説明

固体バイオマス燃料供給装置

【課題】硬質のバイオマス粉粒片が混ざった固体バイオマスであっても、石炭と混焼させることができる固体バイオマス燃料を供給できるようにすることである。
【解決手段】固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離装置11で分離し、分離装置11で分離された粉粒片をバイオマス粉砕機13で微粉粒に粉砕し、固体バイオマス燃料投入系統12は、分離装置11で分離された固体バイオマス微粉粒及びバイオマス粉砕機13で粉砕された粉粒片の微粉粒を混合して固体バイオマス燃料とし、石炭を供給する石炭供給ライン14にその固体バイオマス燃料を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体バイオマスを石炭とともに石炭粉砕機に供給する固体バイオマス燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、RPS(Renewables Portfolio Standard)法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)の新エネルギーの基準利用量達成に寄与するように、環境に優しい風力や太陽光あるいはバイオマス燃料などの新エネルギーの導入が図られている。これら新エネルギーのうちバイオマス燃料については、海外のパーム残渣を石炭火力や石油火力で混焼させることが考えられている。パーム残渣としては、パーム果実房から果実を取り除いた残材を細かく砕きペレット状に固めたパーム空房ペレット、パーム核油かすであるPKE、パーム核の殻であるパームシェル、パーム果実房の油脂のうち常温で固体部分のパームステアリン等がある。
【0003】
固体バイオマスを用いたバイオマス発電は、発電コストとポテンシャルとの面で優れているため、RPS法への対応において最も有効なもので、その中でもパーム残渣は、海外からの調達が期待できるため最も期待されている。固体バイオマスを火力発電所で使用する場合には、既設の石炭火力発電所には石炭を粉砕する石炭粉砕機を有していることから、固体バイオマスを石炭とともに石炭粉砕機に供給し、石炭粉砕機で混合させて粉砕した後にボイラの石炭バーナに空気搬送にて運び、石炭バーナで混合燃焼させる混合粉砕方式が考えられる。
【0004】
ここで、バイオマスに改質を加えてバイオマス燃料を取り出すようにしたものとして、固体廃棄物スラリを反応させて得られた反応生成スラリに、石炭や石油などの代替燃料となり得る高発熱量の補助燃料を混合して燃料用の混合スラリとしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−316465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは固体バイオマスを燃料用の反応生成スラリに改質し、石炭や石油などの代替燃料となり得る高発熱量の補助燃料を混合して燃料用の混合スラリとしているので、その改質のための工程が必要となるだけでなく補助燃料も必要となる。
【0006】
一方、固体バイオマスを石炭とともに石炭粉砕機15で粉砕し石炭バーナで燃焼させる混合粉砕方式では、既設の石炭粉砕機で固体バイオマスを石炭の粉砕粒まで細かく粉砕することが容易ではないので、固体バイオマスが石炭用に設定された分級機を通過することができず、固体バイオマスの石炭バーナへの導入量が低く抑えられてしまう。すなわち、パーム残渣であるパームシェルを既存の石炭粉砕機で粉砕しようとすると、硬質のパームシェルが石炭粉砕機内の分級機を通過する大きさまで粉砕されるのに時間と動力とを要し、石炭粉砕機の動力のモータ負荷制限により結果的にその処理量が低くなる。
【0007】
また、パーム核油かすであるPKEにも生産時点からパームシェルが含まれているため、PKEやパームシェルは、既存の石炭粉砕機で粉砕することが容易でないことが判明した。このため、PKEやパームシェルは既存の石炭火力発電所の設備では石炭と混焼することができないため、そのままでは、微粉炭ボイラ用のバイオマス燃料としては、不向きな燃料ということになる
本発明の目的は、硬質のバイオマス粉粒片が混ざった固体バイオマスであっても、石炭と混焼させることができる固体バイオマス燃料を供給できる固体バイオマス燃料供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わる固体バイオマス燃料供給装置は、固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された粉粒片を微粉粒に粉砕するバイオマス粉砕機と、前記分離装置で分離された固体バイオマス微粉粒及び前記バイオマス粉砕機で粉砕された粉粒片の微粉粒を混合して固体バイオマス燃料とし石炭を供給する石炭供給ラインに前記固体バイオマス燃料を投入する固体バイオマス燃料投入系統とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係わる固体バイオマス燃料供給装置は、固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された粉粒片を炭化処理する炭化装置と、前記分離装置で分離された固体バイオマス微粉粒及び前記炭化装置で炭化された固体バイオマス炭化物を混合して固体バイオマス燃料とし石炭を供給する石炭供給ラインに前記固体バイオマス燃料を投入する固体バイオマス燃料投入系統とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係わる固体バイオマス燃料供給装置は、請求項1または2の発明において、前記固体バイオマス燃料投入系統が前記固体バイオマス燃料を前記石炭供給ラインに投入する箇所は、前記石炭供給ラインのうち、