説明

固体リチウム二次電池及びその製造方法

【課題】低温で焼成可能とすることによって製造コストの低減を図れ、且つ、固体電解質におけるリチウムイオン導電性を改善することにより、電池諸特性を飛躍的に向上させることができる固体リチウム二次電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】正極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む正極と、負極と、これら両極間に配置され固体電解質粒子から成る固体電解質層とから成る電極体を備えた固体リチウム二次電池において、正極に含まれる固体電解質粒子及び固体電解質層の固体電解質粒子は、共に、LiPSBrから成り、且つ、正極及び固体電解質層として、正極前駆体15と固体電解質前駆体14とが積層された状態において100〜400℃の範囲で焼成されたものを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電気化学性能を向上させる固体リチウム二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラ及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源としてリチウム二次電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界においても、低公害車としての電気自動車やハイブリッド自動車用の普及を図るべく、リチウム二次電池の開発が進められている。但し、現在市販されているリチウム二次電池は、可燃性の有機溶剤を溶媒とする有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。
【0003】
そこで、有機電解液を用いたリチウム二次電池とは異なって、液漏れしない電解質材料を使用できると共に、周囲温度に関わらず電解質から蒸気圧を発生することがないこと、及び、電気的絶縁性の固体電解質がイオン導電体としてのみならずセパレータとしての機能をも発揮しうるので大きなコスト削減が期待できること、といった利点を備えた固体リチウム二次電池の開発が盛んに行われている(下記特許文献1参照)。
【0004】
固体二次電池のその他の利点としては、例えば、技術的に成熟した電池系〔例えば、電解質としてリン酸リチウムオキシナイトライドガラス(LiPONで表され、リチウムイオン導電性が2×10−6S/cm程度)を用いた電池〕では、優れた長期サイクル特性が得られること、それゆえ高い信頼性が得られること、並びに生産コストが低減できることである。そして、固体電解質に関する主たる発明は、一次又は二次電池の正極負極間で様々な方法によって薄膜として堆積し得るガラス質物質及び非晶質物質に関するものである。この場合において、固体電解質層の典型的な厚さは数μmであるが、その厚さは用途及び使用時の電流に大きく依存している。
【0005】
ここで、上記固体リチウム二次電池において、固体単層間の接触状態を良好に保つことは、良好なレート特性、低い分極、安定したサイクル特性及び高い充放電サイクル効率を確保するために極めて重要となる。したがって、物質層(固体電解質層)の内部、及び二層間(例えば、正極と固体電解質層との間)の界面で一次粒子同士を密接に接触させるべく、スパッタリング、蒸着、エピタキシャル成長等の方法によって固体電解質層を製造する方法が知られている。これらの方法を用いた場合、用いられる化合物の性質に依存し、例えば、上述したように、リチウムイオン導電性が極めて高いLiPONを真空状態でスパッタリングした場合には、薄膜マイクロリチウム二次電池用の薄い電解質層を得ることができる。しかしながら、スパッタリング、蒸着、エピタキシャル成長等の方法は製造に時間がかかり、量産性に乏しく、また高コストである。
【0006】
このようなことを考慮して、リチウムイオン導電体として機能する非晶質酸化物層を有する固体リチウムイオン二次電池が提案されている。具体的な製造方法としては、正極グリーンシートと固体電解質グリーンシートとを重ね合わせた後、400℃以下の温度で有機バインダーをとばし、最後に、グリーンシートを高温で焼結するという方法が提案されている(下記特許文献2参照)。
また、リン酸化合物〔Li1+xAlGe2−x(PO、又は、Li1+xAlTi2−x(PO(0<x<1)〕から成るリチウムイオン導電性ペレットを約700〜800℃の温度で焼結し、固体電解質粒子間の界面抵抗を下げた電解質層が提案されている(下記特許文献3参照)。
【0007】
更に、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表される固体電解質が開示されている(下記特許文献4参照)。尚、特許文献4の発明者であるKong氏と本願の発明者との情報交換により、この固体電解質は密閉系で温度を上げても約590℃まで分解せず、約590℃で溶解することが判っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/059794A2
【特許文献2】US20090193648A1
【特許文献3】EP2058880A1
【特許文献4】WO2009/047254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2及び3に記載された発明では、焼成温度が700〜1000℃であって、極めて高いため、焼成炉の大型化や消費電力の増大によって、固体リチウム二次電池の製造コストが高騰する。加えて、上記特許文献2及び3に記載された固体電解質のリチウムイオン伝導度はせいぜい1.3×10‐3S/cmであるため、電池特性の飛躍的向上には不十分であるという課題を有していた。また、上記特許文献4では、固体電解質を用いて実際に電池を作製するに至っていない。
