説明

回転貫入鋼管及びその利用方法

【課題】 鋼管の先端又はその近傍に、螺旋翼などの地中へのねじ込め作用を有する翼を設け、鋼管を回転させながら地中に貫入する鋼管の回転貫入工法は大いに利用されているが、施工の際に鋼管には大きな回転トルクがかかるので、捩切れたり挫屈することを防ぐ為、設計上必要な厚さよりも、厚さが十分に大きい鋼管を用いなければならず、鋼材費上昇の原因となっていた。
【構成】 円筒状をなした鋼管本体の下端に、その開口部を閉塞する様に、鋼管本体の外径より大きい外径の回転推進翼体を鋼管の軸心に対して同軸状に固着すると共に、回転力を付与する回転軸の下端と着脱自在に係合し、該回転軸から回転トルクを前記回転推進翼体に伝達する係合部を、前記鋼管本体の内径側の回転推進翼体に設けて回転貫入鋼管を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転貫入鋼管及びその利用方法、詳しくは、回転させながら地中に貫入し、基礎杭などとして用いる鋼管及びその特性を巧みに利用したその利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管の先端又はその近傍に、螺旋翼などの地中へのねじ込み作用を有する翼を設け、オーガーモーターなどの回転駆動装置で鋼管を回転させながら地中に貫入する所謂回転貫入工法は無排土で施工出来ること、及び翼の広い面積を利用して大きな鉛直支持力が得られることから、基礎杭などの構築の際に広く用いられている。
【特許文献1】特開2004−177012号公報
【特許文献2】特開2004−233031号公報
【特許文献3】特開平11−303069号公報
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この回転貫入工法には、下端を閉塞した鋼管を用いるタイプと、下端を開放した鋼管を用い、鋼管内への土砂の侵入を許す開端タイプの2種に分けられるが、いずれのタイプでも、鋼管を硬い地盤まで貫入させるには、非常に大きなトルクを鋼管頭部に与える必要があり、施工中に鋼管が捩じり破断強度を超えてしまい、捩じ切れたり、挫屈してしまう事故がしばしば発生しており、基礎杭として構造設計上必要な厚さよりも厚い鋼管を施工上の理由で用いざるを得ない場合もあった。
【0004】
又、鋼管下端を閉塞した回転貫入工法を用いる場合、貫入された鋼管の内部は空洞である為、これを利用して地中熱交換体として利用する場合や、生コンクリートを鋼管中空部に充填して鋼管とコンクリートの合成構造の基礎杭として用いる場合もあるが、これらの場合、本来は、設計上厚い鋼管は用いる必要がなく、薄肉の鋼管で十分であるにもかかわらず、従来の回転貫入工法を用いる為、施工上の理由だけで厚い鋼管を使用しなければならないので、結果的に不経済な鋼管の利用とならざるを得なかった。
【0005】
そこで、回転貫入の際に、鋼管の下端近傍に回転トルクを加えるという発想がある。後述する様に、回転貫入時に杭体が受ける回転抵抗の6〜8割は先端の翼部の地盤抵抗から発生し、残り2〜4割は鋼管の周面摩擦から発生する。このことから、鋼管の下端近傍にトルクを加える方法を採用すれば、鋼管(ただし、トルク作用点近傍を除く)には全体トルクの2〜4割のトルクしか作用しないことになる。そこで、本発明者等は、特開平11−303069において、杭体を鋼管と翼付き先端部材(短尺厚肉鋼管)とに分離し、鋼管内に挿入したトルク伝達装置で先端部材にトルクを加えるという考え方を提示した。この様に回転貫入杭を構成することにより、薄肉の鋼管でも施工することができる様になる。
しかし、この方法では、別途先端部材を準備しなければならないことや、トルクを伝達する連結部の構造が複雑になり、製造コストの面で難点があり、未だ実用化されていない。
【0006】
本発明者は鋼管の回転貫入工法に関する従来の技術的背景と従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を行った結果、コストの安い薄肉鋼管でも安全確実に回転貫入することが出来る回転貫入鋼管とその斬新な利用方法を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
