説明

回転速度検出装置付き車輪用軸受装置

【課題】センサユニットの装着部の密封性を高め、検出精度を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】カバー9がオーステナイト系ステンレス鋼鈑からプレス加工にて形成され、底部9dの径方向外方部で、パルサリング12と対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔15が形成され、この挿入孔15に縁曲げされてアウター側に突出する装着部15aが形成され、この装着部15aと、この装着部15aに嵌挿されるセンサユニット16との間にOリング17が介装されると共に、挿入孔15の近傍に軸方向に貫通する通孔18が穿設され、この通孔18の内側に袋ナット19が固定され、この袋ナット19に固定ボルト21が螺着されてセンサユニット16が取付フランジ部20を介して固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵され、センサユニットの装着部の密封性を高め、検出精度を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御し、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵された回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が一般的に知られている。従来、このような車輪用軸受装置は、転動体を介して転接する内方部材および外方部材の間にシール装置が設けられ、円周方向に磁極を交互に並べてなる磁気エンコーダを前記シール装置に一体化させると共に、磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに対面配置され、車輪の回転に伴う磁気エンコーダの磁極変化を検出する回転速度センサとで回転速度検出装置が構成されている。
【0003】
前記回転速度センサは、懸架装置を構成するナックルに車輪用軸受装置が装着された後、当該ナックルに装着されているものが一般的である。しかし、この回転速度センサと磁気エンコーダとのエアギャップの調整作業の煩雑さを解消すると共に、よりコンパクト化を狙って、最近では回転速度センサをも軸受に内蔵した回転速度検出装置付き車輪用軸受装置が提案されている。
【0004】
このような回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一例として図8に示すような構造が知られている。この回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、図示しないナックルに支持固定され、固定部材となる外方部材51と、この外方部材51に複列のボール53、53を介して内挿された内方部材52とを有している。内方部材52は、ハブ輪55と、このハブ輪55に外嵌された内輪56とからなる。
【0005】
外方部材51は、外周に車体取付フランジ51bを一体に有し、内周には複列の外側転走面51a、51aが形成されている。一方、内方部材52は、前記した外方部材51の外側転走面51a、51aに対向する複列の内側転走面55a、56aが形成されている。これら複列の内側転走面55a、56aのうち一方の内側転走面55aはハブ輪55の外周に一体形成され、他方の内側転走面56aは内輪56の外周に形成されている。この内輪56は、ハブ輪55の内側転走面55aから軸方向に延びる軸状の小径段部55bに圧入されている。そして、複列のボール53、53がこれら両転走面間にそれぞれ収容され、保持器57、57によって転動自在に保持されている。
【0006】
ハブ輪55は、外周に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ54を一体に有し、小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形して加締部58が形成され、この加締部58によって内輪56が軸方向に固定されている。そして、外方部材51の端部にはシール59およびカバー63が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
【0007】
内輪56の外周には磁気エンコーダ60が圧入されている。この磁気エンコーダ60は、磁性金属板により断面が略T字状の円環状に形成された支持環61と、この支持環61の側面に添着されたエンコーダ本体62とで構成されている。このエンコーダ本体62は、フェライトの粉末を混入させたゴム等の永久磁石からなり、円周方向にS極とN極とが交互に等間隔に着磁されている。
【0008】
カバー63は外方部材51の開口端部に外嵌固定され、外方部材51の開口部を閉塞している。このカバー63は、有底円筒状の主部64と、この主部64の開口周縁部から径方向外方へ突出する状態で設けられた、断面L字状のフランジ部65とからなる。また、このフランジ部65は、外方部材51の内端開口部に突き当て自在な形状を有する突き当て部66と、外方部材51の開口部に外嵌自在な形状を有する嵌合部67とからなる。
【0009】
主部64の中央部分を構成する底板部68の径方向外方に片寄った部分には、軸方向に突出する突部69が設けられている。また、この突部69の外周壁部の一部は、底板部68の外周面よりも径方向外方に突出させて、フランジ部65を構成する嵌合部67の外周面と連続する膨出部70とされている。したがって、この部分でフランジ部65の突き当て部66は不連続となっている。
