説明

回転操作型電子部品

【課題】各種AV機器の音量調整、音質調整等に用いられる回転操作型電子部品に関し、操作軸の抜け止めを確実に行うことができて、組立作業性が良く、作業工数も低減できるものを提供することを目的とする。
【解決手段】回転体23には、操作軸21の第一段部21Eから下方が滑らかに挿通可能なように、水平断面が略矩形の作動部21Bの投影面積と同じ形状の貫通孔23Cが設けられ、かつその貫通孔23Cの矩形の長手方向に直交する方向で、その貫通孔23Cと同じ形状の下方開口の窪み23Eを設けたものとし、上記貫通孔23Cに挿通された操作軸21を90度回転させて引き上げた際、上記窪み23Eに作動部21Bが嵌め込まれて組み合わされる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種AV機器の音量調整、音質調整等に用いられる回転操作型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器が普及し、特にカーステレオのメニュー切替や音量調整等の入力操作部に回転操作型電子部品が多用されているなか、それら電子部品の低価格化の要望が強くなっている。
【0003】
以下、従来の回転操作型電子部品として、回転操作型エンコーダを例として、図13〜図14を用いて説明する。
【0004】
図13は従来の回転操作型エンコーダの断面図、図14は同操作軸の組み合わせ作業を説明する図であり、同図において、1は金属棒からなる操作軸で、上部が操作部1E、その下方が中間円形部1A、そのリング状溝部1Dから下方は水平断面が小判形の作動部1Bとなっている。そして、上記中間円形部1A下端にはリング状溝部1Dが設けられている。
【0005】
2は、軸受であり、矩形の平板部2Cの中央部分が円形状に上方に突出した円形突部2Dの内側が下方開口の円形開口部2Aとなり、その突出した上面中央には小円形孔2Bが設けられている。
【0006】
そして、上記操作軸1の操作部1E下方が軸受2の小円形孔2Bに上方から挿通されて、軸受2の小円形孔2Bの下側に突出した中間円形部1A下端のリング状溝部1D内に、C形リング3が取り付けられて操作軸1の抜け止め部が構成されており、操作軸1は回転操作及び上下操作が可能なようにその中間円形部1Aが小円形孔2Bで嵌合保持されている。
【0007】
そして、上記軸受2の平板部2C下面には、円形開口部2Aと同心となるように弾性金属薄板からなるリング状の押えバネ4が装着されており、その押えバネ4は成形樹脂製の回転体5上面との間で挟み込まれている。当該構成部分で回転体5が回転操作された時の回転トルクを発生させている。
【0008】
上記回転体5は、下面に導電性金属からなる平面接点板6をインサート成形して固定した円板部5Aと、その中心に垂直に突設された円筒部5Bからなり、この円筒部5Bが上記軸受2の円形開口部2Aに下方から挿入されて、回転運動が可能なようにその外周を嵌合保持されている。そして、その円筒部5Bの中心に設けられ、上記操作軸1の作動部1Bの水平断面と同形状の小判形の貫通孔5Cに、上記操作軸1の作動部1Bが、回転運動は伝達されるが上下動作は伝わらないように挿通されている。
【0009】
回転体5の円板部5Aの下面に固定された平面接点板6は、放射状に孔があけられて櫛歯状にその表面が露出している。一方、その下方位置には、導電性の弾性金属薄板からなる複数の弾性脚8を絶縁樹脂でインサート成形固定した固定基板7が所定の間隔をあけて配されており、この固定基板7から伸ばされた複数の弾性脚8の先端の弾性接点9が、対向する上記平面接点板6が櫛歯状で露出した円板部5A下面に各々弾接している。また、上記固定基板7は上方開口箱型に形成されており、上記回転体5の円板部5Aは、固定基板7と軸受2の平板部2C下面とで構成される空間内に内包されている。
【0010】
さらに固定基板7の下方にはスイッチ基板10が配置され、そのスイッチ基板10の上面中央の凹部10A内には、上記操作軸1の軸心と同心位置に中央固定接点11Aおよびその外周位置に外周固定接点11Bがインサート成形により固定されており、外周固定接点11B上には弾性金属薄板製のドーム状可動接点12の外周下端が載せられている。そして、ドーム状可動接点12の上部に略円板状のプッシュ板14が載せられて押圧スイッチ部13が構成されていると共に、そのプッシュ板14の上方部分は、固定基板7の中孔を介して上方に突出しており、その上端面に上記操作軸1の下端部1Cが当接している。この状態において、操作軸1のリング状溝部1Dに挿入されたC形リング3は、軸受2の円形開口部2Aを構成する天面に当接している。
