説明

回転電機の内部電流監視装置および内部電流監視方法、回転電機

【課題】内部電流の監視が可能な回転電機の内部電流監視装置および内部電流監視方法、回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機100の固定子2内に設けられた固定子コイル14aの電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所A、B(またはC、D)に各々配置された光ファイバ電流センサ51、その光ファイバ電流センサ51の一端にレーザ光を入射し、同光ファイバ電流センサ51の他端から出射したレーザ光の旋光角から電流計測箇所の電流値を反映した信号を得る光学処理部61、この光学処理部61から出力された信号を入力し、2カ所の電流計測箇所A、B(またはC、D)の電流値の差から電流監視領域の状態を判定する判定部8を備えた電流監視部91aを、巻線毎に対応して設けた内部電流監視装置91とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを使用して発電機内部電流を監視する回転電機の内部電流監視装置および内部電流監視方法、ならびに回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタービン発電機における電流測定方法においては、変流器を発電機ハウジング内部に設け、発電機出力の相電流を測定できるように構成している。電流を計測する変流器として、ファラデー効果を利用したファイバオプティクス形電流センサを用いることで、発電機ハウジング内部への収納スペースを減量している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−500319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のファイバオプティクス形電流センサを変流器として用いたタービン発電機における電流計測方法としては、発電機出力電流が計測の対象であり、発電機内部事故発生時においては、発電機内部の固定子コイルのどの部分に事故が発生したかを検知することが不可能であった。また、測定対象は、発電機出力電流、すなわち、発電機固定子コイル出力電流のみであり、発電機回転子に流れる界磁電流の測定はできないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、光ファイバ電流センサを用いて、運転中の回転電機内部の固定子または回転子の巻線自体の内部電流を常時監視することにより、内部放電等の異常検出および異常発生箇所の特定を容易とする回転電機の内部電流監視装置および内部電流監視方法、並びに回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる回転電機の内部電流監視装置は、回転電機の固定子または回転子内に設けられた巻線の電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所に各々配置された光ファイバ電流センサ、上記光ファイバ電流センサの一端にレーザ光を入射し、上記光ファイバ電流センサの他端から出射した上記レーザ光の旋光角から上記電流計測箇所の電流値を反映した信号を得る光学処理部、上記光学処理部から出力された上記信号を入力し、2カ所の上記電流計測箇所の電流値の差から上記電流監視領域の状態を判定する判定部を備えたものである。
【0007】
この発明に係わる回転電機の内部電流監視方法は、回転電機の固定子または回転子内に設けられた巻線の電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所に、光ファイバ電流センサを各々巻き付けて電流値を計測するステップ、上記巻線の2カ所の上記電流計測箇所で計測した電流値の差から上記電流監視領域の状態を判定するステップを含むものである。
【0008】
この発明に係わる回転電機は、上記のような回転電機の内部電流監視装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の回転電機の内部電流監視装置によれば、光ファイバ電流センサを用いて、回転電機の固定子または回転子内に設けられた巻線の電流監視領域を挟む2カ所の電流計測箇所の電流値の差を反映した信号を得ることができ、その信号を基に電流監視領域における異常の有無を判定することができる。
【0010】
