説明

回転検出装置、回転検出方法及びプリンタ

【課題】巻き取り器に巻き取られる用紙が少ない場合でも巻き取り器の回転方向を検出できる回転検出装置、回転検出方法、及びプリンタを提供する。
【解決手段】回転体12と、回転体に伴って回転する回転板13と、回転板から透過した光を検出する光検出部14と、検出した光の強度の増減に基づいて回転体の回転方向を検出する回転方向検出部15と、を備え、回転板は、一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリット131を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出装置、回転検出方法及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタには、用紙やインクリボン(以下、用紙等)を巻き取りながら印刷を行う構成を備えるものがある。このような構成を備えるプリンタは、用紙等に緩みや巻取りむらが生じないように、その用紙等を引っ張る力(張力、テンション)を制御する。しかし、用紙等を引っ張る力の一時的な低下、等の場合には、巻取り器が印刷時とは逆方向に回転(逆転)することがある。巻取り器が逆転すると、用紙等が緩んで印字品質が低下したり、巻取りむらが発生することがある。また、用紙等が切れた場合には、直ちに印刷を停止しなければならない。そのため、巻き取り器の回転方向を検出する技術が提案されていた。
【0003】
例えば、特許文献1記載の発明は、回転スリット板に設けたスリットの通過を検出するスリット検出器からなり、回転スリット板は、回転方向の幅が少なくとも3種類のスリットを同一順序で繰り返し配置する。当該発明は、スリット検出器からのスリット幅検出信号に基づいて、回転速度及び回転方向を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、上述の少なくとも3種類のスリットを通過するように十分な長さの用紙等が巻き取られないと回転方向を検出できない。印字される用紙の長さが同じ場合、巻き取り器に巻き取られた用紙の径が増加するほど、通過するスリットの個数が減少する。従って、このように回転方向を検出できない現象は、巻き取り器に巻き取られた用紙の径が増加するほど頻繁に発生する。このため、回転方向が検出されるまでの間に生じうる不具合、例えば、巻き取りむら、巻き緩みに対処できない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明は、巻き取り器に巻き取られる用紙が短い場合でも巻き取り器の回転方向を検出できる回転検出装置、回転検出方法、及びプリンタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明の回転検出装置は、回転体と、前記回転体に伴って回転する回転板と、前記回転板から透過した光を検出する光検出部と、前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部と、を備え、前記回転板は、一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有すること、を特徴としている。
【0008】
また、本発明の回転検出装置において、前記回転板は、2以上のスリットを有し、各スリットの幅が増減する方向が同一であるようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の回転検出装置において、前記回転方向検出部は、3つ以上の異なる時刻の光の強度を検出し、前記検出した3つ以上の異なる時刻の光の強度が単調に変化することに基づいて前記回転方向を検出するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の回転検出装置において、前記3つ以上の異なる時刻は、予め定められた時間間隔の連続する時刻であるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の回転検出装置において、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記回転方向検出部が検出した前記回転体の回転方向に基づき、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御するようにしてもよい。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明の回転検出方法は、回転体、前記回転体に伴って回転する回転板、及び前記回転板から透過した光を検出する光検出器を備え、前記回転板が、一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有する回転検出装置において、前記回転検出装置は、前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する過程を有すること、を特徴としている。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明のプリンタは、回転体と、前記回転体に伴って回転する回転板と、前記回転板から透過した光を検出する光検出部と、前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部と
