説明

固体アンモニア貯蔵システムにおいて連結されている熱伝導構造体

アンモニアを可逆的に脱着及び吸着又は吸収することが可能なアンモニア飽和材料を含む物体からなる1つ以上のユニットで構成される材料圧密ブロックであって、前記アンモニア飽和材料が、−70℃〜250℃で該アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも約5倍の熱伝導率を有する可撓性材料で作製されたガス透過性エンクロージャーによって囲まれている材料圧密ブロック、並びにそれを製造する方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過性の可撓性熱伝導材料によって囲まれているアンモニア飽和材料を含む物体からなる1つ以上のユニットで構成される材料圧密ブロック、及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、多くの用途で広範に用いられている化学物質である。特定の用途としては、アンモニアを、燃焼プロセスからの排出ガス中のNOの選択触媒還元(SCR)の還元剤として用いること、又はアンモニアを、例えば燃料電池に関するようなエネルギー発生プロセスにおける燃料として用いることが挙げられる。
【0003】
多くの用途の場合、特に自動車用途では、アンモニアをベッセル内に加圧液体の形態で貯蔵することはあまりに危険である。尿素は、アンモニアの機動性のある運搬ための、安全ではあるが間接的で非実用的な方法であり、この理由は、その方法が熱分解及び加水分解((NHCO+HO→2NH+CO)を伴うプロセスによって尿素をアンモニアに変えることを必要とするためである。
【0004】
固体への吸着又は吸収を伴う貯蔵方法は、無水液体アンモニアの安全上の問題及び出発材料の分解を避けることができる。
【0005】
金属アンミン塩は、アンモニア吸収・脱着材料であり、アンモニアの固体貯蔵媒体として用いることができ(例えば特許文献1を参照)、これは更に、前述したようにNOの排出を削減するために選択触媒還元の還元剤として用いることができる。
【0006】
アンモニア貯蔵材料からのアンモニアの放出は、熱の供給を必要とする吸熱プロセスである。関連する問題は、貯蔵材料及び特にアンモニア枯渇(depleted)貯蔵材料が概して低い熱伝導率を有することであり、その材料からアンモニアが枯渇するときに孔(porosities)が形成される可能性があり、これは熱伝導を更に妨げる。熱伝導が低下することの影響は、加熱源をより高い温度まで加熱しなければならず、システムの応答時間がより長くなることである。
【0007】
アンモニアがアンモニア貯蔵材料から枯渇すると変化する材料特性から別の問題が生じる。アンモニアは、その材料の構造の本質的部分であるため、たいていのアンモニア吸収固体は枯渇時に全体的な寸法が収縮する。材料は、最初に容器を完全に満たしていたとしても、脱ガス後には容器の壁と接触しなくなる。容器の壁と貯蔵材料との間の間隙は、断熱層として作用し、容器が外側から加熱される場合に熱が貯蔵材料内に運ばれるのを妨げる。移動及び振動する車両に搭載されている容器内に緩く収容されている大きな材料ブロックを有することも望ましくなく、この理由は、これによってシステムの機械的な安定性が損なわれる可能性があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/012903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこれらの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア飽和材料を含む物体からなる1つ以上のユニットで構成される材料圧密ブロックであって、前記アンモニア飽和材料が、−70℃〜250℃で該アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料によって囲まれている、材料圧密ブロックに関する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、前記材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア飽和材料を含む前記物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して(wrapping)、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットを、少なくとも約5MPaの外圧によって圧縮することであって、任意に、前記1つ以上のユニットを、1つ又は2つの開放端と任意に1つ以上の取り外し可能な壁とを有する容器又は型に入れ、かつ任意にプレートを介して、前記外圧を前記開放端を通じて一軸に加えることと
を含む、方法に関する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、前記材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア枯渇材料を含む物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットが容器内で固定されるように、前記ユニットを前記容器に充填することと、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な前記アンモニア枯渇材料をアンモニアで飽和させることと
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ガス透過性の可撓性熱伝導材料のエンクロージャーによって囲まれており、このようにして貯蔵材料収容ユニット又はパッケージを形成する容器内のアンモニア貯蔵材料の各部分を示す図であり、エンクロージャーは、閉曲面(closed surfaces)の連結された構造体(connected structure)を形成している。
【図2】ガス透過性の可撓性熱伝導材料の1つのエンクロージャーによって囲まれている、容器内のアンモニア貯蔵材料を示す図であり、エンクロージャーは、アンモニア貯蔵材料に加えて、第2の貯蔵材料収容ユニットを包囲しており、エンクロージャーは、閉曲面の完全に連結された構造体を形成しない。
【図3】外力又は外圧を用いて図1の構造体を形成する方法を示す図である。
【図4】容器内部の材料の飽和を用いて図1の構造体を形成する方法を示す図である。
【図5】ガス透過性の熱伝導可撓性箔内に包装されるアンモニア貯蔵材料パッケージの生産ラインを概略的に示す図である。
