固体酸化物形燃料電池、その冷却方法、及び固体酸化物形燃料電池システム
【課題】小型・薄型化することが可能で、かつ、作動による昇温又は停止による降温において生じる熱応力に起因するモジュールの損傷を防止する固体酸化物形燃料電池、その冷却方法、及び固体酸化物形燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池1は、インターコネクタ3の外周部に形成された貫通孔55に、燃料又は空気を給排気するための給排気孔7aを有したガス供給管7が間隙58を有して備えられてスタック化されている。そして、燃料電池1は、作動温度時において、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面が密着するように構成されている。作動温度時に、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面は、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張によってかしめられて密着するため、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張による損傷が防止される。
【解決手段】燃料電池1は、インターコネクタ3の外周部に形成された貫通孔55に、燃料又は空気を給排気するための給排気孔7aを有したガス供給管7が間隙58を有して備えられてスタック化されている。そして、燃料電池1は、作動温度時において、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面が密着するように構成されている。作動温度時に、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面は、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張によってかしめられて密着するため、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張による損傷が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)、その冷却方法、固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の多機能化に伴い電力消費量が高まり、その結果バッテリーの持続時間が急速に短くなっている。バッテリーの種類として、1次電池、2次電池があるが、持続時間はいずれもユーザーの要求を満たすものではない。そこで、未だ製品化されていないものの、エネルギー密度が高く持続時間が長いという点で、マイクロ燃料電池に対する期待が高まっている。
【0003】
マイクロ燃料電池の形態としては、放熱・作動温度の観点から、一般に高分子電解質形燃料電池(PEFC)が主流で開発されてきており、形状としては、基板内に流路溝を設けたものや積層型が知られている。しかし、高分子電解質形燃料電池は、発電効率が低く、また貴金属の触媒を多量に使用する観点から望ましいとは言えない。
【0004】
他方、従来から開発が進められてきた比較的大型の燃料電池として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)がある。従来の固体酸化物形燃料電池は、大出力を得たいことから、燃料電極と空気極とが電解質を介して配置された、複数の同一形態のセルを用いてスタック化していた(例えば、特許文献1)。
【0005】
固体酸化物形燃料電池は、発電効率が高く、携帯機器への適用が有望視されているが、作動温度が高いことがネックとされてきた。しかし、昨今の研究開発により、従来の1000℃から600〜800℃へと作動温度の低温化が進み、高効率なマイクロ燃料電池としての利用の実現可能性がでてきた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−132933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、固体酸化物形燃料電池は、セルが比較的大きく、携帯機器への適用のためには、最低限の出力を確保しつつ、燃料電池本体のサイズをできるだけ小さくする必要がある。つまり、固体酸化物形燃料電池は、その使用目的から「小型」「急速起動」を可能とする素子設計が求められており、従来より開発が進められてきた比較的大型の定置型固体酸化物形燃料電池では、検討されていない新しい課題が生じた。
【0008】
固体酸化物形燃料電池において、実用上十分な発電量を得るために、インターコネクタを用いてセルを複数個電気的に接続するスタック化を行っているが、セルを積層してスタックを構成する場合において、作動温度が高温であるために、構成する部材間の熱応力に起因して接合部が損傷することが問題となる。また、セルやインターコネクタにクラックが生じ、発電が不能になる場合もある。従来の定置型固体酸化物形燃料電池では、サイズ上強度を維持することも可能であるが、サイズを小型化しつつも、作動による昇温又は停止による降温において生じる熱応力に起因する部材の損傷を防止することは困難であった。
【0009】
本発明の課題は、小型・薄型化することが可能で、かつ、作動による昇温又は停止による降温において生じる熱応力に起因するモジュールの損傷を防止する固体酸化物形燃料電池、また固体酸化物形燃料電池の損傷を防止する冷却方法、及び固体酸化物形燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタと、を備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、さらに、スタック内における空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材は、互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上して熱膨張シール部が形成され、熱膨張シール部は、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する固体酸化物形燃料電池が提供される。
【0011】
具体的には、インターコネクタは、燃料および空気をセルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有し、セルとインターコネクタとが交互に積層され、通路部に燃料又は空気を給排気するための給排気孔を有したガス供給管が貫通孔に間隙を有して備えられてスタック構造が形成され、さらに、作動温度時に間隙が無くなって、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面が密着して熱膨張シール部が形成される固体酸化物形燃料電池が提供される。
【0012】
本発明の固体酸化物形燃料電池において、より具体的には、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面は、作動温度時に、ガス供給管とインターコネクタの熱膨張差によってかしめられて密着するように構成する。
【0013】
また上記課題を解決するために、本発明によれば、セルの外周部がインターコネクタの外周部の第一面と第二面とに挟まれた状態で、セルとインターコネクタとが交互に積層されてスタック構造が形成され、インターコネクタの第一面側には、空気が流通する空気流通部、第二面側には、燃料が流通する燃料流通部が形成され、さらに、セルの外周部の表裏の面と、インターコネクタの外周部の第一面、第二面との密着性が温度によって異なり、作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して熱膨張シール部が形成される固体酸化物形燃料電池も提供される。
【0014】
この固体酸化物燃料電池において、セルとインターコネクタとが積層されたスタックの側面に、空気流通部を流通する空気及び燃料流通部を流通する燃料が外部に漏出することを防止するシール部材を配置することもできる。
【0015】
そして、シール部材は、多孔質の骨材にガラスを含浸した複合材によって形成することができる。さらにシール部材の外側にセラミックを接合する構成とすることができる。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタとを備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池の冷却方法であって、固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスをスタックに供給して冷却する固体酸化物形燃料電池の冷却方法が提供される。さらに、その後、設定温度から空気をスタックに供給して冷却するとよい。設定温度は、300℃〜500℃が好ましく、特に350℃〜450℃とすることが望ましい。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタとを備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池と、その固体酸化物形燃料電池に空気を供給する空気供給部と、固体酸化物形燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、固体酸化物形燃料電池の温度を測定する温度センサと、その温度センサによって測定した固体燃料電池の温度が作動温度から予め定められた設定温度まで、燃料供給部を制御して水素ガスをスタックに供給して冷却する制御部とを含む固体酸化物形燃料電池システムが提供される。さらに、制御部は、設定温度以下において、空気供給部を制御して空気をスタックに供給して冷却する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する部材の互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各部材の熱膨張差によって各部材間の密着性が向上するように構成されているため、急速昇温により発生する熱応力を累積させず、低応力スタック構造とすることができる。作動温度時に各部材間の密着性が向上するため、熱膨張シール部が形成されて、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止することができる。
【0019】
