説明

回転式電子部品

【課題】つまみの回転体への取り付けが確実に行なえてがたつきが生じることなく、同時に回転体の回転範囲を制限する機構を簡単で強い強度で構成できる回転式電子部品を提供する。
【解決手段】基台30と、回転体60と、回転体60の外周上部に設置され回転体60と一体に回転するつまみ200と、回転体60の回転に伴なってその電気的出力を変化する電気的機能部とを有する。基台30に回転体60の外周とつまみ200の間に位置するストッパー軸39を設ける。ストッパー軸39を挟んでその両側の位置に回転体60とつまみ200間を係止する一対ずつの係止部83,205を設ける。係止部83にストッパー軸39に当接するストッパー当接部79を形成して、回転体60の回転範囲を一対ずつの係止部83,205がストッパー軸39を挟んで移動する範囲に制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つまみを回転することでその電気的出力を変化する回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来回転式電子部品の中には、フレキシブル回路基板を設置した基台の前記フレキシブル回路基板を設置した面側に回転自在に回転体を設置し、この回転体に取り付けた摺動子を前記フレキシブル回路基板に形成した摺接パターンに摺接させることでその電気的出力を変化させる構造のものがあった(例えば特許文献1参照)。そしてこの回転体の外周上部には別途人の指等によって操作されるつまみが取り付けられていた。
【0003】
しかしながら上記従来の回転式電子部品においては、以下のような問題点があった。
(1)つまみの回転体への取り付けは、回転体の外周上部から突出する1つの突起をつまみに設けた穴に圧入することによって行なわれていたので、必ずしもその取付強度は強くなく、つまみが回転体から容易に外れてしまったり、つまみを操作する際に回転体に対してがたついてしまったりする恐れがあった。上記問題は特に回転式電子部品が小型化した場合に顕著となる。
【0004】
(2)回転体の回転範囲を所定の範囲(角度)に制限するため、前記基台と回転体の間に回転体が所定角度以上回転しないようにする回転範囲制限機構を設けることがある。この回転範囲制限機構は例えば特許文献1に示すように、基台のフレキシブル回路基板を設置した面から突出する突起を回転体の基台(フレキシブル回路基板)に対向する対向面に設けた溝に挿入しておき、前記溝内を突起が移動する範囲において回転体が回転できるように構成される。しかしながら回転式電子部品の小型化により前記回転体の厚みが薄くなって溝の深さが浅くなり、突起との係合深さが短くなると、回転範囲制限機構の強度が弱くなってしまう恐れがあった。
【特許文献1】特開2005−19844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、たとえ小型化されてもつまみの回転体への取り付けが確実に行なえてがたつきが生じることなく、同時に回転体の回転範囲を制限する機構を簡単で強い強度で構成できる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、基台と、前記基台に対して回転自在に設置される回転体と、前記回転体の外周上部に設置され前記回転体と一体に回転するつまみと、前記回転体と基台との間に設置され回転体の回転に伴なってその電気的出力を変化する電気的機能部と、を有し、前記基台に前記回転体の外周とつまみの間に位置するストッパー軸を設けるとともに、前記回転体とつまみには、前記ストッパー軸を挟んでその両側の位置に、前記回転体とつまみ間を係止する一対の係止部を設け、さらにこれら係止部に前記ストッパー軸に当接するストッパー当接部を形成して、前記回転体の回転範囲を前記一対の係止部が前記ストッパー軸を挟んで移動する範囲に制限したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、前記回転体を所定位置に自動復帰させる弾発手段を有する自動復帰機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品にある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、前記回転体の前記基台に向く面の裏面側に押え部材を設置し、且つこの押え部材を前記ストッパー軸に取り付けることで押え部材と基台とを一体化したことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品にある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、前記弾発手段は、前記回転体の前記押え部材を設置する側の面に設けた弾発手段収納部に収納され、前記押え部材によって覆われていることを特徴とする請求項3に記載の回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、基台に設けたストッパー軸を挟んでその両側の位置に回転体とつまみ間を係止する一対の係止部を設けたので、回転体とつまみ間を2ヶ所で係止できつまみの回転体への取り付けが確実になり、がたつきを防止できる。