円筒状をなした鋼管本体の下端に、その開口部を閉塞する様に、鋼管本体の外径より大きい外径の回転推進翼体を鋼管の軸心に対して同軸状に固着すると共に、回転力を付与する回転軸の下端と着脱自在に係合し、該回転軸から回転トルクを前記回転推進翼体に伝達する係合部を、前記鋼管本体の内径側の回転推進翼体に設けて回転貫入鋼管を構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
鋼管本体の下端に固定されている回転推進翼体の上面に形成されている係合用突起に回転軸の下端の係合板に形成されている係合溝を係合させ、回転軸から回転トルクを回転推進翼体に直接加えて回転推進翼体のねじ込み作用によって鋼管本体を無排土で所定深度まで貫入させる。この際、回転トルクは鋼管本体を介さず、回転推進翼体に直接加えられるので、鋼管本体にはその周囲の地盤抵抗から発生するトルクしか加わらず、従来のものに比べ、鋼管本体に作用するトルクは、2乃至4割程度まで軽減され、肉厚の薄い鋼管でも挫屈することもなく、スムーズに地中に貫入させることが出来る。例えば、従来は直径267.4ミリ、厚さ8ミリの鋼管を用いて施工していたものが、この発明においては厚さ4ミリのもので施工可能となっており、鋼材費を大幅に低減させることが出来ると共に、鋼管の肉厚の薄さを積極的に利用し、地熱による冷暖房や融雪などの用に供することなども可能である。
又、鋼管本体の空胴に生コンクリートを充填することにより、鋼管とコンクリートの合成構造とし、肉厚の薄い鋼管でも十分な強度を持つ杭体を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
鋼管下端に固定されている回転推進翼体に直接回転トルクを加える様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0010】
図1はこの発明に係る回転貫入鋼管の実施例1の正面図、図2はその要部である回転推進翼体2部分の斜視図である。
【0011】
図中1は、鋼管本体1であり、円筒状をなし、その下端開口部には、これを閉塞する様に、前記鋼管本体1の外径より大きい外径を有する回転推進翼体2がその軸芯に対して同軸状に固定されている。回転推進翼体2は、回転運動を推進力に変換し、地盤下方への推進させる部材であり鋼管を杭として利用する場合は、大きな先端支持力を得る為の支持体としても機能する。この回転推進翼体2の翼の形状にはらせん翼など様々なものが存在するが、この実施例においては、図1乃至図3に示す通り、円盤状をなした翼本体3の周縁4の対向した位置からそれぞれ中心方向へ向かって一対の切り込みを入れ、この切り込みの両側に位置した部分を上下に折り曲げ加工して下向き傾斜部6と上向き傾斜部7とをそれぞれ形成したものを用いた。この回転推進翼体2は鋼管本体1の下端に強固に溶接され、鋼管本体1の下端開口部を完全に閉塞しており、鋼管本体1内に土砂等が侵入出来ない様になっている。
【0012】
更に、鋼管本体1の下端開口部に溶接固定されている回転推進翼体2の鋼管本体1の内径側上面には、図5及び図6に示す様に、回転トルクを伝達する為の係合用突起8が複数個設けられている。この係合用突起8は図4に示す様に、偏平四角柱状をなした基部9の上端から直角に横方向へ向かって短い腕材10が一体的に突設された逆L字形の側面形状をなした部材であり、図5に示す様に、腕材10が同一方向を向く様に、回転推進翼体2の上面に同心円状に固定されている。
【0013】
一方図中11は、鋼管本体1の回転推進翼体2に回転力を付与する回転軸であり、図示を省略したオーガーモーターなどの回転駆動装置に接続されており、図8に示す様に、下端には鋼管本体1の内径より小さな外径を有する肉の厚い円盤状をなした係合板12が固定されており、この係合板12の裏面には、図7及び図9に示す様に、直方体状の凹穿溝の上縁寄り横幅方向側壁から直角方向にオーバーハング状に張り出し片13が一体的に形成された係合溝15が、図9に示す様に、前記張り出し片13を同一方向を向かせて、同心円状に複数個形成されている。