具体的には、本発明の固体酸化物形燃料電池は、インターコネクタに収容部を有することから、セルとインターコネクタとを交互に積層して形成される。また、インターコネクタに、燃料および空気をセルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有することから、貫通孔に給排気孔を有したガス供給管を備えて、セルに空気及び燃料を供給することができる。さらに、ガス供給管が貫通孔に間隙を有して備えられ、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面が、作動温度時に密着して間隙が無くなるように構成されており、作動温度時に熱応力に起因する固体酸化物形燃料電池の損傷を防止することができる。ガス供給管とスタック(インターコネクタ)との接合部を強固に固定せず作動温度時においてシール化することで、急激な昇降温に対して高耐久な構造とすることができる。
【0020】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池は、セルの外周部がインターコネクタの外周部の第一面と第二面とに挟まれた状態で、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタック構造とすることができ、セルの外周部の表裏の面と、インターコネクタの外周部の第一面、第二面との密着性が温度によって異なるように構成することにより、作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して空気及び燃料の漏出を防ぐことができる。
【0021】
本発明の固体酸化物形燃料電池の冷却方法は、固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスをスタックに供給して冷却することにより、セルに含まれるニッケルの酸化に伴う体積収縮によるセルの破壊を防止することができる。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池システムは、温度センサを備え、制御部によって、作動温度から予め定められた設定温度まで、燃料供給部を制御して水素ガスをスタックに供給して冷却し、設定温度以下では、空気供給部を制御して空気をスタックに供給して冷却することができる。これにより、セルに含まれるニッケルの酸化に伴う体積変動によるセルの破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1に本発明の固体酸化物形燃料電池(以下、単に燃料電池ともいう)1の一部斜視図を示す。また、図2に図1の断面Aにおける断面図を示す。燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタックが形成されている。
【0025】
図2に示すように、セル2は、電解質層11と、電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有し、平板状に形成されている。セル2の燃料極層12及び空気極層13は、多孔質電極層として形成され、例えば、燃料極層12は、Ni−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、空気極層13は、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、電解質層11は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)により形成することができる。
【0026】
セル2は、グリーンシート法により作成した電解質層11を構成する電解質焼成体(焼成条件:1400℃・1時間)に、燃料極層12を印刷法により形成し1400℃・1時間にて焼成し、空気極層13を同じく印刷法により形成した後1200℃1時間にて焼成して形成される。なお、本発明においては、緻密なジルコニア電解質層11を30μm、その電解質層11の両面に、燃料極層12を20μm、空気極層13を20μm形成し、基板厚(セル厚)は70μm、基板サイズは30mm×30mmとしてセル2を形成した。本発明は、後述するようなインターコネクタ3との接合構造を採用することにより、従来の酸化物形燃料電池に比べ大幅に小型化されており、携帯用電気機器のバッテリーに利用することができる。
【0027】
図3に図2の部分拡大図を示す。図3に示すように、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。また、インターコネクタ3の材料としては、フェライト系SUS、インコネル600、ハステロイ等のNi系耐熱合金を使用することができる。
【0028】
図2及び図3に示すように、セル2及びインターコネクタ3を交互に積層してスタック化することにより、図1に示すような燃料電池1を形成することができる。この場合において、各セル2は、燃料極層12が同一方向に(すなわち空気極層13も同一方向に)配置されている。
【0029】
インターコネクタ3とセル2との接合について、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。インターコネクタ3とセル2とは空気極層13又は燃料極層12にNi−Mnメタライズ層を形成した後、ロウ付けしても良いし、Ti等の活性金属を含んだ活性ロウ材を用いて直接接合しても良いが、図4(a)に示すように、セル2の外周部にロウ材61を付着させて多孔質電極層(空気極層13又は燃料極層12)をロウ材61により緻密化する。具体的には、セル2とインターコネクタ3との間に導電性物質を挟んだ状態において、セル2によって区切られたインターコネクタ3側の空間領域を減圧しつつ、導電性物質を溶解させることにより、図4(b)に示すように、ロウ材61を多孔質電極層に浸透させて多孔質電極層を緻密化し、セル2とインターコネクタ3とを接合することができる。また単に接合時に加圧することで、ロウ材61を多孔質電極層に浸透させて多孔質電極層を緻密化させても良い。これにより、多孔質電極層の外周部をシール部29とすることができる。なお、ロウ材61によって、多孔質電極層を緻密化した後に、インターコネクタ3とセル2とを接合してもよいし、緻密化と接合とを同時に行ってもよい。また、ガラス材料を用いて多孔質電極層を緻密化しシール部29としても良い。
【0030】
燃料極層12にニッケルを含む燃料電池1では、酸素雰囲気下において、酸化ニッケルへの変態が発生し、セル2の破壊を招きやすい。そのため、燃料極層12のニッケルを還元後、セル2とインターコネクタ3とを導電性物質であるロウ材61により接続するとよい。
【0031】
ロウ材厚みは10−30μmが良好な電気伝導性とシール性を得る観点から望ましい。ロウ付け雰囲気は1×10−3Pa以下の真空度で実施し、インターコネクタ3の内外の圧力差は5×10−4Pa以上設けることで、多孔質電極層内へロウ材61を含浸させることができる。
【0032】
なお、ロウ材としては、素子の作動環境が600−800℃の酸化雰囲気であることから、耐酸化性に優れたロウ材を選択することが望ましい。具体的には、Ag系、Cu系、Ni系の材料があるが、耐酸化性の観点からNi系が望ましい。具体的には米国WESGO社のIcronibsi13(製品名)やCronisi(製品名)、米国ウォールコルモノイ社Nicrobraz31(製品名)が使用可能である。
【0033】
インターコネクタ3は、燃料および空気をセル2のそれぞれの極に(つまり収容部20に)給排気する通路部56と、外周部に、通路部56に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔55とを有する。
【0034】
そして図5に示すように、インターコネクタ3の外周部に形成された貫通孔55に、通路部56に燃料又は空気を給排気するための給排気孔7aを有したガス供給管7が間隙58を有して備えられてスタック化されている。燃料電池1は、図2及び図3に示すように、インターコネクタ3とセル2の燃料極層12との間に燃料流路部、インターコネクタ3とセル2の空気極層13との間に空気流路部が形成されて、発電を行うことができる。なお、インターコネクタ3間は、ショート防止のために、間隙59を有して積層されている。また、図2の断面図にも示されるように、燃料流路部32と空気流路部31とがスタック方向において、交互に形成されている。このように、スタック化されることにより、高電圧を得ることができる。
【0035】
また、スタック化された燃料電池1は、図3に示すように、常温時において(作動前に)、ガス供給管7が貫通孔55に間隙58を有して備えられ、作動温度時において、図6に示すように、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面が密着する。すなわち、作動温度時に、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面は、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張差によってかしめられて密着する。このため、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張差による損傷を防止することができる。
【0036】
言い換えると、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材(本実施形態においては、ガス供給管7とインターコネクタ3)の互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上してスタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する熱膨張シール部30が形成される。
【0037】
本発明の燃料電池1は、図7に示すように、空気を供給する空気供給部67、水素ガス等の燃料を供給する燃料供給部68、燃料電池1の温度を測定する温度センサ65、及び温度センサ65の測定結果が入力され、空気供給部67及び燃料供給部(改質器)68を制御する制御部66を備えた固体酸化物形燃料電池システム100として構成されている。温度センサ65は、作動温度(例えば、600〜800℃)における耐久性があるものであれば、接触式、非接触式等、特に限定されないが、例えば、マイクロ熱電対を挿入しても良いし、金属薄膜の電気抵抗の温度依存性等を利用することもできる。また、制御部66には、予め定められた設定温度(300℃以上500℃以下の範囲にするとよいが、例えば400℃)が記憶されている。