【0010】
そこで本発明は、低温で焼成可能とすることによって製造コストの低減を図れ、且つ、固体電解質におけるリチウムイオン導電性を改善することにより、電池諸特性を飛躍的に向上させることができる固体リチウム二次電池及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、正極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む正極と、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極と、これら両極間に配置され固体電解質粒子から成る固体電解質層とから成る電極体を備えた固体リチウム二次電池において、上記正極に含まれる固体電解質粒子及び上記固体電解質層の固体電解質粒子は、共に、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成り、且つ、上記正極及び固体電解質層として、上記正極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された正極前駆体と上記固体電解質粒子から成る固体電解質前駆体とが積層された状態において100〜400℃の範囲で焼成されたものを用いることを特徴とする。
【0012】
上記化学式で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料は、従来のガラス材料とは異なり、明確な結晶構造を有する。結晶相は、例えば、Li固体NMR(核磁気共鳴)分光法によって分析することができ、極めて高い固有のリチウムイオン導電性を有することが知られている。具体的には、上記背景技術で示した材料のリチウムイオン伝導度はせいぜい1.3×10‐3S/cmであるのに対して、上記化学式で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料はリチウム過剰材料であり、室温であっても高い固有のリチウムイオン伝導度を示す(室温であっても、約10−2〜10−3S/cmである[H.-J. Deiseroth, S.-T. Kong, H. Eckert, J. Vannahme, C. Reiner, T. Zai, M.S Schlosser, Angew . Chem. Int. Ed. 2008, 47, 755参照])。
【0013】
但し、リチウムイオン導電性材料は粒子状であるので、単に加圧しただけでは、粒子の境界が正極又は電解質層におけるリチウムイオンの移動を制限することとなって、全体的なリチウムイオン導電性を向上させることはできない。
【0014】
そこで、上記構成の如く、正極前駆体と固体電解質前駆体とが積層された状態において焼成すれば、固体電解質粒子同士及び固体電解質粒子と正極活物質粒子との空間が小さくなり、しかも、固体電解質粒子同士及び固体電解質粒子と正極活物質粒子との接触面積が増大する。このため、粒子の境界が正極又は電解質層におけるリチウムイオンの移動を制限するのを抑制できるので、正極内及び電解質層内におけるリチウムイオン導電性が向上すると共に、正極と電解質層との界面におけるリチウムイオン導電性も向上する。この結果、固体リチウム二次電池の充電容量が増大すると共に、分極を抑制できる等の利点が発揮される。
尚、焼成温度を100〜400℃に規制するのは、当該温度が低過ぎると、焼結効果が十分に発揮されず、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮されない一方、当該温度が高過ぎると、固体電解質が分解するからである。
【0015】
また、正極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む正極と、負極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む負極と、これら両極間に配置され固体電解質粒子から成る固体電解質層とから成る電極体を備えた固体リチウム二次電池において、上記正極に含まれる固体電解質粒子、上記固体電解質層の固体電解質粒子、及び上記負極に含まれる固体電解質粒子は、全て、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成り、且つ、上記正負両極及び上記固体電解質層として、上記正極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された正極前駆体と、上記負極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された負極前駆体とが、上記固体電解質粒子から成る固体電解質前駆体を介して積層された状態において100〜400℃の範囲で焼成されたものを用いることを特徴とする。
上記構成であれば、上述した効果と同様の効果を奏する他、負極内におけるリチウムイオン導電性が向上すると共に、負極と電解質層との界面におけるリチウムイオン導電性も向上する。
【0016】
上記硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料がLiPSBrであることが望ましく、上記正極活物質粒子はLiTi12から成ることが望ましい。
【0017】
上記正極において、上記正極活物質粒子の総量と上記固体電解質粒子の総量との質量比が、30:70〜95:5の範囲に規制されることが望ましく、特に、60:40〜90:10の範囲に規制されることが望ましい。
このような範囲に規制するのは、正極活物質粒子の量が多くなると固体電解質粒子の量が少なくなり過ぎて、正極内におけるリチウムイオン導電性が低下する一方、正極活物質粒子の量が少なくなると、正極の容量が低下するからである。
【0018】
