説明

固体状ポリオルガノシロキサンの製造方法

【課題】芳香族炭化水素を使用せず、低エネルギー及び短時間で、常温で固体状のポリオルガノシロキサンを製造する方法を提供する。
【解決手段】RSiO0.5単位、但しRは炭素数1から10の1価炭化水素基である、とSiO単位とを有する、25℃で固体状のポリオルガノシロキサンを製造する方法であって、
[1]オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを、酸触媒の存在下で加水分解反応及び縮合反応に付する工程、
[2]液状脂肪族炭化水素を添加する工程、但し、当該工程は、工程[1]の前、工程[1]の間、工程[1]の後のいずれに行われてもよい、次いで、
[3]液状脂肪族炭化水素相と水性相とを分液し、次いで、前記水性相を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で固体状のポリオルガノシロキサンの製造方法に関し、詳細には、芳香族溶剤を使用せずに、脂肪族炭化水素溶剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiO0.5単位およびSiO単位を有する樹脂は、MQレジンとして知られ、工業上、粘着剤、化粧料、離型剤の原料として、広く使用されている。該MQレジンのうち、常温で固体であるものは、通常、芳香族溶剤、特にトルエン中で製造される(特許文献1)。しかし、芳香族溶剤は環境上、衛生上好ましくない。該芳香族溶剤を減圧及び加熱下で、除去することが試みられているが、MQレジンとの親和性が高いため、該レジン中に残留し易い。たとえ少量であっても、トルエンを含むMQレジンは、例えば化粧品用途等に不適切である。
【0003】
トルエンに代えて、脂肪族溶媒下の反応によりMQレジンを製造する方法が知られている(特許文献2)。該方法は、MQレジンのシリコーン流動体に対する溶解性を高めることを課題とし、得られるMQレジンは液状のものに限られる。
【0004】
また、トルエンに代わるものとして、環状シロキサンを使用する方法が知られている(特許文献3)。しかし、該方法では、水、アルコールの除去を、常圧あるいは減圧下で加熱して行うため、エネルギー及び時間がかかる。
【特許文献1】特開昭61−195129号公報
【特許文献2】特開平5−345824号公報
【特許文献3】特許3218872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、芳香族炭化水素を使用せず、低エネルギー及び短時間で、常温で固体状のポリオルガノシロキサンを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、下記の方法である。
SiO0.5単位、但しRは炭素数1から10の1価炭化水素基である、とSiO単位とを有する、25℃で固体状のポリオルガノシロキサンを製造する方法であって、
[1]オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを、酸触媒の存在下で加水分解反応及び縮合反応に付する工程、
[2]液状脂肪族炭化水素を添加する工程、但し、当該工程は、工程[1]の前、工程[1]の間、工程[1]の後のいずれに行われてもよい、次いで、
[3]液状脂肪族炭化水素相と水性相とを分液し、次いで、前記水性相を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0007】
上記本発明の方法では、従来の芳香族溶剤に代えて、液状脂肪族炭化水素を添加し、水性相、即ち、水とアルコールとを主成分として含む相、とシロキサンと該脂肪族炭化水素溶剤を主として含む相とを分液する。これにより、該脂肪族炭化水素溶剤相から、ポリオルガノシロキサンを収率良く得ることができ、且つ、得られるMQレジン中に残留する脂肪族炭化水素溶剤も実質的に皆無である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
液状脂肪族炭化水素としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系の溶剤、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、これら2種以上の混合物が挙げられ、好ましくは、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソオクタン、イソデカン、などの炭素数7から10のパラフィン系、イソパラフィン系脂肪族炭化水素である。また、該脂肪族炭化水素を除去して固体状のポリシロキサンを得る場合には、沸点が180℃以下の溶剤が好ましい。
【0009】
