説明

固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池

【課題】固体電解質の製造方法及び電極膜接合体及び燃料電池に於いて、高いイオン伝導性能、低いメタノール透過性を有する固体電解質を提供する。
【解決手段】ポリイミドを主鎖とし、側鎖に、架橋性基と、酸残基とを有している固体電解質。酸残基が、共有結合により主鎖に結合しており、架橋性基は炭素ー酸素結合および/または炭素ー炭素結合を含む。また、メソゲンがアルキレン基を含む原子団を介して共有結合により主鎖に結合している構成を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、固体電解質の製造方法および電極膜接合体および燃料電池に関する。
【技術背景】
【0002】
近年、発電素子、携帯機器の電源として利用できる燃料電池が活発に研究されており、その部材であるプロトン伝導材料についても活発な研究が行われている。
【0003】
電源は同一出力であれば小型であることが好ましい。中でもダイレクトメタノール型燃料電池は、改質型燃料電池における改質機、水素燃料の燃料電池における高圧水素タンク等の補機が不要なため、小型化が容易であり、リチウムイオン電池を上回る小型化の可能性があることから、活発に検討されている。
一般に、プロトン伝導材料としてナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられているが、この材料は、イオン伝導度は高いものの、メタノールのような高極性有機溶媒も透過させるため、ダイレクトメタノール型燃料電池では低出力となってしまう。また、メタノールの透過(拡散)を抑制するため、燃料として数%程度の低い濃度のメタノール水溶液しか使用することができず、単位重量または単位体積あたりのエネルギー密度が低くなってしまい、特に小型携帯機器用途に適用できないなどの課題があった。また、製造過程におけるハンドリングおよび、電極膜接合体を作成する過程、および使用環境に適した充分な強度、燃料電池として使用した場合の充分な耐久性も希求されている。特に燃料電池では発電時に過酸化水素が発生するために、過酸化水素に対する耐性は重要である。
【0004】
これらの問題を克服するために、耐熱性や耐薬品性が高いポリイミドなどのエンジニアリングプラスチックにスルホン酸基を導入したプロトン伝導材料の研究が数多くなされている(特許文献1)。プロトン伝導材料のプロトン伝導性を高めるためには、ポリマーのスルホン化度を高め、イオン交換容量を大きくする必要がある。しかし、ポリマー中のスルホン酸基の量を増やすと、水溶性になったり、著しく膨潤したりするなどハンドリング性が損なわれ、またメタノールクロスオーバーを充分に抑制できないなど問題を生ずる。そこでこれらの問題を改善するために、ポリマー中に架橋構造を付与することで膜の膨潤を抑える試みがなされている(特許文献2〜3)。しかしながら、特許文献2においては架橋性基が高分子主鎖に存在し、架橋性基同士の近接が妨げられるため、架橋の効率があまり高くなく、また、特許文献3では、高分子主鎖の末端のみでしか架橋反応が生じない為、架橋が充分でなく、結果として上記いずれの方法でもメタノールクロスオーバーを充分に抑制することができない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−123794号公報
【特許文献2】特開2004−26889号公報
【特許文献3】特開2003−338298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、高いイオン伝導性能、低いメタノール透過性を有する固体電解質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)ポリイミドを主鎖とし、側鎖に、架橋性基と酸残基とを有している固体電解質。
(2)酸残基が、共有結合である単結合、または原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している、(1)に記載の固体電解質。
(3)メソゲンが、アルキレン基を含む原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している、(1)または(2)に記載の固体電解質。
(4)前記架橋性基が、炭素−酸素結合および/または炭素−炭素結合を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の固体電解質。
(5)下記一般式(2)で表される繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する固体電解質。
一般式(2)
【化1】

(一般式(2)中、Ar21は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar22は、少なくとも1つの芳香環を有するn2+2価の基である。R21は2価の連結基であり、R22は酸残基である。n2は1〜4の整数である。)
一般式(3)
【化2】

(一般式(3)中、Ar31は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar32は少なくとも1つの芳香環を有するn3+2価の基である。R31は2価の連結基を表し、R32は炭素原子、酸素原子および水素原子の少なくとも1種以上のみから構成される3価の連結基を表す。n3は1〜4の整数である。)
(6)さらに、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する(5)に記載の固体電解質。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、Ar11は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar12は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。)
(7)さらに、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する(5)に記載の固体電解質。
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、Ar41は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar42は少なくとも1つの芳香環を有する2価の連結基を表し、n4は3〜6の整数である。)
(8)メソゲンを含む、(5)〜(7)のいずれかに記載の固体電解質。
(9)膜状である、(1)〜(8)のいずれかに記載の固体電解質。
(10)ジアミンとテトラカルボン酸二無水物誘導体を脱水縮合する工程を含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
(11)下記一般式(5)、(6)および(7)で表される化合物を用いることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
一般式(5)
【化5】

(一般式(5)中、Ar51は、少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。)
一般式(6)
【化6】

(一般式(6)中、Ar61は、少なくとも1つの芳香環を有するn6+2価の基であり、R61は2価の連結基であり、R62は酸残基またはその塩である。n6は1〜4の整数である。)
一般式(7)
【化7】

