説明

回転運動または周回運動を検出する運動検出装置

【課題】被検出体の回転数等の計数を行う無電源の運動検出装置において、被検出体の回転数等の検出の正確性を損なうことなく、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化を図る。
【解決手段】回転運動する可動部13の外周部にスタンバイ磁石15、17およびアウトプット磁石16を周方向に間隔Daをもって設け、可動部13の周囲に磁気センサ1、2、3を間隔Daよりも大きい間隔Dbをもって設ける。回転軸150の回転に伴い可動部13が回転する間、スタンバイ磁石15、17が磁気センサ1、2、3のうちのいずれかの磁気センサの近傍を通過すると、当該磁気センサがスタンバイ状態となり、スタンバイ状態となった磁気センサの近傍をアウトプット磁石16が通過すると、当該磁気センサの磁性素子21において大バルクハウゼン効果が生じ、コイル22から検出信号が出力される。この検出信号に基づいて回転軸150の回転数を計数する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して物体の回転運動または周回運動を検出する運動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の動きに応じて磁界を変化させ、これにより生じる起電力を利用して物体の動きに応じた電気信号を生成する装置は知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子にコイルを巻回した磁界検出部と、磁極の配置が互いに反対である2種類の磁石を交互に数個配列した配列体とを設け、上記磁界検出部を固定すると共に、上記配列体が上記磁界検出部の近傍を往復運動する構成とすることにより、上記磁性素子の磁化の方向を変化させ、これにより生じる起電力を利用してパルス信号を発生させる装置が記載されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子にコイルを巻回した磁界検出部を回転軸の近傍に動かないように配置し、上記回転軸には、磁極の配置が互いに反対である2種類の磁石を取り付け、上記回転軸の回転に伴って上記各磁石を回転させることにより、上記磁性素子の磁化の方向を変化させ、これにより生じる起電力を利用してパルス信号を発生させる装置が記載されている。
【0005】
また、下記の特許文献3には、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子にコイルを巻回した磁界検出部を備え、当該磁界検出部から出力されるパルス電圧により生成される電力を利用して処理回路を動作させる装置が記載されている。
【0006】
また、下記の特許文献4には、回転自在に支持された回転体に円周方向に設けられ、N極およびS極を有する1組の硬磁性体と、これら硬磁性体に対向し、当該硬磁性体によって互いに磁気的に90度の位相差を有するパルス電圧を発生する4個の発電型磁界検出部と、所定数の他の磁界検出部と、上記発電型磁界検出部から発生されるパルス電圧によって駆動され、パルス電圧数を回転方向に基づいて加減算計数して回転領域に応じた計数値を生成して記憶する計数手段と、上記計数値に基づく回転領域と上記他の磁界検出部から出力される磁気的周期とに基づいて絶対回転角を検出する回転角検出部とを備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−195964号公報
【特許文献2】特開2001−194182号公報
【特許文献3】特開2009−15683号公報
【特許文献4】特開2009−162730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1ないし4に記載された装置はいずれも、物体の動きに応じた磁界の変化により生じる起電力を利用して電気信号を生成することができるので、当該電気信号の生成や当該電気信号を用いた処理を行うために電源からの電力の供給を必要としない。そこで、上述した装置は、器機の電源がオフになっている間に、器機の可動部分の動きを検出する無電源の検出装置として利用することができる。
【0009】
例えば、ファクトリー・オートメーションが導入された工場に設けられた産業用ロボットの電源が切られた後に当該ロボットの可動部分が何らかの外力により動かされたとき、その可動部分の動きを無電源の検出装置により検出し、当該動きを示す検出データをメモリに記憶しておき、その後、当該ロボットの電源が投入されたときに、メモリに記憶された上記検出データを用いて、何らかの外力により動いてしまった当該ロボットの可動部分の位置を当該ロボットに自動的に認識させるといった処理を実現することができる。
【0010】
ここで、上述したようなロボット等の器機における可動部分の回転運動を検出する無電源の運動検出装置について検討するに、当該運動検出装置には、電源から電力を供給することなく、上記可動部分の回転方向を考慮した回転数の計数(例えば右方向に1回転した場合に+1回転とし、左方向に1回転した場合に−1回転とするなど)を行う機能を基本的機能として設ける必要がある。
【0011】
さらに、上記運動検出装置には、上記可動部分の回転方向を考慮した回転数の検出の正確性を損なうことなく、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることが望まれる。
【0012】
具体的に述べると、上記可動部分の回転方向を考慮した回転数の検出の正確性については、上記可動部分が回転運動を行う間に、上記可動部分が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す運動をしばしば行う場合でも、上記可動部分の回転状態を見失わずに、上記可動部分の回転方向を考慮した回転数を正確に検出することが望まれる。
【0013】
一方、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化については、磁界検出部の個数を、上記可動部分の回転方向を確実に検出することができる最少の個数、すなわち、3個に減らすことができるような構成を実現することが望まれる。なお、磁界検出部の個数を最少3個に減らすことができる構成とは、3個の磁界検出部を備えた運動検出装置に適用可能であるほか、4個以上の磁界検出部を備えた運動検出装置にも適用可能である構成という意味を含んでいる。
【0014】
上記可動部分が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す運動を行う場合でも、上記可動部分の回転方向を考慮した正確な回転数を最少3個の磁界検出部により検出することができる運動検出装置は、上記特許文献1ないし4のいずれにも記載されていない。また、このような運動検出装置を上記特許文献1ないし4またはその他の周知技術に基づいて実現することは容易でない。
【0015】
さらに、上記可動部分の回転運動を検出する無電源の運動検出装置には、上記可動部分の回転方向を考慮した回転数の計数に必要な電力(磁界検出部から出力される信号から生成される電力)の消費を削減する構成を実現することが望まれる。この点についても、上記特許文献1ないし4には記載も示唆もなく、その実現は容易でない。
【0016】
なお、産業用ロボットやベルトコンベア等の器機における可動部分の周回運動を検出する無電源の運動検出装置についても、上述した回転運動を検出する無電源の運動検出装置と同様のことが望まれる。
【0017】
本発明は例えば上述した問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、電源から電力を供給することなく、例えば器機の可動部分等の被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数を行うことができる運動検出装置であって、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の検出の正確性を損なうことなく、小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる運動検出装置を提供することにある。
【0018】
また、本発明の第2の課題は、電源から電力を供給することなく、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数を行うことができる運動検出装置であって、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数に必要な電力の消費を削減することができる運動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第1の運動検出装置は、被検出体の回転運動または周回運動を検出する運動検出装置であって、被検出体の回転運動または周回運動に応じて回転運動または周回運動する可動部と、磁界の方向が第1の方向である第1の磁界を発生させる第1の磁界発生部と、磁界の方向が前記第1の方向とは逆の第2の方向である第2の磁界を発生させる第2の磁界発生部と、前記第1の磁界発生部が接近したときに前記第1の磁界により前記第1の方向に磁化され、前記第2の磁界発生部が接近したときに前記第2の磁界により前記第2の方向に磁化され、磁化の方向が前記第1の方向と前記第2の方向との間で変化するときに生じる起電力により生成される検出信号を出力する少なくとも3つの磁界検出部と、前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動または周回運動の状態を検出する運動検出回路とを備え、前記第1の磁界発生部および前記第2の磁界発生部は前記可動部の外周部に周方向に所定の間隔をもって配置され、前記少なくとも3つの磁界検出部は、前記可動部の外周部の近傍であって、前記可動部が回転運動または周回運動したときの前記可動部の外周部の軌跡に沿うように前記所定の間隔よりも大きい間隔をもって配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の運動検出装置によれば、第1の磁界発生部と第2の磁界発生部との配置間隔が磁界検出部の配置間隔よりも小さいので、被検出体が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す運動を行う場合でも、被検出体の回転方向を考慮した正確な回転数を最少3個の磁界検出部により検出することができる。したがって、被検出体の回転方向を考慮した回転数の検出の正確性を損なうことなく、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる。
【0021】
これについて具体的に説明する。説明の便宜上、(a)可動部の外周部に第1の磁界発生部と第2の磁界発生部とが右回り(時計回り)にこの順序で所定の間隔をもって配置され、(b)可動部の外周部の近傍であって、可動部が回転運動したときの可動部の外周部の軌跡に沿うように3つの磁界検出部A、B、Cが右回りにこの順序で上記所定の間隔よりも大きい間隔をもって配置され、(c)可動部が右方向に回転し、(d)初期状態では、各磁界検出部A、B、Cの磁化の方向が第1の方向であり、(e)各磁界検出部A、B、Cは、磁化の方向が第1の方向から第2の方向に変化するときに検出信号を出力する運動検出装置を想定する。
【0022】
このような運動検出装置において、被検出体の回転運動に伴って可動部が初期状態から右方向に1回転する間の動作を観察すると、例えばまず、第2の磁界発生部が磁界検出部Aの近傍を通過し、磁界検出部Aの磁化の方向が第1の方向から第2の方向に変化し、磁界検出部Aから検出信号が出力される。続いて、第1の磁界発生部が磁界検出部Aの近傍を通過し、磁界検出部Aの磁化の方向が第2の方向から第1の方向に戻る。その後、第2の磁界発生部が磁界検出部Bの近傍を通過し、磁界検出部Bの磁化の方向が第1の方向から第2の方向に変化し、磁界検出部Bから検出信号が出力される。続いて、第1の磁界発生部が磁界検出部Bの近傍を通過し、磁界検出部Bの磁化の方向が第2の方向から第1の方向に戻る。その後、第2の磁界発生部が磁界検出部Cの近傍を通過し、磁界検出部Cの磁化の方向が第1の方向から第2の方向に変化し、磁界検出部Cから検出信号が出力される。続いて、第1の磁界発生部が磁界検出部Cの近傍を通過し、磁界検出部Cの磁化の方向が第2の方向から第1の方向に戻る。
【0023】
この動作において着目すべき点は、可動部の回転により第2の磁界発生部が、3つの磁界検出部A、B、Cのうちの1の磁界検出部の近傍位置から移動を開始し、当該1の磁界検出部の隣に配置された他の磁界検出部の近傍位置に到達したとき、当該1の磁界検出部の磁化の方向が常に第1の方向に戻っている点である。これにより、3つの磁界検出部A、B、Cのうちの2つの磁界検出部(一般化するとk個の磁界検出部のうち(k―1)個の磁界検出部)の磁化の方向は常に第1の方向になっており、将来、第2の磁界発生部が接近したときに検出信号を出力することができる状態に設定されている。この結果、被検出体が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す運動を行う場合でも、第2の磁界発生部が、互いの隣り合う2つの磁界検出部間を移動しさえすれば、少なくともこれら2つの磁界検出部のうちのいずれか一方の磁界検出部から検出信号が出力される。したがって、被検出体の回転状態を常時正確に把握することができる。
【0024】
また、同様の理由により、上記本発明の第1の運動検出装置によれば、第1の磁界発生部と第2の磁界発生部との配置間隔が磁界検出部の配置間隔よりも小さいので、可動部が1周せずに周回移動方向の反転を繰り返す運動を行う場合でも、可動部の周回移動方向を考慮した正確な周回数を最少3個の磁界検出部により検出することができる。したがって、被検出体の周回移動方向を考慮した周回数の検出の正確性を損なうことなく、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の第2の運動検出装置は、被検出体の回転運動または周回運動を検出する運動検出装置であって、被検出体の回転運動または周回運動に応じて回転運動または周回運動する可動部と、磁界の方向が第1の方向である第1の磁界を発生させる第1の磁界発生部と、磁界の方向が前記第1の方向とは逆の第2の方向である第2の磁界を発生させる第2の磁界発生部と、前記第1の磁界発生部が接近したときに前記第1の磁界により前記第1の方向に磁化され、前記第2の磁界発生部が接近したときに前記第2の磁界により前記第2の方向に磁化され、磁化の方向が前記第1の方向と前記第2の方向との間で変化するときに生じる起電力により生成される検出信号を出力する少なくとも3つの磁界検出部と、前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動または周回運動の状態を検出する運動検出回路とを備え、前記第1の磁界発生部および前記第2の磁界発生部は、前記可動部の外周部の近傍であって、前記可動部が回転運動または周回運動したときの前記可動部の外周部の軌跡に沿うように所定の間隔をもって配置され、前記少なくとも3つの磁界検出部は、前記可動部の外周部に周方向に前記所定の間隔よりも大きい間隔をもって配置されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第2の運動検出装置によっても、本発明の第1の運動検出装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の第3の運動検出装置は、上述した本発明の第1または第2の運動検出装置において、前記各磁界検出部は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを備えていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第3の運動検出装置によれば、各磁界検出部から出力される検出信号をパルス信号とすることができる。したがって、運動検出回路による検出処理の容易化または高精度化を図ることができる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の第4の運動検出装置は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの運動検出装置において、前記各磁界検出部から出力される検出信号から電源電圧を生成する電源電圧生成回路を備え、前記運動検出回路は前記電源電圧生成回路により生成された電源電圧により動作することを特徴とする。