【0011】
そして、15は、コの字形の取付金具であり、軸受2の円形突部2Dをその中央孔から上方に突出させるようにして、軸受2の上方側から、軸受2、固定基板7およびスイッチ基板10を重ね合わせて脚部15Aで挟み込み、スイッチ基板10の底面で脚部15A先端を折り曲げることにより全体が連結固定されて回転操作型エンコーダとして構成されている。
【0012】
次にこの回転操作型エンコーダの動作について説明すると、まず操作軸1の操作部1Eを回転操作することにより、操作軸1の作動部1Bが嵌合された貫通孔5Cを介して回転体5が回転させられ、平面接点板6が櫛歯状で露出した円板部5A下面に対し複数の弾性接点9が各々摺動接触して弾性脚部8に接続された端子16からパルス信号が得られる。この回転操作時には操作軸1は上下方向には動かず、押圧スイッチ部13は動作しない。
【0013】
次に、操作軸1の操作部1Eに押し力を加えて下方に押下すると、その下端部1Cがプッシュ板14を介してドーム状可動接点12を押すことによって押圧スイッチ部13がオンし、操作部1Eに加えた押し力を解除すると、ドーム状可動接点12が自己復元して押圧スイッチ部13がオフ状態の元の図13に示す状態に戻る。
【0014】
この操作軸1の押圧操作時に、回転体5は下方へは動かず、勿論回転運動もしないので、押圧スイッチ部13のみが動作するものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−135310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の回転操作型電子部品(回転操作型エンコーダ)においては、図14の操作軸にC形リングを取り付ける図に示すように、操作軸1の下端部1C側からC形リング3を広げて作動部1Bに嵌め、その作動部1Bを通過させて、上部のリング状溝部1Dまで移動させてリング状溝部1Dに嵌め込んで操作軸1の抜け止め部を形成するもののため、この方式ではC形リング3を必要とすると共に、その嵌め込み作業は、軸受2の円形開口部2A内で行う作業であり、嵌め込み状態を確認するのが非常に難しく、作業性も悪いため、作業工数がかかるという課題を有していた。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作軸の抜け止めを確実に行うことができて、組立作業性が良く、作業工数も低減できる回転操作型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、回転電気部材を備えた回転体と、この回転体が回転されて上記回転電気部材との接触により電気信号を生じる固定電気部材を備えた基体と、この基体の上方に固定された軸受と、この軸受で回転可能に保持され、上記回転体を回転操作する操作軸とを備え、上記操作軸は、第一段部の上方が操作部で、その第一段部の下方が棒状の中間部そしてさらにその中間部下端が第二段部を境に作動部としてなり、この作動部は水平断面が略矩形で、その略矩形の長手方向の寸法が上記中間部の外形寸法より大きな寸法になされており、上記回転体は、中心に上記操作軸の第一段部より下方が挿通可能なようにその投影面積に合わせた形状で、上記操作軸の中間部の長さより短い長さの貫通孔を有し、上記略矩形の作動部の長手方向に直交する方向に上記作動部が嵌り込む下方開口の窪みが下面に設けられており、上記回転体の貫通孔に挿通された上記操作軸は、その作動部が上記窪み内に位置されて両者の係合により上記回転体を回転操作可能となし、かつ上記第二段部が上記窪みの天面に当接係止して上方への抜け止めがなされた構成としたことを特徴とする回転操作型電子部品としたものである。
【0020】
この構成により、操作軸の作動部を回転体の貫通孔に挿通させた後、操作軸をその軸線中心を回転中心として90°回転させてから作動部が回転体の窪みに嵌り込むまで上方向に引き上げるのみで操作軸が固定され、操作軸の上方への抜け止めがなされると共に、操作軸の回転運動を回転体に伝えることもできるため、簡単な構成で確実な操作軸の抜け止め機構を備えたものにでき、組み立て作業の効率化および作業工数の低減を図ることができるという作用を有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、操作軸の下方に押圧スイッチが設けられ、上記操作軸の作動部と回転体の窪みとの上下方向の重なり寸法が上記押圧スイッチの操作距離より長く設定されて、上記操作軸で上記押圧スイッチを操作可能に上下動作可能とされているものである。