(一般式(7)中、Ar71は少なくとも1つの芳香環を有するn7+2価の基である。R71は2価の連結基を表し、R72は炭素−酸素結合を形成できる重合性基またはその前駆体である基である。n7は1〜4の整数である。)
(12)さらに、下記一般式(8)で表される化合物を用いることを特徴とする、(10)または(11)に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(8)
【化8】

(一般式(8)中、Ar81は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。)
(13)さらに、下記一般式(9)で表される化合物を用いることを特徴とする、(10)または(11)に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(9)
【化9】

(一般式(9)中、Ar91は少なくとも1つの芳香環を有するn9価の基を表し、n9は3〜6の整数を表す。)
(14)膜状で架橋反応が進行する、(10)〜(13)のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
(15)一対の電極と、該電極の間に設けられた(1)〜(9)のいずれかに記載の固体電解質を有する、電極膜接合体。
(16)(15)に記載の電極膜接合体を有する燃料電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、高いイオン伝導性能および低いメタノール拡散性能の両方にすぐれた固体電解質を得られた。さらに、本発明の膜状の固体電解質を用いた電極膜接合体を用いた燃料電池では経時での電圧降下が小さく、高電圧の燃料電池を作製することが可能になった。
特に、上記一般式(2)および(3)で表される繰り返し単位を含む固体電解質を採用することにより、固体電解質(例えば、膜)の結合強度が増強された。その結果、メタノールが透過してしまうのをより効果的に抑制でき、電池電圧の低下をより効果的に防ぐことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明において、膜状は、平板状、板状等も含む趣旨である。また、膜状の固体電解質のことを固体電解質膜と呼ぶことがある。
本発明の固体電解質は、イオン交換体、イオン伝導体(特に、プロトン伝導材料)等を含む。
本発明でいう重合には、特に述べない限り、単一のモノマーより構成される重合のほか、2種類以上のモノマーより構成されるいわゆる共重合も含む趣旨である。
【0010】
本発明の固体電解質は、ポリイミドを主鎖とし、側鎖に、架橋性基(好ましくは、炭素原子、酸素原子および水素原子のみからなり、かつ、1以上の原子を介している架橋性基)と、酸残基とを有している。好ましくは、本発明の固体電解質は、酸残基が、共有結合である単結合によって、または原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している固体電解質である。ここで、原子団としては、アルキレン基および/またはオキシアルキレン基を含む基が好ましい。さらに好ましくは、メソゲンが、アルキレン基を含む原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している固体電解質である。
本発明における架橋性基は、炭素−酸素結合および/または炭素−炭素結合を含むことが好ましい。
本発明における酸残基は、pKaが5以下であるものが好ましく、pKaが2以下であるものがより好ましい。具体的には、パーフルオロスルホン酸残基、スルホン酸残基、ホスホン酸残基、カルボン酸残基が好ましく、ホスホン酸残基、スルホン酸残基がより好ましい。
【0011】
本発明の固体電解質は、例えば、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物誘導体を脱水重合して形成された高分子主鎖を、高分子側鎖に存在する架橋性基によって架橋したものである。高分子側鎖に存在する架橋構造中に含まれる共有結合としては、炭素-炭素結合または炭素-酸素結合が好ましい。また、本発明の固体電解質は、アミノ基を3つ以上含む多官能成分と、テトラカルボン酸二無水物の重縮合により、高分子主鎖に架橋構造を形成することもできる。架橋構造は高分子主鎖、高分子側鎖のいずれに存在してもよいが、高分子側鎖中に存在する方がより好ましい。架橋構造が形成される時期は、ポリアミド主鎖形成と同時であることが好ましく、膜状に成型後、ポリイミド化を行うのと同時であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明の固体電解質は酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが高次構造を形成しているものがさらに好ましい。高次構造としては、ミクロ相分離構造、ラメラ相、ヘキサゴナル相およびこれらの混合または中間の状態が挙げられる。これらの構造は、光学顕微鏡観察、X線散乱測定等によって確認できる。
【0013】
本発明の固体電解質は、一般式(2)および一般式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)で表される繰り返し単位を含むことがさらに好ましく、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)および一般式(4)で表される繰り返し単位を含むことが特に好ましい。
これらの繰り返し単位は、例えば、一般式(5)〜(7)で表される化合物を、好ましくは、一般式(5)〜(8)または一般式(5)〜(7)および(9)で表される化合物を、さらに好ましくは一般式(5)〜(7)および(9)で表される化合物を脱水縮合等することにより得られる。
以下、上記繰り返し単位およびこれらを形成するための化合物について詳細に説明する。
【0014】
一般式(1)で表される繰り返し単位
一般式(1)中、Ar11は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、好ましくは、少なくとも1つの6員環芳香族炭化水素(6員環が縮環しているものを含む)を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。
ここで、芳香族炭化水素は、他の基または原子を含んでいてもよく、具体的には、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
Ar11中の総炭素数は、2〜40が好ましく、4〜24がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。
【0015】
一般式(1)中、Ar12は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。
ここで、芳香環は、芳香族炭化水素またはヘテロ環が好ましく、芳香族炭化水素が好ましい。さらに、芳香環は、他の基または原子を含んでいてもよい。
芳香族炭化水素としては、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO、さらに好ましくはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。Ar12は、6員環または6員環が縮環したものを有することが好ましい。
ヘテロ環としては、N、O、Sから選択される少なくとも1種、好ましくはNまたはSを含むヘテロ環であり、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
