説明

固体酸化物形燃料電池モジュールの構造および運転方法

【課題】固体酸化物形燃料電池から排気される排ガスから不純物が含まれない凝縮水を得るとともに、運転時に水自立可能な固体酸化物形燃料電池モジュールの構造および運転方法を提供する。
【解決手段】缶体4の内部に設けられ、発電セル16に燃料ガスと空気を供給して発電反応を生じさせるとともに、これにより生成した排ガスおよび上記発電反応に消費されずに残った余剰ガスを発電セル16外へ放出するシールレス構造の固体酸化物形燃料電池5のモジュール構造において、缶体4の内壁がカロライズ処理されているとともに、缶体4の内部に金属製の起動用バーナ34が配設され、かつ缶体4の内部に燃焼触媒が配設されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の内部に設けられ、発電反応により生成された排ガスおよび上記発電反応に消費されずに残った余剰ガスを発電セル外へ放出するシールレス構造の固体酸化物形燃料電池モジュールの構造および運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の固体酸化物形燃料電池モジュールとして、缶体内部に固体酸化物形燃料電池および改質器を設け、この改質器に水蒸気発生器において生成した水蒸気および炭化水素ガスを供給して、当該改質器内において水素リッチな燃料ガスに改質し、その燃料ガスを燃料ガス供給ラインを介して、上記固体酸化物形燃料電池に供給するとともに、空気ブロアから供給された空気を空気供給ラインを介して、上記固体酸化物形燃料電池に供給するものが知られている。
【0003】
上記固体酸化物形燃料電池は、固体電解質層の一方の面に燃料極層を、他方の面に空気極層を配置した発電セルを有し、この発電セルの外側の燃料極層側に燃料極集電体および空気極層側に空気極集電体を配置して、これら集電体の外側にセパレータを配置することにより単セルをなし、この単セルを複数積層することにより構成されている。そして、上記燃料ガス供給ラインからの燃料ガスを、上記セパレータを介して上記燃料極層に供給し、上記空気供給ラインからの空気を、上記セパレータを介して上記空気極層に供給することにより発電反応を生じさせるものである。
【0004】
そして、上記固体酸化物形燃料電池は、上記発電反応により生成された排ガス、および上記発電反応に消費されずに残った余剰ガスを、上記燃料極集電体および上記空気極集電体の外周部から、上記缶体内に排出可能なシールレス構造になっている。
【0005】
ここで、上記固体電解質層は、ランタンガレート材料(LSGMC)等によって構成されている。また、燃料極層は、Niのサーメットで構成されている。そして、空気極層は、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)によって構成されている。さらに、燃料極集電体は、Ni基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。また、空気極集電体は、Ag基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。
【0006】
一方、水蒸気発生器は、水供給手段から導入された水を、内部に充填された熱伝導性の良好なビーズによって効率的に気化して、上記改質器の改質反応に必要な水蒸気を生成するものである。
【0007】
他方、改質器は、導入された炭化水素ガスおよび水蒸気を、内部に充填された炭化水素用のNi(ニッケル)系、あるいはRu(ルテニウム)系の改質触媒によって、改質して燃料ガスを生成するものである。
【0008】
ところで、このようなシールレス構造の固体酸化物形燃料電池モジュールは、上記缶体内において、上記発電反応に消費されずに残った上記余剰ガスを燃焼させて、上記発電セルの発電反応により生成した排出ガスと共に、上記缶体から排気され、この排気された上記排ガスを回収して冷却することにより凝縮水を得ることができる。このため、この凝縮水を上記水蒸気発生器に供給する水の一部として利用することが可能になる。この際に、上記缶体内に排出された上記余剰ガスを燃焼媒体により燃焼させることにより、熱自立のための補助や、COなどの有害な成分などを燃焼させることができる。
【0009】
しかしながら、上記缶体から排気された上記排ガスを冷却して得られた上記凝縮水には、上記固体酸化物形燃料電池モジュールに用いられる物質に含有される不純物が含まれてしまうという問題がある。この不純物は、上記余剰ガスの燃焼を行う燃焼媒体や、起動時に上記缶体の内部を加熱する起動用バーナに用いられるセラミックプレート、上記缶体の内壁に塗布された耐熱塗料などに含まれるていると考えられる。
【0010】