【0022】
これにより、操作軸の回転運動を回転体に伝えると共に、操作軸の上下操作に際しては、回転体にその運動を伝えることなく押圧スイッチが操作可能なものにでき、押圧スイッチを備えた回転操作型電子部品を容易に構成できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、C形リングが不要でその取り付け工程も不要としながら、操作軸の確実な抜け止めの確保ができると共に、組立作業工数の低減が図れる回転操作型電子部品を提供することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図12を用いて説明する。
【0025】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0026】
また、回転操作型電子部品として、従来と同様に回転操作型エンコーダを例として説明する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転操作型エンコーダの断面図、図2は同要部である操作軸の外観斜視図である。
【0028】
同図において、21は金属棒からなる操作軸であり、大径の略円柱状に形成された上方の操作部21D下方に中間部21Aを備え、さらにその中間部21A下方に作動部21Bを備えている。
【0029】
そして、操作部21D下端の第一段部21Eの下方に設けられた中間部21Aは、水平断面が略小判形に形成されている。その形状としては、操作部21Dに同心で設けられた操作部21Dよりも小さな外径の円柱の周面が軸線方向に沿って対向する平面で切断された側面形状で形成されている。
【0030】
また、中間部21A下方に続く作動部21Bは、水平断面が略矩形に形成されており、その作動部21Bの側面は、上記中間部21Aの側面と同一平面で形成されている。そして、この作動部21Bは、中間部21A下端の第二段部21Fから下方が上記中間部21Aより拡径した形状、つまり作動部21Bの略矩形における長手方向の寸法が、上記中間部21Aの小判における長手寸法より大きな寸法に設定されている。なお、操作軸21の下端部21Cとなる作動部21Bの下面は平板状に構成されている。
【0031】
22は、中心に嵌合孔22Aを有した円形突部22Bが、平板部22Cの中央位置で上方に突出形成された軸受で、この軸受22の嵌合孔22A上部に上記操作軸21の操作部21D下部が、回転運動及び上下動が可能に嵌合保持されている。
【0032】
23は、円板部23Aの上面中心に垂直に突出した円筒部23Bを有する絶縁樹脂製の回転体であり、その円板部23A下面には回転電気部材としてなる平面接点板6がインサート成形により固定されている。上記平面接点板6は、環状の導電性金属薄板に放射状に孔があけられて形成されており、円板部23A下面に櫛歯状で露出する接点を構成している。
【0033】
そして、円筒部23Bの孔形状は、上端位置に設けられた貫通孔23C下端から下方に向けて次第に広がった開口部23Dになっている。上記貫通孔23Cは、上記操作軸21の第一段部21Eから下方が滑らかに挿通可能なように、その投影面積と同じ形状に設けられている。つまり、この実施の形態では操作軸21の作動部21Bと同じ形状の略矩形状の貫通孔23Cに設けられており、上記開口部23Dは貫通孔23Cを構成する最大寸法である矩形における長手側の径方向の寸法位置から下方に向けて次第に広がっている。
【0034】
また、上記貫通孔23Cの矩形の長手方向側の対向平面と直交する方向に、その貫通孔23Cと同じ矩形状で下方開口の窪み23Eが設けられている。つまり、その窪み23Eを構成する矩形の中心と上記貫通孔23Cの矩形の中心は、同心であり、矩形の中心を回転中心として90度回転した形状となっており、一方が貫通し、他方は上方が閉塞されたものとなっている。
【0035】
なお、操作軸21の中間部21Aの長さは、上記回転体23の貫通孔23Cの長さより長く設定されている。
【0036】
そして、上記操作軸21は、上記貫通孔23Cで中間部21Aが回転可能に保持され、上記窪み23E内に上記操作軸21の下方の作動部21Bが組み合わされている。つまり、図1にも示すように、その水平断面の形状が矩形の作動部21Bが窪み23Eに係合されることによって操作軸21の回転運動は回転体23に伝達されるが上下運動は伝わらないようになっている。