を備え、前記回転板は、一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有することを特徴としている。
【0014】
また、本発明のプリンタにおいて、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記回転方向検出部が検出した前記回転体の回転方向に基づき、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一つの回転方向に対して検出された光の強度が単調に増減するスリットを回転板に備え、このスリットによる光の強度を検出して回転方向を検出するようにしたので、短い用紙等を巻き取るときでも回転体の回転方向を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る回転体の構成を示す概略図である。
【図3】同実施形態に係る回転板の構成を示す概略図である。
【図4】同実施形態に係る回転検出装置の構成を示す概略図である。
【図5】同実施形態に係る相対光強度の一例を示す図である。
【図6】同実施形態に係る回転板が回転検出センサを通過する位置の一例を示す図である。
【図7】同実施形態に係る回転板が回転検出センサを通過する位置毎の信号強度の一例を示す図である。
【図8】同実施形態に係る回転方向検出部が回転体の回転方向を判定する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の構成を示す概略図である。
図1に示すように、プリンタ1は、基台11、回転体12、回転板13、回転検出センサ14、回転方向検出部15、モータ16、減速用歯車17、減速用歯車18、電源供給部19、プラテンローラ21、サーマルヘッド22、及び制御部30を備える。
【0018】
基台11は、プリンタ1の筐体(図示せず)に固定されている。基台11は、回転体12、回転板13、減速用歯車17及び減速用歯車18それぞれの回転軸を支持する軸受(図示せず)を固定する。基台11はまた、回転検出センサ14、回転方向検出部15及びモータ16を固定する。
回転体12は、その回転軸を中心に回転できるように、軸受(図示せず)が基台11に固定されている。
回転板13は、その回転軸を中心に回転できるように、一面に回転体12が固定されている。
回転検出センサ14は、回転体12の回転状態を示す信号を検出し、検出された信号を回転方向検出部15に出力する。回転検出センサ14は、例えばフォトインタラプタである。
回転方向検出部15は、回転検出センサ14から入力された信号に基づき、回転体12の回転方向を検出し、検出した回転体12の回転方向を示す情報を制御部30に出力する。
【0019】
モータ16は、図4に示す電源供給部19から供給された電力を用いて自己が備える回転軸を回転させる。モータ16の回転軸は、その回転軸とは方向が異なる回転軸を備える減速用歯車17に接触している。モータ16の回転軸が回転すると減速用歯車17は、モータ16の回転軸よりも低い回転速度で回転するように配置されている。これにより、モータ16の回転軸は、減速用歯車17に動力をより低い回転速度かつ大きいトルクで伝達し、その回転方向を変更する。
減速用歯車17は、減速用歯車18に接触され、減速用歯車17が回転すると減速用歯車18は、減速用歯車17よりも低い回転速度で回転するように配置されている。これにより、減速用歯車17は減速用歯車18に動力をより低い回転速度かつ大きいトルクで伝達する。
減速用歯車18は、回転体12と回転板13の間の接触部に接触され、減速用歯車18が回転すると回転体12及び回転板13が、減速用歯車18よりも低い回転速度で回転するように配置されている。これにより、減速用歯車18は回転体12及び回転板13に動力をより低い回転速度かつ大きいトルクで伝達する。
【0020】
プラテンローラ21は、用紙あるいは用紙と図示しないインクリボンとをサーマルヘッド22との間に挟み込み、印刷時に回転体の回転力に引っ張られて印刷がずれないように挟持しながら順次用紙が回転体12に巻き取られるように送り出す。プラテンローラ21の要部の形状は、ほぼ円筒状であり、回転軸はサーマルヘッド22と平行に配置されている。プラテンローラ21は、制御部30の制御により順次用紙を送り出すように回転する。プラテンローラ21は、例えば、図示しない歯車を介して同じく図示しないプラテンローラ21の回転制御用モータに組み付けられている。
