説明

回転角度検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置

【課題】低消費電力を確保しながら信頼性を向上させることができる回転角度検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】励磁コイルと検出コイルとを備えたレゾルバと、該レゾルバの励磁コイルに正弦波状励磁信号を出力し、前記検出コイルから出力される検出信号を入力して回転角度位置を演算する第1の回転角度位置演算部と、前記レゾルバの励磁コイルにパルス励磁信号を出力し、前記検出コイルから出力される検出信号を入力して回転角度位置を演算する第2の回転角度位置演算部と、前記第1の回転角度位置演算部及び前記第2の回転角度位置演算部と前記レゾルバの励磁コイル及び検出コイルとの間を切り換える信号切換部とを備え、前記第2の回転角度位置演算部は、前記各検出コイルからの検出信号の入力側と前記信号切換部との間に、前記検出コイル毎に個別の共振回路を構成する共振素子が介挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータに装着したレゾルバの出力信号に基づいて回転角位置を検出する回転角度検出装置及びこれを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータに装着したレゾルバから出力されるレゾルバ信号に基づいて回転角位置を検出する回転角位置検出装置として、従来、例えば励磁パルスを出力するパルス発生回路と、非パルス状の励磁信号を出力する励磁電源とを選択的にレゾルバの1次コイルに接続し、停電時に1次コイルにパルス発生回路を接続した状態で、レゾルバの一対の2次コイルから出力されるA相出力及びB相出力をA相用コンパレータ及びB相用コンパレータに供給し、これらA相用コンパレータ及びB相用コンパレータの出力を角度データ変換回路に供給して粗いレゾルバ角度データを算出し、非停電時に励磁電源を1次コイルに接続した状態で、2次コイルから出力されるA相出力及びB相出力を、レゾルバ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器に供給して高精度のレゾルバ角度データを出力するようにしたレゾルバ角度データ出力方法及びレゾルバ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−41771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、停電時に、パルス発生回路から出力される励磁パルスをレゾルバの1次コイルに供給して、このときに2次コイルに発生するA相出力及びB相出力をA相用コンパレータ及びB相用コンパレータに供給し、これらコンパレータの出力信号を角度データ変換回路に供給して粗いレゾルバ角度データを出力することにより、低消費電力で粗いレゾルバ角度データを得ることができるものである。しかしながら、パルス発生回路から出力される励磁パルスをレゾルバの1次コイルに供給した場合には、レゾルバの2次コイルから出力されるA相出力及びB相出力の振幅が小さいものとなり、A相用コンパレータ及びB相用コンパレータで誤判定を生じ易く、粗いレゾルバ角度データの信頼性が低下し、逆にA相出力及びB相出力の振幅を高めるためには励磁パルスのパルス幅を拡げる必要があり、この分消費電力が上がってしまい相反する未解決の課題がある。
そこで、本発明は上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、低消費電力を確保しながら信頼性を向上させることができる回転角度検出装置及びこれを使用した電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る回転角度検出装置は、回転角度位置を検出する回転角度検出装置であって、励磁コイルと2相の検出コイルとを備えたレゾルバと、該レゾルバの励磁コイルに正弦波状励磁信号を出力するとともに、前記検出コイルから出力される位相差を有する検出信号を入力して回転角度位置を演算する第1の回転角度位置演算部と、前記レゾルバの励磁コイルにパルス励磁信号を出力するとともに、前記検出コイルから出力される位相差を有する検出信号を入力して回転角度位置を演算する第2の回転角度位置演算部と、前記第1の回転角度位置演算部及び前記第2の回転角度位置演算部と前記レゾルバの励磁コイル及び検出コイルとの間を切り換える信号切換部とを備え、前記第2の回転角度位置演算部は、前記各検出コイルからの検出信号の入力側と前記信号切換部との間に、前記検出コイル毎に個別の共振回路を構成する共振素子が介挿されていることを特徴としている。
【0006】
