説明

回転機械、スプライン噛合部の潤滑システムおよびその潤滑方法

【課題】付加的な外部の潤滑システムを用いることなくスプライン噛合部から摩耗粉を効率的に除去し、スプライン噛合部を効率的に潤滑する。
【解決手段】ジェネレータシャフト16とクランクシャフト18とのスプライン噛合部20は、複数のジェネレータシャフト歯部22によって画定されており、該歯部22は、相補的な複数のクランクシャフト歯部24と噛み合う。新しい潤滑油用リザーバ36が、圧力容器34に配置され、例えば、ジェネレータシャフト16の外径部38に配置される。新しい潤滑油用リザーバ36は、ある容量の潤滑油40によって満たされている。ジェネレータ10の動作時には、歯部22と歯部24とが摩耗することにより金属摩耗粉44が形成され、この摩耗粉44は、潤滑油用チャンバ42において潤滑油40と混合される。摩耗粉44は、遠心力によって潤滑油用チャンバ42から異物用チャンバ46へと半径方向外周側に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に関し、特に、回転機械のスプラインによる結合に関する。
【背景技術】
【0002】
機械の回転構成要素の間の結合や機械の間の結合は、スプラインによってなされることが多い。スプラインによる結合は、第1の構成要素の雄型歯部を備えており、該雄型歯部は、第2の構成要素の相補的な歯部と噛み合う。このスプライン結合によって、第1の構成要素の回転エネルギを第2の構成要素へと効率的に伝達させることができる。スプラインの使用中には、例えば、スプライン歯部の摩耗によって摩耗粉が形成されるが、この摩耗粉は、スプラインを継続して確実に動作させるために、スプラインから除去されなければならない。一般に、加圧式潤滑システムが利用され、外部のポンプによって、潤滑油、例えば、オイルをスプラインの結合部へと噴射し、集まった摩耗粉を洗浄する。この後、オイルは、一般に、機械の外部へと捨てられる。潤滑システムにおいて、上記のような加圧式の洗浄を実施すると、回転機械のコストが非常に高くなり、回転機械が複雑なものとなってしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの特徴は、スプライン噛合部の潤滑システムが、第1の回転構成要素と第2の回転構成要素とのスプライン噛合部の半径方向外周側に配置された少なくとも1つの異物用チャンバを備えていることである。摩耗による異物が、中心軸を中心とした第1の回転構成要素および第2の回転構成要素の回転によりスプライン噛合部から少なくとも1つの異物用チャンバへと移動する。少なくとも1つの潤滑油用リザーバが、ある容量の潤滑油を貯えている。摩耗による異物が、スプライン噛合部から少なくとも1つの異物用チャンバへ移動することに伴い、ある容量の潤滑油の少なくとも一部が、スプライン噛合部へ流入する。
【0004】
本発明の他の特徴は、回転機械が、第1の回転構成要素と、スプライン噛合部によって第1の回転構成要素に機能的に結合された第2の回転構成要素と、を備えていることである。少なくとも1つの異物用チャンバが、スプライン噛合部の半径方向外周側に配置されている。摩耗による異物が、中心軸を中心とした第1の回転構成要素および第2の回転構成要素の回転によりスプライン噛合部から少なくとも1つの異物用チャンバへ移動する。少なくとも1つの潤滑油用リザーバが、ある容量の潤滑油を貯えている。摩耗による異物が、スプライン噛合部から少なくとも1つの異物用チャンバへ移動することに伴い、ある容量の潤滑油の少なくとも一部が、スプライン噛合部へ流入する。
【0005】
本発明の別の特徴は、スプライン噛合部の潤滑方法が、第1の回転構成要素と第2の回転構成要素とのスプライン噛合部の半径方向外周側に少なくとも1つの異物用チャンバを配置するステップと、中心軸を中心に第1の回転構成要素および第2の回転構成要素を回転させるステップと、を含むことである。摩耗による異物が、第1の回転構成要素および第2の回転構成要素の回転によって、スプライン噛合部から、該スプライン噛合部の半径方向外周側に配置された少なくとも1つの異物用チャンバへ移動する。摩耗による異物がスプライン噛合部から少なくとも1つの異物用チャンバへ移動することに伴い、ある容量の潤滑油が、潤滑油用リザーバからスプライン噛合部へ流入する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】回転機械の実施例を示した断面図である。
【図2】回転機械のスプライン噛合部の実施例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、回転機械、本実施例ではジェネレータ10の断面図である。ジェネレータ10は、中心軸線14を中心に回転可能とされた少なくとも1つのロータ12を備える。ジェネレータ10は、ジェネレータシャフト16を備えており、該ジェネレータシャフト16は、中心軸線14上に配置され、例えば、1つまたは複数のスプライン噛合部20によってエンジンのクランクシャフト18に結合されている。図2を参照すると、ある実施例では、スプライン噛合部20は、複数のジェネレータシャフト歯部22によって画定されており、該ジェネレータシャフト歯部22は、相補的な複数のクランクシャフト歯部24と噛み合う。
