説明

回転電機及び冷却機構

【課題】各部を適正に冷却することができる回転電機及び冷却機構を提供することを目的とする。
【解決手段】内側に中空部分を形成するステータ2と、ステータ2の内側に回転軸線X1を中心として回転自在に設けられるロータ3と、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端部に設けられ、内部を媒体が流動可能であると共に、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端面に媒体が流出可能な流出開口72cを有する媒体通路72とを備え、ロータ3は、媒体通路72が設けられた端部に、媒体をはじく表面処理が施されていることを特徴する。したがって、各部を適正に冷却することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両を駆動する駆動装置等には、電気エネルギを機械的動力に変換して出力する電動機や、機械的動力を電気エネルギに変換して回収する発電機等のいわゆる回転電機を備えたものが知られている。このような回転電機は、例えば、ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)、電気車両(EV:Electric Vehicle)、燃料電池車両(FCV:Fuel Cell Vehicle)等に走行用駆動源として搭載される。そして、この回転電機は、作動に伴って熱を発生するものであるため、種々の冷却機構を備え、例えば、潤滑油等の冷却媒体によって冷却される。
【0003】
従来の回転電機として、例えば、特許文献1には、ロータの軸方向端部に設けられたエンドプレートに、冷媒が流通可能な冷媒通路が形成され、この冷媒通路に連通した排出孔がロータの径方向内方に位置する回転電機が開示されている。この回転電機は、ロータの回転に伴う遠心力により冷媒が冷媒通路を通って径方向内側から外側に向けて移動し排出孔から排出されることで、ステータに設けられた永久磁石を含む冷却対象部を冷媒によって冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−027837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような特許文献1に記載の回転電機は、例えば、より適正に各部を冷却することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、各部を適正に冷却することができる回転電機及び冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る回転電機は、内側に中空部分を形成するステータと、前記ステータの内側に回転軸線を中心として回転自在に設けられるロータと、前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端部に設けられ、内部を媒体が流動可能であると共に、前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端面に前記媒体が流出可能な流出開口を有する媒体通路とを備え、前記ロータは、前記媒体通路が設けられた前記端部に、前記媒体をはじく表面処理が施されていることを特徴する。
【0008】
また、上記回転電機では、前記ロータは、前記回転軸線に沿った方向の端部を構成し、前記媒体通路が設けられると共に前記表面処理が施されたエンドプレートを有するものとすることができる。
【0009】
また、上記回転電機では、前記エンドプレートは、前記ロータのロータコアとの間に、少なくとも前記媒体通路の一部を形成するものとすることができる。
【0010】
また、上記回転電機では、前記媒体通路は、前記回転軸線に沿った方向及び前記回転軸線と直交する方向に対して、前記流出開口側が前記ロータの外側に向かって傾斜する傾斜部を有するものとすることができる。
【0011】