この構成によると、第2の回転角度位置演算部からパルス励磁信号をレゾルバの励磁コイルに供給したときに、レゾルバの2つの検出コイルから出力される位相が異なる検出信号が第2の回転角度位置演算部の入力側と信号切換部との間に介挿された共振素子と検出コイルのインダクタとで共振回路を構成し、この共振回路で検出信号が共振して検出信号の振幅が大きくなり、狭いパルス励磁信号で大きな振幅の検出信号を得ることができ、誤検出を行うことなく信頼性を確保することができる。
【0007】
また、本発明に係る回転角度検出装置は、前記共振素子が前記検出コイルと並列に接続されるコンデンサで構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、レゾルバの検出コイルのインダクタンスとコンデンサの静電容量とでLC共振回路を構成することができ、検出コイルから出力される検出信号の振幅を大きくすることができる。
【0008】
また、本発明に係る回転角度検出装置は、前記第2の回転角度位置演算部は、前記パルス励磁信号を出力した時点から前記共振回路で共振された共振信号のピーク近傍のタイミングで共振信号をサンプリングするように構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、パルス励磁信号を出力した時点から検出コイルから出力される検出信号が共振された共振信号のピーク近傍でサンプリングすることができるので、誤判断を確実に防止するとこができる。
【0009】
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、上記角回転角度検出装置の何れか1つを操舵補助力を発生する電動モータに装着してモータ回転角を検出することを特徴としている。
この構成によれば、電動パワーステアリング装置で、車両のイグニッションスイッチがオフ状態である停車時にステアリングホイールが操舵されて電動モータが回転されたときに、その回転角に基づいて操舵角を誤検出することなく検出することができ、絶対角度を保持して電動パワーステアリング装置の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2の回転角度位置演算部からパルス励磁信号をレゾルバの励磁コイルに供給したときに、レゾルバの2つの検出コイルから出力される位相が異なる検出信号が第2の回転角度位置演算部の入力側と信号切換部との間に介挿された共振素子と検出コイルのインダクタとで共振回路を構成し、この共振回路で検出信号が共振して検出信号の振幅が大きくなり、狭いパルス励磁信号で大きな振幅の検出信号を得ることができ、低消費電力を維持しながら誤検出を行うことなく信頼性を確保することができるという効果が得られる。
【0011】
また、上記効果を有する回転角度検出装置を、操舵補助力を発生する電動モータに装着することにより、イグニッションスイッチがオフ状態である操舵補助制御を停止している状態で、ステアリングホイールが回転されたときに、低消費電力で操舵角を誤検出することなく検出することができ、絶対操舵角度を保持して電動パワーステアリング装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による電動パワーステアリング装置を示す構成図である。
【図2】回転角度検出装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の動作の説明に供する信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1がステアリングシャフト2の車両後方側先端に取付けられている。このステアリングシャフト2は、運転者から作用される操舵力がステアリングホイール1を介して伝達される入力軸2aと、この入力軸2aにトーションバー2bを介して連結された出力軸2cとを備えている。
【0014】
そして、出力軸2cに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2cには、操舵補助力を出力軸2cに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2cに連結した減速ギヤ機構11と、この減速ギヤ機構11に連結されて操舵補助力を発生するブラシ付き電動モータやブラシレス電動モータで構成される電動モータ12とを備えている。
【0015】
そして、電動モータ12には、モータ回転角度を検出するレゾルバ13が内装されている。このレゾルバ13は、図2に示すように、励磁信号が入力される一端多が接地され、他端が入力端子t0に接続された励磁コイルL0と、励磁コイルL0に励磁信号が供給されたときに90度位相の異なる2相のA相検出信号及びB相検出信号を個別に出力する一端が接地され他端が出力端子ta及びtbに接続された2相の検出コイルLa及びLbとが設けられている。
【0016】
そして、レゾルバ13の入力端子tr0及び出力端子tra,trbが回転角度検出装置15の励磁信号出力端子to0及び検出信号入力端子tia,tibに接続され、さらに、レゾルバ13のグランド端子trgが回転角度検出装置15のグランド端子tcgに接続されている。
