説明

固体の移動を推定するための方法

本発明は、3つの変数ベクトルによって定義される外乱を生成しうる媒体における固体移動体による方法であり、移動は、6つの変数ベクトルによって定義され、固体は、少なくとも3つの感度軸を有する加速度を感知する少なくとも1つのセンサと、少なくとも3つの感度軸を有する磁界を感知する少なくとも1つのセンサと、を備える。固体の移動を推定するための本発明の方法は、6つの変数の移動ベクトルと、3つの変数の外乱ベクトルからなる9つの変数ベクトル(Λ)を計算するステップ(B6)と、9つの変数ベクトルを推定されることになっている最大で5つの変数を有するベクトルに変換することができる9つの変数ベクトル(Λ)に重み付けを行うステップ(B6)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の移動の推定方法に関する。
【0002】
一般的に言えば、本発明は、空間における固体の位置を決定するための姿勢中心の分野に関する。
【0003】
姿勢中心は、加速度計および磁気計から構成され、姿勢中心を保持する固体の空間における向きを決定するために、処理を行うことに適合される。
【背景技術】
【0004】
1つのそのようなデバイスは、特に仏国特許第0204260号明細書から公知である。
【0005】
この特許に記載されたデバイスは、360°までの固体の回転角の推定値を生成し、固体が移動中の媒体から完全に独立している。
【0006】
さらに、そのような姿勢中心は、レートジャイロを用いる必要がなく、デバイスのコストおよびその全体的なサイズを削減する。
【0007】
仏国特許第0204260号明細書に記載された姿勢中心は、測定モデルにおける未知数として固体の方位付けと、姿勢中心に由来する信号の処理と、を扱う。
【0008】
固体の移動の加速度が、重力加速度に比べて高い場合には、固体の移動によって引き起こされる加速度が、重力によって引き起こされる加速度に関連付けられるため、推定される角度は、誤差を被りやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さらに、固体が移動する正にその媒体が、先行技術の姿勢中心によって考慮されていない磁気外乱を生成する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、上述の欠点を克服し、この種の姿勢中心において用いられる固体の移動を推定するための方法を提案し、使用可能なデータの推定、計算コストおよび結果の精度および堅牢性に関して、仏国特許第0204260号明細書に記載された方法に比べて向上した性能を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、3つの変数を有するベクトルによって定義された外乱を発生しやすい媒体中の固体移動体の6つの変数を有するベクトルによって定義される移動の推定方法に向けられており、上記の固体は、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの加速度センサと、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの磁界センサと、を備える。
【0012】
本発明によれば、推定方法は、6つの変数を有する上記の移動ベクトルと、3つの変数を有する上記の外乱ベクトルと、からなる9つの変数を有するベクトルを生成するステップと、9つの変数を有する上記のベクトルを推定されることになっている最大で5つの未知変数を有するベクトルに変換するように適合された9つの変数を有する上記のベクトルを重み付けするステップと、を含む。
【0013】
したがって、本発明の推定方法は、9つの変数を有するベクトルによって表される新たなパラメータの導入のおかげで、地球の磁界および重力場における固体の方位付けのみならず、移動のほか、固体が移動中の媒体で起こっている磁気外乱などの外乱によって引き起こされる加速度も考慮する。
【0014】
本出願人は、固体の移動および固体が移動中の媒体の状態に応じて、9つの変数を有するベクトルに重み付けをすることが、知ろうとするそのベクトルの少なくとも4つの変数を仮定することによって、可能であることを見出した。
【0015】
それぞれが3つの感度軸を有する加速度センサおよび磁界センサのおかげで、そのように重み付けされるベクトルの5つの未知変数を決定することが可能である。
【0016】
固体の方位付けだけでなく、媒体の加速度または外乱も決定する固体の移動のこの推定値のおかげで、このように姿勢中心を備えた固体の使用を拡張し、本発明の推定方法を実行することを可能にする。
【0017】
特に、正確かつ安定した測定が必要とされる用途において、より高速の移動を捕捉し、固体を用いることが可能である。