同時にこれら一対の係止部をストッパー当接部として兼用してこれらストッパー当接部にストッパー軸を当接することで回転体の回転範囲を制限したので、簡単な構造で容易に回転体の回転範囲制限機構を構成でき、また回転体の外周側面及びその半径方向外側の空間を利用して回転範囲制限機構を構成できるので、回転式電子部品を小型化しても、相対的に係止部やストッパー軸を容易に大きくすることでその強度も容易に強く保つことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、回転体を所定位置に自動復帰させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ストッパー軸を押え部材の取付手段として兼用したので、簡単な構造で容易且つ確実に押え部材を基台と一体化することができる。押え部材と基台とが一体化されれば、その間に設置される回転体の保持も確実になる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、回転体に設けた弾発手段収納部に収納される弾発手段を容易に押え部材によって覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明を適用してなる回転式電子部品1の側断面図、図2は回転式電子部品1の分解斜視図である。両図に示すように回転式電子部品1は、回路基板(以下この実施形態では「フレキシブル回路基板」という)10を取り付けた基台30と、基台30に対して回転自在に設置される回転体60と、回転体60に内蔵され回転体60を所定位置(中立位置)に自動復帰させる弾発手段(以下「コイルスプリング」という)90と、回転体60の基台30に向く面の裏面側に設置されて回転体60及び回転体60の弾発手段収納部69に収納したコイルスプリング90の抜けを防止する押え部材100と、回路基板(以下この実施形態では「第2フレキシブル回路基板」という)140を載置した取付台120と、基台30を取付台120に取り付ける固定部材150と、回転体60の外周上部(半径方向の外周の上部)に設置され回転体60と一体に回転するつまみ200と、を具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0015】
図3はフレキシブル回路基板10を取り付けた基台30を示す斜視図である。同図に示すようにフレキシブル回路基板10は、機能パターン部11と端子パターン部13とを設けて構成されている。機能パターン部11の表面には円弧状の摺接パターン15が設けられ、端子パターン部13には端子パターン17が設けられ、摺接パターン15と端子パターン17間は接続パターン19によって接続されている。なお摺接パターン15はスイッチパターンであっても良いし、抵抗体パターンであっても良く、さらにそれら以外の機能を有するパターンであっても良い。端子パターン部13の両側辺には下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の係合部21が設けられている。機能パターン部11の中央(回転体60の回転中心軸部分)には下記する回転体60の回転軸61を通す円形の貫通孔23が設けられている。
【0016】
基台30は成形樹脂を略半円板状に成形してなる電子部品取付部31と、電子部品取付部31を略L字状に屈曲することで回転体60から離れる方向(後方)に伸びる圧接接続部35とを一体成形して構成されている。電子部品取付部31は、フレキシブル回路基板10の機能パターン部11の周囲と背面とを囲むように成形されている。電子部品取付部31の上部中央と下部両端には、それぞれ下記する回転体60の外周の外側を通して押え部材100側に向かって棒状に突出するストッパー軸39及び弾発手段当接部37,41が設けられている。ストッパー軸39及び各弾発手段当接部37,41の先端には熱カシメによって下記する押え部材100を固定する小突起状の固定部43が設けられている。弾発手段当接部37,41の上面は下記するコイルスプリング90から半径方向外側に向かって引き出される引出部93を当接する引出部当接面37a,41aとなっている。また電子部品取付部31の上部中央に設けたストッパー軸39の左右両側面は下記する回転体60のストッパー当接部79を当接するストッパ当接面39aとなっている。また電子部品取付部31中央の前記フレキシブル回路基板10の貫通孔23を設けた位置にはこの貫通孔23の内径寸法と同一内径寸法であって下記する回転体60の回転軸61を回転自在に軸支する円形の貫通孔45が設けられている。一方圧接接続部35は平板状であって、その両側辺には下記する固定部材150の取付片153を係合する凹状の取付片挿入部47が設けられている。