回転角度検出装置15には、バッテリ16からの直流電力がイグニッションスイッチスイッチ17を介して入力されるとともに、バッテリ16の直流電力が直接入力されている。
【0017】
この回転角度検出装置15は、イグニッションスイッチ16がオン状態である操舵補助制御状態で回転角度位置を検出するCPUで構成される第1の回転角度位置演算部18と、イグニッションスイッチ16がオフ状態である操舵補助制御停止状態で回転角度位置を検出する集積回路(ASIC)で構成される第2の回転角度位置演算部19とを備えている。
【0018】
そして、第1の回転角度位置演算部18と、第2の回転角度位置演算部19とが信号切換部20を介して励磁信号出力端子to0と、検出信号入力端子tia及びtibに接続されている。
信号切換部20は、可動接点tcが励磁信号出力端子to0、検出信号入力端子tia及びtibに接続された3つの同時に切換得られる切換スイッチSW0、SWa、SWbを備えている。そして、これら切換スイッチSW0、SWa及びSWbの一方の固定接点taが第1の回転角度位置演算部18の励振信号出力端子to1、検出信号入力端子ti1a及びti1bに接続され、他方の固定接点tbが第2の回転角度位置演算部19のパルス励磁信号出力端子to2、検出信号入力端子ti2a及びti2bに接続されている。
【0019】
第1の回転角度位置演算部18は、従来のレゾルバの回転角度位置演算部と同様に、正弦波又は矩形波の励磁信号を信号切換部20の切換スイッチSW0の固定接点toaに出力するとともに、残りの切換スイッチSW2aおよびSW2bの固定接点ta及びtbから出力される検出信号Sa及びSbが入力されて、検出信号Sa及びSbに基づいてレゾルバ−デジタル変換を行って精密なレゾルバ角度データを演算するとともに、イグニッションスイッチ16がオフ状態からオン状態に切換わったときに、第2の回転角度位置演算部で演算した操舵補助制御停止時の回転角度位置信号を読込み、この回転角度位置信号を初期回転角度位置として設定する。
【0020】
そして、第2の回転角度位置演算部19は、パルス励磁信号Smpを励磁信号出力端子to1に出力するパルス発生回路で構成される励磁回路21と、検出信号入力端子ti2a及びti2bに接続されたレゾルバ信号の4象限を認識する4象限認識部22と、この4象限認識部22で認識された象限認識信号が入力されて回転量を検出する回転量演算部23とを備えている。また、第2の回転角度演算部19は、信号切換部20の切換スイッチSWa及びSWbの固定端子tbと比較部22aの入力端子との間と接地との間に、共振素子としてのコンデンサCa及びCbがレゾルバ13の検出コイルLa及びLbと並列となって検出コイルLa,LbのインダクタンスとコンデンサCa及びCbの静電容量とで個別のLC並列共振回路を構成するように接続されている。
【0021】
励磁回路21は、比較的幅狭のパルス励磁信号Smpを所定間隔で出力するとともに、パルス励磁信号Smpの立ち上がりから後述する共振信号の最初のピーク位置に到達した時点でサンプリング信号Ssを4象限認識部22に出力する。
4象限認識部22は、検出信号入力端子ti2a及び2i2bから入力される検出信号Sa及びSbが入力され、これら検出信号Sa及びSbを閾値信号と比較する2組のコンパレータを内蔵する比較部22aと、この比較部22aの2組のコンパレータから個別に出力される比較出力Ca及びCbが入力されて比較出力Ca及びCbの組合せから回転角度が第1象限〜第4象限の何れの象限に存在するかを認識する象限変換部22bとを備えている。
【0022】
また、回転量演算部23は、象限認識部22の4象限変換部22bから出力される象限認識信号Sq(n)が入力されるとともに、象限認識信号記憶部23aに記憶されている1サンプル前の象限認識信号S(n-1)が入力されて現在の象限認識信号Sqから1サンプル前の象限認識信号S(n-1)を減算して回転方向を表す差分信号SD(=Sq(n)−Sq(n-1))を算出する差分演算部23bと、この差分演算部23bから出力される差分信号を加減算して回転量を算出する回転量算出部23cとを備えており、回転量算出部23cで算出された回転量が操舵補助制御停止時の回転角度位置信号として第1の回転角度位置演算部18に供給される。
【0023】
さらに、第2の回転角度位置演算部19は、イグニッションスイッチ16を通じて入力されるバッテリ電圧を監視し、イグニッションスイッチ16がオン状態であるときに、信号切換部20の各切換スイッチSW0,SWa及びSWbの可動接点tcを固定接点ta側に切換え、イグニッションスイッチ16がオフ状態であるときに、各切換スイッチSW0,SWa及びSWbの可動接点tcを固定接点tb側に切り換える切換信号Scを各切換スイッチSW0,SWa及びSWbに出力する。