【0018】
出発位置に対して固体の位置を並進して推定することも同等に可能である。
【0019】
実際に、推定方法は、移動形態の表から移動形態を選択するステップを含み、重み付けステップは、選択された形態の関数として9つの変数を有するベクトルにおける既知の値と未知の変数を置換するように適合される。
【0020】
事実、所与の用途において、空間における固体の移動は、滅多に自由ではない。特に、固体が、磁気外乱を発生しやすい媒体中で移動可能である場合には、移動形態は、磁気外乱のない媒体中の移動、1次元空間における移動、平面における移動、少なくとも2つの既知の自由度を有する移動をはじめとする一連の移動形態から選択され得る。
【0021】
実際には、重み付けステップは、固体を備えたセンサの個別の重みを修正するように適合された重み付けベクトルを選択するステップを含み、方法は、少なくとも1つの関連センサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する、9つの変数を有するベクトルの少なくとも1つの変数から推定するステップを含む。
【0022】
したがって、重み付けベクトルは、感度軸のいくつかまたはすべてにおけるいくつかのセンサを無視可能にし、その結果、推定されることになっている変数のいくつかだけを決定することを可能にする。
【0023】
推定方法は、好都合なことに、重み付けベクトルを選択し、推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルの少なくとも1つの変数を推定する上記のステップを反復する少なくとも1つのステップを含み、上記の選択ステップにおいて選択される重み付けベクトルは、各反復ステップにおいて異なる。
【0024】
このように多数のパスを実行し、重み付けベクトルの形態を修正することによって、推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルの変数を交互に推定することを可能にする。
【0025】
本発明の1つの実際の実施形態において、推定方法は、加速度センサによる測定を無視するように適合された重み付けベクトルを選択するステップと、磁界センサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルの少なくとも2つの変数を推定するステップと、磁界センサによる測定を無視するように適合された重み付けベクトルを選択するステップと、加速度センサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する上記のベクトルの最大で他の3つの変数を推定するステップと、を含む。
【0026】
したがって、加速度センサによる測定を最初に無視することによって、固体の加速度に対して検知しない磁界センサを用いて固体の方位付けに相当する空間における角度を決定することを可能にする。
【0027】
一旦、これらの角度が推定されると、次に、他の変数、たとえば、加速度センサを用いて、固体の第3の角度および2つの加速度を推定することを可能にする。
【0028】
あるいは、推定方法は、磁界センサによる測定を無視するように適合された重み付けベクトルを選択するステップと、加速度センサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する上記のベクトルの少なくとも2つの変数を推定するステップと、加速度センサを無視するように適合された重み付けベクトルを選択するステップと、磁界センサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルの最大で他の3つの変数を推定するステップと、を含む。
【0029】
実際には、計算時間に関する問題を低減するために、9つの変数を有するベクトルが、3自由度を有する回転ベクトルを含み、回転ベクトルが、4つの成分に関する制約に関連付けられる4元数の4つの成分によって表される。
【0030】
4元数象徴性(quaternion symbolism)を用いることにより、固体の移動を推定するために用いられるベクトルの5つの変数を決定するために解かれることになっている式に特定の非線形特性を与える三角関数より解くことが簡単な二次関数をもたらす。
【0031】
実際には、推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する上記のベクトルの少なくとも1つの変数を推定するステップにおいて、4元数の成分に関する制約は、回転ベクトルの表示に組み込まれる。
【0032】