【0037】
そして、上記回転体23は、その円筒部23Bの外周面が上記軸受22の嵌合孔22Aに回転可能に嵌合保持されている。
【0038】
なお、上記軸受22の下面には、嵌合孔22Aと同心となるように弾性薄板金属製のリング状の押えバネ4が組み合わされ、曲げ加工された撓み部分が回転体23の円板部23A上面に弾接しており、回転体23の回転に伴って押えバネ4が摺動して適度な回転トルクを発生させる構成となっている。
【0039】
また、回転体23の平面接点板6が固定された円板部23Aの下方位置には、導電性の弾性金属薄板からなる複数の弾性脚8を絶縁樹脂でインサート成形固定した上方開口箱型の固定基板7が配されており、この固定基板7から伸ばされた各弾性脚8の先端の弾性接点9が、対向した円板部23A下面の上記平面接点板6で櫛歯状に形成された接点面に各々弾接している。すなわち、当該実施の形態のものでは、弾性脚8が固定電気部材、固定基板7が基体としてなる部材となる。
【0040】
なお、回転体23の円板部23Aの下面には、その外周部に細幅リング状の外周突起23Fと上記開口部23D端部外周に細幅リング状の内周突起23Gとが設けられており、両者ともに上記固定基板7面に当接して回転体23は支持されている。
【0041】
これらの外周突起23F、内周突起23Gは、固定基板7から伸びた弾性脚8と平面接点板6との間隔を確保して弾性接点9と平面接点板6との電気的接続の安定性を得ることにも寄与している。なお、回転体23の円筒部23Bの外周面が上記軸受22の嵌合孔22Aに嵌合保持されているので、操作軸21による回転体23の回転運動は滑らかに行われる。
【0042】
そして、上記固定基板7の下方にはスイッチ基板10が配置され、その上面中央の凹部10A内には、上記操作軸21と同心位置の中央固定接点11Aとその中央固定接点11Aを挟む外周の等距離位置に外周固定接点11Bがインサート成形により固定されており、外周固定接点11B上には弾性金属薄板製のドーム状可動接点12の外周下端が載せられ、さらにその上方にプッシュ板14が載置されて押圧スイッチ部13が構成されている。
【0043】
ここで、上記操作軸21の作動部21Bと回転体23の窪み23Eとの係合長さは、押圧スイッチ部13の動作距離より長く設定されている。
【0044】
そして、上記プッシュ板14は、上記固定基板7の中孔から上方部分が露出しており、そのプッシュ板14上端面に上記操作軸21の下端部21Cが当接している。この状態において、操作軸21の第二段部21Fは、回転体23の下方開口の窪み23E天面に当接している。
【0045】
そして、軸受22の円形突部22Bを中央孔から上方に突出させるようにして、軸受22の平板部22Cの上面側から、回転体23を内包状態として軸受22、固定基板7、スイッチ基板10を重ね合わせてコの字形の取付金具15が装着され、スイッチ基板10の底面で脚部15A先端を折り曲げることにより全体が連結固定されている。
【0046】
ここで、軸受22の嵌合孔22Aを介して操作軸21と回転体23とを組み合わせる手順について説明する。
【0047】
図3は、押えバネ4が取り付けられた軸受22の嵌合孔22Aに回転体23の円筒部23Bを下方から嵌め込むと共に、操作軸21の第一段部21Eから下方を回転体23の貫通孔23Cに上方から挿通させた状態の断面図であり、図4は、図3の状態の底面図である。
【0048】
同図に示したように、まず、操作軸21の作動部21Bを回転体23の貫通孔23Cと同じ方向に合わせて、上記軸受22の嵌合孔22A上方から上記回転体23の貫通孔23Cへ挿入し、第一段部21Eが回転体23の円筒部23B上面に当接した状態とする。この状態において、操作軸21の中間部21Aの長さは、貫通孔23Cより長く設けられているので、作動部21Bの全ての部分は貫通孔23C下方の開口部23D内に位置している。
【0049】
続いて、操作軸21をその軸線中心を回転中心として回転体23に対して相対的に回転させる。このとき、操作軸21の作動部21Bは回転体23の貫通孔23C下方の開口部23D内に位置しているので、操作軸21を回転体23に対して相対的に回転させることが可能となる。図5および図6に、操作軸21を操作部21D側から見て右回転で45度回転した時の回転途中状態を示す。
【0050】