サーマルヘッド22は、用紙もしくは用紙と図示しないインクリボンとをプラテンローラ21との間に挟みこみ、制御加熱により印刷を行う。
【0021】
制御部30は、図示しないホストから入力された印字命令に基づき、図示しないプラテンローラ21の回転制御用モータを介し、さらに図示しない歯車を介してプラテンローラ21を回転させるように制御する。
【0022】
次に、回転体12の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る回転体12の構成を示す概略図である。
図2に示すように、回転体12は、巻取軸121、用紙ガイド122及び用紙ガイド123を含んで構成される。図2において回転体12の回転軸は一点破線で示される。回転軸回りの矢印は、印刷時に用紙を巻き取る際の回転方向(正転方向)を示す。正転方向とは逆の回転方向を逆転方向と呼ぶ。巻取軸121、用紙ガイド122及び用紙ガイド123は、それぞれ共通の回転軸を有する。また、用紙ガイド123は、用紙ガイド122に対向する面とは反対側の面に、軸部を挟んで回転板13を固定している。これにより、回転体12全体と回転板13は、共通の回転軸を中心に一体として回転できるように構成される。
【0023】
巻取軸121の形状は、ほぼ円筒状である。巻取軸121は、一方向に回転することによって、その側面の周囲に重ねてロール状に用紙を巻き取る。巻き取られる用紙が増加するほど、巻取られる用紙を含めた巻取り径が増加する。
印刷時において、サーマルヘッド22が印字する際に用紙が一定速度vで移動するように、巻取軸121はプラテンローラ21の回転トルクよりも小さなトルクで回転する。巻取軸121の回転速度ωは、用紙を巻き始めるとき、次式(1)で表される。
【0024】
【数1】

【0025】
式(1)において、rは巻取軸121の半径である。式(1)の右辺は、半径rの円筒の表面が速度vで回転するときの回転速度を示す。
他方、巻取軸121に用紙が巻き取られ、用紙の厚みがdとなった場合には、巻取軸121の回転速度ωは、次式(2)で表される。
【0026】
【数2】

【0027】
式(2)の右辺は、半径r+dの円筒の表面が速度vで回転するときの回転速度を示す。
従って、印刷時において用紙が一定速度vで移動するように、巻取軸121は、巻き取られた用紙の厚みdが増加するほど、より遅く回転する。
用紙ガイド122及び用紙ガイド123は、それぞれ巻取軸121に固定される。用紙ガイド122及び用紙ガイド123の形状は、各々ほぼ円盤状である。巻き取られる用紙は、用紙ガイド122及び用紙ガイド123により、幅方向にずれないように規制され、巻取軸121に巻き取られる。
【0028】
次に、回転板13の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る回転板13の構成を示す概略図である。図3において、太矢印は正転方向を示す。
回転板13は、中心からの半径Rにスリット131をN個(Nは、1以上の自然数)有する。スリット131とは、光線を透過する領域であり、その領域以外の部分は光線を透過しない材料、例えば金属や不透明のプラスチック等で構成されている。スリット131は、空隙であってもよいが、光線を透過することができれば空隙である必要はなく、例えば透明の材料を用いて構成されていてもよい。
【0029】
スリット131の幅wは、正転方向に対して単調に増加する。単調に増加とは、一端から他端までの間、一貫して増加することを指す。スリットの幅wは、例えば次式(3)に示すように角度θに比例する。
【0030】
【数3】

【0031】
式(3)において、wmaxは、スリットの幅wの最大値である。式(3)は、スリットの一端(θ=0)から他端(θ=θ1)まで、スリットの幅wがゼロからwmaxまで一定の変化率wmax/θ1で増加することを示す。なお、θ2は、互いに隣接するスリット131間の角度である。Nが2以上であって、各スリットの大きさ、スリット間の間隔が等しいとき、θ1とθ2は、次式(4)で示される関係がある。
【0032】
【数4】

【0033】
式(4)は、円周をN等分した角度2π/Nから、1個のスリット131が示す角度θ1を差し引いた角度がθ2であることを示す。
スリットの個数Nは、少なすぎると角度θの変化に伴う幅wの変化の度合いが十分ではなく、多すぎると長さR・θ1を十分にとれなくなる。そのため、回転板13の径により適切なNを設定する(例えば6〜8)。
【0034】
次に、回転検出センサ14及び関連する機能部の構成及び機能について説明する。図4は、本実施形態に係る回転検出装置10の構成を示す概略図である。
回転検出装置10は、回転体12、回転板13、回転検出センサ14、回転方向検出部15、制御部30、電源供給部19、及びモータ16を含んで構成される。
【0035】
回転検出センサ14は、光源141及び受光センサ142を含んで構成される。