【0010】
また、突部69の底板部68の径方向外方寄り部分で、エンコーダ本体62と対向する部分には、軸方向に貫通する挿入孔71が形成されている。この挿入孔71はバーリング加工によって形成されると共に、このバーリング加工に伴って形成される短円筒部72にセンサユニット73の挿入部74が挿入されている。このセンサユニット73は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子からなるセンサおよびこの磁気検出素子の出力波形を整える波形整形回路が組み込まれたIC等からなり、車輪の回転速度を検出してその回転数を制御する自動車のABSを構成している。
【0011】
挿入部74の中間部外周面には係止溝75が形成され、この係止溝75にOリング76が装着されている。このOリング76によって泥水等の異物が挿入孔71を通じてカバー63および外方部材51の内側に侵入するのを防止している。そして、磁性粉等の異物がエンコーダ本体62の側面に付着するのを防止し、回転速度検出の精度が悪化するのを防止している。
【0012】
また、カバー63における突部69の端面の径方向中央寄り付近で、ハブ輪55の小径段部55bに存在する凹部77と対向する部分には、軸方向に貫通しない有底の段付凹部78が設けられている。この段付凹部78は、開口側の大径部79と奥側の小径部80とからなり、大径部79にはナット81が溶接により固定されている。
【0013】
取付フランジ部82に設けられた通孔83の内側に、円筒状の芯金84がインサートされている。この芯金84の全長は、取付フランジ部82の厚さとほぼ同等に設定されている。そして、取付フランジ部82を介してボルト85とナット81とを螺合緊締した際に、ボルト85の頭部とナット81によって合成樹脂製の取付フランジ部82が押し潰されないようにされている。
【0014】
前述のように構成する従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置によれば、センサユニット73をカバー63に対し、ねじ止め結合固定する構造を採用しているため、センサユニット73の修理、交換の手間を軽減することができ、ねじ止め結合部分での密封性の確保を安価に実現できると共に、カバー63に対するセンサユニット73の組み付け作業性を向上できる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−337381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、カバー63における突部69の端面に有底の段付凹部78が設けられ、この段付凹部78の大径部79にナット81が溶接により固定されると共に、取付フランジ部82に設けられた通孔83の内側に円筒状の芯金84が一体にモールドされているが、この場合、挿入孔71とセンサの挿入部74の隙間が大きいと、ナット81と芯金84の芯ズレが大きくなりやすく、センサユニット73の組み付け作業が難しくなる。さらに、カバー63の形状が複雑なため金型の製作が難しくなると共に、加工工数が嵩んで製造コストが高騰する。
【0017】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、センサユニットの装着部の密封性を高め、検出精度を向上させた回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材に嵌着されたカバーに装着されて前記パルサリングに所定のエアギャップを介して対峙する棒状のセンサユニットとを備え、前記カバーが鋼鈑からプレス加工にて形成され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する重合部と、この重合部から軸方向に延びる円筒部と、前記外方部材の開口部を閉塞する底部とを備えている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記カバーの底部の径方向外方部で、前記パルサリングと対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔が形成され、この挿入孔に縁曲げされてアウター側に突出する装着部が形成され、この装着部と、この装着部に嵌挿される前記センサユニットとの間に弾性部材が介装されると共に、前記挿入孔の近傍に軸方向に貫通する通孔が穿設され、この通孔の内側に袋ナットが固定され、この袋ナットに固定ボルトが螺着されて前記センサユニットが取付フランジ部を介して固定されている。
【0019】
このように、内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、外方部材に嵌着されたカバーに装着されてパルサリングに所定のエアギャップを介して対峙する棒状のセンサユニットとを備え、カバーが鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延び、外方部材のインナー側の端面に密着する重合部と、この重合部から軸方向に延びる円筒部と、外方部材の開口部を閉塞する底部とを備えている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、カバーの底部の径方向外方部で、パルサリングと対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔され、この挿入孔に縁曲げされてアウター側に突出する装着部が形成され、この装着部と、この装着部に嵌挿されるセンサユニットとの間に弾性部材が介装されると共に、挿入孔の近傍に軸方向に貫通する通孔が穿設され、この通孔の内側に袋ナットが固定され、この袋ナットに固定ボルトが螺着されてセンサユニットが取付フランジ部を介して固定されているので、装着部の剛性が向上し、センサユニットを安定して支持することができると共に、密封性が向上して外部から泥水等の異物の侵入を確実に防止することができる。