【0038】
上記のような燃料電池1を含む固体酸化物形燃料電池システム100では、システム停止時にモジュール内の冷却のために高温で酸素を含むガスを導入すると、セル2に含まれるニッケルから酸化ニッケルへの変態が急激に発生し、セル2の破壊を招くことがある。そこで、本発明の固体酸化物形燃料電池システム100は、以下のように、設定温度までの冷却を水素ガスによって行い、その後空気を流すことでモジュールを冷却する。
【0039】
図8を用いて、固体酸化物形燃料電池システム100における作動停止処理について説明する。制御部66は、システムの作動が停止されるかを監視する(S1)。システムの作動が停止されると(S1:YES)、引き続き燃料供給部68によって水素ガスを供給する(S2)。
【0040】
制御部66は、温度センサ65からの信号により、モジュールの温度が400℃以下となるかを監視する(S3)。モジュールの温度が400℃以下となれば(S3:YES)、制御部66は、水素ガスの供給を停止して、空気の供給を開始する(S4)。
【0041】
さらに、制御部66は、温度センサ65からの信号により、モジュールの温度が常温となるかを監視し(S5)、モジュールの温度が充分に冷却されれば(常温近傍、例えば100℃)(S5:YES)、空気の供給を停止する(S6)。
【0042】
以上のように、設定温度(例えば、400℃)まで、水素ガスによって冷却し、その温度以下において、空気によって冷却することにより、セル2に含まれるニッケルの酸化に伴う体積変動によるセル2の破壊を防止することができる。
【0043】
また、上記構成において、インターコネクタ1に段差部を有する収容部を設けて、その収容部にセル2が収容されるように構成してもよい。すなわち、第一収容部及び第二収容部が、底面部23と周壁部とによって窪んだ形状に形成されて、周壁部に段差部が形成され、段差部にセル2を配置することにより、段差部と接するセル2の外周部がシール部29とされて、空気極層13と底面部23との間隙が空気流通部31、燃料極層12と底面部23との間隙が燃料流通部32とされた構成とすることもできる。さらに、シール部29の少なくとも一部が電気導通部とされて、セル2とインターコネクタ3とが電気的に接続された構成とすることもできる。具体的には、多孔質電極層として形成された燃料極層12及び空気極層13が導電性物質により緻密化されて形成される。導電性物質としては、ロウ材を使用することができる。
【0044】
以上に説明したガス供給管とインターコネクタとに間隙を形成する燃料電池1、冷却方法、固体酸化物形燃料電池システムは、図9に示すような円形の実施形態にも適用するこことができる。
【0045】
セル2は、前述の実施形態と同様に、電解質層11と、電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有して形成されている。燃料及び空気を流通させるために、セル貫通孔15が形成されている。
【0046】
インターコネクタ3は、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに、セル2を配置するために窪んだ形状に形成された第一収容部20a及び第二収容部20bが形成され、第一収容部20aに燃料極層12が内側とされてセル2が収容され、第二収容部20bに空気極層13が内側とされてセル2が収容され、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。詳細は、前述の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
設定温度まで水素ガスによって冷却する前述の冷却方法は、前述の燃料電池1に限られない。次に、前述の冷却方法を適用することのできる燃料電池1の他の実施形態を図10〜図14を用いて説明する。
【0048】
図10に他の実施形態における燃料電池1の一部破断斜視図、図11に、組み立てを示す斜視図を示す。燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されて、スタック構造とされている。また図12は、インターコネクタ3を示す断面図である。
【0049】
図11及び図12に示すように、インターコネクタ3は、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに、セル2を配置するために窪んだ形状に形成された収容部20である第一収容部20a及び第二収容部20bが形成され、第一収容部20aに空気極層13が内側とされてセル2が収容され、第二収容部20bに燃料極層12が内側とされてセル2が収容され、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。
【0050】
インターコネクタ3の第一収容部20a及び第二収容部20bは、底面部23と周壁部24とによって窪んだ形状に形成され、周壁部24に段差部25が形成されている。そして、インターコネクタ3は、段差部25からさらに中央方向に延出して形成された延出段差部26が設けられ、その延出段差部26にコネクタ貫通孔28が形成されている。インターコネクタ3の延出段差部26は、第一収容部20a側と第二収容部側20bとの対向しない対角線上の位置に対として形成されている。
【0051】
図11に示すように、セル2及びインターコネクタ3を交互に積層してスタック化することにより、図10に示すような燃料電池1を形成することができる。この場合において、各セル2は、燃料極層12が同一方向に(すなわち空気極層13も同一方向に)、セル貫通孔15の並びが互い違いになるように配置されている。また、インターコネクタ3は、延出段差部26の位置が互い違いになるように配置されている。このようにすることにより、空気及び燃料が、第一収容部20a、第二収容部20b内を広く流通することができるため、発電効率を高くすることができる。
【0052】
図13に積層構造の断面図を示す。図13に示すように、セル2がインターコネクタ3の第一収容部20a及び第二収容部20bに収容されて、セル2及びインターコネクタ3が交互に積層させてスタック化されている。段差部25にセル2を配置することにより、段差部25に接するセル2の外周部がシール部29とされて、空気極層13と底面部23との間隙が空気流通部31、燃料極層12と底面部23との間隙が燃料流通部32とされている。
【0053】
さらに、シール部29の少なくとも一部が電気導通部とされて、セル2とインターコネクタ3とが電気的に接続されている。セル2の燃料極層12及び空気極層13は、多孔質電極層として形成され、電気導通部は、多孔質電極層が導電性物質により緻密化されて形成されている。具体的には、導電性物質としては、ロウ材61を使用することができる。
【0054】
以上のようにスタック化されて形成された燃料電池1は、図14に示すように、インターコネクタ3とセル2の燃料極層12との間に燃料流路部、インターコネクタ3とセル2の空気極層13との間に空気流路部が形成されて、発電を行うことができる。なお、インターコネクタ3間は、ショート防止のために、間隙を有して積層されている。また、図13の断面図にも示されるように、燃料流路部32と空気流路部31とがスタック方向において、交互に形成されている。このように、スタック化されることにより、高出力・高電圧を得ることができる。また、燃料流路部32と空気流路部31に集電部材、例えば金属メッシュを内装していても良い。
【0055】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池の他の実施形態について図16、及び図17を用いて説明する。図16は、本実施形態の燃料電池1の一部破断斜視図、図17は、断面図である。本実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、電解質層11と、その電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有するセル2と、一方の面である第一面3a側と他方の面である第二面3b側とにセル2を配置するインターコネクタ3と、を備え、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されたスタックが形成されている。
【0056】
具体的には、セル2の外周部がインターコネクタ3の外周部の第一面3aと第二面3bとに挟まれた状態で、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されており、インターコネクタ3の第一面3a側には、窪んだ形状の空気が流通する空気流通部31、第二面3b側には、窪んだ形状の燃料が流通する燃料流通部32が形成されている。
【0057】
さらに、セル2とインターコネクタ3とが積層されたスタックの側面1wに、空気流通部31を流通する空気及び燃料流通部32を流通する燃料が外部に漏出することを防止するシール部材85を配置する構成とすることができる。シール部材85は、多孔質の骨材(多孔質部)に低融点ガラスを含浸した複合材によって形成されたものを使用することができる。さらに、シール部材85の外側にセラミック86を接合してもよい。燃料電池1の作動温度の近傍の高温状態では、シール部材85中のガラスが軟化することで、シール性を確保することができる。一方、熱応力は軟化ガラスによる開放効率を利用することもできるが、骨材である多孔質部が受けることで、セル2への応力付加を低減できる。また、セル2とインターコネクタ3の接合面にガラス接合部が配置されていてもよい。
【0058】
図18(a)及び図18(b)を用いて、燃料電池1の作動を説明する。図18(a)に示すように、セル2の外周部の表裏の面と、インターコネクタ3の外周部の第一面3a、第二面3bとの密着性が温度によって異なるように構成されており、非作動時である常温時には、セル2の外周部の表裏の面とインターコネクタ3の外周部の第一面3a、第二面3bとの間に間隙63が形成されている。
【0059】
そして、図18(b)に示すように、作動温度時に熱膨張差によって、間隙63がなくなって、セル2とインターコネクタ3との面が密着して熱膨張シール部64が形成される。したがって、本実施形態において、セル2とインターコネクタ3は、流路形成部材であり、各流路形成部材間の密着性が向上して形成された熱膨張シール部64は、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する。