【0030】
本発明の第4の運動検出装置によれば、無電源の運動検出装置を実現することができる。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明の第5の運動検出装置は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの運動検出装置において、前記運動検出回路は、前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動の状態を検出する回路であり、前記運動検出回路は、前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定し、前記被検出体が1回転するごとに、前記被検出体が1回転したことを示す回転判定信号を出力する回転判定回路と、前記回転判定回路から出力される回転判定信号に基づいて前記被検出体の回転数を計数する計数回路とを備えていることを特徴とする。
【0032】
本発明の第5の運動検出装置において、運動検出回路を、回転判定回路と計数回路とに分け、計数回路を、回転判定回路から出力される回転判定信号に基づいて被検出体の回転数を計数する構成とすることにより、計数回路が動作する時期を、回転判定回路から回転判定信号が出力されたとき、すなわち被検出体が1回転したときに限定することができる。これにより、計数回路が動作する期間を減らすことができ、電力の消費を削減することができる。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の第6の運動検出装置は、上述した本発明の第5の運動検出装置において、前記少なくとも3つの磁界検出部のうちの1つの磁界検出部が基準磁界検出部であり、残りの各磁界検出部が非基準磁界検出部であり、前記回転判定回路は、前記基準磁界検出部から検出信号が出力されるたびに、前回前記基準磁界検出部から検出信号が出力された直後にいずれかの前記非基準磁界検出部から出力された検出信号と、今回前記基準磁界検出部から検出信号が出力される直前にいずれかの前記非基準磁界検出部から出力された検出信号とがそれぞれ所定の検出信号であるか否かを判断し、当該判断結果に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定することを特徴とする。
【0034】
本発明の第6の運動検出装置における回転判定回路によれば、2通りの検出信号の記憶と、当該2通りの検出信号がそれぞれ所定の検出信号であるか否かの判断処理を行うことで、被検出体が1回転したか否かを判定することができる。したがって、回転判定回路における処理数および情報の記憶量を少なくすることができ、電力の消費を削減することができる。
【0035】
上記課題を解決するために、本発明の第7の運動検出装置は、上述した本発明の第5の運動検出装置において、前記回転判定回路は、前記各磁界検出部から検出信号が出力されるたびに、今回出力された検出信号と前回出力された検出信号とを比較し、当該比較結果に基づいて前記被検出体の回転量を検出し、前記被検出体の回転量に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定することを特徴とする。
【0036】
本発明の第7の運動検出装置における回転判定回路によれば、被検出体が1回転したか否かの判定に用いる情報として、1つの検出信号と回転量とを記憶すればよい。したがって、各磁界検出部から出力される検出信号のそれぞれを記憶して保持しておき、これら検出信号に基づいて被検出体が1回転したか否かを判定する他の回転判定回路と比較し、情報の記憶量を少なくすることができ、電力の消費を削減することができる。なお、可動部が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す場合を考慮に入れると、上記他の回転判定回路においては、被検出体が1回転したか否かの判定に用いる情報として、磁界検出部の個数を超える個数の情報を記憶して同時に保持しておく必要がある。
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の第8の運動検出装置は、上述した本発明の第5ないし第7のいずれかの運動検出装置において、前記計数回路は、前記回転判定回路から出力された回転判定信号に基づいて前記被検出体の回転数を計数し、前記被検出体の回転数を示す計数値をグレイコードにて出力する計数処理部と、前記計数処理部からグレイコードにて出力された計数値を記憶する計数値記憶部とを備えていることを特徴とする。
【0038】
本発明の第8の運動検出装置によれば、計数値をグレイコードで記憶することにより、記憶処理数を減らすことができ、電力の消費を削減することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、電源から電力を供給することなく、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数を行うことができる運動検出装置において、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の検出の正確性を損なうことなく、運動検出装置の小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる。
【0040】
また、本発明によれば、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数を行うことができる運動検出装置において、被検出体の回転方向を考慮した回転数または周回移動方向を考慮した周回数の計数に必要な電力の消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態による回転検出装置を示す正面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向から見た本発明の第1の実施形態による回転検出装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による回転検出装置の内部に設けられた各スタンバイ磁石、アウトプット磁石および各磁気センサの配置関係を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による回転検出装置における回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による回転検出装置において第1のアルゴリズムに従った回路ユニットの動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による回転検出装置において第1のアルゴリズムに従った回路ユニットの処理内容、処理前後の値等を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による回転検出装置における回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態による回転検出装置において第2のアルゴリズムに従った回路ユニットの動作を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による回転検出装置において第2のアルゴリズムに従った回路ユニットの処理内容、処理前後の値等を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による回転検出装置における回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による回転検出装置において第3のアルゴリズムに従った回路ユニットの動作を示す説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による回転検出装置において第3のアルゴリズムに従った回路ユニットの処理内容、処理前後の値等を示す説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態による回転検出装置における回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施形態による回転検出装置において第4のアルゴリズムに従った回路ユニットの動作を示す説明図である。
【図15】本発明の第4の実施形態による回転検出装置において第4のアルゴリズムに従った回路ユニットの処理内容、処理前後の値等を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図17】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【図18】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図19】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
(第1の実施形態:回転検出装置の構成)
まず、本発明の第1の実施形態について図1ないし図6を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態である回転検出装置を示し、図2は図1中の矢示II−II方向から見た当該回転検出装置の断面を示している。図1において、本発明の運動検出装置の第1の実施形態である回転検出装置100は、被検出体の回転運動、具体的には、回転方向を考慮した回転数を検出する装置である。回転検出装置100は、様々な被検出体の回転運動を検出することができる。本実施形態では、産業用ロボットの可動部分に設けられたサーボモータの回転軸150を被検出体の一例としてあげる。
【0044】
回転検出装置100は、例えば樹脂等により有蓋円筒状に形成されたケーシング11を備えている。ケーシング11には、回転軸150を回転可能に挿通させる挿通孔12が形成されている。ケーシング11は、例えば、図示しない取付部材を介して産業用ロボットに取り付けられ、固定されている。
【0045】
ケーシング11内には可動部13が設けられている。可動部13は例えば樹脂等により円柱状に形成されている。可動部13の中心軸に当たる部分には装着孔14が形成され、可動部13は装着孔14に回転軸150を貫通させることにより、回転軸150に装着されている。また、可動部13は回転軸150に固定されており、回転軸150と共に回転する。
【0046】
可動部13の外周部には3つの磁石15、16、17が設けられている。磁石15、16、17のうち、右側および左側に配置されている磁石15、17はそれぞれ、磁界の方向が第1の方向である第1の磁界を発生させる第1の磁界発生部である。磁石15、17は、後述するように磁気センサ1、2、3をスタンバイ状態にする磁石である。以下、上記第1の磁界を「スタンバイ磁界」といい、磁石15、17をそれぞれ「スタンバイ磁石」という。スタンバイ磁石15、17はそれぞれ、図1において手前側がS極となり、奥側がN極となるように可動部13の内部に固定されている。
【0047】
スタンバイ磁石15とスタンバイ磁石17との間に配置されている磁石16は、磁界の方向が第1の方向とは逆である第2の方向である第2の磁界を発生させる第2の磁界発生部である。磁石16は、後述するように磁気センサ1、2、3をアウトプット状態にする磁石である。以下、上記第2の磁界を「アウトプット磁界」といい、磁石16を「アウトプット磁石」という。アウトプット磁石16は、図1において手前側がN極となり、奥側がS極となるように可動部13の内部に固定されている。
【0048】
また、ケーシング11内において可動部13の周囲であって、可動部13の外周部近傍の領域には、3つの磁気センサ1、2、3が設けられている。各磁気センサ1、2、3は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子21と、磁性素子21に巻回されたコイル22とを備えている。
【0049】
各磁気センサ1、2、3の磁性素子21には複合磁気ワイヤが用いられている。一般に、複合磁気ワイヤは、細いワイヤ状の強磁性体である。複合磁気ワイヤは、その外周部は比較的小さな外部磁界の付与によって磁化の方向が変化するのに対し、中心部は比較的大きな外部磁界を付与しなければ磁化の方向が変化しないといった独特な磁気特性を有する一軸異方性の複合磁性体である。複合磁気ワイヤの長手方向と平行な一の方向に、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向を反転させるのに十分な比較的大きな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが同じ方向に揃う。その後、複合磁気ワイヤの長手方向と平行であり、上記一の方向とは逆である他の方向に、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向だけを反転させることができる程度の比較的小さな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向は変化せず、外周部の磁化の方向だけが反転する。この結果、複合磁気ワイヤは、その中心部と外周部とで磁化の方向が異なる状態となり、この状態は外部磁界を取り除いても維持される。
【0050】
このように中心部と外周部とで磁化の方向が異なる状態となった複合磁気ワイヤに、上記一の方向に外部磁界をかける。このとき、外部磁界の強さを始めは小さくし、その後、外部磁界の強さを徐々に増加させると、外部磁界の強さがある強度を超えたときに、大バルクハウゼン効果が生じ、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向が急激に反転する。
【0051】
なお、各磁気センサ1、2、3の磁性素子21は複合磁気ワイヤに限らず、同様の挙動を示す他の種々な磁性素子を用いることができる。例えば、特開平4−218905号公報に開示されているような薄膜状の磁性体を磁性素子として用いることもできる。
【0052】
各磁気センサ1、2、3の磁性素子21(複合磁気ワイヤ)の外周部は、可動部13が回転することによりスタンバイ磁石15またはスタンバイ磁石17が接近したときにスタンバイ磁界により第1の方向(磁性素子21の中心部の磁化の方向と反対の方向)に磁化される。これにより、磁性素子21は、中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが異なる状態となる。ここで、各磁気センサ1、2、3において、磁性素子21の中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが異なっている状態を「スタンバイ状態」という。
【0053】
一方、各磁気センサ1、2、3の磁性素子21の外周部は、アウトプット磁石16が接近したときにアウトプット磁界により第2の方向(磁性素子21の中心部の磁化の方向と同じ方向)に磁化される。これにより、磁性素子21は、中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが同一の状態となる。ここで、各磁気センサ1、2、3において、磁性素子21の中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが同一の状態を「アウトプット状態」という。
【0054】
そして、各磁気センサ1、2、3がスタンバイ状態からアウトプット状態に変化するときに各磁気センサ1、2、3から検出信号が出力される。すなわち、磁性素子21の外周部の磁化の方向が上記第1の方向から上記第2の方向に変化するときに大バルクハウゼン効果が起こり、このときに生じる起電力により、コイル22からパルス状の検出信号が出力される。
【0055】
また、各磁気センサ1、2、3は、図2に示すように、磁性素子21の一端部が基板23に支持され、他端部がケーシング11の壁部に支持されることによりケーシング11内に固定されている。また、各磁気センサ1、2、3は、磁性素子21の長手方向が、スタンバイ磁石15、17が生成するスタンバイ磁界の方向およびアウトプット磁石16が生成するアウトプット磁界の方向に対して平行となるように配置されている。