【0017】
回転体60は略円板状の合成樹脂成形品であり、その両面中央から一対の回転軸61,63を突出し、その一方の面(基台30側の面)を摺動子取付面65とし、他方の面に弾発手段収納部69を設けている。両回転軸61,63の先端面には、それぞれ下記するつまみ200の一対の係合部215に係合される取付部67が設けられている。取付部67は回転軸61,63の先端面から上下に帯状(直線状)に伸びる平板状の突起であり、平板状のその突起先端面は、つまみ200から離れる方向に従って外方に広がるテーパ面68となっている。つまり取付部67は下記する係合部215にスナップイン係合していく方向に向かって縦長形状に形成されている。弾発手段収納部69は回転軸63の周囲を囲むリング形状の凹部によって構成されており、その半径方向外側に向けて一対の切り欠き状の引出部挿通部71を設けている。一対の引出部挿通部71の下側の面はそれぞれ当接部73となっている。摺動子取付面65には図1に示すように下記する摺動子85の取付部87に挿入される小突起状の固定部75が突設されている。
【0018】
次に回転体60の外周面の上部中央から左右に等間隔の位置には、それぞれ2本の突起81を円周方向に連続して設けることで突起81の間に凹部を設け、これら突起81と凹部とによって係止部83を構成している。突起81は何れも先端に向けて細くなる爪状に形成され、これによって係止部83を構成する凹部は外方に向かってその幅が広くなっていく形状に形成される。そしてこれら一対の係止部83,83の間の回転体60の外周面にはこの外周面部分を凹状に窪ませて前記基台30のストッパー軸39を挿通する挿通部77が設けられ、挿通部77の両側に位置する係止部83の突起81の両内側面をストッパー当接部79としている。
【0019】
図1に示す摺動子85は弾性金属板を略リング状に形成して構成されており、その上下部分2ヶ所に孔からなる取付部87を設け、またその所定位置に摺接部89を設けている。図2に示すコイルスプリング(この実施形態ではねじりコイルスプリングを用いている)90は線材をコイル状に巻き回したコイル部91の両端から引出部93を引き出して構成されている。このコイルスプリング90は両引出部93を上方向に移動することでコイル部91の内径が小さくなって絞られる方向になるように巻き回されている。
【0020】
押え部材100は成形樹脂を略半円形の板状であって、前記回転体60の弾発手段収納部69を塞ぐ外形寸法に形成されており、その中央には前記回転体60の回転軸63を回動自在に軸支しながら挿入する円形の貫通孔からなる挿入部101が設けられ、またその外周の下部両端と上部中央からは半径方向外側に向けて舌片状に突出する取付部103が設けられ、各取付部103には前記基台30に設けた固定部43を挿入する挿入固定部105が設けられている。
【0021】
つまみ200は合成樹脂の成形品であり、半円筒形状であって前記基台30及び回転体60の上部に位置するつまみ本体部201と、つまみ本体部201の両側部から前記基台30及び回転体60側に向かう(つまみ本体部201の両側部を覆う)一対のつまみ支持部211とを具備して構成されている。つまみ本体部201の上面中央には長手方向(つまみ200の回転軸方向)に向かって延びる長尺の操作部203が突出して形成され、またその下面(回転体60の外周面に対向する側の面)には、前記回転体60に設けた一対の係止部83の凹部にそれぞれ係合する一対の係止部205が設けられている。係止部205は、略三角形状に突出する一本の突起によって構成され、前記回転体60に設けた係止部83の凹部にぴったり係合する寸法形状に形成されている。言い換えれば両係止部83,205は、回転体60の外周面とこの外周面に対向するつまみ200の面との間を、回転体60とつまみ200の回転方向への力に対して両者間を係止する形状に形成され、更に具体的に言えば、回転体60の上からつまみ200を被せるように接近して一体化する際に、両者が係合する凹凸形状に形成されている。一方つまみ支持部211は平板状(略半円板状)であって、半円筒形状のつまみ本体部201の両側面を塞ぐと共に、その下辺中央から舌片状に突出する取付部213を設け、取付部213の中央上部に縦方向に帯状(直線状)に延びる矩形状の貫通孔からなる係合部215を設け、また一対の取付部213の対向する内側の面の下部に下方向に向かって両面間が広がっていくテーパ面217を設けている。このようにつまみ支持部211に舌片状の取付部213を設けることで、つまみ支持部211がその面に垂直な方向に向かって所定の弾性を有して撓む(撓み易い)構造にするとともに、前記係合部215を前記つまみ支持部211中に設けることで、前記回転体60の一対の回転軸61,63の端部に設けた取付部67に前記つまみ200の一対の係合部215を前記つまみ支持部211を撓ませることでスナップイン係合させてつまみ200と回転体60とを一体化する構造としている。