【図6】液体アンモニア/気体アンモニアの相境界及びSr(NHClの平衡圧の温度/圧力曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、1つ以上のエンクロージャーの内部にアンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア貯蔵材料を包囲することによって前述の問題を解決する。エンクロージャーは、ガス輸送に関しては透過性であるが貯蔵材料に関しては透過性ではない熱伝導材料からなるか又は熱伝導材料を含む。エンクロージャーは、エンクロージャー表面と平行に熱を伝達する構造体として働く。エンクロージャーは、詰め込まれるか又は圧密されて、隣接するエンクロージャー間の空隙若しくは隙間をないままとするか又は実質的になくす。このように、エンクロージャーは、大きな面積を介して隣り合うエンクロージャーに連結され、隣り合うエンクロージャーとの間に熱流抵抗をほとんど与えない。実際には、最大限の熱伝達性能を有する完全に連結された閉曲面のセットからなる熱伝導構造体が得られる。
【0015】
したがって、一態様では、本発明は、アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア飽和材料を含む物体からなる1つ以上のユニットで構成される材料圧密ブロックであって、前記アンモニア飽和材料が、−70℃〜250℃で、すなわち−70℃〜250℃の範囲全体にわたって該アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料によって囲まれている、材料圧密ブロックに関する。
【0016】
「材料圧密ブロック」とは、本明細書中で用いる場合、圧密又は圧縮されている円筒体、立方体、切り石(ashlar)、ピラミッド等の任意の所望の形状又は完全に不規則な形状でもあるブロックの全体的な外観を有する材料塊を意味する。ブロックは、1つ以上のユニット(又は「パッケージ」)、通常は2個以上のユニット(例えば少なくとも約2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、50個又は100個のユニット)からなり、これらは、各ユニットがエンクロージャー又は「包装」材料の閉曲面に囲まれているために個々に特定することができる。エンクロージャー内の材料は、アンモニア飽和状態でアンモニアを吸着又は吸収及び脱着することが可能な1つ以上の材料を含む。
【0017】
したがって、アンモニアを吸着又は吸収することが可能な材料(「アンモニア貯蔵材料」)は、ブロック内で包囲された複数の区画に物理的に分けられる。ブロックは圧密又は圧縮されているため、各エンクロージャーの大部分は隣り合うエンクロージャーと接触している。パッケージのエンクロージャー間の空隙又は隙間、すなわちエンクロージャー間の接触面は最小限まで低減され、すなわち、空隙は、材料ブロックの体積の約15体積%以下、10体積%以下、好ましくは約5体積%未満、例えば2体積%又は1体積%未満を占める。接触表面積は熱伝達領域として働き、エンクロージャーの厚さがエンクロージャーのサイズと比べて小さい限り、熱接触抵抗はなくなる。その結果、エンクロージャーは、ブロックの任意の2つの部分間の熱伝達構造体として働く完全に相互連結された閉曲面のセットを形成する。
【0018】
圧密又は圧縮の結果である隣り合うエンクロージャー間の大きい接触面積は、アンモニアの脱着又は脱気時のアンモニア貯蔵材料の機械的変形に対して強固である構造体又はブロック全体の機械的な安定性に更につながる。
【0019】
ブロック内に2個以上のユニットが存在する場合、上記で規定したように全てのユニットを囲む熱伝導性でガス透過性の可撓性材料からなる外側エンクロージャーがあってもよい。2個以上のエンクロージャーは、同じであるか又は異なる熱伝導材料を含むことができ、同じであるか又は異なるアンモニア貯蔵材料を包囲することができる。例えば、2個以上のユニットでは、Sr(NHClをアルミニウム製のエンクロージャー内に収容することができ、Ca(NHClをアルミニウム合金製のエンクロージャー内に収容することができる。
【0020】
ユニット又はパッケージの数、したがってエンクロージャーの数、並びにユニット又はパッケージのサイズ及び形状、したがってエンクロージャーのサイズ及び形状、並びにエンクロージャーの材料は、1つの特定の圧密ブロック内であっても大きく変わる場合がある。ブロックは圧密又は圧縮されているため、ユニット及びエンクロージャーの結果として生じる最終形状は一様ではないが、圧縮前の最初のパッケージ形状及びパッケージの正確な位置に応じて確率的に変わることになる。しかし、アンモニア貯蔵材料対エンクロージャー材料の比はパッケージスケールで明確に規定されているため、特に複数のパッケージの出発サイズが同程度である場合に統計的変動は小さくなる。したがって、パッケージサイズよりも大きい長さスケールで、組成及び熱挙動の平均値は明確に規定される。したがって、後述するような製造プロセスにおいて材料の位置をきめ細かく制御する必要はない。
【0021】
出発ユニット又は出発パッケージの典型的な寸法は、限定されるわけではないが、直径が約1cm〜約10cm、約10cm〜約30cmの直径を有する容器又はカートリッジにおける使用には好ましくは約5cm〜約10cmであり、直径が10cmよりも小さい容器又はカートリッジにおける使用には約2cm〜約6cmである。
【0022】
通常は或る種の箔又はフィルムである、アンモニア貯蔵材料を含む物体を囲む可撓性材料は、ガス透過性であるが、実質的に防塵性である(すなわちアンモニア貯蔵材料に対して実質的に不透過性である)。ガス透過性は、アンモニア貯蔵材料が脱着又は脱ガスされるときに該アンモニア貯蔵材料からのガス通過を確実にするために必要である。防塵性は、熱接触抵抗の大幅な上昇及び最終的なブロック構造体の機械的強度の低下をもたらしかねない、製造プロセス中にアンモニア貯蔵材料がパッケージ間の最初の空隙及び隙間やパッケージと任意の容器の壁(存在する場合)との間の最初の空隙及び隙間に入ることを防止する。さらに、処理中のアンモニア貯蔵材料及びアンモニアの損失が低減される。
【0023】
必要なガス透過性及び防塵性は、多孔質の箔若しくはフィルムを用いることによって、パッケージを形成する前に箔若しくはフィルムを穿孔することによって、圧縮手順中にガス透過性になる、例えば多孔質になるか若しくは穿孔される箔若しくはフィルムを用いることによって、又は単にパッケージを非気密に閉鎖することによって達成することができる。例えば、パッケージを形成するためにアンモニア貯蔵材料の周りに重ねて単に巻き付けられる標準的な非透過性箔は、通常、パッケージからアンモニアガスを輸送するためにパッケージのエンクロージャーに十分な漏出口(leak)を有するが、粉末は逃がさない。ガス透過性とは、アンモニアガスを、前述した機構のいずれか又は同じ性能につながる任意の他の好適な機構によってパッケージ外に輸送することができることを意味する。