本発明の1つの実際の実施形態において、推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルの少なくとも1つの変数を推定するステップは、擬似ニュートン型誤差最小関数を用いる。
【0033】
本発明の第2の態様は、3つの変数を有するベクトルによって定義される外乱を発生しやすい媒体において移動可能な固体の移動を推定するためのデバイスに関し、上記の移動は、6つの変数を有するベクトルによって定義されている。
【0034】
この推定量デバイスは、上記の固体に取り付けられ、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの加速度センサと、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの磁界センサと、を含む。
【0035】
この推定量デバイスは、固体の移動を推定する本発明の方法を用いるように適合される。
【0036】
固体の移動を推定するためのデバイスは、本発明の方法に関して上述したものと類似の特徴および利点を有する。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明の過程においてより明白になるであろう。
【0038】
添付図面において、非限定実施例によって提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の方法によって推定される固体の移動のタイプは、図1を参照して最初に記載される。
【0040】
本目的は、測定デバイスを保持する移動可能な固体の方位付けおよび動特性、すなわち加速度を時間に関して再構成することである。したがって、軌跡(加速度の二重積分)もまた、推定され得る。
【0041】
移動可能な固体は、ここでは、点として扱われ、その位置Mが、図1に示されている。その方位付けは、ベクトルθによって示され、これは、軸Roの固定系(点0における静止段階における軸の初期系であってもよい)における軸Rの系の方位付けに相当する。
【0042】
さらに、任意の時間で、移動に固有の加速度が、aで示される。測定デバイスはまた、Goで示される重力によって引き起こされる加速度およびHoで示される周囲の地磁界(静止状態で測定された磁界)に対しても検知する。移動体の位置における任意の磁気外乱が、bで示される磁気の寄与に加わる。
【0043】
ここで、非限定実施例によって、軸Roの固定系の軸Zが垂直軸、したがってGoと整列される。
【0044】
ガリレオ−アインシュタインの原理によれば、Mで結果として生じる測定可能な加速度は、非重力加速度、すなわち、a−Goに比例する加速度である、
Mで結果として生じる測定可能な磁界は、Ho+bである。
【0045】
固体の移動は、固体の固有の移動に相当する6つの変数を有するベクトルによって定義される。3つの最初の変数は、回転における3つの次元、すなわち、ベクトルθによって示される方位付けに相当する。
【0046】
3つの他の変数は、軸Rの系における固体の位置に相当し、したがって、軸Rの系における座標X、Y、Zに相当する。これらの座標は、移動体の加速度ベクトルaの二重積分によって推論され得、したがって、移動の変数として選択される。
【0047】
さらに、固体が移動中である媒体を仮定すると、固体は、任意の磁気外乱bを表す3つの変数を有するベクトルによって定義され得る。
【0048】
原則として、9つの変数は、その環境における移動において観察される系を記述する。
【0049】
したがって、固体が静止状態の初期位置にあるとき、ベクトルPoは、
Po=(Go,Ho)
のように定義され得、式中、
次元3のGoは、重力によって引き起こされる加速度に相当し、
次元3のHoは、地磁気に相当し、
(M,R)=(O,Ro)であり、
ベクトルθ=0である。
【0050】
固体が移動し始めると、ベクトルpが、初期ベクトルPoに加算される。
【0051】
ベクトルpは、以下のようにp=(a,b)として定義され、式中、aおよびbは、次元3のベクトルである。
【0052】
したがって、測定デバイスによって測定された全体的な場は、ベクトルPo+pの和に相当する。
【0053】
したがって、未知数がベクトルθ、固体の加速度aおよび磁気外乱bの角度である固体の移動を定義する9つの変数を有するベクトルが得られる。
【0054】
移動を推定するための本発明のデバイスの異なる実施形態は、図2A、図2Bおよび図2Cを参照して次に記載される。
【0055】
推定量デバイスは、磁気計および加速度計のみからなる。このデバイスは、その移動が推定されることになっている固体に取り付けられる。
【0056】
図2Aに示されているように、移動推定量デバイスは、少なくとも3つの感度軸V1、V2、V3を有する少なくとも1つの加速度センサCaと、3つの感度軸V4、V5、V6を有する少なくとも1つの磁界センサCmと、を含まなければならない。