少なくとも1回は前記石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所を経由する箇所であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係わる固体バイオマス燃料供給装置は、請求項3の発明において、前記固体バイオマス燃料投入系統が前記固体バイオマス燃料を前記石炭供給ラインに投入する箇所は、前記石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所であり、前記固体バイオマス燃料を先にコンベアに投入し、その固体バイオマス燃料の上部に石炭を投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離し、分離した粉粒片を微粉粒に粉砕または炭化処理し、固体バイオマス微粉粒に混合して固体バイオマス燃料とし石炭を供給する石炭供給ラインに投入するので、硬質のバイオマス原料が混ざったバイオマスであっても、石炭と混焼させる燃料として取り扱うことができる。
【0013】
また、固体バイオマス燃料を少なくとも1回は石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所を経由する箇所に投入するので、経由した石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所において固体バイオマス燃料が石炭に容易に混合することができる。また、石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所で、固体バイオマス燃料を先にコンベアに投入し、その固体バイオマス燃料の上部に石炭を投入するので、固体バイオマス燃料が空気中に飛散することを抑制でき固体バイオマス燃料による粉塵爆発を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係わる固体バイオマス燃料供給装置の一例を示すブロック構成図である。固体バイオマスは分離装置11に投入され、微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離される。分離装置11は篩あるいはサイクロン等であり、固体バイオマスは、例えば、パーム核の殻であるパームシェルあるいはパーム核油かすであるPKEである。パームシェルは硬質であり脆くない性質を有し、既存の石炭粉砕機で粉砕するのは困難である。そこで、分離装置11にて、微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離して、石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片を抽出する。同様に、パーム核油かすであるPKEにも生産時点からパームシェルが含まれているので、分離装置11を通し石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片を抽出する。
【0015】
分離装置11で分離された固体バイオマスの微粉粒は固体バイオマス燃料投入系統12に供給され、一方、分離装置11で分離され抽出された粉粒片はバイオマス粉砕機13に供給される。バイオマス粉砕機13では分離装置11で抽出された固体バイオマスの粉粒片を微粉粒に粉砕する。バイオマス粉砕機13は硬質のパームシェルを粉砕する専用の粉砕機であり、例えば、ブレードやピンなどを高速回転させて衝撃及びせん断によってパームシェルを微粉砕する高速回転ミルである。バイオマス粉砕機13で粉砕された固体バイオマスの微粉粒は固体バイオマス燃料投入系統12に供給される。
【0016】
固体バイオマス燃料投入系統12は、分離装置11で分離された固体バイオマスの微粉粒とバイオマス粉砕機13で粉砕された固体バイオマス粉粒片の微粉粒とを混合して固体バイオマス燃料とし、石炭を供給する石炭供給ライン14に投入する。すなわち、コンベアを乗り継いで石炭を搬送する石炭供給ライン14のコンベアに、微粉粒の固体バイオマス燃料を投入し、石炭に混合して石炭粉砕機15に搬送する。
【0017】
石炭粉砕機15は、周知のように、円盤状テーブルにローラを押し付けローラとテーブルの面の間で石炭を粉砕するものであり、硬質のパームシェルは既にバイオマス粉砕機13により微粉粒に粉砕されているので、石炭粉砕機15は主として石炭を粉砕することになる。石炭粉砕機15で石炭を粉砕して得られた微粉炭及び固体バイオマス燃料の微粉粒の混合燃料は、ボイラ16の石炭バーナ17に供給され燃焼することになる。
【0018】
図2は固体バイオマス燃料投入系統12から石炭供給ライン14に固体バイオマス燃料を投入する際の説明図であり、図2(a)は固体バイオマス燃料を石炭供給ラインに投入する箇所の断面図、図2(b)は図2(a)の矢印A方向からの平面図である。
【0019】
図2(a)において、石炭供給ライン14は、複数のコンベア18を乗り継いで貯炭場から石炭粉砕機15まで石炭19を搬送するものであり、コンベア18の乗り継ぎ箇所には乗り継ぎ建家20が設けられている。そして、例えば、空気浮上式コンベアの場合には、コンベア18はチューブ21に収納され、コンベア18iに搭載された石炭19のコンベア18jへの乗り継ぎは、コンベア18iのヘッド部22からコンベアjのボトム部23に石炭19を落下させて乗り継ぐようにしている。
【0020】
固体バイオマス燃料投入系統12から石炭供給ライン15への固体バイオマス燃料24の投入は、このような乗り継ぎ建家20内のコンベア18jのボトム部23に、石炭19より先にシュート25から投入する。従って、石炭19は、図2(b)に示すように、固体バイオマス燃料24の上部に投入されることになる。石炭19を固体バイオマス燃料24の上部に投入するようにしているのは、固体バイオマス燃料24の微粉粒が空気中に飛散し粉塵爆発するのを防止するためである。