このように、上記凝縮水に不純物が含まれている場合、水の電気抵抗率の低下に繋がり、結果として、上記固体酸化物形燃料電池の下部に配設されている上記水蒸気発生器が目詰まりしてしまう。このため、上記凝縮水を燃料ガスの改質に供給する水の一部として利用した場合、上記水蒸気発生器の目詰まりにより、安定した水蒸気が生成されず、発電を維持することができない。また、目詰まりした上記水蒸気発生器を定期的にメンテナンスしなければならないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、固体酸化物形燃料電池から排気される排ガスから不純物が含まれない凝縮水を得るとともに、運転時に水自立可能な固体酸化物形燃料電池モジュールの構造および運転方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、缶体の内部に設けられ、発電セルに燃料ガスと空気を供給して発電反応を生じさせるとともに、これにより生成した排ガスおよび上記発電反応に消費されずに残った余剰ガスを発電セル外へ放出するシールレス構造の固体酸化物形燃料電池のモジュール構造において、上記缶体の内壁がカロライズ処理されているとともに、上記缶体の内部に金属製の起動用バーナが配設され、かつ上記缶体の内部に燃焼触媒が配設されていないことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1の固体酸化物形燃料電池モジュールを用いた運転方法であって、起動時に、上記缶体の内部を加熱して昇温し、当該固体酸化物形燃料電池の熱自立した後に、上記缶体内に排出された上記余剰ガスを燃焼させ、かつ上記缶体から排気される上記排ガスを冷却して得られた凝縮水を、上記燃料ガスの改質に供給する水の一部として利用するとともに、当該水の電導度が、予め設定されたしきい値を超えた際に、上記凝縮水の利用を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、缶体の内壁が不純物を含まない物質により耐熱処理されているとともに、当該缶体の内部に不純物が含まれる物質を配設していない構造の固体酸化物形燃料電池モジュールのため、当該缶体から排気される排ガスから、不純物が混入されていない水を得ることができる。これにより、外部から水を供給しない水自立した状態により固体酸化物形燃料電池を運転することが可能になる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、起動時に、内壁がカロライズ処理された上記缶体の内部を、金属製の起動用バーナにより加熱するとともに、熱自立後に、燃焼媒体を用いずに上記缶体内に排出された上記余剰ガスを燃焼させるため、上記缶体から排気される排ガスに、不純物が混入していまうことを防ぐことができる。これにより、上記排ガスを冷却して得られた凝縮水を、燃料ガスの改質に供給する水の一部として、繰り返し上記水蒸気発生器に供給することができ、外部から導入される水の量を減らすことができる。
【0016】
また、上記排ガスを冷却して得られた上記凝縮水を、上記水蒸気発生器に供給する際に、当該水の電導度が予め設定されたしきい値を超えた場合に、上記凝縮水の供給を停止するため、上記凝縮水が供給される上記水蒸気発生器の目詰まりを防ぐことができる。この結果、上記水蒸気発生器において、安定した水蒸気を生成し、発電を維持させることができるとともに、上記水蒸気発生器のメンテナンスコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の固体酸化物形燃料電池モジュールの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池の単セルを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態の固体酸化物形燃料電池モジュールは、内缶体1と、この内缶体1を断熱材2により覆う外缶体3とからなる缶体4を有し、この缶体4の内部に、固体酸化物形燃料電池5と改質器6と金属製の起動用バーナ34とが配設され、当該缶体4の下部に固体酸化物形燃料電池5から排出された排ガスを、缶体4の外部に排出する排出口7が形成されているとともに、この排出口7に水蒸気を供給する水蒸気発生器8が配設され、かつ缶体4の外部に、炭化水素ガスブロア9、水ポンプ10、空気ブロア11、制御装置28、熱交換器12、水電導度計25およびイオン交換樹脂32とが配設されて概略構成されている。
【0019】
ここで、缶体4の内缶体1および外缶体2は、内壁の表面に、アルミニウムを拡散浸透させる表面改質処理法であるカロライズ処理が施されている。また、この内缶体1の内部に配設された金属製の起動用バーナ34は、メタルニットバーナが用いられている。
【0020】
