説明

回転陽極X線管装置およびX線断層撮影装置

【課題】陽極の回転によりX線管に発生する振動はX線管装置およびX線保持装置を経てX線検出器に伝わり、撮影される画像の解像度を劣化させる。また陽極の回転によりX線管内部で発生する騒音は被検者に不快感や不安を与える。本発明は回転陽極X線管装置において陽極の回転により発生する振動のX線保持装置への伝達を低減すること、および騒音のX線管容器の外部への漏洩を低減することを目的とする。
【解決手段】回転陽極X線管装置において従来アルミニウム鋳物で製造していた外筒部3をクローズドセル構造のステンレス発泡金属を使用して製造する。クローズドセル構造の発泡金属が持つ防振および防音特性により振動のX線保持装置への伝達、および騒音のX線管容器1からの漏洩を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線の発生源である回転陽極X線管装置およびX線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転陽極X線管装置は図1に示すように、X線管容器1の内部にX線管2を封入したもので、X線を発生させるために高真空のX線管2の内部に対向配置された陽極11と陰極12の間に印加する高電圧を接地電位のX線管容器1に対して絶縁するために、X線管容器1の内部は絶縁油7で満たされている。そしてX線管容器1は、絶縁油7を密封するためのアルミニウム鋳物製の外筒部3やベローズ4等や、X線撮影に不要なX線の漏洩を防止するためのX線遮蔽鉛5等により構成されており、その内部にX線管2が陽極側および陰極側の2箇所で固定されている。具体的には陽極側はX線管容器1にネジ止め固定された筒状のステータ部6の内面に密着挿入された円筒状樹脂製の陽極保持部8の開いた側から挿入されたX線管2の陽極側端部が陽極保持部8の閉じた側の壁にネジ止め固定され、陰極側は内面にX線管2の外円筒面を密着挿入された樹脂製リング状の陰極保持部9をX線管容器1にネジ止め固定されている(例えば特許文献1参照)。そして回転陽極X線管装置は図2に示すようなX線管取付装置10によりX線保持装置(図示しない)に取り付けられる。なお図2(a)はX線管取付装置2の正面図であり、図2(b)は側面図、図2(c)は平面図である。支持軸10Dの上部はX線管取付装置2をX線保持装置に取り付けるためにX線保持装置のX線管固定部に挿入する部分であり、下部には取付板10Cがネジにより固定される。取付板10Cの両端にはそれぞれ半円状の取付リング10Aがネジにより固定され、さらにそれぞれの取付リング10Aには半円状の取付リング10Bがネジ留めされて、回転陽極X線管装置の外筒部3を保持するための二個の円部を構成している。なおX線管取付装置10の各部品は通常アルミニウムで製作される。
【特許文献1】特開2003−187728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
X線管2の陽極11は、外部から加えられる電力によりステータ部6が発生する磁気によって回転駆動されるが、このとき程度の差はあれ陽極11の回転によりX線管2に振動が発生する。そしてX線管2は背景技術の項で述べた方法でX線管容器1、さらにはX線保持装置に固定されているため、X線管2の振動はX線管容器1に伝わり、さらに回転陽極X線管装置の外筒部3を保持するX線管取付装置10およびX線保持装置を経て、回転陽極X線管装置に対向する位置にX線保持装置により保持されるX線検出器(図示しない)に伝わるため、X線検出器により撮影される画像の解像度の劣化を招く。また陽極11の回転によりX線管2内部で発生する騒音は被検者に不快感や不安を与える。本発明は回転陽極X線管装置において陽極11の回転により発生する振動のX線検出器への伝達を低減すること、騒音のX線管容器1の外部への漏洩を低減すること、およびX線管容器1の軽量化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は上記の目的を達成するために、高電圧を印加することによりX線を発生するX線管をX線管容器に封入した回転陽極X線管装置において、前記X線管容器を構成する外筒部の一部または全部が発泡金属により形成される回転陽極X線管装置を提供する。
【0005】
請求項2記載の発明は上記の目的を達成するために、請求項1記載の回転陽極X線管装置を備えたX線断層撮影装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、回転陽極X線管装置において陽極の回転により発生する振動のX線検出器への伝達が低減されるので、X線検出器の振動に起因する撮影画像の解像度の劣化が低減されるとともに、X線管内部で発生する騒音のX線管容器の外部への漏洩が低減されるので、騒音による被検者の不快感や不安が低減される。また本発明によりX線管装置が軽量化されるので、回診用X線装置等手動で移動させるX線装置では従来に比べて移動を容易に行うことができる。また、例えば断層撮影等、撮影中X線管装置を移動させる術式では、X線管装置を従来より高速で移動させることが可能になるので、撮影時間の短縮により被写体の運動による画像のボケを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施例は図1に示す回転陽極X線管装置において従来アルミニウム鋳物で製造していた外筒部3をクローズドセル構造のステンレス発泡金属を使用して製造したものである。泡の膜面を持つクローズドセル構造の発泡金属はその構造上防振および防音特性に優れているので、X線管2内で発生しX線管容器に伝わった振動が、外筒部3を経由してX線管取付装置10に伝わる段階で外筒部3の持つ防振性により大幅に低減される。またX線管2内で発生した騒音も防音特性の良い外筒部3で吸収されることにより大幅に低減される。
【0008】
そしてクローズドセル構造のステンレス発泡金属を使用して製造した、従来のアルミニウム鋳物製外筒部3と同等の強度を有する外筒部3の重量は、例えば従来の6kgに対して1kg弱となり、回転陽極X線管装置全体の重量25kgに対して約20%軽量化される。本発明によるX線管装置の軽量化により、回診用X線装置等手動で移動させるX線装置では従来に比べて移動を容易に行うことができる。また、例えば断層撮影等、撮影中X線管装置を移動させる術式では、X線管装置を従来より高速で移動させることが可能になるので、撮影時間の短縮により被写体の運動による画像のボケを低減することが可能になる。
【0009】
図3に本発明の回転陽極X線管装置を備えたX線断層撮影装置の一例を示す。X線断層撮影装置は一般に揺動レバー14の両端に対向して取り付けられた回転陽極X線管装置13とフィルム内蔵カセッテ15が撮影中揺動レバー14の支点16を固定した状態で移動することにより、撮影台17上の被検者18の支点16を含む撮影台17に平行な面の断層画像を得るものであるが、本発明の回転陽極X線管装置13は図1に示すようにX線管容器1の外筒部3が発泡金属を使用して製造され、従来より軽量化されているので、撮影中X線管装置を従来より高速で移動させることが可能になり、撮影時間が短縮されるので被写体の運動による画像のボケが低減された断層画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明はX線の発生源である回転陽極X線管装置およびX線断層撮影装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】回転陽極X線管装置の構成を示す図である。
【図2】X線管取付装置の構成を示す図である。
【図3】X線断層撮影装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
1:X線管容器
2:X線管
3:外筒部
4:ベローズ
5:X線遮蔽鉛
6:ステータ部
7:絶縁油
8:陽極保持部
9:陰極保持部
10:X線管取付装置
10A:取付リング
10B:取付リング
10C:取付板
10D:支持軸
11:陽極
12:陰極
13:回転陽極X線管
14:揺動レバー
15:フィルム内蔵カセッテ
16:支点
17:撮影台
18:被検者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を印加することによりX線を発生するX線管をX線管容器に封入した回転陽極X線管装置において、前記X線管容器を構成する外筒部の一部または全部が発泡金属により形成されることを特徴とする回転陽極X線管装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転陽極X線管装置を備えたことを特徴とするX線断層撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−179936(P2007−179936A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378976(P2005−378976)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】