この発明の回転電機の内部電流監視方法によれば、光ファイバ電流センサを用いて、電流監視領域を挟んだ2カ所を電流計測箇所として、それらの電流値の差を求め、測定差を比較して電流監視領域における異常の有無を判定することが可能である。
【0011】
この発明の回転電機によれば、内部電流監視装置によって、巻線上に設定した電流監視領域毎の状態を監視できるため、運転時の異常発生の有無の検出および異常発生箇所の特定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の回転電機の要部断面構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2の回転電機の要部断面構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3の回転電機の光ファイバ電流センサ配置例を示した構成図である。
【図4】本発明の実施の形態4の回転電機の光ファイバ電流センサ配置例を示した構成図である。
【図5】本発明の実施の形態5の回転電機の光ファイバ電流センサ配置例を示した構成図である。
【図6】本発明の実施の形態6の回転電機の要部断面構成図である。
【図7】本発明の実施の形態7の回転電機の要部断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。図1は、回転電機の回転軸方向に沿った要部断面構成図であり、回転電機は、例えばタービン発電機である。
図1に示すように、回転電機100は、回転軸方向に伸びる略円柱形状の回転子1の周囲に、同軸に略円筒形状の固定子2が配置されている。固定子2と回転子1は、それぞれコア(固定子コアを符号11で示す。)によって主な形状が形作られており、固定子2と回転子1が対向するそれぞれの面部には、周方向に等間隔で、かつ軸方向に沿って伸びる溝状の固定子スロット部(スロット)11a、…、11x、…が形成されている。
【0014】
固定子2は、固定子コア11とコア内のスロットに挿入された固定子コイル(巻線)14a、…、14xを含み、固定子スロット部11a内には導線が巻回し形成された略角柱状の固定子コイル14aが、スロット全長にわたって嵌合して配置され、さらに、固定子コア11の両端から外側にコイルエンドが突出した状態となっている。
図1の例では、固定子コイル14aは、スロット内の底部側に配置される下口コイル13aと、スロット内の開口部側に配置される上口コイル12aが重ね合わせられた構成であり、それらの断面は略矩形状であり、固定子コア11外に突き出し、外部に露出したコイルエンドの部分にて各々、別のスロット内に配置されたコイルと繋げられた状態となっている。固定子コイル14xについても同様に、上口コイル12xおよび下口コイル13xよりなり、全スロットが同様の構成となっている。
なお、この例では一つのスロット内に上口、下口の二つのコイルが配置された場合を示したが、コイルの分割数は、製造する回転電機に応じて決められ、この数に限定されるものではない。
【0015】
この実施の形態1で特徴となるのは、電流監視領域が一本の巻線毎に設定されていると
いうことである。回転電機の修理では、巻線の部品交換の単位は1本毎となることが想定されており、巻線一本毎に電流監視を常時行うことで、部分放電などの回転電機の内部劣化による不具合の検出、および異常箇所の検出ができ、異常が認められた巻線を1本単位で新たな巻線に交換する処置を速やかに行うことが可能となる。
【0016】
次に、電流監視領域を一本の巻線毎とした場合の、電流計測箇所について説明する。図1に示すように、固定子コイル14aとなる上口コイル12aおよび下口コイル13aのそれぞれの両端部が、電流計測箇所A、BおよびC、Dとなる。そして、軸方向に沿う一本の巻線毎、つまりA−B間、C−D間のそれぞれが電流監視領域となる。この電流計測箇所A、B、C、Dには、各別に光ファイバ電流センサ51が巻き付け配置される。つまり、一カ所の電流計測箇所に一本の光ファイバ電流センサ51が配置される。
この光ファイバ電流センサ51は、絶縁体であるために、コイルエンド近傍に配置しても磁界に影響を与えることなく、また、一本の巻線である上口コイル12aまたは下口コイル13aの周りに直に巻き付け配置できるため省スペースで安定した状態に設置することができる。
固定子コア11内の全スロットについて、固定子コイル14aと同様に、電流計測箇所を設定し、各々光ファイバ電流センサ51が配置される。