【0060】
以上のように、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材を常温では、強固な固定とせず、わずかな間隙63を有するようにすることで、急速昇温により発生する熱応力を積層方向に累積させず、低応力スタック構造とすることができる。さらに、各流路形成部材の熱膨張差によって、作動温度時にシール性を確保することができる。
【0061】
設定温度まで窒素ガスによって冷却する前述の冷却方法及び固体酸化物形燃料電池システムは、以上の図10〜図14、図16〜図18を用いて説明した燃料電池1についても適用することができる。さらに、前述の冷却方法及び固体酸化物形燃料電池システムは、以上に説明した実施形態の燃料電池1に限らず、熱応力により損傷を受けやすい燃料電池に適用することができる。
【0062】
ところで、更なる高出力・高電圧化に対して、セル2の積層数を増大させて対応することは好ましくない。その理由は発電セルのスタック数が増えれば、スタック内の接続部での信頼性確保、ガスの使用率の観点から限界があるものと考えるからである。望ましいスタック数は10層程度であり、その為高出力化・高電圧化に対しては、複数のスタックを配列して対応することが望ましい。
【0063】
そこで、図15(a)、及び図15(b)に、発電セル70を複数配列した燃料電池1の実施形態を示す。図15(a)、及び図15(b)に示す燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とがスタック化された発電セル70がケース72に断熱部71によって断熱されて収容され、複数の発電セル70によって構成されている。断熱部71は、真空断熱であってもよいし、断熱材を使用した断熱であってもよい。なお図15(b)は、ケース72内に、2つの発電セル70が断熱部71によって断熱されて収容されている。
【0064】
複数のスタック(発電セル70)を有することで、1つのスタックに故障が発生しても、残りスタックへの燃料供給量を上げることで、系全体での出力を確保することが可能である。また、急速起動の観点からも、急速起動時に出力を得るための堅牢なスタックを準備して対応すればよく、定常運転時は別に用意した高出力なスタックを運転して対応できる。特性に合わせたスタックを別々に用意することで、系全体として高性能な燃料電池システムとすることができる。このように構成することにより、高出力・高電圧化することができ、携帯電子機器への適用のみならず、より大型の電子機器へ適用することも可能である。
【0065】
以上で説明した本発明は、急速起動に対する熱衝撃性を有する種々の燃料電池に適用可能であり、例えば、固体電解質がプロトン伝導体からなる燃料電池へも適用可能である。プロトン伝導体の例としては、リン酸塩系プロトン伝導体(作動温度:150〜350℃)が挙げられる。したがって、固体酸化物形燃料電池に用いる固体酸化物からなる電解質は、燃料電池の作動温度により適宜選択されればよく、また、固体電解質について伝導するイオンも、酸素イオンに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、小型・薄型化することが可能で、かつ、セルとインターコネクタとの電気的接続に優れており、携帯電話やノートPC等の携帯用電気機器のバッテリーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の燃料電池の一実施形態を示す一部斜視図である。
【図2】図1の断面Aにおける断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】インターコネクタとセルの接合を説明する図である。
【図5】燃料電池の組み立てを示す図である。
【図6】作動温度時におけるインターコネクタとガス供給管との密着を説明する図である。
【図7】固体酸化物形燃料電池システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の冷却方法を説明するフローチャートである。
【図9】円形状の燃料電池の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の冷却方法を提供することのできる燃料電池の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】燃料電池の組み立て前を示す斜視図である。
【図12】インターコネクタを示す断面図である。
【図13】インターコネクタとセルの組み合わせを説明する図である。
【図14】燃料と空気の流通を説明する図である。
【図15】複数の発電セルを配列した実施形態を示す図である。
【図16】燃料電池の他の実施形態を示す斜視図である。
【図17】図16に示す燃料電池の断面図である。
【図18】図16に示す燃料電池の作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1:燃料電池(スタック)、1w:側面、2:セル、3:インターコネクタ、3a:第一面、3b:第二面、7:ガス供給管、7a:給排気孔、11:電解質層、12:燃料極層、13:空気極層、20:収容部、20a:第一収容部、20b:第二収容部、23:底面部、24:周壁部、25:段差部、26:延出段差部、28:コネクタ貫通孔、29:シール部、30:熱膨張シール部、31:空気流通部、32:燃料流通部、58:(インターコネクタとガス供給管との)間隙、59:(インターコネクタ間の)間隙、61:ロウ材、64:熱膨張シール部、65:温度センサ、66:制御部、67:空気供給部、68:燃料供給部、70:発電セル、71:断熱部、72:ケース、85:シール部材、86:セラミック、100:固体酸化物形燃料電池システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)、その冷却方法、固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の多機能化に伴い電力消費量が高まり、その結果バッテリーの持続時間が急速に短くなっている。バッテリーの種類として、1次電池、2次電池があるが、持続時間はいずれもユーザーの要求を満たすものではない。そこで、未だ製品化されていないものの、エネルギー密度が高く持続時間が長いという点で、マイクロ燃料電池に対する期待が高まっている。
【0003】
マイクロ燃料電池の形態としては、放熱・作動温度の観点から、一般に高分子電解質形燃料電池(PEFC)が主流で開発されてきており、形状としては、基板内に流路溝を設けたものや積層型が知られている。しかし、高分子電解質形燃料電池は、発電効率が低く、また貴金属の触媒を多量に使用する観点から望ましいとは言えない。
【0004】
他方、従来から開発が進められてきた比較的大型の燃料電池として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)がある。従来の固体酸化物形燃料電池は、大出力を得たいことから、燃料電極と空気極とが電解質を介して配置された、複数の同一形態のセルを用いてスタック化していた(例えば、特許文献1)。
【0005】
固体酸化物形燃料電池は、発電効率が高く、携帯機器への適用が有望視されているが、作動温度が高いことがネックとされてきた。しかし、昨今の研究開発により、従来の1000℃から600〜800℃へと作動温度の低温化が進み、高効率なマイクロ燃料電池としての利用の実現可能性がでてきた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−132933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、固体酸化物形燃料電池は、セルが比較的大きく、携帯機器への適用のためには、最低限の出力を確保しつつ、燃料電池本体のサイズをできるだけ小さくする必要がある。つまり、固体酸化物形燃料電池は、その使用目的から「小型」「急速起動」を可能とする素子設計が求められており、従来より開発が進められてきた比較的大型の定置型固体酸化物形燃料電池では、検討されていない新しい課題が生じた。
【0008】
固体酸化物形燃料電池において、実用上十分な発電量を得るために、インターコネクタを用いてセルを複数個電気的に接続するスタック化を行っているが、セルを積層してスタックを構成する場合において、作動温度が高温であるために、構成する部材間の熱応力に起因して接合部が損傷することが問題となる。また、セルやインターコネクタにクラックが生じ、発電が不能になる場合もある。従来の定置型固体酸化物形燃料電池では、サイズ上強度を維持することも可能であるが、サイズを小型化しつつも、作動による昇温又は停止による降温において生じる熱応力に起因する部材の損傷を防止することは困難であった。
【0009】
本発明の課題は、小型・薄型化することが可能で、かつ、作動による昇温又は停止による降温において生じる熱応力に起因するモジュールの損傷を防止する固体酸化物形燃料電池、また固体酸化物形燃料電池の損傷を防止する冷却方法、及び固体酸化物形燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタと、を備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、さらに、スタック内における空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材は、互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上して熱膨張シール部が形成され、熱膨張シール部は、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する固体酸化物形燃料電池が提供される。
【0011】
具体的には、インターコネクタは、燃料および空気をセルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有し、セルとインターコネクタとが交互に積層され、通路部に燃料又は空気を給排気するための給排気孔を有したガス供給管が貫通孔に間隙を有して備えられてスタック構造が形成され、さらに、作動温度時に間隙が無くなって、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面が密着して熱膨張シール部が形成される固体酸化物形燃料電池が提供される。