Ar12中の総炭素数は、4〜40が好ましく、4〜35がより好ましく、6〜30がさらに好ましい。
【0016】
一般式(2)で表される繰り返し単位
一般式(2)中、Ar21は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、好ましくは、少なくとも1つの6員環芳香族炭化水素(6員環が縮環しているものを含む)を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。
ここで、芳香族炭化水素は、他の基または原子を含んでいてもよく、具体的には、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
Ar21中の総炭素数は、2〜40が好ましく、4〜24がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。
【0017】
一般式(2)中、Ar22は、少なくとも1つの芳香環を有するn2+2価の基である。
ここで、芳香環は、芳香族炭化水素またはヘテロ環が好ましく、芳香族炭化水素が好ましい。さらに、芳香環は、他の基または原子を含んでいてもよい。
芳香族炭化水素としては、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO、さらに好ましくはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。Ar22は、6員環または6員環が縮環したものを有することが好ましい。
ヘテロ環としては、N、O、Sから選択される少なくとも1種、好ましくはNまたはSを含むヘテロ環であり、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
Ar22中の総炭素数は、4〜40が好ましく、4〜35がより好ましく、6〜30がさらに好ましい。
一般式(2)中、R21は2価の連結基であり、共有結合である単結合、または脂肪族基および/若しくはまたは芳香族基を含む有機原子団であり、脂肪族基を含む有機原子団であることが好ましく、アルキレン基を含む有機原子団であることがさらに好ましい。
脂肪族基および/若しくは芳香族基を含む有機原子団は、アルキレン基(より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基)および/または芳香族基(より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基)からなる基、ならびに、これらと、−O−、−CO−、−S−および−SO−の1つ以上との組み合わせから構成される基が好ましい。これらは、さらに、置換基を有していてもよい。また、脂肪族基は不飽和結合を含んでもよい。
具体的には、R21は、共有結合である単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−O−(CH2)n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である。)、−CH2−Ph−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、−CH2CH2OCH2CH2−および−(CH2CH2O)2−CH2CH2−のいずれか1以上からなる基、ならびに、これらと−O−、−CO−、−S−および−SO−の1つ以上との組み合わせからなる基が挙げられる。これらは、さらに、置換基を有していてもよい。
【0018】
一般式(2)中、R22は酸残基であり、pKa5以下のものが好ましく、pKa2以下のものがより好ましい。具体的には、パーフルオロスルホン酸残基、スルホン酸残基、ホスホン酸残基、カルボン酸残基が好ましく、ホスホン酸残基とスルホン酸残基がさらに好ましい。
n2は1〜4の整数であり、1または2が好ましい。
【0019】
一般式(3)で表される繰り返し単位
一般式(3)中、Ar31は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、好ましくは、少なくとも1つの6員環芳香族炭化水素(6員環が縮環しているものを含む)を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。
ここで、芳香族炭化水素は、他の基または原子を含んでいてもよく、具体的には、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
Ar31中の総炭素数は、2〜40が好ましく、4〜24がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。
【0020】
一般式(3)中、Ar32は少なくとも1つの芳香環を有するn3+2価の基である。
ここで、芳香環は、芳香族炭化水素またはヘテロ環が好ましく、芳香族炭化水素が好ましい。さらに、芳香環は、他の基または原子を含んでいてもよい。
芳香族炭化水素としては、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO、さらに好ましくはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
ヘテロ環としては、N、O、Sから選択される少なくとも1種、好ましくはNまたはSを含むヘテロ環であり、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
Ar32中の総炭素数は、4〜40が好ましく、4〜35がより好ましく、6〜30がさらに好ましい。
【0021】
一般式(3)中、R31は2価の連結基を表し、メソゲンを含んでいてもよく、メソゲンを含んでいる方が好ましい。
メソゲンを含まない場合、R31は、脂肪族基および/または芳香族基を含む有機原子団であることが好ましく、脂肪族基を含む有機原子団であることがより好ましく、アルキレン基を含む有機原子団であることがさらに好ましい。
脂肪族基および/または芳香族基を含む有機原子団は、アルキレン基(より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基)および/または芳香族基(より好ましくはフェニレン基、ビフェニレン基)からなる基、ならびに、これらと、−O−、−CO−、−S−および−SO−の1つ以上との組み合わせから構成される基が好ましい。これらは、さらに、置換基を有していてもよい。
具体的には、R31は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−O−(CH2)n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である。)、−CH2−Ph−、−CH2CH=CH−、−CH2CH2CH=CH−、−CH2CH2OCH2CH2−および−(CH2CH2O)2−CH2CH2−のいずれか1以上からなる基、ならびに、これらと−O−、−CO−、−S−および−SO−の1つ以上との組み合わせからなる基が挙げられる。これらは、さらに、置換基を有していてもよい。
【0022】
メソゲンを含む場合、R31は、メソゲンは一般式(10)で表されるものが好ましい。なお、メソゲンの好ましい例としては、Dietrich DemusおよびHorst Zaschkeによる「Flussige Kristalle in Tabellen II」, 1984年, p.7-18に記載されているものが挙げられる。
【0023】
一般式(10)
【化10】

