説明

回転機及び車両

【課題】装置の複雑化を招くことなしに温度上昇を効果的に抑えることができる回転機、及び当該回転機を備える車両を提供する。
【解決手段】モータ1は、回転軸20と、回転軸20の周りで回転可能に構成されたロータ30と、ロータ30の周囲に設けられたステータ40と、ステータ40の周囲に配設されてオイルOLが導かれる空間である冷却室14をステータ40との間に形成する胴体部材11と、少なくともステータ40に接触した状態で冷却室14内に配設され、ステータ40と冷却室14内に導かれたオイルOLとを冷却する冷却水Wを循環させる冷却配管50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機や電動機等の回転機、及び当該回転機を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機等の回転機は、固定子(ステータ)と回転子(ロータ)とを備えており、固定子に対して回転子が相対的に回転することにより、回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、或いは電気エネルギーを回転運動エネルギーに変換する機器である。車両に設けられる回転機の代表的なものとしては、エンジンにより駆動されて発電するオルタネータが挙げられる。
【0003】
また、近年においては、低炭素社会を実現すべく、動力発生源としてエンジンと回転機とを併用するハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)や、動力発生源として回転機のみを用いる電気自動車(EV:Electric Vehicle)の研究開発が盛んに行われている。これらの車両に設けられる回転機は、動力を発生させる電動機として用いられるのみならず、減速時に発生する回生エネルギーを回収するための発電機としても用いられる。
【0004】
このような回転機においては、回転子及びコイルエンド(固定子のコイルエンド)の冷却には冷却油が用いられ、固定子の冷却には冷却水が用いられることが多い。冷却水は、車両に設けられているラジエータを用いて冷却される。これに対し、冷却油は、冷却水よりも熱伝導率が低いという性質を有するため、伝熱面積を大きく取って積極的に冷却する必要がある。
【0005】
以下の特許文献1には、オイルクーラを別途設けて冷却油を冷却する技術が開示されている。また、以下の特許文献2には、油溜まりに冷却フィンを設けることによって冷却油を冷却する技術が開示されている。尚、以下の特許文献3〜5には、固定子の周囲に螺旋パイプや蛇行パイプを設け、これらパイプを用いて冷却水を循環させることにより、固定子を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−142408号公報
【特許文献2】特開平5−122903号公報
【特許文献3】特開平7−111759号公報
【特許文献4】特開2001−25211号公報
【特許文献5】米国特許第5859482号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したハイブリッド車や電気自動車に設けられる回転機は、車載スペースを低減するために小型化されており、また、走行性能を向上させるために高出力化及び高速化が図られている。このように、回転機の出力密度が高まった結果として、回転子からの発熱量及び固定子に設けられるコイルからの発熱量が共に増大している。これらの発熱に伴う温度上昇は、回転機の損失増大や磁石の減磁等を引き起こす原因になり、回転機の性能を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
ここで、上述した特許文献1に開示されたオイルクーラのように、冷却油に対する冷却能力の高いオイルクーラを別途設けるという対策を行えば、回転機の発熱量が増大した場合であっても回転機の温度上昇を防止できると考えられる。また、回転機の発熱量の増大に合わせて、上述した特許文献2に開示された冷却フィンの数を増やすという対策を行うことによっても回転機の温度上昇を防止できると考えられる。しかしながら、これらの対策を行うには、装置の複雑化を招いてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、装置の複雑化を招くことなしに温度上昇を効果的に抑えることができる回転機、及び当該回転機を備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の回転機は、回転軸(20)の周りで回転可能に構成された回転子(30)と、該回転子の周囲に設けられた固定子(40)とを備える回転機(1)において、前記固定子の周囲に配設され、冷却油(OL)が導かれる空間である冷却室(14)を前記固定子との間に形成するカバー部材(11)と、少なくとも前記固定子に接触した状態で前記冷却室内に配設され、前記固定子と前記冷却室内に導かれた前記冷却油とを冷却する冷却水(W)を循環させる冷却配管(50〜54)とを備える。