【0014】
上記の係合用突起8と係合溝15は、互いに着脱自在に係合する部材であり、係合用突起8との頭部の横幅a、頭部の厚さb、基部の高さcと、係合溝15の開口部14の横幅d、その深さg、底部の横幅e、張り出し片13の厚さfとは、それぞれ下記の通りの関係となっている。
e>a,d>a,c>f,g>b+c
【0015】
又、この係合溝15の形成位置は、図12に示す様に、この係合板12を鋼管本体1の内径側に位置した回転推進翼体2の上面にそれぞれ軸心を一致させて接合させたとき、それそれ対応する係合用突起8と噛み合える箇所である。なお、図5及び図8に示すものとは逆に、係合用突起8を回転軸11の下端の係合板12の下面に、係合溝15を回転推進翼体2の上面にそれぞれ形成しても良い。
なお、係合用突起8と係合溝15の形状は、上記構造に限定されるものではなく、両者がスムーズに着脱出来、かつ係合溝15が係合用突起8に回転トルク、押し込み力及び引き抜き力を有効確実に伝達可能であれば、その他の形状のものでも良いことは、もちろんである。
【0016】
更に、係合用突起8及び係合溝15は、上記した図4及び図7に示す形状のものだけではなく、図12に示す様に係合用突起8’をT字形断面に形成すると共に、係合溝15’をこれに対応させて両側に張り出し片34を有するT字形に奥が拡がったT字形断面のものにしても良い。
ただし、この場合、係合用突起8’の頭部の横幅h、その基部の高さi、頭部の厚さjと、係合溝15’の開口部の横幅k、その底部の横幅l、張り出し片34の厚さmとは、それぞれ下記の関係になっていなければならない。
l>h,k>h,i>m,m+n>i+j,n>j
この図11に示す形状は、貫入速度を小さく抑えながら地中に貫入させる場合に特に有効である。又、図11に示すものとは逆に、係合用突起8’を回転軸11の下端の係合板12の下面に、係合溝15’を回転推進翼体2の上面にそれぞれ形成しても良い。
【0017】
この実施例1は上記の通りの構成を有するものであり、鋼管本体1を地盤27中に貫入しようとするときは、図13に示す様に、鋼管本体1を地盤27上に直立させ、係合盤12の係合溝13に回転推進翼体2の係合用突起8を係合し、オーガーモーターなどの回転駆動装置によって回転軸11を正転させ、鋼管本体1を介さずに、回転推進翼体2に直接回転トルクを伝達し、回転推進翼体2の下向き傾斜部6と上向き傾斜部7の掘削作用によって地盤27の下方に向かって鋼管本体1を貫入させる。
押し込み力を付加しながら貫入させる場合は、係合用突起8と係合溝15は、図10に示すような係合関係になり、係合溝15と係合用突起8の鉛直接接触面28を通して、回転トルクが伝達されると共に、回転推進翼体2と係合板12の当接面29によって押し込み力が伝達される。又、引き抜き力を付加しながら逆回転により引き抜く場合は、図11に示す様に両者の張り出し部38同士が噛み合い、その水平接触面16を介して引き抜き力が伝達され、回転推進翼体2及びこれが固定された鋼管本体1に安全確実に引き抜き力を加えることが出来る。
そして、図10に示す係合状態において、所定深度まで、回転推進翼体2及び鋼管本体1を貫入したら、回転軸11の駆動を停止し、この回転軸11を引き抜けば、鋼管杭の貫入施工作業は終了する。
【0018】
以上述べた回転貫入作業の際に必要とされる回転トルクは、従来の回転貫入工法の場合と基本的に同じであり、回転駆動装置の能力も同等であることが必要であるが、本発明に係る回転貫入鋼管と従来のそれとは、鋼管本体1と回転推進翼体2にそれぞれ生ずるトルクの分布が全く異なる。
