説明

回転角検出装置

【課題】 車両運転時以外には角度位置の追跡をしなくても、ステアリングの絶対回転角度を検出可能として、消費電力を低減する。
【解決手段】 ステアリングシャフト1に対して回転方向には一体で軸方向にはスライド可能のロータ10にスクリュー12を形成し、これをベースのナット部5に噛み合わせ、回転に応じて軸方向に移動可とする。ロータは厚さが徐々に増大する帯状の永久磁石を螺旋状に巻きつけた軸傾斜永久磁石20と駆動歯車14を備え、軸傾斜永久磁石の外周面にホール素子を対向させる。駆動歯車に噛み合う従動歯車31には永久磁石32を固定し、これに対向させてAMRセンサ33を配置する。ホール素子が対向する軸傾斜永久磁石は操舵の全角度範囲にわたって厚さが変化するので、その出力から現在の粗の絶対回転角度が得られる。これと高分解能のAMRセンサの出力とに基いて、高精度の絶対回転角度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング操舵角検出などに用いる回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転角検出装置として、例えば車両におけるステアリングハンドルに連動してヘッドランプの照射方向を左右に可変に制御するなど自動制御のためのステアリング操舵角検出装置がある。このような操舵角の検出はステアリングハンドルが取り付けられたステアリングシャフトの回転を検出して行なわれるが、ステアリングシャフトが左右にそれぞれ数回転されるので、ステアリングシャフトの360°を超える回転角度を測定可能であることが要求される。
【0003】
このようなステアリング操舵角検出装置として、特開2002−213944号公報に開示されたものがある。
この装置では、図10に示すように、ステアリングシャフト1に固定した駆動歯車50に噛み合う2つの従動歯車31、31を設け、各従動歯車には永久磁石32を取り付けて、永久磁石32に対向させた磁気抵抗センサ52、52の出力を不図示の電子制御ユニットで演算処理し、従動歯車31の回転を検出する。各磁気抵抗センサ52は従動歯車31の1/2回転(1周期)内での角度位置を一義的に検出するので、2つの磁気抵抗センサ52、52の位相をずらせておくことにより、従動歯車31の1回転内での角度位置を検出することができる。
【0004】
ここで、回転角度の検出分解能を高めるために、従動歯車31の歯数は駆動歯車50の歯数に比較して小さく設定してあるので、360°を越える駆動歯車50よりさらに回転数が大きくなり、多数の周期を繰り返すことになる。そこで、車両を直進状態としたときの角度を基準位置とし、そのときの従動歯車31の回転の周期数をs=0として、時々刻々の角度位置を追跡することにより、周期数sの変化を把握して、従動歯車31の絶対回転角度を求める。これにより、駆動歯車50と従動歯車31の歯数比からステアリングシャフト1の360°を越える回転角を検出することができる。
【特許文献1】特開2002−213944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従動歯車31の回転は上述のとおり多数の周期数にわたるので、車両を運転しないイグニションスイッチOFFの間、電子制御ユニットが機能せず角度位置の追跡ができない場合は、ステアリングシャフト1を空転させたときにそれが従動歯車31の同一周期(1/2回転)内であったのか2周期以上にわたる空転であったのかわからなくなる。したがって、絶対回転角度の位置が不明となってしまうという問題がある。
【0006】
そのため、運転時以外も電子制御ユニットを常時動作させておき、角度位置の追跡を継続することが考えられるが、しかしバッテリの電力を消費することになる。
そこで、上記装置では、イグニションスイッチOFFの間は電子制御ユニットを低消費電流モードとして間欠動作するようにしている。
しかしながら、低消費電流モードにしたとしても、バッテリの電源を消費することに変わりはないから、車両の運転休止が長時間にわたるときはいわゆるバッテリ上がりとなったり、電圧低下により再始動時の電子制御誤作動を招くという問題が発生する。
【0007】