そして、図7および図8に示すように、操作軸21をさらに回転させていき、図3、図4で示した操作軸21の挿入時の位置から90度回転させ、操作軸21の作動部21Bと回転体23の窪み23Eとの位置を上下で合致させる。
【0051】
その状態から、図9に示すように、操作軸21の第二段部21Fが回転体23の窪み23E天面に当接するまで操作軸21を上方に引き上げることにより、操作軸21と回転体23との組み合わせが完了する。なお、その状態で、操作軸21の操作部21D下部が、軸受22の嵌合孔22Aで保持されるように嵌合孔22Aの長さ等を設定している。
【0052】
なお、操作軸21の小判形の中間部21Aは、円柱形としても良い。但し、このときも作動部21Bは上記同様の水平断面で略矩形または小判形状のものとし、その略矩形や小判形状を構成する対向する側面で回転体23に回転運動を伝えるようにすると共に、上記作動部21Bの略矩形または小判形状の長手側の寸法を、上記円柱形に形成された中間部の外径より拡径させておくことが重要である。つまり、その寸法差が第二段部としてなり抜け止め用の係止部分となるためである。
【0053】
次に、この回転操作型エンコーダの動作について説明すると、まず操作軸21の操作部21Dを回転操作すると、操作軸21の回転運動に伴って回転体23が回転して、平面接点板6が固定されて構成された櫛歯状の接点面に対し弾性脚8から伸びた複数の弾性接点9が各々摺動接触して弾性脚8に接続された端子16からパルス信号が得られる。この回転操作時には操作軸21は上下方向には動かず、押圧スイッチ部13は動作しない。
【0054】
一方、図10に示す図中の矢印のように、操作軸21の操作部21Dに押し力を加えて下方に動かすと、その下端部21Cがプッシュ板14を介して、ドーム状可動接点12を押してドーム状部分を弾性反転させ、その下面が対向した中央固定接点11Aに接触する。これにより、ドーム状可動接点12を介して外周固定接点11Bと中央固定接点11A間が電気的に導通し、押圧スイッチ部13がオンする。この操作軸21の押圧時に、回転体23は下方へは動かず、勿論回転運動もしないのでパルス信号の出力はされない。
【0055】
そして、操作軸21の操作部21Dへの押圧を解除すると、ドーム状可動接点12の復元力によって、プッシュ板14が上方に押し上げられ、それに伴い操作軸21も押し戻されて押圧スイッチ部13がオフの元の図1に示す状態に戻る。
【0056】
なお、この押圧スイッチ部13の操作距離は、操作軸21の第一段部21Eが回転体23の円筒部23B上面に当接するまでの移動量よりも小さい設定としている。つまり、上記スイッチ操作時にも第一段部21Eと回転体23の円筒部23B上面との間に空間が確保されるようにしている。
【0057】
また、作動部21Bが回転体23の窪み23E内に重なっている寸法は、上記押圧スイッチ部13の操作距離より長く設定してあるため、そのスイッチ操作時にも操作軸21の第二段部21Fが窪み23E内から外れることもなく、その係合形状からして操作軸21の上下操作に際し回転体23を回転運動させずに押圧スイッチ部13を操作可能としている。
【0058】
このように本実施の形態によれば、従来のようにC形リングを用いたりせず、またその取り付け工程なども必要とせずに、操作軸21を回転体23の貫通孔23Cに挿通した後、90度回転させてから引き上げるのみで、回転体23の窪み23E上面で操作軸21の第二段部21F上面が固定係止された操作軸21の抜け止め機構を有するものにできる。
【0059】
また、上述したように操作軸21でスイッチ操作可能なものとすると、その回転運動及び上下動作可能な回転操作型エンコーダ(回転操作型電子部品)を、容易に実現できると共に、その組立作業効率は良く作業工数を低減させることができる。
【0060】
なお、上記には、押圧スイッチ部13としてドーム状可動接点12を用いた操作ストロークの短いスイッチを備えさせた構成の実施の形態を説明したが、図11に示すように、傾斜した舌片を中央位置に備えた板状可動接点24上に、お椀を伏せた形状のラバードーム25を重ねて構成される操作ストロークの長いスイッチを備えさせた回転操作型エンコーダとしても良く、この場合でも操作軸26の作動部26Aと回転体27の窪み27Aとの係合寸法などは上述と同様の設定とすれば良い。なお、そのスイッチ構成としては、上記に説明したものに限られず、例えばプッシュ板14を無くしたもの等としてもよい。
【0061】