また、上記回転電機では、前記ロータのロータコアの前記媒体通路に面する表面、及び、前記ロータコアの前記媒体通路に面する表面と向き合い前記表面処理が施された表面に凹凸が設けられるものとすることができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る冷却機構は、回転電機のロータの前記回転軸線に沿った方向の端部に設けられ、内部をオイルが流動可能であると共に、前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端面に前記オイルが流出可能な流出開口を有する通路を備え、前記ロータは、前記通路が設けられた前記端部に、前記オイルをはじく撥油処理が施されていることを特徴する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る回転電機、冷却機構は、各部を適正に冷却することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態1に係る回転電機の模式的な概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る回転電機におけるオイルの流れを説明する部分断面図である。
【図3】図3は、実施形態2に係る回転電機のロータ通路を含む部分断面図である。
【図4】図4は、実施形態2に係る回転電機のロータ回転数とコイルエンド部へのオイル供給量との関係の一例を示す線図である。
【図5】図5は、実施形態3に係る回転電機のロータ通路を含む部分断面図である。
【図6】図6は、実施形態3に係るロータコアの端面の接触角を説明する模式図である。
【図7】図7は、実施形態3に係るエンドプレートの対向面の接触角を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る回転電機の模式的な概略構成図、図2は、実施形態1に係る回転電機におけるオイルの流れを説明する部分断面図である。
【0017】
本実施形態の回転電機1は、図1に示すように、固定子であるステータ2と回転子であるロータ3とを備えるものである。この回転電機1は、電気エネルギを機械的動力に変換して出力する電動機や機械的動力を電気エネルギに変換して回収する発電機等として適用されるものである。回転電機1は、例えば、ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)、電気車両(EV:Electric Vehicle)、燃料電池車両(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両を駆動するための駆動装置に主として走行用回転電機として搭載される。
【0018】
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、ロータ3の回転中心である回転軸線X1に沿った方向を軸方向といい、回転軸線X1に直交する方向、すなわち、軸方向に直交する方向を径方向といい、回転軸線X1周りの方向を周方向という。また、径方向において回転軸線X1側を径方向内側といい、反対側を径方向外側という。また、以下で説明する回転電機は、電動機と発電機とはほぼ同じ構造を有するため、ここでは主として電動機(電動モータ)について説明し発電機に関する説明をできるだけ省略する。
【0019】
具体的には、本実施形態の回転電機1は、ステータ2と、ロータ3と、ケース4と、ロータ軸5とを備えている。回転電機1は、例えば両端が閉塞した円筒状のケース4の内部空間部にステータ2、ロータ3、ロータ軸5等が収容される。回転電機1は、ステータ2がケース4の内部空間部に固定されて支持されるのに対して、ロータ3がケース4の内部空間部に回転軸線X1を回転中心として回転可能に支持される。この回転電機1は、ステータ2、ロータ3、ロータ軸5の中心軸線が回転軸線X1で一致するようにケース4に位置決めされる。
【0020】
具体的には、ステータ2は、円筒状に形成され内側に中空部分を形成する。ステータ2は、円筒形の中心軸線がロータ3の回転軸線X1と一致するようにケース4の内周面に固定される。すなわち、ステータ2は、回転軸線X1と同軸の円筒状に形成され、ケース4の内部空間部にこのケース4に対して相対回転不能に支持される。
【0021】
ステータ2は、ステータコア(ステータ鉄心)21と、ステータコイル22とを含んで構成される。
【0022】
ステータコア21は、ステータ2の円筒状の鉄心をなし、軸方向に沿って複数の電磁鋼板(積層鋼板)を積層させて構成される。なお、このステータコア21は、電磁鋼板に限定されず、例えば圧粉磁心から構成されてもよい。
【0023】
ステータコイル22は、ステータコア21に巻回されて設けられる。ステータコイル22は、例えば、三相ケーブル等を介して車両の制御装置(不図示)に電気的に接続されている。例えば、この制御装置には、車両に搭載されたECU(Electrical Control Unit)から回転電機1が出力すべきトルク指令値が送られる。そして、この制御装置は、そのトルク指令値によって指定されたトルクを出力するための制御電流を生成し、その制御電流を三相ケーブルを介してステータコイル22に供給する。