したがって本発明は、上記従来の問題点に鑑み、運転時以外の角度位置の追跡を不要としながら、絶対回転角度を検出できるようにした回転角検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、測定対象回転体の全周にわたって配置され、径方向厚みが軸方向にそって変化する軸傾斜永久磁石を、磁石変位機構により測定対象回転体と一体に回転させるとともに、回転角度に応じて軸方向に変位させるようにし、軸傾斜永久磁石の外周面に対向して配置した電磁変換素子の出力に基いて、演算手段が絶対回転角度を算出するものとした。
【発明の効果】
【0009】
演算手段は、電磁変換素子が対向する軸傾斜永久磁石の軸方向位置に応じた電磁変換素子出力に基いて、測定対象回転体の絶対回転角度を算出するので、360°を越える回転角度でも連続的に測定対象回転体の絶対回転角度を得ることができる。
演算手段が非動作中に測定対象回転体が空転されても、演算手段は軸傾斜永久磁石の現在位置に対応した電磁変換素子の出力により、空転後の現在の測定対象回転体の絶対回転角度を得るから、角度位置の追跡継続のために演算手段や電磁変換素子を常時動作させておく必要がなく、電力の消費が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を車両のステアリング操舵角検出装置に適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態の全体構成を示す。図2は、図1におけるA−A部矢視図である。
測定対象回転体としてのステアリングシャフト1がロータ10に挿通されている。ロータ10は、ロータ本体の11の上端部に一定ねじピッチのねじ溝が設けられて、第1のねじとしてのスクリュー12を形成している。
ステアリングシャフト1に対して垂直に配置されて、ステアリングシャフト1を支持する車体固定側に取り付けられたベース4には、雌ねじを有するナット部5が第2のねじとして設けられている。ロータ10はそのスクリュー12をナット部5に噛み合わせて、ベース4に支持されている。
ベース4に対向して回路基板6が配置され、回路基板6も固定側に支持されている。回路基板6はロータ10を貫通させる穴を有している。
【0011】
ロータ本体11の外周には、スクリュー12に隣接して、軸方向に径が変化する軸傾斜永久磁石20が設けられ、さらにその軸方向下方には駆動歯車14が形成されている。
駆動歯車14には、固定側、例えばベース4に支持された回転部材としての従動歯車31が噛み合っており、従動歯車31の回路基板6側の面には永久磁石32が取り付けられている。
回路基板6上には、従動歯車31の永久磁石32に対向させてAMR(異方性磁気抵抗)センサ33が設置され、上記永久磁石32とAMRセンサ33とで角度センサ30が形成される。
【0012】
角度センサ30は、AMRセンサ33が検知する磁界の変化により、永久磁石32と一体の従動歯車31の回転を検出する。すなわち、AMRセンサ33は従動歯車31の1/2回転(1周期)内での角度位置を一義的に検出し、従動歯車31の回転に対応して周期的な角度位置を出力する。以下、AMRセンサ33により角度センサ30を代表させる。
回路基板6上にはさらに、ロータ10の径方向外側から軸傾斜永久磁石20に対向させて、電磁変換素子としてのホール(Hall)素子35が設置されている。
【0013】
とくに図2に示すように、ロータ本体11の中心を貫通する挿通穴15は、ステアリングシャフト1と整合する穴径を有し、軸方向に延びる係止溝16を有する。この係止溝16にステアリングシャフト1から径方向に張り出す図示しない係止片を係合させることにより、ロータ10はステアリングシャフト1に対して軸方向にはスライド可能で、回転方向には一体となる。
【0014】
ロータ10はそのスクリュー12がナット部5と噛み合っているので、ステアリングシャフト1とともに回転すると、スクリュー12とナット部5のねじピッチにしたがってベース4および回路基板6に対して軸方向に移動する。このため、スクリュー12の軸方向長さは、ステアリングシャフト1(およびロータ10)が操作限度一杯、すなわち一方向に2〜3回転、両方向合計では4〜6回転する間にわたって、ナット部5との噛み合いが可能な長さに設定されている。