【0056】
さらに、ケーシング11内には、基板23が設けられている。基板23は例えばケーシング11の壁部に固定されている。また、基板23は円板状に形成され、その中心部には回転軸150を回転可能に貫通させる孔部24が形成されている。基板23上には、後述する回路ユニット25およびコネクタ26が設けられている。また、各磁気センサ1、2、3のコイル22は、基板23上の回路ユニット25に電気的に接続されている。また、コネクタ26にケーブル27を接続することにより、後述の回路ユニット25中の計数値記憶部38に記憶された計数値を外部に出力することができる。
【0057】
(磁石・磁気センサの配置関係)
図3は回転検出装置100の内部に設けられたスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17と磁気センサ1、2、3との配置関係を示している。図3に示すように、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16およびスタンバイ磁石17は、可動部13の外周部に周方向において所定の間隔Daをもって配置されている。すなわち、スタンバイ磁石15とアウトプット磁石16との間およびアウトプット磁石16とスタンバイ磁石17との間はそれぞれ間隔Daである。一方、各磁気センサ1、2、3は、可動部13の外周部の近傍であって、可動部13が点Pを中心として回転したときの可動部13の外周部の軌跡に沿うように所定の間隔Dbをもって配置されている。すなわち、磁気センサ1と磁気センサ2との間、磁気センサ2と磁気センサ3との間、および磁気センサ3と磁気センサ1との間はそれぞれ間隔Dbである。そして、間隔Daは間隔Dbよりも小さい。例えば、間隔Dbが120度である場合には、間隔Daは、10度ないし110度程度である。なお、図3に示す例では、間隔Daは30度である。
【0058】
また、磁気センサ1、2、3は、可動部13の外側を取り囲むように可動部13の全周に亘って周方向に等間隔に配置することが望ましい。磁気センサ1、2、3をこのように配置することにより、後述の回転判定回路31による回転判定処理を容易にまたは高精度に行うことが可能になる。しかしながら、磁気センサ1、2、3を周方向に等間隔に配置しなくてもよい。磁気センサ1、2、3を周方向に等間隔に配置しなくても、回転判定回路31による回転判定処理を行うことは可能である。もっとも、磁気センサ1、2、3を周方向に等間隔に配置しない場合には、間隔Daを、磁気センサ1、2、3のそれぞれの間隔のうちの最小の間隔よりも小さくなるように設定する。また、磁気センサ1、2、3を可動部13の全周に亘って配置しなくてもよく、例えば可動部13を全周に亘って取り囲む領域のうちの半分の領域内に配置してもよい。
【0059】
また、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17は等間隔に配置することが望ましく、等間隔に配置することにより、回転判定回路31による回転判定処理を容易にまたは高精度に行うことが可能になる。しかしながら、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17は等間隔に配置しなくてもよい。また、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17の間隔Daは、各磁気センサ1、2、3の磁性素子21における磁気特性のヒステリシスを考慮に入れて決定することが望ましい。
【0060】
(可動部、磁石、磁気センサの動作)
以上のような構成を有する回転検出装置100において、可動部13、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17および磁気センサ1、2、3は次のように動作する。
【0061】
例えば、図3に示す状態が初期状態であるとすると、この初期状態においては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向し、磁気センサ1に接近した位置にあるため、磁気センサ1は、アウトプット磁石16によりアウトプット磁界が付与され、アウトプット状態となっている。
【0062】
この状態において、例えば電源が入っていない産業用ロボットの可動部分に外力が加わり、当該産業用ロボットに設けられたサーボモータの回転軸150が上記外力により右方向に回転し始めたとすると、これに伴って回転検出装置100の可動部13も右方向に回転し始める。そして、可動部13が初期状態から右方向に30度程度回転すると、スタンバイ磁石15が磁気センサ1に接近する。この結果、磁気センサ1は、スタンバイ磁石15によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態となる。
【0063】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に90度程度回転すると、スタンバイ磁石17が磁気センサ2に接近する。この結果、磁気センサ2は、スタンバイ磁石17によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態となる。
【0064】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に120度程度回転すると、アウトプット磁石16が磁気センサ2に接近する。この結果、磁気センサ2は、アウトプット磁石16によりアウトプット磁界が付与され、アウトプット状態となる。このとき、磁気センサ2から検出信号が出力される。
【0065】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に150度程度回転すると、スタンバイ磁石15が磁気センサ2に接近する。この結果、磁気センサ2は、スタンバイ磁石15によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態に戻る。
【0066】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に210度程度回転すると、スタンバイ磁石17が磁気センサ3に接近する。この結果、磁気センサ3は、スタンバイ磁石17によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態となる。
【0067】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に240度程度回転すると、アウトプット磁石16が磁気センサ3に接近する。この結果、磁気センサ3は、アウトプット磁石16によりアウトプット磁界が付与され、アウトプット状態となる。このとき、磁気センサ3から検出信号が出力される。
【0068】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に270度程度回転すると、スタンバイ磁石15が磁気センサ3に接近する。この結果、磁気センサ3は、スタンバイ磁石15によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態に戻る。
【0069】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に330度程度回転すると、スタンバイ磁石17が磁気センサ1に接近する。この結果、磁気センサ1は、スタンバイ磁石17によりスタンバイ磁界が付与される。このとき、磁気センサ1は既にスタンバイ状態であるので、スタンバイ状態が維持される。
【0070】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に360度程度回転すると、アウトプット磁石16が磁気センサ1に接近する。この結果、磁気センサ1は、アウトプット磁石16によりアウトプット磁界が付与され、アウトプット状態となる。このとき、磁気センサ1から検出信号が出力される。
【0071】
可動部13の右方向の回転が継続し、可動部13が初期状態から右方向に390度程度回転すると、スタンバイ磁石15が磁気センサ1に接近する。この結果、磁気センサ1は、スタンバイ磁石15によりスタンバイ磁界が付与され、スタンバイ状態に戻る。
【0072】
回転軸150が左方向に回転し、これに伴って可動部13が左方向に回転した場合も、可動部13、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17および磁気センサ1、2、3は、回転軸150が右方向に回転した場合とほぼ同様に動作する。
【0073】
ここで、回転検出装置100のこのような動作において着目すべき点は、例えば可動部13の右方向の回転に伴ってアウトプット磁石16が磁気センサ1から離れ、その隣に配置された磁気センサ2に接近する前に、スタンバイ磁石15が磁気センサ1に接近することである。これにより、磁気センサ2がアウトプット状態になる前に、磁気センサ1が必ずスタンバイ状態になる。同様に、可動部13が右方向の回転を継続し、アウトプット磁石16が磁気センサ2から離れ、その隣に配置された磁気センサ3に接近する前に、スタンバイ磁石15が磁気センサ2に接近する。これにより、磁気センサ3がアウトプット状態になる前に、磁気センサ2が必ずスタンバイ状態になる。この結果、3つの磁気センサ1、2、3のうちの2つの磁気センサは常にスタンバイ状態となっている。可動部13が左方向に回転した場合も、同様に、3つの磁気センサ1、2、3のうちの2つの磁気センサは常にスタンバイ状態となっている。
【0074】
したがって、可動部13が右方向にいかに回転しようが、左方向にいかに回転しようが、3つの磁気センサ1、2、3のうち2つの磁気センサは、常に、将来、アウトプット磁石16が接近したときに検出信号を出力することができる状態にあるので、可動部13が1回転せずに回転方向の反転を繰り返す運動を行ったとしても、アウトプット磁石16が、3つの磁気センサ1、2、3のうち互いの隣り合う2つの磁気センサ間を移動しさえすれば、少なくともこれらのうちのいずれか一方の磁気センサから検出信号が出力される。したがって、回転軸150の回転状態を常時正確に把握することができる。
【0075】
よって、回転検出装置100によれば、3つの磁気センサ1、2、3により、回転軸150の回転方向を考慮した回転数の検出を正確に行うことができる。すなわち、回転軸150の回転方向を考慮した回転数の検出の正確性を損なうことなく、磁気センサの個数を3つまで減らし、回転検出装置100の小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる。
【0076】
(回路ユニットの構成と動作)
図4は、回転検出装置100における回路ユニット25の構成を示している。図4に示す回路ユニット25は、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に基づいて回転軸150の回転状態、具体的には回転軸150の回転方向を考慮した回転数を検出する回路ユニットであり、上述したように、基板23上に設けられている(図1参照)。
【0077】
回路ユニット25は、次に説明する第1のアルゴリズムに従って回転軸150の回転数を計数する。すなわち、第1のアルゴリズムにおいては、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから出力された検出信号に対応する信号値を、原則として、現在から過去に遡って連続4回分記憶する。ただし、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから検出信号が出力されたときに、この今回出力された検出信号に対応する信号値と前回記憶した信号値とが同一である場合には、今回出力された検出信号に対応する信号値は記憶しない(第1の例外)。また、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから検出信号が出力されたときに、この今回出力された検出信号に対応する信号値と前回記憶した信号値とから構成される配列と同一の配列が既に記憶されている場合には、今回出力された検出信号に対応する信号値は記憶しない(第2の例外)。このようにして記憶された4回分の信号値は、回転軸150の回転の軌跡を表す。そこで、磁気センサ1、2、3のうち基準となる磁気センサ、例えば磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、当該4回分の信号値の内容を認識し、当該認識結果から、回転軸150が1回転したか否か、および回転軸150が1回転した方向が右方向か左方向かを判定する。そして、判定の結果、回転軸150が右方向に1回転した場合には、回転軸150の回転数を示す計数値を1増加させ、回転軸150が左方向に1回転した場合には、当該計数値を1減少させる。
【0078】
このような第1のアルゴリズムを実施する回路ユニット25は、図4に示すように、回転判定回路31および計数回路32を備えている。
【0079】
回転判定回路31は、回転軸150が1回転したか否かを判定する処理、すなわち回転判定処理を行う回路であり、判定処理部33および検出信号記憶部34を備えている。
【0080】
判定処理部33は、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に基づいて回転軸150が1回転したか否かを判定し、回転軸150が1回転するごとに、回転軸150が1回転したことを示す回転判定信号を出力する演算処理回路である。判定処理部33には、各磁気センサ1、2、3のコイル22が例えば別々の入力端子を介してそれぞれ接続されている。これにより、判定処理部33は、各磁気センサ1、2、3から出力された検出信号を受け取ったとき、当該検出信号が磁気センサ1、2、3のうちのいずれの磁気センサから出力されたものであるかを認識することができる。また、判定処理部33は、検出信号記憶部43を制御し、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号にそれぞれ対応する信号値の記憶、読み取り、消去を行うことができる。また、判定処理部33は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値、および検出信号記憶部34から読み取った信号値をそれぞれ認識し、当該認識結果により回転軸150が右方向に1回転したか否か、左方向に1回転したか否かを判定し、回転軸150が右方向に1回転したときと、回転軸150が左方向に1回転したときで互いに異なる回転判定信号を出力する。
【0081】
検出信号記憶部34は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値を記憶する記憶回路である。検出信号記憶部34は少なくとも4つの信号値を同時に記憶することができる記憶容量を有している。
【0082】
計数回路32は、回転軸150の回転数を計数する回路であり、計数処理部36および計数値記憶部38を備えている。
【0083】
計数処理部36は、回転判定回路31の判定処理部33から出力された回転判定信号に基づいて回転軸150の回転数を計数し、回転軸150の回転数を示す計数値を出力する回路である。すなわち、計数処理部36は、回転判定回路31の判定処理部33から回転判定信号を受け取り、当該回転判定信号から、回転軸150が右方向に1回転したか、左方向に1回転したかを認識する。また、計数処理部36は、計数値記憶部38から計数値を読み取る。そして、計数処理部36は、回転軸150が右方向に1回転した場合には当該読み取った計数値を1増加させ、回転軸150が左方向に1回転した場合には当該読み取った計数値を1減少させ、1増加または1減少させた計数値を計数値記憶部38に記憶させる。また、計数処理部36は、計数値記憶部38から計数値を読み出し、当該計数値を外部に出力することができる。
【0084】
計数値記憶部38は、計数処理部36から出力された計数値を記憶する記憶回路である。
【0085】