【0017】
ここで、光ファイバ電流センサ51は、ファラデー効果物質を用いたガラスファイバセンサ(光ファイバ)であり、固定子コア11の外側に位置する上口コイル12a、下口コイル13aのコイルエンド部分の周囲に、直に、コイル状に巻き付け形成される。この、巻回されてコイル状となった部分の光ファイバ電流センサ51の軸は、巻線が延在する方向に沿っている。光ファイバ電流センサ51の両端は光学処理部61へそれぞれ接続され、光学処理部61内に設置されるレーザ光源から出射する光ビーム(レーザ光)は、光学処理部61内に設置される偏光子、レンズを通して直線偏光波となって光ファイバ電流センサ51の一端側に入射される。この光は、固定子コア11を流れる電流が形成する磁界によりファラデー旋回を受け、光ファイバ電流センサ51の他端から出射される。
【0018】
また、光ファイバ電流センサ51の他端から出射した光は、光学処理部61内に設置されるレンズおよび検光子に導かれ、検光子での測定により、光ファイバ電流センサ51の他端から出射した光が受けたファラデー旋回による旋光角(偏向角)を得ることができる。ここで得られた旋光角は、電流計測箇所の電流値を反映しており、ファラデー旋回を引き起こす磁界強度に比例し、その磁界強度は固定子コア11に流れる電流値に比例する。ここで固定子コア11と固定子コイル14aに流れる電流は同一であるため、これにより固定子コイル14aに流れる電流値を測定することができる。
【0019】
なお、一本の光ファイバ電流センサ51は、光学処理部61に繋げられた配線部の全長を、ファラデー効果物質を用いたガラスファイバセンサとする場合以外に、電流計測箇所に巻き付け配置する部分はファラデー効果物質を用いたガラスファイバセンサとし、電流計測箇所以外の導線となる部分は光ファイバケーブルを連結した構造として用いることができる。
【0020】
この光ファイバ電流センサ51と光学処理部61を固定子コイル14aの両端に構成し、それぞれの電流計測箇所の電流値を反映した値である出力信号を得、信号線7を介してすべての信号が判定部8に入力され、A−B間、C−D間での電流値の差からそれぞれ電流監視領域での異常の有無を判定する。正常運転であれば、電流監視領域の両端部で電流値の比較をずれば差は検出されないが、異常が発生した場合は、電流値の差が生じる。
また、固定子2に含まれる全ての固定子コイル14a、…、14xについて同様に、光ファイバ電流センサ51と光学処理部61を含む電流監視部91a、…、91xが設けられ、全ての光学処理部61の出力信号は、信号線7を介して判定部8に統合される。ここ
で、全ての電流監視部91a、…、91xを総称して内部電流監視装置91とする。
【0021】
なお、判定部8は、音声や画像への表示で、異常が検出された電流監視領域を特定して管理者に知らせる、あるいは、回転電機の制御系統へ異常検出の信号を発信するなどして管理者に異常発生および異常箇所を通知する手段を備えていることは言うまでもない。
【0022】
次に動作について説明する。回転電機100が通常運転を行っているとき、固定子コイル14a、…、14xには回転磁界による誘導電圧に誘起され、電流が流れる。固定子コイル14a、…、14xに流れる電流値に従って光ファイバ電流センサ51、光学処理部61を経て、電流計測箇所の電流値が反映された出力信号が得られる。全ての出力信号は信号線7を経由して判定部8に入力される。
【0023】
判定部8では、固定子コイル14aの異常を次のように検出する。固定子コイル14a(他の固定子コイルも同様。)が正常な状態であれば、電流監視領域を挟んだ電流計測箇所AとB、またはCとDからの出力信号は同じ値となる。ここで、電流監視領域を挟む2カ所の出力信号に相違が見られる場合は、固定子コイル14aの内部(A−B間、またはC−D間)で短絡電流などの異常電流が発生していることが推測され、異常状態が検知される。これにより、運転中の回転電機100において、固定子コイル14aの上口コイル12a、または下口コイル13aに異常が発生した場合は、その異常を検知するとともに、異常の発生した固定子コイル(上口、下口の別まで。)を特定することが可能である。
【0024】
なお、この実施の形態1のように、コイルエンドの電流計測箇所毎に各別に光ファイバ電流センサ51を巻き付け配置する場合は、新設する回転電機に適用させられるだけでなく、既に稼働している回転電機にも適用させることができ、内部電流監視装置91のみを後付けで設置することも可能であるという利点がある。
