体5の円筒状の外周面6から径方向外方向に突出した円環状の突起7を一体的に有した合成樹脂製の内筒8と、内筒8の突起7を受容すると共に径方向外方向に凹んだ凹所9を有しており、凹所9を規定すると共に突起7の外面10に接触する凹所面11を内周面12に有した合成樹脂製の外筒13とを具備しており、外筒13は、内周面12で内筒8をR方向に回転自在に支持する一方、その円筒状の外周面14でハウジング15の内周面16にR方向に回転しないように嵌合、固定されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング軸、ドアーチェック、トランク若しくはボンネットのヒンジ等の回転軸の回転に対して摩擦による減衰を与える回転式摩擦ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
回転式ダンパとしては、粘性ダンパといわれる流体を用いたもの、摩擦を用いたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−336523号公報
【特許文献2】特開平9−42271号公報
【特許文献3】特開平7−26825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体を用いた回転式ダンパは、大きな減衰を確保できる一方、流体の漏出というシール性の問題及び温度の相違により減衰が大きく異なるという温度依存性の問題がある。
【0005】
摩擦を用いた回転式ダンパは、シール性を考慮する必要がない上に、減衰に関して温度変化の影響を受け難いが、特許文献1に記載の回転式摩擦ダンパでは、比較的大きな摩擦面を必要とする結果、小型化を図ることが困難であり、特許文献2及び3に記載の回転式摩擦ダンパでは、安定な摩擦力を得ることが困難である。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、安定で比較的大きな摩擦力を得ることができ、而して、小型化を図ることができる回転式摩擦ダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転式摩擦ダンパは、径方向に突出した突起及びこの突起を受容すると共に径方向に凹んだ凹所のうちの一方を有すると共に回転軸に固定される合成樹脂製の内筒と、径方向に突出した突起及びこの突起を受容すると共に径方向に凹んだ凹所のうちの他方を有すると共に内筒を回転自在に支持する一方、ハウジングに固定される合成樹脂製の外筒とを具備しており、突起は、その外面で凹所を規定する凹所面に接触している。
【0008】
本発明の回転式摩擦ダンパによれば、径方向に突出した突起とこの突起を受容する凹所とを具備し、突起の外面は、凹所を規定する凹所面に接触しているために、安定で比較的大きな摩擦力を得ることができ、而して、小型化を図ることができる。
【0009】
内筒及び外筒の形成材料としての合成樹脂は、耐摩耗性に優れ、安定した摩擦力が得られる材料が好ましく、具体的には、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂のうちの少なくとも一つを含む合成樹脂等を挙げることができる。これら合成樹脂には各種充填材を配合してもよい。そして、内筒及び外筒を形成する合成樹脂の組合せ、配合する充填材を変えることにより、得られる摩擦特性を調整できる。
【0010】
本発明では、内筒は、径方向外方向に突出した突起を具備し、外筒は、この突起を受容すると共に径方向外方向に凹んだ凹所を具備していてもよく、これに代えて又はこれと共に、外筒は、径方向内方向に突出した突起を具備し、内筒は、この突起を受容すると共に径方向内方向に凹んだ凹所を具備していてもよい。
【0011】
好ましい例では、突起は、台形状(楔状)の断面を有した少なくとも一つの円環状の突部を有しており、凹所は、突部に相補的な形状を有している円環状の凹部を有している。このような突部は、一つでもよいが、軸方向に沿って配列された複数個であってもよく、複数個の突部から突起がなっている場合には、凹部もまた、各突部を受容するために、軸方向に沿って配列された複数個であるとよい。
【0012】
一つの例では、外筒は、軸方向において二つに分割されており、二つに分割されて軸方向の一方の分割体と軸方向の他方の分割体とからなる外筒において、当該一方の分割体と他方の分割体とは、その分割面で互いに対面されて連結手段により互いに連結されており、この例の場合、好ましくは、各分割体は、その分割面側に鍔部を有しており、連結手段は、両鍔部を弾性的に抱持する拡径自在な円環体を具備している。
【0013】
他の一つの例では、外筒は、周方向において少なくとも二つに分割されており、少なくとも二つに分割されて一方の分割体と他方の分割体とからなる外筒において、当該一方の分割体と他方の分割体とは、その分割面で互いに対面されて連結手段により互いに連結されており、この例の場合、好ましくは、各分割体は、外周面に周方向に伸びた少なくとも一つの溝を有した半円筒部を具備しており、連結手段は、半円筒部の夫々の溝を通って周方向に伸びた弾性環状体を具備している。