即ち、図14において(a)は測定に用いた鋼管本体1の寸法を示した図、(b)は従来工法の場合における(a)に示した鋼管本体1の深さ方向のトルクの分布、(c)は本発明に係る回転貫入鋼管における深さ方向のトルクの分布を示したものである。この(b)に示す従来工法においては、回転推進翼体2の地盤抵抗から発生するトルク(T1)と鋼管本体1周囲の地盤抵抗から発生するトルク(T2)を合算したトルク(T)が鋼管本体1の頭部に発生しており、このトルク(T)に耐える為に鋼管本体1には十分な厚さが必要となる。一方、本発明に係る回転貫入鋼管においては、(c)に示す様に、鋼管本体1には、その周囲の地盤抵抗から発生するトルク(T2)しか発生しておらず、このトルク(T2)は全体のトルク(T)の2〜4割程度に過ぎないので、薄肉の鋼管として用いても挫屈させずに施工することが可能であることが明らかである。
【0019】
なお、ここで薄肉とは、鋼管本体1の頭部にトルクを加える従来の回転貫入工法では薄すぎて施工不可能な厚さを意味し、管径や地盤条件によって変わる相対的なものである。
【0020】
一方、本発明に係る回転貫入鋼管においては、回転推進翼体2には従来工法の場合よりも大きな回転トルクが作用するが、一般的に回転推進翼体2の厚さは鋼管本体1の肉厚の2〜5倍程度あるので、十分にこのトルクに耐えることが出来、特に問題はない。この様に、従来のものに比べ肉厚の薄い鋼管でも挫屈させることなく、安全確実に地中に貫入させることが出来るので、肉厚の大きい高価な鋼管を用いる必要がなく、鋼材費を大幅に低減させるさせることが可能である。
【実施例2】
【0021】
次に、図15乃至図23に基づいて、この発明に係る回転貫入鋼管の実施例2について説明する。
この実施例2においては、図15及び図16に示す様に、回転推進翼体2の上面中央には直方体状をなした係合用突起30が溶接などによって固着されている。一方、回転軸11の下端の係合板12の裏面中央には、前記直方体状の係合用突起30が嵌まり込む直方体状をなした凹穿部31が形成されており、図19及び図20に示す様に、これら係合用突起30と凹穿部31の鉛直接触面でトルクが、回転軸11の下面と回転推進翼体2の上面との水平接触面で押し込みが、それぞれ伝達される様になっている。
【0022】
又、図22に示す様に、鋼管本体1の頭部付近の内径側には、直方体状の落下防止用突起18が複数個軸心方向を向かって等間隔で固定されており、一方、回転軸11の適当位置には鋼管本体1の内径より小さい外径を有するつば状の落下防止板19が取り付けられている。そして、この落下防止板19の上縁寄り外周はL字形に削り取られ、棚部26となっており、落下防止用突起18とこの棚部26の上面とが当接することにより、鋼管本体1を空中に吊り下げる場合や、回転軸11に引き抜き力が作用した際に、鋼管本体1が回転軸11から落下することを防いでいる。
なお、この落下防止板19は回転軸11への取付け位置を変えられる様にしておけば、長さの異なる様々な鋼管本体1に対応出来るので便利である。
【0023】
又、図22に示す様に、落下防止板19と落下防止用突起18のそれぞれの鉛直面間の間隔32を狭くしておけば、振れ止めとなり、貫入工事の際に鋼管本体1と回転軸11とを同芯に保つことが出来、好都合である。他の部分は前述の実施例1と同様なので、同一符号を付して説明を省略する。
この実施例2も、前述の実施例1と同様、薄肉鋼管でも回転貫入工事を施工できる効果を有する。
【実施例3】
【0024】
この実施例3は前述の実施例1及び2の鋼管本体1の応用例に係るものであり、図24に示す様に、肉厚の薄い鋼管本体1を複数本数m間隔で、実施例1又は2に示す手段によって地中に回転貫入して設置する。なお、鋼管本体1の先端は回転推進翼体2によって閉塞されている為、貫入後の鋼管本体1の管内は空胴である。そして、この空胴内に水20を充填すると共に、採熱/放熱用の熱源水配管21を配設し、この熱源水配管21を循環ポンプ22を介してヒートポンプ23に接続し、更に、このヒートポンプ23に冷暖房や融雪の対象となる箇所に冷媒を供給する冷媒パイプ24を接続する。
【0025】
そして、暖房や融雪の際には、この図24において矢印で示す方向に熱源水を流し、冷房運転時にはこれを逆の方向に熱源水を流し、暖房や融雪を行う。
