説明

固体電子デバイスにおいて使用するためのポルフィリンおよび導電性ポリマー組成物

太陽電池を含む有機電子デバイスにおいて使用される、ポルフィリン大環状分子と、ポリチオフェンなどの共役ポリマーとを含む組成物を提示する。ポリマーへのポルフィリン大環状分子の共有結合は、共役ポリマーの電子特性および分光特性の調整を可能にし、かつブレンド型の比較例に比べて系の熱安定性を向上させることができる。少なくとも1つの共役ポリマーに共有結合している少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む少なくとも1つのポリマーを含む組成物であって、ポルフィリン大環状分子が金属を含まない、組成物も提示する。インクを調合することができる。作製方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全体として参照により組み入れられる、2007年5月21日に出願された米国仮出願第60/939,340号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
本質的に導電性のポリマーまたは共役ポリマーの電子特性および光学特性を調整することで、発光ダイオード、光電池、および電界効果トランジスタなどのポリマー系電子デバイスの性能を向上させることができる。これらのデバイスおよび材料は、例えばディスプレイ、オフグリッド発電、ならびに低重量回路、フレキシブル回路、およびプリンタブル回路において関心の対象である。現存するデバイスの性能を向上させること(それらの効率および調整可能性を高めることを含む)は非常に重要である。共役ポリマーの様々なファミリーのうち、位置規則性ポリチオフェンを含むポリチオフェンが特に有用である。例えば全体として参照により組み入れられるMcCulloughらの米国特許第6,602,974号(特許文献1)および第6,166,172号(特許文献2)を参照。Williamsらに対するPlextronicsの米国特許公開第2006/0076050号「Heteroatomic Regioregular Poly(3-Substitutedthiophenes) for Photovoltaic Cells」(特許文献3)も参照。
【0003】
青色領域、赤色領域、および近赤外(NIR、700〜900nm)領域において強い吸収を示すポルフィリン色素(例えばポルフィリン、クロリン、およびバクテリオクロリン)も有用である。クロリンおよびバクテリオクロリンを含むポルフィリン材料の合成化学の近年の進歩により、天然色素の広範な類似体に対するアクセスが現在可能になっている。合成色素は、天然色素のそれに類似したスペクトル属性および光物理属性を示すが、安定性および合成上の可変性という点で天然材料に対する優位を有する。後者は、スペクトル特徴、光物理特性、酸化還元電位、および自己集合またはビルディングブロック性の容易な調整を可能にする。したがって、4つの異なるメソ置換基を有するポルフィリンが利用可能である。1つを除くすべての部位で置換基の制御を実行することで、605〜685nmで吸収の調整を可能にすることができる、安定なクロリンが現在利用可能である。異なるパターンの置換基を導入できる安定なバクテリオクロリンが現在利用可能であり、吸収スペクトルは730〜800nmで調整できる。したがって、合成ポルフィリン色素を使用することで、そのデザインが天然光合成集合体の影響を受けている分子材料の太陽エネルギー変換に関する基本的および商業的問題に対処することができる。全体として参照により本明細書に組み入れられるLindseyらの米国特許第6,420,648号(特許文献4);第6,916,982号(特許文献5);第6,596,935号(特許文献6);第6,407,330号(特許文献7);第6,603,070号(特許文献8)に例えば開示されているように、合成ポルフィリン色素は集光アレイとして使用されている。
【0004】
高度な用途上の要求を満たすために、ポルフィリンとポリマーとの両方を含む材料を提供する必要が存在する。例えば、より良い性能が、例えば仕事関数、酸化開始、効率、および開回路電圧などのパラメータにおいて必要である。特に、加工可能でかつ安定な材料を含むより良い光起電力材料が必要である。さらに、より汎用性の高い合成戦略が必要である。
【0005】
Schaferling et al., J. Mater. Chem., 2004, 14, 1132-1141(非特許文献1)は、ポルフィリンと共役ポリマーとを合成的に組み合わせる上での困難を示している。彼らは電気重合によるポルフィリン官能化ポリチオフェンの作製を報告しているが、ポルフィリンに存在する金属なしに重合は生じない可能性があり、分子量データは提供されていない。電気重合によって形成されるポリマーは、特性決定が困難であることがあり、不確定なフィルムを与えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,602,974号
【特許文献2】米国特許第6,166,172号
【特許文献3】米国特許公開第2006/0076050号
【特許文献4】米国特許第6,420,648号
【特許文献5】米国特許第6,916,982号
【特許文献6】米国特許第6,596,935号
【特許文献7】米国特許第6,407,330号
【特許文献8】米国特許第6,603,070号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Schaferling et al., J. Mater. Chem., 2004, 14, 1132-1141
【発明の概要】
【0008】
概要
組成物、デバイス、作製方法、使用方法を本明細書において提供する。
【0009】
一態様では、少なくとも1つの共役ポリマーに結合している少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む少なくとも1つのポリマーを含む組成物を提供し、ポルフィリン大環状分子は金属を含まない。
【0010】
別の態様では、少なくとも10個の共役繰り返し単位を有する少なくとも1つの共役ポリマーに共有結合している、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む、少なくとも1つのポリマーを含む組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を与える工程、少なくとも1つの共役ポリマーを与える工程、共役ポリマーとポルフィリン大環状分子とを共有結合させる工程によって調製される組成物を提供する。
【0012】
別の態様では、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を与える工程、少なくとも1つの共役ポリマーを与える工程、共役ポリマーとポルフィリン大環状分子とを共有結合させる工程を含む方法を提供する。
【0013】
別の態様では、互いに結合していない、ポリチオフェンを含む少なくとも1つの共役ポリマーと、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子とのブレンドを含む組成物を提供する。
【0014】
別の態様は、少なくとも1つのp型半導体と、半導体の吸収領域の外側の紫外領域および赤外領域において吸収する少なくとも1つの添加剤とのブレンドを含む組成物である。例えば、半導体は共役ポリマーであり得るものであり、添加剤はポルフィリン大環状分子であり得る。
【0015】
1つまたは複数の態様の利点は、例えば、電流生成用の太陽光スペクトルの使用の増大、より高い効率、合成上の汎用性、系の成分のエネルギー特性を調整する能力、およびアニーリングにもかかわらず420nmのソーレー帯のような吸収帯を保存することを含む。一態様では、ポリマーに対するポルフィリン大環状分子の共有結合は、ブレンド型の比較例に比べて系の熱安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光電池または太陽電池の一例を示す。
【図2】ポルフィリン大環状分子−ポリマー共役体の模式図を示す。
【図3】好ましい態様のポルフィリン大環状分子−ポリマー共役体の調製に使用する化合物、およびポルフィリン大環状分子とポリマーとの異なる付着点を示す。
【図4】H-Br末端P3HT(P2)とジエチニルポルフィリンとの薗頭カップリング時の粗反応混合物のSECトレース(上側パネル)および出発原料の混合物のSECトレース(下側パネル)を示す。検出波長は520nmであった。P3HTポリマーより前に溶出した各成分の吸収スペクトル(上側パネル)は、ポルフィリンとポリマーとの両方の特性吸収ピークを示した。これらのデータは反応VIIに関する。
【図5】CH2Cl2/エタノール(3:1)中、室温でのH-Br末端P3HT(P2)とジエチニルポルフィリンとの薗頭カップリング時の粗反応混合物の吸収スペクトルを示す。分取SEC時に得られる生成物の吸収スペクトルはここで表示されるそれと同一である。ポルフィリンの特性吸収帯(422nm)およびP3HTポリマーのそれ(500〜600nm領域)は明らかに視認できる。これらのデータは反応VIIに関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい態様の詳細な説明
序論
図1は、通常の太陽電池のいくつかの成分を示す。例えばDennler et al., 「Flexible Conjugated Polymer-Based Plastic Solar Cells: From Basics to Applications」 Proceedings of the IEEE, vol. 93, no. 8, August 2005, 1429-1439(図4および5を含む)も参照。太陽電池の各種構成を使用できる。重要な要素は、活性層、陽極、陰極、およびより大きい構造を支持するための基板を含む。また、正孔注入層および/または正孔輸送層を使用でき、調節層を使用できる。活性層は、P/Nバルクヘテロ接合を例えば含むP/N複合体を含むことができる。