ここで、計数処理部36は、回転軸150の回転数を示す計数値をグレイコードにて出力する。そして、計数値記憶部38は、計数処理部36からグレイコードにて出力された計数値、すなわち計数値のグレイコードを記憶する。このように、計数値をグレイコードで記憶させることによって、計数値を記憶させる際に変化させるビット数を減らすことができ、これにより記憶に係る処理数を減らすことができる。したがって、電力の消費を削減することができる。
【0086】
さらに、回路ユニット25は電源電圧生成回路39を備えている。電源電圧生成回路39は、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号から電源電圧を生成する回路であり、例えば整流回路および平滑回路を備えている。回転判定回路31および計数回路32は、電源電圧生成回路39により生成された電源電圧により動作する。
【0087】
図5および図6は、第1のアルゴリズムに従った回路ユニット25の具体的な動作を示している。説明の便宜上、磁気センサ1から出力される検出信号に対応する信号値を「1」とし、磁気センサ2から出力される検出信号に対応する信号値を「2」とし、磁気センサ3から出力される検出信号に対応する信号値を「3」とする。また、上記4回分の信号値は、2進数で表現した場合に8ビットからなる1つのビット列として取り扱われるものとする。すなわち、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから今回出力された検出信号に対応する今回の信号値には、8ビットのビット列のうちの第0ビット(LSB)および第1ビットが割り当てられ、1回前の信号値には第2ビットおよび第3ビットが割り当てられ、2回前の信号値には第4ビットおよび第5ビットが割り当てられ、3回前の信号値には第6ビットおよび第7ビット(MSB)が割り当てられるものとする。以下、上記4回分の信号値として取り扱われる8ビットのビット列を「信号値配列」という。
【0088】
また、図6に示す表において、最も左側の第1列はステップ番号を示している。回路ユニット25は、磁気センサ1、2、3のいずれかから検出信号が出力されるたびに回転判定処理等を実行する。磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから1つの検出信号が出力されたとき、これに応じて回路ユニット25が実行する一連の処理を1ステップとする。また、図6中の第2列は検出信号に対応する信号値を示し、第3列は判定処理部33による処理前の信号値配列を示し、第4列は判定処理部33による処理内容を示し、第5列は判定処理部33による処理後の信号値配列を示し、第6列は判定処理部33による判定結果を示し、最も右側の第7列は計数処理部36による処理後の計数値を示している。
【0089】
図6中のステップS1は初期状態である。初期状態においては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある(図5参照)。そして、検出信号記憶部34には信号値配列の初期値として「1000」が記憶されている。
【0090】
ステップS2において、回転軸150の右方向の回転に伴って可動部13が初期状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「1000」を読み取り、当該読み取った信号値配列を2ビット右シフトし、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する信号値「2」(2進数では「10」)を信号値配列の第1ビットおよび第2ビットに入れる。これにより信号値配列は「2100」(2進数では「10010000」)となる。続いて、判定処理部33は当該信号値配列を検出信号記憶部34に記憶(上書き)する。
【0091】
ステップS3において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS2の状態から右方向に120度回転し、磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「2100」を読み取り、当該読み取った信号値配列を2ビット右シフトし、磁気センサ3から今回出力された検出信号に対応する信号値「3」(2進数では「11」)を信号値配列の第1ビットおよび第2ビットに入れる。これにより信号値配列は「3210」(2進数では「11100100」)となる。続いて、判定処理部33は当該信号値配列を検出信号記憶部34に記憶する。
【0092】
ステップS4において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS3の状態から右方向に120度回転し、磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「3210」を読み取り、当該読み取った信号値配列に基づいて、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する。すなわち、判定処理部33は、磁気センサ1、2、3のうち基準となる磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する処理を行う。この判定処理において、判定処理部33は、信号値配列が「3210」または「0321」の場合に、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、信号値配列が「2310」または「0231」の場合に、回転軸150が左方向に1回転したと判定し、信号値配列がこれら以外の場合には、回転軸150は1回転していないと判定する。図6中のステップS4において信号値配列は「3210」であるので、判定処理部33は、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、その旨を示す回転判定信号を出力する。そして、判定処理部33は、読み取った信号値配列「3210」を消去して、信号値配列「1000」を検出信号記憶部34に記憶する。また、判定処理部33から当該回転判定信号が出力されると、これに応じて計数処理部36が計数値記憶部38から計数値を読み取り、当該読み取った計数値を1増加させ、当該1増加させた計数値を計数値記憶部38に記憶(上書き)する。
【0093】
ステップS5において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS4の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、ステップS2と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列は「2100」となる。
【0094】
ステップS6において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS5の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、ステップS3と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列は「3210」となる。
【0095】
ステップS7において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に反転し、これに伴って可動部13がステップS6の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「3210」を読み取り、当該読み取った信号値配列を2ビット右シフトし、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する信号値「2」を信号値配列の第1ビットおよび第2ビットに入れる。これにより信号値配列は「2321」となる。続いて、判定処理部33は当該信号値配列を検出信号記憶部34に記憶する。
【0096】
ステップS8において、回転軸150の回転方向が左方向から右方向に戻り、これに伴って可動部13がステップS7の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「2321」を読み取る。続いて、判定処理部33は、信号値配列の第1ビットおよび第2ビットに「0」を入れる。これにより信号値配列は「0231」となる。続いて、判定処理部33は当該信号値配列を検出信号記憶部34に記憶する。この処理は、上記第1のアルゴリズムの第2の例外を実現するための処理である。すなわち、上記第1のアルゴリズムによれば、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから検出信号が出力されたときに、この今回出力された検出信号に対応する信号値と前回記憶した信号値とから構成される配列と同一の配列が既に記憶されている場合には、今回出力された検出信号に対応する信号値は記憶しない(第2の例外)。ステップS8において、磁気センサ3から出力された検出信号に対応する信号値は「3」であり、前回記憶した信号値は「2」であり、両者により構成される配列は「32」である。そして、ステップS8において判定処理部33が検出信号記憶部34から読み取った信号値配列は「2321」であり、これには「32」が含まれている。したがって、ステップS8において判定処理部33は、磁気センサ3から出力された検出信号に対応する信号値「3」を記憶しない。
【0097】
ステップS9において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に再び反転し、これに伴って可動部13がステップS8の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「0321」を読み取り、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する信号値「2」を信号値配列の第1ビットおよび第2ビットに入れる。これにより信号値配列は「2321」となる。続いて、判定処理部33は当該信号値配列を検出信号記憶部34に記憶する。このように、検出信号記憶部34から読み取った信号値配列の第1ビットおよび第2ビットがそれぞれ「0」である場合、判定処理部33は、信号値配列を右シフトする処理は行わない。
【0098】
ステップS10において、回転軸150の左方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS9の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部33は、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「2321」を読み取り、当該読み取った信号値配列に基づいて、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する。ステップS10において信号値配列は「2321」であるので、判定処理部33は、回転軸150は1回転していないと判定する。この場合、判定処理部33は回転判定信号を出力しない。したがって、計数処理部36は動作しない。そして、判定処理部33は、読み取った信号値配列「2321」を消去して、信号値配列「1000」を検出信号記憶部34に記憶する。
【0099】
また、回転軸150が、ステップS10の状態(アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある状態)から、右方向に30度ないし110度程度の回転と左方向に30度ないし110度程度の回転とを繰り返した場合には、アウトプット磁石16が磁気センサ1への接近、離間を連続的に繰り返すので、ステップS11、S12に示すように、磁気センサ1から検出信号が連続的に出力される。この場合、判定処理部33は、この状態を認識するために、磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、検出信号記憶部34に記憶された信号値配列「1000」を読み取るが、信号値配列を右シフトする処理も、信号値配列に新たな値を入れる処理も、信号値配列を検出信号記憶部34に記憶する処理も行わない。
【0100】
さらに、回転軸150の右方向または左方向の回転に伴う可動部13の右方向または左方向の回転に応じ、判定処理部33はステップS13以降の処理を行う。
【0101】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態における回路ユニット25によれば、回転判定回路31と計数回路32とを分離し、計数回路32を、回転判定回路31から出力される回転判定信号に基づいて回転軸150の回転数を計数する構成とすることにより、計数回路32が動作する時期を、回転判定回路32から回転判定信号が出力されたとき、すなわち回転軸150が1回転したときに限定することができる。これにより、計数回路32が動作する期間を減らすことができ、電力の消費を削減することができる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図7ないし図9を参照しながら説明する。なお、図7ないし図9において、図1ないし図6に示す本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
図7は、本発明の第2の実施形態による回転検出装置に設けられた回路ユニットを示している。図7において、回路ユニット41は、回路ユニット25と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に基づいて回転軸150の回転方向を考慮した回転数を検出する回路ユニットであり、回路ユニット25に代えて基板23上に設けることができる。
【0104】
回路ユニット41は、次に説明する第2のアルゴリズムに従って回転軸150の回転数を計数する。すなわち、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから前回出力された検出信号に対応する信号値を「前回信号値」といい、磁気センサ1、2、3のうちのいずれかから今回出力された検出信号に対応する信号値を「今回信号値」というとすると、第2のアルゴリズムにおいては、前回信号値と今回信号値と比較することにより、回転軸150の回転方向を考慮した回転量(1回転に満たない回転軸150の右回転方向または左回転方向の移動量)を認識する。そして、この回転量の累計値から、回転軸150が1回転したか否か、および回転軸150が1回転した方向が右方向か左方向かを判定する。そして、判定の結果、回転軸150が右方向に1回転した場合には、回転軸150の回転数を示す計数値を1増加させ、回転軸150が左方向に1回転した場合には、当該計数値を1減少させる。第2のアルゴリズムを実現するために記憶する必要のある情報は、1回分の信号値(前回信号値)と回転軸150の回転量である。
【0105】
このような第2のアルゴリズムを実施する回路ユニット41の回転判定回路42は、図7に示すように、判定処理部43、検出信号記憶部44および回転量記憶部45を備えている。
【0106】
判定処理部43は、上述した第2のアルゴリズムに従って回転判定処理を行う演算処理回路であり、第1の実施形態における判定処理部33とほぼ同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号を受け取り、受け取った検出信号が磁気センサ1、2、3のうちのいずれから出力されたかを認識する。また、判定処理部43は、前回信号値と今回信号値とを比較することにより回転軸150の回転方向および回転量を認識する。また、判定処理部43は、検出信号記憶部44を制御して信号値の記憶、読み取り、消去を行い、回転量記憶部45を制御して回転量の記憶、読み取り、消去を行う。また、判定処理部43は、今回信号値、前回信号値、および回転量記憶部45から読み取った回転量をそれぞれ認識し、当該認識結果により回転軸150が右方向に1回転したか否か、左方向に1回転したか否かを判定し、回転軸150が右方向に1回転したときと、回転軸150が左方向に1回転したときで互いに異なる回転判定信号を出力する。
【0107】
検出信号記憶部44は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値を記憶する記憶回路である。検出信号記憶部44は少なくとも1つの信号値を記憶することができる記憶容量を有している。