光源141の発光部は光線を放射し、回転板13を挟んで受光センサ142の受光部と相対するように配置される。そのため、光源141と受光センサ142がスリット131を挟んだとき、受光センサ142は、光源141の光線を、スリット131を通して受光し、電気信号に変換する。受光センサ142は、受光した光量に基づく信号を検出し、検出した信号を回転方向検出部15に出力する。
光源141の発光部は、スリット131の最大幅wmaxと同一又はより広い領域に光線を放射する。受光センサ142の受光面の幅も、wmaxと同一又はより広い。そのため、受光センサ142が受光した光線に基づく電気信号の強度は、光線を通過するスリット131の幅wに概ね比例する。従って、受光センサ142が受信した信号の強度は、回転板13が受光センサ142を通過する位置によって異なる。
【0036】
ここで、受光センサが受光した強度として、相対光強度の一例を示す。
図5は、本実施形態に係る相対光強度の一例を示す図である。図5において、縦軸が相対光強度を示し、横軸が移動距離を示す。
相対光強度とは、受光センサ142が出力する信号である電気信号を、その信号の最大値で規格化した値である。相対光強度の最大値は100%であり、最小値は0%である。相対光強度が最大となるのは、スリット131の幅wが最大となる位置が回転検出センサ14を通過する場合である。
移動距離とは、回転板13が回転にするに従い、ある位置から半径Rの円上を移動する距離である。
なお、図5において、回転検出センサ14は、例えば、破線で示した領域201のように移動距離に対して相対光強度が所定の傾き以上で変化する領域を、検出領域として使用する。
【0037】
図5に示すように、相対光強度は移動距離−1.5mm以下では最大値100%とほぼ一定となり、相対光強度は移動距離−1.5mmから+1.5mmにかけて単調に減少する。相対光強度は移動距離1.5mm以上では最小値0%とほぼ一定となる。
上記のことは一例であり、選定するセンサによって移動距離に対する相対光強度が変わる。
図5のP21、P22及びP23は、回転板13が受光センサ142を通過する位置(図6参照)の一例であり、回転板13が時計回りに回転する場合の例である。この例において、各々相対光強度は、11%、31%及び51%となる。これにより、P21、P22、P23の順に、スリット131の幅wが大きくなる。
【0038】
回転方向検出部15は、受光センサ142から入力された信号の強度に基づき、回転板13もしくは回転体12の回転方向及び回転速度を検出する。
ここで、回転方向検出部15は、その検出信号強度が回転に伴い増加する場合、回転体12の回転方向が逆転方向と判定する。回転方向検出部15は、その検出信号強度が回転に伴い減少する場合、回転体12の回転方向が正転方向と判定する。
【0039】
図4に戻り、制御部30は、回転方向検出部15から回転方向信号及び回転速度信号が入力される。電源供給部19は、モータ16に電力を供給する。制御部30は、入力された回転方向信号及び回転速度信号に基づき電源供給部19からモータ16へ供給する電力値を制御する。例えば、回転方向信号が回転体12の回転方向が逆転方向であることを示すとき、すなわち、モータ16の巻き取りトルクが弱いか、もしくはモータ16が回転せず、その結果、回転体12が逆転しまう場合等、制御部30は電源供給部19からモータ16へ供給する電力値を増加させる。この結果、回転体12は正転方向に回転し、用紙が回転体12に巻き取られるように引っ張られる。これにより、用紙の緩みや巻取りむらを解消することができる。
【0040】
また、回転体12の正転時に回転速度が予め設定された回転速度よりも遅いとき、制御部30は電源供給部19からモータ16へ供給する電力値を増加させる。この結果、回転体12の正転方向への回転速度が速くなる。
また、回転速度が予め設定された回転速度よりも速いとき、制御部30は電源供給部19からモータ16へ供給する電力値を減少させる。この結果、回転体12の回転速度が遅くなる。これにより回転体12が設定された回転速度で回転でき、印刷時に予め設定された速度で用紙を移動させ、印刷むら等の発生を防止できる。
【0041】
電源供給部19は、その他、プリンタ1の各構成部分、例えば図1に示すサーマルヘッド22やプラテン駆動用のモータ等に電力を供給する。制御部30に、入力された回転方向信号が回転体12の回転方向が逆転方向であることを示すとき、電源供給部19は、サーマルヘッド22への電力の供給を停止してもよい。このとき、回転体12が逆転方向に回転し、用紙の緩み、巻取りむら、又は用紙が切断された場合等の事象が発生したとき、サーマルヘッド22は印刷を停止する。これにより、用紙がプリンタ1の内部でつまる場合や、サーマルヘッド22が用紙を介さず直に他の部材に接触して損傷を与える等の場合でも、印刷が継続される問題を回避できる。
【0042】