【0022】
固定部材150は金属板製であり、前記基台30の圧接接続部35の上面をほぼ覆う矩形状の押え部151と、押え部151の両側辺から2本ずつ突出して下方向に屈曲される舌片状の取付片153とを具備して構成されている。各取付片153は前記圧接接続部35の各取付片挿入部47に対向する位置に形成されている。
【0023】
第2フレキシブル回路基板140は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に3つの端子パターン141を設け、各端子パターン141から引き出した引出パターン143をこの第2フレキシブル回路基板140の引出部145に導出している。第2フレキシブル回路基板140の先端側の一辺には2つの凹状の係合部147が設けられ、また各端子パターン141を形成した部分よりも引出部145を引き出す側の部分にも2つの貫通孔からなる係合部147が設けられている。
【0024】
取付台120は合成樹脂を略矩形状に成形して構成されており、その前方側は電子部品載置部121、後方側は基板圧接部123となっている。基板圧接部123の略中央には矩形状で凹状の収納部125が設けられ、また基板圧接部123の両側辺にはそれぞれ2つずつの凹状の係合部127が設けられている。また収納部125内に収納される弾発手段130は弾性金属板製であり、略矩形状の基部131の長手方向の一側辺から3本の弾発片133を突出して上方向に折り曲げ、それぞれの先端に上方向に突出する弾発部135を形成して構成されている。
【0025】
次に回転式電子部品1の組立方法を説明すると、まず予め回転体60の摺動子取付面65に摺動子85を当接し、その際回転体60に設けた固定部75(図1参照)を摺動子85に設けた取付部87(図1参照)に挿入してその先端を熱カシメすることで固定する。次に回転体60を基台30に取り付けたフレキシブル回路基板10の機能パターン部11の表面上に設置し、その際フレキシブル回路基板10及び基台30の貫通孔23,45に回転体60の一方の回転軸61を回動自在に挿入する。次に回転体60の弾発手段収納部69内にコイルスプリング90のコイル部91を収納して両端の引出部93をそれぞれ回転体60の引出部挿通部71に挿入し、当接部73に弾接させ(このとき引出部93の先端は引出部挿通部71からその外方に突出し、基台30の引出部当接面37a,41a上に弾接している)、その上(回転体60の弾発手段収納部69を設けた面上)に押え部材100を設置して被せ、押え部材100の挿入部101に回転体60の回転軸63を挿入して回動自在に軸支し、このとき同時に押え部材100の各挿入固定部105に基台30の各固定部43を挿入してその先端を熱カシメして固定する。これによって回転体60の回転軸61,63はそれぞれ回転体60の両側において基台30と押え部材100に軸支される。また押え部材100を取り付けることで、基台30から回転体60は外れず、且つ回転体60の弾発手段収納部69からコイルスプリング90が抜け出ない。なお前記回転体60に形成した弾発手段収納部69と引出部挿通部71と当接部73、基台30に形成した弾発手段当接部37,41、コイルスプリング90、押え部材100によって自動復帰機構が構成されている。このとき摺動子85の摺接部89は機能パターン部11の摺接パターン15上に当接している。そして基台30と回転体60の上につまみ200を被せるように設置することで、回転体60の一対の回転軸61,63の取付部67をつまみ200に設けた一対の係合部215に係止することでつまみ200と回転体60とを一体化する。つまみ200を回転体60に取り付ける際、図1に示すつまみ200のテーパ面217に取付部67のテーパ面68が当接してつまみ200の両つまみ支持部211(特に取付部213の部分)が広がるように撓みながら、両取付部67が両係合部215にいわゆるスナップイン係合によって容易に係合し、つまみ200が回転体60に一体に固定される。このとき同時に、つまみ200に設けた一対の係止部205が回転体60に設けた一対の係止部83の凹部に係合し、両者は回転方向の力に対して係止(固定)される(図4参照)。取付部67と係合部215とは縦長形状なので、両者は回転方向に対して強固に係合されると同時に、取付部67と係合部215とが縦長形状なので、テーパ面68の長さを長くでき、その分テーパ面68の傾斜角度を緩くでき、スナップイン係合がより容易にスムーズに行える。