【0014】
分割体を介して内筒を締め付ける弾性環状体は、好ましくは、天然ゴム製又は合成ゴム製のいわゆるOリングであってもよく、その他の弾性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばポリエステルエラストマーであってもよい。
【0015】
他の好ましい例では、突起は、螺旋状突部を有しており、凹所は、螺旋状突部を受容する螺旋状凹部を有しており、外筒の内周面は、その外周面に対して軸方向に移動自在となっている。
【0016】
斯かる螺旋状突部を有した突起と螺旋状突部を受容する螺旋状凹部を有した凹所とを具備している場合には、螺旋状突部の外面と螺旋状凹部を規定する凹所面との摩擦により大きな摩擦力を得ることができ、而して、より小型化を図ることができて好ましい。
【0017】
螺旋状突部の好ましい例は、雄ねじであって、螺旋状凹部の好ましい例は、雄ねじに螺合する雌ねじである。
【0018】
内周面が外周面に対して軸方向に移動自在となっている外筒の好ましい一つの例は、内周面で内筒を回転自在に支持する内径側の合成樹脂製の筒体と、この筒体の外周面に少なくとも軸方向に滑り移動自在に接触する内周面を有すると共にハウジングに固定される外周面を有した外径側の合成樹脂製の筒体とを具備している。
【0019】
斯かる外周面と内周面とで軸方向に滑り接触する内径側及び外径側の筒体を具備した外筒によれば、滑り接触する部位での摩擦力を利用できるために、更により大きな摩擦力を得ることができ、而して、更により小型化を図ることができて好ましい。
【0020】
好ましい例では、内径側の筒体は、一方の端面から軸方向に伸びた少なくとも一つのスリットを有しており、この場合、内径側の筒体は、外周面に周方向に伸びた少なくとも一つの環状溝を有しており、当該環状溝に装着されている弾性環状体により弾性的に縮径されるようになっているとよい。
【0021】
弾性環状体により弾性的に縮径されるようになっている内径側の筒体を具備していると、内径側の筒体の締め代をもって内筒を締め付けることができ、滑り接触する部位での摩擦力を大きくでき、したがって、更により大きな摩擦力を得ることができて、更により小型化を図ることができる。
【0022】
内径側の筒体を介して内筒を回転軸を締め付ける弾性環状体は、分割体を介して内筒を締め付ける弾性環状体と同様に、好ましくは、天然ゴム製又は合成ゴム製のいわゆるOリングであってもよく、その他の弾性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばポリエステルエラストマーであってもよい。
【0023】
斯かる弾性環状体は、外径側の筒体の内周面に軸方向に滑り移動自在に弾性接触するように、又は、これに代えて、外径側の筒体の内周面に非接触となるように、内径側の筒体の環状溝に装着されていてもよい。
【0024】
弾性環状体を外径側の筒体の内周面に弾性接触させると、弾性環状体と外径側の筒体との摩擦力を利用でき、これにより、更により大きな摩擦力を得ることができて、而して、更により小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定で比較的大きな摩擦力を得ることができ、而して、小型化を図ることができる回転式摩擦ダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施の形態の一例の図2に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の左側面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の内筒及び外筒の分解説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の円環体の説明図であって、(a)は正面説明図であり、(b)は(a)の右側面説明図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施の形態の他の例の図6に示すV−V線矢視断面図である。
【図6】図6は、図5に示す例の左側面説明図である。
【図7】図7は、図5に示す例の内筒の正面説明図である。
【図8】図8は、図5に示す例の回転式摩擦ダンパの正面説明図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施の形態の更に他の例の図10に示すX−X線矢視断面図である。
【図10】図10は、図9に示す例の左側面説明図である。
【図11】図11は、図9に示す例の外径側の筒体の斜視説明図である。
【図12】図12は、図9に示す例の外径側の筒体の右側面説明図である。