【0024】
一般式(10)中、R10-1およびR10-3は2価の連結基または単結合を表す。2価の連結基としては、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−COO−、−COS−、−CONH−、−COCH2−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2NH−、−CH2−、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−(CH2)13−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−CO−、および−(C≡C)13−、ならびにこれらの組合せが好ましく、−CH2−、−CO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−および−N=N−、ならびにこれらの組合せ等がより好ましい。これらの2価の連結基は水素原子が他の置換基で置換された基であってもよい。
【0025】
10-2は2価の4〜7員環の置換基、またはそれらから構成される縮合環の置換基を表し、R10-2は好ましくは6員環の芳香族基、4〜6員環の飽和若しくは不飽和脂肪族基、5若しくは6員環の複素環基、またはこれらの縮合環である。R10-2の好ましい具体例としては、以下に示す(Y−1)〜(Y−28)で表される置換基、およびこれらの組合せが挙げられる。これらの置換基の中でより好ましくは(Y−1)、(Y−2)、(Y−18)、(Y−19)、(Y−21)および(Y−22)ならびにこれらの組み合わせであり(縮環したものを含む)、さらに好ましくは(Y−1)、(Y−2)および(Y−19)ならびにこれらの組み合わせ(縮環したものを含む)である。
【0026】
【化11】

【0027】
n10は1〜3の整数を表す。
【0028】
メソゲンを含む場合のR31について、分子の配向性を高めるために、メソゲンと共に炭素数5以上のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を含むのが好ましい。アルキレン基またはアルキレンオキシ基の炭素数は5〜25が好ましく、6〜18がより好ましい。これらのアルキレン基、アルキレンオキシ基およびメソゲンは置換基を有していてもよい。
メソゲンを含む場合のR31は、−(アルキレン基またはアルキレンオキシ基)−(メソゲン)−(アルキレン基またはアルキレンオキシ基)−の構造を持つものが特に好ましい。
【0029】
一般式(3)中、R32は炭素原子、酸素原子および水素原子の少なくとも1種以上のみから構成される3価の連結基(好ましくは、炭素原子および水素原子のみから構成される3価の連結基)を表す。R32は3価の飽和炭化水素基が好ましく、4級炭素を持つものがより好ましい。R32の総炭素数は2〜18が好ましく、2〜12がより好ましく、4〜6がさらに好ましい。
n3は1〜4の整数であり、2〜4が好ましい。
【0030】
一般式(4)で表される繰り返し単位
一般式(4)中、Ar41は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、好ましくは、少なくとも1つの6員環芳香族炭化水素(6員環が縮環しているものを含む)を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。
ここで、芳香族炭化水素は、他の基または原子を含んでいてもよく、具体的には、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
Ar41中の総炭素数は、2〜40が好ましく、4〜24がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。
【0031】
一般式(4)中、Ar42は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基である。
ここで、芳香環は、芳香族炭化水素またはヘテロ環が好ましく、芳香族炭化水素が好ましい。さらに、芳香環は、他の基または原子を含んでいてもよい。
芳香族炭化水素としては、ヘテロ原子(例えば、S、NおよびOから選択される少なくとも1種、好ましくはSおよび/またはO、さらに好ましくはO)、脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)およびパーフルオロ脂肪族基(直鎖および環状のいずれも含む)のいずれか1以上を含むことが好ましい。
ヘテロ環としては、N、O、Sから選択される少なくとも1種、好ましくはNまたはSを含むヘテロ環であり、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
Ar42中の総炭素数は、4〜40が好ましく、4〜35がより好ましく、6〜30がさらに好ましい。
【0032】
n4は3〜6の整数を表す。
【0033】
上記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位から構成される固体電解質(重合体)は、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれによるものであってもよく、ランダム重合によるものであることが好ましい。上記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位から構成される固体電解質中の、各繰り返し単位の組成比は、順にモル比をv、x、y、zとした時、x/(v+y)の値が0.1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。また、v/yの値が0〜2であることが好ましく、0〜1であることがさらに好ましく、0〜0.5であることが特に好ましい。また、z/(v+x+y+z)の値が0〜0.2であることが好ましく、0〜0.1であることがさらに好ましく、0〜0.05であることが特に好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位から構成される固体電解質(重合体)の分子量は、特に限定はないが、10000〜200000が好ましく、10000〜100000がより好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される繰り返し単位は、例えば、一般式(5)で表される化合物と一般式(8)で表される化合物を脱水縮合させることにより得られる。また、一般式(2)で表される繰り返し単位は、例えば、一般式(5)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物を脱水縮合し、一般式(6)中のR62を酸残基に変換することにより得られる。さらに、一般式(3)で表される繰り返し単位は、例えば、一般式(5)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物を脱水縮合し、一般式(7)中のR72同士を重合させることにより得られる。また、一般式(4)で表される繰り返し単位は、例えば、一般式(5)で表される化合物と一般式(9)で表される化合物を脱水縮合させることにより得られる。
このように本発明では一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)および一般式(9)で表される化合物を用いて固体電解質を製造することが好ましい。
以下、これらの化合物について説明する。
【0035】
一般式(5)で表される化合物
一般式(5)中、Ar51は、少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。Ar51は、一般式(1)で表される繰り返し単位の合成に用いる場合は一般式(1)のAr11と同義であり、好ましい範囲も同義であり、一般式(2)で表される繰り返し単位の合成に用いる場合は一般式(2)のAr21と同義であり、好ましい範囲も同義であり、一般式(3)で表される繰り返し単位の合成に用いる場合は一般式(3)のAr31と同義であり、好ましい範囲も同義であり、一般式(4)で表される繰り返し単位の合成に用いる場合は一般式(4)のAr41と同義であり、好ましい範囲も同義である。特に、Ar21とAr31は同一であることが好ましく、Ar11とAr21とAr31は同一であることがより好ましく、Ar11とAr21とAr31とAr41は同一であることが特に好ましい。
以下に一般式(5)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
【化12】