さらに、カバーの密封性が向上することにより、インナー側の密封手段となるシールが不要となり、パルサリングでも充分シール効果を発揮し、軸受内部に封入された潤滑グリースがカバー側に漏洩するのを効果的に防止することができる。したがって、製造コストを最小限に抑えることができると共に、軸受の回転トルクを低減することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明のように、前記弾性部材がOリングであっても良い。
【0021】
また、請求項3に記載の発明のように、前記装着部が円筒状に形成されていれば、センサユニットの挿入性を向上させ、装着部の密封性を高めることができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明のように、前記装着部の端部に内側に折曲される鍔部が形成され、この鍔部に前記弾性部材が保持されていれば、鍔部に弾性部材が安定して保持することができ、組立工数を軽減することができると共に、センサユニットの組立性が向上する。
【0023】
また、請求項5に記載の発明のように、前記装着部が傾斜した内周面に形成され、この内周面に前記弾性部材が保持されていれば、カバーの加工性が向上し、簡単な構造で弾性部材を安定して保持することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明のように、前記装着部の根元部が円弧状の段付き形状に形成され、この根元部に前記弾性部材が弾性接触されていても良いし、また、請求項7に記載の発明のように、前記装着部の根元部が円筒状の段付き形状に形成され、この根元部に前記弾性部材が弾性接触されていても良い。これにより、挿入孔の入口径が実質的に大きくなり、センサユニットの挿入性を向上させると共に、センサユニットの挿入部に環状溝を形成してOリングを装着することなく装着部の密封性を向上させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、請求項8に記載の発明のように、前記装着部の案内すきまが1.0mm以下に規制され、かつ、装着部の案内部の幅寸法が1.0mm以上に設定されていれば、センサユニットの挿入性を向上させ、装着部の密封性を高めることができると共に、取付フランジ部のボルト孔とカバーの通孔との芯合せが容易となる。
【0026】
また、請求項9に記載の発明のように、前記カバーの嵌合部の端部が薄肉に形成され、この端部に弾性部材が加硫接着により端部に回り込んだ状態で一体に接合され、前記外方部材の端部内周に弾性嵌合されていれば、外方部材との嵌合部の気密性が向上する。
【0027】
また、請求項10に記載の発明のように、前記カバーの嵌合部の板厚は他の部位よりも厚く形成されていれば、カバー自体の剛性が高くなって気密性が一層向上する。
【0028】
また、請求項11に記載の発明のように、前記カバーの嵌合部の端部に径方向外方に突出する環状凸部が形成されると共に、前記外方部材の端部内周に環状溝が形成され、この環状溝に前記環状凸部が係合されていれば、外方部材との嵌合部の気密性が向上すると共に、車両の運転中に振動等によりカバーが微動するのを防止し、長期間に亘って安定した検出精度を確保することができる。
【0029】
また、請求項12に記載の発明のように、前記カバーがオーステナイト系ステンレス鋼鈑で形成されていれば、回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさず、安定した検出精度を確保することができる。
【0030】
また、請求項13に記載の発明のように、前記カバーが冷間圧延鋼板にカチオン電着塗装により防錆皮膜が形成されていれば、長期間に亘って発錆するのを防止することができると共に、外方部材との嵌合部の気密性が向上する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材に嵌着されたカバーに装着されて前記パルサリングに所定のエアギャップを介して対峙する棒状のセンサユニットとを備え、前記カバーが鋼鈑からプレス加工にて形成され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する重合部と、この重合部から軸方向に延びる円筒部と、前記外方部材の開口部を閉塞する底部とを備えている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記カバーの底部の径方向外方部で、前記パルサリングと対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔が形成され、この挿入孔に縁曲げされてアウター側に突出する装着部が形成され、この装着部と、この装着部に嵌挿される前記センサユニットとの間に弾性部材が介装されると共に、前記挿入孔の近傍に軸方向に貫通する通孔が穿設され、この通孔の内側に袋ナットが固定され、この袋ナットに固定ボルトが螺着されて前記センサユニットが取付フランジ部を介して固定されているので、装着部の剛性が向上し、センサユニットを安定して支持することができると共に、密封性が向上して外部から泥水等の異物の侵入を確実に防止することができる。さらに、カバーの密封性が向上することにより、インナー側の密封手段となるシールが不要となり、パルサリングでも充分シール効果を発揮し、軸受内部に封入された潤滑グリースがカバー側に漏洩するのを効果的に防止することができる。したがって、製造コストを最小限に抑えることができると共に、軸受の回転トルクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のセンサ装着部を示す要部拡大図である。