【0024】
箔又はフィルムの厚さは、ユニット又はパッケージ全体の寸法に比べて小さい限りにおいては、重要ではない。概して、厚さは、約1μm〜約100μm、好ましくは約10μm〜約50μmで変えることができる。
【0025】
可撓性でガス透過性にすることができ、かつ−70℃〜250℃でアンモニア飽和貯蔵材料の熱伝導率の少なくとも約5倍、好ましくは約10倍、またさらには約20倍、約50倍又は約100倍の熱伝導率を有する材料で作製される任意のエンクロージャーを本発明において用いることができる。例示的な材料は、金属、合金、グラファイト、複合材料、例えば熱伝導性であるように改質されているプラスチック、熱伝導性であるように改質されているゴム及びそれらの任意の混合物であるか、又はこれらを含む。同様に意図されるのは、上記で規定したような熱伝導材料の複合材、また熱伝導材料に関して全体的な熱伝導率が上記で規定したようなものである限りは、より低い熱伝導率を有する材料である。好ましくは、この材料は、良好な機械的強度を有し、アンモニアに対して不活性である。目下特に好ましい材料はアルミニウム及びアルミニウム合金である。
【0026】
例えば、アルミニウムの熱伝導率は約240W/mKであり、アルミニウム合金の熱伝導率は幾分小さい。一般に、多くの金属は同程度の大きさの熱伝導率を有する。
【0027】
対照的に、金属アンミン塩で作製される貯蔵材料の熱伝導率は約1W/mKの大きさである。
【0028】
可撓性材料で作製される熱伝導性のガス透過性エンクロージャーは、通常、圧密ブロックの質量の少なくとも約0.1質量%、例えば約2質量%、約5質量%、約20質量%、及び約20質量%以下を構成する。
【0029】
圧密ブロックが容器内に収容されている場合、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料は、通常、容器体積の少なくとも約0.1体積%、また約10体積%以下を構成する。
【0030】
エンクロージャーの数、エンクロージャーのサイズ及び形状、並びにエンクロージャーの熱伝導率及び厚さは全て、圧密ブロックの全体的な熱性能に影響を与える。同じ量及びタイプのエンクロージャー材料及びアンモニア貯蔵材料を有するが、異なる数のエンクロージャーを有する2つのブロックの場合、エンクロージャーのサイズ及び表面積は当然ながら異なる。ユニット及びエンクロージャーの数が少ないほど、ユニット及びエンクロージャーのサイズは大きくなり、かつエンクロージャー表面と熱伝導性に乏しいアンモニア貯蔵材料との間の平均距離は大きくなる。特定の用途の場合、前述したパラメーターは、通常、所望の全体的な熱伝導率及び熱応答時間を与えるように最適化される。
【0031】
可撓性材料で作製される上述の熱伝導性のガス透過性エンクロージャーは、アンモニアを可逆的に脱着及び吸着又は吸収することが可能なアンモニア飽和材料を含む物体(「アンモニア貯蔵材料」)のエンクロージャーとして働く。
【0032】
アンモニアを可逆的に脱着及び吸着することが可能な材料の例は、アンモニア飽和酸処理炭素及びゼオライトである。
【0033】
アンモニアを可逆的に脱着及び吸収することが可能な材料の例は、金属アンミン錯塩であり、好ましくは金属アンミン錯塩から選択されるか又は金属アンミン錯塩を含む。好ましい金属アンミン錯塩は、式M(NH(式中、Mは、Li、Na、K若しくはCsのようなアルカリ金属、Mg、Ca、Sr若しくはBaのようなアルカリ土類金属、及び/又はV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu若しくはZnのような遷移金属、又はNaAl、KAl、KZn、CsCu若しくはKFeのようなそれらの組合せから選択される1種以上のカチオンであり、Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、硫酸イオン、モリブデン酸イオン及びリン酸イオンから選択される1種以上のアニオンであり、aは、塩1分子あたりのカチオンの数であり、zは、塩1分子あたりのアニオンの数であり、nは、2〜12、好ましくは6〜8の配位数である)を有する。
【0034】
Mg(NHCl、Ca(NHCl、Mn(NHCl及びSr(NHCl及びそれらの任意の混合物から選択されるか又はこれらを含む金属アンミン塩が特に好ましい。
【0035】
金属アンミン錯塩は、例えば容器若しくは回転ドラム内におけるアンモニア雰囲気中で未処理(plain)出発塩を飽和させるか、又は未処理の出発塩を液体アンモニアで処理すること等の当業者に既知の種々の方法によって、未処理のアンモニア無含有出発塩から形成される。
【0036】
本発明の文脈では、「アンモニア飽和」とは、アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な材料であって、アンモニアによって占めることができる該材料中の部位のほとんど又は時として実質的に全てがアンモニアによって占められる材料を意味する。多くの場合、化学量論的に完全な飽和は達成するのが困難であるか又は不可能であり、したがって、「アンモニア飽和」という用語は、実際に合理的に達成することができるが、化学量論的な完全飽和に相当しない高度の飽和、すなわち、理論上の完全飽和の少なくとも約80%又は85%、より好ましくは少なくとも約90%又は95%、例えば少なくとも約97%若しくは98%又は更には99%の飽和度を含む。
【0037】
アンモニア飽和材料は、上述したアンモニア飽和金属アンミン塩の1種以上からなる場合、アンモニア飽和金属アンミン塩の密度がその最大密度の少なくとも約70%であるように圧密されていることが好ましい。「最大密度」とは、飽和金属アンミン塩が単結晶である場合に周囲温度及び周囲圧力において有するであろうその密度を意味する。より好ましくは、最大密度の少なくとも約75%又は約80%又は約85%又は約90%又は約93%又は約95%又は約97%、更には約97%超の密度である。
【0038】
熱伝導性でガス透過性の可撓性材料に囲まれる物体は、アンモニア飽和貯蔵材料を含むことに加えて、結合剤のような添加剤も含むことができるが、特に熱伝導粒子及びコヒーレント熱伝導構造体も含むことができる。熱伝導粒子(例えばフレーク、ペレット等)及びコヒーレント構造体(例えば小格子等)は、ガス透過性及び可撓性にすることができる前述の材料と同じ材料で作製することができる。そのような添加剤の量は、通常、アンモニア貯蔵材料の体積の約1.5体積%又は2体積%〜約10体積%の範囲である。
【0039】