【0057】
別の実施形態において、図2Bに示されているように、各センサC’aおよびC’mは、4つの個別の感度軸を有することができ、その結果、加速度センサC’aは、感度軸V’1、V’2、V’3、V’4を有し、磁界センサC’mは、感度軸V’5、V’6、V’7、V’8を有する。
【0058】
同様に、図2Cに示されているような態様において測定の信頼性を向上させるために、推定量デバイスは、それぞれが、3つの感度軸V”1、V”2、V”3、V”4、V”5、V”5、V”6を有する2つの加速度センサC”aと、それぞれが、3つの感度軸V”7、V”8、V”9、V”10、V”11およびV”12を有する2つの磁界センサC”mと、を含むことができる。
【0059】
実際には、本発明の推定量デバイスは、デバイスを備える固体の移動において推定されることになっている未知のパラメータと少なくとも同数の感度軸を有していなければならない。
【0060】
さらに、推定されることになっている変数のタイプに応じて、いくつかのセンサが不足していてはならない。特に、水平平面における投影が非ゼロである磁気計がない場合には、水平方位角を正確に推定することは可能ではない。
【0061】
さらに、異なる方向にある感度軸が多ければ多いほど、信号対雑音比が増大されるため、パラメータの推定値がよりよくなる。しかし、推定デバイスは、用いられる加速度センサまたは磁界センサの数に直接的に決まるコストを有する。
【0062】
実際には、測定軸V1、V2、V3およびV4、V5、V6の2つの系は、同一の点で一致する。明確にするために、図2A、図2B、図2Cにおいて空間的に分離される。
【0063】
実際には、同一の点で、センサCaおよびCmを重ねることは可能ではないが、マイクロセンサが用いられる場合には、持ち込まれる誤差は小さい。
【0064】
3つの整列されていない感度軸は、加速度計センサまたは磁気計センサの各タイプの場合には十分である。この数を超えると、信号処理において公知であるように、信号対雑音比は増大され、動作範囲にわたってよりよく分散される。
【0065】
固体の移動を推定するための本発明の方法は、図3を参照して次に記載される。
【0066】
方法は、まず、軸Roの基本系を定義するステップB1を含む。この基本系Roは、緯度および経度などの地球物理学的座標によって、または相対的に初期の時間t=0における固体の位置であると考えることによって定義される軸の固定系とされ得る。
【0067】
したがって、軸Roの可動系の位置は、t=0でセンサV(t)によって提供される初期測定値に相当する。
【0068】
上述したように、この初期位置には、地磁界Hoおよび重力加速度Goが割り当てられる。
【0069】
初期化ステップB2はまた、回転ベクトルθおよび外乱ベクトルpの時間T=0における初期値を定義するために実行される。
【0070】
測定ステップB3は次に、測定値V(t)を生成するために、各時間で実行される。
【0071】
この測定値の処理の一般的な原理については、次に記載される。
【0072】
測定値V(t)は、センサの軸の系における完全な物理的な場Po+pの表示である。軸Roの固定系における移動および磁気外乱によって引き起こされる9つの未知の変数を表現するために、物理的な場Po+p(軸Roの系において表現される)から測定値を得るための必要な連続作業は、以下の通りである:
軸の可動系における軸の固定形の回転θの表現
軸の可動系への場Po+pの投影
軸の可動系に取り付けられた軸θjの既知の向けられた検知系への結果の投影(この作業は、その軸が軸の選択された可動系の軸と一致するセンサの場合には省略される)。
【0073】
したがって、場の関数として理論的測定(または測定モデル)に関する表現は、形態
mod(j)=projθj[Rθ(Po+p)]
である。
【0074】
逆向きの関数は、一般的な場合において明白ではなく、誤差最小法は、評価ステップB4において用いられ、最小化される基準は
【数1】

であり、式中、新たな変数αは、感度軸jに沿ったセンサの寄与の重み付けを表し、Na+Nbは、磁界センサおよび加速度センサの感度軸の総数に相当する。
【0075】
ベクトルα=(α,α,...α,...αNa+Nb)は、次元Na+Nbであり、種々の感度軸によるセンサからの測定値を重み付けするために用いられる。傾斜補償コンパスの場合には、たとえば、加速度計の2つの軸における測定値を用いることにより、垂直軸に対する傾斜を与え、磁気計の4つの軸に沿った測定値を用いることにより、傾斜平面における角度を与える。
【0076】
重み付けベクトルαは、使用者によって課せられ得るか、または種々のセンサの感度軸による測定値に割り当てられる信用基準に応じて適応して更新され得る:
α=1:信頼
α=0:感度軸jにおいてセンサによって与えられた測定値を無効にする
測定情報に対するより大きな寄与またはより小さな寄与は、これらの2つの極値の間で表現され得る。
【0077】
たとえば、センサが他より雑音によって大きな影響を受ける場合には、分散に対して反比例する重み付け係数が、選択される。
【0078】
回転関数θの定式化は、特定の系(オイラー、カルダンなど)において行列成分(三角関数)によって、または以下に記載されるような4元数(二次関数))によって表現され得る。
【0079】
すべての場合において、アフィン測定モデルが、未知数pの関数として表現される。
mod(j)=A(θ)×p+B(θ)
式中、A(θ)およびB(θ)は、ベクトルθの関数である。
【0080】
処理は、基準fが最小値であるように、(θ,p)を最適化しなければならない。したがって、計算ステップB5は、関数を解くことを目的としている。
【数2】

pにおける解は、線形であり、pにおける最小二乗解は、明白な解である。
【0081】
擬似ニュートン型誤差最小関数が用いられることが好ましい。
【0082】
計算を簡単にするために、3つの自由度を有する回転ベクトルは、それらの4つの成分における制約に関連する4元数の4つの成分によって表現され得る。
【0083】
事実、回転ベクトルに関する標準的な数学的表現は、角度の行列の数学的表現である。最終的な表現は、多数の三角関数を含み、このことは、特定の非線形特性を基準に与え、計算時間に関する問題を引き起こす。
【0084】
二次関数を生じる4元数象徴性を用いることが好ましい。方位付けの3自由度が次に、4つの成分によって表現される:
q=(q
式中、
=cos(x
=sin(x)u
=sin(x)u
=sin(x)u
であり、uは、回転軸の座標である。これらの4つの成分は、回転を表す場合には、以下の制約に従う:
【数3】

【0085】
さらに、計算ステップB5において、制約付き最適化を用いることを回避するために、「統合的な制約」が回転ベクトルにおいて:
以下の可能な場合のすべてを考慮するか:
【数4】

または球座標において回転軸を表現することによって:
【数5】

用いられ得る。
【0086】
本発明によれば、上述したように最小化されることになっている基準fを容易に解くためには、重み付けステップB6は、9つの変数を有するベクトルに重み付けを行い、9つの変数を有するベクトルを推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトルに変換する。
【0087】
この重み付けベクトルは、特に、形態選択ステップB7における移動形態表から移動形態を選択することに左右される。
【0088】
形態を選択するこのステップB7は、恐らく、少なくともデバイスの使用の標準的な場合において、自動的に実行される。
【0089】
9つの変数は、以下のように表される:
(θ=θθθ,p=a
および系の変数のベクトル
【数6】

式中、
表記Xは、決定されることになっている未知変数を表し、
表記「−」は、問題がこの変数に左右されないことを示し(これは、いくつかのセンサが無視される場合である)、
表記
【数7】

は、変数に代入される既知値を示す。
【0090】
磁気外乱がないとき、または磁気外乱が既知であるときに、このベクトルΛを重み付けする特定の場合については、次に記載される。
【0091】
この状況は、移動体が侵入してくる未知の強磁性素材によって乱される地磁気環境において移動していないすべての用途をグループ化する。
【0092】
これは、特にスタジアムまたは室内において、鋼設備から少なくとも1mでスポーツ運動を行っている人に当てはまる。
【0093】
この用途はまた、移動体が、たとえば、その物理特性が既知である強磁性物体(携帯電話におけるセンサ、バッテリ、自動車の車体、すべての種類の車両など)にセンサが取り付けられている場合に、磁気外乱が予想されうる状況にある場合にも直面する。
【0094】
移動の形態は、形態を選択するステップB7において、予め既知であってもよく、または予想されてもよい。
【0095】
ゼロまたは既知である磁気外乱に関連性がある変数、すなわち6つの未知変数は、固体の移動ベクトルに相当する。
【0096】
固体のこれらの方位付けおよび/または加速度変数の1つを知ることが必要である。
【0097】
形態を選択するステップB7はまた、移動のタイプの関数として、予めこれらの変数の1つを決定する。
【0098】
たとえば、センサが、人の手足またはロボットアームなどの構造に配置される場合には、人の関節(肘、膝、足首、手首)の場合またはロボットアーム用の回転モータ(1つまたは2つの接合モータ)の場合と同様に、角度の自由度は、厳密に3つ未満であることが多い。