次に回転板13が光センサ142を通過する位置の一例を示す。図6は、本実施形態に係る回転板13が光センサ142を通過する位置の一例を示す図である。図6において、P1、P2及びP3はそれぞれ、図7に示す時刻T1、T2及びT3において回転検出センサ14を通過する位置を示す。時刻は、T1、T2及びT3の順序で時間が経過し、時間間隔は各々ΔTである。太矢印は、正転方向を示す。図6において、P1、P2及びP3が逆転方向に順列している。このことは、時刻T1からT3の期間、回転板13が正転方向に回転していることを示す。また、スリット131の幅wは、正転方向に広くなるため、P1、P2及びP3の順にスリット131の幅wが狭くなる。
【0043】
図6において、P11、P12及びP13はそれぞれ、図7に示す時刻T11、T12及びT13において回転検出センサ14を通過する位置を示す。また、時刻T11、T12及びT13の順序で時間が経過し、時間間隔は各々ΔTである。図6において、P11、P12及びP13が逆転方向に順列している。このことは、時刻T11からT13の期間、回転板13が正転方向に回転していることを示す。また、P11はスリット131の一端に近くスリット131の幅wがゼロとなる位置に近い。P12はスリット131が対面せずに光線が透過しない位置にある。P13はスリット131の他端に近くスリット131の幅wが最大wmaxとなる位置に近い。
【0044】
図6において、P21、P22及びP23はそれぞれ、図7に示す時刻T21、T22及びT23において回転検出センサ14を通過する位置を示す。また、時刻T21、T22及びT23の順序で時間が経過し、時間間隔は各々ΔTである。図6において、P21、P22及びP23が正転方向に順列している。このことは、時刻T21からT23の期間、回転板13が逆転方向に回転していることを示す。また、スリット131の幅wは、正転方向に広くなるため、P21、P22及びP23の順にスリット131の幅wが広くなる。
【0045】
ここで、回転板13が回転検出センサ14を通過する位置毎に光センサ142が出力する信号の強度の一例を示す。図7は、本実施形態に係る回転板13が回転検出センサ14を通過する位置毎の相対光強度の一例を示す図である。
図7において、横軸は時刻、縦軸は相対光強度を示す。図7に示すように、時刻T1、T2及びT3において、相対光強度はそれぞれ、87%、67%及び47%となり、スリットの幅wの減少に伴って相対光強度が減少する。つまり、時刻T1からT3の期間、相対光強度は単調に減少する。
図7に示すように、時刻T11、T12及びT13において、相対光強度はそれぞれ、9%、0%及び93%である。つまり、スリットの幅wがゼロに減少し、スリットの間の領域が回転検出センサ14を通過すると、相対光強度はゼロに減少する。再度スリットの領域が回転検出センサ14を通過すると、相対光強度は再度増加する。つまり、時刻T11−T13の間、相対光強度は単調に変化しない。
図7に示すように、時刻T21、T22及びT23において、相対光強度はそれぞれ、11%、31%及び51%である。つまり、スリットの幅wの増加に伴って相対光強度が増加する。つまり、時刻T21からT23の期間、相対光強度は単調に増加する。
従って、回転方向検出部15は、相対光強度が単調に減少するとき回転体12の回転方向が正転方向と判定し、相対光強度が単調に増加するとき回転体12の回転方向が逆転方向と判定する。回転方向検出部15は、判定した回転方向を示す回転方向信号を制御部30に出力する。
【0046】
次に、回転方向検出部15が、回転体12の回転方向を判定する処理について説明する。図8は、本実施形態に係る回転方向検出部15が回転体12の回転方向を判定する処理を示すフローチャートである。
(ステップS101)
回転方向検出部15は、受光センサ142から相対光強度I1を示す信号を入力され、自己が備える記憶領域に入力された信号を記憶する。ステップS101終了後、ステップS102に進む。
(ステップS102)
回転方向検出部15は、時間間隔ΔT後に受光センサ142から相対光強度I2を示す信号を入力され、自己が備える記憶領域に入力された信号を記憶する。ステップS102終了後、ステップS103に進む。
【0047】
(ステップS103)
回転方向検出部15は、時間間隔ΔT後に受光センサ142から相対光強度I3を示す信号を入力され、自己が備える記憶領域に入力された信号を記憶する。ステップS103終了後、ステップS104に進む。
(ステップS104)
回転方向検出部15は、自己が備える記憶領域から記憶した信号を読み出し、読み出した信号が示す相対光強度の値が単調に増加しているか否か判断する。単調に増加しているとは、この例では相対光強度I1が相対光強度I2未満且つ相対光強度I3未満の値であり、相対光強度I2が相対光強度I3未満の値である(I1<I2<I3)ことである。
回転方向検出部15が、相対光強度の値が単調に増加していると判断した場合(ステップS104;Y)、ステップS106に進む。