暖房や融雪の際の状況を具体的に説明すると、ヒートポンプ23内で冷えた熱源水は鋼管本体1内の底部付近で熱源水配管21から出た後、地熱で徐々に温められて管内を上昇し、ヒートポンプ23に戻り、ヒートポンプ23内において冷媒と熱交換が行われ、加温された冷媒は冷媒パイプ24を通って暖房や融雪を行うべき場所に送られ、その場所を加温することになる。一方、冷房の場合は、熱源水が逆方向に流れ、ヒートポンプ23によって同様に熱交換が行われ、冷媒パイプ24によって冷却された冷媒が冷房を行うべき場所に送られる。
【0026】
この様に、この実施例3においては、実施例1及び2に述べた肉厚の薄い回転貫入鋼管を介して地熱の採取、利用が行われ、地盤からの採熱分に相当するエネルギーが節約される。なお、配管方法はこの図24に示すものに限定されるものではなく、様々な形態のものがあることはもちろんである。又、この実施例では、鋼管本体1内の水が直接ヒートポンプ23まで循環する様にしたが、熱源水配管21を閉鎖系とし、間接的に地盤と熱交換する様にしても良い。
【0027】
この実施例3において、地中に設置された鋼管本体1は、地熱の採取、放熱の為に利用されているだけで、土圧以外の外力が加わることなく、熱源水を貯留するタンクとしての機能を確保できれば足りるので、設計上肉厚の薄い安価な鋼管で十分である。
又、この実施例3に示す地熱利用方法においては、鋼管本体1の長さは、長い程経済性が高く、地熱利用効率も高くなるので、施工可能であるなら、より長くするのが好ましく、回転推進翼体2に直接回転力を加える実施例1及び2記載の回転貫入鋼管を用いた場合、地盤にもよるが、150倍以上でも施工出来るので、極めて効率的に地熱利用が可能となる。ちなみに、鋼管本体1の頭部に回転力を加える従来の回転貫入方法では、施工中に鋼管本体1に挫屈や曲がりが発生する為、施工可能な鋼管本体1の長さは鋼管径の100倍程度以下に過ぎない。更に、実施例1及び2記載の回転貫入鋼管を用いた場合、鋼管本体1に加わるトルクが小さくなるので、従来よりも大きなトルクを加えることが可能な為、より深くまで施工することが出来る。
【実施例4】
【0028】
次に、図25に基づいて実施例4について説明する。この実施例4は、前述の実施例1及び2において述べた回転貫入鋼管を用いた基礎杭の形成方法に関するものであり、地中に鉛直方向に設置された実施例1及び2に記載された肉厚の薄い鋼管本体1の空中部の一部又は全部に生コンクリートを充填し、鋼管1とコンクリート35の合成構造の基礎杭とするものである。図25(a)は鋼管本体1の全長にわたって生コンクリートを充填した場合、図25(b)は設計上鉛直方向の圧縮力が卓越する杭下部36は鋼管単体で、曲げモーメントが付加される杭上部37には鉄筋25を配設し、鉄筋コンクリートと鋼管との合成構造とした場合を示している。なお、図中33はフーチングである。これらいずれの場合も、鋼管本体1内に空胴が確保されており、コンクリートを容易かつ品質劣化させることなく充填できると共に、肉厚の薄い鋼管を利用出来るので低コストで十分な強度を有する基礎杭を構築することが出来る効果を有する。又、無排土で施工出来るので、環境に優しいというメリットも有する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
各種建築土木工事において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る回転貫入鋼管の実施例1の正面図。
【図2】同じく、その要部である回転推進翼体部分の斜視図。
【図3】同じく、その要部である回転推進翼体部分の平面図。
【図4】同じく、係合用突起の斜視図。
【図5】同じく、係合用突起の回転推進翼体上面への固定位置を示した平面図。
【図6】同じく、係合用突起の回転推進翼体上面への固定位置を示した拡大縦断面図。
【図7】同じく、係合溝を下方から見た拡大斜視図。
【図8】同じく、係合板への係合溝の形成位置を示した回転軸部分の拡大斜視図。
【図9】同じく、その要部である回転推進翼体部分の斜視図。