【0018】
下記の参考文献は光起電力材料および光起電力デバイスを記載している。
【0019】
実用実施例および図面を含む全体として参照により本明細書に組み入れられる、Williamsらに対する米国特許公開第2006/0076050号「Heteroatomic Regioregular Poly(3-Substitutedthiophenes) for Photovoltaic Cells」(Plextronics)。
【0020】
実用実施例および図面を含む全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公開第2006/0237695号(Plextronics)「Copolymers of Soluble Poly(thiophenes) with Improved Electronic Performance」。
【0021】
また、実用実施例および図面を含む全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公開第2006/0175582号「Hole Injection/Transport Layer Compositions and Devices」(Plextronics)は、正孔注入層技術を記載している。
【0022】
また、2007年5月2日に出願された米国特許出願第11/743,587号は、活性層組成物および太陽電池デバイスを記載しており、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0023】
また、2008年4月30日に出願された米国特許出願第12/113,058号は、活性層組成物および活性層加工方法ならびに太陽電池デバイスを記載しており、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
また、2007年7月13日に出願された米国特許出願第11/826,394号は、正孔注入層組成物ならびに太陽電池デバイスおよび他の有機電子デバイスを記載しており、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
Louwetらに対する米国特許第7,147,936号は、光起電力デバイスおよびポリマー材料を記載している。
【0026】
本明細書での合成に有用な基本的有機反応は、例えばAdvanced Organic Chemistry, 5th Ed, by Smith, March, 2001に見ることができる。
【0027】
有機半導体およびその加工を記載している別のテキストはPrinted Organic and Molecular Electronics, Ed. Gamota et al., 2004である。
【0028】
本質的に導電性のポリマーおよび共役ポリマー
本質的に導電性のポリマーまたは共役ポリマーは、その共役主鎖構造が理由で(伝統的なポリマー材料のそれに比べて)何らかの条件下で比較的高い導電率を示す有機ポリマーである。正孔または電子の導体としてのこれらの材料の性能は、それらを酸化または還元する際に増大する。ドーピングとしばしば呼ばれるプロセスにおける本質的に導電性のポリマーの低酸化(または還元)時に、電子が価電子帯の上部から除去されるか(または伝導帯の下部に付加される)ことにより、ラジカルカチオン(またはポーラロン)が作り出される。ポーラロンの形成により、いくつかのモノマー単位に対する部分的非局在化が作り出される。さらなる酸化時に、別の電子を別個のポリマーセグメントから除去し、それにより2つの独立したポーラロンを得ることができる。あるいは、不対電子を除去することでジカチオン(またはバイポーラロン)を作り出すことができる。印加された電界では、ポーラロンとバイポーラロンとの両方が可動性であり、二重結合および単結合の非局在化によりポリマー鎖に沿って移動することができる。酸化状態のこの変化によって、バイポーラロンと呼ばれる新しいエネルギー状態が形成される。エネルギーレベルは、価電子帯における残存する電子のいくつかに接近可能であり、それによりポリマーは導体として機能することが可能になる。この共役構造の程度は、固体状態で平面配座を形成するポリマー鎖に依存する。これは、環から環への共役がπ軌道の重なりに依存するためである。特定の環がねじれて平面性から逸脱する場合、重なりは生じ得ず、共役帯構造は分裂し得る。環間の重なりの程度は、それらの間の二面角のコサインによって変動するため、何らかの微小なねじれは有害ではない。
【0029】
有機導体としての共役ポリマーの性能も、固体状態のポリマーの形態に依存し得る。電子特性は、ポリマー鎖間の電気接続性および鎖間電荷輸送に依存し得る。電荷輸送用の経路は、ポリマー鎖沿い、または隣接する鎖の間に存在し得る。鎖に沿った輸送は平面主鎖配座によって容易にすることができる。これは、電荷を運ぶ部分が、環の平面性の指標である環間の二重結合性の量に依存するためである。鎖間のこの導電機構は、π積層と呼ばれる平面状のポリマーセグメントの積層、あるいは、励起子または電子が空間または他のマトリックスをトンネルまたは「ホップ」して、それが出発する鎖に近接している別の鎖に至ることができる、鎖間ホッピング機構のいずれかを包含し得る。したがって、固体状態でポリマー鎖を順序づけることができるプロセスは、導電性ポリマーの性能向上を促進することができる。本質的に導電性のポリマーの薄膜の吸収特性は、固体状態で生じる再積層の増大を反映しているということが知られている。
【0030】
ポリマー系太陽電池、ポリマー発光ダイオード、有機トランジスタ、または他の有機回路などの用途では、電子および正導体(すなわち「正孔」)の流れは、成分内の伝導帯および価電子帯の相対エネルギー勾配により影響される。したがって、所与の用途における好ましい態様の好適な材料は、イオン化ポテンシャル(サイクリックボルタンメトリーで測定)(Micaroni, L et al., J. Solid State Electrochem., 2002, 7, 55-59および該文献に引用されている参考文献)およびバンドギャップ(Richard D. McCullough, Adv. Mater., 1998, 10, No. 2, pages 93-116および該文献に引用されている参考文献に記載の紫外/可視/近赤外分光法で決定)の分析を通じて好適に概算できるそれらのエネルギー帯レベルの値に関して選択される。
【0031】
一態様では、共役ポリマーは、ホモポリマー、共重合体、ターポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体、または交互共重合体を含む。好適な本質的に導電性のポリマーは、ポリ(チオフェン)、ポリ(チオフェン)誘導体、ポリ(ピロール)、ポリ(ピロール)誘導体、ポリ(アニリン)、ポリ(アニリン)誘導体、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(ビス−チエニレンビニレン)、ポリ(ビス−チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)、ポリ(アセチレン)誘導体、ポリ(フルオレン)、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(アリーレン)、ポリ(アリーレン)誘導体、ポリ(イソチアナフタレン)、ポリ(イソチアナフタレン)誘導体、およびその混合物を含むが、それに限定されるわけではない。
【0032】
いくつかの態様では、好適な本質的に導電性のポリマーは、例えば約1,000〜約40,000g/molの分子量を有する。ある種の場合では、好適な本質的に導電性のポリマーは、例えば約1000;10,000;または20,000〜約30,000または40,000g/molの分子量を有する。ポリマーは、少なくとも約2,000g/mol、または少なくとも約5,000g/mol、または少なくとも約20,000g/molの数平均分子量を有し得る。分子量は、例えばクロロホルムを溶離液として使用し、例えば分子量決定用のポリスチレン標準物質などの分子量標準物質に基づく校正を適用する、ゲル透過クロマトグラフィーによって、例えば測定することができる。
【0033】
作製方法を含む本質的に導電性のポリマーは、例えばT. A. Skotheim, Handbook of Conducting Polymers, 3rd Ed. (two vol), 2007;Meijer et al., Materials Science and Engineering, 32 (2001), 1-40;およびKim, Pure Appl. Chem., 74, 11, 2031-2044, 2002、ならびにこれらの参考文献のそれぞれに引用されている参考文献に記載されている。
【0034】