脂肪族炭化水素は、工程[1]の酸触媒下での加水分解反応及び縮合反応(以下「[1]加水分解・縮合工程」とする)に付する前、工程[1]の間、工程[1]の後のいずれに添加されてもよい。又は、後述する工程[4]反応混合物に塩基を添加して反応混合物を塩基性にし、加熱下で縮合反応に付する工程(以下[4]熟成工程とする)の後で加えてもよい。好ましくは、[1]加水分解・縮合工程後であって、[4]熟成工程の前に添加する。添加は、一度に行ってもよいし、数回に分けて行ってもよい。また、[1]加水分解・縮合工程の間及び[4]熟成工程の間に、夫々添加してもよい。添加する量は、得られるポリシロキサンの理論収量100質量部に対して25〜250質量部、好ましくは、30〜100質量部である。前記下限値より少量であると、炭化水素溶剤相が粘凋になり十分に分液することができず、前記上限値を超えて添加しても、濃縮等に費用及び時間がかかるだけである。
【0010】
[1]加水分解・縮合工程に付するオルガノシランは、下記式(1)で示され、
SiX (1)
ここで、Rは互いに異なっていてよい、炭素数1から10の1価炭化水素基または水素原子であり、Xはアルコキシ基または水酸基である。該炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などのアルケニル基などが例示される。特にメチル基、フェニル基が好ましい。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが例示できる。メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0011】
上記オルガノシランに代えて、又は加えて使用されるオルガノジシロキサンは、下記式(2)であらわされ、
SiOSiR (2)
Rは上述の通りであり、メチル基及びフェニル基が好ましい。
【0012】
式(1)のオルガノシランとしては、(CHSiOH、(CHSiOCH、(CHHSiOCH、(CH(CH=CH)SiOCH、等が、式(2)のオルガノジシロキサンとしては、(CHSiOSi(CH、(CHHSiOSiH(CH、(CH(CH=CH)SiOSi(CH=CH)(CH、等を例示することができ、これらの混合物であってもよい。
【0013】
テトラアルコキシシランは、下記式(3)で表され、
(RO)Si (3)
Rは上述の通りであり、特にメチル基及びエチル基が好ましい。(3)の部分加水分解縮合物としては、ポリメチルシリケート、ポリエチルシリケート、ポリイソプロポキシシリケートなどが挙げられ、2種以上の混合物であってもよい。
【0014】
オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、[オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンのケイ素原子の合計]/[テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物のケイ素原子の合計]のモル比が、0.6から1.7、好ましくは0.6から0.9となる割合で反応に付される。
【0015】
テトラアルコキシシランに加えて、RSiX(R及びXは上述のとおり)RSiXで示されるオルガノシランを併用してもよい。
【0016】
[1]加水分解・縮合工程で使用する酸触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、トリフロロ酢酸、塩酸、などを例示できる。酸触媒の使用量はオルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の合計に対して、通常、0.2〜25質量%である。
【0017】
加水分解に用いる水の使用量は、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物中のアルコキシ基の合計に対して、通常、モル比で0.5〜3、好ましくは0.6〜2である。
【0018】
加水分解・縮合反応は次のようにしておこなう。オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、所望により、脂肪族炭化水素を反応容器に仕込み、酸触媒を添加し、攪拌しながら水を滴下する。水を滴下するときの温度は0〜100℃、特に30から80℃が好ましい。滴下時間は5分から1時間とすればよい。水を滴下したのちは、50〜150℃、より好ましくは60〜120℃で2〜8時間程度加熱して、縮合反応を進行させる。
【0019】
または、水、所望により脂肪族炭化水素溶剤を反応容器に仕込み、酸触媒を添加し、攪拌しながらオルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の混合物を滴下する。水を滴下するときの温度は0〜100℃、特に30から80℃が好ましい。滴下時間は5分から1時間とすればよい。その後、50〜150℃、より好ましくは60〜120℃で2〜8時間程度加熱して、加水分解・縮合反応を完了させる。
【0020】