【0012】
本発明の固体酸化物形燃料電池において、より具体的には、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面は、作動温度時に、ガス供給管とインターコネクタの熱膨張差によってかしめられて密着するように構成する。
【0013】
また上記課題を解決するために、本発明によれば、セルの外周部がインターコネクタの外周部の第一面と第二面とに挟まれた状態で、セルとインターコネクタとが交互に積層されてスタック構造が形成され、インターコネクタの第一面側には、空気が流通する空気流通部、第二面側には、燃料が流通する燃料流通部が形成され、さらに、セルの外周部の表裏の面と、インターコネクタの外周部の第一面、第二面との密着性が温度によって異なり、作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して熱膨張シール部が形成される固体酸化物形燃料電池も提供される。
【0014】
この固体酸化物燃料電池において、セルとインターコネクタとが積層されたスタックの側面に、空気流通部を流通する空気及び燃料流通部を流通する燃料が外部に漏出することを防止するシール部材を配置することもできる。
【0015】
そして、シール部材は、多孔質の骨材にガラスを含浸した複合材によって形成することができる。さらにシール部材の外側にセラミックを接合する構成とすることができる。
【0016】
また上記課題を解決するために、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタとを備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池の冷却方法であって、固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスをスタックに供給して冷却する固体酸化物形燃料電池の冷却方法が提供される。さらに、その後、設定温度から空気をスタックに供給して冷却するとよい。設定温度は、300℃〜500℃が好ましく、特に350℃〜450℃とすることが望ましい。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明によれば、電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、電解質層上の燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とにセルを配置するインターコネクタとを備え、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池と、その固体酸化物形燃料電池に空気を供給する空気供給部と、固体酸化物形燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、固体酸化物形燃料電池の温度を測定する温度センサと、その温度センサによって測定した固体燃料電池の温度が作動温度から予め定められた設定温度まで、燃料供給部を制御して水素ガスをスタックに供給して冷却する制御部とを含む固体酸化物形燃料電池システムが提供される。さらに、制御部は、設定温度以下において、空気供給部を制御して空気をスタックに供給して冷却する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する部材の互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各部材の熱膨張差によって各部材間の密着性が向上するように構成されているため、急速昇温により発生する熱応力を累積させず、低応力スタック構造とすることができる。作動温度時に各部材間の密着性が向上するため、熱膨張シール部が形成されて、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止することができる。
【0019】
具体的には、本発明の固体酸化物形燃料電池は、インターコネクタに収容部を有することから、セルとインターコネクタとを交互に積層して形成される。また、インターコネクタに、燃料および空気をセルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有することから、貫通孔に給排気孔を有したガス供給管を備えて、セルに空気及び燃料を供給することができる。さらに、ガス供給管が貫通孔に間隙を有して備えられ、ガス供給管の外周面と貫通孔の内周面が、作動温度時に密着して間隙が無くなるように構成されており、作動温度時に熱応力に起因する固体酸化物形燃料電池の損傷を防止することができる。ガス供給管とスタック(インターコネクタ)との接合部を強固に固定せず作動温度時においてシール化することで、急激な昇降温に対して高耐久な構造とすることができる。
【0020】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池は、セルの外周部がインターコネクタの外周部の第一面と第二面とに挟まれた状態で、セルとインターコネクタとが交互に積層されたスタック構造とすることができ、セルの外周部の表裏の面と、インターコネクタの外周部の第一面、第二面との密着性が温度によって異なるように構成することにより、作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して空気及び燃料の漏出を防ぐことができる。
【0021】
本発明の固体酸化物形燃料電池の冷却方法は、固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスをスタックに供給して冷却することにより、セルに含まれるニッケルの酸化に伴う体積収縮によるセルの破壊を防止することができる。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池システムは、温度センサを備え、制御部によって、作動温度から予め定められた設定温度まで、燃料供給部を制御して水素ガスをスタックに供給して冷却し、設定温度以下では、空気供給部を制御して空気をスタックに供給して冷却することができる。これにより、セルに含まれるニッケルの酸化に伴う体積変動によるセルの破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1に本発明の固体酸化物形燃料電池(以下、単に燃料電池ともいう)1の一部斜視図を示す。また、図2に図1の断面Aにおける断面図を示す。燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタックが形成されている。
【0025】
図2に示すように、セル2は、電解質層11と、電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有し、平板状に形成されている。セル2の燃料極層12及び空気極層13は、多孔質電極層として形成され、例えば、燃料極層12は、Ni−YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、空気極層13は、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、電解質層11は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)により形成することができる。
【0026】
セル2は、グリーンシート法により作成した電解質層11を構成する電解質焼成体(焼成条件:1400℃・1時間)に、燃料極層12を印刷法により形成し1400℃・1時間にて焼成し、空気極層13を同じく印刷法により形成した後1200℃1時間にて焼成して形成される。なお、本発明においては、緻密なジルコニア電解質層11を30μm、その電解質層11の両面に、燃料極層12を20μm、空気極層13を20μm形成し、基板厚(セル厚)は70μm、基板サイズは30mm×30mmとしてセル2を形成した。本発明は、後述するようなインターコネクタ3との接合構造を採用することにより、従来の酸化物形燃料電池に比べ大幅に小型化されており、携帯用電気機器のバッテリーに利用することができる。
【0027】
図3に図2の部分拡大図を示す。図3に示すように、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。また、インターコネクタ3の材料としては、フェライト系SUS、インコネル600、ハステロイ等のNi系耐熱合金を使用することができる。
【0028】
図2及び図3に示すように、セル2及びインターコネクタ3を交互に積層してスタック化することにより、図1に示すような燃料電池1を形成することができる。この場合において、各セル2は、燃料極層12が同一方向に(すなわち空気極層13も同一方向に)配置されている。
【0029】
インターコネクタ3とセル2との接合について、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。インターコネクタ3とセル2とは空気極層13又は燃料極層12にNi−Mnメタライズ層を形成した後、ロウ付けしても良いし、Ti等の活性金属を含んだ活性ロウ材を用いて直接接合しても良いが、図4(a)に示すように、セル2の外周部にロウ材61を付着させて多孔質電極層(空気極層13又は燃料極層12)をロウ材61により緻密化する。具体的には、セル2とインターコネクタ3との間に導電性物質を挟んだ状態において、セル2によって区切られたインターコネクタ3側の空間領域を減圧しつつ、導電性物質を溶解させることにより、図4(b)に示すように、ロウ材61を多孔質電極層に浸透させて多孔質電極層を緻密化し、セル2とインターコネクタ3とを接合することができる。また単に接合時に加圧することで、ロウ材61を多孔質電極層に浸透させて多孔質電極層を緻密化させても良い。これにより、多孔質電極層の外周部をシール部29とすることができる。なお、ロウ材61によって、多孔質電極層を緻密化した後に、インターコネクタ3とセル2とを接合してもよいし、緻密化と接合とを同時に行ってもよい。また、ガラス材料を用いて多孔質電極層を緻密化しシール部29としても良い。
【0030】