特に、ポリチオフェンは当技術分野で公知である。それらはホモポリマー、またはブロック共重合体を含む共重合体であり得る。それらは可溶性であり得る。それらは位置規則性であり得る。特に、アルコキシ置換およびアルキル置換ポリチオフェンを使用できる。特に、例えばMcCulloughらに対する米国特許第6,602,974号および第6,166,172号、ならびにMcCullough, R. D.; Tristram-Nagle, S.; Williams, S. P.; Lowe, R. D.; Jayaraman, M. J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 4910に記載の位置規則性ポリチオフェンを使用できる。Plextronics(ペンシルベニア州ピッツバーグ)の市販品も参照。ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を含む可溶性のアルキル置換およびアルコキシ置換のポリマーおよび共重合体を使用できる。例えば、置換基は、5〜20個の炭素原子または6〜15個の炭素原子を有し得る。置換基は、例えば酸素、窒素、または硫黄のような1〜5個のヘテロ原子を有し得る。他の例はKochemらに対する米国特許第5,294,372号および第5,401,537号に見ることができる。米国特許第6,454,880号および第5,331,183号は活性層をさらに記載している。
【0035】
可溶性材料または高分散材料を積層中に使用することで加工を容易にすることができる。
【0036】
p型材料のさらなる例は、WO2007/011739(Gaudianaら)に見ることができる。WO2007/011739は、置換シクロペンタジチオフェン部分であるモノマーを有するポリマーを記載しており、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0037】
本質的に導電性のポリマーの全体的な光起電力効率は不十分な太陽光吸収率によって制限され得るため、ポリマー主鎖上に発色団を共有結合させることでポリマー系の吸収率を高めることができる。したがって、ポルフィリン大環状分子化合物を本質的に導電性のポリマーに加えることで太陽光吸収率を高めることができる。
【0038】
ポルフィリン材料およびポルフィリン大環状分子の構造
「ポルフィリン大環状分子」という用語は、ポルフィリンまたはポルフィリン誘導体を意味する。そのような誘導体は、ポルフィリン核にオルト縮合またはオルトペリ縮合している追加の環を有するポルフィリン、別の元素の原子によるポルフィリン環の1個または複数個の炭素原子の置換(骨格置換)を有するポルフィリン、別の元素の原子によるポルフィリン環の窒素原子の置換(窒素の骨格置換)を有する誘導体、ポルフィリンの周辺原子(メソ−、β−)または中心原子に位置する水素以外の置換基を有する誘導体、ポルフィリンの1つまたは複数の結合の飽和を有する誘導体(ヒドロポルフィリン、例えばクロリン、バクテリオクロリン、イソバクテリオクロリン、デカヒドロポルフィリン、コルフィン(corphin)、ピロコルフィン(pyrrocorphin)など)、1個または複数のポルフィリン原子に対する1個または複数の金属の配位により得られる誘導体(メタロポルフィリン)、ポルフィリン環に挿入されるピロール単位およびピロメテニル(pyrromethenyl)単位を含む1個または複数の原子を有する誘導体(拡張ポルフィリン)、ポルフィリン環から1つまたは複数の基が除去された誘導体(縮小ポルフィリン、例えばコリン、コロール)、ならびに上記誘導体の組み合わせ(例えばフタロシアニン、ポルフィラジン、ナフタロシアニン、サブフタロシアニン、およびポルフィリン異性体)を含む。好ましいポルフィリン大環状分子は少なくとも1つの5員環を含む。
【0039】
「ポルフィリン」という用語は、4つのピロール環と、4個の窒素原子、および各種金属原子で容易に置換できる2個の置換可能な水素とから典型的に構成される環状構造を意味する。典型的なポルフィリンはヘミンである。
【0040】
「クロリン」はポルフィリンと本質的に同一であるが、1つの部分飽和ピロール環を有するという点でポルフィリンと異なる。植物光合成の緑色色素であるクロロフィルの基本発色団がクロリンである。
【0041】
「バクテリオクロリン」はポルフィリンと本質的に同一であるが、2つの部分飽和非隣接(すなわちトランス)ピロール環を有するという点でポルフィリンと異なる。
【0042】
「イソバクテリオクロリン」はポルフィリンと本質的に同一であるが、2つの部分飽和隣接(すなわちシス)ピロール環を有するという点でポルフィリンと異なる。
【0043】
合成ポルフィリン色素を固体アレイに組み入れることで、有機光起電力(OPV)デバイスの太陽光吸収率、励起子エネルギー変換、電荷分離、および電子移動を向上させることができる。ポルフィリン大環状分子化合物(例えばポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン)は、青色領域、赤色領域、および近赤外(NIR、700〜900nm)領域において強い吸収を示すことができる。
【0044】
合成能力の進歩は、電子構造の調整可能性(例えば分子軌道のエネルギーレベルおよびエネルギーギャップの制御を含む)、マクロスケールの組織化のための反応性基の組み入れ、および、低コストのデバイス製造手順を可能にするための溶解度の制御を可能にすることができる。
【0045】
好ましい態様における出発原料用のポルフィリン大環状分子は、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,849,730号;第6,603,070号;第6,916,982号;第6,559,374号;第6,765,092号;および第6,946,552号に例えば提示されている方法で合成することができる。さらなる参考文献は例えば下記を含む:
ポルフィリンの作製方法


クロリンの作製方法



バクテリオクロリンの作製方法

【0046】
ポルフィリン大環状分子化合物を本質的に導電性のポリマーに結合または共有結合させることで利点を与えることができる。本質的に導電性のポリマーの全体的な光起電力効率は不十分な太陽光吸収率によって制限されるため、ポリマー主鎖、側基、または末端基上にポルフィリン大環状分子単位を共有結合させることでポリマー系の吸収率を高めることができる。
【0047】
さらなる分子発色団は、さらなる発色団を欠いている対照電池に対して、OPV電池の全吸収を増大させ、かつ外部量子効率の直接的な増大をもたらすことができる。明確な吸収特性および正孔輸送特性を有する分子構成は、n型材料とp型材料との間のバルクヘテロ接合を向上させることで光起電力効率の向上をもたらすことができる。赤色においてさらに吸収するポリマーの開発に従って、ポルフィリン増感剤をクロリン、さらにはバクテリオクロリンで置換または増強することが可能になっている。エネルギー移動の発生を容易にするために、ポリマーのバンドギャップを、ポルフィリン増感剤の励起状態エネルギーのそれ未満にすることができる。この基準はポルフィリン大環状分子で満たすことができる。
【0048】
代表的な分子設計の考慮事項は、(1)光励起ポルフィリン大環状分子からポリマーへのエネルギー移動が、競合的電子移動消光なしに、付着したポリマーに対して分子内で生じるか、または非常に近接したポリマーに対して分子間で生じること、(2)ポルフィリン大環状分子が正孔トラップとしての役割を果たさないこと(すなわち容易に酸化されないこと)、および(3)得られるポルフィリン大環状分子−ポリマーとフラーレンなどのn型成分との適切な相分離が依然として生じることである。ポルフィリン大環状分子上の置換基および金属の適切な選択により、ポルフィリン大環状分子の酸化電位を約1V調整することができる。本明細書に記載の置換基は、酸化電位および立体障害の変化の組み合わせを与えることができる。立体障害を調整することで、近隣のポリマー鎖の溶解度および近接距離を調整することができる。
【0049】
エネルギー特性および溶解度を調整するために、ポルフィリン大環状分子上の置換基を選択することができる。例えば、ポルフィリン大環状分子ファミリーでは、電子求引性または電子供与性置換基を組み入れることで、所与のポルフィリンの電気化学ポテンシャルを相当な広範囲において調整することができる(Yang, S. I. et al., J. Porphyrins Phthalocyanines 1999, 3, 117-147)。そのような置換基の例は、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアネート、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、イミド、アミド、およびカルバモイルを含む。
【0050】
一態様では、金属が存在する。別の態様では、金属は存在しない(金属を含まない)。
【0051】
ポルフィリン大環状分子の中心金属が存在する場合、やはりエネルギー特性を調整するために選択することができる。モノマーポルフィリン大環状分子では、電気化学ポテンシャルの変化を異なる中心金属を用いて得ることができる(Fuhrhop, J.-H.; Mauzerall, D. J. Am. Chem. Soc. 1969, 91, 4174-4181)。様々な金属をポルフィリン大環状分子に組み入れることができる。光化学的に活性なそれらの金属は、Zn、Mg、Al、Sn、Cd、Au、Pd、およびPtを含むがそれに限定されるわけではない。対イオンが存在し得る。一般に、ポルフィリンは非常に安定なラジカルカチオンを形成する(Felton, R. H. In The Porphyrins; Dolphin, D., Ed.; Academic Press: New York, 1978; Vol. V, pp 53-126)。
【0052】
共役体を調製するための1つのアプローチは、好適に置換されたポルフィリンと好適に置換された導電性ポリマーとの反応を伴う。一態様では、互いに結合または共有結合している、少なくとも1つの共役ポリマーと、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子とを含む組成物を提供する。結合は共有結合、イオン結合、供与結合であり得る。共役ポリマーとポルフィリン大環状分子とは、互いに直接結合することができるか、またはリンカー基もしくはスペーサー基を経由して結合することができる。