【0024】
また、図1に示すように、ステアリングシャフト2の入力軸2aにトルクセンサ31が設けられ、このトルクセンサ31で検出した操舵トルクTと車速センサ32で検出した車速Vとが操舵補助制御装置33に供給され、この操舵補助制御装置33で、操舵トルクTと車速Vとに基づいて操舵補助電流指令値を算出し、算出した操舵補助電流指令値と電動モータ12のモータ駆動電流との偏差を例えばPD制御して電圧指令値を算出し、算出した電圧指令値に基づいて内蔵するモータ駆動回路34を制御することにより、モータ電流を電動モータ12に供給して電動モータ12で操舵補助力を発生する。この操舵補助力は、減速ギヤ機構11を介してステアリングシャフト2の出力軸2aに伝達され、これによりステアリングホイール1を軽く操舵することができる。
【0025】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、イグニッションスイッチ16がオン状態である状態では、操舵補助制御装置33で操舵補助制御処理を実行して、トルクセンサ31で検出した操舵トルクT及び車速センサ32で検出した車速Vに基づいて低車速時には操舵トルクTに応じて大きな操舵補助電流指令値を算出し、高車速時には操舵補助電流指令値を制限することにより、車両の走行時のセルフアライニングトルクに応じた最適な操舵補助電流指令値を算出し、この操舵補助電流指令値に基づいて電動モータ12に供給するモータ電流を制御することにより、走行状態及び操舵状態に応じた最適な操舵補助力を電動モータ12で発生させる。
【0026】
このように、イグニッションスイッチ16がオン状態であるときには、操舵補助制御装置33で、電動モータ12を駆動制御する操舵補助制御状態であるので、第2の回転角度位置演算部19で例えば論理値“1”の切換信号Scを信号切換部20に出力する。
このため、信号切換部20の各切換スイッチSW0,SWa及びSWbの可動接点tcが固定接点ta側に切換えられるので、第1の回転角度位置演算部18が信号切換部20を介してレゾルバ13に接続される。
【0027】
このため、第1の回転角度位置演算部18から出力される正弦波又は正弦波に近い矩形波信号の励磁信号がレゾルバ13の励磁コイルL0に供給され、これに応じてレゾルバ13の検出コイルLa及びLbから90度の位相差を有するA相出力Sa及びB相出力Sbが出力され、これらA相出力Sa及びB相出力Sbが信号切換部20の各切換スイッチSWa及びSWbを介して第1の回転角度位置演算部18に入力される。
このため、第1の回転角度位置演算部18でA相出力Sa及びB相出力Sbに基づいてレゾルバ信号をデジタル信号に変換して高精度の回転角度位置データDrを演算し、この回転角度位置データDrを図示しないCAN等の通信ネットワークを介して操舵補助制御装置33や他の制御装置に供給する。
【0028】
この第1の回転角度位置演算部18で高精度の回転角度位置データを算出している状態では、信号切換部20の切換スイッチSWa及びSWbの可動接点tcが固定接点ta側に切換えられており、第2の回転角度位置演算部19の共振素子であるコンデンサCa及びCbは、レゾルバ13の検出コイルLa及びLbとは確実に切り離されているので、コンデンサCa及びCbが検出コイルLa及びLbに接続されることはなく、コンデンサCa及びCbによってローパス回路等の遅延回路が形成されることを確実に防止することができる。このため、コンデンサCa及びCbの影響を受けることなく、第1の回転角度位置演算部18で高精度の回転角度位置データDrを算出することができる。
【0029】
このイグニッションスイッチ16がオン状態である状態から、車両の走行を停止させた後に、イグニッションスイッチ16をオフ状態に切換えると、操舵補助制御装置33による操舵補助制御処理が終了されて、電動モータ12へのモータ電流の供給が遮断され、電動モータ12による操舵補助力の発生が停止される。
これと同時に、第2の回転角度位置演算部19でイグニッションスイッチ16のオフ状態への移行を検出し、信号切換部20に対して論理値“0”の切換信号Scを出力する。このため、信号切換部20の各切換スイッチSW0,SWa及びSWbの可動接点tcが固定接点ta側から固定接点tb側に切換えられ、レゾルバ13に第1の回転角度位置演算部18に代えて第2の回転角度位置演算部19が接続される。これと同時に、第2の回転角度位置演算部19の励磁回路21、象限認識部22、回転量演算部23が動作状態となる。
【0030】
このため、第2の回転角度位置演算部19の励磁回路21から図3(a)に示すように、比較的幅狭のパルス励磁信号Smpが出力され、このパルス励磁信号Smpが信号切換部20の切換スイッチSW0を介してレゾルバ13の励磁コイルL0に供給されて、励磁コイルL0が励磁される。