同様に、ロータ10の駆動歯車14の軸方向の歯幅も、ロータ10が4〜6回転する間にわたって従動歯車31との噛み合いが保持される長さに設定されている。
ロータ10の挿通穴15に挿通されたステアリングシャフト1がその係止片を挿通穴15の係止溝16に係合させて、ロータ10とステアリングシャフト1が回転方向には一体、軸方向には互いにスライド可能とされ、スクリュー12とナット部5の噛み合いにより、ステアリングシャフト1の回転に応じてロータ10が軸方向に移動する上記構成が、発明における磁石変位機構を形成している。
【0015】
図3はロータ10の軸傾斜永久磁石回りの詳細を示し、(a)は部分側面図、(b)は軸方向から見た図である。(a)では理解を容易にするため、軸方向を誇張して伸ばして示している。
軸傾斜永久磁石20は、図4に示す一定幅でその厚さtが長さ方向にそって一定割合で増大する帯状の永久磁石21を、ロータ本体11に螺旋状に巻きつけて形成されている。帯状の永久磁石21としては、PPS樹脂入りのネオジウムプラスチックマグネットのほか、ネオジウム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコなどの金属焼結体あるいはプラスチックマグネットを用いることができる。
【0016】
軸傾斜永久磁石20の厚さ方向(径方向)のホール素子35と対向する面が単一のN極をなし、ロータ本体11に巻き付けられる面がS極となっている。
螺旋のピッチ、すなわち永久磁石21の一定幅bの値は、スクリュー12のねじピッチと同一に設定されている。なお、図3の(a)ではスクリュー12は2列溝となっている。
これにより、ステアリングシャフト1が回転するとき、回路基板6に支持されているホール素子35は、常に上記螺旋にそって軸傾斜永久磁石20に対向することになる。軸傾斜永久磁石20のホール素子35と対向する面は螺旋の軸方向と平行である。
【0017】
こうして、ステアリングシャフト1が一方向(例えば左回転方向)の操作限度一杯に回転されたときは、図5の(a)に示すように、ロータ10は上限位置まで移動して、ホール素子35と軸傾斜永久磁石20の対向面との距離Mは最大となり、他方向(例えば右回転方向)の操作限度一杯に回転されたときは、図5の(b)に示すように、ロータ10は下限位置まで移動して、ホール素子35と軸傾斜永久磁石20の対向面との距離Mは最小となり、両操作限度の範囲内でホール素子35の出力は直線的に変化する。
なお、図5では、理解を容易にするため、軸傾斜永久磁石20とスクリュー12を軸方向に伸ばして示している。
【0018】
図6は、AMRセンサ33の出力(AMR信号)とホール素子35の出力(Hall素子信号)を示す図である。横軸はステアリングシャフト1の回転角度(ステアリング回転角度)、縦軸は各出力電圧である。ここでは、駆動歯車14の歯数をm、従動歯車31の歯数をnとして、m/n=2に設定され、AMRセンサ33の出力の1周期はステアリングシャフト1(すなわちロータ10)の回転角度90°に対応している。
なお、ホール素子35はAMRセンサ33の周期より小さい分解能を有するものが選択される。ただし、AMRセンサ33を含む角度センサ30と組み合わせた場合には、後述するように、ホール素子35自体の出力信号精度は不要で、粗信号の出力で十分である。
【0019】
回路基板6上には電子制御ユニット40が構成されている。
図7に示すように、AMRセンサ33の出力は電子制御ユニット40へ出力される。ホール素子35の出力も電子制御ユニット40へ入力される。
電子制御ユニット40は、AMRセンサ33およびホール素子35からの各出力信号を受けるCPU41と、電源部42、データ記憶部43を有する。CPU41はさらに通信部44を介して車両制御装置45と通信線46で接続されている。
【0020】
電源部42はイグニションスイッチ(IGN−SW)のON信号に基づいて車両搭載のバッテリ100に接続され、バッテリ電圧をCPU41を含む電子制御ユニット各部の動作電圧に変圧するとともに、AMRセンサ動作用の所定電圧に変圧して、AMRセンサ33へ供給する。イグニションスイッチがOFFされると、電源部42は電子制御ユニット40各部およびAMRセンサ33への電力供給を停止する。
【0021】