【0026】
次に取付台120の収納部125内に弾発手段130を収納した上で、その上に端子パターン141を上向きとした第2フレキシブル回路基板140を載置する。次に基台30に取り付けたフレキシブル回路基板10の端子パターン部13を図2に示すように基台30の圧接接続部35の下面側に折り曲げて、前記第2フレキシブル回路基板140上に載置する。そして前記圧接接続部35の上面に固定部材150の押え部151を載置し、その際固定部材150の取付片153を圧接接続部35の取付片挿入部47と端子パターン部13の係合部21と第2フレキシブル回路基板140の係合部147と取付台120の係合部127とに係合し、取付片153の先端を取付台120の裏面に折り曲げ、これによって基台30を取付台120に固定すると同時に、取付台120上に載置した第2フレキシブル回路基板140の各端子パターン141とフレキシブル回路基板10の各端子パターン17とを圧接接続部35の下面と弾発手段130の弾発部135とによって圧接接続する。
【0027】
図4は以上のようにして組み立てられた回転式電子部品1の動作説明図(但し、押え部材100や取付台120等の記載は省略)である。そして回転体60が中立位置にあるときは、コイルスプリング90の両引出部93は回転体60の当接部73と基台30の引出部当接面37a,41aに弾接している。中立状態で2つのストッパー当接部79がなす角度の約半分の角度の位置にストッパー軸39の中心が位置している。
【0028】
そして例えばつまみ200を図4に示す矢印A方向に回転すれば、回転体60及びつまみ200全体が矢印A方向に回転し、摺動子85の摺接部89がフレキシブル回路基板10の摺接パターン15上を摺動してその出力を変化する。その際コイルスプリング90の左側の引出部93は元の位置に保持されたまま右側の引出部93が当接部73によって押し上げられる。そしてつまみ200の回動を解除すれば、コイルスプリング90の弾発復帰力によって回転体60は元の図4の状態に自動復帰する。そして回転体60の回転角度はこれを左右何れに回転しても、回転体60のストッパー当接部79に基台60のストッパー当接面39aが当接することで制限される。
【0029】
以上のように回転式電子部品1は、回転体60の両面から突出する一対の回転軸61,63に設けた取付部67をそれぞれつまみ200に設けた一対の係合部215に係合することでつまみ200と回転体60とを一体化する他に、基台30に設けたストッパー軸39を挟んでその両側の位置に回転体60とつまみ200間を係止する一対ずつの係止部83,205を設けたので、前記取付部67と係合部215による係合の他に、回転体60とつまみ200間を2ヶ所で係止でき、つまみ200の回転体60への取り付けがさらに確実になり、がたつきを防止できる。同時に回転体60に設けた一対の係止部83,83をストッパー当接部79,79として兼用してこれらストッパー当接部79,79にストッパー軸39を当接することで回転体60の回転範囲を制限したので、簡単な構造で容易に回転体60の回転範囲制限機構を構成でき、また回転体60の外周側面及びその半径方向外側の空間を利用して回転範囲制限機構を構成できるので、回転式電子部品1を小型化しても相対的に係止部83,205やストッパー軸39だけを容易に大きくすることができ、その強度を容易に強く保つことができる。またストッパー軸39を押え部材100の取付手段として兼用したので、簡単な構造で容易且つ確実に押え部材100を基台30と一体化することができる。押え部材100と基台30とが一体化されれば、その間に設置される回転体60の保持も確実になる。また回転体60に設けた弾発手段収納部69に収納される弾発手段であるコイルスプリング90を容易に押え部材100によって覆うことができる。
【0030】
図5は本発明を適用してなる他の回転式電子部品1−2の側断面図、図6は回転式電子部品1−2の分解斜視図である。同図に示す回転式電子部品1−2において、前記図1〜図4に示す実施形態にかかる回転式電子部品1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図4に示す実施形態と同じである。
【0031】
