説明

固体酸化物燃料電池の製造

【解決手段】本発明は1キロワットの電力当たり500ドルよりも安いコストで固体酸化剤燃料電池(SOFC)を都合よく製造する方法を提供する。本方法は、電極層を形成し、電極表面に電解質材料を沈積することからなる。形成される構造は、電極−電解質の二層構造である。第2の電極がこの二層の上に沈積されて、二つの電極の間電解材料質が沈積された構成の多層構造燃料電池が形成される。この多層構造は、次いで加熱されて単一の加熱サイクルでもって焼成されてバインダー材料が除去されて、燃料電池は焼結される。この加熱サイクルは、一つまたはそれ以上のチャンバーのある炉内で行なわれる。チャンバーは好ましくは電池を加熱して電解質と電極構造のバインダー材料を除去するために可変のまたは多重の周波数のマイクロウエーブ源を具備する。チャンバーはまた燃料電池の焼結のための対流および/または放射加熱源を含む。さらに加えて、本発明は協調させて電解質と電極構造の熱物理的性質からの逸脱を少なくする。この調和は、電池内の温度勾配を少なくして、温度サイクルの間、均一に加熱、焼成する。多層構造は電池内の温度勾配が小さくなるので、歪んだり壊れることが少ない。SOFCはまたは標準的な方法よりも時間が一桁違少ない本方法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
この出願は、発明の名称 燃料電池の製造のための単一段階による共焼成方法として、2003年9月10日に、アメリカ合衆国仮出願第60/501,742号に基づく優先権を主張する。
【0002】
背景技術
燃料電池は酸素と水素が結合して水になる電気化学的反応により電気を発生するシステムまたは装置である。電池内の電解質は、電荷粒子をカソードからアノードへ輸送する。触媒はしばしば使用されて、電気化学的反応を促進してその効率を向上する。燃料電池機器は代替エネルギー源として見こみあるものである。これらの機器は従来の電源よりも効率よくまた公害源となることが少ない。燃料電池から製造される電力は、たとえば、航空機、コンピューター機器、自動車および携帯電話機器などへ電力を供給する。
【0003】
典型的には、燃料電池は使用される電解質のタイプにより分類される。燃料電池機器はまた用途または特定の電力要求に依存して種々の材料が使用されるという特徴がある。燃料電池の種々の材料には、たとえば、リン酸、プロトン交換膜、溶融炭酸塩、アルカリと固体酸化物機器がある。固体酸化物燃料電池(SOFC)は環境を汚さず、多様な電力源であり効率良く化石燃料を電気と熱に変換する。
【0004】
SOFCでは高密度電解質材料は、多孔性電極、すなわち、カソードとアノードの間に位置する。高密度電解質材料は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような固体・酸素イオン伝導体である。さらに、カソードとアノードは、それぞれ、ストロンチウムをドープした、ランタン 亜マンガン酸塩−YSZおよびニッケル−YSZ酸化物などのようなセラミック複合材であり得る。SOFC機器は、また平面的に積み重ねることが可能で、数個の電池が、各電池を仕切る相互連通板により配列される。
【0005】
SOFC機器の工業化の障害は、実質的にその製造に伴うコストである。この費用は、比較とするガスタービンを製造する費用よりも一桁高い。この格差の一つの理由は、SOFC機器がバッチ式で製造されることである。バッチ式製造は、歪みを防止して燃料電池構造はゆっくりと加熱して焼成されるために使用される。標準的なバッチ式では、1分間当たり約1℃の加熱速度でSOFCを均一に、加熱・焼成することができる。この速度では、電解質と電極構造を焼結するのに数時間を要する。このようにして、この方法による燃料電池の製造は、全く不充分で費用がかさむ。燃料電池の需要増大に伴い、安価で、多重の熱サイクルを必要としない、効率の良い具体的な製造方法への要求がある。
【0006】
発明の要約