【0053】
単一または二重に末端封止されている未変化のポリマー上で付着を行うことができる。リンカー基を使用することでポルフィリン大環状分子と共役ポリマーとを一緒に結合することを含む共有結合を経由して付着を行うことができる。ポルフィリン大環状分子は、導電性ポリマーの末端基または導電性ポリマーの側基に結合可能である。
【0054】
ポルフィリン大環状分子は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポリマー鎖に付着可能である。ある種の場合では、ポルフィリン大環状分子は1つまたは2つのポリマー鎖に付着可能である。
【0055】
また、本質的に導電性のポリマーはポルフィリン大環状分子に対する約1〜約200個の結合を有し得る。ある種の場合では、本質的に導電性のポリマーはポルフィリン大環状分子に対する約2〜約100個の結合を有する。ある種の場合では、本質的に導電性のポリマーはポルフィリン大環状分子に対する約10〜約50個の結合を有する。
【0056】
好適に置換されたポルフィリン大環状分子と、好適に置換されたポルフィリン大環状分子と反応可能な官能基をその主鎖が含む導電性ポリマーとを組み合わせることができる。ポルフィリン大環状分子と導電性ポリマーとの間のカップリングを行う上で多くの反応が利用可能である。反応の種類、ポルフィリン大環状分子、および導電性ポリマーに応じて、化合物上の適当な置換基がカップリングを容易にする。
【0057】
ポルフィリン大環状分子と導電性ポリマーとを組み合わせる好適なカップリング反応は求核置換であり得る。求核置換用の反応物質の例は、ハロ、メシレート、トシレート、ハロアルキルなどの脱離基を有する化合物、ならびにヒドロキシル、アミノ、チオール、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、およびチオアルキルなどの求核性基を有する化合物を含む。ハロは例えばブロモであり得る。
【0058】
したがって、ポルフィリン大環状分子は脱離基を含むことができ、導電性ポリマーは求核性基を含むことができる。ある種の場合では、ポルフィリン大環状分子が脱離基を含む場合、式Ia、Ib、およびIcの化合物のS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、およびS16のうち少なくとも1つが脱離基であるか、または脱離基を含む。
【0059】
別の態様では、ポルフィリン大環状分子は求核性基を含むことができ、導電性ポリマーは脱離基を含むことができる。ある種の場合では、ポルフィリン大環状分子が脱離基を含む場合、式Ia、Ib、およびIcの化合物のS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、およびS16のうち少なくとも1つが求核性基であるか、または脱離基を含む。
【0060】
一態様では、本質的に導電性のポリマーは、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、チオール、ボロン酸、ボロネート、アシル、ホルミル、アセチル、カルボン酸、カルボン酸エステル、ハロアルキル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、およびチオアルキルより選択される、導電性ポリマー主鎖上の官能基に由来するかまたはそれを経由する、ポルフィリン大環状分子に対する結合を有する。
【0061】
非共有結合は、ファンデルワールス力、水素結合、および静電力を含む各種の分子相互作用を包含し得る。後者はイオン化可能基の間の塩形成を含む。典型的な水素結合用の基はアミド、イミド、スルホンアミド、アルコール、およびケトンなどを含む。
【0062】
図3は、単に例示的であり、求核置換を利用するポルフィリン大環状分子とポリマーとのカップリング反応の一例を示す。図3では、ポルフィリン大環状分子−ポリマー共役体の調製に、ブロモメチル置換ポルフィリン大環状分子およびヒドロキシアルキルチオフェンを使用する。ポルフィリン大環状分子上のブロモメチル基の数を変更することで、可変数のポリマー鎖に対する付着を伴う対応する設計が得られる。
【0063】
他の好適なカップリング反応は、有機金属が媒介するカップリング反応(例えば鈴木カップリング、スティルカップリング、ヘックカップリング、ハートウィッグ・ブッフバルトカップリング、熊田カップリング)、およびより伝統的なカップリング手順(例えばウィッティヒ反応、ウィリアムソンエーテル合成)などを含む。
【0064】
複数の態様では、Lを経由するポルフィリン大環状分子に対する少なくとも1つの結合を有する可溶性で本質的に導電性のポリマーを含む組成物を提供し、ここで
ポルフィリン大環状分子は、下記式Ia、Ib、Icより選択される化学的実体を含み:

式中、
Mは、存在する場合、Zn、Mg、Pt、Pd、Sn、Ni、Si、Al、Au、およびAgより選択され;
K1、K2、K3、およびK4はSe、NH、CH2、O、およびSよりそれぞれ独立して選択され;
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、およびS16は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、アシル、ホルミル、カルボン酸、アシルアミノ、エステル、アミド、イミド、ヒドロキシル、ニトロ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホンアミド、チオシアネート、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、およびL-Yよりそれぞれ独立して選択され;
S8とS14と、S7とS13と、S3とS15と、またはS4とS16との各対は一緒になって=Oを形成することができ;
S8とS14と、S7とS13と、S3とS15と、またはS4とS16とはそれぞれ一緒になってスピロアルキルを形成することができ;
S1とS2と、S3とS4と、S5とS6と、およびS7とS8との各対は一緒になって環状アレーンを形成することができ、環状アレーンは非置換であるか、または水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、アシル、ホルミル、カルボン酸、アシルアミノ、エステル、アミド、イミド、ヒドロキシル、ニトロ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホンアミド、チオシアネート、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシ、およびL-Yより選択される置換基で1回もしくは複数回置換されており;
各Lは結合、アルキレン、アルキレンオキシ、アリーレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン、アルキルアリーレン、アルケニレン、およびアルキニレンより選択され;
各Yは水素、本質的に導電性のポリマー、または式Ia、Ib、およびIcより選択される第2のポルフィリン大環状分子より選択され、
前記組成物はエネルギーを収集可能である。
【0065】
式Ia、Ib、およびIcにおいて、金属Mは適宜除去することができる。
【0066】
ポリマーに対するポルフィリン大環状分子の結合にスペーサー基を使用するようにして合成を行うこともできる。スペーサー基は、炭素鎖、または1個もしくは複数のヘテロ原子も含む炭素鎖をベースにすることができる。1つまたは複数の繰り返し単位が存在し得る。繰り返し単位の混合物が存在し得る。例えば、スペーサー基は、2〜50個の炭素原子または3〜25個の炭素原子を有するスペーサー基を例えば含むアルキレンもしくはアルキレンオキシ単位またはプロピレンオキシ単位を含み得る。
【0067】
さらなる態様を下記に示す。
【0068】
分子および多成分構成の電気化学的および分光学的研究
ポルフィリンビルディングブロック、およびポルフィリン大環状分子−ポリマー共役材料を含む各種の多成分構成について詳細な物理化学的研究を行うことができる。例えば、研究は(1)静的吸収分光法および発光分光法;(2)共鳴ラマン分光法;(3)電子常磁性共鳴(EPR)分光法(常磁性種の);(4)表面結合種のX線光電子(XPS)分光法および赤外(IR)分光法;(5)電気化学的測定;ならびに(6)密度関数理論(DFT)計算を含む。これらの研究は、(1)個々の分子の電子構造;(2)多成分構成に対する組み入れの際にこれらの特性において生じる変化;および(3)表面に対する付着が多成分構成の特性に対してどのように影響を与えるかを例えば評価することにより、エネルギー流の機構および商業的用途の理解を支援する。
【0069】
ポルフィリン大環状分子/ポリマー共役体電池
方向づけられたエネルギー流を利用する1つの構造は、ポルフィリン大環状分子/ポリマー共役体をベースとする活性層である。これらの材料は、活性層が(1)活性ポルフィリン大環状分子/ポリマー共役体;および(2)相分離されたポリマー/フラーレンブレンドを含む混合ナノスケール形態を含む、サンドイッチ電池において特性決定することができる。この電池は、ポルフィリン大環状分子の高い分子吸収率を利用するものであり、ポルフィリン大環状分子からの光吸収時に生成される励起子をポリマーに対して方向づけることを可能にする。この系のエネルギー線図を記述可能である。ギャップのより広いポルフィリン大環状分子の吸収率は同一エネルギーでポリマーより大きく、それにより正味吸光度は増大する。エネルギー線図上では、ギャップのより広い材料をポリマーの後側に示すことによって、それが光子捕捉およびポリマーに対する励起子送達用の経路としての役割を主に果たし、次にポリマーが電子アクセプターおよび陽極に接触する(典型的な二層電池と同様に)ということを示している。太陽光スペクトル範囲を拡大するために、高吸収率のポルフィリンモノマーと、より低ギャップのポリマーとを組み合わせることを、将来の低コストポリマー電池のために使用することができる。