この回転式電子部品1−2において前記回転式電子部品1と相違する点は、回転体60とつまみ200の構造のみである。即ちこの実施形態にかかる回転体60は、一対の回転軸61,63の長さを短くして前記実施形態で設けた両端の取付部67を設けず、単に基台30及びフレキシブル回路基板10の貫通孔23,45と押え部材100の挿入部101に回動自在に軸支するのみとし、また回転体60に設ける係止部83として、前記実施形態のように2つの突起81の間に凹部を形成する代わりに、ストッパー軸39を挟んでその両側に位置するように、1つずつの突起81を設け、両突起81の対向面の裏面側にそれぞれ係止穴82(図6では一方のみ示す)を設けることで一対の係止部83,83を構成している。一方つまみ200は前記実施形態に比べてつまみ200の回転軸方向の長さを短くし、同時につまみ支持部211及び取付部213及び係合部215を何れも省略し、一方係止部205として突起の先端に前記回転体60の係止部83に設けた係止穴82に係止(スナップイン係合)されて回転体60とつまみ200とを一体に取り付ける(固定する)爪206を設けて構成されている。
【0032】
そしてこの回転式電子部品1−2の組み立ては、前記実施形態と同様に、基台30、回転体60、コイルスプリング90、押え部材100を組み立てた後、基台30と回転体60の上部につまみ200を被せるように設置することで、つまみ200の一対の係止部205をそれぞれ回転体60の一対の係止部83に設けた係止穴82にスナップイン係合によって係止し、これによってつまみ200と回転体60とを一体化する。即ちこの実施形態においては、つまみ200と回転体60の一体化を一対ずつの係止部205,83の係合のみによって行なっている。従って両者間の固定構造が簡素化され、小型化が図れる。なお取付台120と弾発手段130と第2フレキシブル回路基板140と固定部材150の取付手順は前記実施形態と同じである。
【0033】
このように構成しても、前記実施形態と同様につまみ200と一体に回転体60を回転することができ、回転体60が中立位置にあるときは、コイルスプリング90の両引出部93が回転体60の当接部73と基台30の引出部当接面37a,41aに弾接し、2つのストッパー当接部79がなす角度の約半分の角度の位置にストッパー軸39の中心が位置し、例えばつまみ200を回転すれば、回転体60及びつまみ200全体が回転し、摺動子85の摺接部89がフレキシブル回路基板10の摺接パターン15上を摺動してその出力を変化する。つまみ200の回動を解除すれば、コイルスプリング90の弾発復帰力によって回転体60は元の状態に自動復帰する。そしてこの実施形態においても、回転体60の回転角度は回転体60のストッパー当接部79にストッパー軸39のストッパー当接面39aが当接することで制限される。また回転式電子部品1−2は、ストッパー軸39を挟んでその両側の位置に回転体60とつまみ200間を係止する一対ずつの係止部83,205を設けたので、回転体60とつまみ200間を2ヶ所で係止でき、つまみ200の回転体60への取り付けが確実になり、がたつきを防止できる。同時に回転体60に設けた一対の係止部83,83をストッパー当接部79,79として兼用してこれらストッパー当接部79,79にストッパー軸39を当接することで回転体60の回転範囲を制限したので、簡単な構造で容易に回転体60の回転範囲制限機構を構成でき、またその強度も容易に強く保つことができる。またストッパー軸39を押え部材100の取付手段として兼用したので、簡単な構造で容易且つ確実に押え部材100を基台30と一体化することができる。押え部材100と基台30とが一体化されれば、その間に設置される回転体60の保持も確実になる。また回転体60に設けた弾発手段収納部69に収納される弾発手段であるコイルスプリング90を容易に押え部材100によって覆うことができる。
【0034】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記図1〜図4に示す実施形態では回転体60に突起81と凹部によって係止部83を形成すると同時につまみ200に係止部205を形成し、また図5,図6に示す実施形態では回転体60に突起81と係止穴82によって係止部83を形成すると同時につまみ200に爪206を有する係止部205を形成したが、何れの場合も、回転体60に形成している係止部83の構造をつまみ200側に形成し、つまみ200に形成している係止部205の構造を回転体60側に形成しても良い。また上記一対の係止部83,205の形状・構造・取付構造は上記各実施形態の形状・構造に限定されず、例えば両者間を接着材によって接着して取り付けても良く、また何れかの部材から突出する突起を他方の部材に設けた孔に挿入してその突起の先端を熱カシメする取付構造でも良く、また別途係合ピンを取り付けることで両者間を一体化しても良い等、種々の変形が可能である。またストッパー当接部79は係止部83に設ける代りに係止部205側に設けても良い。