このため、レゾルバ13の検出用コイルLa及びLbから図3(b)に示すレゾルバロータの回転位置に応じた振幅のA相出力Sa及びB相出力Sbが出力される。このとき、第2の回転角度位置演算部19の検出信号入力端子ti2a及びti2bと信号切換部20の切換スイッチSWa及びSWbの固定接点tbとの間と接地との間に共振素子としてコンデンサCa及びCbが介挿されているので、これらコンデンサCa及びCbがレゾルバ13の検出コイルLa及びLbと並列に介挿されることになる。このため、コンデンサCa及びCbの静電容量と検出コイルLa及びLbのインダクタンスとによって並列共振回路が構成され、検出コイルLa及びLbから出力されるA相出力Sa及びB相出力Sbが共振して、図3(c)及び(d)に示すように、振幅及び周期が大きくなり、90度の位相差を有する共振信号Sra及びSrbとなる。
【0031】
これら共振信号Sra及びSrbの最初の信号波形のピーク位置近傍となったときに、励磁回路21からサンプリング信号Ssが出力され、これに応じて、比較部22aにおける一対のコンパレータで共振信号Sra及びSrbを所定閾値と比較して比較出力Sca及びScbを象限変換部22bに出力する。
このため、象限変換部22bで、比較出力Sca及びScbに基づいてレゾルバ回転位置が第1象限〜第4象限の何れにあるかを判断して、その判断結果である象限認識信号Sq(n)を回転量演算部23の差分演算回路23bに出力する。
【0032】
このため、差分演算回路23bでは、今回入力される象限認識信号Sq(n)から象限認識信号記憶部23aに記憶されている1サンプル前の象限認識信号Sq(n-1)を減算して差分を算出する。このとき、レゾルバ13のレゾルバロータが回転していないときには、今回入力された象限認識信号Sq(n)と1サンプル前の象限認識信号Sq(n-1)が同じ値となるので、差分信号SDは“0”となり、回転していないことを表す。
【0033】
しかしながら、例えばステアリングホイール1を例えば時計方向に操舵することにより、ステアリングシャフト2を介し,減速ギヤ機構11を介して電動モータ12の回転軸が回転さされると、例えば今回入力される象限認識信号Sq(n)が例えば第2象限を表す“2”であり、1サンプル前の象限認識信号Sq(n-1)が第1象限を表す“1”であるものとすると、差分信号SDは“+1”となり、レゾルバ13のレゾルバロータが例えば時計方向に象限を超える回転をしていると判断することができる。逆に、ステアリングホイール1を半時計方向に操舵することにより、例えば今回入力される象限認識信号Sq(n)が第4象限を表す“4”であり、1サンプル前の象限認識信号Sq(n-1)が第1象限を表す“1”であるものとすると、差分信号SDは“+3”となるが、この場合には差分信号SDから“4”を減算して補正することにより、差分信号SDが“−1”となり、レゾルバ13のレゾルバロータが半時計方向に象限を超えて回転していると判断することができる。
【0034】
このため、差分信号SDを回転量演算部23cで加算することにより、レゾルバロータの回転角度位置に応じた粗い回転角度位置データDr2を算出することができる。
このように、操舵補助制御装置33が作動していない停止状態で、ステアリングホイール1が操舵された場合に、その操舵に応じた粗い回転角度位置データDr2が第2の回転角度位置演算部19で常時算出される。
このときの、励磁回路21から出力されるパルス励磁信号Smpのパルス幅が狭いので、低消費電力とすることができる。
【0035】
また、パルス励磁信号Smpでレゾルバ13の励磁コイルL0を励磁したときに、検出コイルLa及びLbから出力されるA相出力Sa及びB相出力Sbを第2の回転角度位置演算部19の検出信号入力端子ti2a及びti2b側に介挿したコンデンサCa及びCbで共振させるようにして、共振信号のピーク値大きくするとともに周期も大きくなるので、第2の回転角度位置演算部19の象限認識部22における比較部22aの一対のコンパレータで閾値と比較したときに誤った比較出力Sca及びScbを出力することを防止することができ、回転量が誤検出されることを防止して信頼性を向上させることができる。
【0036】
しかも、励磁回路21から共振信号Sra及びSrbがピーク値に近づいたときに、サンプリング信号Ssを出力するので、共振信号のピーク値近傍で比較部21aの一対のコンパレータで閾値と比較することができるので、より誤検出を防止することができる。
その上、サンプリング信号Ssが共振信号Sra及びSrbのピーク値に合わせて設定され、パルス励磁信号Smpのパルス幅とは無関係に設定されているので、パルス励磁信号Smpのパルス幅を狭くすることが可能であり、より低消費電力で粗い回転角度位置データを得ることができる。このとき、パルス励磁信号Smpのパルス幅を例えば2/5に狭めると消費電力は1/6に低減することができる。
【0037】