また、上記目的を達成するために本発明は、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、上記固体電解質前駆体ペレットの一方の面に上記正極前駆体を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、上記正極前駆体を加圧して、正極前駆体ペレットを作製する正極前駆体ペレット作製工程と、上記正極前駆体ペレットの一方の面に、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、上記正極前駆体を加圧して、正極前駆体ペレットを作製する正極前駆体ペレット作製工程と、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、上記正極前駆体ペレットの一方の面に、上記固体電解質前駆体ペレットを配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
上記3種の製造方法で固体リチウム二次電池を作製する場合には、焼成は100〜400℃の範囲で行えば良い(即ち、従来に比べて低温で焼成できる)ので、加熱エネルギーが小さくなり、しかも、耐熱性の余り高くない焼成炉を用いることができる。したがって、固体リチウム二次電池の製造コストを飛躍的に低減できる。
【0022】
また、上記化学式で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料を固体電解質として用いると、例えば、非晶質LiS−Pガラスを固体電解質として用いる場合と比べてさらなる利点がある。即ち、上記ガラス材料は、高エネルギーボールミルにおける機械粉砕によって高エネルギーを付加して製造する必要があるが、本発明で用いられる硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料は、混合して焼成するという単純な固体反応によって製造することができるので、高エネルギーの付加を必要としない利点がある。また、当該合成方法であれば、電池関連用途にとって、とりわけ重要な事項も満たしている点で特に有用である。即ち、容易に秤量でき、工業への応用性が高く、また、硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料の純度をコントロールすることが容易であるといった事項が十分に満たされている。
【0023】
上記2層ペレット作製工程における加圧力が100〜400MPaであることが望ましく、特に、250〜300MPaであることが望ましい。
このように2層ペレット作製工程における加圧力を規制するのは、当該圧力が低過ぎると、固体電解質粒子同士及び固体電解質粒子と正極活物質粒子との結着性が不十分となって、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮されないことがある一方、当該圧力が高過ぎると、機械的ストレスが大きくなって、固体電解質層と正極との間で層間剥離が生じたり、2層ペレットの変形が生じることがあるという理由による。
【0024】
上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜350℃であることが望ましく、特に、200〜300℃であることが望ましい。
このように焼成時の温度を規制するのは、同時焼成時の温度が低いと、焼結効果が十分に発揮されず、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮されないことがある一方、同時焼成時の温度が高いと、機械的ストレスが大きくなって、2層ペレットの割れや変形が生じることがあるという理由による。
【0025】
また、上記目的を達成するために本発明は、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、負極活物質粒子とを混合して負極前駆体を作製する負極前駆体作製工程と、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、上記固体電解質前駆体ペレットの一方の面に上記正極前駆体を配置する一方、他方の面に上記負極前駆体を配置した状態で加圧して3層ペレットを作製する3層ペレット作製工程と、上記3層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
上記構成であれば、負極においても、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0026】
上記3層ペレット作製工程における加圧力が100〜400MPaであることが望ましく、特に、250〜300MPaであることが望ましい。また、上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜350℃であることが望ましく、特に、200〜300℃であることが望ましい。更に、上記硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料がLiPSBrであることが望ましく、上記正極活物質粒子はLiTi12から成ることが望ましい。
【0027】
〔その他の事項〕
(1)上記化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料としては、LiPSX(XはCl、Br、及びIから成る群から選択される少なくとも1種)、LiPSeX(XはCl、Br、及びIから成る群から選択される少なくとも1種)、LiPOX(XはCl、Br、及びIから成る群から選択される少なくとも1種)、LiPS等が例示される。
【0028】