また、図1中にボックスで示した光学処理部61は、一本の光ファイバ電流センサ51に対応して一個が設けられるよう例示したが、これは一つの光ファイバ電流センサ51のレーザ光入射・出射に必要な光学処理機能を構成図として示したものである。従って、一つの箱に収まった光学処理部が、多数の光ファイバ電流センサに対応した、多数の光学処理機能を備えている場合、実際の光学処理部の箱数はセンサ数よりも少なくなることは言うまでもない。
【0025】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、一つの光ファイバ電流センサ51で一カ所の電流計測箇所の電流値計測を行い、光ファイバ電流センサ51毎に光学処理部61を設け、巻線の異常電流を検出する場合について述べたが、この実施の形態2では、図2に示すように、一本の光ファイバ電流センサ52aを用いて、電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所を連結するように配線し、光学処理部62へ導く場合について説明する。
図2のように、光ファイバ電流センサ52aを、電流計測箇所AとBを連結するように配線した構成とし、電流監視領域を挟んだ2カ所の電流値を反映した信号(レーザ光)を光学処理部62へ導く場合、実施の形態1では2本必要であった光ファイバ電流センサ51が、この実施の形態2では1本の光ファイバ電流センサ52aでよいという利点があり、これに伴って、光学処理部62の個数も少なくすることができる。また、ここで、光ファイバ電流センサ52aは、固定子コイル14aの上口コイル12a両端に位置する電流計測箇所AおよびBの間の直線部分を、光ファイバケーブルで構成することができる。
【0026】
なお、下口コイル13aについても同様に、一本の光ファイバ電流センサ52bが、下口コイル13a側の電流計測箇所CおよびDを連結するように配線され、磁界強度により位相がシフトした光は、各別された光学処理部62へ導かれる。一つのスロットに対応する一つの電流監視部92aには、一カ所の固定子スロット部11aに収納された巻線14
aの本数(巻線14aでは上口コイル12aと下口コイル13aの2本。)に相当する数の光学処理部62が配置され、内部電流監視装置全体では、さらにスロット数を乗じた数の光学処理部62が配置される。
【0027】
ここで、実施の形態2の特徴として、光ファイバ電流センサ52aを上口コイル12aに巻きつける際に、電流計測箇所A、Bで互いに逆周りに且つ、巻きつけ回数が同じとなるように配線する。他の光ファイバ電流センサ52bについても巻回し手法は同様である。
これにより、上口コイル12aが正常な場合、電流計測箇所A、Bの電流値は同じとなるため、AとBで巻回し方を逆向きとすれば、光ファイバ電流センサ52a内の旋光角が互いに打ち消しあうことにより、光学処理部62で得られる出力信号(電流監視領域の電流値を反映した信号)はゼロとなる。一方、上口コイル12aに異常電流が発生した場合は、光ファイバ電流センサ52aにて発生する旋光角の絶対値に差が生じることとなり、出力信号はゼロとならない。これにより、上口コイル12aの異常の有無が検知できる。下口コイル13aを含め、固定子コア11内の全ての巻線についても同様に異常検出を行うことができる。
【0028】
なお、光ファイバ電流センサ52を構成する電流計測箇所A−B間の光ファイバケーブルの配線は、固定子コア11の外側に配置することが可能であり、その場合は、既存の回転電機に後付けで配線することができる。また、稼働前の回転電機であれば、固定子スロット部11aに固定子コイル14aを挿入する前に、コイルが伸びる方向に沿わせてコイル表面のA−B間に直に光ファイバケーブルを配線することが可能であり、この場合は、光ファイバケーブルが固定子コア11内に保護されて損傷を抑えることができる。
【0029】
上記の例では、固定子スロット部11aに収納された上口コイル12aと下口コイル13aのそれぞれについて各々光ファイバ電流センサ52a、52bを巻き付け配置し、電流監視領域を別個に設ける例を示したが、上口コイル12aと下口コイル13aが一体に束ねられてなる固定子コイル14aを一本の巻線と考え、固定子コイル14aの周囲に巻回す要領で電流計測箇所となるコイル両端部に光ファイバ電流センサ52を配置し、固定子コイル14a他の全巻線について異常電流の監視を行うことができる。
【0030】
実施の形態3.