【図3】図2のカバーの変形例を示す要部拡大図である。
【図4】図2のカバーの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図5】図2のカバーの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図6】図2のカバーの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図7】(a)は、図6のカバーの変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)の変形例を示す要部拡大図である。
【図8】従来の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
外周に懸架装置を構成するナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる軸状の小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、前記外方部材に装着され、前記パルサリングに所定のエアギャップを介して対峙する棒状のセンサユニットとを備え、前記カバーが鋼鈑からプレス加工にて形成され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する重合部と、この重合部から軸方向に延びる円筒部と、前記外方部材の開口部を閉塞する底部とを備えている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、前記カバーがオーステナイト系ステンレス鋼鈑で形成され、前記底部の径方向外方部で、前記パルサリングと対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔が形成され、この挿入孔に縁曲げされてアウター側に突出する装着部が形成され、この装着部と、この装着部に嵌挿される前記センサユニットとの間にOリングが介装されると共に、前記挿入孔の近傍に軸方向に貫通する通孔が穿設され、この通孔の内側に袋ナットが固定され、この袋ナットに固定ボルトが螺着されて前記センサユニットが取付フランジ部を介して固定されている。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1のセンサ装着部を示す要部拡大図、図3は、図2のカバーの変形例を示す要部拡大図、図4〜6は、図2のカバーの他の変形例を示す要部拡大図、図7(a)は、図6のカバーの変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)の変形例を示す要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0035】
図1に示す回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は従動輪側の第3世代と呼称され、内方部材1と外方部材2と複列の転動体(ボール)3、3とを備えている。内方部材1は、ハブ輪4と、このハブ輪4に固定された別体の内輪5とからなる。
【0036】
ハブ輪4は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる小径段部4bが形成されている。車輪取付フランジ6の円周等配位置には車輪を固定するためのハブボルト6aが植設されている。
【0037】
内輪5は、外周に他方(インナー側)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪4の小径段部4bに所定のシメシロを介して圧入されている。そして、小径段部4bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部4cによって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。
【0038】
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、後述するシール8のシールランド部となる車輪取付フランジ6のインナー側の基部6bから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部4cは、鍛造後の素材表面硬さ25HRC以下の未焼入れ部としている。また、内輪5および転動体3はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。
【0039】