【0037】
一般式(6)で表される化合物
一般式(6)中、Ar61は、少なくとも1つの芳香環を有するn6+2価の基であり、一般式(2)のAr22と同義であり(すなわち、n2=n6が好ましく)、好ましい範囲も同義である。
一般式(6)中、R61は2価の連結基であり、一般式(2)のR21と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(6)中、R62は酸残基またはその塩である。酸残基としては、pKa5以下であるものが好ましく、pKaが2以下であるものがより好ましい。R62は、パーフルオロスルホン酸残基、スルホン酸残基、ホスホン酸残基、カルボン酸残基が好ましく、ホスホン酸残基とスルホン酸残基がより好ましい。塩類の場合、対カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、四級アンモニウムイオンがより好ましい。
四級アンモニウム塩としては、トリメチルセチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩が好ましく、トリメチルドデシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、トリメチルドデシルアンモニウム塩、ブチルトリエチルアンモニウム塩、フェニルトリエチルアンモニウム塩がより好ましく、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩がさらに好ましい。
一般式(6)中、n6は1〜4の整数であり、1または2が好ましい。
以下に一般式(6)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0038】
【化13】

【化14】

【0039】
一般式(7)で表される化合物
一般式(7)中、Ar71は少なくとも1つの芳香環を有するn7+2価の基である。一般式(3)のAr32と同義であり(すなわち、n3=n7が好ましく)、好ましい範囲も同義である。
一般式(7)中、R71は2価の連結基を表し、一般式(3)のR31と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(7)中、R72は炭素−酸素結合を形成できる重合性基またはその前駆体である基である。重合性基に誘導できる基としては、酸化、加水分解、還元、置換、付加、脱離等の反応によって重合性基に誘導できるものが好ましく、反応による副生成物の除去がより容易な、酸化、加水分解反応がより好ましい。R72は、エーテル性酸素原子を複数持つ炭素原子が含まれるものがより好ましく、ケタール、アセタールを含む環状構造を持つものがより好ましく、1,3−ジオキサンまたは1,3−ジオキソラン構造を持つものがさらに好ましい。R72は、置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(7)中、n7は1〜4の整数であり、2〜4の整数がより好ましい。
以下に一般式(7)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。例示化合物中、
【化15】

は、−CH2−を表す。
【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
一般式(8)で表される化合物
一般式(8)中、Ar81は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。ここで、Ar81は、一般式(1)におけるAr12と同義であり、好ましい範囲も同義である。以下に一般式(8)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
【化19】

【化20】

【0045】
一般式(9)で表される化合物
一般式(9)中、Ar91は少なくとも1つの芳香環を有するn9価の基を表す。n9は3〜6の整数を表す。ここで、Ar91は、一般式(4)におけるAr42と同義であり(すなわち、n4=n9が好ましく)、好ましい範囲も同義である。以下に一般式(9)で表される化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
【化21】