要はストッパー軸39を挟んでその両側の位置に、回転体60とつまみ200間を係止する一対ずつの係止部83,205を設け、さらにこれら係止部83,205に前記ストッパー軸39に当接するストッパー当接部79を形成して回転体60の回転範囲を一対ずつの係止部83,205が前記ストッパー軸39を挟んで移動する範囲に制限する構造であればどのような構造であっても良い。また上記実施形態ではフレキシブル回路基板10に設けた摺接パターン15とこれに摺接する摺動子85とによって電気的機能部を構成したが、電気的機能部は他の各種構成であっても良い。要は回転体60と基台30の間に設置され回転体60の回転に伴なってその電気的出力が変化する電気的機能部であればどのような構成であっても良い。また回転体60を所定位置に自動復帰させる弾発手段を有する自動復帰機構であれば、上記コイルスプリング90以外の各種構造の弾発手段を用いた自動復帰機構であっても良い。なお回転体60の自動復帰位置は上記実施形態ではストッパー軸39がその左右に位置するストッパー当接部79のちょうど真中に位置するようにしたが、真中でなくても良く、さらに何れか一方のストッパー当接部79に当接している位置を自動復帰位置としてもよい。なお上記実施形態において用いた第2フレキシブル回路基板140と取付台120と弾発手段130と固定部材150とは必ずしも必要なく、省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】回転式電子部品1の側断面図である。
【図2】回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図3】フレキシブル回路基板10を取り付けた基台30を示す斜視図である。
【図4】回転式電子部品1の動作説明図である。
【図5】回転式電子部品1−2の側断面図である。
【図6】回転式電子部品1−2の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1,1−2 回転式電子部品
10 フレキシブル回路基板(回路基板)
15 摺接パターン(電気的機能部)
30 基台
37,41 弾発手段当接部(自動復帰機構)
39 ストッパー軸
60 回転体
61,63 回転軸
69 弾発手段収納部(自動復帰機構)
79 ストッパー当接部
81 突起
82 係止穴
83 係止部
85 摺動子(電気的機能部)
90 コイルスプリング(弾発手段、自動復帰機構)
100 押え部材
120 取付台
140 第2フレキシブル回路基板(回路基板)
150 固定部材
200 つまみ
201 つまみ本体部
205 係止部
206 爪
211 つまみ支持部
215 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に対して回転自在に設置される回転体と、
前記回転体の外周上部に設置され前記回転体と一体に回転するつまみと、
前記回転体と基台との間に設置され回転体の回転に伴なってその電気的出力を変化する電気的機能部と、を有し、
前記基台に前記回転体の外周とつまみの間に位置するストッパー軸を設けるとともに、
前記回転体とつまみには、前記ストッパー軸を挟んでその両側の位置に、前記回転体とつまみ間を係止する一対の係止部を設け、さらにこれら係止部に前記ストッパー軸に当接するストッパー当接部を形成して、前記回転体の回転範囲を前記一対の係止部が前記ストッパー軸を挟んで移動する範囲に制限したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
前記回転体を所定位置に自動復帰させる弾発手段を有する自動復帰機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品。
【請求項3】
前記回転体の前記基台に向く面の裏面側に押え部材を設置し、
且つこの押え部材を前記ストッパー軸に取り付けることで押え部材と基台とを一体化したことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品。
【請求項4】
前記弾発手段は、前記回転体の前記押え部材を設置する側の面に設けた弾発手段収納部に収納され、前記押え部材によって覆われていることを特徴とする請求項3に記載の回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−173092(P2007−173092A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370351(P2005−370351)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】