説明

固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法

【課題】固体状廃棄物の集合物について、種類別の存在割合を定量的に把握可能とし、それによって処理・処分施設の適切な運用、及び運用効率の向上を図る。
【解決手段】固体状廃棄物10の集合物に白色光を照射し、該廃棄物からの反射光スペクトルについて、赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯での反射率を、廃棄物の集合物に対応する測定領域内を平面的に走査しながら順次赤外分光センサ18を用いて遠隔測定し、走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に、異なる波長帯の反射率の組み合わせを用いた正規化差分指標を計算し、正規化差分指標を予め設定した判定式に従って判定することで各エリア毎に廃棄物の種類を分類し、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出する。そして、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理・処分施設に搬入される固体状廃棄物の集合物を、細かなエリアに分けて、赤外分光センサによるリモートセンシング技術を利用してエリア毎に廃棄物の種類を特定し、種類毎の全体量に対する存在割合を定量的に算出する方法に関するものである。この技術は,特に廃棄物処理・処分施設の運用効率向上に有用である。
【背景技術】
【0002】
一般に固体状廃棄物(一般廃棄物・産業廃棄物)の取り扱いには、中間処理としての焼却処理や再資源化(リサイクル)処理、及び最終処分としての埋め立てなどがある。かつては、こうした処理と処分を分離して取り扱うことが多かったが、近年、廃棄物の処理・処分を総合的に取り扱える施設が増えつつある。例えば、「エコパークいずもざき」のように、焼却・破砕施設と最終処分場(主に埋め立て)と浸出水処理施設などを一体にした複合処理施設、あるいは「エコパーク寒川」や「エコパークあぼし」のように、焼却施設に熱回収施設と再資源化施設を併設した複合処理施設などが整備されつつある。
【0003】
このような廃棄物の焼却処理、再資源化処理、最終処分などを一箇所で一貫して行おうとする傾向は、循環型社会を形成するという観点に沿ったものとして、今後も増加するものと予想される。その場合、複合処理施設トータルとしての運営効率の向上が極めて重要となる。
【0004】
固体状廃棄物は、通常、トラックなどの運搬手段によって施設に搬入される。搬入される廃棄物の種類は様々であり、可燃ごみ(紙くず、木くず、繊維くずなどが含まれる)、廃プラスチック類、金属ごみ、不燃ごみ(ガラスくず、コンクリートくず、がれき類などが含まれる)などがある。これらの廃棄物は、必ずしも単一種類に分類されて1台のトラックで運搬されてくるわけではなく、複数種類の廃棄物が混在した状態で搬入されてくるのが実情である。そこで、施設内に搬入された廃棄物は、展開調査と呼ばれる方法によって種類と量が管理される。我が国においては、多くの場合、可燃性廃棄物は焼却処理されることから、この展開調査では、搬入廃棄物を作業者が直接目視観察(あるいはカメラ画像の観察)して可燃性廃棄物の量をおおまかに判断し、それにより処理の方法や手順を決定している。但し、焼却炉の形式等によっては、可燃性廃棄物の範囲に違いがあり、可燃ごみのみならず廃プラスチック類が可燃性廃棄物の範疇に含まれる場合もある。展開調査では、それらの事情も考慮して廃棄物の種類と量を見積もることになる。
【0005】
上記のような展開調査により見積もった可燃性廃棄物の量は、作業者が目視で経験的に判断しているので、実際の量と大きく異なる場合が生じることもある。そこで、可燃性廃棄物とそれ以外の不燃性廃棄物を適切に区別し、ある程度の確度で可燃性廃棄物量を定量的に見積もることができれば、燃焼効率の改善、焼却によるエネルギーコストの低減、展開調査の省力化、施設内での横待ち等の時間の短縮などが期待でき、それらは処理施設の運用効率の向上に繋がる。こうした可燃ごみの定量的な見積もりは、逐次の燃焼効率をコントロール可能となることを意味し、その時々のCO2 排出量の制御にも結びつく。
【0006】
また、廃プラスチック類は、焼却炉の形式などによって、前述のように可燃性廃棄物の範疇に含まれる場合もあるが、含まれない場合には再資源化処理される。その他、金属ごみも再資源化処理される。金属以外の不燃ごみ(ガラスくず、コンクリートくず、がれき類など)は埋め立て処分される。このような処理処分を適切に行うためには、施設に搬入された廃棄物の集合物について、種類別の存在割合を効率よく定量的に把握できるようにすることが肝要である。これは、処理施設のストックヤードなどに搬入された廃棄物を、再資源化施設などに搬出する際の判断基準としても有用である。例えば、再資源化可能廃棄物であっても、それがある決められた割合以下であれば直接埋め立てに回し、その割合以上であれば再資源化施設に搬入するなどの判断が可能となる。このことは、再資源化施設などにおける処理効率の向上にも繋がり、無駄の少ない循環型社会の確立に寄与できることになる。