【0024】
ロータ3は、円筒状に形成される。ロータ3は、ステータ2の内周面23側、すなわち、ステータ2の径方向内側に回転軸線X1を中心として回転自在に設けられる。ロータ3は、円柱状に形成されるロータ軸5の外周面に設けられる。このロータ軸5は、軸受を介して回転軸線X1を回転中心として回転可能にケース4に支持される。つまり、ロータ3は、ケース4の内部空間部にロータ軸5やロータ軸5を回転自在に支持する軸受を介して回転軸線X1を回転中心として回転可能に支持される。ロータ3は、ロータ軸5と共にケース4、ステータ2に対して回転軸線X1を中心として相対回転可能である。
【0025】
ロータ3は、ロータコア(ロータ鉄心)31と、永久磁石32と、エンドプレート33とを含んで構成される。
【0026】
ロータコア31は、ロータ3の円筒状の鉄心をなし、軸方向に沿って複数の電磁鋼板(積層鋼板)を積層させて構成される。なお、このロータコア31は、電磁鋼板に限定されず、例えば圧粉磁心から構成されてもよい。
【0027】
永久磁石32は、ロータコア31に複数埋め込まれて設けられている。複数の永久磁石32は、例えば、ロータコア31の周方向に沿って等間隔で設けられており、周方向にとなりあう2つの永久磁石32の極性が互いに異なるように設定されている。なおここでは、ロータ3は、埋込磁石型の永久磁石ロータを使用することとしたが、これに限らず、例えば、表面磁石型の永久磁石ロータを使用することにしてもよい。
【0028】
エンドプレート33は、ロータ3の回転軸線X1に沿った軸方向の端部を構成する。エンドプレート33は、回転軸線X1を中心軸線とする円環板状に形成され、ロータコア31の軸方向両端部に一対で設けられる。つまり、ロータコア31は、軸方向に対して一対のエンドプレート33で挟まれている。各エンドプレート33は、ロータコア31の軸方向の各端面31aにそれぞれ対向して密着して設けられる。
【0029】
そして、ステータ2とロータ3とは、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面34とが径方向に対向する。また、ステータ2とロータ3とは、ステータ2の軸方向に沿った長さがロータ3の軸方向に沿った長さより長く設定されている。ここでは、ステータ2とロータ3とは、ステータコア21とロータコア31の軸方向に沿った長さがほぼ同等に設定されているが、ステータコア21から軸方向両側に突出したステータコイル22のコイルエンド部24の分だけステータ2がロータ3よりも軸方向の両側に突出した形状となっている。
【0030】
各コイルエンド部24は、ステータ2の軸方向の両端部において周方向に沿って円環状に形成される。ステータ2は、ステータコア21の軸方向両端面から軸方向両側に突出するこの一対のコイルエンド部24を例えば樹脂モールドすることで両端部に一対の樹脂モールドコイルエンド部を有する構成としてもよい。
【0031】
そして、この回転電機1は、作動に伴って熱を発生するものであるため、冷却機構6を備え、冷却媒体、ここではオイル(潤滑油)によって冷却している。回転電機1は、いわゆる軸芯油冷型の回転電機であり、冷却機構6は、典型的には、ロータ3の内部にオイルを導入してこのロータ3等を冷却するものである。具体的には、冷却機構6は、内部を冷却媒体としてのオイルが流動可能なオイル通路7を含んで構成され、このオイル通路7にオイル供給装置8からオイルが供給される。オイル通路7は、ロータ軸通路71と、媒体通路としてのロータ通路72とを含んで構成される。
【0032】
ロータ軸通路71は、ロータ軸5の内部に設けられオイルが流動可能なものである。ロータ軸5は、内部に中空部が形成されこの中空部がロータ軸通路71をなす。このロータ軸通路71は、オイル供給装置8から供給されるオイルをロータ通路72に導くものである。ロータ軸通路71は、主通路部71aと、分岐通路部71bとを含んで構成される。主通路部71aは、ロータ軸5の内部に軸方向に沿って設けられる。主通路部71aは、軸方向の一端部が閉塞して形成される一方、軸方向の他端部が種々の通路を介してオイル供給装置8に接続される。分岐通路部71bは、ロータ軸5の内部に、主通路部71aから分岐して径方向に沿って設けられる。分岐通路部71bは、複数設けられ、それぞれ径方向内側の端部が主通路部71aと連通する一方、径方向外側の端部が後述のロータ通路72と連通する。
【0033】