【0108】
回転量記憶部45は、判定処理部43により認識された回転軸150の回転量を記憶する記憶回路である。回転量記憶部45は少なくとも1つの回転量を記憶することができる記憶容量を有している。
【0109】
図8および図9は、第2のアルゴリズムに従った回路ユニット41の具体的な動作を示している。説明の便宜上、上述した第1の実施形態と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に対応する信号値をそれぞれ「1」、「2」、「3」とする。
【0110】
また、図9に示す表において、最も左側の第1列は、図6と同様にステップ番号を示している。また、図9中の第2列は検出信号に対応する信号値を示し、第3列は判定処理部43による処理前の信号値を示し、第4列は判定処理部43による信号値についての処理内容を示し、第5列は判定処理部43による処理後の信号値を示している。また、図9中の第6列は判定処理部43による処理前の回転量を示し、第7列は判定処理部43による回転量についての処理内容を示し、第8列は判定処理部43による処理後の回転量を示している。また、図9中の第9列は判定処理部43による判定結果を示し、最も右側の第10列は計数処理部36による処理後の計数値を示している。
【0111】
図9中のステップS21は初期状態である。初期状態においては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある(図8参照)。そして、検出信号記憶部44には前回信号値の初期値として「1」が記憶され、回転量記憶部45には回転量の初期値として「0」が記憶されている。
【0112】
ステップS22において、回転軸150の右方向の回転に伴って可動部13が初期状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「1」を読み取り、当該前回信号値「1」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「2」とを比較し、回転軸150の回転量を認識する。ここで、判定処理部43は、前回信号値と今回信号値とを比較し、前回信号値と今回信号値とがそれぞれ「1」、「2」である場合、「2」、「3」である場合、または「3」、「1」である場合には、回転軸150が右方向に120度回転したと認識し、一方、前回信号値と今回信号値とが「1」、「3」である場合、「3」、「2」である場合、または「2」、「1」である場合には、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。ステップS22においては、前回信号値と今回信号値がそれぞれ「1」、「2」であるので、判定処理部43は、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS22において、判定処理部43は今回信号値「2」を検出信号記憶部44に記憶(上書き)する。さらに、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量「0」を読み取り、当該読み取った回転量「0」を1増加させ、当該増加させた回転量「1」を回転量記憶部45に記憶(上書き)する。
【0113】
ステップS23において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS22の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「2」を読み取り、当該前回信号値「2」と、磁気センサ3から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「3」とを比較し、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS23において、判定処理部43は今回信号値「3」を検出信号記憶部44に記憶する。さらに、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量「1」を読み取り、当該読み取った回転量「1」を1増加させ、当該増加させた回転量「2」を回転量記憶部45に記憶する。
【0114】
ステップS24において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS23の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「3」を読み取り、当該前回信号値「3」と、磁気センサ1から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」とを比較し、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS24において、判定処理部43は今回信号値「1」を検出信号記憶部44に記憶する。さらに、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量「2」を読み取り、当該読み取った回転量「2」を1増加させる。この結果、当該回転量は「3」となる。
【0115】
ここで、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップでは、回転軸150が1回転したか否かの判定を行う。すなわち、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップにおいて1増加した後の回転量が「3」となったとき、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、回転軸150が右方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。また、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップにおいて1減少した後の回転量が「−3」となったとき、回転軸150が左方向に1回転したと判定し、回転軸150が左方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。また、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップにおいて、1増加した後の回転量が「3」とはならない場合、または1減少した後の回転量が「−3」とはならない場合には、回転軸150が1回転していないと判定し、回転判定信号を出力しない。磁気センサ1から検出信号が出力されたステップS24において1増加した後の回転量は「3」なので、判定処理部43は、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、回転軸150が右方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。そして、判定処理部43は回転量を消去する。すなわち、判定処理部43は、回転量「0」を回転量記憶部45に記憶する。また、判定処理部43から当該回転判定信号が出力されると、これに応じて計数処理部36が計数値記憶部38から計数値を読み取り、当該読み取った計数値を1増加させ、当該1増加させた計数値を計数値記憶部38に記憶(上書き)する。
【0116】
ステップS25において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS24の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、ステップS22と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部44に記憶された信号値は「2」となり、回転量記憶部45に記憶された回転量は「1」となる。
【0117】
ステップS26において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS25の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、ステップS23と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部44に記憶された信号値は「3」となり、回転量記憶部45に記憶された回転量は「2」となる。
【0118】
ステップS27において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に変化し、これに伴って可動部13がステップS26の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「3」を読み取り、当該前回信号値「3」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「2」とを比較し、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS27において、判定処理部43は今回信号値「2」を検出信号記憶部44に記憶する。さらに、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量「2」を読み取り、当該読み取った回転量「2」を1減少させ、当該減少させた回転量「1」を回転量記憶部45に記憶する。
【0119】
ステップS28において、回転軸150の回転方向が左方向から右方向に戻り、これに伴って可動部13がステップS27の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、ステップS23と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部44に記憶された信号値は「3」となり、回転量記憶部45に記憶された回転量は「2」となる。
【0120】
ステップS29において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に再び変化し、これに伴って可動部13がステップS28の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、ステップS27と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部44に記憶された信号値は「2」となり、回転量記憶部45に記憶された回転量は「1」となる。
【0121】
ステップS30において、回転軸150の左方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS29の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部43は、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「2」を読み取り、当該前回信号値「2」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」とを比較し、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS30において、判定処理部43は今回信号値「1」を検出信号記憶部44に記憶する。さらに、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量「1」を読み取り、当該読み取った回転量「1」を1減少させる。この結果、回転量は「0」となる。そして、判定処理部43は、回転量記憶部45に記憶された回転量を消去する。この結果、回転量記憶部45に記憶された回転量は「0」となる。また、上述したように、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップでは、回転軸150が1回転したか否かの判定を行う。磁気センサ1から検出信号が出力されたステップS30において1減少した後の回転量は「0」なので、判定処理部43は、回転軸150が1回転していないと判定し、回転判定信号を出力しない。
【0122】
また、回転軸150が、例えばステップS30の状態(アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある状態)から、右方向に30度ないし110度程度の回転と左方向に30度ないし110度程度の回転とを繰り返した場合には、アウトプット磁石16が磁気センサ1への接近、離間を連続的に繰り返すので、ステップS31、S32に示すように、磁気センサ1から検出信号が連続的に出力される。この場合、判定処理部43は、磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、検出信号記憶部44に記憶された前回信号値「1」を読み取り、当該前回信号値「1」を、磁気センサ1から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」と比較する。そして、判定処理部43は、当該比較結果から、回転軸150の回転量が120度に達していないことを認識する。この場合、判定処理部43は、今回信号値を検出信号記憶部44に記憶する処理も、回転量記憶部45からの回転量の読み取る処理も、回転量を増加または減少させる処理も、回転量を回転量記憶部45に記憶する処理も行わない。
【0123】
さらに、回転軸150の右方向または左方向の回転に伴う可動部13の右方向または左方向の回転に応じ、判定処理部43はステップS33以降の処理を行う。
【0124】
以上説明した通り、第2の実施形態による回路ユニット41によれば、第1の実施形態による回路ユニット25と同様に、回転判定回路42と計数回路32とを分離し、回転判定回路42から回転判定信号が出力されたときに限り計数回路32を動作させることにより、電力の消費を削減することができる。さらに、第2の実施形態による回路ユニット41によれば、検出信号記憶部44の記憶容量と回転量記憶部45の記憶容量とを合わせた記憶容量を、第1の実施形態による回路ユニット25における検出信号記憶部34の記憶容量よりも小さくすることができる。すなわち、第1の実施形態による回路ユニット25における検出信号記憶部34は、少なくとも4回分の信号値を記憶することができる記憶容量、例えば8ビットの記憶容量が必要である。これに対し、第2の実施形態による回路ユニット41においては、検出信号記憶部44は、少なくとも1つの信号値を記憶することができる記憶容量、例えば2ビットの記憶容量で足り、回転量記憶部45は、少なくとも1つの回転量を記憶することができる記憶容量、例えば3ビットの記憶容量で足り、両者合わせて5ビットの記憶容量で足りる。この点でも、電力の消費を削減することができる。
【0125】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図10ないし図12を参照しながら説明する。なお、図10ないし図12において、図1ないし図6に示す本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0126】
図10は、本発明の第3の実施形態による回転検出装置に設けられた回路ユニットを示している。図10において、回路ユニット51は、回路ユニット25と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に基づいて回転軸150の回転方向を考慮した回転数を検出する回路ユニットであり、回路ユニット25に代えて基板23上に設けることができる。
【0127】
回路ユニット51は、次に説明する第3のアルゴリズムに従って回転軸150の回転数を計数する。第3のアルゴリズムにおいては、上述した第2の実施形態における第2のアルゴリズムと同様に、前回信号値と今回信号値と比較することにより、回転軸150の回転方向を考慮した回転量を認識する。そして、この回転量に基づいて、回転軸150が1回転したか否か、および回転軸150が1回転した方向が右方向か左方向かを判定する。そして、判定の結果、回転軸150が右方向に1回転した場合には、回転軸150の回転数を示す計数値を1増加させ、回転軸150が左方向に1回転した場合には、当該計数値を1減少させる。
【0128】