(2)3層ペレットを作製する方法としては、固体電解質前駆体ペレットの一方の面に正極前駆体を配置し、他方の面に負極前駆体を配置した状態で加圧する方法に限定するものではなく、いかなる方法かを問わず、固体電解質前駆体の一方の面に正極前駆体を配置し、他方の面に負極前駆体を配置すれば良い。例えば、固体電解質前駆体ペレットの一方の面に正極前駆体を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製した後、固体電解質前駆体ペレットの他方の面に負極前駆体を配置した状態で加圧する方法であっても良く、また、固体電解質前駆体ペレットの一方の面に負極前駆体を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製した後、固体電解質前駆体ペレットの他方の面に正極前駆体を配置した状態で加圧する方法であっても良い。更に、固体電解質前駆体ペレットの一方の面に負極前駆体ペレットを配置し、他方の面に正極前駆体ペレットを配置した状態で加圧する方法であっても良い。
【0029】
(3)固体電解質層は、正極と負極を電気的に確実に分離できれば薄い程好ましい。固体電解質層が薄ければ、電池の内部抵抗を低減することができるからである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、低温で焼成可能とすることによって製造コストを低減させることができ、且つ、固体電解質におけるリチウムイオン導電性を改善することにより、電池諸特性を飛躍的に向上させることができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】プレス後の2層ペレットを示す写真である。
【図2】本発明に係る固体リチウム二次電池の概略を示す説明図である。
【図3】本発明セルAと比較セルZとにおける充放電容量と電池電圧との関係を示すグラフである。
【図4】比較セルZにおけるLiPSBrの配置状態とリチウムイオン移動状態とを示す説明図である。
【図5】本発明セルAにおけるLiPSBrの配置状態とリチウムイオン移動状態とを示す説明図である。
【図6】本発明セルA、B1〜B4と比較セルZ、Y1、Y2における焼成温度と、1サイクル目の放電容量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明に係る固体リチウム二次電池及びその製造方法について説明する。なお、この発明における固体リチウム二次電池及びその製造方法は、下記の形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0033】
〔正極前駆体(正極合剤)の作製〕
先ず、LiPSBrから成る固体電解質をボールミルで混合して、平均粒径1〜50μmの固体電解質粒子を作製した。次に、カーボンで表面を被覆されたチタン酸リチウム(LiTi12であって、粒径は約0.1〜10μm。尚、以下、LTOと称するときがある)から成る正極活物質粒子と、上記固体電解質粒子(イオン導電体粒子)とを混合して、正極前駆体(正極合剤)を作製した。この場合、LTO(導電剤としてのカーボンを2%含む)と固体電解質粒子との比率は、質量比で70:30となるようにして混合した。尚、正極活物質粒子と固体電解質粒子との混合は、両者が均一に分布するように充分に撹拌する必要がある。
【0034】
〔固体電解質前駆体ペレットの作製〕
上記正極前駆体の作製で用いた固体電解質と同一の固体電解質40mgを直径11mmのプレス型に充たした後、一軸加圧成形装置を用いて約160MPaで加圧することにより、厚さ約200μmの固体電解質前駆体ペレットを作製した。
【0035】
〔2層ペレットの作製〕
一軸加圧成形装置のプレス型内に上記正極前駆体(粒状物)15mgを配置した後、正極前駆体上に上記固体電解質前駆体ペレットを載置し、約270MPaの圧力でプレスする。これによって、図1に示すように、固体電解質前駆体層14と正極前駆体層15とから構成される2層ペレットが形成される。
【0036】
〔2層ペレットの焼成〕
上記2層ペレットをガラスプレート間に配置して焼成炉内に搬送した後、アルゴン雰囲気下、350℃で2時間焼成することにより、固体電解質層とこの固体電解質層に密着している正極とを作製した。尚、焼成時に2層ペレットを加圧すれば、粒子同士の密着性がより向上することを考慮して、ホットプレスを用いて2層ペレットを約0.7MPaで加圧しつつ焼成した。
【0037】
〔負極の作製〕
未加工のアルミニウムプレート(15mm×15mm×0.3mm)上にリチウムシートをプレスした後、当該プレートを有機電解質〔例えば、4−メチル−1、3−ジオキソランに、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)を0.5モル/リットルの割合で添加した溶液〕内に2〜3日間保持する。その後、余剰リチウムを上記プレートの表面から除去することにより、リチウム−アルミニウム合金(厚さ:約300μm)から成る負極を作製した。
【0038】
〔電極体の作製〕
上記負極上に上記焼成後の2層ペレットを配置した後、約520MPaの圧力でプレスすることにより、電極体を作製した。
〔セルの作製〕
上記電極体の正極に、アルミニウム箔から成る正極集電体を固定する一方、負極に銅箔から成る負極集電体を固定した後、両集電体に両集電タブを固定し、更に、電極体をアルミラミネートから成る外装体内に密封することにより、図2に示す固体リチウム二次電池を作製した。図2において、1は固体電解質層、2は負極、3は正極、4は負極集電体、5は正極集電体、6は負極集電タブ、7は外装体、8は正極集電タブである。
尚、LiPSBrから成る固体電解質の酸化及び分解を防ぐために、電池の製造は全てアルゴン充填グローブボックスで行なった。また、上記電池における容量は約1〜1.5mAhである。
【0039】
(その他の事項)