上記で規定したような1つのユニットしか存在しない場合、この「第1の」ユニットは、アンモニアを吸着又は吸収することが可能である「未パッケージ」材料、並びに場合によっては添加剤及び/又はコヒーレント熱伝導構造体に加えて、通常は、上記で規定したユニットと他の点では同一であるより小さい第2のユニット又はパッケージを含む。しかし、そのような第2のユニットは、上記で特定した2個以上の第1のユニット又はパッケージが存在する場合にも含まれることができる。第2のユニットは、通常、周囲の第1のユニットの体積の約5体積%〜約50体積%のサイズを有する。
【0040】
圧密ブロックは、パッケージ又はユニットの圧密されていない出発アセンブリの空隙及び隙間がかなりの程度まで消失する圧密の程度に達するような圧力又は力によって圧密されている。多くの場合、出発アセンブリは、それ以上圧密することができない最大の程度まで圧密される。出発アセンブリの空隙及び隙間を消失させるように適用される圧力は、アンモニア飽和材料の性質とともに変わるが、最小圧力は多くの場合、約5MPa以上、例えば約10MPa、約20MPa、約50MPa、約100MPa又は更には約200MPa以上である。
【0041】
本発明の材料圧密ブロックは自立型とすることができ、すなわち外側容器内に包囲されていない場合であってもその形状を保つことができる。この場合、圧密は、例えばユニットの出発アセンブリの全ての面から圧力を適用することによって達成することができる。より通例では、材料圧密ブロックの出発アセンブリは、或る種の容器、例えば、一方の開放端又は2つの対向する開放端を有し、高圧に耐えることができる鋼製円筒体に導入され、次いで多くの場合に出発アセンブリ上に配置される1つ又は2つのプレートを介して一軸圧縮される。任意に、容器の壁は、材料圧密ブロックを取り出すために取り外すことができる。
【0042】
自立型材料ブロックは、次いで、アンモニア飽和材料からアンモニアを放出させるために、通常は約2バール〜約5バールのアンモニア圧力で約40℃〜約200℃の温度で任意に加熱することができる容器に導入することができる。容器の加熱は外部からであっても又は内部からであってもよい。前者の場合、容器は好ましくは熱伝導性であり、例えばアルミニウム、鋼又は高い熱伝導率を有する他の合金等の材料で作製される。しかし、アンモニアを放出させるために真空又は熱と真空との組合せを用いることも可能である。例えば、約0.5バールの真空の場合、およそ室温(約25℃)でアンモニアの脱着が起こる。
【0043】
代替的には、出発アセンブリを最終的な容器内に入れることができ、この容器からアンモニアが放出され、この容器は任意に、少なくとも1つの、通常はたった1つの開放端を有し、前述したものと同じ方法で加熱することができる。しかし、この場合、容器は、材料を圧密するのに必要な圧力に耐えることが可能でなければならないか、又はプレス中に容器を機械的に支持するのに十分な強度を有する型に入れられる。圧密ブロックを形成する材料の出発アセンブリは、この容器内で一軸圧密される。
【0044】
エンクロージャー面積全体の最大でも約20%が熱輸送の所望の方向に対して約±10度以内で垂直であり、すなわち上記ガス透過性の可撓性材料の表面積全体の少なくとも約80%が熱輸送の所望の方向に対して約±10度以内で平行であることが好ましい。
【0045】
熱伝達の所望の方向は、通常、熱伝導を高める構造体又は添加剤が存在しない場合に熱流束の方向に相当する。熱流束は、容器の所与の構成及び熱供給に関する熱伝導問題を数学的に(分析的に又は数値的に)解くことによって見出すことができる。例えば軸回りに円筒対称性を有する構成の場合、熱伝達の所望の方向は対称軸に対して垂直である。より複雑な幾何学的形状の場合、熱伝導構造体の非存在下での熱流束、したがって熱伝達の所望の方向は概ね位置に応じる。したがって、容器内の任意の所与の地点における熱伝達の所望の方向は、熱伝達を高める構造体が存在しない場合に熱流束の方向として規定される。
【0046】
しかし、連結されている熱伝導表面のセットの確率的性質に起因して、全ての熱伝導材料を熱伝達の所望の方向に沿って正確に位置合わせすることは不可能である。したがって、熱伝導材料の少なくとも約60%が熱伝達の所望の方向に対して約±20度以内で位置合わせされることが好ましい。熱伝導材料の少なくとも約80%が熱伝達の所望の方向に対して約±20度以内で位置合わせされることがより好ましい。熱伝導材料の少なくとも約80%が熱伝達の所望の方向に対して約±10度以内で位置合わせされることが更により好ましい。
【0047】
さらに、連結されている熱伝導表面のセットの確率的性質に起因して、熱伝達の所望の方向が正確に分かることは必須ではなく、多くの場合に何らかの好適な簡単な方法によって見積もることができる。例えば、容器内の所与の地点における熱輸送の所望の方向は、加熱素子と上記所与の地点とを連結する最短のラインの方向によって見積もることができる。
【0048】
円筒対称性を有する構成の場合には、見積もられた方向は正確である。この場合、熱輸送の所望の方向は、圧密ブロックの質量中心を通る長手方向軸から始まる半径に沿い、好ましくは、エンクロージャーの総面積の最大約20度がそのような半径に対して約±10度以内で垂直である。これは、例えば出発ユニット若しくはパッケージの楕円形状、及び/又は一軸圧縮によって達成することができる。
【0049】
上述の場合、エンクロージャー表面全体のほとんどが熱輸送の所望の方向に対して平行である。この場合、所望の方向における対応する全体的な熱伝導率は、エンクロージャー材料及び貯蔵材料の熱伝導率の加重平均として推定することができる。
【0050】
エンクロージャー材料が熱伝導率K=240W/mkを有するアルミニウムである一例では、アンモニア貯蔵材料はk=1W/mKを有し、エンクロージャー材料は、該エンクロージャー材料が収容される容器体積の2.5%を構成し、推定される全体的な熱伝導率は0.025K+0.975k=7W/mKである。好ましくは、全体的な熱伝導率は1W/mK〜20W/mKの範囲である。
【0051】
更なる態様では、本発明は、上述のような前記材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア飽和材料を含む前記物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットを、少なくとも5MPaの外圧によって圧縮することであって、任意に、前記1つ以上のユニットを、1つ又は2つの開放端と任意に1つ以上の取り外し可能な壁とを有する容器又は型に入れ、かつ任意にプレートを介して、前記外圧を前記開放端を通じて一軸に加えることと
を含む、方法に関する。
【0052】