また、本発明の回転機は、前記冷却配管が、隣接する配管壁間の距離をあけて螺旋状又は蛇行状に前記固定子の外周に巻回されていることを特徴としている。
また、本発明の回転機は、前記冷却配管が、二つ折りにされた配管において、一方の配管(R1)が前記冷却水の往路とされて、他方の配管(R2)が前記冷却水の復路とされた配管であって、前記回転軸の軸方向に沿って前記冷却水の往路配管と復路配管とが交互に配置されるよう前記固定子の外周に螺旋状に巻回されていることを特徴としている。
また、本発明の回転機は、前記冷却配管が、前記回転軸の軸方向に蛇行するように、前記固定子の外周に沿って巻回されていることを特徴としている。
また、本発明の回転機は、前記冷却配管が、断面形状が矩形環形状の配管であることを特徴としている。
また、本発明の回転機は、前記冷却配管が、前記固定子と前記カバー部材との双方に接触した状態で前記冷却室内に配設されていることを特徴としている。
また、本発明の回転機は、前記冷却室を介した冷却油が、前記回転子の冷却及び潤滑の少なくとも一方に用いられることを特徴としている。
本発明の車両は、上記の何れかに記載の回転機(1)と、前記回転機に設けられる前記冷却配管(50〜54)を循環する冷却水(W)を冷却するラジエータ(62)と、前記回転機の前記冷却室を介した冷却油(OL)を供給する供給部(63)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバー部材と固定子との間に冷却すべき冷却油が導かれる空間である冷却室を形成するとともに、少なくとも固定子に接触した状態で冷却配管を冷却室内に配設し、冷却配管を循環する冷却水によって冷却油及び固定子を冷却しているため、回転機を含む装置全体の複雑化を招くことなしに温度上昇を効果的に抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による回転機としてのモータの構成を示す側断面図である。
【図2】同モータに設けられる冷却配管の構成を説明する透視図である。
【図3】同モータに設けられる冷却配管の第1変形例を説明する側面透視図である。
【図4】同モータに設けられる冷却配管の第2変形例を説明するための図である。
【図5】同モータに設けられる冷却配管の第3変形例を説明する側断面図である。
【図6】同モータに設けられる冷却配管の第2変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態による車両の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による回転機及び車両について詳細に説明する。尚、以下の実施形態では、回転機が、外部から供給される電流(例えば、三相交流電流)により回転駆動されるモータ(電動機)である場合を例に挙げて説明する。
【0014】
〔回転機〕
図1は、本発明の一実施形態による回転機としてのモータの構成を示す側断面図である。図1に示す通り、モータ1は、ハウジング10、回転軸20、ロータ30(回転子)、及びステータ40(固定子)を備えており、外部から供給される電流によってロータ30とステータ40との間に電磁力が作用し、ロータ30が回転軸20の周りで回転することによって回転軸20が回転駆動される。尚、以下では、図1中の左右方向を回転軸20の「軸方向」という。
【0015】
ハウジング10は、胴体部材11(カバー部材)、左側壁部材12、及び右側壁部材13からなり、その内部に回転軸20の一部、ロータ30、及びステータ40等を収容する。胴体部材11は、鉄合金等によって形成されており、軸方向両端が開口している円筒形状の部材である。この胴体部材11は、内周面側に配設されるステータ40との間に冷却すべきオイルOL(冷却油)が導かれる空間である冷却室14を形成すべく、左側壁部材12及び右側壁部材13よりも厚みが減じられている。尚、オイルOLとしては、例えば自動変速機専用オイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)を用いることができる。