そして、固体酸化物形燃料電池5は、図2に示すように、固体電解質層13の一方の面に燃料極層14が配置されているとともに、他方の面に空気極層15が配置されて発電セル16が構成されている。この発電セル16は、燃料極層14の外側に、燃料極集電体17が配置されているとともに、空気極層15の外側に空気極集電体18が配置されている。さらに、燃料極集電体17および空気極集電体18の外側には、セパレータ19が配置されて、単セル20が構成されている。この単セル20は、図1に示すように、複数積層され、積層方向の一端側と他端側とがフランジ21により挟み込まれている。
【0021】
また、固体電解質層13は、ストロンチウム、マグネシウム、コバルトを添加したランタンガレート材料(LSGMC)によって構成されている。
【0022】
そして、燃料極層14は、Niのサーメットで構成されている。また、空気極層15は、サマリウムストロンチウムコバルタイト(SSC)により構成されている。
【0023】
さらに、燃料極集電体17は、Ni基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。また、空気極集電体18は、Ag基合金などの多孔質焼結板によって構成されている。
【0024】
また、セパレータ19は、ステンレス板によって構成されているとともに、燃料極層14に燃料ガスを供給する燃料ガス通路22、および空気極層15に空気を供給する空気通路23が穿設されている。
【0025】
そして、発電セル16を挟持しているセパレータ19同士の間は、Niの多孔質焼結板からなる燃料極集電体17、およびAgの多孔質焼結板からなる空気極集電体18から、発電反応により生成された排ガスと、当該発電反応に消費されずに残った高温の余剰ガスとを内缶体1内に排出可能なシールレス構造になっている。
【0026】
さらに、複数積層した単セル20を挟持しているフランジ21には、燃料ガスを導入する燃料ガス供給ライン24a、および空気を導入する空気供給ライン27が各々接続されている。
【0027】
また、缶体4の外部に配置された炭化水素ガスブロア9は、その吐出側に炭化水素ガス供給ライン24が接続せれているとともに、この炭化水素ガス供給ライン24の他方側が、缶体4内部に収納された改質器6の導入側に接続されている。
【0028】
そして、改質器6は、その内部に炭化水素用のNi(ニッケル)系、あるいはRu(ルテニウム)系の改質触媒が充填されている。さらに、改質器6の出口側には、燃料ガス供給ライン24aが接続されているとともに、この燃料ガス供給ライン24aの他方側がフランジ21を介して、セパレータ19に接続されている。
【0029】
また、缶体4の外部に配置された水ポンプ10は、その吐出側に水供給ライン26が接続されているとともに、この水供給ライン26の上流側からイオン交換樹脂32、流量計33、水電導度計25が介装されている。イオン交換樹脂32は、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体からなる母体を有し、ポリスチレン長鎖分子がジビニルベンゼンの架橋により、広い表面積を持つ立体的網目構造の樹脂により形成されている。
【0030】
そして、水供給ライン26の他方側が水蒸気発生器8の導入側に接続されている。また、水蒸気発生器8の出口側に、水蒸気供給ライン26aの一方側が接続されてているとともに、水蒸気供給ライン26aの他方側が燃料ガス供給ライン24aに接続されている。
【0031】
さらに、水蒸気発生器8は、缶体4の排出口7を横断して介装されているとともに、燃料極集電体17および空気極集電体18から排出される上記排ガスの熱により、水を効率良く気化させるために、熱伝導性の良好なビーズが充填されている。
【0032】
また、缶体4の排出口7には、排ガスライン29の一端側が接続されているとともに、他端側が熱交換器12の導入側に接続されている。そして、この熱交換器12の出口側に、凝縮水ライン36の一方側が接続されているとともに、凝縮水ライン36の他方側が分岐点38に接続されている。さらに、凝縮水ライン36には、凝縮水ライン用電磁弁30が介装されている。
【0033】
さらに、分岐点38には、外部からの水を導入する市水ライン35が接続されているとともに、この市水ライン35に市水ライン用電磁弁31が介装されている。また、分岐点38には、水ポンプ10に上記凝縮水または上記市水を導入する水導入ライン37の一方側が接続されているとともに、水導入ライン37の他方側が水ポンプ10に接続されている。
【0034】
また、缶体4の外部に配設された空気ブロア11は、その吐出側に空気供給ライン27が接続されているとともに、この空気供給ライン27の他方側がフランジ21を介して、セパレータ19に接続されている。
【0035】
そして、缶体4の外部に配置された制御装置28は、固体酸化物形燃料電池5の熱自立後に、凝縮水ライン36に介装された水電導度計25から、水の電導度を検出するとともに、凝縮水ライン36に介装された流量計33から、水の供給流量を検出し、これらの検出信号により、凝縮水ライン36に介装された凝縮水ライン用電磁弁30、および市水ライン35に介装された市水ライン用電磁弁31を制御している。