【0070】
デバイス製造
本明細書で特許請求される発明を用いるデバイスは、基板上の陽極材料としてインジウムスズ酸化物(ITO)を例えば用いることで作製することができる。他の陽極材料は、例えばAuなどの金属、単層または多層カーボンナノチューブ、および他の透明導電性酸化物を含み得る。陽極の抵抗率は、例えば15Ω/sq以下、25以下、50以下、または100以下を下回るように維持することができる。基板は、例えばガラス、プラスチック(PTFE、ポリシロキサン、熱可塑性プラスチック、PET、PENなど)、金属(Al、Au、Ag)、金属箔、金属酸化物(TiOx、ZnOx)、およびSiなどの半導体であり得る。基板上のITOは、デバイス層堆積の前に当技術分野で公知の技術を用いて洗浄可能である。スピンキャスト法、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレーキャスト法、ディップコート法、蒸着法、または任意の他の公知の堆積法を例えば用いて、任意的な正孔注入層(HIL)および/または正孔輸送層(HTL)を追加することができる。HILは、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)PEDOT/PSS、またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TBD)、またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPB)、またはPlexcore HIL(Plextronics、ペンシルベニア州ピッツバーグ)であり得る。
【0071】
HIL層の厚さは、例えば10nm〜300nm厚、または30nm〜60nm、または60nm〜100nm、または100nm〜200nmであり得る。次に、フィルムを110〜200℃で1分〜1時間、任意で不活性雰囲気中で、任意で乾燥/アニール可能である。
【0072】
活性層は、n型材料とp型材料との混合物から調合することができる。n型材料とp型材料とは、例えば約0.1〜4.0(p型)対約1(n型)の重量比、または約1.1〜約3.0(p型)対約1(n型)の比、または約1.1〜約1.5(p型)対約1(n型)の比で混合可能である。各種類の材料の量、または2種類の成分間の比は、特定の用途に関して変動し得る。
【0073】
n型材料とp型材料とは、溶媒中、例えば固形分約0.01〜約0.1体積%で混合可能である。本明細書で特許請求される発明に有用な溶媒は、例えばハロゲン化ベンゼン、アルキルベンゼン、ハロゲン化メタン、およびチオフェン誘導体などを含み得る。より具体的には、溶媒は、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、トルエン、クロロホルム、およびその混合物であり得る。
【0074】
次に、活性層を、スピンキャスト法、インクジェット法、ドクターブレード法、スプレーキャスト法、ディップコート法、蒸着法、または任意の他の公知の堆積法によってHILフィルム上に堆積することができる。次に、フィルムを例えば約40〜約250℃または約150〜180℃で約10分〜1時間、不活性雰囲気中で任意でアニールする。
【0075】
次に、例えば1つまたは複数の金属の熱蒸着を一般に用いて、陰極層をデバイスに追加することができる。例えば、シャドウマスクを介して1〜15nmのCa層を活性層上に熱蒸着させた後、10〜300nmのAl層を堆積させる。
【0076】
いくつかの態様では、活性層と陰極との間、および/またはHTLと活性層との間に任意的な中間層を包含させることができる。この中間層は0.5nm〜約100nm、または約1〜3nmの厚さであり得る。中間層は、電子調節材料、正孔ブロッキング材料、または抽出材料、例えばLiF、BCP、バトクプロイン(bathocuprine)、フラーレンまたはフラーレン誘導体、例えばC60、ならびに本明細書で論じる他のフラーレンおよびフラーレン誘導体を含み得る。
【0077】
次にデバイスを、硬化性グルーで封止されたガラスカバースリップを用いて、または他のエポキシもしくはプラスチックコーティング中に封入することができる。ゲッター/乾燥剤を有する空洞ガラスも使用可能である。
【0078】
また、活性層は、界面活性剤、分散剤、ならびに酸素捕捉剤および水捕捉剤を例えば含むさらなる成分を含み得る。
【0079】
活性層は、複数の層を含み得るか、または多層状であり得る。
【0080】
活性層組成物は、フィルムの形式の混合物を含み得る。
【0081】
陽極および陰極を含む電極は、光起電力デバイスに関して当技術分野で公知である。公知の電極材料を使用できる。透明導電性酸化物を使用できる。透明性は特定の用途に適応可能である。例えば、陽極はインジウムスズ酸化物(基板上に支持されるITOを含む)であり得る。基板はリジッドでもフレキシブルでもよい。
【0082】
活性層の形態
活性層は、ナノスケール相分離構造およびバルクヘテロ接合を含むP/N複合体を形成することができる。例えば、Dennler et al., 「Flexible Conjugated Polymer-Based Plastic Solar Cells: From Basics to Applications」 Proceedings of the IEEE, vol. 93, no. 8, August 2005, 1429-1439におけるバルクヘテロ接合でのナノスケール相分離に関する考察を参照。良好なフィルム形成、低粗度(例えば1nm RMS)をもたらす条件および材料を選択可能であり、個別的で観察可能な相分離特性を実現することができる。本発明は、AFMで測定される約5〜50nmスケールの相分離ドメインを有することができる。AFM分析を使用することで表面粗度および相挙動を測定できる。一般に、ドナーとアクセプターとの両方を活性層中に均一かつ連続的に分配するには、相分離ドメインは望ましくない。
【0083】
Belcher et al., Solar Energy Materials & Solar Cells, 91 (2007) 447-452 (「The effect of porphyrin inclusion on the spectral response of ternary P3HT:porphyrin:PCBM bulk heterojunction solar cells」)も参照。
【0084】
ブレンドの態様
一代替態様では、互いに結合していない、ポリチオフェンを含む少なくとも1つの共役ポリマーと、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子とのブレンドを含む組成物を提供する。組成物は、例えばフラーレンまたはフラーレン誘導体などのn−アクセプターをさらに含み得る。
【0085】
この態様では、例えば、共役ポリマーは位置規則性ポリチオフェンであり得る。また、共役ポリマーは例えば3−置換ポリチオフェンであり得る。
【0086】
ポルフィリン大環状分子対ポリチオフェンの重量比は、例えば約1:5と1:15の間、または約1:7と1:13の間であり得る。
【0087】
ポルフィリン大環状分子は、金属を含まなくてもよく、または金属を含むこともできる。金属は、例えば亜鉛または上記の他の金属のいずれかであり得る。
【0088】
フィルムは溶媒混合物および溶液から調製可能である。
【0089】
例えばフィルム形式のブレンド組成物をアニールすることができる。
【0090】
別の態様では、ブレンド組成物をアニールせず、熱の適用を回避する。
【0091】
別の態様では、少なくとも1つのp型半導体と、半導体の吸収領域の外側の紫外領域および赤外領域において吸収する少なくとも1つの添加剤とのブレンドを含む組成物を提供する。p型半導体は当技術分野で公知であり、有機でも無機でもよい。それらはポリマーであり得る。一態様では、上記のように、半導体は共役ポリマーであり、添加剤はポルフィリン大環状分子である。
【0092】
デバイスの性能
JSC(mA/cm2)、およびVoc(V)、および曲線因子、および効率(%)を例えば含む公知の太陽電池パラメータを、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。
【0093】
効率は、少なくとも3.5%、または少なくとも4%、または少なくとも4.5%、または少なくとも5.0%、または少なくとも5.5%、または少なくとも6.0%であり得る。
【0094】
曲線因子は、少なくとも約0.60、または少なくとも約0.63、または少なくとも約0.67であり得る。
【0095】
Voc(V)は、少なくとも約0.56、または少なくとも約0.63、または少なくとも約0.82であり得る。
【0096】
Jsc(mA/cm2)は、少なくとも約8.92、または少なくとも約9.20、または少なくとも約9.48であり得る。
【0097】
フラーレン付加体を含む活性層を含むデバイスの効率を測定することができ、その効率を、実質的に類似のデバイスを包含するが活性層がポリ(3−ヘキシルチオフェン)−PCBMを含む対照の効率と比較することができる。
【0098】
効率の増大は、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%であると、決定および測定することができる。