【0007】
ところで、固体状廃棄物を種類毎に分類する技術は、一部で既に実用化されている。例えば、風力を利用して包装食品を包装材と生ごみとに分ける技術、遠心力・浮力・磁力を順に使って廃棄物を分別する技術などがある。また、赤外分光センサによるリモートセンシング技術を利用して、処分場の廃棄物、覆土状況などを管理・監視する方法もある(特許文献1)。ここでは、異なる波長帯の反射率の組み合わせによる正規化差分指標を用いて廃棄物や覆土状況などを評価し、覆土後の処分場の管理と閉鎖の判断・決定を行っている。
【0008】
しかし、これらの文献には、トラックの荷台などに積載されて施設に搬入されてくる固体状廃棄物の集合物について、種類別の存在割合を定量的に把握する手法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−199154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、固体状廃棄物の集合物について、種類別の存在割合を定量的に把握可能とし、それによって処理・処分施設の適切な運用、及び運用効率の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固体状廃棄物の集合物に白色光を照射し、該廃棄物からの反射光スペクトルについて、赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯での反射率を、廃棄物の集合物に対応する測定領域内を平面的に走査しながら順次赤外分光センサを用いて遠隔測定し、走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に、異なる波長帯の反射率の組み合わせを用いた正規化差分指標を計算し、正規化差分指標を予め設定した判定式に従って判定することで各エリア毎に廃棄物の種類を分類し、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出することを特徴とする固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法である。
【0012】
具体的には、例えば細分されたエリア毎に、廃棄物の種類を、正規化差分指標に基づき予め設定した判定式に従って、廃プラスチック類、可燃ごみ、金属ごみ、不燃ごみに分類し、それら廃棄物の種類毎の存在割合を求める。
【0013】
更に、エリア毎に、反射光スペクトルの1次微分値及び2次微分値を用いて1次と2次の正規化微分指標を計算し、予め設定した判定式に従って更に細かい分類を行うこともできる。例えば、可燃ごみを更に乾湿性状別に易燃性ごみと難燃性ごみとに細分し、可燃ごみを更にそれぞれ該当するエリア面積の総和により易燃性ごみ量と難燃性ごみ量の見積もりを行うこともできる。
【0014】
このような固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法を実施するための装置としては、固体状廃棄物の集合物の上方に位置し、廃棄物の集合物に白色光を照射するハロゲン光源と、廃棄物の集合物を撮影するカメラと、廃棄物からの反射光スペクトルを遠隔測定する赤外分光センサと、該赤外分光センサを縦横平面的に移動するセンサ駆動機構と、赤外分光センサの位置データと測定データとで計算処理を行うコンピュータとを具備し、カメラ画像にエリア毎の正規化差分指標を重ね合わせて表示すると共に、前記コンピュータで各エリア毎に廃棄物の種類を分類し、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで固体状廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出するような構成が望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る方法は、赤外分光センサを用いて固体状廃棄物からの反射光スペクトルを遠隔測定し、細分したエリア毎の廃棄物の種類を正規化差分指標を用いて決定し、それぞれの存在割合を算出する方法であるから、固体状廃棄物の集合物について、廃棄物の種類毎の量を定量的に且つ迅速・容易に見積もることができる。これによって、可燃ごみのみならず廃プラスチック類が可燃性廃棄物の範疇に含まれる場合でも、可燃性廃棄物の量をおおまかに判断し、処理の方法や手順を決定できる。また、本発明方法により、可燃性廃棄物とそれ以外の不燃性廃棄物を適切に区別し、ある程度の確度で可燃性廃棄物の量を定量的に見積もることができるので、燃焼効率の改善、焼却によるエネルギーコストの低減、展開調査の省力化、施設内での横待ち等の時間の短縮などが期待でき、それらは処理施設の運用効率の向上に繋がる。こうした可燃ごみの定量化は、逐次の燃焼効率をコントロール可能となることを意味し、その時々のCO2 排出量の制御にも結びつく。
【0016】