【0021】
すなわち、固体バイオマス燃料24の微粉粒は空気中に飛散すると粉塵爆発の危険性がある。そこで、分離装置11で分離したバイオマス微粉粒、及びバイオマス粉砕機13で粉砕した固体バイオマス微粉粒を混合し、混合して得られた固体バイオマス燃料24を直接的にシュート25に導き、コンベア18のボトム部23に投入し、その上部に石炭19を投入して固体バイオマス燃料24の微粉粒が空気中に飛散することを抑制するようにしている。それでも、粉塵爆発の懸念がある場合には、安全のために混合して得られた固体バイオマス燃料24に水噴霧を施すことになる。
【0022】
また、固体バイオマス燃料投入系統12から固体バイオマス燃料24を投入する箇所は、固体バイオマス燃料24を投入してから少なくとも1回は次の乗り継ぎ箇所を経由する箇所に固体バイオマス燃料24を投入する。これにより、次の乗り継ぎ箇所において、コンベア18での乗り継ぎの際に、固体バイオマス燃料24が石炭19とともに次のコンベア18に落下することになり、固体バイオマス燃料24と石炭19とが混合して落下し容易に混合できる。なお、固体バイオマス燃料24を投入してからの乗り継ぎ箇所が多くなると、固体バイオマス燃料24と石炭19との混合はよくできるが、固体バイオマス燃料24の微粉粒は空気中に飛散する可能性が高くなるので、固体バイオマス燃料24を投入してからの乗り継ぎ箇所は少ない方が好ましい。
【0023】
以上の説明では、分離装置11で分離され抽出された粉粒片をバイオマス粉砕機13で粉砕し、固体バイオマスの微粉粒としたが、図3に示すように、分離装置11で分離され抽出された粉粒片を炭化装置26に導き炭化処理して、分離装置で分離された固体バイオマス微粉粒に混合し、固体バイオマス燃料とするようにしてもよい。
【0024】
本発明の実施の形態によれば、固体バイオマスを分離装置11で、微粉粒と石炭粉砕機15では粉砕できない粉粒片とに分離し、分離した粉粒片をバイオマス粉砕機13で微粉粒に粉砕し、または炭化装置26で炭化処理し、分離装置11で分離した固体バイオマス微粉粒に混合して固体バイオマス燃料とするので、硬質のバイオマス原料が混ざったバイオマスであっても、石炭と混焼させる燃料として取り扱うことができる。
【0025】
また、得られた固体バイオマス燃料を少なくとも1回は石炭供給ライン14の乗り継ぎ箇所を経由する箇所に投入するので、経由した石炭供給ライン14の乗り継ぎ箇所において、固体バイオマス燃料24が石炭19に容易に混合することができる。また、石炭供給ライン14の乗り継ぎ箇所で、固体バイオマス燃料を先にコンベア18に投入し、その固体バイオマス燃料24の上部に石炭19を投入するので、固体バイオマス燃料24が空気中に飛散することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係わる固体バイオマス燃料供給装置の一例を示すブロック構成図。
【図2】本発明の実施の形態における固体バイオマス燃料投入系統から石炭供給ラインに固体バイオマス燃料を投入する際の説明図。
【図3】本発明の実施の形態に係わる固体バイオマス燃料供給装置の他の一例を示すブロック構成図。
【符号の説明】
【0027】
11…分離装置、12…固体バイオマス燃料投入系統、13…バイオマス粉砕機、14…石炭供給ライン、15…石炭粉砕機、16…ボイラ、17…石炭バーナ、18…コンベア、19…石炭、20…乗り継ぎ建家、21…チューブ、22…ヘッド部、23…ボトム部、24…固体バイオマス燃料、25…シュート、26…炭化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された粉粒片を微粉粒に粉砕するバイオマス粉砕機と、前記分離装置で分離された固体バイオマス微粉粒及び前記バイオマス粉砕機で粉砕された粉粒片の微粉粒を混合して固体バイオマス燃料とし石炭を供給する石炭供給ラインに前記固体バイオマス燃料を投入する固体バイオマス燃料投入系統とを備えたことを特徴とする固体バイオマス燃料供給装置。
【請求項2】
固体バイオマスを微粉粒と石炭粉砕機では粉砕できない粉粒片とに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された粉粒片を炭化処理する炭化装置と、前記分離装置で分離された固体バイオマス微粉粒及び前記炭化装置で炭化された固体バイオマス炭化物を混合して固体バイオマス燃料とし石炭を供給する石炭供給ラインに前記固体バイオマス燃料を投入する固体バイオマス燃料投入系統とを備えたことを特徴とする固体バイオマス燃料供給装置。
【請求項3】
前記固体バイオマス燃料投入系統が前記固体バイオマス燃料を前記石炭供給ラインに投入する箇所は、前記石炭供給ラインのうち、少なくとも1回は前記石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所を経由する箇所であることを特徴とする請求項1または2記載の固体バイオマス燃料供給装置。
【請求項4】
前記固体バイオマス燃料投入系統が前記固体バイオマス燃料を前記石炭供給ラインに投入する箇所は、前記石炭供給ラインの乗り継ぎ箇所であり、前記固体バイオマス燃料を先にコンベアに投入し、その固体バイオマス燃料の上部に石炭を投入することを特徴とする請求項3記載の固体バイオマス燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−215710(P2008−215710A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53637(P2007−53637)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】