【図10】同じく、回転貫入時における係合用突起と係合溝との係合関係を示した拡大断面図。
【図11】同じく、鋼管本体に引き抜き力を加えたい時の係合関係を示した拡大断面図。
【図12】同じく、係合用突起と係合溝の他例の拡大断面図。
【図13】同じく、鋼管本体を地盤中に回転貫入しつつある状況を示した縦断面図。
【図14】回転貫入の際に鋼管本体及び回転推進翼体に加わるトルクの大きさを示した説明図であり、(a)は測定に用いた鋼管本体の正面図。(b)は従来方法を用いた場合のトルクの深さ方向の分布図。(c)は本発明を用いた場合のトルクの深さ方向の分布図。
【図15】実施例2の縦断面図。
【図16】同じく、実施例2における係合用突起の形状を説明する為の回転推進翼体部分の斜視図。
【図17】同じく、回転軸部分の底面図。
【図18】同じく、回転軸部分の斜視図。
【図19】同じく、回転軸部分の縦断面図。
【図20】同じく、係合用突起と凹穿部との係合関係を説明する為の横断面図。
【図21】同じく、係合用突起と凹穿部との係合関係を説明する為の縦断面図。
【図22】同じく、落下防止用突起と落下防止板の係合状況を説明する拡大縦断面図。
【図23】同じく、落下防止用突起と落下防止板の係合状況を説明する拡大横断面図。
【図24】実施例3における採熱及び熱交換の方法を説明した説明図。
【図25】実施例4に示す鋼管とコンクリートの合成構造を示した説明図。
【符号の説明】
【0031】
1 鋼管本体
2 回転推進翼体
3 翼本体
4 周縁
6 下向き傾斜部
7 上向き傾斜部
8 係合用突起
9 基部
10 腕材
11 回転軸
12 係合板
13 張り出し片
14 開口部
15 係合溝
16 水平接触面
17 凹穿部
18 落下防止用突起
19 落下防止板
20 水
21 熱源水配管
22 循環ポンプ
23 ヒートポンプ
24 冷媒パイプ
25 鉄筋
26 棚部
27 地盤
28 鉛直接触面
29 当接面
30 係合用突起
31 凹穿部
32 間隔
33 フーチング
34 張り出し部
35 生コンクリート
36 杭下部
37 杭上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなした鋼管本体の下端に、その開口部を閉塞する様に、鋼管本体の外径より大きい外径の回転推進翼体を鋼管の軸心に対して同軸状に固着すると共に、回転力を付与する回転軸の下端と着脱自在に係合し、該回転軸から回転トルクを前記回転推進翼体に伝達する係合部を、前記鋼管本体の内径側の回転推進翼体に設けたことを特徴とする回転貫入鋼管。
【請求項2】
鋼管本体の頭部付近の内径側に、軸心方向に向かって突出した落下防止用突起を、回転軸の適当位置に鋼管本体の内径により小さい外径を有するつば状の落下板をそれぞれ設け、落下防止用突起の下面と落下防止板の上面とを当接させることにより、回転軸から鋼管本体へ引き抜き力を伝達出来る様にすると共に、吊下げ時に回転軸から鋼管本体が離脱落下しない様にしたことを特徴とする請求項1記載の回転貫入鋼管
【請求項3】
地盤の中に貫入設置された請求項1又は2項の回転貫入鋼管の中空部に水を注入すると共に、前記中空部の水と地上施設との間で熱交換する為の配管を設置し、鋼管本体の周囲の地熱を熱源として冷暖房や融雪に利用する様にしたことを特徴とする回転貫入鋼管の利用方法。
【請求項4】
地盤中に貫入設置された請求項1又は2項の回転貫入鋼管の中空部の一部又は全部に生コンクリートを充填して、鋼管とコンクリートの合成構造を構成し,基礎杭として利用することを特徴とする回転貫入鋼管の利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−126975(P2010−126975A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302170(P2008−302170)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(592198404)千代田工営株式会社 (25)
【Fターム(参考)】