(1)負極材料としてはリチウム−アルミニウム合金に限定するものではなく、その他のリチウム合金や金属リチウムであっても良い。更に、負極として、例えば黒鉛から成る負極活物質粒子と上述のLiPSBrから成る固体電解質粒子とを用いても良い。この場合には、正極と同様、固体電解質と同時にプレス、焼成することにより負極を作製することができる。また、負極が負極活物質及び固体電解質からなり、且つ、正極が正極活物質及び固体電解質以外のもの(例えば、導電剤や結着剤)から構成されるような電極体であっても良い。
【0040】
(3)2層ペレットの焼成温度としては350℃に限定するものではないが、焼成時の温度が低過ぎると、焼結効果が十分に発揮されず、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮されないことがある一方、焼成時の温度が高過ぎると、機械的ストレスが大きくなって、2層ペレットの割れや変形が生じることがある。したがって、例えば、上記形態の如く、固体電解質としてLiPSBrを用い、正極活物質としてLTOを用いる場合には、焼成時の温度は100〜400℃でなければならず、好ましくは200〜350℃であり、特に好ましくは200〜300℃である。
【0041】
(3)焼成時の雰囲気としては、上記アルゴン雰囲気に限定するものではなく、窒素雰囲気等他の不活性雰囲気、又は、真空雰囲気であっても良い。
【実施例】
【0042】
[第1実施例]
(実施例)
上記発明を実施するための形態と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製した試験セルを、以下、本発明セルAと称する。
【0043】
(比較例)
2層ペレットを焼成しない他は、上記実施例と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製した試験セルを、以下、比較セルZと称する。
【0044】
(実験)
上記本発明セルAと比較セルZとを下記条件で充放電し、充電容量と放電容量及び分極について調べたので、その結果を、図3及び表1に示す。尚、充電容量と放電容量とは1回目の充放電における各容量であり、また、分極は、電池容量が半分になったときの充放電プラトー間の電圧の差とした。
【0045】
〔充放電条件〕
・充電条件
75℃の雰囲気下、It/10(約150μA)の電流で、電池電圧2.5V(vs.Li/Li)まで充電するという条件。
・放電条件
75℃の雰囲気下、It/10(約150μA)の電流で、電池電圧0.5V(vs.Li/Li)まで放電するという条件。
なお、上記充放電間に各電池を10分間放置した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1及び図3に示すように、本発明セルAは比較セルZに比べて、充放電容量が約33%増大していることが認められる。また、本発明セルAは比較セルZに比べて、分極が80mV低下していることが認められる。
これは、比較セルZでは2層ペレットの焼成を行っていないので、図4に示すように、固体電解質層における固体電解質粒子(LiPSBr粒子)11同士の接触面積が小さくなって、電解質層でのリチウムイオン拡散が遅くなる。また、図4には示していないが、正極においても固体電解質粒子同士及び固体電解質粒子と正極活物質粒子との接触面積が小さくなって、正極でのリチウムイオン拡散が遅くなる。これに対して、本発明セルAでは2層ペレットの焼成を行っているので、図5に示すように、固体電解質層における固体電解質粒子(LiPSBr粒子)11同士の接触面積が大きくなって、電解質層でのリチウムイオン拡散が速くなる。また、図5には示していないが、正極においても固体電解質粒子同士及び固体電解質粒子と正極活物質粒子との接触面積が大きくなって、正極でのリチウムイオン拡散が速くなる。以上の理由により、本発明セルAは比較セルZに比べて、充放電容量の増大と極性の低下とを図ることができるものと考えられる。また、表1には示していないが、上述した理由により、本発明セルAは比較セルZに比べて負荷特性も向上すると考えられる。
【0048】
[第2実施例]
(実施例1)
2層ペレットの焼成において、焼成温度を100℃、焼成時間を3時間とした他は、上記第1実施例の実施例と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製した試験セルを、以下、本発明セルB1と称する。
【0049】
(実施例2〜4)
2層ペレットの焼成において、焼成温度を各々、200℃、300℃、400℃とした他は、上記実施例1と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製した試験セルを、以下それぞれ、本発明セルB2〜B4と称する。
【0050】
(比較例1、2)
2層ペレットの焼成において、焼成温度を各々、450℃、550℃とした他は、上記実施例1と同様にして試験セルを作製した。
このようにして作製した試験セルを、以下それぞれ、比較セルY1、Y2と称する。
【0051】
(実験)
上記本発明セルB2〜B4と比較セルY1、Y2とを、前記第1実施例の実験に示した条件と同一の条件で充放電し、充電容量と放電容量及び分極について調べたので、その結果を、図6及び表2に示す。尚、充電容量と放電容量とは1回目の充放電における各容量であり、また、分極は、電池容量が半分になったときの充放電プラトー間の電圧の差とした。更に、理解の容易のため、図6及び表2には、前記本発明セルAと比較セルZにおける実験結果についても記載している。
【0052】
【表2】

【0053】
図6及び表2から明らかなように、本発明セルA、B1〜B4は比較セルZ、Y1、Y2に比べて、充放電容量が増大していることが認められ、且つ、分極が低下していることが認められる。
本発明セルA、B1〜B4、及び、比較セルY1、Y2の固体電解質を比較したところ、焼成温度が100〜400℃の本発明セルA、B1〜B4では固体電解質は分解しないが、焼成温度が450℃以上の比較セルY1、Y2では固体電解質が分解していることが認められた。