加水分解・縮合反応後は、酸触媒の除去をおこなう。これには、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物などで中和する方法、または水洗をおこなう方法がある。
【0021】
好ましくは、目的のオルガノポリシロキサンの分子量を達成するために、[4]反応混合物に塩基を添加して反応混合物を塩基性にし、加熱下で縮合反応に付する工程([4]熟成工程)を行う。アルカリ金属塩類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが示される。過剰の塩基は、[4]熟成工程の後に、酢酸、クエン酸などの有機酸を加えて中和するか、水洗工程により除去する。好ましくは、[4]熟成工程の後であって、後述する工程[3]液状脂肪族炭化水素相と水性相とに分液し、次いで、前記水性相を除去する工程の前に、酢酸又はクエン酸の水溶液を添加し、中和と分液性の向上とを同時に達成する。
【0022】
オルガノシラン等の原料の配合割合を変化させることにより、ポリシロキサンのRSiO0.5単位およびSiO単位の比を調整することができ、使用目的に応じたポリシロキサンを製造することができる。また、上述のように、テトラアルコキシシランに加えて、トリもしくはジオルガノシランを使用することにより、RSiO1.0単位、RSiO1.5単位を導入しても良い。
【0023】
[1]加水分解・縮合工程後、又は[4]熟成工程を含む場合には該工程[4]の後に、[3]液状脂肪族炭化水素相と水性相とに分液し、次いで、前記水性相を除去する工程(以下[3]分液工程という)を行う。脂肪族炭化水素相には、ポリシロキサン及び脂肪族炭化水素が主として含まれ、水性相には加水分解により生成されたアルコール及び水が主として含まれる。[3]分液工程により、残留溶媒の無いポリシロキサンを、収率よく得ることができる。分液させるために反応混合物を静置する時間は、反応混合物及び添加した脂肪族炭化水素の量に依存するが、通常、10分〜3時間であり、アルコール及び水を加熱留去するのに比べて、遥かに短時間で済む。次いで、水性相を除去する。なお、脂肪族炭化水素相中にもアルコールと過剰に用いられた水が一部溶存しているが、溶存量は少ないので、脂肪族炭化水素と共沸させて容易に除去することができる。また、脂肪族炭化水素相中に塩等が不溶物として存在する場合は、濾過などの方法で除去することができる。このようにして、オルガノポリシロキサンの脂肪族炭化水素溶液を得ることができる。
【0024】
好ましくは、[3]分液工程の直前に、層分離を促進させるために水、又は前述の[4]熟成工程を含む場合には、有機酸水溶液を添加する。添加する量は、得られるポリシロキサンの理論収量100質量部に対して1〜200質量部、好ましくは3〜60質量部である。有機酸水溶液としては、前記酢酸、クエン酸に加え、ギ酸、プロピオン酸、乳酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、アセト酢酸、クロロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、又はこれらの混合物の、1〜20質量%水溶液が例示される。
【0025】
オルガノポリシロキサンの脂肪族炭化水素溶液から、固体状ポリオルガノシロキサンを得る場合には、脂肪族炭化水素溶液を常圧又は減圧下に、溶液を静置して又は撹拌流動させながら加熱する方法、スプレードライヤーのように気流中に溶液を噴霧、分散させる方法、流動熱媒体を利用する方法などを用いる。なおこの際、前処理として加熱、減圧などの方法で溶液を濃縮してもよい。また、後乾燥などの後処理をおこなってもよい。取り出した固体状ポリオルガノシロキサンが凝集している場合には、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミルなどの粉砕器で解砕し、又は分級処理することも可能である。
【0026】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、例中の部は質量部を示したものである。また、Meはメチル基を表す。分子量はGPC分析によりポリスチレン換算分子量として求めた。
【0027】
[実施例1]
反応容器中に、ヘキサメチルジシロキサン(500部)、ポリエチルシリケート(SiO分40%)(1100部)、及び硫酸(9.0部)を入れて混合し、50℃に加熱した後、混合物を攪拌しながら、水(297部)を滴下し、77℃で5時間加熱した。反応混合物に、イソパラフィン(沸点範囲90〜140℃)(350部)を加え、水酸化カリウム水溶液(21部)を添加し、さらに70℃、2時間加熱した。ついでクエン酸水溶液(200部)を加えて中和した。30分間静置し、水性層とシロキサン層とに分液して、水性相を捨てた。シロキサン層を加熱、攪拌し、共沸により、残留しているアルコール、水を留去した。アルコール、水の留去に2時間を要した。不揮発分が70%となるように蒸留残渣にイソパラフィンを添加し、濾過により不溶分を除去した。98%の収率でMeSiO0.5単位およびSiO単位を含有するポリシロキサンのイソパラフィン溶液(1320部)を得た。MeSiO0.5単位/SiO単位のモル比は0.84であった。不揮発分69.8%、粘度27.9mm/s、重量平均分子量2400であった。