【0016】
左側壁部材12及び右側壁部材13は、鉄合金等によって形成された略円盤形状の部材であって、その外径が胴体部材11の外径と同程度に設定されており、胴体部材11の左開口部位及び右開口部位を閉塞するようにそれぞれ取り付けられている。これら左側壁部材12及び右側壁部材13の中心部には、回転軸20を支持する軸受15,16が介挿される円形形状の穴部がそれぞれ形成されている。
【0017】
回転軸20は、その中心軸に沿ってオイル流路21が形成された円環棒状部材であり、左側壁部材12から軸方向左側に突出し、且つ、右側壁部材13から軸方向右側に突出した状態で、中心軸の周りで回転可能に軸受15,16に支持される。回転軸20に形成されたオイル流路21は、回転軸20及びロータ30を冷却するために形成された流路であり、上述した冷却室14を介することによって冷却されたオイルOLが導かれる。ハウジング10から軸方向左側又は軸方向右側に突出している部分は、例えば車両の駆動軸等に連結される。これに対し、回転軸20のハウジング10に収容されている部分には、ロータ30が取り付けられている。
【0018】
ロータ30は、ロータコア31、永久磁石32、及びエンドプレート33を備えており、回転軸20に取り付けられて回転軸20の周りで回転可能に構成されている。ロータコア31は、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を複数積層して構成された円柱形状の部材である。このロータコア31は、その外周面とステータ40(ステータコア41)の内周面との間に環状の間隙(エアギャップ)が形成されるように外径が設定されている。
【0019】
永久磁石32は、軸方向に延びる直方体形状の磁石であり、ロータコア31のステータ40側の近傍に、ロータコア31の外周に沿って一定の間隔をもって複数(例えば、8個)埋設されている。具体的に、ロータコア31には軸方向に延びる貫通孔が外周に沿って一定の間隔をもって配列形成されており、永久磁石32はこれら貫通孔に収容固定されている。尚、永久磁石32は、ロータコア31の外周に沿って交番磁界が形成されるように通孔に収容固定される。
【0020】
エンドプレート33は、ロータコア31の軸方向(電磁鋼板の積層方向)両側端部に設けられた円盤形状の部材である。このエンドプレート33は、その外径がロータコア31の外径と同じに設定されており、ロータコア31を軸方向に挟持する。尚、エンドプレート33は、回転軸20に形成されたオイル流路21に連通し、オイル流路21に導かれるオイルOLをロータコア31及び永久磁石32の近傍に導く流路を有する構成であっても良い。かかる構成にすることで、ロータコア31及び永久磁石32を効率的に冷却することができる。
【0021】
更には、また、エンドプレート33を軸受15,16の近傍まで伸ばした構成にし、ロータコア31及び永久磁石32に導かれたオイルOLを軸受15,16に導いてオイルOLで軸受を15,16を潤滑する構成にしても良い。かかる構成にすることで、ロータコア31及び永久磁石32から熱を奪って温度上昇し、粘性が低下したオイルOLが潤滑油として軸受15,16に供給されるため、軸受15,16の摩擦抵抗が低減して機械的損失が低減し、モータ1の高効率化を実現することができる。
【0022】
ステータ40は、ステータコア41及びコイル42を備えており、前述したハウジング10の内周面側に固定されている。ステータコア41は、上述したロータコア31と同様に、磁性体からなる板材としての電磁鋼板を複数積層して構成された円環状の部材であり、その内周面とロータコア31の外周面との間に前述したエアギャップが形成されるとともに、その外周面とハウジング10の胴体部材11の内周面との間で前述した冷却室14が形成されるようにロータコア31の周囲に配設される。尚、ステータコア41の両端部には、エポキシ樹脂等で形成された円環形状のシール部材43が設けられており、このシール部材43によって冷却室14が密封される。
【0023】
コイル42は、ステータコア41に形成されたスロット(図示省略)に挿入されており、外部から供給される電流に応じた磁極を形成する。ここで、コイル42は、三相交流のうち、U相の電流が供給される第1コイル、V相の電流が供給される第2コイル、及びW相の電流が供給される第3コイルからなり、これら第1〜第3コイルが、ステータコア41の周方向に順次配列されている。ここで、コイル42の図1に示されている部分(ステータコア41から軸方向両側に突出する部分)はコイル端部(コイルエンド)42aである。尚、上述した冷却室14を介することによって冷却されたオイルOLをコイル端部42aに導いてコイル端部42aを冷却する構成にするのが望ましい。