ロータ通路72は、ロータ3の内部に設けられ、内部をオイルが流動可能なものである。ロータ通路72は、ロータ3の軸方向の端部に設けられ、ここでは、ロータ3の軸方向の端部を構成するエンドプレート33に設けられる。ロータ通路72は、ロータ軸通路71から導入されるオイルを径方向内側から外側に向かって導くものである。
【0034】
ロータ通路72は、永久磁石32の軸方向の端部近傍を経由してオイルが流通可能であり、ここでは、径方向通路72aと、流出通路72bと、流出開口72cとを含んで構成される。径方向通路72aは、ロータ3の内部に軸方向に交差する方向に沿って、ここでは径方向に沿って設けられる。流出通路72bは、ロータ3の内部に軸方向に沿って設けられる。流出開口72cは、オイルが流出可能な排出口である。
【0035】
具体的には、径方向通路72aは、ロータ3の軸方向の両端部側に、すなわち、一対のエンドプレート33にそれぞれ設けられ、永久磁石32を軸方向に挟むようにして複数設けられる。複数の径方向通路72aは、例えば、各エンドプレート33において、ロータ3の周方向に沿って等間隔で設けられている。径方向通路72aは、エンドプレート33の対向面33aに溝状に形成され、このエンドプレート33の対向面33aとロータコア31の端面31aとの間に区画される。ここで、対向面33aは、エンドプレート33において軸方向に端面31aと対向する側の面である。つまり、各エンドプレート33は、各対向面33aとロータコア31の各端面31aとの間に、少なくともロータ通路72の一部として径方向通路72aを形成する。各径方向通路72aは、径方向内側の端部がそれぞれ対応する分岐通路部71bを介してロータ軸通路71の主通路部71aと連通する一方、径方向外側の端部が永久磁石32の軸方向の端部近傍で閉塞して形成される。
【0036】
流出通路72bは、径方向通路72aに対応して複数設けられる。各流出通路72bは、一方の端部がそれぞれ対応する径方向通路72aと連通する一方、他方の端部が流出開口72cにて開口する。流出開口72cは、ロータ3の軸方向の端面、ここでは、各エンドプレート33の軸方向端面33bに設けられる。軸方向端面33bは、軸方向における対向面33aの背面側の面である。
【0037】
上記のように構成される回転電機1は、ステータコイル22に電力が供給されることで、ステータ2に電磁力が生じ、この電磁力によりロータ3が回転駆動する。すなわち、回転電機1は、ステータ2のステータコイル22からの磁束がロータ3内を通りロータ3が回転する。ロータ3の回転は、ロータ軸5から車両の動力伝達部材に入力され、最終的には車両の駆動輪に伝達され、この駆動輪を回転駆動させる。
【0038】
この間、冷却機構6は、回転電機1の全体を冷却する。すなわち、回転電機1は、オイル供給装置8からロータ軸通路71の主通路部71aに冷却用のオイルが供給される。主通路部71aに供給されたオイルは、ロータ3及びロータ軸5の回転に伴って径方向内側から外側に向けて遠心力が作用することにより、各分岐通路部71bにて分岐し、各分岐通路部71bを介して各ロータ通路72の各径方向通路72aに導入される。各径方向通路72aに導入されたオイルは、ロータ3及びロータ軸5の回転に伴って遠心力が作用することにより、この径方向通路72aの内部を径方向内側から外側に向かって導かれて流動し、永久磁石32の軸方向端部近傍まで流れ、また、各流出通路72bに流入した後、各流出開口72cを介してロータ3の外部に流出する。この間、オイルは、ロータ軸通路71の主通路部71a、分岐通路部71b、ロータ通路72の径方向通路72a、流出通路72b等を通過することで、ロータコア31や永久磁石32等の回転電機1の各部を冷却し、この結果、この回転電機1は、過剰な温度上昇が抑制される。
【0039】
そして、本実施形態の回転電機1は、ロータ3のロータ通路72が設けられた端部に、オイルをはじく表面処理が施されることで、より適正に各部を冷却することを可能としている。ここでは、回転電機1は、ロータ3の軸方向の端部を構成するエンドプレート33にロータ通路72が設けられると共にオイルをはじく表面処理として、撥油処理(冷却媒体が水である場合には撥水処理)が施される。
【0040】
本実施形態のエンドプレート33は、対向面33a、軸方向端面33b、流出開口72cを形成する開口部33c、径方向外側端面33d等を含む表面全体に撥油処理が施される。エンドプレート33の表面に対する撥油処理は、典型的には、フッ素系処理剤(例えばフルオロアルキルシラン等)、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン等)等であって表面張力が20mN/m程度以下の処理液を使用した表面処理を用いることができる。また、処理方法は、例えば、エンドプレート33を上記の処理液中に沈めた後、引き出し速度を調節しながら当該エンドプレート33を引き出し、その後、熱処理等を行う方法(例えば、ディッピング処理方法、ゾルゲル処理方法等)を用いることができる。