包装手順は、迅速で強固でかつ再現可能なものであるものとする。包装されたパッケージが取り扱い易く一様に包まれる形状を有するのであれば、パッケージをプレスする前に容器に流し込むうえで有利である。多くの場合、ほとんど球状の形状が好ましい。材料が包装プロセスにおいて予め圧密されている場合に更に有利である。好ましくは、材料は最終密度の約1/3にまで予め圧密される。最終密度の約1/2にまで予め圧密することが更により好ましい。自動化包装シーケンスの一例が図5に示されている。まず、アルミ箔片を成形工具においてボウル形状に成形する。次に、このボウル形状に所定の量のアンモニア飽和貯蔵材料を充填する。その後、ボウル形状の縁同士を一緒にプレスすることによってボウル形状を予め閉鎖する。最後に、パッケージを閉鎖し、逆さになったボウル形状のピストンによって上からプレスすることによって予め圧密し、その後、パッキングラインから取り除く。ボウル形状は、異なるパッケージ形状、例えば球状のパッケージを製造するための半球状形状を与えるように変えられ得る。
【0053】
次に、バルク材料又は粒状材料又は粉末材料を導入する方法と同様の方法で材料を単に容器内に導入する(「流し込む」)。
【0054】
続いて、材料を、少なくとも約5MPa、より好ましくは少なくとも約10MPa、例えば約20MPa、約50MPa、約100MPa、約200PPa又は更には約200MPa超の外圧によって圧縮又は圧密する。圧縮は、例えば力を適用することができる好適な可動壁を有するチャンバー内において、包装されたユニット又はパッケージのアセンブリの全ての面からのものとすることができる。
【0055】
より通例では、包装されたパッケージのアセンブリは上述したように一軸圧縮される。このように、エンクロージャーの全面積の20度以下が熱伝導の所望の方向に対して垂直であることを達成することができる。
【0056】
アンモニア飽和材料は、上述したアンモニア飽和金属アンミン塩の1種以上からなる場合、アンモニア飽和金属アンミン塩の密度がその最大密度の少なくとも約70%であるように圧密されていることが好ましい。「最大密度」とは、飽和金属アンミン塩が単結晶である場合に周囲温度及び周囲圧力において有するであろうその密度を意味する。より好ましくは、少なくとも約75%又は約80%又は約85%又は約90%又は約93%又は約95%又は約97%、更には約97%超の密度である。
【0057】
また更なる態様では、本発明は、上述のように、容器に入った前記材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア枯渇材料を含む物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットが容器内で固定されるように、前記ユニットを前記容器に充填することと、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な前記アンモニア枯渇材料をアンモニアで処理し、それによってアンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な前記材料を飽和及び圧密させることと
を含む、方法に関する。
【0058】
この方法で、アンモニア枯渇材料を含む出発物体は、材料が膨張するための十分なスペースを残すようにエンクロージャー内に緩く包装される。
【0059】
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア枯渇材料は、アンモニアに結合することができる部位がアンモニアによって低い程度までしか(例えば約20%未満の程度まで)又は全く占められていない材料を意味する。金属アンモニア錯塩を形成することができる金属塩の場合、未処理の金属塩を出発材料として用いることができる。
【0060】
包装された材料は次いで容器に入れられるため、容器内では移動することができない(これは通常、容器内に単に「流し込む」ことによっても達成可能である)。
【0061】
次に、材料をアンモニアで飽和させるためにアンモニアを気体状又は液体状で容器に導入する。アンモニア枯渇貯蔵材料が飽和時に膨張することは当業者には既知である。本発明の場合、アンモニア貯蔵材料は、容器に包囲されているときに膨張するため、ユニット又はパッケージ間やパッケージと容器の壁との間の空隙及び隙間がなくなるか又は消失し、アンモニア貯蔵材料はそのエンクロージャー内で最終的に容器壁に対してプレスされることで材料圧密ブロックを形成する。
【0062】
上記の場合、ガス透過性箔に充填されるアンモニア枯渇材料の量は、アンモニアの飽和後に材料が箔によって形成されているパッケージを完全に充填するようなものである。これは、飽和塩中の未処理の塩の重量比率によって容易に計算することができる。例えば、Sr(NHClは54重量%のSrClを含有しているため、パッケージが最終圧縮状態で100gのSr(NHClを含有しているものとする場合、パッケージは54gのSrClで充填されているものとする。
【0063】
特に好ましい実施形態では、アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な材料を飽和及び圧密させることは、
a.前記貯蔵容器を、約65℃以下の温度レベルTでサーモスタット(thermostatting)媒体と直接的又は間接的に接触させて配置することと、
b.前記貯蔵容器を気体アンモニアの供給源に接続することであって、少なくとも前記飽和プロセスの一部の間に、所定の飽和度まで前記アンモニア貯蔵材料を飽和させる際の前記気体アンモニアを約P以下の圧力Pとし、ここで、Pは、前記アンモニア貯蔵材料を飽和させる際のアンモニアの圧力であり、かつPは、前記温度レベルTにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧であることと
を含む。
【0064】
容器は、その全体がサーモスタット媒体と直接的若しくは間接的に接触していることができるか、又は容器の一部のみがサーモスタット媒体と直接的若しくは間接的に接触している。
【0065】
この方法は、同時係属中の欧州特許出願第10005245.5号(該出願の開示は明示的に参照される)においてアンモニア貯蔵材料の同様の再飽和に関して詳細に記載されている。
【0066】
この方法では、温度レベルTは、好ましくは、約0℃〜約40℃、例えば約0℃〜約20℃又は約20℃〜約40℃であり、圧力Pは、好ましくは、温度Tにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧の少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%又は少なくとも約90%であり、所定の飽和度は、好ましくは少なくとも約80%、約90%、約95%又は約98%である。
【0067】
サーモスタット媒体は、水又は単相水性媒体とすることができる。
【0068】