回転方向検出部15が、相対光強度の値が単調に増加していないと判断した場合(ステップS104;N)、ステップS105に進む。
【0048】
(ステップS105)
回転方向検出部15は、読み出した信号が示す相対光強度の値が単調に減少しているか否か判断する。単調に減少しているとは、この例では相対光強度I1が相対光強度I2とI3より大きな値であり、相対光強度I2が相対光強度I3より大きな値である(I1>I2>I3)ことである。
回転方向検出部15が、相対光強度の値が単調に減少していると判断した場合(ステップS105;Y)、ステップS107に進む。回転方向検出部15が、相対光強度の値が単調に増加していないと判断した場合(ステップS105;N)、ステップS108に進む。
【0049】
(ステップS106)
回転方向検出部15は、相対光強度の値が単調に増加していると判断したため、回転体12の回転方向は逆転方向と判定し、逆転方向であることを示す回転方向信号を制御部30に出力する。その後、処理を終了する。
(ステップS107)
回転方向検出部15は、相対光強度の値が単調に減少していると判断したため、回転体12の回転方向は正転方向と判定し、正転方向であることを示す回転方向信号を制御部30に出力する。その後、処理を終了する。
【0050】
(ステップS108)
回転方向検出部15は、自己が備える記憶領域に記憶されたI1を示す信号を消去し、I2、I3を示す信号をそれぞれシフトさせ、I1、I2を示す信号とする。これにより、回転方向検出部15は相対光強度の値を観測する時刻の区間を時間間隔ΔT後にシフトする。ステップS108終了後、ステップS103に戻る。
【0051】
回転方向検出部15は、時間間隔ΔTを、次式(5)で示されるように設定しておく。
【0052】
【数5】

【0053】
式(5)において、ωは印刷時における回転体12の回転速度である。式(5)は、回転速度ωがスリット131の間を回転検出センサ14が通過する時間よりも大きいことを示す。これにより、回転検出センサ14を通過する位置が、スリット131の間となる位置、つまり光を透過しない位置となること、が繰り返されずに済む。よって、回転検出センサ14は、効率よく回転体12の回転方向を判定できる。
また、回転方向検出部15は、時間間隔ΔTを、次式(6)で示されるように設定しておく。
【0054】
【数6】

【0055】
式(6)において、Mは、回転検出センサ14が回転方向を判断するために要する信号値(上述の例では相対光強度)の個数(上述の例では3)である。式(6)は、回転方向を判断するための観測時間(M−1)ΔTが、角度θ1の1個のスリット131を回転速度ωで通過する時間よりも小さいことを示す。
【0056】
なお、回転方向検出部15は、回転体12の回転方向が正転方向と判定したとき、検出された相対光電流の変化率に基づき回転体12の回転速度ωを算出する。例えば、スリット131の幅wが、角度θにより一定の変化率で増加するとき、回転方向検出部15は、次式(7)を用いて回転速度ωを算出することができる。
【0057】
【数7】

【0058】
式(7)において、相対光強度I1、I3は、パーセント(%)値である。式(7)は、回転速度ωが、長さθ1のスリット131を観測時間2ΔTで通過する速度を、観測された相対光電流の変化I3−I1の100%に対する割合を乗じた値であることを示す。即ち、式(7)は、相対光電流が最大(100%)となるときのスリット131の幅wがwmax、最小(ゼロ%)となるときのwがゼロであることに基づく。
回転方向検出部15は、算出した回転速度ωを示す回転速度信号を制御部30に出力する。
【0059】
なお、上述の説明では、プリンタ1がサーマルヘッド22を用いて印刷する熱転写プリンタおよび感熱式プリンタである例を用いたが、本実施形態では、それには限られず、他の印字方式を採用するプリンタ、例えば、インクジェットプリンタ、ドットインパクト式プリンタ、レーザービームプリンタ、であってもよい。
上述の説明では、回転体12が用紙を巻き取る例を用いたが、本実施形態では、それには限られず、他の部材、例えばインクリボンを巻き取る例であってもよい。
【0060】
上述の説明では、スリット131の幅wが、正転方向に単調に増加する例を用いたが、本実施形態では、それには限られず、逆転方向であってもよい。その場合、回転方向検出部15は、信号(例えば、相対光強度)の値が単調に増加するとき、回転体12の回転方向が正転方向と判定し、信号の値が単調に減少するとき、回転体12の回転方向が逆転方向と判定する。
【0061】
以上のように、本実施形態の一態様によれば、検出した光の強度が単調に増減することに基づきスリットの幅が増減する回転方向が検出できるので、短い用紙等を巻き取るときでも回転体の回転方向を検出できる。
また、本実施形態の他の態様によれば、回転板は、2以上のスリットを有し、各スリットの幅が増減する方向が同一である。そのため、光の強度の増減が著しくなるため、回転方向を精度よく検出することができる。