【0041】
エンドプレート33は、表面に撥油処理が施されることで、表面のオイルに対する濡れ性が相対的に低下し、相対的に高い撥油性(オイルをはじく性質)を有することとなる。これにより、エンドプレート33は、表面が撥油表面として作用し、表面にてオイルがはじきやすくなる。
【0042】
上記のように構成される回転電機1の冷却機構6は、ロータ3の軸方向の端部、すなわち、エンドプレート33に撥油処理が施されることで、エンドプレート33の表面全体でオイルがはじきやすくなることから、適正に各部を冷却することができる。
【0043】
すなわち、冷却機構6は、エンドプレート33の軸方向端面33bにおいてオイルがはじきやすくなることで、この軸方向端面33bにオイルが付着することを抑制することができ、例えば、軸方向端面33bの図2中に囲み線Aで示す領域にてロータ3の回転に伴ったオイルの攪拌を抑制することができる。これにより、回転電機1は、ロータ3が回転した際に、エンドプレート33の軸方向端面33bにおけるオイルの攪拌損失を低減することができる。この結果、回転電機1は、回転効率を向上した上で、各部を適正に冷却することができる。
【0044】
また、冷却機構6は、エンドプレート33の開口部33cにおいてオイルがはじきやすくなることで、流出通路72bの内壁面や開口部33cの図2中に囲み線Bで示す領域にて流出開口72cから流出したオイルをエンドプレート33からすばやくはじき飛ばすことができ、オイルがロータ3に付着することを抑制することができ、また、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面34との間の図2中に囲み線Cで示す領域にオイルが入り込むことを抑制し、入り込むオイル量を低減することができる。冷却機構6は、例えば、流出開口72cから流出するオイルの流速が比較的に遅い状態であっても、流出通路72bの内壁面や開口部33cの撥油性によりオイルがはじき飛ばされることで、このオイルがエンドプレート33に付着したりステータ2の内周面23とロータ3の外周面34との間にオイルが侵入したりすることを抑制することができる。さらに、冷却機構6は、エンドプレート33の開口部33cと共に径方向外側端面33dにおいてオイルがはじきやすくなることで、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面34との間にオイルが入り込むことをより確実に抑制することができる。これにより、回転電機1は、ロータ3が回転した際に、エンドプレート33の軸方向端面33bにおけるオイルの攪拌損失やステータ2とロータ3との間におけるオイルの引き摺り損失を低減することができる。この結果、回転電機1は、回転効率を向上した上で、各部を適正に冷却することができる。
【0045】
さらに、冷却機構6は、エンドプレート33の対向面33a、例えば、図2中に囲み線Dで示す領域においてオイルがはじきやすくなることで、各径方向通路72aの端面31a側を流れるオイルの流速が対向面33a側を流れるオイルの流速より相対的に高くなる。これにより、回転電機1は、端面31a側を流れるオイルの流速が高くなることで、例えば、下記の数式(1)に例示するように、流速uが大きくなることで、端面31a側にてオイルによる冷却の際の熱伝導率が向上することから、ロータコア31や永久磁石32の冷却性能を向上することができる。
【0046】
【数1】

【0047】
また、回転電機1は、流出開口72cから流出したオイルがステータ2の内周面23とロータ3の外周面34との間に入り込むことが抑制されるので、オイルがロータ3の回転に対する引き摺り抵抗や攪拌抵抗として作用することによる摩擦熱等の発熱を抑制することができる。これにより、回転電機1は、オイルがロータ3の回転に対する引き摺り抵抗や攪拌抵抗として作用することによる発熱を抑制することができることから、オイル自体の温度上昇を抑制することができ、回転電機1の冷却効率が悪化することを抑制することができ、回転電機1の温度が過剰に上昇することを確実に抑制することができる。この結果、回転電機1は、回転電機1の冷却効率が悪化することを抑制することができ、回転電機1の温度が過剰に上昇することを確実に抑制することができるので、耐熱性の相対的に低い永久磁石32が高温となることを防止することができ、永久磁石32の減磁を抑制することができ、永久磁石32の磁石としての特性が低下することを抑制することができる。したがって、回転電機1は、永久磁石32の磁石としての特性が低下することを抑制することができるので、モータトルクが減少しモータ効率が悪化することを抑制することができる。