【図13】図13は、図9に示す例の内径側の筒体の正面説明図である。
【図14】図14は、図13に示す内径側の筒体の左側面説明図である。
【図15】図15は、図13に示す内径側の筒体の右側面説明図である。
【図16】図16は、図13に示す内径側の筒体の図14に示すXVI−XVI線矢視断面図である。
【図17】図17は、図9に示す例の内筒の正面説明図である。
【図18】図18は、本発明の好ましい実施の形態の更に他の例の説明図である。
【図19】図19は、図18に示す例の内径側の筒体及びこの筒体に装着された弾性環状体の正面説明図である。
【図20】図20は、本発明の好ましい実施の形態の更に他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0028】
図1から図4において、本例の回転式摩擦ダンパ1は、円筒状の内周面2で回転軸3の円筒状の外周面4に軸心Oの周りの方向、即ち回転方向であって周方向であるR方向に回転しないように固定される内筒本体5及び内筒本体5の円筒状の外周面6から径方向外方向に突出した円環状の突起7を一体的に有した合成樹脂製の内筒8と、内筒8の突起7を受容すると共に径方向外方向に凹んだ凹所9を有しており、当該凹所9を規定すると共に突起7の外面10に接触する凹所面11を内周面12に有した合成樹脂製の外筒13とを具備しており、外筒13は、内周面12で内筒8をR方向に回転自在に支持する一方、その円筒状の外周面14でハウジング15の内周面16にR方向に回転しないように嵌合、固定されるようになっている。
【0029】
突起7は、内筒本体5の外周面6に一体的に形成されていると共に台形状の断面を有した円環状の突部21を有しており、突部21は、一対の截頭円錐面22と、軸方向であるA方向に一対の截頭円錐面22に挟まれていると共に軸心Oと同心の中心を有する円筒面23とを具備しており、突起7の外面10は、これら一対の截頭円錐面22と円筒面23とからなっている。
【0030】
突部21を受容した凹所9は、突部21に相補的な形状を有している円環状の凹部25を有している。
【0031】
外筒13は、A方向において二つに分割されて一方の分割体31と他方の分割体32とからなっている。
【0032】
分割体31は、大径円筒状の外周面35及び円筒状の内周面36を有した大径の円筒部37と、小径円筒状の外周面38、A方向において内周面36に連接した截頭円錐状の内周面39及びA方向において内周面39に連接していると共に内周面36よりも大径の円筒状の内周面40を有した小径の円筒部41と、円筒部37の外周面35に設けられた円環状の大径の鍔部42と、円筒部41の外周面38に設けられた円環状の小径の鍔部43と、円筒部37の外周面35であって鍔部42のA方向の一方の端面44に設けられた突起部45とを一体的に具備しており、円筒部37の内周面36は、内筒本体5の外周面6にR方向に回転自在に接触しており、分割面となる円筒部41及び鍔部43のA方向の一方の端面46には円環状の凹所47が形成されており、A方向における円筒部37と鍔部43との間で円環状の凹所48が形成されている。
【0033】
突起部45は、ハウジング15の端面49に開口して当該ハウジング15の内周面16に形成された切欠き50に嵌合されており、突起部45の切欠き50への嵌合により、分割体31、延いては外筒13は、ハウジング15に対してR方向に回転しないようになっている。
【0034】
鍔部42、突起部45及び凹所47並びに凹所47に嵌合される円環状の突起部55を除いて分割体31と同様に形成されている分割体32は、大径円筒状の外周面56及び円筒状の内周面57を有した大径の円筒部58と、小径円筒状の外周面59、A方向において内周面57に連接した截頭円錐状の内周面60及びA方向において内周面60に連接していると共に内周面57よりも大径の円筒状の内周面61を有した小径円筒部62と、小径円筒部62の外周面59に設けられた円環状の鍔部63と、分割面となる小径円筒部62及び鍔部63のA方向の一方の端面64に設けられていると共に凹所47に嵌合された円環状の突起部55とを一体的に具備しており、円筒部58の内周面57は、内筒本体5の外周面6にR方向に回転自在に接触しており、端面64は端面46に接触しており、A方向における円筒部58と小径鍔部63との間で円環状の凹所65が形成されている。
【0035】
突部21の外面形状に相補的な形状を有している凹部25からなる凹所9を規定する凹所面11は、内周面39、内周面40、内周面60及び内周面61からなっており、回転式摩擦ダンパ1は、円筒部37の外周面35及び円筒部58の外周面56からなる外筒13の外周面14でハウジング15の内周面16にR方向に回転しないように嵌合、固定されるようになっている。
【0036】
分割面側である端面46及び64側に鍔部43及び63を夫々有する分割体31と分割体32とをその分割面であって互いに対面した端面46及び64で互いに接触させて連結する連結手段71は、両鍔部43及び63を弾性的に抱持する拡径自在な円環体72を具備している。