更に本発明によって廃棄物の種類毎の量が見積もれるため、廃プラスチック類が可燃性廃棄物の範疇に含まれない場合には、その量に応じて再資源化できるし、金属ごみも量や質に応じて再資源化処理できる。金属以外の不燃ごみが多い場合は埋め立て処分を選択できる。このような処理処分を適切に行うことができるので、再資源化施設などにおける処理効率の向上にも繋がり、本発明は、無駄の少ない循環型社会の確立に寄与できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明方法を実施するシステムとその動作の一例を示す概略図。
【図2】反射光スペクトルの測定例を示すグラフ。
【図3】廃棄物の種類と正規化差分指標(NDTI)の関係を示すグラフ。
【図4】正規化差分指標(NDTI)による廃棄物種類の分類手順の一例を示すフロー図。
【図5】廃棄物の種類と1次の正規化微分指標(NDDI)の関係を示すグラフ。
【図6】廃棄物の種類と2次の正規化微分指標(NDDI)の関係を示すグラフ。
【図7】正規化微分指標(NDDI)による可燃ごみの分類手順の一例を示すフロー図。
【図8】正規化微分指標(NDDI)による不燃ごみの分類手順の一例を示すフロー図。
【図9】廃棄物の処理・処分の手順の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、固体状廃棄物の集合物に白色光を照射し、該廃棄物からの反射光スペクトルについて、赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯での反射率を、廃棄物の集合物に対応する測定領域内を平面的に走査しながら順次赤外分光センサを用いて遠隔測定する。走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に、異なる波長帯の反射率の組み合わせを用いた正規化差分指標を計算し、正規化差分指標を予め設定した判定式に従って判定することで各エリア毎に廃棄物の種類を分類する。そして、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで固体状廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出する。
【0019】
図1は、本発明方法を実施するシステムとその動作の一例を示す概略図である。廃棄物10は、トラック12のオープンな荷台に積まれて、処理・処分施設に搬入される。本発明で対象とする廃棄物は固体状のものであって、通常は複数種類の廃棄物が混在した集合状態となって積載されているものである。トラック荷台の上方には、荷台上の廃棄物の集合物全体に白色光を照射するハロゲン光源14、及び荷台上の廃棄物の集合物全体を撮影するカメラ16が設置される。また、廃棄物からの反射光スペクトルを鉛直上方から遠隔測定する赤外分光センサ18と、該赤外分光センサ18をトラックの荷台の範囲(測定領域)で縦横平面的に移動するセンサ駆動機構20が設けられる。更に、赤外分光センサの位置データと測定データとで計算処理を行うコンピュータ22を設ける。なお、ここで用いる赤外分光センサ18は、測定波長が630〜2500nm程度のものである。
【0020】
上記の例は、処理・処分施設のストックヤード内などを想定したものであるが、その他にも、本発明は、ダンピングボックス内で廃棄物の種類と量を把握する場合などにも利用できることは言うまでもない。
【0021】
処理・処分施設における現地調査において、搬入された廃棄物の反射光スペクトルを測定した結果の一例を図2に示す。このように、廃棄物の種類に応じて反射光スペクトルは変化する。このことは従来公知であるが、本発明は、基本的にこのような現象を利用するものである。
【0022】
ハロゲン光源14から照射された白色光は廃棄物10の集合物で反射される。反射光スペクトルを赤外分光センサ18で検出し、赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯での反射率を測定する。この測定は、廃棄物の集合物の1点のみではなく、廃棄物の集合物全体に対応する測定領域内を平面的に走査しながら順次行う。図1のBは、トラック荷台の廃棄物の集合物を上方から見た図であり、矢印で示すように、平面的に走査して間欠的に測定する。これによって、走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に測定データを得る。コンピュータ22によって、各エリア毎に異なる波長帯の反射率の組み合わせを用いた正規化差分指標(NDTI:Normalized Differential Type Index)を計算する。正規化差分指標NDTIは、次式で定義される。
NDTIij=(Ri −Rj )/(Ri +Rj
ここで、Ri :i波長帯の反射率、Rj :j波長帯の反射率である。
得られた正規化差分指標を、予め設定した判定式に従って判定することで各エリア毎に廃棄物の種類を分類する。カメラで撮影した廃棄物の集合物の画像に、各エリア毎の廃棄物種類を重ね合わせて図1のCに示すように表示することができる。そして、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出することができる。例えば、クロスハッチングの部分が可燃ごみであるとすると、そのエリアを抽出し、全面積に対する割合を求めることで、可燃ごみの割合が算出される。