【0099】
同様に、車輪付き車両などの懸架系の場合には、良好な接着条件下で、ばねは、前後左右の揺れにおける移動、すなわち、2つの回転角による移動を可能にし、向きに相当する第3の移動は、たとえば、GPSなどの別の系によって与えられ得る。
【0100】
同様に、道路上の車両または列車に関して当てはまるように、特に、並進移動が平面において加速され、その場合には平面に対して垂直な方向における加速度がゼロであるのであれば、加速度レベルにおいて、変数の1つを予め知ることが可能である。
【0101】
したがって、一方では重み付けステップB6は、9つの変数を有するベクトルを重み付けして、変数をゼロまたは既知の一定数と見なして、上述した重み付けベクトルαを重み付けして、1つまたは複数のセンサを無視することによって、最小化するように基準fの計算を容易にする。
【0102】
たとえば、重み付けベクトルαが選択されて、加速度センサによる測定値を無視するように適合される。
【数8】

【0103】
磁気外乱bがない場合または磁気外乱が既知である場合には、3つの感度軸を有する磁界センサは、2次元において固体の方位付けを決定することができる。さらに、これらの磁界センサは、加速度に対して検知しないことから、その加速度とは独立に、固体の方位付けを決定することが可能である。
【0104】
感度を増大するために、軸の基準系は好ましくは、磁界と共直線である軸Zを有するように選択される。
【0105】
9つの変数を有するこのように重み付けされたベクトルは、以下のように書かれる:
【数9】

【0106】
上述したように、基準を評価するステップB4および計算ステップB5は、重み付けベクトルαおよび重み付けされたベクトルΛを用いて、固体の2つの方向における方位付けに相当する角度θおよびθの値を推定するために実行される。
【0107】
したがって、反復ステップは、重み付けベクトルαを修正して、重み付けステップB6を反復する。
【0108】
したがって、重み付けステップB6において、磁界センサによる測定値を無視するように適合される重み付けベクトルαが選択される。
【数10】

【0109】
これと平行して、9つの変数を有する重み付けされたベクトルは、以下のように書かれる:
【数11】

式中、方位付け角度θおよびθは、予め計算された値によって推定され、加速度に相当する未知の変数aは、選択された形態の関数として決定される既知値によって置換される。
【0110】
したがって、誤差基準を評価するステップ(B4)および計算ステップ(B5)を反復することによって、加速度aおよびaを決定することが可能である。
【0111】
したがって、前の実施例において、磁界センサによって与えられた測定値は、固体の方位付けθおよびθに関連する2つの状態を決定する。第2の段階において、加速度センサによって与えられた測定値は、3つの他の変数、たとえば、方位付けθに関連する1つの変数および固体の加速度aおよびaに関連する2つの変数を推定するために用いられる。
【0112】
当然のことながら、固体の移動の形態の関数として、第3の方位付けパラメータθの値が、容易に推定され得るか、またはGPSなどの別の測定システムによって与えられる場合には、加速度センサによって与えられた測定値から3つの加速度変数a、a、aを推定することは可能である。
【0113】
当然のことながら、特に媒体によって生成される磁気外乱が未知である場合には、移動推定方法は、異なる移動形態と共に用いられ得る。
【0114】
推定問題を解決するために、9つの変数を有するベクトルは、最大で5つの未知変数のみを含むように重み付けされなければならない。
【0115】
磁気外乱に関連している3つの変数が未知である場合には、固体の移動に関して少なくとも4既知自由度を有することが必要である。
【0116】
これは、特に、2つの回転軸に関する歩行者の頭部の移動に関して当てはまる。このタイプの移動に関して、移動の形態は、加速度が本質的にゼロと考える。
【0117】
同様に、固体が平坦な平面において移動中である場合に、平面における移動の向きに相当する1つのみの回転角と、平面の2つの軸におけるその平面中の移動体の移動の2つの未知の加速度と、がある。
【0118】
平面における任意の磁気外乱はまた、移動推定方法によって決定され得る。
【0119】
実際に、解像モードは、以上に記載されるものと同一であり、磁界センサによって行われる測定と加速度センサによって行われる測定との間の数学的表現のみが交換される。
【0120】
前述の実施例において、形態を選択するステップB7において、磁気外乱および固体の方位付けまたは加速度の一定のパラメータを移動の形態の関数として既知の態様で決定することが可能であると見なされた。