【0048】
以上で説明した実施形態に係る回転電機1によれば、内側に中空部分を形成するステータ2と、ステータ2の内側に回転軸線X1を中心として回転自在に設けられるロータ3と、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端部に設けられ、内部をオイルが流動可能であると共に、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端面にオイルが流出可能な流出開口72cを有するロータ通路72とを備え、ロータ3は、ロータ通路72が設けられた端部に、オイルをはじく表面処理が施されている。以上で説明した実施形態に係る冷却機構6によれば、回転電機1のロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端部に設けられ、内部をオイルが流動可能であると共に、ロータ3の回転軸線X1に沿った方向の端面にオイルが流出可能な流出開口72cを有するロータ通路72を備え、ロータ3は、ロータ通路72が設けられた端部に、オイルをはじく撥油処理が施されている。したがって、回転電機1、冷却機構6は、各部を適正に冷却することができる。
【0049】
[実施形態2]
図3は、実施形態2に係る回転電機のロータ通路を含む部分断面図、図4は、実施形態2に係る回転電機のロータ回転数とコイルエンド部へのオイル供給量との関係の一例を示す線図である。実施形態2に係る回転電機、冷却機構は、媒体通路が傾斜部を有する点で実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、主要な構成については適宜図1を参照する(以下で説明する実施形態も同様である。)。
【0050】
図3に示す実施形態の回転電機201は、冷却機構206を備え、冷却機構206は、媒体通路としてのロータ通路272を含んで構成される。ロータ通路272は、径方向通路72aと、傾斜部としての流出通路272bと、流出開口72cとを含んで構成される。
【0051】
流出通路272bは、径方向通路72aに対応して複数設けられる。各流出通路272bは、一方の端部がそれぞれ対応する径方向通路72aと連通する一方、他方の端部が流出開口72cにて開口する。本実施形態の流出通路272bは、回転軸線X1に沿った軸方向及び回転軸線X1と直交する径方向に対して、傾斜するように設けられる。流出通路272bは、流出開口72c側がロータ3の外側、すなわち、径方向外側に向かって傾斜している。
【0052】
上記のように構成される回転電機201、冷却機構206は、流出通路272bが径方向外側に向かって傾斜していることから、ロータ3の回転に伴って流出開口72cからオイルが流出する際に、流出開口72cにおけるオイルの流出方向が径方向外側に向かう方向となると共に、オイルに作用する遠心力が増大し流出開口72cから流出したオイルの飛距離が相対的に増加する。そして、回転電機201、冷却機構206、図4中に実線L1で例示するように、流出通路272bの内壁面や開口部33cの撥油性による作用と、径方向外側に傾斜した流出通路272bの作用とによって、例えば、コイルエンド部24に達するオイルの量が相対的に増加するので、ステータ2の内周面23とロータ3の外周面34との間にオイルが入り込むことを大幅に抑制することができると共に、コイルエンド部24をより効果的に冷却することができる。なお、図4中、点線L2は、エンドプレートに撥油処理が施されておらず流出通路が軸方向に沿っている場合、点線L3は、エンドプレートに撥油処理が施されておらず流出通路が径方向外側に向かって傾斜している場合を示している。
【0053】
以上で説明した実施形態に係る回転電機201、冷却機構206によれば、ロータ通路272は、回転軸線X1に沿った方向及び回転軸線X1と直交する方向に対して、流出開口72c側がロータ3の外側に向かって傾斜する流出通路272bを有する。したがって、回転電機201、冷却機構206は、オイルの引き摺り損失の大幅な低減と冷却性能の向上とを両立することができる。
【0054】
[実施形態3]