【0099】
作製および使用方法
デバイスを作製するための方法およびデバイスを使用するための方法も提供する。溶液または真空をベースとする方法を含む、層を印刷、堆積、およびパターン化するための公知の方法を使用することができる。
【0100】
ポリマーと存在する場合はn−アクセプターとのための担体系または溶媒系を含むインク組成物を調合することができる。
【0101】
本発明のある種の局面を例示し、かつ当業者による本発明の実施を支援するために、下記の実施例を示す。これらの実施例を本発明の範囲を限定するものとは決して考えるべきではない。
【0102】
さらなる態様:
合成:ポルフィリンによるP3HTポリマーの官能化
5つのさらなる態様では、P3HTポリマーなどの2種類の代表的ポリマー、すなわちBr-OH末端ポリマー(P1)およびH-Br末端ポリマー(P2)を使用できる。P1およびP2に示す末端基が逆転することがある。これは、異なる態様において変動し得る、鎖と末端基との複合混合物が存在し得るためである。また、Brが末端基として示されるいくつかの場合では、Hもかなりの量で末端基として存在し得る。いくつかの場合では、BrはH末端基に対して多数の量で存在し得る。
【0103】
第1の一態様は、好適に官能化されたポルフィリンでP1(ヒドロキシル末端基および臭素末端基)を末端封止することを含む。例えばスキーム1を参照。
スキーム1

【0104】
別の第2の態様は、アリールアルデヒド(次にポルフィリンに対する前駆体として使用される可能性がある)でポリマーP1(ヒドロキシル末端基および臭素末端基)を末端封止することを含む(スキーム2)。
スキーム2

【0105】
別の第3の態様では、例えばトルエン/TEA中Pd2(dba)3およびP(o-tol)3の標準条件を用いて、5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリンとP1との薗頭カップリングを行うことができる(スキーム3)。この態様の一例を実用実施例でさらに示す。
スキーム3

【0106】
さらなる第4の態様は、Pd(PPh3)4を触媒として用いてトルエン/DMF中で行うことができる、ポリマーP1と5,15−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−10−メシチル−20−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル]フェニル]ポルフィリン(過剰のポルフィリン)との鈴木カップリングを含む(スキーム4)。
スキーム4

【0107】
別の第5の態様は、H-Br末端ポリマーP2の使用を含む(スキーム5)。ポリマーP2は、H-H末端基系を有するポリマー鎖を含んでいてもよい。言い換えれば、末端基の混合物、例えばH-Brが優勢であるH-Br末端基とH-H末端基との混合物などが存在し得る。薗頭カップリング反応は、トルエン/トリエチルアミン(5:1)中、Pd2(dba)3(30mol%)およびP(o-tol)3の存在下で行うことができる。5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリンを、ポルフィリンビルディングブロックとして使用できる。実用実施例はさらなる態様を示す。
スキーム5

【0108】
これらのおよび他の態様では、反応時間、温度、および濃度を例えば含む反応条件を調整および改変することができる。
【0109】
さらなる態様および実用実施例を示す。
【0110】
実用実施例
実施例1(スキーム3)
本実施例では、トルエン/TEA中Pd2(dba)3およびP(o-tol)3の標準条件を用いて、5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリンとP1との薗頭カップリングを行った(スキーム3)。使用した条件は、制限された溶解度のために希薄溶液(1.6mM、50℃)が必要になる、ポルフィリンとの薗頭反応の条件に典型的なものであった(参考文献2を参照)。反応の進捗をモニターするために分析用SEC-HPLCを選択した。出発ポリマーのそれより短い保持時間を有する2つの新しいピークをSEC-HPLCで観察した。それらのピークの存在により、出発ポリマーのそれより大きい分子量を有する2つの新しい生成物の形成が示唆された。反応後のMALDI-MS分析は2つの特性ピークを示し、1つは出発ポリマーのそれに類似したm/zを有し、2つ目は2倍大きい平均m/zを有していた。粗反応混合物の一部をクロマトグラフィーにかけた(分取SECカラム、THF)。第2の画分の1H NMRスペクトルは、ポリマーおよびポルフィリンが約1:1の比で存在することを示した。したがって、反応により、2つの付着したポリマー単位を含むポルフィリンと、付着した1つのポリマー単位を有するポルフィリンとの混合物が得られた(粗反応混合物中に出発ポリマーおよび出発ポルフィリンが観察されたことにも留意されたい)。反応条件を下記の実験セクション(反応1)でさらに説明する。
【0111】
実施例2(スキーム5)
別の態様は、H-Br末端ポリマーP2の使用を含む(スキーム5)。薗頭カップリング反応を、トルエン/トリエチルアミン(5:1)中、Pd2(dba)3(30mol%)およびP(o-tol)3の存在下で行った。5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリンをポルフィリンビルディングブロックとして選択した。
【0112】
最初の試験後、ポルフィリン/P2の比を約1:2に設定した。反応を分析用SEC-HPLCでモニターした。16時間後、SEC分析は、出発ポルフィリンの完全な消費、2つの新しい生成物の形成(tR=31.2分および32.5分、比は約2:3)、および出発ポリマーに対応するピーク(tR=34.7分)を示した。生成物の合計対未反応出発原料の比(約3:1)は、出発原料中のBr-H/H-H末端ポリマーの比(4:1)に対応している。したがって、粗混合物をセライトで濾過し、CHCl3から析出させ、さらに精製せずにさらなる研究に使用した。得られた混合物の1H NMRスペクトルは(ポリマー/ポルフィリンの比が>2:1で)ポルフィリンの存在を示した。しかしながら、LD-MS分析は出発ポリマーに対応するm/zしか示さなかった。反応条件を実験セクション(反応2)でさらに説明する。
【0113】
分析用SECデータは、反応時に形成される、より高分子量の種の存在を明らかに示している。図4を参照。粗反応混合物、および分取SEC分離から得られる生成物の吸収スペクトルは、ポリマーとポルフィリンとの両方の存在を示している。分析用SECによる特性決定時にP3HTポリマーより前に溶出した各成分の吸収スペクトル(上側パネル)は、ポルフィリンとポリマーとの両方の吸収ピークを示した。図5を参照。これらのデータは、ポルフィリン−ポリマー共役体の存在に非常に強い支持を与えている。
【0114】
実験セクション
測定
1HスペクトルをBruker Avance AV-300分光計(1Hにおいて300.13MHzで作動)、Bruker Avance DMX-500分光計(1Hにおいて500.13MHzで作動)上で記録した。いくつかの1H NMRスペクトルは400MHzで作動する分光計上で記録した。特記しない限り、すべてのNMRスペクトルは、内部基準物質として0.003%TMSを含む溶媒としての重水素化クロロホルム(CDCl3)中で記録した。
【0115】
吸収スペクトルをジクロロメタン中、室温で収集した。
【0116】
MALDI-TOF MSを、PerSeptive BiosystemsによるVoyager-DE STR BioSpectrometry Workstationを用いて行った。すべてのスペクトルを、線形イオンモードでのマトリックスとして2,2’:5':2''−ターチオフェン(Aldrich)を用いて記録した。線形イオンモードでは、窒素レーザー(波長337nm、2ナノ秒パルス)を高真空(<10-6torr)下で試料に照射した。加速電圧を24kVとした。グリッド電圧および低質量ゲートをそれぞれ85.0%および500.0Daとした。
【0117】
末端官能化ポリ(3−ヘキシルチオフェン)のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)トレースを、クロロホルムを溶離液とする(流量1.0mL/分、35℃、λ=254nm)Waters 2690 Separations Module装置およびWaters 2487 Dual λ Absorbance Detector上で、一連の3つのStyragelカラム(105、103、100Å;Polymer Standard Services)およびガードカラムを用いて記録した。Polymer Standard Serviceから購入したポリスチレン標準物質に基づく校正を分子量の決定に適用し、トルエンを内部標準物質として使用した。
【0118】
PLgelカラム(50、100、および500Å、THF)を分析用SECに使用した。さらに、H-Br末端P3HTについては、5つのカラム(50、100、および500Å、ならびに2つの1000Å)も使用した。Bio-RadからのBio-Beads S-X1(40〜80μm)を分取SECカラムクロマトグラフィーに使用した。
【0119】
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)の合成用の材料