電子制御ユニット40では、従動歯車31に対してAMRセンサ33を設置した際に、車両を直進状態としてそのときのホール素子35の出力が示す回転角度を絶対回転角度0、AMRセンサ33の出力に対応する角度を基準位置γ0として、通信線46を介して外部から初期設定され、データ記憶部43に記憶している。
CPU41は、車両を直進状態としたときのAMRセンサ33の周期数をs=0として、ホール素子35の出力が示す粗の絶対回転角度により現在の角度位置が何周期目であるかを決定する。つぎに、CPU41は、該決定した周期数をs=S、AMRセンサ33の出力に対応する1周期内の角度をγとして、
α=S×90+γ−γ0
を演算して、ステアリングシャフト1の絶対回転角度である操舵角α(°)を求める。操舵角αは通信線46を経て車両制御装置45へ出力される。なお、前掲の図6はγ0=0の場合を示している。
本実施の形態では、CPU41とデータ記憶部43とで発明における演算手段を構成している。
【0022】
実施の形態は以上のように構成され、ステアリングシャフト1を全周にわたって囲み、径方向厚みが軸方向にそって比例的に変化する軸傾斜永久磁石20を、ステアリングシャフト1と一体に回転させるとともに、回転角度に応じて軸方向に変位させるようにし、軸傾斜永久磁石20の外周面に対向して配置したホール素子35の出力に基いて、電子制御ユニット40が絶対回転角度を算出するものとしたので、360°を越える回転角度でも連続的にステアリングシャフト1の絶対回転角度として操舵角を得ることができる。
【0023】
そして、車両の運転停止中、電子制御ユニット40に電源が供給されていない間にステアリングシャフト1が空転されても、その後運転再開時には、軸傾斜永久磁石20の現在位置に対応したホール素子35の出力により、電子制御ユニット40は上記空転後の現在のステアリングシャフト1の絶対回転角度を得ることができるから、角度位置の追跡継続のために車両の運転停止中も電子制御ユニット40を常時動作させておく必要がなく、バッテリ電力の消費が抑えられる。
【0024】
さらに、上記軸傾斜永久磁石20とホール素子35のセットに加えて、ステアリングシャフト1に連動して回転する従動歯車31に固定した永久磁石32と、これに対向して配置されたAMRセンサ33とからなり、従動歯車31の周期的な角度位置を検出する角度センサ30を有して、ホール素子35の出力と角度センサ30の出力とに基いて絶対回転角度を算出するので、従動歯車31のステアリングシャフト1に対する回転比を大きく設定して角度センサ30の分解能を高くすることにより、ホール素子35の出力信号精度は粗でもその出力から従動歯車31の何回転目(AMRセンサ33の出力の何周期目)に当たるかを容易に決定できる結果、角度センサ30の高分解能と組み合わせて、高い精度で操舵角αを得ることができる。
【0025】
軸傾斜永久磁石20を回転角度に応じて軸方向に変位させる磁石変位機構として、ステアリングシャフト1に対して一体に回転するとともに軸方向にはスライド可能にロータ本体11を組み付け、このロータ本体11に軸方向のスクリュー12を形成するとともに傾斜永久磁石20を固定してロータ10とし、ステアリングシャフト1を支持する固定側のベース4にナット部5を設けて、スクリュー12とナット部5を噛み合わせる構成としたので、軸傾斜永久磁石20を備えるロータ10がスクリュー12とナット部5のねじピッチにより滑らかに軸方向移動する。
【0026】
そして、傾斜永久磁石20は、長さ方向にそって厚さが変化する帯状の永久磁石21を前記ロータ本体11に螺旋状に巻きつけて形成することにより、簡単に、ステアリングシャフト1の回転に伴って径方向厚みが軸方向にそって変化する軸傾斜永久磁石を得ることができる。
【0027】
なお、上記実施の形態のロータ10には、軸傾斜永久磁石20が、一定幅でその厚さが一定割合で増大する帯状の永久磁石21をロータ本体11に螺旋状に巻きつけて設けられているものとしたが、これに限定されない。
図8は、ロータの第1の変形例を示す。
このロータ10Aには、螺旋状の軸傾斜永久磁石のかわりに、外形が切頭円錐の軸傾斜永久磁石20Aがスクリュー12と駆動歯車14との間に設けられている。軸傾斜永久磁石20Aは、円錐形状の外周面22と円筒形状の内周面23を備え、ロータ本体11の円筒形状の外周に整合するリング状である。