一方、外方部材2は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ2bを一体に有し、内周に内方部材1の複列の内側転走面4a、5aに対向する複列の外側転走面2a、2aが一体に形成されている。この外方部材2は、ハブ輪4と同様、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面2a、2aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、これら両転走面2a、4aおよび2a、5a間に保持器7を介して複列の転動体3、3が転動自在に収容されている。
【0040】
外方部材2と内方部材1間に形成される環状空間の開口部のうちアウター側の開口部にはシール8が装着され、インナー側の開口部にはカバー9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0041】
なお、ここでは、車輪用軸受装置として、転動体3をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成されたものを例示したが、これに限らず転動体に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。また、第3世代の構造を例示したが、一対の内輪をハブ輪に圧入した、所謂第2世代の構造であっても良い。
【0042】
アウター側のシール8は、外方部材2のアウター側端部の内周に所定のシメシロを介して圧入された芯金10と、この芯金10に加硫接着によって一体に接合されたシール部材11とからなる一体型のシールで構成されている。芯金10は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)や冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて断面略L字状に形成されている。
【0043】
一方、シール部材11はNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して形成され、車輪取付フランジ6のインナー側の側面に所定の軸方向シメシロをもって摺接するサイドリップ11aと、断面が円弧状に形成された基部6bに所定の軸方向シメシロをもって摺接するダストリップ11bと、軸受内方側に傾斜して形成され、基部6bに所定の径方向シメシロを介して摺接するグリースリップ11cとを有している。
【0044】
なお、シール部材11の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
【0045】
ここで、内輪5の外径にパルサリング12が圧入されている。このパルサリング12は、強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によってL字状に、全体として円環状に形成された支持環13と、この支持環13のインナー側の側面に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ14とで構成されている。
【0046】
支持環13は、内輪5の外径に圧入される円筒状の嵌合部13aと、この嵌合部13aから径方向内方に延びる立板部13bとを備えている。そして、この立板部13bに磁気エンコーダ14が一体に接合されている。この磁気エンコーダ14は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されて車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成している。
【0047】
なお、ここでは、ゴム磁石からなる磁気エンコーダ14を有するパルサリング12を例示したが、これに限らず、円周方向に交互に、かつ等間隔に特性が変化する構成であれば良く、複数の透孔や凹凸が形成された鋼板製のパルサリングであっても良いし、焼結合金で形成されたものでも良い。また、プラスチック磁石が接合されたものでも良い。
【0048】
本実施形態では、外方部材2のインナー側の端部にカバー9が装着され、外方部材2のインナー側の開口部を閉塞している。このカバー9は、耐食性を有する鋼鈑、例えば、フェライト系ステンレス鋼版(JIS SUS430等)や冷間圧延鋼板(JIS SPCC等)でも良いが、後述する回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体の鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)で形成されるのが好ましい。
【0049】
なお、カバー9は、耐食性を有する鋼鈑以外にも、例えば、冷間圧延鋼板にカチオン電着塗装により防錆皮膜が形成され、この防錆皮膜の下地処理(前処理)としてリン酸亜鉛処理が施されていても良い。これにより、リン酸亜鉛処理により素材となる鋼材の表面が化学反応で粗面化されるため、塗料の食い付きが良くなって付着性が向上し、防錆皮膜が剥がれ落ちることなく長期間に亘って発錆するのを防止することができると共に、外方部材2との嵌合部の気密性が向上する。
【0050】
カバー9は、外方部材2の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部9aと、この嵌合部9aから径方向外方に延び、外方部材2のインナー側の端面2cに密着する重合部9bと、この重合部9bから軸方向に延びる円筒部9cと、後述するセンサユニット16が装着される底部9dとを備えている。本実施形態では、カバー9が外方部材2の端部に内嵌されているので、外嵌タイプに比べ、カバー9自体の剛性が高くなって気密性が向上すると共に、重合部9bが外方部材2の端面2cに密着されることにより、外方部材2に対するカバー9の位置決め精度が高くなり、エアギャップ調整が容易になって速度検出精度を向上させることができる。