図5は、実施形態3に係る回転電機のロータ通路を含む部分断面図、図6は、実施形態3に係るロータコアの端面の接触角を説明する模式図、図7は、実施形態3に係るエンドプレートの対向面の接触角を説明する模式図である。実施形態3に係る回転電機、冷却機構は、所定の表面に凹凸が設けられている点で実施形態1とは異なる。
【0055】
図5に示す実施形態の回転電機301は、冷却機構306を備え、冷却機構306は、媒体通路としてのロータ通路72を含んで構成される。そして、本実施形態の回転電機301は、ロータコア31のロータ通路72に面する表面、ここでは、図5中に囲み線Eで示すロータコア31の端面31aに凹凸335が設けられる。さらに、回転電機301は、ロータコア31のロータ通路72に面する表面である端面31aと向き合い表面処理が施された表面、ここでは、図5中に囲み線Dで示すエンドプレート33の対向面33aに凹凸336が設けられる。凹凸335、336は、微細な凹凸であり、いわゆるフラクタル構造をなす。凹凸335、336は、例えば、端面31a、対向面33aに対してエッチング処理やショットブラスト処理等を行うことで設けることができる。
【0056】
ロータコア31は、図6に示すように、端面31aに凹凸335が設けられることで、端面31aにおけるオイル(媒体)との接触角θ1が相対的に小さくなる。ここでは、ロータコア31は、端面31aにおけるオイルとの接触角θ1が5°未満となるように端面31aに凹凸335が設けられる(θ1<5°)。
【0057】
ここで、端面31aとオイルとの接触角θ1は、液体側からみた固体表面、ここでは端面31aとオイルとがなす角度である。ロータコア31は、この接触角θ1が0°に近くなると端面31a上のオイルと面的に接触するような状態となりオイルが付着しやすくなることから、端面31aのオイルに対する濡れ性が相対的に増加し高い親油性、ここでは、超親油性を有することとなる。つまり、端面31aは、超親油表面として作用する。
【0058】
エンドプレート33は、図7に示すように、対向面33aに凹凸336が設けられた上で、上記で説明した撥油処理が施され、フッ素系処理剤(例えばフルオロアルキルシラン等)、フッ素系樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン等)等によって表面処理膜337が形成されることで、凹凸336におけるオイル(媒体)との接触角θ2が相対的に大きくなる。ここでは、エンドプレート33は、対向面33aにおけるオイルとの接触角θ2が130°より大きくなるように対向面33aに凹凸336が設けられる(θ2>130°)。
【0059】
ここで、対向面33aとオイルとの接触角θ2は、液体側からみた固体表面、ここでは対向面33aとオイルとがなす角度である。エンドプレート33は、この接触角θ2が180°に近くなると対向面33a上のオイルとほぼ点的に接触するような状態となりオイルがはじかれやすくなることから、対向面33aのオイルに対する濡れ性が相対的に低下し高い撥油性、ここでは、超撥油性を有することとなる。 つまり、対向面33aは、超撥油表面として作用する。
【0060】
上記のように構成される回転電機301、冷却機構306は、端面31aが超親油表面として作用することで、ロータコア31の端面31aとオイルとの接触面積が相対的に大きくなる。また、回転電機301、冷却機構306は、対向面33aが超撥油表面として作用することで、エンドプレート33の対向面33aにおいてオイルがよりはじきやすくなり、これにより、各径方向通路72aの端面31a側を流れるオイルの流速が対向面33a側を流れるオイルの流速より相対的に高くなる作用が、さらに顕著になる。
【0061】
この結果、回転電機301、冷却機構306は、例えば、上述した数式(1)に例示するように、対向面33aの超撥油性の作用により流速uがさらに大きくなり、端面31aの超親油性の作用により長さLが長くなることで、端面31a側にてオイルによる冷却の際の熱伝導率がさらに向上することから、ロータコア31や永久磁石32の冷却性能をさらに向上することができる。また、回転電機301、冷却機構306は、冷却性能が向上することから、ロータ軸通路71、ロータ通路72に供給するオイル量を相対的に低減しても十分な冷却性能を確保することができ、これにより、攪拌されたり引き摺られたりするオイルの量を低減することができ、攪拌損失や引き摺り損失を低減することができる。この結果、回転電機301は、さらに回転効率を向上することができる。
【0062】