【0047】
固体電解質の他の成分
本発明の固体電解質には、例えば、膜としたときの膜特性を向上させるため、必要に応じて、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等を添加してもよい。これら添加剤の含有量は固体電解質の全体量に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
【0048】
酸化防止剤としては、(ヒンダード)フェノール系、一価若しくは二価のイオウ系、三価若しくは五価のリン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、サリチレート系およびオキザリックアシッドアニリド系の各化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には特開平8−53614号公報、特開平10−101873号公報、特開平11−114430号公報、特開2003−151346号公報、特開2004−175997号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0049】
繊維としては、パーフルオロカーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平10−312815号公報、特開2000−231928号公報、特開2001−307545号公報、特開2003−317748号公報、特開2004−63430号公報、特開2004−107461号公報に記載の繊維が挙げられる。
【0050】
微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等からなる微粒子が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平6−111834号公報、特開2003−178777号公報、特開2004−217921号公報に記載の微粒子が挙げられる。
【0051】
吸水剤(親水性物質)としては、架橋ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩、ポバール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールジアルキルエーテル、ポリグリコールジアルキルエステル、シリカゲル、合成ゼオライト、アルミナゲル、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルが好ましい例として挙げられ、具体的には特開平7−135003号公報、特開平8−20716号公報、特開平9−251857号公報に記載の吸水剤が挙げられる。
【0052】
可塑剤としては、リン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、脂肪族一塩基酸エステル系化合物、脂肪族二塩基酸エステル系化合物、二価アルコールエステル系化合物、オキシ酸エステル系化合物、塩素化パラフィン、アルキルナフタレン系化合物、スルホンアルキルアミド系化合物、オリゴエーテル類、カーボネート類、芳香族ニトリル類が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−197030号公報、特開2003−288916号公報、特開2003−317539号公報に記載の可塑剤が挙げられる。
【0053】
さらに本発明の固体電解質には、(1)膜の機械的強度を高める目的、および(2)膜中の酸濃度を高める目的で種々の高分子化合物を含有させてもよい。
(1)機械的強度を高める目的には、分子量10,000〜1,000,000程度で本発明の固体電解質と相溶性のよい高分子化合物が適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらの2以上の重合体が好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上のものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。具体的には、後述する固体電解質の製造方法の第一の反応工程の溶媒で説明するものを好ましく用いることができる。
(2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物等のプトロン酸部位を有する高分子化合物等が好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
【0054】
さらに、本発明の固体電解質を燃料電池に用いる場合、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒を添加してもよい。これにより、固体電解質中に浸透した燃料が他方極に到達すること無く固体電解質中で消費され、クロスオーバーを防ぐことができる。用いられる活性金属種は、電極触媒として機能するものであれば制限は無いが、白金または白金を基にした合金が適している。
【0055】
固体電解質の製造方法
以下に本発明の固体電解質の好ましい製造方法を述べる。本発明の固体電解質は、例えば、溶解工程、第一の反応工程、第二の反応工程、製膜工程、改質・架橋工程の各段階を経て作製できる。
【0056】
(溶解工程)
溶解工程では、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)および一般式(9)で表される化合物と、第三級アミンと、有機溶媒との混合物を過熱して溶解する。ここで、第三級アミンは、酸残基またはその塩を有するアミノ基含有モノマーを、有機溶媒に溶解させるために用いる。混合物を加熱する温度は特に限定しないが、70℃〜150℃とすることで、モノマーをより容易に、溶媒中に均一に溶解することができる。第三級アミンの種類は特に定めるものではないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。これら第三級アミンは、単独で用いるほか、2つ以上の第三級アミンの混合物として用いてもよい。なお、酸残基が塩類のアミノ基含有モノマーの場合には、第三級アミンは添加しなくてもよい。有機溶媒としては、高沸点、かつ、高極性のものが好ましく、フェノール、m−クレゾール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびN−メチル−2−ピロリジノン等がより好ましく、m−クレゾールがさらに好ましい。これら有機溶媒は、単独で用いるほか、2つ以上の有機溶媒を混合物として用いてもよい。
【0057】
(第一の反応工程)
第一の反応工程では、一般式(5)で表される化合物を加えて、脱水重縮合反応によって高分子化する。すなわち、上記溶媒中にモノマーが均一に溶解した溶液からなる混合物に、一般式(5)で表される化合物を加えて、有機酸の存在下で加熱して重合させる。ここで有機酸は重合反応触媒であり、ポリアミック酸の生成を促進する。有機酸としては高沸点かつ溶媒への溶解性が高い化合物が望ましく、安息香酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸およびサリチル酸等が好ましく、安息香酸がより好ましい。有機酸は重合工程で存在するならば前述の溶解工程で添加してもよい。有機酸の添加量は特に限定されるものではないが、例えば、安息香酸であれば、一般式(5)で表される化合物1モルに対し1〜6モル程度加えることが望ましい。また、反応温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃〜180℃である。このような範囲で行なうことにより、より効率よく重合反応が進行し、高分子量ポリイミド前駆体を得ることができる。
【0058】
(第ニの反応工程)
第二の反応工程では、一般式(7)に由来する炭素−酸素結合を形成できる重合性基またはその前駆体である基R72を水酸基に変換する。第二の反応工程においては、第一の反応工程で得られた高分子を有機溶媒に溶解し、水、酸性化合物、四級アンモニウム塩を加えて加熱し、一般式(7)に由来するR72を水酸基に変換する。ここで、四級アンモニウム塩は、水-有機溶媒の二相反応における相間移動触媒として用いており、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムヨージド等が好ましく、特にテトラブチルアンモニウムブロミドが好ましい。これらの四級アンモニウム塩は、単独で用いるほか、2つ以上の四級アンモニウム塩の混合物として用いてもよい。
【0059】