【0023】
廃棄物の種類を特定後、乾湿状態など更なる細分化が必要な場合は、各廃棄物の反射光スペクトル(波長と反射率の関係)を1次微分、あるいは2次微分し、それらの微分値から得られる正規化微分指標(NDDI:Normalized Differential type Derivative Index )を用いる。具体的には、階差計算法を用いて次のように計算する。
反射光スペクトルデータを、A1 ,A2 ,A3 ,・・・,Ai ,・・・,An (1≦i≦n)としたとき、微分を計算するためのデータ間の差をmで表すと、
1次微分は、Δ1m,j=Aj −Am+j (1≦j≦n−m)
2次微分は、Δ2m,j=Δ1m,j−Δ1m,m+j=Aj −2Am+j +A2m+j(1≦j≦n−m)
となる。このような方法で求めた微分値を用いて、次式で表される正規化微分指標(NDDI)を計算する。
NDDInij =(Δni−Δnj)/(Δni+Δnj
【実施例】
【0024】
赤外分光センサにより測定する赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯は、次の通りである。波長帯の分類は、通常、赤外分光センサで行われている分類に従っている。
R:赤色波長域(630nm〜690nm)
NIR:近赤外波長域(760nm〜860nm)
SWIR1:短波長赤外波長域(1600nm〜1700nm)
SWIR2:短波長赤外波長域(2145nm〜2185nm)
SWIR3:短波長赤外波長域(2185nm〜2225nm)
SWIR4:短波長赤外波長域(2235nm〜2285nm)
SWIR5:短波長赤外波長域(2295nm〜2365nm)
SWIR6:短波長赤外波長域(2360nm〜2430nm)
【0025】
正規化差分指標による廃棄物の種類の分類は、例えばSWIR1−NIR、SWIR5−SWIR1、R−SWIR1、SWIR6−SWIR2を用いて実施する。廃棄物の種類特定の基礎となる各種の廃棄物の正規化差分指標の例を図3に示す。この数値を用いることで、図4に示すフローに従って廃棄物種類を特定する。
(1)第1判定式:NDTI62<0.2を満たさないものについては廃プラスチック類と判定する。
(2)第2判定式:NDTI1N>−0.2を満たさないものについては紙くず・繊維くず(可燃ごみ)と判定する。
(3)第3判定式:NDTIR1<−0.1を満たさないものについては不燃混合ごみ・金属くず(不燃ごみ)と判定する。
(4)第4判定式:NDTI51<−0.1を満たさないものについては土壌・コンクリート・アスファルト等(不燃ごみ)と判定する。
(5)第4判定式:NDTI51<−0.1を満たすものについては木くず・可燃混合ごみ(可燃ごみ)と判定する。
このようにして、測定エリア毎に、廃棄物を廃プラスチック類、可燃ごみ、不燃ごみ(金属くずを含むものと含まないもの)に分類できる。
【0026】
更に細かい分類は、1次正規化微分指標と2次正規化微分指標を計算することで実施可能である。廃棄物種類の細分化の基礎となる各種の廃棄物の1次正規化微分指標の例を図5に、2次正規化微分指標の例を図6に、それぞれ示す。
【0027】
可燃ごみの細分化のフローを図7に示す。
(a)紙くず・繊維くずは、第5判定式:NDDI263 <1.5を満たさないものについては湿潤した紙くず・繊維くず(燃焼効率:小)、満たすものについては乾燥した紙くず・繊維くず(燃焼効率:大)と判定する。
(d)木くず・可燃混合ごみは、まず第6判定式:NDDI11N >−5.0を満たさないものについては湿潤した可燃混合ごみ(燃焼効率:小)と判定する。次に、第7判定式:NDDI263 >0.0を満たさないものについては乾燥した木くず(燃焼効率:大)と判定する。更に、NDDI263 <2.0を満たさないものについては乾燥した可燃混合ごみ(燃焼効率:大)、満たすものについては湿潤したあるいは異物が付着した木くず(燃焼効率:小)と判定する。このように、湿潤状態に応じて細かな分類ができる。
【0028】
不燃ごみの再分類のフローを図8に示す。
(b)不燃混合ごみ・金属くずは、第8判定式:NDDI151 <−15を満たさないものについては水や土が付着した金属くずまたは不燃混合ごみと判定し、満たすものについては洗浄不要の金属くずと判定する。
(c)土壌・コンクリート・アスファルトくずなどは、まず第9判定式:NDDI163 <10を満たさないものについてはアスファルトくずと判定する。次に、第10判定式:NDDI263 >0.5を満たさないものについては土壌と判定し、満たすものについてはコンクリートくずと判定する。このように、不燃ごみについても、細分化が可能である。
【0029】