以上で説明した実施形態に係る回転電機301、冷却機構306によれば、ロータ3のロータコア31のロータ通路72に面する表面(端面31a)、及び、ロータコア31のロータ通路72に面する表面と向き合い表面処理が施された表面(対向面33a)に凹凸335、336が設けられる。したがって、回転電機301、冷却機構306は、冷却性能をさらに向上することができる。
【0063】
なお、上述した本発明の実施形態に係る回転電機及び冷却機構は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る回転電機及び冷却機構は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0064】
以上の説明では、回転電機は、車両を駆動するための駆動装置に備えられる走行用回転電機であるものとして説明したが、これに限らない。回転電機は、車両の作業用回転電機や補機用回転電機等として適用してもよいし、車両に限らず他の装置の電動機又は発電機として適用してもよい。
【0065】
以上で説明した回転電機、冷却機構は、エンドプレートを備えず、ロータコアの軸方向端部に直接的に媒体通路が設けられ、表面処理が施される構成であってもよい。また、冷却媒体は、オイル(潤滑油)以外の液体、例えば、水等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように本発明に係る回転電機及び冷却機構は、種々の車両に搭載される回転電機及び冷却機構に適用して好適である。
【符号の説明】
【0067】
1、201、301 回転電機
2 ステータ
3 ロータ
6、206、306 冷却機構
21 ステータコア
22 ステータコイル
24 コイルエンド部
31 ロータコア
31a 端面
33 エンドプレート
33a 対向面
33b 軸方向端面
33c 開口部
33d 径方向外側端面
72、272 ロータ通路(媒体通路)
72a 径方向通路
72b 流出通路
72c 流出開口
272b 流出通路(傾斜部)
335、336 凹凸
X1 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に中空部分を形成するステータと、
前記ステータの内側に回転軸線を中心として回転自在に設けられるロータと、
前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端部に設けられ、内部を媒体が流動可能であると共に、前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端面に前記媒体が流出可能な流出開口を有する媒体通路とを備え、
前記ロータは、前記媒体通路が設けられた前記端部に、前記媒体をはじく表面処理が施されていることを特徴する、
回転電機。
【請求項2】
前記ロータは、前記回転軸線に沿った方向の端部を構成し、前記媒体通路が設けられると共に前記表面処理が施されたエンドプレートを有する、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記エンドプレートは、前記ロータのロータコアとの間に、少なくとも前記媒体通路の一部を形成する、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記媒体通路は、前記回転軸線に沿った方向及び前記回転軸線と直交する方向に対して、前記流出開口側が前記ロータの外側に向かって傾斜する傾斜部を有する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ロータのロータコアの前記媒体通路に面する表面、及び、前記ロータコアの前記媒体通路に面する表面と向き合い前記表面処理が施された表面に凹凸が設けられる、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
回転電機のロータの前記回転軸線に沿った方向の端部に設けられ、内部をオイルが流動可能であると共に、前記ロータの前記回転軸線に沿った方向の端面に前記オイルが流出可能な流出開口を有する通路を備え、
前記ロータは、前記通路が設けられた前記端部に、前記オイルをはじく撥油処理が施されていることを特徴する、
冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75244(P2012−75244A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217772(P2010−217772)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】