【0008】
ある実施例では、図2に示したように、複数のジェネレータシャフト歯部22が、実質的に環状のジェネレータシャフトプレート26の内周面から半径方向内周側に突出しており、このジェネレータシャフトプレート26は、ある実施例では、溶接や他の手段によってジェネレータシャフト16に固定されている。同様に、ある実施例では、複数のクランクシャフト歯部24が、クランクシャフトプレート28に配置されるとともに、該クランクシャフトプレート28から半径方向外周側に突出している。溶接や他の手段によって、クランクシャフト18にクランクシャフトプレート28を固定することもできる。しかし、図2に示した構成は、単なる例示に過ぎない。例えば、ある実施例では、複数のジェネレータシャフト歯部22は、半径方向外周側に突出しており、複数のクランクシャフト歯部24は、実質的に半径方向内周側に突出している。他の実施例では、ジェネレータシャフト歯部22は、実質的に軸方向に突出し、該ジェネレータシャフト歯部22へ向かって実質的に軸方向に突出したクランクシャフト歯部24と噛み合う。さらに、ある実施例では、ジェネレータシャフトプレート26をジェネレータシャフト16と一体に形成することができ、クランクシャフトプレート28をクランクシャフト18と一体に形成することもできる。
【0009】
例えば、ジェネレータシャフトプレート26とクランクシャフトプレート28との間や、ジェネレータシャフトプレート26とハウジング32との間に1つまたは複数のシールリング30を配置することにより、スプライン噛合部20の周囲に圧力容器(pressure vessel)34が形成される。新しい潤滑油用リザーバ36が、圧力容器34内に配置され、例えば、ジェネレータシャフト16の外径部38に配置される。新しい潤滑油用リザーバ36は、ある容量の潤滑油40、例えば、オイルやグリース(grease)によって満たされている。潤滑油40は、新しい潤滑油用リザーバ36から、複数のジェネレータシャフト歯部22と複数のクランクシャフト歯部24とのスプライン噛合部20に配置された潤滑チャンバ42へ通流する。ジェネレータ10の動作時には、複数のジェネレータシャフト歯部22と複数のクランクシャフト歯部24とが摩耗することにより金属摩耗粉44が形成され、この摩耗粉44は、潤滑油用チャンバ42において潤滑油40と混合される。しかし、摩耗粉44の各々の密度が潤滑油40の密度よりも大きいので、摩耗粉44は、遠心力によって潤滑油用チャンバ42から異物用チャンバ46へと半径方向外周側に移動する。異物用チャンバ46は、圧力容器34内に配置され、例えば、ジェネレータシャフトプレート26とハウジング32との間に配置されている。ある実施例では、異物用チャンバ46は、新しい潤滑油用リザーバ36の半径方向外周側に配置されている。摩耗粉44は、異物用チャンバ46に集まる。摩耗粉44が半径方向外周側へ移動するので、空隙部が潤滑油用チャンバ42内に残る。この空隙部は、新しい潤滑油用リザーバ36から潤滑油用チャンバ42へ通流する新しい潤滑油40によって満たされる。
【0010】
ジェネレータシャフト16およびクランクシャフト18の回転により潤滑油40および摩耗粉44を押し流すことによって、付加的な外部の潤滑システムを用いることなくスプライン噛合部20から摩耗粉を効率的に除去し、スプライン噛合部20を効率的に潤滑することができ、これにより、ジェネレータ10のコストを削減し、該ジェネレータ10の複雑さを低減することができる。
【0011】
限定された数の実施例のみと組み合わせて本発明を詳細に説明してきたが、本発明がこのような実施例に限定されないことを理解されたい。本発明を、上述していない種々の変更、代替案や同等の構成を組み込むように修正することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転構成要素(16)と、
スプライン噛合部(20)によって前記第1の回転構成要素(16)に機能的に結合された第2の回転構成要素(18)と、
前記スプライン噛合部(20)の半径方向外周側に配置され、中心軸線(14)を中心とした前記第1の回転構成要素(16)および前記第2の回転構成要素(18)の回転により摩耗による異物(44)が前記スプライン噛合部(20)から移動する、少なくとも1つの異物用チャンバ(46)と、
ある容量の潤滑油(40)を貯え、前記摩耗による異物(44)が前記スプライン噛合部(20)から前記少なくとも1つの異物用チャンバ(46)へ移動することに伴い、少なくとも一部の潤滑油(40)が、前記スプライン噛合部(20)へ流入する、少なくとも1つの潤滑油用リザーバ(36)と、
を備えた回転機械(10)。
【請求項2】
前記スプライン噛合部(20)の周囲に画定された圧力容器(34)を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転機械(10)。
【請求項3】
1つまたは複数のシールリング(30)が、前記スプライン噛合部(20)の周囲に前記圧力容器(34)を画定するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の回転機械(10)。
【請求項4】