【0028】
[実施例2]
このポリシロキサンのイソパラフィン溶液からスプレードライ法によりイソパラフィンを除去して、粉体状のポリシロキサンを得た。該ポリシロキサン中のイソパラフィンは検出限界以下であった。残留溶媒の測定は、粉体状オルガノポリシロキサン(0.5g)を20mLバイアルびん中で80℃、20分間加熱し、発生ガスを、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー分析しておこなった。各溶媒の検出限界は、1ppmであった。
【0029】
[実施例3]
反応容器中に、ヘキサメチルジシロキサン(428部)、ポリエチルシリケート(SiO分40%)(1100部)、硫酸(9.0部)を入れて混合し、50℃に加熱した後、混合物を攪拌しながら、水(297部)を滴下し、77℃で5時間加熱した。反応混合物にヘプタン(350部)を加え、水酸化カリウム水溶液(21部)を添加し、さらに70℃、2時間加熱した。ついでクエン酸水溶液(200部)を加えて中和した。反応混合物を30分間静置し、水性層とシロキサン層とに分液して、水性相を捨てた。シロキサン層を加熱し共沸により、アルコール、水を留去した。アルコール、水の留去に1時間45分を要した。溶液層の不揮発分が70%となるようにヘプタンを添加し、濾過により不溶分を除去して、92%の収率でMeSiO0.5単位およびSiO単位を含有するポリシロキサンのヘプタン溶液(1136部)を得た。MeSiO0.5単位/SiO単位のモル比は0.72であった。不揮発分70.3%、粘度38.9mm/s、重量平均分子量3100であった。
【0030】
[実施例4]
このポリシロキサンのヘプタン溶液をスプレードライ法によりヘプタンを除去したところ、粉体状のポリシロキサンが得られた。実施例3と同様にガスクロマトグラフィー分析したところ、残留ヘプタンは検出限界以下であった。
【0031】
[実施例5]
反応容器中に、ヘキサメチルジシロキサン(468部)、水(439部)、塩酸(293部)、エタノール(146部)、イソパラフィン(293部)を入れて混合し、70℃に加熱した後、テトラエトキシシラン(1520部)を滴下し、70℃で5時間加熱した。反応混合物を30分間静置し、水性層とシロキサン層とに分液して、シロキサン層を水洗した。水性相を捨て、シロキサン層を加熱し共沸によりアルコール、水を留去した。アルコール、水の留去に1時間50分を要した。溶液層の不揮発分が60%となるようにイソパラフィンを添加し、濾過により不溶分を除去して、95%の収率でMeSiO0.5単位およびSiO単位を含有するポリシロキサンのイソパラフィン溶液(1429部)を得た。MeSiO0.5単位/SiO単位のモル比は0.79であった。不揮発分60.5%、粘度5.9mm/s、重量平均分子量2900であった。
【0032】
[実施例6]
このポリシロキサンのイソパラフィン溶液をスプレードライ法によりイソパラフィンを除去したところ、粉体状のポリシロキサンが得られた。実施例3と同様にガスクロマトグラフィー分析したところ、残留イソパラフィンは検出限界以下であった。
【0033】
[比較例1]
反応容器中に、ヘキサメチルジシロキサン(500部)、ポリエチルシリケート(SiO分40%)(1100部)、硫酸(9.0部)を入れて混合し、50℃に加熱した後、攪拌しながら、水(297部)を滴下し、77℃で5時間加熱した。イソパラフィン(沸点範囲90〜140℃)(350部)を加え、水酸化カリウム水溶液(21部)を添加し、さらに70℃、2時間加熱した。ついでクエン酸水溶液(200部)を加えて中和した。この混合物を加熱、攪拌し共沸により、アルコール及び水を留去したが、6時間30分を要した。溶液層の不揮発分が70%となるようにイソパラフィンを添加し、濾過により不溶分を除去して、97%の収率でMeSiO0.5単位およびSiO単位を含有するポリシロキサンのイソパラフィン溶液(1296部)を得た。MeSiO0.5単位/SiO単位のモル比は0.84であった。不揮発分70.3%、粘度30.2mm/s、重量平均分子量2600であった。
【0034】
[比較例2]