【0037】
突合せ端面73及び74を有する円環体72は、両鍔部43及び63の外周面を囲繞している板状円環部75と、板状円環部75の両縁に設けられていると共に凹所48及び65に配されて両鍔部43及び63を弾性的に挟持している一対の板状脚部76とを一体的に具備している。
【0038】
以上の回転式摩擦ダンパ1では、回転軸3のR方向の回転で内筒8もR方向に回転され、内筒8のR方向の回転で、ハウジング15に固定された外筒13の凹所面11を有する内周面12と内筒8の内筒本体5の外周面6並びに突起7の一対の截頭円錐面22及び円筒面23からなる外面10との間に滑り摩擦が生じて、この滑り摩擦でもって回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる。そして、回転式摩擦ダンパ1では、径方向に突出した突部21の外面10と突部21の外面10に接触する凹所面11とを具備しているために、滑り摩擦面を大きくできて回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる比較的大きな摩擦力を安定に得ることができ、而して、小型化を図ることができる。
【0039】
上記の回転式摩擦ダンパ1では、A方向において二つに分割された外筒13を用いたが、これに代えて、図5から図8に示すような、R方向において二つに分割された外筒81を用いてもよく、斯かる合成樹脂製の二つの分割体82及び83からなる外筒81において、これら分割体82及び83は、隙間84及び85を形成する二組の分割面86及び87で互いに対面されて近接されて連結手段88により互いに連結されている。
【0040】
図5から図8に示す回転式摩擦ダンパ1も、円筒状の内周面91で回転軸3の円筒状の外周面4にR方向に回転しないように固定される内筒本体92及び内筒本体92の円筒状の外周面93から径方向外方向に突出した円環状の突起7を有した合成樹脂製の内筒95と、内筒95の突起7を受容すると共に径方向外方向に凹んだ凹所96を有しており、凹所96を規定すると共に突起7の外面97に接触する凹所面98を内周面99に有した合成樹脂製の外筒81とを具備しており、外筒81は、内周面99で内筒95をR方向に回転自在に支持する一方、その外周面100でハウジング15の内周面16にR方向に回転しないように嵌合、固定されるようになっている。
【0041】
図5から図8において、突起7は、内筒本体92の外周面93に一体的に形成されていると共に台形状の断面を有した円環状の突部111を有しており、突部111は、突部21と同様に、一対の截頭円錐面112と、A方向に一対の截頭円錐面112に挟まれていると共に軸心Oと同心の中心を有する円筒面113とを具備しており、突部21よりもより楔状になっている突部111からなる突起7の外面97は、これら一対の截頭円錐面112と円筒面113とからなっている。
【0042】
突部111を受容した凹所96もまた、突部111に相補的な形状を有している円環状の凹部114を有している。
【0043】
分割体82は、半円筒状の外周面115及び半円筒状の内周面116を有した半円筒部117と、半円筒部117の外周面115に設けられた半円環状の鍔部118と、半円筒部117の外周面115であって鍔部118のA方向の一方の端面119に設けられた突起部120とを一体的に具備しており、半円筒部117は、外周面115にR方向に伸びていると共にA方向に離れて配列された半円環状の二つの溝125を有しており、内筒本体92の外周面93にR方向に回転自在に接触している半円筒部117の内周面116は、突部111からなる内筒95の突起7を受容する半円環状の凹部126を規定すると共に当該突部111の一対の截頭円錐面112及び円筒面113に接触する半円環状の凹所面127を有しており、凹所面127は、一対の半截頭円錐状の内周面128及び内周面128に挟まれて内周面128に連接していると共に内周面116よりも大径の半円筒状の内周面129を有している。
【0044】
突起部120は、ハウジング15の端面49に開口して当該ハウジング15の内周面16に形成された切欠き50に嵌合されており、突起部120の切欠き50への嵌合により、分割体82は、延いては外筒81は、ハウジング15に対してR方向に回転しないようになっている。
【0045】
分割体82と同様に形成された分割体83は、半円筒状の外周面135及び半円筒状の内周面136を有した半円筒部137と、半円筒部137の外周面135に設けられた半円環状の鍔部138と、半円筒部137の外周面135であって鍔部138のA方向の一方の端面139に設けられた突起部140とを一体的に具備しており、半円筒部137は、外周面135にR方向に伸びていると共にA方向に離れて配列された半円環状の二つの溝145を有しており、内筒本体92の外周面93にR方向に回転自在に接触している半円筒部137の内周面136は、突部111からなる内筒95の突起7を受容する半円環状の凹部146を規定すると共に当該突部111の一対の截頭円錐面112及び円筒面113に接触する半円環状の凹所面147を有しており、凹所面147は、一対の半截頭円錐状の内周面148及び内周面148に挟まれて内周面148に連接していると共に内周面136よりも大径の半円筒状の内周面149を有している。