【0051】
図2に拡大して示すように、カバー9の底部9dの径方向外方側で、磁気エンコーダ14と対向する部分には、軸方向に貫通する挿入孔15が形成されている。この挿入孔15はバーリング(縁曲げ)加工によって形成されると共に、このバーリング加工に伴ってアウター側に突出して形成される円筒状の装着部15aに弾性部材、例えば、挿入孔縁部に加硫によりゴムを一体成形する、もしくは挿入孔部にOリング17を介してセンサユニット16の挿入部16aが挿入されている。このセンサユニット16はPA66等の射出成形可能な合成樹脂で形成され、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子およびこの磁気検出素子の出力波形を整える波形整形回路が組み込まれたIC(図示せず)等が包埋され、車輪の回転速度を検出してその回転数を制御する自動車のABSを構成している。
【0052】
また、挿入孔15の近傍に軸方向に貫通する通孔18が穿設され、この通孔18の内側に袋ナット19が溶接により固定されている。一方、センサユニット16にはボルト孔20aを有する取付フランジ部20が一体に形成されている。そして、取付フランジ部20のボルト孔20aを介して袋ナット19に固定ボルト21が螺着され、センサユニット16が固定されている。
【0053】
このように、本実施形態では、カバー9の底部9dに挿入孔15が形成され、バーリング加工によって軸方向に突出して円筒状の装着部15aが形成されているので、装着部15の剛性が向上し、センサユニット16を安定して支持することができると共に、センサユニット16の挿入性が向上し、取付フランジ部20のボルト孔20aとカバー9の通孔18との芯合せが容易となる。
【0054】
また、装着部15aにOリング17を介してセンサユニット16の挿入部16aが挿入されると共に、通孔18の内側に袋ナット19が溶接により固定され、取付フランジ部20のボルト孔20aを介してこの袋ナット19に固定ボルト21が螺着され、センサユニット16が固定されているので、密封性が向上して外部から泥水等の異物の侵入を確実に防止することができる。なお、ここでは、袋ナット19が溶接によってカバー9に固定されたものを例示したが、これに限らず、例えば、接着剤によって接合しても良いし、また、カバー9の内壁を塑性変形させて加締固定しても良い。
【0055】
さらに、カバー9の密封性が向上することにより、インナー側の密封手段となるシールが不要となり、パルサリング12でも充分シール効果を発揮し、軸受内部に封入された潤滑グリースがカバー9側に漏洩するのを効果的に防止することができる。したがって、製造コストを最小限に抑えることができると共に、軸受の回転トルクを低減することができる。
【0056】
図3に、図2のカバー9の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはカバー9の嵌合部の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
このカバー22は、外方部材2の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部22aと、この嵌合部22aから径方向外方に延び、外方部材2のインナー側の端面2cに密着する重合部9bと、この重合部9bから軸方向に延びる円筒部9cと、センサユニット16が装着される底部9dとを備えている。
【0058】
ここで、本実施形態では、カバー22の嵌合部22aの端部が薄肉に形成され、この端部に弾性部材23が加硫接着により一体に接合されている。弾性部材23はNBR等の合成ゴムからなり、端部に回り込んだ状態で接合され、外方部材2の端部内周に弾性嵌合されている。これにより、外方部材2との嵌合部の気密性が向上する。なお、カバー22の少なくとも嵌合部22aの板厚を他の部位よりも厚くすることにより、カバー22自体の剛性が高くなって気密性が一層向上する。
【0059】
図4に、図2のカバー9の他の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはカバー9の嵌合部の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
このカバー24は、外方部材2の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部24aと、この嵌合部24aから径方向外方に延び、外方部材2のインナー側の端面2cに密着する重合部9bと、この重合部9bから軸方向に延びる円筒部9cと、センサユニット16が装着される底部9dとを備えている。
【0061】
ここで、本実施形態では、カバー24の嵌合部24aの端部に径方向外方に突出した環状凸部25が形成され、外方部材2の端部内周に形成された環状溝2dに係合されている。これにより、外方部材2との嵌合部の気密性が向上すると共に、車両の運転中に振動等によりカバー24が微動するのを防止し、長期間に亘って安定した検出精度を確保することができる。
【0062】