すべての反応を、火力乾燥ガラス器具またはオーブン乾燥ガラス器具のいずれかを用いて、予め精製された窒素下で行った。すべてのガラス器具を熱いうちに組み立て、窒素下で冷却した。市販の化学物質、例えば[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)(Ni(dppp)Cl2)、グリニャール試薬をAldrich Chemical Co., Inc.から購入し、さらに精製せずに使用した。使用前に、テトラヒドロフラン(THF)をナトリウムベンゾフェノンケチルで乾燥させ、ナトリウムベンゾフェノンケチルから蒸留した。Loveが説明した手順に従ってグリニャール試薬の滴定を行った(Love, B. E.; Jones, E. G. J. Org. Chem. 1999, 64, 3755)。
【0120】
OH/BrおよびH/Brをそれぞれ末端とするポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)ポリマーP1およびP2を、グリニャールメタセシス(GRIM)法(スキーム1)を利用して、刊行された文献の手順(参考文献(3)および(4)および(5))に従って合成した。1H NMRおよびGPCによってポリマーを特性決定した。P1およびP2の平均分子量はそれぞれMw=17,100(PDI=1.1(GPC))およびMw=12,600(PDI=1.1(GPC))であった。MALDI-TOF MSを利用してポリマーの末端基組成をモニターしたところ、P1はOH/Br末端とOH/H末端との混合物を含んでおり(Br対Hの比が約60:40%の混合物)、P2は主にBrを末端としていた(Br対Hの比が約80:20%の混合物)(参考文献1)。
【0121】
P1の一合成をさらに例示する:

【0122】
反応1
ポリマーP1(30mg、0.0018mmol)、5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリン(2mg、0.003mmol、3.3mM)、Pd(PPh3)4(0.5mg、0.5μmol)、および[P(o-tol)3](1.3mg、0.0042mmol)の試料を10mLシュレンクフラスコに入れた。フラスコをアルゴンで3回ポンプパージした。トルエン/TEA(1.1mL、5:1)を加え、混合物をアルゴン下50℃で20時間撹拌した。下記の観察を行った:
HPLCは、出発ポリマーよりも高い分子量を有する2つの化合物の存在を示唆している(HPLC;tR=18.1分、18.4および19.0分)。第1のピークは、出発ポリマーの保持時間(tR=19.1分)よりも約1分短いtRを有している。
粗反応混合物の一部をクロマトグラフィーにかけた(SEC分取カラム、THF)。4つの画分を回収した。吸収スペクトルを各画分について記録した。データおよびデータファイルは下記の通りである:
画分1「SNGSH_F1」λ(CH2Cl2)451、607、656nm
画分「SNGSH_F2」λ(CH2Cl2)422、455nm
画分「SNGSH_F2」λ(CH2Cl2)423、455nm
画分「SNGSH_F4」λ(CH2Cl2)423、555、604nm
1H NMRスペクトルおよびMALDI-MSスペクトルを第1および第2の画分について記録した。第2の画分の1H NMRスペクトルは、ポリマーおよびポルフィリンが1:1の比で存在することを示唆している。
HPLCを各画分について測定した。
【0123】
反応2
P2(58.0mg、0.00997mmol)、5,15−ビス(4−エチニルフェニル)−10,20−ジメシチルポルフィリン(3.7mg、0.0050mmol)、Pd2(dba)3(1.4mg、0.0014mmol)、およびP(o-tol)3(3.2mg、0.010mmol)の試料をシュレンクフラスコに入れ、アルゴンでポンプパージした(5回)。トルエン/トリエチルアミンの脱気混合物(2.2mL)を加え、得られた混合物を55℃で16時間撹拌した(P2は室温では可溶性でなかったが55℃で完全に溶解したことに留意されたい)。反応混合物をCHCl3(約50mL)で希釈し、セライトで濾過し、濾液を濃縮した。得られた生成物をTHFに溶解させ、(推定上の微量の未反応ポルフィリンを除去するために)分取SECカラム上でクロマトグラフィーにかけた。ポリマーを含む画分を回収し、濃縮し、CHCl3に溶解させ、MeOHで析出させ、濾過し、高真空乾燥させることで褐色固体(50mg)を得た。
【0124】
デバイス試験
デバイス試験は、ブレンドならびに化学結合されたP3HTおよびポルフィリンにおいてポルフィリンによる光増感が観察されたことを示した。ポルフィリンからの光電流が実証された。
【0125】
デバイス試験は、いくつかの態様では熱処理がポルフィリンとP3HTとのブレンドにおいて負の効果を有していたことも示した。
【0126】
デバイス試験は、化学結合されたポルフィリンおよびP3HTにおいては、熱処理後であっても光増感が観察されたことも示した。本態様は理論により制限されるわけではないが、化学結合によってアニール温度でのポルフィリンの拡散が可能にならないということがあり得る。
【0127】
EQE分析は、ポルフィリン系が量子効率において約13%のボーナスを実現できるということを示した。AM1.5G基準太陽光スペクトルにこれを正規化することで、電池光電流に対する潜在的なポルフィリンの寄与が約3%であり、吸光度モデリングと一致しているということが明らかになる。
【0128】
参考文献:

【0129】
本発明を上記態様と組み合わせて説明してきたが、前述の説明および実施例が、本発明の範囲を例示することを意図しており、それを限定することを意図しているわけではないということを理解すべきである。本発明の範囲内の他の局面、利点、および変形は、本発明が関係する技術分野の当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの共役ポリマーに結合している少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む少なくとも1つのポリマーであって、ポルフィリン大環状分子が金属を含まない、ポリマー
を含む組成物。
【請求項2】
共役ポリマーが可溶化側基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
共役ポリマーが少なくとも1つのポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリ(チエニレンビニレン)、ポリ(ビス−チエニレンビニレン)、ポリ(アセチレン)、ポリ(アリーレン)、ポリ(イソチアナフタレン)、およびその組み合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
共役ポリマーが少なくとも1つのポリチオフェンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
共役ポリマーが少なくとも1つの3−置換ポリチオフェンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
共役ポリマーが少なくとも1つの位置規則性ポリチオフェンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
共役ポリマーがホモポリマー、共重合体、ターポリマー、ランダム共重合体、ブロック共重合体、または交互共重合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポルフィリン大環状分子がポルフィリン、クロリン、またはバクテリオクロリンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ポルフィリン大環状分子がクロリンまたはバクテリオクロリンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ポルフィリン大環状分子が、下記式Ia、Ib、Ic、またはその組み合わせで表される部分を含む、請求項1記載の組成物:

式中、
K1、K2、K3、およびK4はSe、NH、CH2、O、およびSよりそれぞれ独立して選択され;
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、およびS16は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、アシル、ホルミル、カルボン酸、アシルアミノ、エステル、アミド、イミド、ヒドロキシル、ニトロ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホンアミド、チオシアネート、尿素、アルコキシルアシルアミノ、およびアミノアシルオキシよりそれぞれ独立して選択され;
S8とS14と、S7とS13と、S3とS15と、またはS4とS16との各対は一緒になって=Oを形成することができ;
S8とS14と、S7とS13と、S3とS15と、またはS4とS16とはそれぞれ一緒になってスピロアルキルを形成することができ;
S1とS2と、S3とS4と、S5とS6と、およびS7とS8との各対は一緒になって環状アレーンを形成することができ、環状アレーンは非置換であるか、または水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、アシル、ホルミル、カルボン酸、アシルアミノ、エステル、アミド、イミド、ヒドロキシル、ニトロ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホンアミド、チオシアネート、尿素、アルコキシルアシルアミノ、アミノアシルオキシより選択される置換基で1回もしくは複数回置換されている。
【請求項11】