【0036】
以上の構成からなる固体酸化物形燃料電池モジュールを用いた運転方法について説明する。
まず、図1に示すように、空気ブロア11、炭化水素ガスブロア9、水ポンプ10を作動させるとともに、金属製の起動用バーナ34により、内壁にカロライズ処理が施された内缶体1の内部を加熱して、固体酸化物形燃料電池5を昇温させるとともに、水ポンプ10から水蒸気発生器8に供給された水が、水蒸気に生成される。この際に、水ポンプに導入される上記水は、固体酸化物形燃料電池5が熱自立するまでの間、市水ライン35から導入されるため、市水ライン用電磁弁31が開状態、凝縮水ライン用電磁弁30が閉状態になるように、制御装置28により制御される。
【0037】
そして、水蒸気発生器8において生成された水蒸気と、炭化水素ガスブロア9から供給された炭化水素ガスとが改質器6に導入され、この改質器6内において水素リッチな燃料ガスに改質される。そして、改質された燃料ガスが燃料ガス供給ライン24aを介して、固体酸化物形燃料電池5に導入されるとともに、空気ブロア11から供給された空気が空気供給ライン27を介して、固体酸化物形燃料電池5に導入される。
【0038】
これにより、固体酸化物形燃料電池5は、図2に示すように、燃料ガス供給ライン24aからの燃料ガスが、セパレータ19の燃料ガス通路22を介して燃料極層14に導入されるとともに、空気供給ライン27からの空気が、セパレータ19の空気通路23を介して空気極層15に導入されることにより発電反応が生じ、燃料極集電体17および空気極集電体18から、上記発電反応により生成した高温の排ガスおよび上記発電反応に消費されずに残った高温の余剰ガスが内缶体1内に排出される。
【0039】
この発電反応により、固体酸化物形燃料電池5は、予め設定された燃料利用率に従って、負荷上昇が開始される。そして、発電セル16の温度が上昇し、電流が定格電流値に到達すると、固体酸化物形燃料電池5が熱自立した状態になり、固体酸化物形燃料電池5の運転が開始される。
【0040】
また、固体酸化物形燃料電池5が熱自立すると、温度上昇した発電セル16の熱により、内缶体1内に排出された上記余剰ガスが燃料される。これにより、上記余剰ガスを燃焼媒体を用いずに燃焼させることができる。そして、上記余剰ガスが燃焼され、缶体4の下部に形成された排気口7から、上記排ガスが排気される。この際に、排出口7を横断して介装されている水蒸気発生器8が上記排ガスにより加熱されて、この水蒸気発生器8に供給された水が気化して水蒸気が生成される。
【0041】
さらに、排気口7から排出した上記排ガスは、排ガスライン29を介して、熱交換器12に導入される。そして、この熱交換器12によって、高温の上記排ガスが冷却され、凝縮水が生成される。
【0042】
そして、熱交換器12によって凝縮水が生成されると、制御装置28からの制御信号により、凝縮水ライン36に介装された凝縮水ライン用電磁弁30が通電されて開状態となるとともに、市水ライン35に介装された市水ライン用電磁弁31が非通電となり閉状態となる。これにより、水ポンプ10に導入される水が、上記市水から上記凝縮水に切り替わり、外部から水を導入せずに、継続的に上記凝縮水の使用が可能となる。
【0043】
この際に、凝縮水ライン36に介装されたイオン交換樹脂32により、上記凝縮水中のイオンが水素イオンと水酸化物イオンにそれぞれ交換され、各々が反応して水になる。
【0044】
さらに、水ポンプ10に導入される水が上記凝縮水に切り替わると、上記凝縮水が水ポンプ10から水蒸気発生器8に供給される。その際に、制御装置28は、熱交換器12により生成された上記凝縮水の電気抵抗値(Ω・cm)から、電導度(μS/cm)を水電導度計25により測定し、この測定した電導度(μS/cm)がしきい値として設定される。そして、水ポンプ10から水蒸気発生器8に供給される上記凝縮水の電導度(μS/cm)が、水電導度計25から検出信号により、上記しきい値を超えた判断されると、制御装置28からの制御信号により、凝縮水ライン36に介装された凝縮水ライン用電磁弁30が非通電となり閉状態となるとともに、市水ライン35に介装された市水ライン用電磁弁31が通電されて開状態となる。これにより、水ポンプ10に導入される水が、上記凝縮水から上記市水に切り替わる。
【0045】
また、制御装置28は、熱交換器12により生成された上記凝縮水の供給流量が、何らかの原因により低下した場合に、凝縮水ライン36に介装された流量計33からの検出信号を受信し、この検出信号により供給流量が低下した判断されると、制御装置28からの制御信号により、凝縮水ライン36に介装された凝縮水ライン用電磁弁30が非通電となり閉状態となるとともに、市水ライン35に介装された市水ライン用電磁弁31が通電されて開状態となる。これにより、水ポンプ10に導入される水が、上記凝縮水から上記市水に切り替わり、上記凝縮水の供給流量の低下の原因が究明されて、問題が解決すると、再び上記市水から上記凝縮水に切り替わるように、制御装置28により制御される。