本発明は、電力キロワット当たり500ドルよりも安価なコストで固体酸化物燃料電池を製造する方法を提供する。本方法は、電極層を形成し、電極面に電解質材料を沈積することからなる。形成される構造は、電極−電解質の二層構造である。第2の電極は、この二層構造の上に沈積されて、多層燃料電気構造体となり、それは二つの電極間に電解質が位置する。この多層構造体は、その後、単一の加熱サイクルで加熱・焼成されて、バインダーを除去されて、焼結されて燃料電池となる。この加熱サイクルは、一つまたはそれ以上のチャンバーを有する炉の中で行なわれる。一つまたは複数のチャンバーは好ましくは、電池を加熱して電解質と電極構造体のバインダー材料を除去するために、可変のまたは多重の周波数のマイクロウエーブ源を含む。チャンバーはまた、好ましくは焼結のための対流または放射加熱源を含む。
【0007】
さらに、本発明の方法は共同して、電解質と電極構造の熱物理的性質の偏りを少なくする。この共同は、電池内の温度勾配を減少させて、最小として、構造体は熱サイクルの間均一に加熱されて焼成される。多層構造体はまた電池内の熱勾配が少なくなることにより歪みや破損がし難くなる。多層燃料電池はまた、本発明の方法により標準的な方法よりも一桁時間がかからない方法により製造される。
【0008】
本発明の方法は、数個の電池が各電池を離隔する相互連通板で配列するSOFCスタック(stack)を製造するのに利用される。本発明は、本発明により製造される多層のSOFC構造体を提供する。この燃料電池機器は、たとえば、航空機、コンピュータ機器、自動車および携帯電話機器へ電力を供給するのに使用され得る。
【0009】
本発明の方法により製造されるSOFCは、一般的には約700〜1100℃の温度範囲で動作する。SOFCは、多孔質電極、すなわち、ノードとカソードの間に位置する高密度の電解質材料からなる。高密度の電解質材料は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)のような固体酸素イオン伝導体であり得る。さらに、カソードとアノードは、それぞれ、ストロンチウムをドープした、ランタン 亜マンガン酸塩−YSZおよびニッケル−YSZ酸化物などのようなセラミック複合材であり得る。
【0010】
一般的には、本発明の方法は、時期と粒径を調節しながら分布させることで電極を形成することからなる。電極は、個別にまたは多層の多孔質構造であり得て、それは、”グリーン”または未焼成である。電極はまたは、乾燥すると約0.5〜2.0mmの範囲の厚みを有する。高密度の電解質材料は、次いで、電極面に沈積されて、個別のまたは多層の固体層で乾燥厚みが約5〜1000μmの範囲を有する。
【0011】
第2の電極は二層構造体上に沈積される。第2の電極は個別のまたは多層の多孔質構造体で乾燥厚みが約50〜150μmの範囲にある。上述の電解質材料と電極層の夫々は、本発明に従い形成され、それは適当な沈積技術、例えば、スクリーン印刷、真空浸透、電気泳動浸漬、インクジェット印刷、冷間プレス、テープキャストまたはスプレーなどによることができる。形成された多層構造体は、次いで、単一の加熱サイクルで加熱され、焼成される。このサイクルは、1分当たり約10℃の加熱速度で実行される。
【0012】
図面の説明
本発明の他の特徴と利点は、以下の図面を参考にして、次ぎの本発明の詳細な説明から明らかであり、添付の図面は以下のとおりである:
図1は、多孔質構造体の間に位置する高密度電解質からなる固体酸化物燃料電池の部分説明図である。
図2は、数個の電池が各電池を仕切る相互連通板で配列した固体酸化物燃料電池(SOFC)の積み重ねの斜視図である。
図3は、本発明の方法で形成される多孔質電極層のフローチャートである。
図4は、本発明の方法により図3の電極面上に高密度電解質層が形成されるフローチャートであり、電極−電解質二層構造体である。
図5は、図4のフローチャーに示される本発明の方法で形成される電極−電解質二層構造体の画像である。
図6は、図4のフローチャートに示される本発明の方法により形成される電極−電解質・二層構造体の走査電子顕微鏡写真の図である。
図7は、図4の電解質面上に多孔質電極層が沈積するフローチャートであり、形成された多層構造体は、本発明に従う単一の加熱サイクルで加熱されて焼成される。
そして、