図5に、図2のカバー9の他の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはカバー9の装着部の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
このカバー26は、外方部材2の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部9aと、この嵌合部9aから径方向外方に延び、外方部材2のインナー側の端面2cに密着する重合部9bと、この重合部9bから軸方向に延びる円筒部9cと、センサユニット16が装着される底部26aとを備えている。
【0064】
ここで、本実施形態では、カバー26の底部9dに軸方向に貫通する挿入孔27が形成されている。この挿入孔27はバーリング加工によって円筒状の装着部27aが形成されると共に、この装着部27aの端部に内側に折曲される鍔部27bが形成されている。そして、Oリング17を介してセンサユニット16の挿入部16aが挿入されている。これにより、鍔部27bにOリング17が安定して保持することができ、組立工数を軽減することができると共に、センサユニット16の組立性が向上する。
【0065】
図6に、図2のカバー9の他の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはカバー9の装着部の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
このカバー28は、外方部材2の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部9aと、この嵌合部9aから径方向外方に延び、外方部材2のインナー側の端面2cに密着する重合部9bと、この重合部9bから軸方向に延びる円筒部9cと、センサユニット16が装着される底部28aとを備えている。
【0067】
ここで、本実施形態では、カバー28の底部28aに軸方向に貫通する挿入孔29が形成され、バーリング加工によって内周面が傾斜した装着部29aが形成されている。そして、Oリング17を介してセンサユニット16の挿入部16aが挿入されている。これにより、カバー28の加工性が向上し、簡単な構造でOリング17を安定して保持することができる。
【0068】
図7(a)に、図6のカバー28の変形例を示す。このカバー28’は、挿入孔30に突出して円筒状の装着部31が形成されると共に、この装着部31の根元部31aが円弧状の段付き形状に形成され、この根元部31aにOリング17が弾性装着されている。これにより、挿入孔30の入口径が実質的に大きくなり、センサユニット16の挿入性を向上させると共に、センサユニット16の挿入部16aに環状溝を形成してOリングを装着することなく装着部31の密封性を向上させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0069】
さらに、ここでは、挿入孔30の装着部31の内径d1とセンサユニット16の挿入部16aの外径d2との径差(d1−d2)が0〜1.0mmの範囲になるように、装着部31の案内すきまが所定値以下に規制されると共に、この装着部31の案内部の幅寸法Lが1.0mm以上に設定されている。これにより、装着部31の剛性が向上し、センサユニット16を安定して支持することができると共に、センサユニット16の挿入性が向上し、取付フランジ部20のボルト孔20aとカバー28’の通孔(図示せず)との芯合せが容易となる。さらに、装着部31の案内すきまを所定値以下に規制することにより、センサユニット16の挿入性を保ちつつ、この案内すきまがラビリンスシールの役割をなし、外部から泥水等の異物の侵入を防止でき、密封性を一層向上させることができる。
【0070】
図7(b)に、(a)の変形例を示す。このカバー28”は、挿入孔30に突出して円筒状の装着部331形成されると共に、この装着部31の根元部31bが円筒状の段付き形状に形成され、この根元部31bにOリング17が弾性装着されている。これにより、前述した実施形態と同様、挿入孔30の入口径が実質的に大きくなり、センサユニット16の挿入性を向上させると共に、センサユニット16の挿入部16aに環状溝を形成してOリングを装着することなく装着部31の密封性を向上させることができ、低コスト化を図ることができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る回転速度検出装置付き車輪用軸受装置は、外方部材の端部に鋼鈑プレス製のカバーが嵌着され、このカバーにセンサユニットが装着された従動輪側の内輪回転タイプの車輪用軸受装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 内方部材
2 外方部材
2a 外側転走面
2b 車体取付フランジ
2c 外方部材のインナー側の端面
3 転動体
4 ハブ輪
4a、5a 内側転走面
4b 小径段部
4c 加締部
5 内輪
6 車輪取付フランジ
6a ハブボルト
6b 車輪取付フランジのインナー側の基部
7 保持器
8 アウター側のシール
9、22、24、26、28、28’、28” カバー
9a、13a、22a、24a 嵌合部
9b 重合部
9c 円筒部
9d、26a、28a 底部
10 芯金
11 シール部材
11a サイドリップ
11b ダストリップ
11c グリースリップ
12 パルサリング
13 支持環
13b 立板部
14 磁気エンコーダ
15、27、29、30 挿入孔
15a、27a、29a、31 装着部
16 センサユニット
16a 挿入部
17 Oリング