第3のアルゴリズムが第2のアルゴリズムと異なる点は、回転軸150の回転量の記憶方法である。すなわち、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から回転軸150が右方向に1回転する場合、まず磁気センサ2から検出信号が出力され、次に磁気センサ3から検出信号が出力され、次に磁気センサ1から検出信号が出力されるが、上述した第2のアルゴリズムにおいては、このように磁気センサ2、3、1から検出信号が出力されるたびに、回転軸150の回転量を回転量記憶部45から読み取る処理、当該回転量を1増加させる処理、および1増加させた当該回転量を回転量記憶部45に記憶する処理を行う。さらに、磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、1増加させた後の回転量から回転軸150が1回転したか否かを判定する処理を行う。また、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から回転軸150が左方向に1回転する場合、まず磁気センサ3から検出信号が出力され、次に磁気センサ2から検出信号が出力され、次に磁気センサ1から検出信号が出力されるが、上述した第2のアルゴリズムにおいては、このように磁気センサ3、2、1から検出信号が出力されるたびに、回転軸150の回転量を回転量記憶部45から読み取る処理、当該回転量を1減少させる処理、および1減少させた当該回転量を回転量記憶部45に記憶する処理を行う。さらに、磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、1減少させた後の回転量から回転軸150が1回転したか否かを判定する処理を行う。
【0129】
これに対し、第3のアルゴリズムにおいては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から回転軸150が右方向に1回転する場合、まず磁気センサ2から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「m」を後述の回転量代替値記憶部55に記憶する処理のみを行う。次に磁気センサ3から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「m」を回転量代替値記憶部55から読み取る処理、当該回転量代替値「m」を1増加させる処理、および1増加させた当該回転量代替値「m+1」を回転量代替値記憶部55に記憶する処理を行う。次に磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「m+1」を回転量代替値記憶部55から読み取る処理、および回転量代替値「m+1」から回転軸150が1回転したか否かを判定する処理を行う。また、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から回転軸150が左方向に1回転する場合、まず磁気センサ3から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「n」を回転量代替値記憶部55に記憶する処理のみを行う。次に磁気センサ2から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「n」を回転量代替値記憶部55から読み取る処理、当該回転量代替値「n」を1減少させる処理、および1減少させた当該回転量代替値「n−1」を回転量代替値記憶部55に記憶する処理を行う。次に磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、回転量代替値「n−1」を回転量代替値記憶部55から読み取る処理、および回転量代替値「n−1」から回転軸150が1回転したか否かを判定する処理を行う。
【0130】
また、第3のアルゴリズムにおいて、回転軸150が右方向に1回転をする間の回転量代替値「m」、「m+1」のいずれもが、回転軸150が左方向に1回転をする間の回転量代替値「n」、「n−1」のいずれとも異なる値となるようにする。この条件を充足すれば、回転量代替値はいかなる数値でもよい。もっとも、回転量代替値記憶部55の記憶容量を小さくするために、回転量代替値は小さい数値であることが望ましい。なお、第3のアルゴリズムを実現するために記憶する必要のある情報は、1回分の信号値(前回信号値)と回転量代替値である。
【0131】
第3のアルゴリズムによれば、第2のアルゴリズムよりも回転判定に係る処理数を減らすことができる。すなわち、第3のアルゴリズムにおいて行われる回転量代替値を回転量代替値記憶部55から読み取る処理、回転量代替値を1増加または1減少させる処理、並びに1増加または1減少させた回転量代替値を回転量代替値記憶部55に記憶する処理の総数は、第2のアルゴリズムにおいて行われる回転量を回転量記憶部45から読み取る処理、回転量を1増加または1減少させる処理、並びに1増加または1減少させた回転量を回転量記憶部45に記憶する処理の総数よりも少ない。したがって、電力の消費の削減をより一層図ることができる。
【0132】
このような第3のアルゴリズムを実施する回路ユニット51の回転判定回路52は、図10に示すように、判定処理部53、検出信号記憶部54および回転量代替値記憶部55を備えている。
【0133】
判定処理部53は、上述した第3のアルゴリズムに従って回転判定処理を行う演算処理回路であり、回転量代替値を取り扱う点などいくつか異なる点があるものの、第2の実施形態における判定処理部43とほぼ同様な構成を有している。
【0134】
検出信号記憶部54は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値を記憶する記憶回路である。検出信号記憶部54は少なくとも1つの信号値を記憶することができる記憶容量を有している。
【0135】
回転量代替値記憶部55は回転量代替値を記憶する記憶回路である。回転量代替値記憶部55は少なくとも1つの回転量代替値を記憶することができる記憶容量を有している。
【0136】
図11および図12は、第3のアルゴリズムに従った回路ユニット51の具体的な動作を示している。説明の便宜上、上述した第1の実施形態と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に対応する信号値をそれぞれ「1」、「2」、「3」とする。
【0137】
また、図12に示す表において、最も左側の第1列は、図6と同様にステップ番号を示している。また、図12中の第2列は検出信号に対応する信号値を示し、第3列は判定処理部53による処理前の信号値を示し、第4列は判定処理部53による信号値についての処理内容を示し、第5列は判定処理部53による処理後の信号値を示している。また、図12中の第6列は判定処理部53による処理前の回転量代替値を示し、第7列は判定処理部53による回転量代替値についての処理内容を示し、第8列は判定処理部53による処理後の回転量代替値を示している。また、図12中の第9列は判定処理部53による判定結果を示し、最も右側の第10列は計数処理部36による処理後の計数値を示している。
【0138】
図12中のステップS41は初期状態である。初期状態においては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある(図11参照)。そして、検出信号記憶部54には前回信号値の初期値として「1」が記憶され、回転量代替値記憶部55には初期値として「0」が記憶されている。
【0139】
ステップS42において、回転軸150の右方向の回転に伴って可動部13が初期状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「1」を読み取り、当該前回信号値「1」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「2」とを比較し、回転軸150の回転量を認識する。ここで、判定処理部53は、前回信号値と今回信号値とを比較し、前回信号値と今回信号値とがそれぞれ「1」、「2」である場合、「2」、「3」である場合、または「3」、「1」である場合には、回転軸150が右方向に120度回転したと認識し、一方、前回信号値と今回信号値とが「1」、「3」である場合、「3」、「2」である場合、または「2」、「1」である場合には、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。ステップS42においては、前回信号値と今回信号値がそれぞれ「1」、「2」であるので、判定処理部53は、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS42において、判定処理部53は今回信号値「2」を検出信号記憶部54に記憶(上書き)する。さらに、判定処理部53は、回転量代替値として「2」を回転量代替値記憶部55に記憶(上書き)する。
【0140】
ステップS43において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS42の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「2」を読み取り、当該前回信号値「2」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「3」とを比較し、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS43において、判定処理部53は今回信号値「3」を検出信号記憶部54に記憶する。さらに、判定処理部53は、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値「2」を読み取り、当該読み取った回転量代替値「2」を1増加させ、当該増加させた回転量代替値「3」を回転量代替値記憶部55に記憶する。
【0141】
ステップS44において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS43の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「3」を読み取り、当該前回信号値「3」と、磁気センサ1から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」とを比較し、回転軸150が右方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS44において、判定処理部53は今回信号値「1」を検出信号記憶部54に記憶する。さらに、判定処理部53は、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値「3」を読み取る。しかし、判定処理部53は、ステップS44においては、回転量代替値を変更する処理も、回転量代替値を回転量代替値記憶部55に記憶する処理も行わない。
【0142】
ここで、判定処理部53は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップでは、回転軸150が1回転したか否かの判定を行う。すなわち、判定処理部53は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップにおいて、回転軸150の回転方向が右方向であり、かつ回転量代替値記憶部55から読み取った回転量代替値が「3」であるとき、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、回転軸150が右方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。また、判定処理部53は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップにおいて、回転軸150の回転方向が左方向であり、回転量代替値記憶部55から読み取った回転量代替値が「0」であるとき、回転軸150が左方向に1回転したと判定し、回転軸150が左方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。磁気センサ1から検出信号が出力されたステップS44においては、回転軸150の回転方向が右方向であり、かつ回転量代替値記憶部55から読み取った回転量代替値は「3」なので、判定処理部53は、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、回転軸150が右方向に1回転したことを示す回転判定信号を出力する。判定処理部53から当該回転判定信号が出力されると、これに応じて計数処理部36が計数値記憶部38から計数値を読み取り、当該読み取った計数値を1増加させ、当該1増加させた計数値を計数値記憶部38に記憶(上書き)する。
【0143】
ステップS45において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS44の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、ステップS42と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部54に記憶された信号値は「2」となり、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値は「2」となる。
【0144】
ステップS46において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS45の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、ステップS43と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部54に記憶された信号値は「3」となり、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量は「3」となる。
【0145】
ステップS47において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に変化し、これに伴って可動部13がステップS46の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「3」を読み取り、当該前回信号値「3」と、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「2」とを比較し、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS47において、判定処理部53は今回信号値「2」を検出信号記憶部54に記憶する。さらに、判定処理部53は、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値「3」を読み取り、当該読み取った回転量代替値「3」を1減少させ、当該減少させた回転量代替値「2」を回転量代替値記憶部55に記憶する。
【0146】
ステップS48において、回転軸150の回転方向が左方向から右方向に戻り、これに伴って可動部13がステップS47の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、ステップS43と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部54に記憶された信号値は「3」となり、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値は「3」となる。
【0147】
ステップS49において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に再び変化し、これに伴って可動部13がステップS48の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、ステップS47と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部54に記憶された信号値は「2」となり、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量は「2」となる。