【0046】
突起部140は、ハウジング15の端面49に開口して当該ハウジング15の内周面16に形成された他の切欠き150に嵌合されており、突起部140の切欠き150への嵌合により、分割体83は、延いては外筒13は、ハウジング15に対してR方向に回転しないようになっている。
【0047】
図5から図8に示す連結手段88は、半円筒部117及び137の夫々の溝125及び145を通ってR方向に伸びたOリングからなる弾性環状体155及び156を具備しており、弾性環状体155及び156は、半円筒部117及び137からなる外筒81を縮径させるように外筒81を弾性的に締め付けている一方、ハウジング15の内周面16により押圧されて当該内周面16に弾性的に接触している。
【0048】
而して、分割体82と分割体83とを具備した外筒81において、凹所96は、凹部114からなっており、凹部114は、凹部126と凹部146とからなっており、凹所面98は、凹所面127と凹所面147とからなっており、内周面99は、内周面116と内周面136とからなっており、外周面100は、外周面115と外周面135とからなっている。
【0049】
図5から図8に示す回転式摩擦ダンパ1でも、回転軸3のR方向の回転で内筒95もR方向に回転され、内筒95のR方向の回転で、ハウジング15に固定された外筒81の凹所面98を有する内周面99と内筒95の外周面93並びに一対の截頭円錐面112及び円筒面113からなる外面97との間に滑り摩擦が生じて、この滑り摩擦でもって回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる。そして、回転式摩擦ダンパ1では、径方向外方向に突出した突起7の外面97と突起7の外面97に接触すると共に径方向外方向に凹んだ凹所面98とを具備しているために、滑り摩擦面を大きくできて回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる比較的大きな摩擦力を安定に得ることができ、而して、小型化を図ることができ、しかも、弾性環状体155及び156は、半円筒部117及び137からなる外筒81を縮径させるように外筒81を弾性的に締め付けているために、滑り摩擦面を安定して確保できる。
【0050】
上記の回転式摩擦ダンパ1は、一個の円環状の突部21又は111を夫々有した突起7を具備したものであるが、斯かる突起7に代えて、図9から図17に示すような螺旋状突部171を有した突起7を具備していてもよく、この場合、凹所9は、螺旋状突部171を受容する螺旋状凹部172を有しており、外筒13の内周面12は、その外周面14に対してA方向に移動自在となっている。
【0051】
即ち、図9から図17に示す回転式摩擦ダンパ1は、円筒状の内周面2で回転軸3の円筒状の外周面4にR方向に回転しないように固定される内筒本体5及び内筒本体5の円筒状の外周面6から径方向外方向に突出した雄ねじからなる螺旋状突部171を有した合成樹脂製の内筒8と、内筒8の螺旋状突部171を受容して当該螺旋状突部171に螺合すると共に径方向外方向に凹んだ雌ねじからなる螺旋状凹部172を有しており、当該螺旋状凹部172を規定すると共に螺旋状突部171の雄ねじ面からなる外面10に接触する雌ねじ面からなる凹所面11を内周面12に有した合成樹脂製の外筒13とを具備している。
【0052】
外筒13は、凹所面11を有すると共に凹所面11で螺旋状突部171と螺旋状凹部172との螺合をもって内筒8をR方向に回転自在に支持する内径側の合成樹脂製の筒体175と、筒体175の外周面176にA方向に滑り移動自在に接触する円筒状の内周面177を有すると共にハウジング15の内周面16にR方向に回転しないように嵌合、固定される外周面14を有した外径側の合成樹脂製の筒体178とを具備している。
【0053】
筒体175は、一方の端面181からA方向に伸びていると共にR方向において120°の等しい中心角度間隔で配列された三個のスリット182及び他方の端面183からA方向に伸びていると共にR方向において120°の等しい中心角度間隔で配列された三個のスリット184を有した筒体本体185と、スリット182及び184によりR方向において分断された筒体本体185の内周面でもある内周面12に形成された雌ねじ面からなる凹所面11と、スリット182及び184によりR方向において分断された筒体本体185の外周面でもある外周面176と面一の外周面186を有すると共に端面183からA方向に突出した係合突起部187と、筒体本体185の内周面12に形成されていると共に一端ではスリット184に開口し他端では端面181で開口した空気抜き溝188と、同じく筒体本体185の内周面12に形成されていると共に一端ではスリット182に開口し他端では端面183で開口した空気抜き溝189とを具備している。