上述の実施の形態1および実施の形態2では、電流計測箇所A〜Dが固定子コア11の外側であったため、光ファイバ電流センサ51、52を固定子コイル14a、…、14xのコイルエンド部分に巻き付け配置する構成であった。この実施の形態3では、図3の固定子2の要部側断面図に、光ファイバ電流センサ53の配置例を示すように、固定子コア11内部に位置する固定子コイル14aの上口コイル12a、下口コイル13aの両端部を、それぞれ電流計測箇所A1およびB1、C1およびD1とし、A1−B1間、C1−D1間を電流監視領域と設定して異常電流の監視を行う。
【0031】
この実施の形態3のセンサ配置例では、電流監視部93aは、電流計測箇所毎に光ファイバ電流センサ53を各別に配置し、各々が別個に光学処理部63に導かれ、電流計測箇所毎に電流値を計測し、判定部8にて電流監視領域を挟んだ2カ所の電流値の差を検出して異常の有無を判定する。
ここでは、一カ所の固定子スロット部11aに配置される固定子コイル14aに対応した電流監視部93aのみを例示しているが、固定子コア11内の全スロットについて電流監視部が設けられ、内部電流監視装置が構成される。
【0032】
なお、光ファイバ電流センサ53は、固定子コイル14aの上口コイル12aまたは下口コイル13aの周囲に、固定子コア11に挿入する前にあらかじめ巻き付け配置し、そ
の後、固定子コイル14aを固定子スロット部11aに挿入することで、図3に例示した電流計測箇所A1〜D1に配置することができる。
【0033】
実施の形態4.
上述の実施の形態3では、固定子コア11内に電流計測箇所A1〜D1を配置する場合に、電流計測箇所毎に、各別に光ファイバ電流センサ53を配置し、それぞれの電流値を計測していた。この実施の形態4では、図4に固定子2の要部側断面図に光ファイバ電流センサ54の配置例を示すように、実施の形態2と同じ要領で固定子コイル14aの電流計測箇所A1およびB1に光ファイバ電流センサ54を巻回し、光ファイバケーブルで連結し、光学処理部64へ導くことにより、実施の形態3では2個必要であった光学処理部を1個とすることもできる。ここで、実施の形態2と同様に、光ファイバ電流センサ54を上口コイル12aまたは下口コイル13aの巻線に巻きつける際に、互いに逆周りに且つ、巻き付け回数を同じにしておくことで、巻線が正常な場合は、光学処理部64の出力信号はゼロとなり、巻線に異常電流が発生した場合は、出力信号はゼロにならず、巻線の異常発生を検知でき、異常発生箇所を電流監視領域単位で特定することができるという効果が得られる。
【0034】
実施の形態5.
上述の実施の形態1〜4においては、一本のコイルのスロット全長に相当する領域(例えば、A−B間またはA1−B1間の領域。)を一つの電流監視領域と設定していた。そのため、異常発生箇所がどの巻線であるかを特定することはできたが、巻線内のどの部分で不良が発生したのかを特定することはできなかった。この実施の形態5では、1本の巻線の直線部を複数の電流監視領域に区切って、異常電流を監視し、巻線内のどの領域で不具合が発生しているかを特定する手法について説明する。
【0035】
実施の形態5の電流監視部95aでは、図5に固定子2の要部側断面図を示すように、固定子コイル14aの上口コイル12aの両端に位置する電流計測箇所A1、B1に加え、その中間に、さらにE1、F1を等間隔となるように設け、固定子スロット部11aに収納される上口コイル12aの全長を3分割したA1−E1間、E1−F1間、F1−B1間をそれぞれ電流監視領域とする例を示す。下口コイル13aも上口コイル12aと同様に電流計測箇所をC1、G1、H1、D1の順に、等間隔に、固定子スロット部11aの全長を電流監視領域として網羅できるように設定し、内部電流の監視を行う。なお、電流監視領域の分割数はこれに限るものではない。
【0036】
このように、一本の巻線上に3個以上の光ファイバ電流センサ55を配置し、固定子軸方向に伸びる巻線上に互いに離間して、3カ所以上の電流計測箇所を設け、それぞれ光学処理部65に各別に導き、得られた出力信号を基に、判定部8において、任意に設定した電流監視領域を挟む2カ所の計測箇所で得られた値を比較することにより、固定子コイル14a、…、14x内部の異常箇所をより厳密に特定することが可能になるという効果がある。なお、上記の例では隣り合う電流計測箇所間(例えばA1−E1間、E1−F1間等。)を電流監視領域とすることを説明したが、これに限らず、任意の2カ所で挟まれた領域を電流監視領域と設定することもできる。その場合、実施の形態3のように、固定子コイル14aの全長に相当するA1−B1間での監視結果が異常有りとなった場合、より詳細な異常発生箇所特定のために、この実施の形態5で示した要領にて、A1−B1間を等分割した各領域について、それぞれ異常検出を行うことが有効である。
【0037】
実施の形態6.