【0121】
デバイスは同等に、既知の移動形態を自動的に確立する動作の一定のモードに関連付けようとすることができる。
【0122】
したがって、平面における固体の移動に相当する動作の「自動車」モードのパラメータ、磁気外乱を引き起こさない固体の平面における移動に相当する「バイク」モードの変数または加速度が本質的にゼロである「頭部移動」モードの変数を設定することが可能である。
【0123】
実際には、推定されることになっている9つの未知の変数を有するベクトルの少なくとも4つの変数を決定するための形態の選択は、動的で、特に磁界の係数の監視に左右されうる。
【0124】
したがって、形態を選択するステップB7において、磁界の係数の自動監視は、移動中の固体が備えているセンサに影響を及ぼす磁気外乱を生成する強磁性物体の存在などの磁気外乱源の存在を連続的に考慮するために用いられ得る。
【0125】
したがって、実際の測定値から計算される磁界のノルムと予測されるノルムとの間の差が、監視される。
【0126】
差が、10%程度大きすぎるとすぐに、推定値の信頼を図る基準が、比例して減じられる。
【0127】
同様に、形態を選択するステップB7は、測定された加速度場の係数の自動監視を含みうる。
【0128】
したがって、差a−Goが10%Goより大きくなったときには、加速度はもはや無視されるか、または定数と見なされ得る。
【0129】
当然のことながら、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではない。
【0130】
特に、測定デバイスは、3つの感度軸を有するセンサまたはそれぞれが3軸に配置される1つの感度軸のみを有する3つのセンサを置換可能に含みうる。
【0131】
さらに、重み付けベクトルαは、値0と1との間の重み付け係数を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の移動推定方法によって推定され得る固体の移動を示す図である。
【図2A】本発明の実施形態に従う固体の移動を推定するためのデバイスの線図である。
【図2B】本発明の実施形態に従う固体の移動を推定するためのデバイスの線図である。
【図2C】本発明の実施形態に従う固体の移動を推定するためのデバイスの線図である。
【図3】固体の移動を推定するための本発明の方法を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの変数(b)を有するベクトルによって定義された外乱を発生しやすい媒体中の固体移動体の6つの変数(θ、a)を有するベクトルによって定義される移動の推定方法であって、前記固体は、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの加速度センサ(Ca)と、少なくとも3つの感度軸を有する少なくとも1つの磁界センサ(Cm)と、を備え、前記方法が、6つの変数を有する前記移動ベクトルと、3つの変数を有する前記外乱ベクトルと、からなる9つの変数を有するベクトル(Λ)を生成するステップ(B6)と、9つの変数を有する前記ベクトルを推定されることになっている最大で5つの未知変数を有するベクトルに変換するように適合された9つの変数を有する前記ベクトル(Λ)を重み付けするステップ(B6)と、を含むことを特徴とする、推定方法。
【請求項2】
移動形態の表から移動形態を選択するステップ(B7)を含み、重み付けステップ(B6)が、前記選択された形態の関数として9つの変数を有するベクトル(Λ)における既知の値と未知の変数を置換するように適合されることを特徴とする、請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
前記固体が、磁気外乱を発生しやすい媒体中で移動可能であり、前記移動形態は、磁気外乱のない媒体中の移動、1次元空間における移動、平面における移動、少なくとも2つの既知の自由度を有する移動をはじめとする一連の移動形態から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の推定方法。
【請求項4】
重み付けステップ(B6)が、固体を備えた前記センサの個別の重みを修正するように適合された重み付けベクトル(α)を選択するステップを含み、前記方法は、少なくとも1つのセンサによる測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の少なくとも1つの変数から推定するステップ(B4、B5)を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項5】