【0054】
スリット182は、端面183の手前であって空気抜き溝189までA方向に伸びており、スリット182に対してR方向において60°の中心角度をもって離間されたスリット184は、端面181の手前であって空気抜き溝188までA方向に伸びている。
【0055】
筒体178は、円筒状の内周面177及び外周面14を有した筒体本体191と、筒体本体191の外周面14に設けられた円環状の鍔部42と、筒体本体191の外周面14であって鍔部42のA方向の一方の端面44に設けられていると共にハウジング15の切欠き50に嵌合されている突起部45と、R方向において係合突起部187を挟んで筒体本体191の内周面177に設けられていると共に係合突起部187にA方向に移動自在に接触する一対の係止突起部192とを一体的に具備している。
【0056】
筒体175は、係合突起部187の一対の係止突起部192間への嵌合、係合により、筒体178に対してR方向に回転しないようになっており、筒体178は、突起部45の切欠き50への嵌合により、ハウジング15に対してR方向に回転しないようになっている。
【0057】
図9から図17に示す回転式摩擦ダンパ1では、回転軸3のR方向の回転で内筒8もR方向に回転され、内筒8のR方向の回転で、内筒8の螺旋状突部171と筒体本体185の螺旋状凹部172との螺合を介して筒体175が内筒8及び筒体178に対してA方向に移動され、この移動において螺旋状突部171の雄ねじ面からなる外面10と螺旋状凹部172を規定する雌ねじ面からなる凹所面11との間、筒体本体185の外周面176と筒体本体191の内周面177との間、係合突起部187の外周面186と筒体本体191の内周面177との間、係合突起部187のR方向の両側面と一対の係止突起部192のR方向の両側面との間に滑り摩擦が生じて、この滑り摩擦でもって回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる。そして、回転式摩擦ダンパ1では、外面10と凹所面11との間の滑り面、外周面176と内周面177との間の滑り面、外周面186と内周面177との間の滑り面、そして、係合突起部187と係止突起部192との間の滑り面からなる多くの摩擦滑り面を具備しているために、滑り摩擦面を大きくできて回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる比較的大きな摩擦力を安定に得ることができ、而して、小型化を図ることができる。
【0058】
図9から図17に示す回転式摩擦ダンパ1では、スリット182及び184を有した筒体本体185の雌ねじ面からなる凹所面11を合成樹脂からなる筒体本体185の弾性的な締め代をもって内筒8の螺旋状突部171に螺合させたが、これに加えて、図18及び図19に示すように、Oリングからなる弾性環状体201の弾性的な締め代をもって筒体本体185を内筒8の螺旋状突部171に螺合させてもよい。即ち、図18及び図19において、筒体175において、スリット182及び184を有した筒体本体185は、スリット182及び184によりR方向において分断されて外周面176にR方向に伸びていると共にA方向に離間して配列された二つの環状溝202を有しており、当該環状溝202に装着されている弾性環状体201により弾性的に縮径されるようになっている。
【0059】
図18及び図19に示す回転式摩擦ダンパ1では、筒体本体185自体の合成樹脂の弾性力に加えて弾性環状体201の弾性力により筒体本体185の雌ねじ面からなる凹所面11を内筒8の螺旋状突部171に締め代をもって螺合させることができる結果、螺旋状突部171の雄ねじ面からなる外面10と螺旋状凹部172を規定する雌ねじ面からなる凹所面11との間の滑り摩擦面での摩擦抵抗を大きくでき、而して、回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる比較的大きな摩擦力を安定に得ることができ、より小型化を図ることができる。
【0060】
斯かる弾性環状体201を用いる場合、図18及び図19に示すように、弾性環状体201は、その外周面205が筒体本体191の内周面177にA方向に滑り移動自在に弾性接触するように、環状溝202に装着されていても、図20に示すように、その外周面205が筒体本体191の内周面177に非接触となるように、環状溝202に装着されていてもよく、前者の場合は、回転軸3のR方向の回転で弾性環状体201の外周面205と筒体本体191の内周面177との間の摩擦面での摩擦を用いることができ、回転軸3のR方向の回転に減衰を生じさせる比較的大きな摩擦力を安定に得ることができ、更により小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 回転式摩擦ダンパ