気体アンモニアが温度Tにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧P以下である圧力Pにある本方法の一部は、好ましくは全飽和期間の最後の約1/3の間である方法の最後の部分であるか、又は所定の飽和度の最後の約25%が達成される。
【0069】
容器のアンモニア注入口に対向する端における低速の飽和は回避することが好ましく、この理由は、そうしなければアンモニア注入口に近い貯蔵材料が容器の対向端における貯蔵材料よりも速い速度で飽和する可能性があり、容器のアンモニア注入口に対向する端における貯蔵材料の飽和が妨げられる可能性があるためである。
【0070】
これは複数の方法で制御することができる。幾つかの実施形態では、例えばカートリッジの表面の約50%以下、約25%以下、又は約10%以下、例えば更には約5%以下が飽和時間の一部又は飽和時間全体の間に断熱材料で覆われるように、容器又はカートリッジのアンモニア注入口に近い部分を断熱する。幾つかの実施形態では、表面の約50%をプロセスの始めに覆い、次いで、飽和の進行中に次第に少ない表面を覆う。
【0071】
幾つかの実施形態では、サーモスタット媒体は、カートリッジの注入口と対向する端にのみ塗布し、カートリッジのその部分における飽和速度を上昇させるようにする。サーモスタット浴中のサーモスタット媒体の液位は、サーモスタット媒体が飽和プロセスの終了時にカートリッジを完全に覆うまで、アンモニア注入口から離れた端において開始して飽和の高まりとともに更に増大させることができる。飽和速度を制御する別の方法は、例えば、サーモスタット媒体によって容器の下側部分を上側部分よりも冷却すること及び/又はサーモスタット媒体を、カートリッジの注入口と対向するその底部に注入口を有する上側部分よりも高速で流すことによって、カートリッジの注入口から更に離れた端におけるより低温から、注入口を有する端におけるより高温まで、サーモスタット媒体中に温度勾配又は熱損失勾配を与えることである。
【0072】
さらに、高密度がそれほど重要ではない場合に、飽和速度を制御するために容器内部の貯蔵材料の密度を低下させることも可能である。
【0073】
これらの措置は、カートリッジの全ての部分においておよそ同じであるか又はアンモニア注入口から離れた部分において幾分より速い飽和速度をもたらすことができる。
【0074】
したがって、本方法の幾つかの実施形態では、サーモスタット媒体との直接的又は間接的な接触は、気体アンモニアの供給源に接続されていない容器の端から始まって気体アンモニアの供給源に接続されている端まで、容器が浸漬されているサーモスタット浴内のサーモスタット媒体の液位を上昇させることによる飽和又は再飽和の増大に伴って増大される。さらに、気体アンモニアの供給源に接続されている容器の端は、容器の表面の約50%以下、約25%以下、又は約10%以下、例えば更には約5%以下が飽和時間又は再飽和時間の少なくとも一部の間に断熱材料で覆われるように、断熱することができる。幾つかの実施形態では、冷却装置及び/又は他の温度制御装置及び/又は強制対流状態が、気体アンモニアの供給源に接続されている端よりも気体アンモニアの供給源に接続されていない容器の端からより多くの熱が放散するように、温度勾配又は熱損失勾配を与える。
【0075】
以下を含む多くの利点が本発明と関連している:
・加熱源からの良好な熱伝達
・貯蔵材料を通した高い熱伝導
・貯蔵材料特性(及びアンモニア含量)に依存しない(ほんのわずか依存する)熱伝達及び熱伝導
・加熱源への良好な機械的及び熱的接触
・貯蔵材料の機械的安定性の増大
・箔に貯蔵材料を包装することは処理中のアンモニアの脱ガスを低減する
・箔に貯蔵材料を包装することは処理中の埃に関連する問題を低減する
・包装プロセス中に貯蔵材料が予め圧密される
・規則的な形状のパッケージにより、プレス前の貯蔵材料密度がより高くなる
・均一に分配されたパッケージにより、プレス後の貯蔵材料密度がより高くなる。
【0076】
それらの特性により、本発明の材料圧密ブロックは、加熱されかつ/又は真空ラインに接続されることができる容器内に収容されるアンモニア源として働く特定の用途に理想的に適したものとなる。そのような容器は、通常は好適な定量注入装置を介して、アンモニア消費ユニット、例えば燃焼機関の排出ラインにおけるSCR触媒、アンモニアを窒素及び水素に分解する装置又はアンモニアで稼働する燃料電池に通常は接続される。
【0077】
図1は、加熱源103を任意に備える容器102内の材料圧密ブロック100の概略断面図を示し、材料圧密ブロック100は、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料108で包装されているアンモニア飽和貯蔵材料106を含むユニット又はパッケージ104で構成されている。分かり得るように、空隙又は隙間110(図面では大きく誇張されている)は最小限に抑えられており、エンクロージャー108の表面積の大部分は熱伝導の所望の方向に対して平行であり、この方向は、材料圧密ブロックの円筒形状の質量中心を通る長手方向軸を起点とする半径方向である。
【0078】
図2は、加熱源203を任意に備える容器202内の材料圧密ブロック200の概略断面図を示し、材料圧密ブロック200は、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料208で包装されているアンモニア飽和貯蔵材料206を含む1つのユニット又はパッケージで構成されている。アンモニア飽和貯蔵材料206に加えて、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料208’で包装されている更なるアンモニア飽和貯蔵材料206’で充填されている第2のユニット又はパッケージ204が、外側エンクロージャー208内に包囲されている。
【0079】
図3aは、大きな空隙又は隙間310を有する容器302内に導入される(「流し込まれる」)、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料308で包装されているアンモニア飽和貯蔵材料306を含む、圧縮されていない出発ユニット304の概略断面図を示す。
【0080】
図3bは、ピストン320による外力fによって圧縮した後の同じユニットを示し、この場合、圧密ユニット304’は、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料308で包装されている圧密アンモニア飽和貯蔵材料306’を含み、アセンブリ全体が、容器302内に空隙又は隙間310’がなくなった状態で圧密材料塊300を形成している。
【0081】