18 通孔
19 袋ナット
20 取付フランジ部
20a ボルト孔
21 固定ボルト
25 弾性部材
27b 鍔部
31a、31b 装着部の根元部
51 外方部材
51a 外側転走面
51b 車体取付フランジ
52 内方部材
53 ボール
54 車輪取付フランジ
55 ハブ輪
55a、56a 内側転走面
55b 小径段部
56 内輪
57 保持器
58 加締部
59 シール
60 磁気エンコーダ
61 支持環
62 エンコーダ本体
63 カバー
64 主部
65 フランジ部
66 突き当て部
67 嵌合部
68 底板部
69 突部
69a 挿入部
69b 取付フランジ
70 膨出部
71 挿入孔
72 短円筒部
73 センサユニット
74 挿入部
75 係止溝
76 Oリング
77 凹部
78 段付凹部
79 大径部
80 小径部
81 ナット
82 取付フランジ部
83 通孔
84 芯金
85 ボルト
d1 装着部の内径
d2 挿入部の外径
L 装着部の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記内輪に外嵌され、円周方向に特性を交互に、かつ等間隔に変化させたパルサリングと、
前記外方部材に嵌着されたカバーに装着されて前記パルサリングに所定のエアギャップを介して対峙する棒状のセンサユニットとを備え、
前記カバーが鋼鈑からプレス加工にて形成され、前記外方部材の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する重合部と、この重合部から軸方向に延びる円筒部と、前記外方部材の開口部を閉塞する底部とを備えている回転速度検出装置付き車輪用軸受装置において、
前記カバーの底部の径方向外方部で、前記パルサリングと対向する部分に、軸方向に貫通する挿入孔が形成され、この挿入孔に縁曲げされてアウター側に突出する装着部が形成され、この装着部と、この装着部に嵌挿される前記センサユニットとの間に弾性部材が介装されると共に、前記挿入孔の近傍に軸方向に貫通する通孔が穿設され、この通孔の内側に袋ナットが固定され、この袋ナットに固定ボルトが螺着されて前記センサユニットが取付フランジ部を介して固定されていることを特徴とする回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記弾性部材がOリングである請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記装着部が円筒状に形成されている請求項1に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記装着部の端部に内側に折曲される鍔部が形成され、この鍔部に前記弾性部材が保持されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記装着部が傾斜した内周面に形成され、この内周面に前記弾性部材が保持されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記装着部の根元部が円弧状の段付き形状に形成され、この根元部に前記弾性部材が弾性接触されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記装着部の根元部が円筒状の段付き形状に形成され、この根元部に前記弾性部材が弾性接触されている請求項1または2に記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記装着部の案内すきまが1.0mm以下に規制され、かつ、装着部の案内部の幅寸法が1.0mm以上に設定されている請求項1、3、5および6いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項9】
前記カバーの嵌合部の端部が薄肉に形成され、この端部に弾性部材が加硫接着により端部に回り込んだ状態で一体に接合され、前記外方部材の端部内周に弾性嵌合されている請求項1乃至8いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項10】
前記カバーの嵌合部の板厚は他の部位よりも厚く形成されている請求項1乃至9いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項11】
前記カバーの嵌合部の端部に径方向外方に突出する環状凸部が形成されると共に、前記外方部材の端部内周に環状溝が形成され、この環状溝に前記環状凸部が係合されている請求項1乃至8いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項12】
前記カバーがオーステナイト系ステンレス鋼鈑で形成されている請求項1乃至11いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。
【請求項13】
前記カバーが冷間圧延鋼板にカチオン電着塗装により防錆皮膜が形成されている請求項1乃至11いずれかに記載の回転速度検出装置付き車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32329(P2012−32329A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173723(P2010−173723)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】