2、12 内周面
3 回転軸
4 外周面
5 内筒本体
7 突起
8 内筒
9 凹所
10 外面
11 凹所面
13 外筒
14 外周面
15 ハウジング
16 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に突出した突起及びこの突起を受容すると共に径方向に凹んだ凹所のうちの一方を有すると共に回転軸に固定される合成樹脂製の内筒と、径方向に突出した突起及びこの突起を受容すると共に径方向に凹んだ凹所のうちの他方を有すると共に内筒を回転自在に支持する一方、ハウジングに固定される合成樹脂製の外筒とを具備しており、突起は、その外面で凹所を規定する凹所面に接触している回転式摩擦ダンパ。
【請求項2】
突起は、台形状の断面を有した少なくとも一つの円環状の突部を有しており、凹所は、突部に相補的な形状を有している円環状の凹部を有している請求項1に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項3】
外筒は、軸方向において二つに分割されており、二つに分割されて軸方向の一方の分割体と軸方向の他方の分割体とからなる外筒において、当該一方の分割体と他方の分割体とは、その分割面で互いに対面されて連結手段により互いに連結されている請求項1又は2に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項4】
各分割体は、その分割面側に鍔部を有しており、連結手段は、両鍔部を弾性的に抱持する拡径自在な円環体を具備している請求項3に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項5】
外筒は、周方向において少なくとも二つに分割されており、少なくとも二つに分割されて一方の分割体と他方の分割体とからなる外筒において、当該一方の分割体と他方の分割体とは、その分割面で互いに対面されて連結手段により互いに連結されている請求項1又は2に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項6】
各分割体は、外周面に周方向に伸びた少なくとも一つの溝を有した半円筒部を具備しており、連結手段は、半円筒部の夫々の溝を通って周方向に伸びた弾性環状体を具備している請求項5に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項7】
突起は、螺旋状突部を有しており、凹所は、螺旋状突部を受容する螺旋状凹部を有しており、外筒の内周面は、その外周面に対して軸方向に移動自在となっている請求項1に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項8】
外筒は、内周面で内筒を回転自在に支持する内径側の合成樹脂製の筒体と、この筒体の外周面に少なくとも軸方向に滑り移動自在に接触する内周面を有すると共にハウジングに固定される外周面を有した外径側の合成樹脂製の筒体とを具備している請求項7に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項9】
内径側の筒体は、一方の端面から軸方向に伸びた少なくとも一つのスリットを有している請求項8に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項10】
内径側の筒体は、外周面に周方向に伸びた少なくとも一つの環状溝を有しており、当該環状溝に装着されている弾性環状体により弾性的に縮径されるようになっている請求項9に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項11】
弾性環状体は、外径側の筒体の内周面に軸方向に滑り移動自在に弾性接触するように、内径側の筒体の環状溝に装着されている請求項10に記載の回転式摩擦ダンパ。
【請求項12】
弾性環状体は、外径側の筒体の内周面に非接触となるように、内径側の筒体の環状溝に装着されている請求項10に記載の回転式摩擦ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−37060(P2012−37060A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253901(P2011−253901)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2007−246263(P2007−246263)の分割
【原出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】