【0148】
ステップS50において、回転軸150の左方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS49の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部53は、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「2」を読み取り、当該前回信号値「2」と、磁気センサ1から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」とを比較し、回転軸150が左方向に120度回転したと認識する。続いて、ステップS50において、判定処理部53は今回信号値「1」を検出信号記憶部54に記憶する。さらに、判定処理部53は、回転量代替値記憶部55に記憶された回転量代替値「2」を読み取る。しかし、判定処理部53は、ステップS50においては、回転量代替値を変更する処理も、回転量代替値を回転量代替値記憶部55に記憶する処理も行わない。また、上述したように、判定処理部53は、磁気センサ1から検出信号が出力されたステップでは、回転軸150が1回転したか否かの判定を行う。磁気センサ1から検出信号が出力されたステップS50において、回転軸150の回転方向が左方向であるが、回転量代替値記憶部55から読み取った回転量代替値は「2」なので、判定処理部53は回転判定信号を出力しない。
【0149】
また、回転軸150が、例えばステップS50の状態(アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある状態)から、右方向に30度ないし110度程度の回転と左方向に30度ないし110度程度の回転とを繰り返した場合には、アウトプット磁石16が磁気センサ1への接近、離間を連続的に繰り返すので、ステップS51、S52に示すように、磁気センサ1から検出信号が連続的に出力される。この場合、判定処理部53は、磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、検出信号記憶部54に記憶された前回信号値「1」を読み取り、磁気センサ1から今回出力された検出信号に対応する今回信号値「1」と比較する。そして、判定処理部53は、当該比較結果から、回転軸150の回転量が120度に達していないことを認識する。この場合、判定処理部53は、今回信号値を検出信号記憶部54に記憶する処理も、回転量代替値記憶部55からの回転量代替値の読み取る処理も、回転量代替値を増加または減少させる処理も、回転量代替値を回転量代替値記憶部55に記憶する処理も行わない。
【0150】
さらに、回転軸150の右方向または左方向の回転に伴う可動部13の右方向または左方向の回転に応じ、判定処理部53はステップS53以降の処理を行う。
【0151】
以上説明した通り、第3の実施形態によれば、第2の実施形態により得られる作用効果に加え、上述したように、第3のアルゴリズムを採用することにより、回転判定に係る処理数を第2のアルゴリズムを採用する場合よりも少なくすることができ、電力の消費の削減をより一層図ることができる。また、第2の実施形態による回路ユニット41では、検出信号記憶部44の記憶容量(2ビット)と回転量記憶部45の記憶容量(3ビット)とを合わせて記憶容量を5ビットまで小さくすることができるが、第3の実施形態による回路ユニット51では、検出信号記憶部54の記憶容量(2ビット)と回転量代替値記憶部55の記憶容量(2ビット)とを合わせて記憶容量を4ビットまで小さくすることができる。この点でも、電力消費を削減を推し進めることができる。
【0152】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について図13ないし図15を参照しながら説明する。なお、図13ないし図15において、図1ないし図6に示す本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0153】
図13は、本発明の第4の実施形態による回転検出装置に設けられた回路ユニットを示している。図13において、回路ユニット61は、回路ユニット25と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に基づいて回転軸150の回転方向を考慮した回転数を検出する回路ユニットであり、回路ユニット25に代えて基板23上に設けることができる。
【0154】
回路ユニット51は、次に説明する第4のアルゴリズムに従って回転軸150の回転数を計数する。第4のアルゴリズムは次のような考え方を基礎にしている。すなわち、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から、回転軸150が右方向に1回転し、これに伴って可動部13が右方向に1回転する場合、アウトプット磁石16は、可動部13の回転が始まった直後に、磁気センサ1の周方向右隣に配置された磁気センサ2の近傍を通過し、可動部13が1回転する直前に、磁気センサ1の周方向左隣に配置された磁気センサ3の近傍を通過する。したがって、回転軸150の回転に伴う可動部13の回転により、アウトプット磁石16が、磁気センサ1と対向する位置から移動を開始した直後に磁気センサ2の近傍を通過した事実と、磁気センサ1と対向する位置に戻る直前に磁気センサ3の近傍を通過した事実とを認識することにより、回転軸150が右方向に1回転したと判定することができる。また、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向する位置にある状態から、回転軸150が左方向に1回転し、これに伴って可動部13が左方向に1回転する場合、アウトプット磁石16は、可動部13の回転が始まった直後に、磁気センサ1の周方向左隣に配置された磁気センサ3の近傍を通過し、可動部13が1回転する直前に、磁気センサ1の周方向右隣に配置された磁気センサ2の近傍を通過する。したがって、回転軸150の回転に伴う可動部13の回転により、アウトプット磁石16が、磁気センサ1と対向する位置から移動を開始した直後に磁気センサ3の近傍を通過した事実と、磁気センサ1と対向する位置に戻る直前に磁気センサ2の近傍を通過した事実とを認識することにより、回転軸150が左方向に1回転したと判定することができる。
【0155】
このような考え方を基礎とした第4のアルゴリズムにおいては、磁気センサ1、2、3のうち、例えば磁気センサ1を基準となる磁気センサとし、磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、前回、磁気センサ1から検出信号が出力された直後に磁気センサ2および磁気センサ3のいずれかから出力された検出信号に対応する信号値と、今回、磁気センサ1から検出信号が出力される直前に磁気センサ2および磁気センサ3のいずれかから出力された検出信号に対応する信号値とがそれぞれ所定の信号値であるか否かを判断し、当該判断結果に基づいて回転軸150が1回転したか否かを判定する。なお、第4のアルゴリズムを実現するために記憶する必要のある情報は、2つの信号値である。
【0156】
このような第4のアルゴリズムを実施する回路ユニット61の回転判定回路62は、図13に示すように、判定処理部63および検出信号記憶部64を備えている。
【0157】
判定処理部63は、上述した第4のアルゴリズムに従って回転判定処理を行う演算処理回路であり、第1の実施形態における判定処理部33とほぼ同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号を受け取り、受け取った検出信号が磁気センサ1、2、3のうちのいずれから出力されたかを認識する。また、判定処理部63は、検出信号記憶部64を制御し、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値の記憶、読み取り、消去を行うことができる。また、判定処理部63は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値、および検出信号記憶部64から読み取った信号値をそれぞれ認識し、当該認識結果により回転軸150が右方向に1回転したか否か、左方向に1回転したか否かを判定し、回転軸150が右方向に1回転したときと、回転軸150が左方向に1回転したときで互いに異なる回転判定信号を出力する。
【0158】
検出信号記憶部64は、磁気センサ1、2、3から出力された検出信号に対応する信号値を記憶する記憶回路である。検出信号記憶部64は少なくとも2つの信号値を同時に記憶することができる記憶容量を有している。
【0159】
図14および図15は、第4のアルゴリズムに従った回路ユニット61の具体的な動作を示している。説明の便宜上、上述した第1の実施形態と同様に、磁気センサ1、2、3から出力される検出信号に対応する信号値をそれぞれ「1」、「2」、「3」とする。また、判定処理部63は検出信号記憶部64に2つの信号値を同時に記憶する。これら2つの信号値は、2進数で表現した場合に4ビットからなる1つのビット列(以下、これを「信号値配列」という。)として取り扱われるものとする。すなわち、上記2つの信号値のうち一方の信号値が信号値配列中の第1の領域(例えば4ビットのビット列のうちの上位2ビット)に割り当てられ、上記2つの信号値のうちの他方の信号値が信号値配列中の第2の領域(例えば4ビットのビット列のうちの下位2ビット)に割り当てられるものとする。
【0160】
また、図15に示す表において、最も左側の第1列は、図6と同様にステップ番号を示し、第2列は検出信号に対応する信号値を示している。第3列は判定処理部63による処理前の信号値配列を示し、第4列は判定処理部63による信号値配列についての処理内容を示し、第5列は判定処理部63による処理後の信号値配列を示している。また、図15中の第6列は判定処理部63による判定結果を示し、最も右側の第7列は計数処理部36による処理後の計数値を示している。
【0161】
図15中のステップS61は初期状態である。初期状態においては、アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある(図14参照)。そして、検出信号記憶部64には信号値配列の初期値として「00」が記憶されている。
【0162】
ステップS62において、回転軸150の右方向の回転に伴って可動部13が初期状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「00」を読み取り、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する信号値「2」(2進数では「10」)を信号値配列中の第1の領域に入れる。これにより信号値配列は「02」(2進数では「0010」)となる。続いて、判定処理部63は当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶(上書き)する。
【0163】
このように、判定処理部63は、可動部13が初期状態から回転を開始した直後においては、磁気センサ2および磁気センサ3のいずれかから出力された検出信号に対応する信号値を信号値配列中の第1の領域に入れ、当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。また、判定処理部63は、後述するように、アウトプット磁石16が磁気センサ1の近傍を通過した直後、すなわち、磁気センサ1から検出信号が出力された直後においても、磁気センサ2および磁気センサ3のいずれかから出力された検出信号に対応する信号値を信号値配列中の第1の領域に入れ、当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。一方、判定処理部63は、後述するように、これら以外の時期においては、磁気センサ2および磁気センサ3のいずれかから出力された検出信号に対応する信号値を信号値配列中の第2の領域に入れ、当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。
【0164】
ステップS63において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS62の状態から右方向に120度回転し、磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「02」を読み取り、磁気センサ3から今回出力された検出信号に対応する信号値「3」(2進数では「11」)を信号値配列中の第2の領域に入れる。これにより信号値配列は「32」(2進数では「1110」)となる。続いて、判定処理部63は当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。
【0165】
ステップS64において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS63の状態から右方向に120度回転し、磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「32」を読み取り、当該信号値配列「32」に基づいて、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する。すなわち、判定処理部63は、磁気センサ1、2、3のうち基準となる磁気センサ1から検出信号が出力されたときには、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する処理を行う。この判定処理において、判定処理部63は、信号値配列が「32」の場合に、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、信号値配列が「23」の場合に、回転軸150が左方向に1回転したと判定する。信号値配列がこれら以外の場合には、判定処理部63は、回転軸150が1回転していないと判定する。ステップS64において信号値配列は「32」であるので、判定処理部63は、回転軸150が右方向に1回転したと判定し、その旨を示す回転判定信号を出力する。そして、判定処理部63は、読み取った信号値配列「32」を消去して、信号値配列「00」を検出信号記憶部64に記憶する。また、判定処理部63から当該回転判定信号が出力されると、これに応じて計数処理部36が計数値記憶部38から計数値を読み取り、当該読み取った計数値を1増加させ、当該1増加させた計数値を計数値記憶部38に記憶(上書き)する。
【0166】
ステップS65において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS64の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、ステップS62と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列は「02」となる。
【0167】
ステップS66において、回転軸150の右方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS65の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、ステップS63と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列は「32」となる。
【0168】
ステップS67において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に反転し、これに伴って可動部13がステップS66の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「32」を読み取り、磁気センサ2から今回出力された検出信号に対応する信号値「2」を信号値配列中の第2の領域に入れる。これにより信号値配列は「22」となる。続いて、判定処理部63は当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。
【0169】