図8は、図3、4および7の方法に従い製造されるSOFCの部分斜視図であり、多層燃料電池は固体のイットリア安定化(yttria-stabilized)ジルコニア(YSZ)電解質からなり、それは、ストロンチウムをドープしたランタン マンガナイト−YSZカソードとニッケル−YSZ酸化物アノードの間に位置する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は単一の温度サイクルで固体酸化物燃料電池(SOFC)を製造する方法を提供する。このサイクルはバッチ式または連続式でも使用できる。SOFCは、本発明に従い、電力1キロワット当たり500ドルよりも安価なコストで適切に製造され得る。製造されるSOFCは約700〜1100℃の温度範囲で動作する。同様に、本発明の方法は数個の電池が各電池を仕切る相互連通販で配列するSOFCのスタック(積み重ね)を製造し得る。開示する方法で製造される燃料電池機器は、たとえば、航空機機器、コンピュータ機器、自動車機器および携帯電話機器に電力を供給するのに使用され得る。
【0014】
燃料電池は環境を汚染しないクリーンで多様な電力を供給し、効率良く化石燃料を電力と加熱に変換する。図1は、多孔質電極、すなわち、カソード18とアノード16の間に位置する高密度電解質材料12からなるSOFC10の図である。高密度電解質材料は、固体の酸素-イオンの伝導体であり、例えばイットリア-安定化のジルコニア(YSZ)である。さらに、カソードとアノードは、セラミック複合体であり、たとえば、それぞれ、ストロンチウムをドープしたランタン マンガナイトYSZとニッケル−YSZ酸化物である。燃料電池は電気化学反応で電気を発生させ、それは酸素と水素が結合して水を生成する。特に、電極は酸素を還元して、水素を酸化し、電圧14を起電する。電極は酸化ニッケルのような触媒を含むことができる。この触媒は、電気化学反応を促進し、その効率を向上させる。
【0015】
図2は、数個の電池が、各電池を仕切る相互連通板で隔離されたSOFC電池スタック20である。平面的に積み重ねられる単一の燃料電池は、カソード26とアノード24の間に位置する電解質材料25からなる。相互連通板は、燃料と酸化剤がスタックを通過して流れるのをガイドする板22または分離板28である。これらの相互連通板は共通した複合材からなり、それは、たとえば亜クロム酸ランタンである。
【0016】
本発明の方法は、時期と粒径を調節可能に分布させて電極を形成し、熱物理的に均等な層で、たとえば均一な微細構造、弾性および/または熱膨張係数を有するものを提供する。これらの性質間の均質性は、加熱サイクル中での歪みや破損を防止する。本方法は、また協調して電解質と電極層の熱物理的性質間の偏りを最小化する。この協調は加熱サイクル間の電池の温度勾配を減少させて最小化し、構造体は効率良く均一に加熱されて焼成される。
【0017】
電極は図1と2に示される様に多孔質アノードであり得る。多孔質アノードは、個別または多重の層の複合材であり得て、例えば、ニッケル−YSZ酸化物、ニッケル−ガドリニウム酸化物をドープしたセリウム酸化物、ニッケル−サマリウム酸化物をドープしたセリウム酸化物、コバルト−YSZ酸化物またはコバルト−ガドリウム酸化物をドープしたセリウム酸化物などである。
【0018】
複合体電極は、約0.5〜2.0mmの好ましい厚みを有するグリーン層として沈積される。この電極厚みは燃料電池の機械的支持構造として作用する。この厚みは、電極を好ましく形成するのに使用されるテープキャストに依存する。これらの層は、気体輸送現象を調整する種々の気孔率でもってキャストされ得る。
【0019】
一般には、テープ キャスト フィルムは、剥離層を有する基材上に粉末スラリーを沈積させて形成される。スラリーはバインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合体固体粒子を含む。例えばバインダーは、ポリビニルアルコールまたはポリビニルブチラールであり得る。共通の溶剤は、エタノール、トルエン、メタノールまたはイソプロパノールである。分散剤または分散試薬は、魚油であり得る。これらの材料は粉砕されて軟質団塊除去で篩い分けされる。ホッパーから粉末スラリーの流れを基材上に流下させ、そして”ドクター・ブレード”により、スラリーを均一に分布させて、層をキャストする。この層は、次いで、基板から剥離されて、電極用に整備される。
【0020】
図3のフローチャートでは、工程40でテープキャスト層が得られる。該層は、工程42の間に適宜の方法で約100〜400℃の範囲内の温度で乾燥される。この温度範囲は、キャスト層内の材料の分散剤、溶剤および可塑剤などは蒸発し、多孔質の電極が形成される。温度範囲は、また、これら材料の揮発度に応じて変わり得る。電極の厚みは、例えば、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡等の通常の方法により工程44で測定され得る。