重み付けベクトル(α)を選択する前記ステップ(B6)と、推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトル(Λ)の少なくとも1つの変数を推定する前記ステップを(B4、B5)と、を反復する少なくとも1つのステップを含み、前記選択ステップにおいて選択される重み付けベクトル(α)は、各反復ステップにおいて異なることを特徴とする、請求項4に記載の推定方法。
【請求項6】
加速度センサ(Ca)を無視するように適合された重み付けベクトル(α)を選択するステップ(B6)と、磁界センサ(Cm)による測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有するベクトル(Λ)の少なくとも2つの変数(θ、θ)を推定するステップ(B4、B5)と、磁界センサ(Cm)による測定を無視するように適合された重み付けベクトル(α)を選択するステップ(B6)と、加速度センサ(Ca)による測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の最大で他の3つの変数(θ、a、a)を推定するステップ(B4、B5)と、を含むことを特徴とする、請求項4または5のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項7】
磁界センサ(Cm)による測定を無視するように適合された重み付けベクトル(α)を選択するステップ(B6)と、加速度センサ(Ca)による測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の少なくとも2つの変数を推定するステップ(B4、B5)と、加速度センサ(Ca)を無視するように適合された重み付けベクトル(α)を選択するステップ(B6)と、磁界センサ(Cm)による測定値から推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の最大で他の3つの変数を推定するステップ(B4、B5)と、を含むことを特徴とする、請求項4または5のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項8】
9つの変数を有する前記ベクトル(Λ)が、4つの成分(q、q、q、q)に関する制約に関連付けられる4元数(q)の4つの成分(q、q、q、q)によって表される3自由度を有する回転ベクトルθを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項9】
推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の少なくとも1つの変数を推定するステップ(B4、B5)において、4元数(α)の成分に関する前記制約は、回転ベクトルθの表示に組み込まれることを特徴とする、請求項8に記載の推定方法。
【請求項10】
推定されることになっている最大で5つの未知の変数を有する前記ベクトル(Λ)の少なくとも1つの変数を推定するステップ(B5)において、擬似ニュートン型誤差最小関数が用いられることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の推定方法。
【請求項11】
3つの変数を有するベクトル(b)によって定義される外乱を発生しやすい媒体において移動可能な固体の移動を推定するためのデバイスであって、前記移動は、6つの変数を有するベクトル(θ、a)によって定義され、前記デバイスは、前記固体に取り付けられ、少なくとも3つの感度軸(V1、V2、V3)を有する少なくとも1つの加速度センサ(Ca)と、少なくとも3つの感度軸(V4、V5、V6)を有する少なくとも1つの磁界センサ(Cm)と、を含み、固体の移動を推定する請求項1から10のいずれか一項に記載の推定方法を用いるように適合されることを特徴とする、デバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520969(P2009−520969A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546522(P2008−546522)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002831
【国際公開番号】WO2007/077346
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(596048569)コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク (53)
【出願人】(508125874)
【出願人】(508125885)ユニベルシテ・ジヨセフ・フリエ (2)
【Fターム(参考)】