【0054】
ここで、本発明に用いる固体電解質を密閉系で用いた場合には約590℃まで分解は起きず、約590℃で溶解することが判っている。したがって、590℃未満で焼成すれば良いとも考えられる。しかしながら、固体リチウム二次電池の材料として用いる場合等、この固体電解質を開放系で用いた場合には、約450℃で固体電解質が分解することを本願発明者らは見出した。このように、密閉系と開放系とで異なる挙動を示す理由としては、密閉系の場合、温度上昇して固体電解質が昇華すると、系内の圧力が上昇するため、上述の如く、固体電解質は分解されずに溶融する。これに対して、開放系の場合には、温度上昇して固体電解質が昇華しても、系内の圧力は上昇しないため、上述の如く、固体電解質が分解するものと考えられる。
【0055】
以上のことから、焼成温度は400℃以下に規制する必要がある。尚、本発明では固体電解質の焼成温度を100℃以上に規制しているが、これは、焼成温度が低過ぎると、焼結効果が十分に発揮されず、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮されないからである。
【0056】
また、本発明セルA、B2、B3は、本発明セルB1、B4と比べて、放電容量が大きくなっていることが認められる。これは、焼成時の温度が200℃以上であると、焼結効果が一層発揮されて、リチウムイオン導電性の向上効果が十分に発揮される一方、焼成時の温度が350℃(特に、300℃)以下であると、機械的ストレスの発生が抑えられるので、ペレットの割れや変形が抑制されるからである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の駆動電源等に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:固体電解質層
2:負極
3:正極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む正極と、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極と、これら両極間に配置され固体電解質粒子から成る固体電解質層とから成る電極体を備えた固体リチウム二次電池において、
上記正極に含まれる固体電解質粒子及び上記固体電解質層の固体電解質粒子は、共に、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成り、且つ、上記正極及び固体電解質層として、上記正極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された正極前駆体と上記固体電解質粒子から成る固体電解質前駆体とが積層された状態において100〜400℃の範囲で焼成されたものを用いることを特徴とする固体リチウム二次電池。
【請求項2】
正極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む正極と、負極活物質粒子及び固体電解質粒子を含む負極と、これら両極間に配置され固体電解質粒子から成る固体電解質層とから成る電極体を備えた固体リチウム二次電池において、
上記正極に含まれる固体電解質粒子、上記固体電解質層の固体電解質粒子、及び上記負極に含まれる固体電解質粒子は、全て、化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成り、且つ、上記正負両極及び上記固体電解質層として、上記正極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された正極前駆体と、上記負極活物質粒子及び上記固体電解質粒子が混合された負極前駆体とが、上記固体電解質粒子から成る固体電解質前駆体を介して積層された状態において100〜400℃の範囲で焼成されたものを用いることを特徴とする固体リチウム二次電池。
【請求項3】
上記硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料がLiPSBrである、請求項1又は2に記載の固体リチウム二次電池。
【請求項4】
上記正極活物質粒子はLiTi12から成る、請求項1〜3の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池。
【請求項5】
上記正極において、上記正極活物質粒子の総量と上記固体電解質粒子の総量との質量比が、30:70〜95:5の範囲に規制される、請求項1〜4の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池。
【請求項6】
上記正極活物質粒子の総量と上記固体電解質粒子の総量との質量比が、60:40〜90:10の範囲に規制される、請求項5に記載の固体リチウム二次電池。
【請求項7】
化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、
上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、
上記固体電解質前駆体ペレットの一方の面に上記正極前駆体を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、
上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、
上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、
を有することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項8】
化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、