【0021】
工程45では、電極上に追加のテープ キャスト層が沈積されて、個別に乾燥されて、好ましい厚みの範囲の約0.5〜2.0mmが測定される。上述のように、この追加の層はガス輸送現象と電極の効率向上のために気孔率を変えてキャストされ得る。電極は電解質材料よりも多孔性でない方が好ましく、また気孔率は外部表面に向かって増大していくのが好ましい。工程46で形成された個別のまたは多層の電極構造体は次いで本発明に従いさらに加工処理される。
【0022】
図4は、本発明の方法により調製される電極層上に高密度電解質材料が形成されるフローチャートを示す。この電解質材料は図1および2に示される様に個別または多層の固体導電体であり得る。このような固体の導電体材料はYSZ、セリア・ガドリウム酸化物、ストロンチウム、マグネシウム・ランタン・没食子酸塩または希土類金属酸化物ドープのセリウム酸化物を含む。YSZ伝導体は、約700〜1100℃の温度範囲で効果的に作動するが、この範囲は他の異なる電解質固体では変わり得る。
【0023】
電解質材料は粉末スラリーとして電極の表面上に工程50でスクリーン印刷され得る。スクリーン印刷により相や粒径の分布調整をされて一定の熱物理的構造が付与される。沈積された電解質材料は好ましくは厚み約5〜1000μmである。この厚みは、異なる印刷特性に応じて変わり得て、例えば、層中の複合材料組成や粒径分布である。
【0024】
電解質材料のための粉末スラリーは、バインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合固体からなることができる。上述のように、これらの材料は、粉砕されて、印刷前に軟質団塊除去のために篩い分けされる。スクリーン印刷されたスラリー層は工程52の間に約100〜400℃の範囲内の温度で乾燥される。この温度範囲で好ましくは印刷層の材料が蒸発して高密度電解質材料が形成される。電解質材料の厚みは、先に述べたような適当な方法により工程54で測定される。
【0025】
電解質材料は工程56で追加のスクリーン印刷により層として沈積・形成され得る。これらの層はそれぞれ乾燥されて、好ましい厚み範囲の約5〜1000μmとして測定される。印刷される追加の層は、ガス輸送現象を調整し、電解質材料の効率を向上させるために変わり得る。工程60で形成された二層構造は、次いで本発明に従いさらに加工されるために調製される。
【0026】
この電極−電解質材料の2層構造の例は、図5と6に示される。図5は、テープキャストによる多孔質なニッケル−YSZ酸化物アノード層としての電極を示す。電解質材料層はアノードの表面上にスクリーン印刷される。この電解質材料はYSZ固体伝導体である。図6は、この二層構造の走査型電子顕微鏡による画像である。
【0027】
第2の電極が次いで、二層構造体の電解質材料上に沈積される。図7のフローチャートは、工程62の間に電解質材料層の表面上に形成される電極を示す。電極は層や粒径の分布を調節して形成される。形成された電極は好ましくは図1や2で示されるような多孔質なカソードである。多孔質カソードは、また個別または多層の複合材からなり、これは例えば、ストロンチウムのドーピングした亜マンガン酸ランタンである。
【0028】
複合材電極は、好ましい厚み範囲が約50〜150μmである層としてスクリーン印刷される。この厚みは、電極を形成するのに使用される印刷層に依存して変わる。電極はバインダー、分散剤、可塑剤および複合材固体からなる粉末スラリーから沈積される。この材料は粉砕されて、印刷前に篩い分けされて、軟質団塊が除去される。図示のように、沈積したスラリー層は、工程64で約100〜400℃の範囲の温度で乾燥される。この温度範囲では、好ましくは印刷層の材料が蒸発して多孔質電極が形成される。電極の厚みは、次いで、工程66で前述したような適宜の方法で測定され得る。
【0029】
電極は工程70で、電解質材料上に追加の層を印刷することにより形成され、そして乾燥後にはその厚みは好ましい範囲として約50〜150μmが測定される。上述のように、この追加の層は沈積により気孔率を変えて、ガス輸送現象を調節し、そして電極効率に作用する。電極−電解質材料の二層上に形成された、この個別のまたは多層の電極構造は、多層の燃料電池構造を構成する。
【0030】