【0024】
図1に示すモータ1は、ロータコア31の外周面とステータコア41の内周面との間に形成されるエアギャップ内に配置され、樹脂等で形成された円筒形状のステータシール44を備えている。このステータシール44によって、ハウジング10内においてロータ30が配設される空間と、ハウジング10内においてステータ40が配設される空間とが分離される。
【0025】
ここで、前述したハウジング10の一部をなす胴体部材11には、冷却室14に連通するオイル配管11a,11bが設けられている。冷却すべきオイルOLは、例えばオイル配管11aを介して冷却室14に導かれ、オイル配管11bを介して冷却室14から外部に排出される。また、冷却室14の内部には、ステータコア41の外周面に接触した状態で冷却配管50が配設されている。この冷却配管50は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の熱伝導率の高い金属によって形成された断面形状が円環形状の配管であって、ステータコア41と冷却室14内に導かれたオイルOLを冷却する冷却水Wを循環させる配管である。冷却配管50の両端部50a,50bは、胴体部材11に形成された貫通孔を介して外部に導かれている。
【0026】
図2は、モータに設けられる冷却配管の構成を説明する透視図であって、(a)は冷却配管の側面透視図であり、(b)は冷却配管の正面透視図である。尚、図2では、理解を容易にするために、ハウジング10の一部、回転軸20、及びロータ30の図示を省略している。また、ステータ40については寸法を変えており、一部の部材については断面図で図示している。
【0027】
図2に示す通り、冷却配管50は、軸方向に間隔をあけてステータコア41の外周全体に亘って螺旋状に巻回されている。このように、冷却配管50が間隔をあけて巻回されるのは、冷却室14に導かれたオイルOLとの接触面積(伝熱面積)を増大させることによって、オイルOLの冷却効率を高めるためである。どの程度の間隔をあけるかは、オイルOLを冷却する能力とステータコア41を冷却する能力とに応じて適宜設定される。
【0028】
次に、上記構成におけるモータ1の動作について簡単に説明する。外部からの三相交流がモータ1に供給されると、三相交流の各相の電流がステータ40に設けられたコイル42(第1〜第3コイル)に流れる。すると、供給される電流に応じてロータ30の回転方向に沿って回転磁界が形成される。すると、外周に沿って交番磁界が形成されたロータコア31がこの回転磁界と相互作用し、吸引力及び反発力が生ずることによりロータ30が回転し、これにより回転軸20が回転駆動される。尚、コイル42に対する電流供給が行われてロータ30が回転すると、ステータ40に設けられたコイル42やロータ30に設けられた永久磁石32が発熱する。
【0029】
他方、モータ1の駆動時には、不図示のオイルポンプによってオイルOLがオイル配管11aから冷却室14に導かれるとともに、不図示のポンプ等によって冷却水Wが一方の端部50aから冷却配管50に導かれる。冷却水Wが冷却配管50に導かれることによって、外周面に冷却配管50が接触するステータコア41が冷却されるとともに、冷却室14に導かれて冷却配管50に接触するオイルOLが冷却される。
【0030】
冷却配管50を介した冷却水Wは、他方の端部50bから外部に排出され、ラジエータ等の冷却装置で冷却された後に再び一方の端部50aから冷却配管50に導かれる。これに対し、冷却室14に導かれて冷却されたオイルOLは、オイル配管11bから外部に排出され、例えばオイル流路21、コイル端部42a、軸受15,16等に導かれて、モータ1の冷却や潤滑に用いられる。
【0031】
以上の通り、本実施形態では、ハウジング10の胴体部材11とステータコア41との間に冷却すべきオイルが導かれる空間である冷却室14を形成するとともに、ステータコア41の外周に巻回されて冷却水Wを循環させる冷却配管50を冷却室14内に配設し、冷却配管50を循環する冷却水WによってオイルOL及びステータコア41を冷却している。このように、本実施形態のモータ1は、いわばオイルクーラを兼ね備えた構成であるため、モータ1を備える装置全体の複雑化を招くことなしにモータ1の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0032】