軸傾斜永久磁石20A、はその円錐形状の外周面22がホール素子35に対向する。このホール素子35と対向する外周面22が単一のN極をなし、内周面23がS極となっている。
その他の構成は実施の形態と同じである。
【0028】
軸傾斜永久磁石20Aは外周面22が円錐の一部となっているので、径方向の厚さ、すなわち内周面23と外周面22間の距離が軸方向にそって変化する。
これにより、ステアリングシャフト1の回転に伴ってロータ10Aが軸方向に変位するのに応じて、ホール素子35が対向する軸傾斜永久磁石20Aの厚さが変化するので、実施の形態におけると同じく、ホール素子35の出力からロータ10A(ステアリングシャフト1)の粗の絶対回転角度が得られる。
【0029】
図9は、ロータの第2の変形例を示す。(a)は一部断面側面図、(b)はロータ本体の側面図である。
本変形例では、ロータ10Bのスクリュー12と駆動歯車14との間に設ける傾斜永久磁石20Bが、円筒形状の外形を有するものとした。
傾斜永久磁石20Bは、円筒形状の外周面22Bと円錐形状の内周面23Bを備えたリング状であり、外周面22Bがホール素子35に対向する。このホール素子35と対向する外周面22Bが単一のN極をなし、内周面23BがS極となっている。
とくに(b)に示すように、ロータ10Bのロータ本体11Bは、傾斜永久磁石20Bの円錐形状の内周面23Bと整合する円錐面18を備えるリング状突起部17を有して、傾斜永久磁石20Bを固定支持している。その他の構成は実施の形態と同じである。
【0030】
これによっても、軸傾斜永久磁石20Bは内周面23Bが円錐の一部となっているので、径方向の厚さが軸方向にそって変化する。
したがって、ステアリングシャフト1の回転に伴ってロータ10Bが軸方向に変位するのに応じて、ホール素子35が対向する軸傾斜永久磁石20Bの厚さが変化するので、実施の形態におけると同じく、ホール素子35の出力からロータ10Bの粗の絶対回転角度が得られる。
第1、第2の変形例によれば、構造が簡単なため、軸傾斜永久磁石の製作作業が容易で、コストも安価となる。
【0031】
なお、実施の形態ならびに各変形例では、軸傾斜永久磁石20、20A、あるいは20Bを駆動歯車14を設けたロータ本体11、11Bに固定して一体化し、軸傾斜永久磁石と駆動歯車部分が一緒に軸方向に変位するものとしたが、これに限定されず、駆動歯車14部分とは分離して軸傾斜永久磁石のみがステアリングシャフトの回転に伴って軸方向変位するように構成してもよい。
また、磁石変位機構としては、ロータ本体に雄ネジのスクリュー12を形成し、ベース4に雌ねじのナット部5を設けたが、かわりにベース4側から雄ネジを形成した円筒部を延ばし、これにロータ先端に形成した雌ねじを噛み合わせるようにすることもできる。
【0032】
さらに、実施の形態等では、測定対象回転体としてステアリングシャフト1の回転角を検出する車両の操舵角検出装置に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、種々の回転体の絶対回転角度の検出に適用することができる。
実施の形態等では、軸傾斜永久磁石20等とホール素子35のセットと、AMRセンサ33と従動歯車31に固定した永久磁石32とからなる角度センサ30とを組み合わせたものとしたが、要求仕様によっては角度センサを廃して、軸傾斜永久磁石と電磁変換素子のみで測定対象回転体の絶対回転角度を検出する装置としてもよい。
電磁変換素子としては、要求される分解能に応じて、ホール素子35のほか、ホールICや、プログラマブルホールICなども選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成を示す図である。
【図2】図1におけるA−A部矢視図である。
【図3】ロータの軸傾斜永久磁石回りの詳細を示す図である。
【図4】帯状の永久磁石を示す図である。
【図5】ロータの軸方向変位状態を示す説明図である。
【図6】AMRセンサとホール素子の出力を示す図である。
【図7】電子制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図8】ロータの第1の変形例を示す図である。
【図9】ロータの第2の変形例を示す図である。