図4aは、間に大きな空隙又は隙間410がある状態で容器402内に導入された(「流し込まれた」)圧縮されていない出発ユニット404の概略断面図を示し、圧縮されていない出発ユニット404は、熱伝導性でガス透過性の可撓性材料408で包装されているアンモニア枯渇貯蔵材料406を含む。
【0082】
図4bは、図4のアンモニア枯渇貯蔵材料406にアンモニアを導入することによって膨張しており、それによって熱伝導性でガス透過性の可撓性材料408で包装されている圧密アンモニア飽和貯蔵材料406’を収容するように圧密されているユニット404’の概略断面図を示し、アセンブリ全体が、容器402内に空隙又は隙間410’がなくなった状態で圧密材料塊400を形成している。
【0083】
図5は、アンモニア貯蔵材料を箔に包む自動パッキングラインの一例を示す。ステップ1において、箔片508を成形工具504の上部に配置する。ステップ2において、アクチュエーター507によってピストン506を下方へ移動させて成形工具504に入れ、それによって箔508にボウル形状を与える。ステップ3において、ボウル形状の箔508を、定量供給装置510からの所定量のアンモニア貯蔵材料502で充填する。ステップ4において、ボウル形状の箔508を予閉鎖(pre-closing)器具512によって予め閉鎖し、第2のピストン514及び516を形成工具(tool)504の上下に配置する。ステップ5において、第2のピストン514及び516を延出させ、それによってアンモニア貯蔵材料502で充填されている箔508を完全に閉鎖し、次いでこれをステップ6で示すようにラインから取り出す。
【0084】
図6は、液体アンモニア/気体アンモニアの相境界及びSr(NHClの平衡圧の温度/圧力曲線を示す。当業者には、ユニットからの熱の除去を加速させるために温度Tをできる限り低く、例えば水が冷却媒体である場合には約0度近く(凍結は回避するべきである)を選択するべきであることが望ましいと思われるであろう。しかし、図6から分かり得るように、約0℃において液体NHの蒸気圧はかなり低く、すなわち約4.3バールである。さらに、その圧力における飽和SrClの平衡温度は約60℃である。約40℃では、液体アンモニアのアンモニア圧力は約15.5バールである。この圧力は、約99℃の温度におけるアンモニア飽和SrClの平衡圧に相当する。このことは、SrClが約99℃の温度(例えばアンモニアの発熱吸収によって達する)で存在可能であり、そのアンモニア圧力において完全に飽和することを意味する。
【実施例】
【0085】
〔実施例1〕
寸法が50μm×194mm×194mmである5.1gの重量のアルミ箔に100gのアンモニア飽和塩化ストロンチウムを包装することによってパッケージを形成した。236個のパッケージを、直径が200mmで18.7l容のステンレス鋼の円筒容器に、5×10Nの力で押し込んだ。閉鎖されたアルミニウム表面の良好に連結された自立型熱伝導構造体が得られた。飽和塩の結果として生じる密度は、得ることのできる最大密度の95%を上回っていた。
【0086】
〔実施例2〕
2.24L容の容器に、50mmの厚さ及び12.5×12.5cmの面積を有するアルミ箔に包んだ12gのSrClをそれぞれ含む99個のパッケージを充填した。飽和後、塩化ストロンチウムの密度は1.0g/mlであった。
【0087】
全ての特許、特許出願及び本明細書において引用されている他の文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを可逆的に脱着及び吸着又は吸収することが可能なアンモニア飽和材料を含む物体からなる1つ以上のユニットで構成される材料圧密ブロックであって、前記アンモニア飽和材料が、−70℃〜250℃で該アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有する可撓性材料で作製されたガス透過性エンクロージャーによって囲まれている、圧密ブロック。
【請求項2】
前記1つ以上のユニットが、前記アンモニア飽和材料に加えて、より小さいことを除いて請求項1のユニットと同一の1つ以上の第2のユニットを含む、請求項1に記載の材料圧密ブロック。
【請求項3】
少なくとも約5MPaの圧力によって圧密されている、請求項1又は2に記載の材料圧密ブロック。
【請求項4】
前記材料圧密ブロックが、自立型である、請求項3に記載の材料圧密ブロック。
【請求項5】
前記材料圧密ブロックが、任意に加熱されることができる容器に収容されている、請求項4に記載の材料圧密ブロック。
【請求項6】
前記材料圧密ブロックが、任意に加熱されることができる容器に収容されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項7】
前記アンモニア飽和材料が、式M(NH(式中、Mは、Li、Na、K若しくはCsのようなアルカリ金属、Mg、Ca、Sr若しくはBaのようなアルカリ土類金属、及び/又はV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu若しくはZnのような遷移金属、又はNaAl、KAl、KZn、CsCu若しくはKFeのようなそれらの組合せから選択される1種以上のカチオンであり、Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、硫酸イオン、モリブデン酸イオン及びリン酸イオンから選択される1種以上のアニオンであり、aは、塩1分子あたりのカチオンの数であり、zは、塩1分子あたりのアニオンの数であり、かつnは、約2〜約12、好ましくは約6〜約8の配位数である)の1種以上の金属アンミン錯塩を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項8】
前記アンモニア飽和材料が、Mg(NHCl、Ca(NHCl、Mn(NHCl及びSr(NHCl又はそれらの任意の混合物を含む、請求項7に記載の材料圧密ブロック。
【請求項9】
前記アンモニア飽和材料の密度が標準温度及び標準圧力でその最大密度の少なくとも約70%であるような程度まで圧密されている、請求項7又は8に記載の材料圧密ブロック。
【請求項10】
可撓性材料で作製された前記ガス透過性エンクロージャーの前記熱伝導率が、前記アンモニア飽和材料の前記熱伝導率の少なくとも約10倍である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項11】
可撓性材料で作製された前記ガス透過性エンクロージャーが、金属、合金、グラファイト、複合材料、改質プラスチック、改質ゴム及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項12】
可撓性材料で作製された前記ガス透過性エンクロージャーが、アルミニウム又はアルミニウム合金から選択される、請求項11に記載の材料圧密ブロック。