上記正極前駆体を加圧して、正極前駆体ペレットを作製する正極前駆体ペレット作製工程と、
上記正極前駆体ペレットの一方の面に、上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、
上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、
上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、
を有することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項9】
化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、
上記正極前駆体を加圧して、正極前駆体ペレットを作製する正極前駆体ペレット作製工程と、
上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、
上記正極前駆体ペレットの一方の面に、上記固体電解質前駆体ペレットを配置した状態で加圧して2層ペレットを作製する2層ペレット作製工程と、
上記2層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、
上記2層ペレットにおける固体電解質層の他方の面に、金属リチウム又はリチウム合金を含む負極を配置した後、これらを加圧して電極体を作製する電極体作製工程と、
を有することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項10】
上記2層ペレット作製工程における加圧力が100〜400MPaである、請求項7〜9の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項11】
上記2層ペレット作製工程における加圧力が250〜300MPaである、請求項10に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項12】
上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜350℃である、請求項7〜11の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項13】
上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜300℃である、請求項12に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項14】
化学式Li(12−n−x)n+2−(6−x)(Bn+はP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb及びTaから選択される少なくとも一種、X2−はS、Se、及びTeから選択される少なくとも一種、YはF、Cl、Br、I、CN、OCN、SCN及びNから選択される少なくとも一種であり、0≦x≦2)で表され硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、正極活物質粒子とを混合して正極前駆体を作製する正極前駆体作製工程と、
上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子と、負極活物質粒子とを混合して負極前駆体を作製する負極前駆体作製工程と、
上記化学式で表されるリチウムイオン導電性材料と同一のリチウムイオン導電性材料から成る固体電解質粒子を加圧して、固体電解質前駆体ペレットを作製する固体電解質前駆体ペレット作製工程と、
上記固体電解質前駆体ペレットの一方の面に上記正極前駆体を配置する一方、他方の面に上記負極前駆体を配置した状態で加圧して3層ペレットを作製する3層ペレット作製工程と、
上記3層ペレットを100〜400℃の範囲で同時焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項15】
上記3層ペレット作製工程における加圧力が100〜400MPaである、請求項14に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項16】
上記3層ペレット作製工程における加圧力が250〜300MPaである、請求項15に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項17】
上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜350℃である、請求項14〜16の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項18】
上記焼成工程における同時焼成時の温度が200〜300℃である、請求項17に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項19】
上記硫銀ゲルマニウム鉱型結晶構造を有するリチウムイオン導電性材料がLiPSBrである、請求項7〜18の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。
【請求項20】
上記正極活物質粒子はLiTi12から成る、請求項7〜19の何れか1項に記載の固体リチウム二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−96630(P2011−96630A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148634(P2010−148634)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】