前記スプライン噛合部(20)は、前記第1の回転構成要素(16)から突出した複数の第1のスプライン歯部(22)を備え、該第1のスプライン歯部(22)は、前記第2の回転構成要素(18)から突出した複数の第2のスプライン歯部(24)と噛み合うことを特徴とする請求項1に記載の回転機械(10)。
【請求項5】
前記複数の第1のスプライン歯部(22)は、前記第1の回転構成要素(16)に固定された第1のスプラインプレート(26)から突出していることを特徴とする請求項4に記載の回転機械(10)。
【請求項6】
前記第1のスプラインプレート(26)は、溶接によって前記第1の回転構成要素(16)に固定されることを特徴とする請求項5に記載の回転機械(10)。
【請求項7】
前記回転機械(10)は、ジェネレータであることを特徴とする請求項1に記載の回転機械(10)。
【請求項8】
前記第1の回転構成要素(16)は、ジェネレータシャフトであることを特徴とする請求項7に記載の回転機械(10)。
【請求項9】
前記第2の回転構成要素(18)は、エンジンのクランクシャフトであることを特徴とする請求項7に記載の回転機械(10)。
【請求項10】
第1の回転構成要素(16)と第2の回転構成要素(18)とのスプライン噛合部(20)の半径方向外周側に配置され、中心軸線(14)を中心とした前記第1の回転構成要素(16)および前記第2の回転構成要素(18)の回転により摩耗による異物(44)が前記スプライン噛合部(20)から移動する、少なくとも1つの異物用チャンバ(46)と、
ある容量の潤滑油(40)を貯え、前記摩耗による異物(44)が、前記スプライン噛合部(20)から前記少なくとも1つの異物用チャンバ(46)へ移動することに伴い、少なくとも一部の潤滑油(40)が、前記スプライン噛合部(20)へ流入する、少なくとも1つの潤滑油用リザーバ(36)と、
を備えたスプライン噛合部(20)の潤滑システム。
【請求項11】
前記スプライン噛合部(20)の周囲に画定された圧力容器(34)を備えることを特徴とする請求項10に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑システム。
【請求項12】
1つまたは複数のシールリング(30)が、前記スプライン噛合部(20)の周囲に前記圧力容器(34)を画定するように配置されることを特徴とする請求項11に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑システム。
【請求項13】
第1の回転構成要素(16)と第2の回転構成要素(18)とのスプライン噛合部(20)の半径方向外周側に少なくとも1つの異物用チャンバ(46)を配置するステップと、
中心軸線(14)を中心に前記第1の回転構成要素(16)および前記第2の回転構成要素(18)を回転させるステップと、
前記第1の回転構成要素(16)および前記第2の回転構成要素(18)の回転によって、前記スプライン噛合部(20)から、該スプライン噛合部(20)の半径方向外周側に配置された少なくとも1つの異物用チャンバ(46)へ摩耗による異物(44)を移動させるステップと、
前記摩耗による異物(44)が前記スプライン噛合部(20)から前記少なくとも1つの異物用チャンバ(46)へ移動することに伴い、潤滑油用リザーバ(36)から前記スプライン噛合部(20)へある容量の潤滑油(40)を通流させるステップと、
を含むスプライン噛合部(20)の潤滑方法。
【請求項14】
前記スプライン噛合部(20)の周囲に圧力容器(34)を画定するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑方法。
【請求項15】
前記圧力容器(34)の少なくとも一部が、1つまたは複数のシールリング(30)によって画定されていることを特徴とする請求項14に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑方法。
【請求項16】
前記スプライン噛合部(20)は、前記第1の回転構成要素(16)から突出した複数の第1のスプライン歯部(22)を備え、該第1のスプライン歯部(22)は、前記第2の回転構成要素(18)から突出した複数の第2のスプライン歯部(24)と噛み合うことを特徴とする請求項13に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑方法。
【請求項17】
前記複数の第1のスプライン歯部(22)は、前記第1の回転構成要素(16)に固定された第1のスプラインプレート(26)から突出していることを特徴とする請求項16に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑方法。
【請求項18】
前記第1のスプラインプレート(26)は、溶接によって前記第1の回転構成要素(16)に固定されることを特徴とする請求項17に記載のスプライン噛合部(20)の潤滑方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−7325(P2011−7325A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133476(P2010−133476)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】