次に、モータ1に設けられる冷却配管の変形例について説明する。尚、以下に説明する各変形例の説明に用いる図においては、図2に示した部材と同じ部材については同一の符号を付しており、また、ハウジング10の一部、回転軸20、及びロータ30の図示を省略している。また、ステータ40については寸法を変えており、一部の部材については断面図で図示している。
【0033】
図3は、モータに設けられる冷却配管の第1変形例を説明する側面透視図である。図3に示す第1変形例に係る冷却配管51は、図2に示す冷却配管50と同様に、軸方向に間隔をあけてステータコア41の外周全体に亘って螺旋状に巻回されたものである。但し、冷却配管51は、U字形状に二つ折りにされた状態でステータコア41の外周に螺旋状に巻回されている。
【0034】
つまり、冷却配管51は、一方の端部51aから折り返し部51cまでの配管R1が冷却水Wの往路とされ、折り返し部51cから他方の端部51bまでの配管R2が冷却水Wの復路とされた配管である。この冷却配管51が、U字形状に二つ折りにされた状態で螺旋状に巻回されることにより、ステータコア41の外周には、軸方向に沿って配管R1と配管R2とが交互に配置されることになる。
【0035】
図3に示す冷却配管51は、図2に示す冷却配管50と同様に、装置の複雑化を招くことなしにモータ1の温度上昇を効果的に抑えることができる。これに加え、図3に示す冷却配管51は、図2に示す冷却配管50に比べて、ステータコア41に巻回するために必要な手間を半減することができる。また、図3に示す冷却配管51は、冷却水Wが供給される端部51aと冷却水Wが排出される端部51bとを一箇所にまとめることができ、端部51a,51bからラジエータ等の冷却装置に接続される配管を分岐する必要がないため、配管を簡素化して小型化を実現することができる。
【0036】
図4は、モータに設けられる冷却配管の第2変形例を説明するための図であって、(a)は冷却配管の正面断面図であり、(b)は冷却配管の斜視図である。図4に示す第2変形例に係る冷却配管52は、軸方向に蛇行するようにステータコア41の外周に沿って巻回されている。この冷却配管52は、冷却配管50,51とは異なり、ステータコア41の周方向(ロータ30の回転方向)に間隔をあけて巻回されている。
【0037】
ステータコア41の周方向における冷却配管52の間隔は、オイルOLを冷却する能力及びステータコア41を冷却する能力に加えて、ステータコア41の外周に設けられる突出部41aの大きさに応じて適宜設定される。尚、この突出部41aは、締結ボルトを用いてステータコア41をハウジング10に固定するためにステータコア41の外周に設けられており、各々には締結ボルトが介挿される孔が形成されている。尚、突出部41aが形成された部分における冷却配管52の間隔と、突出部41aが形成されていない部分における冷却配管52の間隔とは、同じあっても異なっていても良い。
【0038】
図4に示す冷却配管52も、図2,図3に示す冷却配管50,51と同様に、装置の複雑化を招くことなしにモータ1の温度上昇を効果的に抑えることができる。これに加え、図4に示す冷却配管52は、ステータコア41の外周に形成された突出部41aによって冷却配管を螺旋状に巻回させることができなくとも、突出部41aを避けて蛇行状(軸に平行な流路を有する曲折配管)に巻回させることが可能である。
【0039】
図5は、モータに設けられる冷却配管の第3変形例を説明する側断面図である。図5に示す第3変形例に係る冷却配管53は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の熱伝導率の高い金属によって形成された断面形状が矩形環形状の配管である。この冷却配管53は、例えば図2,図3に示す冷却配管50,51と同様に、軸方向に間隔をあけてステータコア41の外周全体に亘って螺旋状に巻回される。尚、図5に示す冷却配管53と同様に、ステータコア41の外周に蛇行状に巻回することも可能である。
【0040】
図5に示す冷却配管53は、図2〜図4に示す断面形状が円環形状の配管に比べてステータコア41との接触面積(伝熱面積)を増大させることができ、ステータコア41を冷却する能力を高めることができる。但し、ステータコア41を冷却する能力を高めるために、軸方向における冷却配管53の間隔を余り狭くしてしまうと、オイルOLとの接触面積(伝熱面積)が低減し、オイルOLを冷却する能力が低下してしまう。このため、ステータコア41及びオイルOLの双方を冷却する能力を考慮して、冷却配管53は図4に示す冷却配管54の間隔を設定するのが望ましい。