燃料極層12にニッケルを含む燃料電池1では、酸素雰囲気下において、酸化ニッケルへの変態が発生し、セル2の破壊を招きやすい。そのため、燃料極層12のニッケルを還元後、セル2とインターコネクタ3とを導電性物質であるロウ材61により接続するとよい。
【0031】
ロウ材厚みは10−30μmが良好な電気伝導性とシール性を得る観点から望ましい。ロウ付け雰囲気は1×10−3Pa以下の真空度で実施し、インターコネクタ3の内外の圧力差は5×10−4Pa以上設けることで、多孔質電極層内へロウ材61を含浸させることができる。
【0032】
なお、ロウ材としては、素子の作動環境が600−800℃の酸化雰囲気であることから、耐酸化性に優れたロウ材を選択することが望ましい。具体的には、Ag系、Cu系、Ni系の材料があるが、耐酸化性の観点からNi系が望ましい。具体的には米国WESGO社のIcronibsi13(製品名)やCronisi(製品名)、米国ウォールコルモノイ社Nicrobraz31(製品名)が使用可能である。
【0033】
インターコネクタ3は、燃料および空気をセル2のそれぞれの極に(つまり収容部20に)給排気する通路部56と、外周部に、通路部56に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔55とを有する。
【0034】
そして図5に示すように、インターコネクタ3の外周部に形成された貫通孔55に、通路部56に燃料又は空気を給排気するための給排気孔7aを有したガス供給管7が間隙58を有して備えられてスタック化されている。燃料電池1は、図2及び図3に示すように、インターコネクタ3とセル2の燃料極層12との間に燃料流路部、インターコネクタ3とセル2の空気極層13との間に空気流路部が形成されて、発電を行うことができる。なお、インターコネクタ3間は、ショート防止のために、間隙59を有して積層されている。また、図2の断面図にも示されるように、燃料流路部32と空気流路部31とがスタック方向において、交互に形成されている。このように、スタック化されることにより、高電圧を得ることができる。
【0035】
また、スタック化された燃料電池1は、図3に示すように、常温時において(作動前に)、ガス供給管7が貫通孔55に間隙58を有して備えられ、作動温度時において、図6に示すように、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面が密着する。すなわち、作動温度時に、ガス供給管7の外周面と貫通孔55の内周面は、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張差によってかしめられて密着する。このため、ガス供給管7とインターコネクタ3の熱膨張差による損傷を防止することができる。
【0036】
言い換えると、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材(本実施形態においては、ガス供給管7とインターコネクタ3)の互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上してスタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する熱膨張シール部30が形成される。
【0037】
本発明の燃料電池1は、図7に示すように、空気を供給する空気供給部67、水素ガス等の燃料を供給する燃料供給部68、燃料電池1の温度を測定する温度センサ65、及び温度センサ65の測定結果が入力され、空気供給部67及び燃料供給部(改質器)68を制御する制御部66を備えた固体酸化物形燃料電池システム100として構成されている。温度センサ65は、作動温度(例えば、600〜800℃)における耐久性があるものであれば、接触式、非接触式等、特に限定されないが、例えば、マイクロ熱電対を挿入しても良いし、金属薄膜の電気抵抗の温度依存性等を利用することもできる。また、制御部66には、予め定められた設定温度(300℃以上500℃以下の範囲にするとよいが、例えば400℃)が記憶されている。
【0038】
上記のような燃料電池1を含む固体酸化物形燃料電池システム100では、システム停止時にモジュール内の冷却のために高温で酸素を含むガスを導入すると、セル2に含まれるニッケルから酸化ニッケルへの変態が急激に発生し、セル2の破壊を招くことがある。そこで、本発明の固体酸化物形燃料電池システム100は、以下のように、設定温度までの冷却を水素ガスによって行い、その後空気を流すことでモジュールを冷却する。
【0039】
図8を用いて、固体酸化物形燃料電池システム100における作動停止処理について説明する。制御部66は、システムの作動が停止されるかを監視する(S1)。システムの作動が停止されると(S1:YES)、引き続き燃料供給部68によって水素ガスを供給する(S2)。
【0040】
制御部66は、温度センサ65からの信号により、モジュールの温度が400℃以下となるかを監視する(S3)。モジュールの温度が400℃以下となれば(S3:YES)、制御部66は、水素ガスの供給を停止して、空気の供給を開始する(S4)。
【0041】
さらに、制御部66は、温度センサ65からの信号により、モジュールの温度が常温となるかを監視し(S5)、モジュールの温度が充分に冷却されれば(常温近傍、例えば100℃)(S5:YES)、空気の供給を停止する(S6)。
【0042】
以上のように、設定温度(例えば、400℃)まで、水素ガスによって冷却し、その温度以下において、空気によって冷却することにより、セル2に含まれるニッケルの酸化に伴う体積変動によるセル2の破壊を防止することができる。
【0043】
また、上記構成において、インターコネクタ1に段差部を有する収容部を設けて、その収容部にセル2が収容されるように構成してもよい。すなわち、第一収容部及び第二収容部が、底面部23と周壁部とによって窪んだ形状に形成されて、周壁部に段差部が形成され、段差部にセル2を配置することにより、段差部と接するセル2の外周部がシール部29とされて、空気極層13と底面部23との間隙が空気流通部31、燃料極層12と底面部23との間隙が燃料流通部32とされた構成とすることもできる。さらに、シール部29の少なくとも一部が電気導通部とされて、セル2とインターコネクタ3とが電気的に接続された構成とすることもできる。具体的には、多孔質電極層として形成された燃料極層12及び空気極層13が導電性物質により緻密化されて形成される。導電性物質としては、ロウ材を使用することができる。
【0044】
以上に説明したガス供給管とインターコネクタとに間隙を形成する燃料電池1、冷却方法、固体酸化物形燃料電池システムは、図9に示すような円形の実施形態にも適用するこことができる。
【0045】
セル2は、前述の実施形態と同様に、電解質層11と、電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有して形成されている。燃料及び空気を流通させるために、セル貫通孔15が形成されている。
【0046】
インターコネクタ3は、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに、セル2を配置するために窪んだ形状に形成された第一収容部20a及び第二収容部20bが形成され、第一収容部20aに燃料極層12が内側とされてセル2が収容され、第二収容部20bに空気極層13が内側とされてセル2が収容され、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。詳細は、前述の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
設定温度まで水素ガスによって冷却する前述の冷却方法は、前述の燃料電池1に限られない。次に、前述の冷却方法を適用することのできる燃料電池1の他の実施形態を図10〜図14を用いて説明する。
【0048】
図10に他の実施形態における燃料電池1の一部破断斜視図、図11に、組み立てを示す斜視図を示す。燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されて、スタック構造とされている。また図12は、インターコネクタ3を示す断面図である。
【0049】
図11及び図12に示すように、インターコネクタ3は、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに、セル2を配置するために窪んだ形状に形成された収容部20である第一収容部20a及び第二収容部20bが形成され、第一収容部20aに空気極層13が内側とされてセル2が収容され、第二収容部20bに燃料極層12が内側とされてセル2が収容され、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されている。
【0050】
インターコネクタ3の第一収容部20a及び第二収容部20bは、底面部23と周壁部24とによって窪んだ形状に形成され、周壁部24に段差部25が形成されている。そして、インターコネクタ3は、段差部25からさらに中央方向に延出して形成された延出段差部26が設けられ、その延出段差部26にコネクタ貫通孔28が形成されている。インターコネクタ3の延出段差部26は、第一収容部20a側と第二収容部側20bとの対向しない対角線上の位置に対として形成されている。
【0051】
図11に示すように、セル2及びインターコネクタ3を交互に積層してスタック化することにより、図10に示すような燃料電池1を形成することができる。この場合において、各セル2は、燃料極層12が同一方向に(すなわち空気極層13も同一方向に)、セル貫通孔15の並びが互い違いになるように配置されている。また、インターコネクタ3は、延出段差部26の位置が互い違いになるように配置されている。このようにすることにより、空気及び燃料が、第一収容部20a、第二収容部20b内を広く流通することができるため、発電効率を高くすることができる。
【0052】
図13に積層構造の断面図を示す。図13に示すように、セル2がインターコネクタ3の第一収容部20a及び第二収容部20bに収容されて、セル2及びインターコネクタ3が交互に積層させてスタック化されている。段差部25にセル2を配置することにより、段差部25に接するセル2の外周部がシール部29とされて、空気極層13と底面部23との間隙が空気流通部31、燃料極層12と底面部23との間隙が燃料流通部32とされている。
【0053】