その後、再度イグニッションスイッチ16がオン状態に復帰すると、信号切換部20が第1の回転角度位置演算部18側に切換えられ、この第1の回転角度位置演算部18で、第2の回転角度位置演算部19で算出された回転角度位置データを初期値として高精度の回転角度位置データの演算を開始する。このため、第1の回転角度位置演算部18が停止している間にステアリングホイール1が操舵されても、その操舵位置に応じた回転角度位置を算出することができる。
【0038】
また、上記のように電動パワーステアリング装置に回転角度検出装置15を適用した場合には、イグニッションスイッチ16がオフ状態となって、操舵補助制御装置33が停止している状態で、ステアリングホイール1が操舵されたときで、粗い回転角度位置データを算出することができ、再度イグニッションスイッチ16がオン状態となった状態で、粗い回転角度位置データを初期値として、高精度の回転角度位置データを算出することにより、回転角度位置データの誤差を縮小することができ、信頼性の高い電動パワーステアリング装置を提供できる。
なお、上記実施形態においては、信号切換部20の各切換スイッチSW,SWa及びSWbを第2の回転角度位置演算部19で切換制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、信号切換部20自身でイグニッションスイッチ16のオン・オフを監視して切換えるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、共振用のコンデンサCa,Cbを切換スイッチ部20と第2の回転角度位置演算部19の入力端子ti2a,ti2bとの間に介挿した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第2の回転角度位置演算部19の入力端子ti2a,ti2bと比較部22aとの間に設けるようにしてもよく、要は第1の回転角度位置演算部18の回転角度演算に支障を与えない位置に介挿すればよい。
また、上記実施形態においては、回転角度検出装置15を電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の任意の産業機械に本発明の回転角度位置検出装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…トーションバー、2c…出力軸、8…ステアリングギヤ機構、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ機構、12…電動モータ、13…レゾルバ、15…回転角度検出装置、16…イグニッションスイッチ、17…バッテリ、18…第1の回転角度位置演算部、19…第2の回転角度位置演算部、20…信号切換部、21…励磁回路、22…4象限認識部、22a…比較部、22b…象限変換部、23…回転量演算部、23a…象限認識信号記憶部、23b…差分演算部、23c…回転量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転角度位置を検出する回転角度検出装置であって、
励磁コイルと2相の検出コイルとを備えたレゾルバと、
該レゾルバの励磁コイルに正弦波状励磁信号を出力するとともに、前記検出コイルから出力される位相差を有する検出信号を入力して回転角度位置を演算する第1の回転角度位置演算部と、
前記レゾルバの励磁コイルにパルス励磁信号を出力するとともに、前記検出コイルから出力される位相差を有する検出信号を入力して回転角度位置を演算する第2の回転角度位置演算部と、
前記第1の回転角度位置演算部及び前記第2の回転角度位置演算部と前記レゾルバの励磁コイル及び検出コイルとの間を切り換える信号切換部とを備え、
前記第2の回転角度位置演算部は、前記各検出コイルからの検出信号の入力側と前記信号切換部との間に、前記検出コイル毎に個別の共振回路を構成する共振素子が介挿されていることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記共振素子は前記検出コイルと並列に接続されるコンデンサで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記第2の回転角度位置演算部は、前記パルス励磁信号を出力した時点から前記共振回路で共振された共振信号のピーク近傍のタイミングで共振信号をサンプリングするように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転角度検出装置を、操舵補助力を発生する電動モータに装着してモータ回転角を検出することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−103130(P2012−103130A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252212(P2010−252212)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】