【0041】
図6は、モータに設けられる冷却配管の第4変形例を説明する側断面図である。図6に示す第4変形例に係る冷却配管54は、図2〜図4に示した冷却配管50〜52と同様に、断面形状が円環形状の配管である。但し、冷却配管50〜52は、ステータコア41の外周にのみ接触する状態で巻回されていたのに対し、図6に示す冷却配管54は、ステータコア41の外周とハウジング10の胴体部材11の内周との双方に接触する状態で巻回されている。
【0042】
冷却配管54を、ステータコア41及び胴体部材11の双方に接触させることで、ステータコア41のみならず胴体部材11も冷却することが可能になる。また、冷却配管54がステータコア41及び胴体部材11の双方に接触していることで冷却室14内には冷却配管54によって仕切られる螺旋状の流路が形成される。これにより、冷却室14に導かれたオイルOLをその流路に沿って螺旋状に導くことができるため、オイルOLをより効率的に冷却することができる。尚、図6では断面形状が円環形状である冷却配管54を図示しているが、冷却配管53と同様に、冷却配管54の断面形状を矩形環形状にすることも可能である。
【0043】
〔車両〕
図7は、本発明の一実施形態による車両の要部構成を示すブロック図である。図7に示す通り、本実施形態の車両60は、図1,図2を用いて説明したモータ1、ポンプ61、ラジエータ62、供給部63、内蔵オイルタンク64、及び内蔵オイルポンプ65を備えており、モータ1で発生する動力によって走行が可能な電気自動車である。尚、図1においては、モータ1を駆動する電力を供給するバッテリ、及びモータ1の回転を制御するインバータ等の制御装置は省略している。
【0044】
ポンプ61は、冷却水Wを循環させるために設けられ、モータ1に設けられた冷却配管50の他端50bから排出される冷却水Wをラジエータ62に向けて送出する。ラジエータ62は、ポンプ61から送出されてくる冷却水Wを冷却する冷却装置である。このラジエータ62は、空冷式のもの及び水冷式のものの何れであっても良い。ラジエータ62で冷却された冷却水Wは、モータ1に設けられた冷却配管50の一端50aに供給される。
【0045】
供給部63は、モータ1の冷却室14を介してオイル配管11bから排出されるオイルOLを供給する部位である。この供給部63には、オイル配管11bから排出されるオイルOLが冷却用オイルとして用いられる冷却部63aと潤滑用オイルとして用いられる潤滑部63bとが含まれる。冷却部63aは、例えば図1を用いて説明した永久磁石32やコイル42等の発熱を伴う部位であり、潤滑部63bは、例えば軸受15,16等の機械抵抗を低減する必要のある部位である。
【0046】
内蔵オイルタンク64は、モータ1に内蔵されて冷却部63a(例えば、図1のオイル流路21、コイル42等)や潤滑部63b(例えば、図1の軸受15,16等)を介したオイルOLを一時的に貯蔵するタンクである。内蔵オイルポンプ65は、オイルOLを循環させるために設けられ、内蔵オイルタンク64に一時的に貯蔵されたオイルOLをモータ1のオイル配管11aに向けて送出する。内蔵オイルタンク64及び内蔵オイルポンプ65は共にモータ1に内蔵されているため、車両60の構成をより簡略化することができる。
【0047】
上記構成において、ポンプ61が駆動されると、モータ1に設けられた冷却配管50の他端50bからポンプ61に冷却水Wが吸い込まれてラジエータ62に向けて送出され、ラジエータ62で冷却される。ラジエータ62で冷却された冷却水Wは、モータ1に設けられた冷却配管50の一端50aに供給される。このようにして、ラジエータ62で冷却された冷却水Wが配管50を介して循環され、モータ1のステータコア41等が冷却される。
【0048】
また、内蔵オイルポンプ65が駆動されると、モータ1の内蔵オイルタンク64から内蔵オイルポンプ65にオイルOLが吸い込まれて、モータ1に設けられたオイル配管11aに向けて送出される。このオイルOLは、オイル配管11aを介して冷却室14に導かれ、冷却室14内に配設された冷却配管50により冷却される。冷却室14を介したオイルOLは、オイル配管11bから冷却部63aや潤滑部63bに供給され、冷却用オイルや潤滑用オイルとして用いられ、その後内蔵オイルタンク64に回収される。
【0049】