さらに、シール部29の少なくとも一部が電気導通部とされて、セル2とインターコネクタ3とが電気的に接続されている。セル2の燃料極層12及び空気極層13は、多孔質電極層として形成され、電気導通部は、多孔質電極層が導電性物質により緻密化されて形成されている。具体的には、導電性物質としては、ロウ材61を使用することができる。
【0054】
以上のようにスタック化されて形成された燃料電池1は、図14に示すように、インターコネクタ3とセル2の燃料極層12との間に燃料流路部、インターコネクタ3とセル2の空気極層13との間に空気流路部が形成されて、発電を行うことができる。なお、インターコネクタ3間は、ショート防止のために、間隙を有して積層されている。また、図13の断面図にも示されるように、燃料流路部32と空気流路部31とがスタック方向において、交互に形成されている。このように、スタック化されることにより、高出力・高電圧を得ることができる。また、燃料流路部32と空気流路部31に集電部材、例えば金属メッシュを内装していても良い。
【0055】
さらに、本発明の固体酸化物形燃料電池の他の実施形態について図16、及び図17を用いて説明する。図16は、本実施形態の燃料電池1の一部破断斜視図、図17は、断面図である。本実施形態の固体酸化物形燃料電池1は、電解質層11と、その電解質層11上に形成された燃料極層12と、電解質層11上の燃料極層12とは反対の面に形成された空気極層13とを有するセル2と、一方の面である第一面3a側と他方の面である第二面3b側とにセル2を配置するインターコネクタ3と、を備え、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されたスタックが形成されている。
【0056】
具体的には、セル2の外周部がインターコネクタ3の外周部の第一面3aと第二面3bとに挟まれた状態で、セル2とインターコネクタ3とが交互に積層されてスタック構造が形成されており、インターコネクタ3の第一面3a側には、窪んだ形状の空気が流通する空気流通部31、第二面3b側には、窪んだ形状の燃料が流通する燃料流通部32が形成されている。
【0057】
さらに、セル2とインターコネクタ3とが積層されたスタックの側面1wに、空気流通部31を流通する空気及び燃料流通部32を流通する燃料が外部に漏出することを防止するシール部材85を配置する構成とすることができる。シール部材85は、多孔質の骨材(多孔質部)に低融点ガラスを含浸した複合材によって形成されたものを使用することができる。さらに、シール部材85の外側にセラミック86を接合してもよい。燃料電池1の作動温度の近傍の高温状態では、シール部材85中のガラスが軟化することで、シール性を確保することができる。一方、熱応力は軟化ガラスによる開放効率を利用することもできるが、骨材である多孔質部が受けることで、セル2への応力付加を低減できる。また、セル2とインターコネクタ3の接合面にガラス接合部が配置されていてもよい。
【0058】
図18(a)及び図18(b)を用いて、燃料電池1の作動を説明する。図18(a)に示すように、セル2の外周部の表裏の面と、インターコネクタ3の外周部の第一面3a、第二面3bとの密着性が温度によって異なるように構成されており、非作動時である常温時には、セル2の外周部の表裏の面とインターコネクタ3の外周部の第一面3a、第二面3bとの間に間隙63が形成されている。
【0059】
そして、図18(b)に示すように、作動温度時に熱膨張差によって、間隙63がなくなって、セル2とインターコネクタ3との面が密着して熱膨張シール部64が形成される。したがって、本実施形態において、セル2とインターコネクタ3は、流路形成部材であり、各流路形成部材間の密着性が向上して形成された熱膨張シール部64は、スタック内を流通する空気及び燃料が外部に漏出することを防止する。
【0060】
以上のように、スタック内に空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材を常温では、強固な固定とせず、わずかな間隙63を有するようにすることで、急速昇温により発生する熱応力を積層方向に累積させず、低応力スタック構造とすることができる。さらに、各流路形成部材の熱膨張差によって、作動温度時にシール性を確保することができる。
【0061】
設定温度まで窒素ガスによって冷却する前述の冷却方法及び固体酸化物形燃料電池システムは、以上の図10〜図14、図16〜図18を用いて説明した燃料電池1についても適用することができる。さらに、前述の冷却方法及び固体酸化物形燃料電池システムは、以上に説明した実施形態の燃料電池1に限らず、熱応力により損傷を受けやすい燃料電池に適用することができる。
【0062】
ところで、更なる高出力・高電圧化に対して、セル2の積層数を増大させて対応することは好ましくない。その理由は発電セルのスタック数が増えれば、スタック内の接続部での信頼性確保、ガスの使用率の観点から限界があるものと考えるからである。望ましいスタック数は10層程度であり、その為高出力化・高電圧化に対しては、複数のスタックを配列して対応することが望ましい。
【0063】
そこで、図15(a)、及び図15(b)に、発電セル70を複数配列した燃料電池1の実施形態を示す。図15(a)、及び図15(b)に示す燃料電池1は、セル2とインターコネクタ3とがスタック化された発電セル70がケース72に断熱部71によって断熱されて収容され、複数の発電セル70によって構成されている。断熱部71は、真空断熱であってもよいし、断熱材を使用した断熱であってもよい。なお図15(b)は、ケース72内に、2つの発電セル70が断熱部71によって断熱されて収容されている。
【0064】
複数のスタック(発電セル70)を有することで、1つのスタックに故障が発生しても、残りスタックへの燃料供給量を上げることで、系全体での出力を確保することが可能である。また、急速起動の観点からも、急速起動時に出力を得るための堅牢なスタックを準備して対応すればよく、定常運転時は別に用意した高出力なスタックを運転して対応できる。特性に合わせたスタックを別々に用意することで、系全体として高性能な燃料電池システムとすることができる。このように構成することにより、高出力・高電圧化することができ、携帯電子機器への適用のみならず、より大型の電子機器へ適用することも可能である。
【0065】
以上で説明した本発明は、急速起動に対する熱衝撃性を有する種々の燃料電池に適用可能であり、例えば、固体電解質がプロトン伝導体からなる燃料電池へも適用可能である。プロトン伝導体の例としては、リン酸塩系プロトン伝導体(作動温度:150〜350℃)が挙げられる。したがって、固体酸化物形燃料電池に用いる固体酸化物からなる電解質は、燃料電池の作動温度により適宜選択されればよく、また、固体電解質について伝導するイオンも、酸素イオンに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、小型・薄型化することが可能で、かつ、セルとインターコネクタとの電気的接続に優れており、携帯電話やノートPC等の携帯用電気機器のバッテリーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の燃料電池の一実施形態を示す一部斜視図である。
【図2】図1の断面Aにおける断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】インターコネクタとセルの接合を説明する図である。
【図5】燃料電池の組み立てを示す図である。
【図6】作動温度時におけるインターコネクタとガス供給管との密着を説明する図である。
【図7】固体酸化物形燃料電池システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の冷却方法を説明するフローチャートである。
【図9】円形状の燃料電池の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の冷却方法を提供することのできる燃料電池の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】燃料電池の組み立て前を示す斜視図である。
【図12】インターコネクタを示す断面図である。
【図13】インターコネクタとセルの組み合わせを説明する図である。
【図14】燃料と空気の流通を説明する図である。
【図15】複数の発電セルを配列した実施形態を示す図である。
【図16】燃料電池の他の実施形態を示す斜視図である。
【図17】図16に示す燃料電池の断面図である。
【図18】図16に示す燃料電池の作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1:燃料電池(スタック)、1w:側面、2:セル、3:インターコネクタ、3a:第一面、3b:第二面、7:ガス供給管、7a:給排気孔、11:電解質層、12:燃料極層、13:空気極層、20:収容部、20a:第一収容部、20b:第二収容部、23:底面部、24:周壁部、25:段差部、26:延出段差部、28:コネクタ貫通孔、29:シール部、30:熱膨張シール部、31:空気流通部、32:燃料流通部、58:(インターコネクタとガス供給管との)間隙、59:(インターコネクタ間の)間隙、61:ロウ材、64:熱膨張シール部、65:温度センサ、66:制御部、67:空気供給部、68:燃料供給部、70:発電セル、71:断熱部、72:ケース、85:シール部材、86:セラミック、100:固体酸化物形燃料電池システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、
一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタと、を備え、
前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、
さらに、前記スタック内における空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材は、互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上して熱膨張シール部が形成され、
前記熱膨張シール部は、前記スタック内を流通する前記空気及び前記燃料が外部に漏出することを防止する固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記インターコネクタは、前記燃料および前記空気を前記セルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、前記通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有し、