【請求項13】
可撓性材料で作製された前記ガス透過性エンクロージャーが、前記圧密ブロックの質量の約0.1質量%〜約20質量%を構成する、請求項5〜12のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項14】
前記材料圧密ブロックのユニットが、可撓性材料で作製された前記ガス透過性エンクロージャーの全表面積の少なくとも約80%が熱輸送の所望の方向に対して約±10度以内で平行であるような形状を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の材料圧密ブロック。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア飽和材料を含む前記物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットを、少なくとも約5MPaの外圧によって圧縮することであって、任意に、前記1つ以上のユニットを、1つ又は2つの対向する開放端と任意に1つ以上の取り外し可能な壁とを有する容器又は型に入れ、かつ任意にプレートを介して、前記外圧を前記開放端を通じて一軸に加えることと
を含む、方法。
【請求項16】
請求項1、2及び5〜14のいずれか1項に記載の前記材料圧密ブロックを製造する方法であって、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能なアンモニア枯渇材料を含む物体を、−70℃〜250℃で前記アンモニア飽和材料の熱伝導率の少なくとも5倍の熱伝導率を有するガス透過性の可撓性材料で包装して、包装された物体の1つ以上のユニットを提供することと、
前記1つ以上のユニットが容器内で固定されるように、前記ユニットを前記容器に充填することと、
アンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な前記アンモニア枯渇材料をアンモニアで処理し、それによってアンモニアを可逆的に吸着又は吸収及び脱着することが可能な前記材料を飽和及び圧密させることと
を含む、方法。
【請求項17】
前記飽和及び圧密させることが、
a.前記貯蔵容器を、約65℃以下の温度レベルTでサーモスタット媒体と直接的又は間接的に接触させて配置することと、
b.前記貯蔵容器を気体アンモニアの供給源に接続することであって、少なくとも前記飽和プロセスの一部の間に、所定の飽和度まで前記アンモニア貯蔵材料を飽和させる際の前記気体アンモニアを約P以下の圧力Pとし、ここで、Pは、前記アンモニア貯蔵材料を飽和させる際のアンモニアの圧力であり、かつPは、前記温度レベルTにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧であることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度レベルTが約0℃〜約40℃、例えば約0℃〜約20℃又は約20℃〜約40℃である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記サーモスタット媒体が水又は単相水性媒体である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記圧力Pが、前記温度Tにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧の少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%又は少なくとも約90%である、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記所定の飽和度が、理論上の完全飽和の少なくとも約80%、約90%、約95%又は約98%である、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記気体アンモニアが前記温度Tにおける液体アンモニアの平衡蒸気圧P以下である圧力Pにある前記方法の一部は、前記全飽和期間のおよそ最後の約1/3の間である方法の最後の部分であるか、又は前記所定の飽和度の最後の約25%が達成される、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記容器が、その全体が前記サーモスタット媒体と直接的又は間接的に接触している、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記容器の一部のみが前記サーモスタット媒体と直接的又は間接的に接触している、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記サーモスタット媒体との前記直接的又は間接的な接触が、気体アンモニアの前記供給源に接続されていない前記容器の端から始まって気体アンモニアの前記供給源に接続されている端まで、前記容器が浸漬されているサーモスタット浴内の前記サーモスタット媒体の液位を上昇させることによる飽和又は再飽和の増大に伴って増大される、請求項17〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記容器の表面の約50%以下、約25%以下又は約10%以下、例えば更には約5%以下が飽和時間又は再飽和時間の少なくとも一部の間に断熱材料で覆われるように、気体アンモニアの前記供給源に接続されている前記容器の端を断熱する、請求項17〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
冷却装置及び/又は他の温度制御装置及び/又は強制対流状態が、気体アンモニアの前記供給源に接続されている端よりも気体アンモニアの前記供給源に接続されていない前記容器の端からより多くの熱が放散するように、温度勾配又は熱損失勾配を与える、請求項17〜26のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506798(P2013−506798A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531283(P2012−531283)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005982
【国際公開番号】WO2011/038916
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511250518)
【氏名又は名称原語表記】AMMINEX A/S
【住所又は居所原語表記】Gladsaxevej 363, DK−2860 Soborg, Denmark
【Fターム(参考)】