このようにして、冷却室14を介することによって冷却されたオイルOLが車両60の発熱を伴う部位の冷却用オイル或いは機械抵抗を低減する必要のある部位の潤滑用オイルとして用いられる。以上の通り、本実施形態では、いわばオイルクーラを兼ね備えた構成のモータ1を動力発生源として用いるため、車両60全体の構成を簡略化することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態による回転機及び車両について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、電動機の一種であるモータを例に挙げて説明したが、発電機にも本発明を適用することができる。また、モータ1に設けられるハウジング10は、胴体部材11、左側壁部材12、及び右側壁部材13から構成されるものである必要は必ずしもなく、ステータコア41との間に冷却室14を形成できれば任意の構成にすることができる。
【0051】
上記実施形態では、モータを動力発生源として用いる車両を例に挙げて説明したが、モータを回生エネルギーを回収するための発電機として用いることも可能である。また、上記実施形態では、電気自動車を例に挙げて説明したが、本発明は駆動源をエンジンと電気モータとするハイブリッド車にも適用可能である。更に、上記実施形態では、図7において、モータ1の冷却室14から排出されるオイルOLを冷却用オイル及び潤滑用オイルとして用いる例について説明したが、何れか一方の用途に用いても良い。また、冷却用オイルとして用いられるオイルOLと潤滑用オイルとして用いられるオイルOLとを完全に別系統とし、冷却用オイルとして用いられるオイルOLを冷却するモータと、潤滑用オイルとして用いられるオイルOLを冷却するモータとを別にしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ
11 胴体部材
14 冷却室
20 回転軸
30 ロータ
40 ステータ
50〜54 冷却配管
60 車両
62 ラジエータ
63 供給部
OL オイル
R1 往路
R2 復路
W 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りで回転可能に構成された回転子と、該回転子の周囲に設けられた固定子とを備える回転機において、
前記固定子の周囲に配設され、冷却油が導かれる空間である冷却室を前記固定子との間に形成するカバー部材と、
少なくとも前記固定子に接触した状態で前記冷却室内に配設され、前記固定子と前記冷却室内に導かれた前記冷却油とを冷却する冷却水を循環させる冷却配管と
を備えることを特徴とする回転機。
【請求項2】
前記冷却配管は、隣接する配管壁間の距離をあけて螺旋状又は蛇行状に前記固定子の外周に巻回されていることを特徴とする請求項1記載の回転機。
【請求項3】
前記冷却配管は、二つ折りにされた配管において、一方の配管が前記冷却水の往路とされて、他方の配管が前記冷却水の復路とされた配管であって、前記回転軸の軸方向に沿って前記冷却水の往路配管と復路配管とが交互に配置されるよう前記固定子の外周に螺旋状に巻回されていることを特徴とする請求項2記載の回転機。
【請求項4】
前記冷却配管は、前記回転軸の軸方向に蛇行するように、前記固定子の外周に沿って巻回されていることを特徴とする請求項2記載の回転機。
【請求項5】
前記冷却配管は、断面形状が矩形環形状の配管であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の回転機。
【請求項6】
前記冷却配管は、前記固定子と前記カバー部材との双方に接触した状態で前記冷却室内に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の回転機。
【請求項7】
前記冷却室を介した冷却油は、前記回転子の冷却及び潤滑の少なくとも一方に用いられることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の回転機。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の回転機と、
前記回転機に設けられる前記冷却配管を循環する冷却水を冷却するラジエータと、
前記回転機の前記冷却室を介した冷却油を供給する供給部と
を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23837(P2012−23837A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158922(P2010−158922)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】