前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層され、前記通路部に前記燃料又は前記空気を給排気するための給排気孔を有したガス供給管が前記貫通孔に間隙を有して備えられて前記スタック構造が形成され、
さらに、前記作動温度時に前記間隙が無くなって、前記ガス供給管の外周面と前記貫通孔の内周面が密着して前記熱膨張シール部が形成される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記ガス供給管の前記外周面と前記貫通孔の前記内周面は、前記作動温度時に、前記ガス供給管と前記インターコネクタの熱膨張差によってかしめられて密着する請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記セルの外周部が前記インターコネクタの外周部の前記第一面と前記第二面とに挟まれた状態で、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されて前記スタック構造が形成され、
前記インターコネクタの前記第一面側には、空気が流通する空気流通部、前記第二面側には、燃料が流通する燃料流通部が形成され、
さらに、前記セルの前記外周部の表裏の面と、前記インターコネクタの前記外周部の前記第一面、前記第二面との密着性が温度によって異なり、前記作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して前記熱膨張シール部が形成される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記セルと前記インターコネクタとが積層された前記スタックの側面に、前記空気流通部を流通する前記空気及び前記燃料流通部を流通する前記燃料が外部に漏出することを防止するシール部材が配置された請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記シール部材は、多孔質の骨材にガラスを含浸した複合材によって形成された請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記シール部材の外側にセラミックが接合された請求項5または6に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタとを備え、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池の冷却方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、前記作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスを前記スタックに供給して冷却する固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項9】
前記設定温度以下において、空気を前記スタックに供給して冷却する請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項10】
前記設定温度が、300℃以上500℃以下の範囲である請求項8または9に記載の固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項11】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタとを備え、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池と、
その固体酸化物形燃料電池に空気を供給する空気供給部と、
前記固体酸化物形燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記固体酸化物形燃料電池の温度を測定する温度センサと、
その温度センサによって測定した前記固体燃料電池の温度が作動温度から予め定められた設定温度まで、前記燃料供給部を制御して水素ガスを前記スタックに供給して冷却する制御部と、
を含む固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記設定温度以下において、前記空気供給部を制御して空気を前記スタックに供給して冷却する請求項11に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項1】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、
一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタと、を備え、
前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成され、
さらに、前記スタック内における空気及び燃料の流路を形成する流路形成部材は、互いの密着性が温度によって異なり、作動温度時に各流路形成部材の熱膨張差によって各流路形成部材間の密着性が向上して熱膨張シール部が形成され、
前記熱膨張シール部は、前記スタック内を流通する前記空気及び前記燃料が外部に漏出することを防止する固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記インターコネクタは、前記燃料および前記空気を前記セルのそれぞれの極に給排気する通路部と、外周部に、前記通路部に連通しかつ高さ方向に貫通する貫通孔とを有し、
前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層され、前記通路部に前記燃料又は前記空気を給排気するための給排気孔を有したガス供給管が前記貫通孔に間隙を有して備えられて前記スタック構造が形成され、
さらに、前記作動温度時に前記間隙が無くなって、前記ガス供給管の外周面と前記貫通孔の内周面が密着して前記熱膨張シール部が形成される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記ガス供給管の前記外周面と前記貫通孔の前記内周面は、前記作動温度時に、前記ガス供給管と前記インターコネクタの熱膨張差によってかしめられて密着する請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記セルの外周部が前記インターコネクタの外周部の前記第一面と前記第二面とに挟まれた状態で、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されて前記スタック構造が形成され、
前記インターコネクタの前記第一面側には、空気が流通する空気流通部、前記第二面側には、燃料が流通する燃料流通部が形成され、
さらに、前記セルの前記外周部の表裏の面と、前記インターコネクタの前記外周部の前記第一面、前記第二面との密着性が温度によって異なり、前記作動温度時に熱膨張差によって密着性が向上して前記熱膨張シール部が形成される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記セルと前記インターコネクタとが積層された前記スタックの側面に、前記空気流通部を流通する前記空気及び前記燃料流通部を流通する前記燃料が外部に漏出することを防止するシール部材が配置された請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記シール部材は、多孔質の骨材にガラスを含浸した複合材によって形成された請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記シール部材の外側にセラミックが接合された請求項5または6に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタとを備え、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池の冷却方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池の作動停止時に、作動温度から、前記作動温度よりも低く常温よりも高い予め定められた設定温度まで、水素ガスを前記スタックに供給して冷却する固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項9】
前記設定温度以下において、空気を前記スタックに供給して冷却する請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項10】
前記設定温度が、300℃以上500℃以下の範囲である請求項8または9に記載の固体酸化物形燃料電池の冷却方法。
【請求項11】
電解質層と、その電解質層上に形成された燃料極層と、前記電解質層上の前記燃料極層とは反対の面に形成された空気極層とを有するセルと、一方の面である第一面側と他方の面である第二面側とに前記セルを配置するインターコネクタとを備え、前記セルと前記インターコネクタとが交互に積層されたスタックが形成された固体酸化物形燃料電池と、
その固体酸化物形燃料電池に空気を供給する空気供給部と、
前記固体酸化物形燃料電池に燃料を供給する燃料供給部と、
前記固体酸化物形燃料電池の温度を測定する温度センサと、
その温度センサによって測定した前記固体燃料電池の温度が作動温度から予め定められた設定温度まで、前記燃料供給部を制御して水素ガスを前記スタックに供給して冷却する制御部と、
を含む固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記設定温度以下において、前記空気供給部を制御して空気を前記スタックに供給して冷却する請求項11に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−34373(P2008−34373A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167818(P2007−167818)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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