【図10】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ステアリングシャフト(測定対象回転体)
4 ベース
5 ナット部(第2のねじ)
6 回路基板
10、10A、10B ロータ
11、11B ロータ本体
12 スクリュー(第1のねじ)
14 駆動歯車
15 挿通穴
16 係止溝
17 リング状突起部
18 円錐面
20、20A、20B 軸傾斜永久磁石
21 永久磁石
22、22B 外周面
23、23B 内周面
30 角度センサ
31 従動歯車(回転部材)
32 永久磁石
33 AMRセンサ
35 ホール素子(電磁変換素子)
40 電子制御ユニット
41 CPU
42 電源部
43 データ記憶部
44 通信部
45 車両制御装置
46 通信線
100 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象回転体の全周にわたって配置され、径方向厚みが軸方向にそって一方向へ進むほど増大、他方向へ進むほど減少する軸傾斜永久磁石と、
該軸傾斜永久磁石を測定対象回転体と一体に回転させるとともに、その回転角度に応じて軸方向に変位させる磁石変位機構と、
前記軸傾斜永久磁石の外周面に対向して配置した電磁変換素子と、
該電磁変換素子に接続された演算手段とを有して、
該演算手段が、前記電磁変換素子が対向する前記軸傾斜永久磁石の軸方向位置に応じた電磁変換素子の出力に基いて、測定対象回転体の絶対回転角度を算出し出力することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
測定対象回転体の全周にわたって配置され、径方向厚みが軸方向にそって一方向へ進むほど増大、他方向へ進むほど減少する軸傾斜永久磁石と、
該軸傾斜永久磁石を測定対象回転体と一体に回転させるとともに、その回転角度に応じて軸方向に変位させる磁石変位機構と、
前記軸傾斜永久磁石の外周面に対向して配置した電磁変換素子と、
測定対象回転体に連動して回転する回転部材と、
該回転部材に付設されて、その周期的な角度位置を検出する角度センサと、
前記電磁変換素子と角度センサに接続された演算手段とを有して、
該演算手段が、前記電磁変換素子が対向する前記軸傾斜永久磁石の軸方向位置に応じた電磁変換素子の出力と、前記角度センサの出力とに基いて、測定対象回転体の絶対回転角度を算出し出力することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】
前記回転部材の測定対象回転体に対する回転比は1より大きく設定され、
前記電磁変換素子がホール素子であり、
前記角度センサは、前記回転部材に固定された永久磁石と、該永久磁石に対向して配置された異方性磁気抵抗センサとから構成されていることを特徴とする請求項2記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記磁石変位機構は、
測定対象回転体に該測定対象回転体と一体に回転するとともに軸方向にはスライド可能のロータを組み付け、
該ロータに前記傾斜永久磁石を固定し、
前記ロータには軸方向の第1のねじを設け、
測定対象回転体を支持する固定側に第2のねじを設け、
該第2のねじに前記第1のねじを噛み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記傾斜永久磁石は、長さ方向にそって厚さが変化する帯状の永久磁石を前記ロータに螺旋状に巻きつけて形成されていることを特徴とする請求項4記載の回転角検出装置。
【請求項6】
前記傾斜永久磁石は、外形を円錐形状とし、円筒形内周面を備えるリング状の永久磁石であることを特徴とする請求項4記載の回転角検出装置。
【請求項7】
前記傾斜永久磁石は、外形を円筒形状とし、円錐形内周面を備えるリング状の永久磁石であることを特徴とする請求項4記載の回転角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−58173(P2006−58173A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241443(P2004−241443)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】