ステップS68において、回転軸150の回転方向が左方向から右方向に戻り、これに伴って可動部13がステップS67の状態から右方向に120度回転し、これにより磁気センサ3から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「22」を読み取り、磁気センサ3から今回出力された検出信号に対応する信号値「3」を信号値配列中の第2領域に入れる。これにより、信号値配列は「32」となる。続いて、判定処理部63は当該信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する。
【0170】
ステップS69において、回転軸150の回転方向が右方向から左方向に再び反転し、これに伴って可動部13がステップS68の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ2から検出信号が出力されたとき、判定処理部63はステップS67と同様の処理を行う。この結果、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列は「22」となる。
【0171】
ステップS70において、回転軸150の左方向の回転が継続し、これに伴って可動部13がステップS69の状態から左方向に120度回転し、これにより磁気センサ1から検出信号が出力されたとき、判定処理部63は、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「22」を読み取り、当該読み取った信号値配列に基づいて、回転軸150が右方向または左方向に1回転したか否かを判定する。ステップS70において信号値配列は「22」であるので、判定処理部63は、回転軸150が1回転してないと判定する。この場合、判定処理部63は回転判定信号を出力しない。したがって、計数処理部36は動作しない。そして、判定処理部63は、読み取った信号値配列「22」を消去して、信号値配列「00」を検出信号記憶部64に記憶する。
【0172】
また、回転軸150が、ステップS70の状態(アウトプット磁石16が磁気センサ1と対向した位置にある状態)から、右方向に30度ないし110度程度の回転と左方向に30度ないし110度程度の回転とを繰り返した場合には、アウトプット磁石16が磁気センサ1への接近、離間を連続的に繰り返すので、ステップS71、S72に示すように、磁気センサ1から検出信号が連続的に出力される。この場合、判定処理部63は、この状態を認識するために、磁気センサ1から検出信号が出力されるたびに、検出信号記憶部64に記憶された信号値配列「00」を読み取るが、信号値配列に新たな値を入れる処理も、信号値配列を検出信号記憶部64に記憶する処理も行わない。
【0173】
さらに、回転軸150の右方向または左方向の回転に伴う可動部13の右方向または左方向の回転に応じ、判定処理部63はステップS73以降の処理を行う。
【0174】
以上説明した通り、本発明の第4の実施形態における回路ユニット61によれば、第1ないし第3の実施形態による回路ユニット25、41、51と同様に、回転判定回路62と計数回路32とを分離し、回転判定回路62から回転判定信号が出力されたときに限り計数回路32を動作させることにより、電力の消費を削減することができる。さらに、第4の実施形態による回路ユニット61によれば、検出信号記憶部64の記憶容量を4ビットにまで小さくすることができ、かつ、判定処理部62の回転判定に係る処理数を少なくすることができる。したがって、電力消費の削減をより一層図ることができる。
【0175】
(他の実施形態)
上述した各実施形態による回転検出装置では、図3に示すように、可動部13の外周部に周方向に3つの磁石、すなわち、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17を設ける場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。図16に示すように、円柱状の磁性体を2分し、一方の磁性体によりスタンバイ磁石71を形成し、他方の磁性体によりアウトプット磁石72を形成してもよい。
【0176】
また、上述した各実施形態による回転検出装置では、図3に示すように、可動部13にスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17を設け、可動部13の周囲に磁気センサ1、2、3を設け、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17が回転軸150の回転に伴って移動し、磁気センサ1、2、3が移動しない場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。図17に示すように、可動部73に磁気センサ1、2、3を設け、可動部73の周囲にスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17を設け、磁気センサ1、2、3が回転軸150の回転に伴って移動し、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17が移動しない構成としてもよい。
【0177】
また、上述した各実施形態による回転検出装置では、図2および図3に示すように、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17のそれぞれを棒状の磁石とし、これら磁石の長手方向と、磁気センサ1、2、3の磁性素子21の長手方向とが互いに平行となるようにスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17および磁気センサ1、2、3を配置する構成としたが、本発明はこれに限らない。図18に示す回転検出装置110のように、スタンバイ磁石、アウトプット磁石、スタンバイ磁石のそれぞれを1組の磁石111、112により構成し、当該1組の磁石111、112のうちの一方の磁石111を磁性素子21の一端側に配置し、他方の磁石112を磁性素子21の他端側に配置し、一方の磁石111と他方の磁石112とで互いに異なる磁極が互いに向かい合うように磁石111、112のそれぞれの向きを設定する構成としてもよい。
【0178】
また、上述した各実施形態による回転検出装置では、図2および図3に示すように、棒状のスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17の長手方向、および磁気センサ1、2、3の磁性素子21の長手方向が回転軸150の軸方向と平行になるように、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17、磁気センサ1、2、3を配置したが、本発明はこれに限らない。図19に示す回転検出装置120のように、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17の長手方向、および磁気センサ1、2、3の磁性素子21の長手方向が回転軸150の軸方向に対して垂直となるように、スタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17、磁気センサ1、2、3を配置してもよい。
【0179】
また、上述した各実施形態では、3つの磁気センサ1、2、3を設ける場合を例にあげたが、磁気センサの個数は3つに限らず、4つ以上でもよい。磁気センサの個数を増やせば記憶部の記憶容量や回転判定に係る処理数が増加するが、検出精度、確度および信頼性を向上させることができる。
【0180】
また、上述した各実施形態では、本発明の運動検出装置として回転検出装置を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明は、図20に示すような、被検出体の周回運動の状態、例えば被検出体の周回移動方向を考慮した周回数を検出する周回運動検出装置200にも適用することができる。周回運動検出装置200は、回転検出装置100の磁気センサ1、2、3と同様の磁気センサ201、202、203、204と、回転検出装置100のスタンバイ磁石15、アウトプット磁石16、スタンバイ磁石17と同様のスタンバイ磁石205、アウトプット磁石206、スタンバイ磁石207とを備えている。また、周回運動検出装置200の被検出物は、例えば閉ループを形成するベルトコンベアのベルト211である。スタンバイ磁石205、アウトプット磁石206、スタンバイ磁石207は、このベルト211に取り付けられ、ベルト211が周回運動をすると、これに伴って移動する。一方、磁気センサ201、202、203、204はベルト211の周囲に動かないように配置されている。また、スタンバイ磁石205、アウトプット磁石206、スタンバイ磁石207はそれぞれ間隔Dcをもって配置されており、間隔Dcは、磁気センサ201、202、203、204のそれぞれの間隔Dd、De、Df、Dgのうちの最小の間隔Dfよりも小さい。このような周回運動検出装置200によれば、ベルト211の周回移動方向を考慮した周回数の検出の正確性を損なうことなく、周回運動検出装置200の小型化、軽量化、低コスト化を図ることできる。なお、ベルト211は四角形の軌道上を周回運動するが、周回運動の軌道の形状は四角形に限らず、三角形、楕円、トラック型等でもよい。
【0181】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運動検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0182】
1、2、3、201、202、203、204 磁気センサ(磁界検出部)
13、73 可動部
15、17、71、205、207 スタンバイ磁石(磁界発生部)
16、72、111、112、206 アウトプット磁石(磁界発生部)
21 磁性素子
22 コイル
25、41、51、61 回路ユニット(運動検出回路)
31、42、52、62 回転判定回路
32 計数回路
33、43、53、63 判定処理部
34、44、54、64 検出信号記憶部
36 計数処理部
38 計数値記憶部
39 電源電圧生成回路
45 回転量記憶部
55 回転量代替値記憶部
100、110、120 回転検出装置(運動検出装置)
150 回転軸(被検出体)
200 周回運動検出装置(運動検出装置)
211 ベルト(被検出体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の回転運動または周回運動を検出する運動検出装置であって、
被検出体の回転運動または周回運動に応じて回転運動または周回運動する可動部と、
磁界の方向が第1の方向である第1の磁界を発生させる第1の磁界発生部と、
磁界の方向が前記第1の方向とは逆の第2の方向である第2の磁界を発生させる第2の磁界発生部と、
前記第1の磁界発生部が接近したときに前記第1の磁界により前記第1の方向に磁化され、前記第2の磁界発生部が接近したときに前記第2の磁界により前記第2の方向に磁化され、磁化の方向が前記第1の方向と前記第2の方向との間で変化するときに生じる起電力により生成される検出信号を出力する少なくとも3つの磁界検出部と、
前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動または周回運動の状態を検出する運動検出回路とを備え、
前記第1の磁界発生部および前記第2の磁界発生部は前記可動部の外周部に周方向に所定の間隔をもって配置され、
前記少なくとも3つの磁界検出部は、前記可動部の外周部の近傍であって、前記可動部が回転運動または周回運動したときの前記可動部の外周部の軌跡に沿うように前記所定の間隔よりも大きい間隔をもって配置されていることを特徴とする運動検出装置。
【請求項2】
被検出体の回転運動または周回運動を検出する運動検出装置であって、
被検出体の回転運動または周回運動に応じて回転運動または周回運動する可動部と、
磁界の方向が第1の方向である第1の磁界を発生させる第1の磁界発生部と、
磁界の方向が前記第1の方向とは逆の第2の方向である第2の磁界を発生させる第2の磁界発生部と、
前記第1の磁界発生部が接近したときに前記第1の磁界により前記第1の方向に磁化され、前記第2の磁界発生部が接近したときに前記第2の磁界により前記第2の方向に磁化され、磁化の方向が前記第1の方向と前記第2の方向との間で変化するときに生じる起電力により生成される検出信号を出力する少なくとも3つの磁界検出部と、
前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動または周回運動の状態を検出する運動検出回路とを備え、
前記第1の磁界発生部および前記第2の磁界発生部は、前記可動部の外周部の近傍であって、前記可動部が回転運動または周回運動したときの前記可動部の外周部の軌跡に沿うように所定の間隔をもって配置され、
前記少なくとも3つの磁界検出部は、前記可動部の外周部に周方向に前記所定の間隔よりも大きい間隔をもって配置されていることを特徴とする運動検出装置。
【請求項3】
前記各磁界検出部は、大バルクハウゼン効果を生じる磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の運動検出装置。
【請求項4】
前記各磁界検出部から出力される検出信号から電源電圧を生成する電源電圧生成回路を備え、
前記運動検出回路は前記電源電圧生成回路により生成された電源電圧により動作することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の運動検出装置。
【請求項5】
前記運動検出回路は、前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体の回転運動の状態を検出する回路であり、
前記運動検出回路は、
前記各磁界検出部から出力される検出信号に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定し、前記被検出体が1回転するごとに、前記被検出体が1回転したことを示す回転判定信号を出力する回転判定回路と、
前記回転判定回路から出力される回転判定信号に基づいて前記被検出体の回転数を計数する計数回路とを備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運動検出装置。
【請求項6】
前記少なくとも3つの磁界検出部のうちの1つの磁界検出部が基準磁界検出部であり、残りの各磁界検出部が非基準磁界検出部であり、
前記回転判定回路は、前記基準磁界検出部から検出信号が出力されるたびに、前回前記基準磁界検出部から検出信号が出力された直後にいずれかの前記非基準磁界検出部から出力された検出信号と、今回前記基準磁界検出部から検出信号が出力される直前にいずれかの前記非基準磁界検出部から出力された検出信号とがそれぞれ所定の検出信号であるか否かを判断し、当該判断結果に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の運動検出装置。
【請求項7】
前記回転判定回路は、前記各磁界検出部から検出信号が出力されるたびに、今回出力された検出信号と前回出力された検出信号とを比較し、当該比較結果に基づいて前記被検出体の回転量を検出し、前記被検出体の回転量に基づいて前記被検出体が1回転したか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の運動検出装置。
【請求項8】
前記計数回路は、
前記回転判定回路から出力された回転判定信号に基づいて前記被検出体の回転数を計数し、前記被検出体の回転数を示す計数値をグレイコードにて出力する計数処理部と、
前記計数処理部からグレイコードにて出力された計数値を記憶する計数値記憶部とを備えていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の運動検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−198067(P2012−198067A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61335(P2011−61335)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】