多層構造体は一般には、多孔質電極の間に位置する高密度電解質材料を含む。多層電池内のいかなる水分も約125〜150℃の範囲の温度で均一に加熱されることにより、好ましく蒸発される。構造体は、約275〜375℃の範囲の温度に加熱されて各電池層からバインダーが除去される。この温度範囲で、各層内に残留する可塑剤、分散剤または溶剤のいずれも蒸発する。加熱されるバインダーはしばしば炭素残さが残り、それは、約500〜600℃の温度範囲で構造体を均一加熱することにより除去され得る。この均一加熱は、熱サイクルに要する時間を減少させ、そして本願方法のプロセス的効率を向上させるために約800℃の温度まで継続される。構造体は、次いで工程74の間に約1000〜1500℃の温度範囲で焼成されて、多層構造体は焼結される。上述の温度範囲にわたる加熱と焼成の時間は、たとえば電池材料または特定のプロセスに依存して変わり得る。
【0031】
燃料電池構造体は、可変または多重周波数のマイクロウエーブ源により均一加熱され得る。このようなマイクロウエーブ源は、一般的にはアメリカ特許第5,321,222号、5,521,360号および5,961,871号明細書に記載される。マイクロウエーブ源の周波数と電力レベルはマイクロウエーブのエネルギーを効率良く燃料構造体へ供給するように調整される。マイクロウエーブ周波数は1つの周波数帯にわたって変調されるかまたは掃引されて、意図するマイクロウエーブの周波数域が供給される。代わりに、マイクロウエーブのエネルギーは、多重周波数で供給されることも可能である。マイクロウエーブ加熱は好ましくは多層構造体の均一加熱に使用されるのだが、電池層内の温度勾配を最小限とするような他の適当な加熱方法も使用できる。
【0032】
多層燃料電池は、セラミック焼結方法で使用されるような対流および/または放射加熱により焼成される。この加熱方法は、循環ガス雰囲気下で遂行され得る。SOFCを焼成する温度は、電解質材料と電極層の熱物理的性質に依存し得る。このようにして、種々の電気ヒーター、たとえば、ニッケル−クロム、モリブデン・リボン、モリブデン珪酸塩またはシリコン・カーバイドなどが一定の燃料構造体に使用され得る。
【0033】
本発明の方法では多層燃料電池を単独の熱サイクルで加熱・焼成する。この熱サイクルは、一つまたはそれ以上の数のチャンバーを有する炉で行なわれる。チャンバーは、好ましくは、可変または多重周波数のマイクロウエーブ源を具備し、それは電池を加熱して電解質と電極構造体のバインダー材を除去するためである。チャンバーは、また好ましくは、燃料電池を焼結させるために対流および/または放射源を具備する。このような炉は、アメリカ特許出願第10/775,52号に記載され、それはBTU インターナショナル、インコーポレイテッド社に譲渡された。単独の熱サイクルは、バッチ式または連続式として遂行され得る。
【0034】
多層電池構造体の電解質材料は、好ましくは8モル%のYSZを含む固体伝導体であり、そしてカソードとアノードは、それぞれストロンチウムがドープされたランタン 亜マンガン酸−YSZとニッケル・YSZ酸化物セラミック複合体である。電解質と電極材料の層は、またナノメートルまたはミクロンメーター範囲の粒径を有するように選択される。図8は、これら材料で形成されて焼成されるSOFCを示す。高密度電解質材料と各多孔質電極の好ましい厚みもまた示されている。
【0035】
本発明のプロセス変数はまた、例えば、熱サイクルに要する時間を短縮しそして製造効率を向上させるために変更され得る。これらの変数には、温度、時間、雰囲気、粒径および/または粒径分布がある。これらの変数を変更することにより層間の界面接触と抵抗に影響を及ぼしてこれらを改善し、さらに界面抵抗を弱めて、多層構造体が歪むのを防止する。本発明の方法は、また、例えば、酸素ポンプ、センサーまたは他の電気化学的機器を有する中間温度SOFC機器を処理するのに使用され得る。
【0036】
ここまで本発明は好ましい態様に基づいて説明されたが、当業者は上述の説明を読めばこれまでの組成と物品に均等物または他の変更物を有効に置換、改変することができる。それ故ここに特許により許諾される保護は添付の請求の範囲とその均等物に含まれる範囲に限定されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】多孔質構造体の間に位置する高密度電解質材料からなる固体酸化物燃料電池の部分説明図