反応容器中に、ヘキサメチルジシロキサン(500部)、ポリエチルシリケート(SiO分40%)(1100部)、硫酸(9.0部)を入れて混合し、50℃に加熱した後、攪拌しながら、水(297部)を滴下し、77℃で5時間加熱した。トルエン(350部)を加え、水酸化カリウム水溶液(21部)を添加し、さらに70℃、2時間加熱した。ついでクエン酸水溶液(200部)を加えて中和した。反応混合物を30分間静置したが、水性層とシロキサン層との分離が不完全であったので、さらに2時間静置した。また、水性層とシロキサン層との間に、若干の中間層があった。分液して水性相と中間層を捨てた。シロキサン層を加熱、攪拌し共沸により、アルコール、水を留去した。アルコール、水の留去に2時間を要した。溶液層の不揮発分が70%となるようにトルエンを添加し、濾過により不溶分を除去して、89%の収率でMeSiO0.5単位およびSiO単位を含有するポリシロキサンのトルエン溶液(1203部)を得た。MeSiO0.5単位/SiO単位のモル比は0.84であった。不揮発分69.5%、粘度21.5mm/s、重量平均分子量2900であった。
[比較例3]
このポリシロキサンのトルエン溶液から、スプレードライ法によりトルエンを除去して、粉体状のポリシロキサンを得た。実施例3と同様にガスクロマトグラフィー分析したところ、トルエンの残留量が31ppmであった。
【0035】
比較例1は、本願発明の分液工程を欠く方法である。該方法では、本発明の方法より長い時間と、多くの熱エネルギーを要した。比較例2で使用したトルエンは水性層との分離が悪く、その結果、MQレジンの収率が低かった。さらに、生成物中の残留トルエン量も多かった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の方法によれば、芳香族炭化水素を使用せず、低エネルギー及び短時間で、常温で固体状のポリオルガノシロキサンを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO0.5単位、但しRは炭素数1から10の1価炭化水素基である、とSiO単位とを有する、25℃で固体状のポリオルガノシロキサンを製造する方法であって、
[1]オルガノシラン及び/又はオルガノジシロキサンと、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを、酸触媒の存在下で加水分解反応及び縮合反応に付する工程、
[2]液状脂肪族炭化水素を添加する工程、但し、当該工程は、工程[1]の前、工程[1]の間、工程[1]の後のいずれに行われてもよい、次いで、
[3]液状脂肪族炭化水素相と水性相とを分液し、次いで、前記水性相を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程[1]の後であって工程[3]の前に、
[4]反応混合物に塩基性物質を添加して反応混合物を塩基性にし、加熱下で縮合反応に付する工程、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程[2]が、工程[1]の後であって工程[4]の前に行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程[3]の直前に、[5]水を添加する工程、をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程[5]が、工程[4]の後に行われ、該工程[5]が水に代えて有機酸水溶液を添加して反応混合物を中和する工程である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記液状脂肪族炭化水素が、炭素数7から10の、パラフィン系及びイソパラフィン系脂肪族炭化水素から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサンの理論収量100質量部に対して25〜250質量部の前記液状脂肪族炭化水素が添加される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記酸触媒が、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、トリフロロ酢酸からなる群より選ばれる、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選ばれる、請求項2〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記有機酸が、クエン酸及び酢酸からなる群より選ばれる、請求項5〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
SiO0.5単位、但しRは炭素数1から10の1価炭化水素基、とSiO単位とからなり、芳香族炭化水素の含有量が1ppm未満である、25℃で固体状のポリオルガノシロキサン。

【公開番号】特開2007−297504(P2007−297504A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126144(P2006−126144)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】