また、本実施形態の他の態様によれば、回転方向検出部は、回転板13に形成されるスリット内で少なくとも光の強度を3回繰り返して検出し、検出した強度が単調に変化することに基づいて回転方向を検出する。これにより、回転体の回転方向を安定して検出することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態におけるプリンタ1、回転検出装置10の一部、例えば、回転方向検出部15をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、プリンタ1又は回転検出装置10に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における回転方向検出部15の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。回転方向検出部15の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0063】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…プリンタ、10…回転検出装置、11…基台、
12…回転体、121…巻取軸、122…用紙ガイド、123…用紙ガイド、
13…回転板、131…スリット、
14…回転検出センサ、141…光源、142…受光センサ、15…回転方向検出部
16…モータ、17…減速用歯車、18…減速用歯車、19…電源供給部、
21…プラテンローラ、22…サーマルヘッド、30…制御部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体に伴って回転する回転板と、
前記回転板から透過した光を検出する光検出部と、
前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部と、
を備え、
前記回転板は、
一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有すること、
を特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
前記回転板は、
2以上のスリットを有し、各スリットの幅が増減する方向が同一である
ことを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
【請求項3】
前記回転方向検出部は、
3つ以上の異なる時刻の光の強度を検出し、前記検出した3つ以上の異なる時刻の光の強度が単調に変化することに基づいて前記回転方向を検出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転検出装置。
【請求項4】
前記3つ以上の異なる時刻は、
予め定められた時間間隔の連続する時刻である
ことを特徴とする請求項3に記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する制御部
を備え、
前記制御部は、
前記回転方向検出部が検出した前記回転体の回転方向に基づき、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転検出装置。
【請求項6】
回転体、前記回転体に伴って回転する回転板、及び前記回転板から透過した光を検出する光検出器を備え、前記回転板が、一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有する回転検出装置において、
前記回転検出装置は、前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する過程を有すること、
を特徴とする回転検出方法。
【請求項7】
回転体と、
前記回転体に伴って回転する回転板と、
前記回転板から透過した光を検出する光検出部と、
前記検出した光の強度の増減に基づいて前記回転体の回転方向を検出する回転方向検出部と
を備え、
前記回転板は、
一つの回転方向に対して幅が単調に変化するスリットを有する
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する制御部
を備え、
前記制御部は、
前記回転方向検出部が検出した前記回転体の回転方向に基づき、前記回転体の回転方向と回転速度とを制御する
ことを特徴とする請求項5に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−198042(P2012−198042A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60773(P2011−60773)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】