また、図12に示すように、スイッチ基板10の代わりに底板部材28を配して、その底板部材28の中央に設けた凸部28Aを操作軸21の下端部21Cと当接させたもの、つまり操作軸21の上下動作を規制して押圧スイッチ部を備えない形態としても良い。この場合には、さらには底板部材28と固定基板7を一体形成したもの等としても良い。
【0062】
なお、以上には回転操作で動作する機能部としてエンコーダを用いたものを説明したが、その代わりに可変抵抗器あるいはその他回転操作によって動作する機能部を有するものであっても良い。またエンコーダとしても上記に説明した構成以外のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明による回転操作型電子部品は、C形リングが不要でその取り付け工程も不要であるにも拘わらず、操作軸の確実な抜け止め状態が確保でき、かつ組立作業の効率化も図れるという特徴を有し、各種AV機器の音量調整、音質調整等の入力操作部等を構成する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態による回転操作型エンコーダの断面図
【図2】同要部である操作軸の外観斜視図
【図3】同操作軸を回転体に挿入した状態の断面図
【図4】図3の状態の底面図
【図5】図3から操作軸を45度回転させた状態の断面図
【図6】図5の状態の底面図
【図7】図3から操作軸を90度回転させた状態の断面図
【図8】図7の状態の底面図
【図9】図7の状態から操作軸を引き上げた状態を示す断面図
【図10】同押圧スイッチ部を押圧操作した状態の断面図
【図11】他の押圧スイッチ部を組み合わせた回転操作型エンコーダの断面図
【図12】押圧スイッチ部のない構成の回転操作型エンコーダの断面図
【図13】従来の回転操作型エンコーダの断面図
【図14】同操作軸へのC形リングの取り付けを説明する断面図
【符号の説明】
【0065】
4 押えバネ
6 平面接点板
7 固定基板
8 弾性脚
9 弾性接点
10 スイッチ基板
10A 凹部
11A 中央固定接点
11B 外周固定接点
12 ドーム状可動接点
13 押圧スイッチ部
14 プッシュ板
15 取付金具
15A 脚部
21,26 操作軸
21A 中間部
21B,26A 作動部
21C 下端部
21D 操作部
21E 第一段部
21F 第二段部
22 軸受
22A 嵌合孔
22B 円形突部
22C 平板部
23,27 回転体
23A 円板部
23B 円筒部
23C 貫通孔
23D 開口部
23E 窪み
23F 外周突起
23G 内周突起
24 板状可動接点
25 ラバードーム
28 底板部材
28A 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気部材を備えた回転体と、この回転体が回転されて上記回転電気部材との接触により電気信号を生じる固定電気部材を備えた基体と、この基体の上方に固定された軸受と、この軸受で回転可能に保持され、上記回転体を回転操作する操作軸とを備え、上記操作軸は、第一段部の上方が操作部で、その第一段部の下方が棒状の中間部そしてさらにその中間部下端が第二段部を境に作動部としてなり、この作動部は水平断面が略矩形で、その略矩形の長手方向の寸法が上記中間部の外形寸法より大きな寸法になされており、上記回転体は、中心に上記操作軸の第一段部より下方が挿通可能なようにその投影面積に合わせた形状で、上記操作軸の中間部の長さより短い長さの貫通孔を有し、上記略矩形の作動部の長手方向に直交する方向に上記作動部が嵌り込む下方開口の窪みが下面に設けられており、上記回転体の貫通孔に挿通された上記操作軸は、その作動部が上記窪み内に位置されて両者の係合により上記回転体を回転操作可能となし、かつ上記第二段部が上記窪みの天面に当接係止して上方への抜け止めがなされた構成としたことを特徴とする回転操作型電子部品。
【請求項2】
操作軸の下方に押圧スイッチが設けられ、上記操作軸の作動部と回転体の窪みとの上下方向の重なり寸法が上記押圧スイッチの操作距離より長く設定されて、上記操作軸で上記押圧スイッチを操作可能に上下動作可能とされている請求項1記載の回転操作型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−311153(P2007−311153A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138451(P2006−138451)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】