【図2】数個の電池が各電池を仕切る相互連通板で配列した固体酸化物燃料電池(SOFC)の積み重ねの斜視図
【図3】本発明の方法で形成される多孔質電極層のフローチャート
【図4】本発明の方法により図3の電極面上に高密度電解質材料層が形成されるフローチャート。
【図5】図4のフローチャーに示される本発明の方法で形成される電極−電解質材料二層構造体像
【図6】図4のフローチャートに示される本発明の方法により形成される電極−電解質材料・二層構造体の走査電子顕微鏡図
【図7】図4の電解質材料の表面上に多孔質電極層が沈積するフローチャート
【図8】図3、4および7の方法に従い製造されるSOFCの部分斜視図
【符号の説明】
【0038】
20 SOFC電池スタック
22 ガイド板
24 アノード
26 カソード
28 分離板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物燃料電池の製造方法であって、前記方法は以下からなる:
第1の電極層を形成し、前記第1の電極層は面を有し;
第1の電極層の前記面上に電解質層を形成し;
電解質層の面上に第2の電極層を形成し、ここで当該層は多層の電気化学的構造体からなり;
マイクロウエーブのエネルギーを前記多層構造体に付与して各層から実質的にバインダーを除去し;そして
前記多層構造体を焼成して各層を焼結させる。
【請求項2】
さらに以下を含む請求項1の方法:
スラリーを沈積させて各層を形成し、前記スラリーはバインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合材固体からなり;そして
スラリーを乾燥させて実質的に分散剤、溶剤および可塑材を除去する。
【請求項3】
マイクロウエーブ源は可変または多重周波数のマイクロウエーブ源から供給される請求項1の方法。
【請求項4】
焼成が対流加熱、放射加熱またはこの組合せにより行なわれる請求項1の方法。
【請求項5】
焼成が約1000℃よりも高温で行なわれる請求項1の方法。
【請求項6】
マイクロウエーブのエネルギーが約800℃よりも低い温度で供給される請求項1の方法。
【請求項7】
第1の電極層がアノードとして作用する請求項1の方法。
【請求項8】
第1の電極層が多孔質である請求項1の方法。
【請求項9】
第1の電極層が約0.5〜2.0mmの範囲の厚みを有する請求項1の方法。
【請求項10】
第2の電極層がカソードとして作用する請求項1の方法。
【請求項11】
第2の電極層が多孔質である請求項10の方法。
【請求項12】
第2の電極層が約50〜150μmの範囲の厚みを有する請求項11の方法。
【請求項13】
電解質層が高密度固体である請求項1の方法。
【請求項14】
電解質層が約5〜1000μmの範囲の厚みを有する請求項13の方法。
【請求項15】
第1の電極層はセラミック複合体からなり、セラミック複合体は、ニッケル−イットリウム安定化ジルコニウム酸化物、ニッケル−ガドリニウム酸化物ドープのセリウム酸化物、ニッケル−サマリウム酸化物ドープのセリウム酸化物、コバルト−イットリウム安定化ジルコニウム酸化物、コバルト−ガドリニウム酸化物ドープのセリウム酸化物およびこれらの組合せからなる請求項7の方法。
【請求項16】
第2の電極層がストロンチウムドープのランタン 亜マンガン酸−イットリウム安定化ジルコニウム セラミック複合材からなる請求項10の方法。
【請求項17】
電解質層が伝導体からなり、該伝導体は、イットリウム安定化ジルコニウム、セリア・ガドリウム酸化物、ストロンチウム、マグネシウム・ランタン没食子酸塩、希土類金属ドープのセリウム酸化物およびこれらの組合せからなる請求項13の方法。
【請求項18】
固体酸化物燃料電池の製造方法であって、該方法は以下からなる:
電気化学的に活性の材料の第1の層を備え、該第1の層は表面を有し;
第1の層の面上に電解質材料を沈積し;
電解質材料の面上に電気化学的に活性な材料を沈積し、ここで前記電解質材料は層間に配置されて多層の電気化学的構造体が構成され;そして
多層構造体を焼成して実質的に電解質材料と層を焼結させる。
【請求項19】
電解質材料と層が、バインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合体固体からなる請求項1の方法。
【請求項20】