上述の実施の形態1〜5では、固定子2側での内部電流監視の例について述べたが、この実施の形態6では、回転子1の巻線について内部電流監視を行う場合について説明する。
図6は、この実施の形態6の回転電機の要部断面構成図であり、内部電流監視装置96は、回転子1内において軸方向に伸びる回転子コイル(巻線に相当する。)15a、…、15xの両端部を電流計測箇所として、光ファイバ電流センサ56を各別に設置し、光カップリング部80を介して回転子1と外部とのレーザ光の授受を行い、回転子コイル毎に異常電流を監視する構成を示している。
【0038】
図6に示すように、回転子1は、回転子軸を持つ略円筒形状の回転子コア10と、回転子コア10の固定子と対向する外周面部に、周方向に等間隔で設けられた軸方向に伸びる溝である回転子スロット部10a、…、10x、その回転子スロット部10aに挿入配置された回転子コイル15a、…、15xとによって主に構成される。そして、回転子コア10内で、回転子コイル15aの両端部となる電流計測箇所A2、B2には、それぞれ光ファイバ電流センサ56を巻き付け配置される。各光ファイバ電流センサ56への入射光および出射光は回転子1に設置される回転子側光カップリング部80aを介して回転子外と光結合される。また、回転電機本体側に設置される回転電機本体側光カップリング部80bは、回転子側光カップリング部80aと対向して設置され、これら回転子側光カップリング部80aおよび回転電機本体側光カップリング部80bよりなる光カップリング部80は、セルフォック(登録商標)レンズ等の適当なレンズを用いるなどして、光結合時の損失を抑える処置を施されている。回転電機本体側光カップリング部80bから導かれたレーザ光は、光ファイバケーブル9により光学処理部66へ導入され、光学処理部66の出力信号は信号線7を介して判定部8に導かれる。
【0039】
なお、回転子側光カップリング部80aと回転電機本体側光カップリング部80bの光結合においては、回転子コイル15a、…、15xに設置される光ファイバ電流センサ56と同数の回転子側光カップリング部80aが回転子周囲に円弧状に配列されるが、それらに対向する回転電機本体側光カップリング部80bは1組のみ設置される。これは回転子1が回転している場合、円弧状に配列された回転子側光カップリング部80aが連続して回転電機本体側光カップリング部80bと光結合する、すなわち回転子1が1回転する間に、一つの回転電機本体側光カップリング部80bは全ての回転子側光カップリング部80aと光結合するためである。
【0040】
なお、図6の例では、回転子コア10内に配置された一本の回転子コイル15aの、両端部の電流計測箇所A2、B2に対応して、2本の光ファイバ電流センサ56が配置され、一つのスロットにつき2本の光ファイバ電流センサ56に対応した二組の回転子側光カップリング部80aが設けられる。また、光カップリング部80は、レーザ光の入射側、出射側にそれぞれ光結合部が設けられる。
【0041】
光学処理部66で得られた出力信号は判定部8に導かれ、図示しない回転子位置検出機構による回転子1の位置(回転角度)情報を出力信号と照合し比較することにより、時分割的に各回転子コイル15a、…、15xの両端部に流れる電流を検出でき、実施の形態1と同様に、回転子コイルに流れる異常電流を検出し、異常の発生している回転子コイルを特定することが可能となる。
【0042】
実施の形態7.