【0046】
そして、固体酸化物形燃料電池5が熱自立した後に、固体酸化物形燃料電池5から排出される排ガスを熱交換器12により冷却して生成される上記凝縮水を利用して、固体酸化物形燃料電池5の運転が行われると、固体酸化物形燃料電池5によって得られた電力が、セパレータ19を介して、コンバータ(図示せず)に供給される。このコンバータに供給された電力は、入力電圧を希望値の出力電圧に変換され、さらに上記コンバータの出力側に配線されたインバータ(図示せず)を介して、外部に出力される。
【0047】
上述の実施の形態による固体酸化物形燃料電池モジュールの構造および運転方法によれば、内缶体1の内壁が不純物を含まない物質により耐熱処理されているとともに、内缶体1の内部に不純物が含まれる物質を配設していないモジュール構造のため、内缶体4から排気される排ガスから、不純物が混入されていない水を得ることができる。これにより、外部から水を供給しない水自立した状態により固体酸化物形燃料電池5を運転することが可能になる。
【0048】
また、起動時に、内壁がカロライズ処理された内缶体1の内部を、金属製の起動用バーナ34により加熱するとともに、熱自立後に、燃焼媒体を用いずに内缶体1内に排出された上記余剰ガスを燃焼させるため、内缶体1から排気される排ガスに、不純物が混入していまうことを防ぐことができる。これにより、上記排ガスを冷却して得られた上記凝縮水を、燃料ガスの改質に供給する水の一部として、繰り返し水蒸気発生器8に供給することができ、外部から導入される水の量を減らすことができる。
【0049】
そして、上記排ガスを冷却して得られた上記凝縮水を、水蒸気発生器8に供給する際に、当該水の電導度が予め設定されたしきい値を超えた場合に、上記凝縮水の供給を停止するため、上記凝縮水が供給される水蒸気発生器8の目詰まりを防ぐことができる。この結果、水蒸気発生器8において、安定した水蒸気を生成し、発電維持させることができるとともに、水蒸気発生器8のメンテナンスコストを抑えることができる。
【0050】
なお、上記実施の形態において、空気ブロア11から空気供給ライン27を介して、空気を空気極層15に供給する場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、空気ブロア11と空気を空気極層15との間に、空気ブロア11から空気極層15に供給される空気の圧力を安定させる空気バッファタンクを介装しても対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
シールレス構造の固体酸化物形燃料電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 内缶体
2 断熱材
3 外缶体
4 缶体
5 固体酸化物形燃料電池
6 改質器
7 排出口
8 水蒸気発生器
9 炭化水素ガスブロア
10 水ポンプ
11 空気ブロア
12 熱交換器
13 固体電解質層
14 燃料極層
15 空気極層
16 発電セル
17 燃料極集電体
18 空気極集電体
19 セパレータ
20 単セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体の内部に設けられ、発電セルに燃料ガスと空気を供給して発電反応を生じさせるとともに、これにより生成した排ガスおよび上記発電反応に消費されずに残った余剰ガスを発電セル外へ放出するシールレス構造の固体酸化物形燃料電池のモジュール構造において、
上記缶体の内壁がカロライズ処理されているとともに、上記缶体の内部に金属製の起動用バーナが配設され、かつ上記缶体の内部に燃焼触媒が配設されていないことを特徴とする固体酸化物形燃料電池モジュールの構造。
【請求項2】
上記請求項1の固体酸化物形燃料電池モジュールを用いた運転方法であって、
起動時に、上記缶体の内部を加熱して昇温し、当該固体酸化物形燃料電池の熱自立した後に、上記缶体内に排出された上記余剰ガスを燃焼させ、かつ上記缶体から排気される上記排ガスを冷却して得られた凝縮水を、上記燃料ガスの改質に供給する水の一部として利用するとともに、当該水の電導度が、予め設定されたしきい値を超えた際に、上記凝縮水の利用を停止することを特徴とする固体酸化物形燃料電池モジュールの運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−216371(P2012−216371A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80012(P2011−80012)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】