さらに、多層構造体を加熱して電解質材料と層からバインダーを実質的に除去し、ここで多層構造体は焼成の前に加熱される請求項19の方法。
【請求項21】
さらに、第1の層を乾燥して実質的に分散剤、溶剤および可塑剤を除去し、ここで第1の層は電解質材料の沈積の前に乾燥され、そして乾燥した第1の層は所定の厚みを有する請求項1の方法。
【請求項22】
さらに、電解質材料を乾燥して実質的に分散剤、溶剤および可塑剤を除去し、ここで電解質材料は第2の層の沈積の前に乾燥され、そして乾燥した電解質材料は所定の厚みを有する請求項1の方法。
【請求項23】
さらに、第2の層を乾燥して実質的に分散剤、溶剤および可塑剤を除去し、ここで第2の層は多層構造体の焼成の前に乾燥され、そして乾燥した第2の層は所定の厚みを有する請求項1の方法。
【請求項24】
さらに以下からなる:
乾燥した第1の層の厚みを測定して要求厚みと比較し;
測定した厚みが要求値よりも薄い場合は、乾燥した第1の層の上に電気化学的活性な材料の追加の層を供給し、ここで前記追加の層は、バインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合体固体からなるものであり;
追加の層を乾燥して分散剤、溶剤および可塑剤を実質的に除去し、該層は所定の厚みを有し;
前記所定の厚みを測定して要求値と比較し;そして
測定の値と要求値とがほぼ等しくなるまで追加と乾燥の工程を繰り返す、請求項21の方法。
【請求項25】
さらに以下からなる:
乾燥した電解質材料の厚みを測定して要求厚みと比較し;
測定した厚みが要求値よりも薄い場合は、乾燥した電解質材料の上に電気化学的活性な材料の追加の層を供給し、ここで前記追加の層は、バインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合体固体からなるものであり;
追加の層を乾燥して分散剤、溶剤および可塑剤を実質的に除去し、該層は所定の厚みを有し;
前記所定の厚みを測定して要求値と比較し;そして
測定の値と要求値とがほぼ等しくなるまで追加と乾燥の工程を繰り返す、請求項22の方法。
【請求項26】
さらに以下からなる:
乾燥した第2の層の厚みを測定して要求厚みと比較し;
測定した厚みが要求値よりも薄い場合は、乾燥した第2の層の上に電気化学的活性な材料の追加の層を供給し、ここで前記追加の層は、バインダー、分散剤、溶剤、可塑剤および複合体固体からなるものであり;
追加の層を乾燥して分散剤、溶剤および可塑剤を実質的に除去し、該層は所定の厚みを有し;
前記所定の厚みを測定して要求値と比較し;そして
測定の値と要求値とがほぼ等しくなるまで追加と乾燥の工程を繰り返す、請求項23の方法。
【請求項27】
固体酸化物燃料電池スタックの製造方法であって、該方法は以下からなる:
請求項1〜18のいずれかの方法を行ない;
多層電気化学的構造体の表面上に相互導通配線を配置し;そして
請求項1〜18のいずれかの方法を繰り返し、ここで相互導通配線は実質的に多層構造体を分離する。
【請求項28】
化学エネルギーを電気と発熱に変換するように作用する固体酸化物燃料電池であって、該燃料電池は以下からなる:
多孔質アノード、該アノードは約0.5〜2.0mmの範囲の厚みを有し;
アノードの表面上に配置される固体電解質材料、該電解質材料は約5〜1000μmの範囲の厚みを有し;そして
電解質材料の表面上に配置される多孔質カソード、該カソードは約50〜150μmの範囲の厚みを有し、ここでアノード、電解質およびカソードは請求項1〜18のいずれかの方法により調製されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−510255(P2007−510255A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526312(P2006−526312)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029571
【国際公開番号】WO2005/027239
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500454839)ビーティーユー インターナショナル インコーポレイテッド (7)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】