このように赤外分光センサの走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に測定データを取得し、細分化されたエリア毎に、コンピュータで計算処理することで、そのエリアの廃棄物の種類が特定される。このようにして、全てのエリアについて、エリア毎の廃棄物の種類が求まる。そこで、全てのエリアの総面積に対する特定の廃棄物(例えば廃プラスチック類など)に相当するエリアの面積の合算の比率を求め、廃棄物の種類毎(例えば廃プラスチック類など)の割合を算出することができる。これを利用することによって、廃棄物の処理・処分施設の効率的な運用が可能となる。
【0030】
廃棄物の集合物の処理・処分のプロセスの一例を図9に示す。焼却炉の構造によって廃プラスチック類を焼却処理する場合と再資源化処理する場合とがあり、それによって処理・処分のフローが異なる。
(1)まず、廃プラスチック類を焼却しない場合は、廃プラスチック類の割合が規定値以上であれば、再資源化処理の工程を決定し、再資源化処理を行う。
(2)次に、廃プラスチック類を焼却する場合は、可燃ごみと廃プラスチック類を合わせた可燃性廃棄物の割合を合算する。そして、可燃性廃棄物の割合が規定値以上であれば焼却処分する。湿潤状況の割合を算出して燃焼効率の大小を求め、焼却処理の優先順位を決定し、それに応じて焼却処理する。
(3)金属くずの割合が規定値以上であれば、洗浄不要な金属くずの割合を算出し、再資源化処理の工程を決定し、再資源化処理を行う。
(4)コンクリート・アスファルトくずの割合が規定値以上であれば、選別破砕を行う。
(5)それら以外のものは、そのまま埋め立て処分とする。
なお、上記の各既定値は、例えば60%程度が一応の目安となるが、施設の構造、処理・処分の状況などによって適切な値を設定することになる。
【0031】
このように本発明では、廃棄物の種類毎の存在割合を定量的に見積もることができるため、処理・処分を一貫して適切に且つ効率よく実施することが可能となり、再資源化も可能となるため、循環型社会の形成に大きく貢献できる。
【符号の説明】
【0032】
10 廃棄物
12 トラック
14 ハロゲン光源
16 カメラ
18 赤外分光センサ
20 センサ駆動機構
22 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状廃棄物の集合物に白色光を照射し、該廃棄物からの反射光スペクトルについて、赤色域から短波長赤外域までの複数の波長帯での反射率を、廃棄物の集合物に対応する測定領域内を平面的に走査しながら順次赤外分光センサを用いて遠隔測定し、走査間隔と測定間隔によって決まるエリア毎に、異なる波長帯の反射率の組み合わせを用いた正規化差分指標を計算し、正規化差分指標を予め設定した判定式に従って判定することで各エリア毎に廃棄物の種類を分類し、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出することを特徴とする固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法。
【請求項2】
細分されたエリア毎に、廃棄物の種類を、正規化差分指標に基づき予め設定した判定式に従って、廃プラスチック類、可燃ごみ、金属ごみ、不燃ごみに分類し、それら廃棄物の種類毎の存在割合を求める請求項1記載の固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法。
【請求項3】
エリア毎に、反射光スペクトルの1次微分値及び2次微分値を用いて1次と2次の正規化微分指標を計算し、予め設定した判定式に従って、可燃ごみを更に乾湿性状別に易燃性ごみと難燃性ごみとに細分し、可燃ごみを更にそれぞれ該当するエリア面積の総和により易燃性ごみ量と難燃性ごみ量の見積もりを行う請求項2記載の固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出方法を実施するための装置であって、
固体状廃棄物の集合物の上方に位置し、廃棄物の集合物に白色光を照射するハロゲン光源と、廃棄物の集合物を撮影するカメラと、廃棄物からの反射光スペクトルを遠隔測定する赤外分光センサと、該赤外分光センサを縦横平面的に移動するセンサ駆動機構と、赤外分光センサの位置データと測定データとで計算処理を行うコンピュータとを具備し、カメラ画像にエリア毎の正規化差分指標を重ね合わせて表示すると共に、前記コンピュータで各エリア毎に廃棄物の種類を分類し、廃棄物種類毎に相当するエリアを抽出し、廃棄物種類毎のエリアの面積を合算し、全エリアの総面積に対する比率を算出することで廃棄物の集合物全体における廃棄物種類毎の存在割合を算出するようにした固体状廃棄物の種類毎の存在割合算出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−64538(P2011−64538A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214510(P2009−214510)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(509260835)財団法人日本環境衛生センター (2)
【出願人】(509260846)株式会社環境地質 (3)
【Fターム(参考)】