ポルフィリン大環状分子がスペーサー基によってポリマーに結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの末端基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの側基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
1つのポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの1つの鎖に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
1つのポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの少なくとも2つの鎖に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
1つのポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの4つの鎖に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ポルフィリン大環状分子とポリマーとがエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、アミノ結合、チオエーテル結合、またはチオエステル結合によって結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
n型アクセプター材料をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
フラーレンまたはフラーレン誘導体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
可溶性組成物である、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
ポリマーが少なくとも約2,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
ポリマーが少なくとも約5,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
ポリマーが少なくとも約20,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
ポリマーが、少なくとも10個の共役繰り返し単位を含む主鎖を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーが、互いに異なりかつ少なくとも1つの共役ポリマーにそれぞれ結合している少なくとも2つの異なるポルフィリン大環状分子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
共役ポリマーがポリチオフェン誘導体を含み、ポルフィリンがスペーサー基によって共役ポリマーに結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項27】
共役ポリマーがポリチオフェン誘導体を含み、ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの末端基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
共役ポリマーがポリチオフェン誘導体を含み、ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの側基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
共役ポリマーがポリチオフェン誘導体を含み、ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの末端基に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
共役ポリマーが位置規則性ポリチオフェン誘導体を含み、ポルフィリン大環状分子が導電性ポリマーの側基または末端基に結合しており、組成物がnアクセプターをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも10個の共役繰り返し単位を有する少なくとも1つの共役ポリマーに共有結合している、少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む、少なくとも1つのポリマー
を含む組成物。
【請求項32】
共役ポリマーがポリチオフェンを含む、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
共役ポリマーが位置規則性ポリチオフェンを含む、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
共役ポリマーが可溶化側基を含む、請求項31記載の組成物。
【請求項35】
ポルフィリン大環状分子が金属を含む、請求項31記載の組成物。
【請求項36】
ポルフィリン大環状分子が金属を含まない、請求項31記載の組成物。
【請求項37】
ポルフィリン大環状分子がポルフィリン、クロリン、またはバクテリオクロリンを含む、請求項31記載の組成物。
【請求項38】
nアクセプターをさらに含む、請求項31記載の組成物。
【請求項39】
フラーレンまたはフラーレン誘導体をさらに含む、請求項31記載の組成物。
【請求項40】
ポルフィリン大環状分子が共役ポリマーの少なくとも2つの鎖に結合している、請求項31記載の組成物。
【請求項41】
少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を与える工程、
少なくとも1つの共役ポリマーを与える工程、
共役ポリマーとポルフィリン大環状分子とを共有結合させる工程
によって調製される組成物。
【請求項42】
少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を与える工程、
少なくとも1つの共役ポリマーを与える工程、
共役ポリマーとポルフィリン大環状分子とを共有結合させる工程
を含む方法。
【請求項43】
請求項1または31記載の組成物を含む、インク組成物。
【請求項44】
第1の電極、
第2の電極、
第1の電極と第2の電極との間に配置されており、請求項1または31記載の組成物を含む活性層
を含む、固体電子デバイス。
【請求項45】
太陽電池を含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項46】
1つの電極と活性層との間に正孔注入層をさらに含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項47】
1つの電極と活性層との間にポリチオフェン正孔注入層をさらに含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項48】
有機発光ダイオードを含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項49】
有機発光ダイオードを含み、1つの電極と活性層との間に正孔注入層をさらに含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項50】
活性層がフラーレンまたはフラーレン誘導体をさらに含む、請求項44記載のデバイス。
【請求項51】
ポリチオフェンを含む少なくとも1つの共役ポリマーと、
少なくとも1つのポルフィリン大環状分子と
のブレンドを含む組成物であって、該共役ポリマーと該ポルフィリン大環状分子とが互いに共有結合していない、組成物。
【請求項52】
共役ポリマーが位置規則性ポリチオフェンである、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
共役ポリマーが3−置換ポリチオフェンである、請求項51記載の組成物。
【請求項54】
nアクセプターをさらに含む、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
フラーレンまたはフラーレン誘導体をさらに含む、請求項51記載の組成物。
【請求項56】
少なくとも1つの共役ポリマーに結合している少なくとも1つのポルフィリン大環状分子を含む少なくとも1つのポリマーであって、ポルフィリン大環状分子がバクテリオクロリンまたはクロリンを含む、ポリマー
を含む組成物。
【請求項57】
ポルフィリン大環状分子が金属を含む、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
ポルフィリン大環状分子が金属を含まない、請求項56記載の組成物。
【請求項59】
少なくとも1つのp型半導体と、半導体の吸収領域の外側のUVおよびIRにおいて吸収する少なくとも1つの添加剤と
のブレンドを含む組成物。
【請求項60】
半導体が共役ポリマーであり、添加剤がポルフィリン大環状分子である、請求項59記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−529219(P2010−529219A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509533(P2010−509533)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064409
【国際公開番号】WO2008/144750
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【出願人】(509321538)ノースカロライナ ステイト ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】