上述の実施の形態6では、回転子コイル15aの両端部となる2カ所の電流計測箇所A2、B2に、各別に光ファイバ電流センサ56を配設する例を示したが、この実施の形態7では、上述の実施の形態2および実施の形態4と同様の要領で、光ファイバ電流センサ57を、電流計測箇所A2、B2を連結するように巻き付け配置した内部電流監視装置97について説明する。図7に示すように、光ファイバ電流センサ57を回転子コイル15a、…、15xに巻きつける際に、互いに逆周りに、且つ、巻きつけ回数を同じにしておき、2つの電流計測箇所(A2−B2)間は光ファイバケーブルで連結するように構成し、回転子側光カップリング部81aへ導くことも可能である。回転子側光カップリング部81aは、各回転子コイルについて入射部・出射部よりなる1組をスロット数に応じて設ければよく、回転電機本体側光カップリング部81bは一組のみ設ければよい。そのため、実施の形態6と比較して、光カップリング部81の構成部を半減させることが可能となる。
【0043】
図7のように構成することで、回転子コイル15a、…、15xが正常な場合、光ファイバ電流センサ57の旋光角が互いに打ち消しあうことにより、光学処理部67の出力信号はゼロとなり、回転子コイル15a、…、15xに異常電流が発生した場合は、光ファイバ電流センサ57にて生ずる旋光角の絶対値に差が生じることとなり、出力信号はゼロにならない。この判定を判定部8で行い、回転子コイル15a、…、15xの異常の有無が検知可能となり、異常箇所の特定も可能となる。
なお、上述の実施の形態6、7では、一本の回転子コイル15a、…、15xのコア内の全長が一つの電流監視領域となるように、電流計測箇所を設定したが、実施の形態5の要領で、より細かく区切られた電流監視領域を設定することも可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 回転子
2 固定子
7 信号線
8 判定部
9 光ファイバケーブル
10 回転子コア(コア)
10a、…、10x 回転子スロット部(スロット)
11 固定子コア(コア)
11a、…、11x 固定子スロット部(スロット)
12a、…、12x 上口コイル
13a、…、13x 下口コイル
14a、…、14x 固定子コイル(巻線)
15a、…、15x 回転子コイル(巻線)
51、52、52a、52b、53、54、 光ファイバ電流センサ
61,62、63、64、65、66、67 光学処理部
80、81 光カップリング部
80a、81a 回転子側光カップリング部
80b、81b 回転電機本体側光カップリング部
91a、…、91x、92a、93a、94a、95a 電流監視部
91、96、97 内部電流監視装置
100 回転電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の固定子または回転子内に設けられた巻線の電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所に各々配置された光ファイバ電流センサ、上記光ファイバ電流センサの一端にレーザ光を入射し、上記光ファイバ電流センサの他端から出射した上記レーザ光の旋光角から上記電流計測箇所の電流値を反映した信号を得る光学処理部、上記光学処理部から出力された上記信号を入力し、2カ所の上記電流計測箇所の電流値の差から上記電流監視領域の状態を判定する判定部を備えたことを特徴とする回転電機の内部電流監視装置。
【請求項2】
回転子内の上記巻線が上記電流監視領域である場合、上記光ファイバ電流センサと上記光学処理部との間に、光結合によって上記レーザ光を導く光カップリング部を設けたことを特徴とする請求項1記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項3】
上記電流計測箇所毎に、各別に上記光ファイバ電流センサを配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項4】
2カ所の上記電流計測箇所に、一本の上記光ファイバ電流センサを巻き付け方向が互いに逆周りとなるように、かつ、巻き付け回数が同じとなるように配置したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項5】
上記光ファイバ電流センサは、回転電機のコアの外部に位置する上記巻線に配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項6】
上記光ファイバ電流センサは、上記回転電機のコアのスロット内部に収納される上記巻線に巻き付け配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項7】
上記光ファイバ電流センサが配置される上記電流計測箇所は、回転電機の回転軸方向に沿って伸びる上記巻線上に互いに離間して3カ所以上の位置に設けられ、上記電流計測箇所の任意の2カ所で挟まれた領域を上記電流監視領域としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項8】
上記光ファイバ電流センサは、回転電機の回転軸を中心として周方向に等間隔で配置された全ての上記巻線の両端部に巻き付け配置されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項9】
上記光ファイバ電流センサは、ファラデー効果を利用するガラスファイバセンサであり、上記巻線の表面に直に巻き付けられたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置。
【請求項10】
回転電機の固定子または回転子内に設けられた巻線の電流監視領域を挟んだ2カ所の電流計測箇所に、光ファイバ電流センサを各々巻き付けて電流値を計測するステップ、上記巻線の2カ所の上記電流計測箇所で計測した電流値の差から上記電流監視領域の状態を判定するステップを含むことを特徴とする回転電機の内部電流監視方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項記載の回転電機の内部電流監視装置を備えた回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93971(P2013−93971A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234519(P2011−234519)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】