酸性化合物としては無機または有機のプロトン酸が好ましい。無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、リン酸類(H3PO4、H3PO3、H427、H5310、メタリン酸、ヘキサフルオロリン酸等)、硼酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸、固体酸(タングストリン酸、タングステンペルオキソ錯体等)等が挙げられる。有機プロトン酸としては、リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30のリン酸エステル類であり、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステル等)、亜リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30の亜リン酸エステル類であり、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピルエステル、亜リン酸ジドデシルエステル等)、スルホン酸類(例えば炭素数1〜15のスルホン酸類であり、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヘキサフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等)、カルボン酸類(例えば炭素数1〜15のカルボン酸類であり、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、置換安息香酸等)、ホスホン酸類(例えば炭素数1〜30のホスホン酸類であり、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、1,5−ナフタレンビスホスホン酸等)等の低分子化合物、またはナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン等の耐熱芳香族高分子のスルホン化物等のプロトン酸部位を有する高分子化合物が挙げられる。これらを2種以上併用することも可能である。
【0060】
第二の反応工程に用いる有機溶媒は、第一の反応工程で生じた高分子が溶解するものが好ましく、第一の反応工程に用いる有機溶媒として例示したものから選択することができる。また、第二の反応工程の結果生じた高分子を溶解するために、上記の有機溶媒に、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)を混合してまたは単独で用いてもよい。
【0061】
第二の反応工程の反応温度は反応速度に関連し、選択した酸の種類および量に応じて選択することができる。好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは20℃〜120℃であり、さらに好ましくは50℃〜100℃である。
【0062】
(製膜工程)
製膜工程では、これ以前の工程で得られた反応液を流延または塗布し、溶媒を除去、乾燥する工程を含む。
本発明の塗布工程において、高分子溶液を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板等を挙げることができる。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
【0063】
(改質・架橋工程)
改質・架橋工程では製膜工程で得られた膜を加熱処理することで、ポリアミド酸のポリイミド化、および架橋反応を進行させる。反応温度は、好ましくは50℃〜300℃であり、より好ましくは100℃〜250℃であり、さらに好ましくは150℃〜200℃である。反応時間は短時間である方が生産性の観点から好ましいが、あまり短時間であると、溶媒の蒸発に伴う気泡、表面の凸凹等の欠陥の原因となる。このため、反応時間は1分〜48時間が好ましく、5分〜10時間がより好ましく、10分〜5時間がさらに好ましい。
【0064】
酸残基が塩類のアミノ基含有モノマーを用いて上記工程を行った場合、上記工程に加えて塩交換工程を行うことが好ましい。塩交換工程では、改質・架橋工程後に得られた膜を、強酸水溶液中で加熱することで、塩のままで存在する一部の基を、酸残基へと変換する。
本工程で使用する強酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0065】
改質・架橋工程後に得られる固体電解質の形状は、膜状が好ましく、厚さは10〜300μmが好ましく、20〜200μmがより好ましい。成型した時点で膜状であってもよいし、バルク体に成型した後に、切断して膜状に加工することもできる。
【0066】
(表面処理工程)
改質・架橋工程を経た後に表面処理を行なってもよい。表面処理としては、粗面処理、表面切削、除去、コーティング処理を行なってもよく、これらは電極との密着を改良できることがある。
【0067】
本発明の固体電解質の特性
本発明の固体電解質の配向状態は、偏光顕微鏡により光学異方性を観察することにより確認することができる。観察方向は任意でよいが、クロスニコル下でサンプルを回転させ、明暗が切り替わる部分があれば異方性があるといえる。配向状態は異方性を示す状態であれば特に制限はない。液晶相と認識できるテクスチャーが観察される場合は相を特定することができ、リオトロピック液晶相でもサーモトロピック液晶相でもよい。配向状態はリオトロピック液晶相の場合はヘキサゴナル相、キュービック相、ラメラ相、スポンジ相、ミセル相が好ましく、特に室温でラメラ相もしくはスポンジ相を示すことが好ましい。サーモトロピック液晶相ではネマチック相、スメクチック相、クリスタル相、カラムナー相およびコレステリック相が好ましく、特に室温でスメクチック相、クリスタル相を示すことが好ましい。また、これらの相における配向が固体状態で保持されている配向状態も好ましい。ここでいう異方性とは分子の方向ベクトルが等方的ではない状態をいう。
【0068】
本発明の固体電解質の特性としては、以下の諸性能を持つものが好ましい。
イオン伝導度は、例えば25℃95%相対湿度において、0.5×10-2S/cm以上であることが好ましく、1.0×10-2S/cm以上であるものがより好ましく、1.6×10-2S/cm以上であるものがさらに好ましく、1.9×10-2S/cm以上であることが最も好ましい。
メタノール透過係数は、7x10-7cm2/s以下であることが好ましく、4x10-7cm2/s以下であることがより好ましく、2x10-7cm2/s以下であるものがさらに好ましく、1.3x10-7cm2/s以下であるものが最も好ましい。
強度としては、引っ張り強度が30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であるものがより好ましい。
性能指数(後述にて定義する性能指数)は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
耐久性については水中で一定温度(例えば、25℃)での経時前後で、重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の変化率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。さらに過酸化水素中における経時前後でも同様に変化率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
本発明の固体電解質は安定した吸水率および含水率を持つものが好ましい。また、アル コール類、水およびこれらの混合溶媒に対し、溶解度は実質的に無視できる程度である物が好ましい。また上記溶媒に浸漬した時の重量減少、形態変化も実質的に無視できる程度である物が好ましい。
膜状に形成した場合のイオン伝導方向は表面から裏面の方向が、それ以外の方向に対し高い方が好ましいが、本質的にはメタノール透過性との比で決まるため、ランダムであってもよい。
本発明の固体電解質が膜状に形成された場合、その厚みは10〜300μmが好ましい。イオン抵抗が厚みに比例し、メタノール透過量が厚みに反比例するため、イオン伝導度が高く、メタノール透過係数が高い材料では50〜200μmの範囲が特に好ましく、イオン伝導度が低く、メタノール透過係数が低い材料では20〜100μmの範囲が特に好ましい。イオン伝導度のメタノール透過係数に対する比を性能指数として表現することができ、この値は大きいほど高い性能を持つことになる。性能指数が同じ材料は厚みの調整によって同一のイオン抵抗とメタノール透過性をもつ材料とすることができる。
本発明の固体電解質の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。耐熱温度は例えば1℃/分の測度で加熱したときの重量減少5%に達した時間として定義できる。この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
【0069】
燃料電池
本発明の固体電解質は、電極膜接合体(Membrane and Electrode Assembly)(以下「MEA」という)および、該電極膜接合体を用いた燃料電池に用いることができる。
図1は本発明の電極膜接合体の断面概略図の一例を示したものである。MEA10は、膜状の固体電解質11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。
アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bを固体電解質11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
【0070】
図2は燃料電池構造の一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17およびパッキン14とを有する。アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口16設けられている。アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0071】
アノード電極およびカソード電極には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子を担持した触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲であり、粒子サイズが小さい程単位質量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが、小さすぎると凝集させずに分散させることが難しくなり、2nm程度が限度といわれている。
【0072】
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極(水素極)に比べ、カソード極(空気極)が大きい。これは、アノード極に比べ、カソード極の反応(酸素の還元)が遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制することが重要である。この目的のために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を用いることができる。
【0073】
活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
【0074】
触媒層の機能は、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを固体電解質に輸送すること、である。(1)のために触媒層は、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性であることが必要である。(2)は上記で述べた活性金属触媒が、(3)は同じく上記で述べたカーボン材料が担う。(4)の機能を果たすために、触媒層にプロトン伝導材料を混在させる。
【0075】
触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、固体電解質に用いられる酸残基を有する高分子化合物(例えばナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物など)が好ましく用いられる。本発明の固体電解質を触媒層に用いると、固体電解質と同種の材料となるため、固体電解質と触媒層との電気化学的密着性が高まりより有利である。
【0076】
活性金属の使用量は、0.03〜10mg/cm2の範囲が電池出力と経済性の観点から適している。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の質量に対して、1〜10倍が適している。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの質量に対して、0.1〜0.7倍が適している。
【0077】
電極基材、透過層、または裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理を施したものを使用することもできる。
【0078】
MEAの作製には、次の4つの方法が好ましい。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒ペースト(インク)を固体電解質の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒ペーストを多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクを固体電解質、多孔質導電シートあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該固体電解質に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。
【0079】
本発明の固体電解質を用いる燃料電池の燃料として用いることのできるのは、アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
【0080】
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64質量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CH3OH+H2O→CO2+6H++6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64質量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の質量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールが固体電解質を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が顕著となり、出力が低下する傾向にある。そこで、用いる固体電解質のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2O2+6H++6e→H2O)であり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
【0081】
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層に供給する方法には、(1)ポンプ等の補機を用いて強制循環させる方法(アクティブ型)と、(2)補機を用いない方法(例えば、液体の場合には毛管現象や自然落下により、気体の場合には大気に触媒層を晒し供給するパッシブ型)の2通りがあり、これらを組み合わせることも可能である。前者は、カソード側で生成する水を循環させることにより燃料として高濃度のメタノールが使用することができ、空気供給による高出力化ができる等の利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。後者は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
【0082】
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレーターを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
【0083】
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能であり充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0085】
以下にサンプル(本発明で得られる固体電解質)の物性値の測定方法を示す。
[イオン伝導度]
サンプルを直径5mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、ソーラトロン社1470および1255Bを用いて交流インピーダンス法により、25℃、相対湿度95%におけるイオン伝導度を測定した。この値は大きいほど抵抗が小さくなり好ましい。
【0086】
[メタノール透過係数]
サンプル(固体電解質)を1cmx1cmに切り抜き、図3に示すようなセルにセットした。図3中、31はサンプル(固体電解質)を、2はテフロンテープ補強材を、33はメタノール水溶液注入部分を、34はキャリアガス導入口を、35は検出器を、36はゴムパッキンをそれぞれ示している。メタノール水溶液として50容量%メタノール水溶液を注入し、キャリアガス中に含まれるメタノールをガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製GC−14B)にて検出した。得られた検出量から以下の式を用いてメタノール透過係数DMeOHを計算した。この値は小さいほど燃料電池としたときの燃料の漏れが小さくなり好ましい。
MeOH=(NxT)/(AxCMeOH
メタノール透過係数:DMeOH(cm2/s)
透過検出量:N(mol/s)
固体電解質の膜厚: T(cm)
固体電解質がメタノール水溶液に接触している面積:A(cm2
メタノール濃度:CMeOH(mol/cm3
尚、本発明で述べるメタノール透過係数は、特記しない限り、上記式で表される値を意味する。
【0087】
[性能指数]
イオン抵抗はサンプル厚に比例し、イオン伝導度に反比例する。メタノール透過量はメタノール透過係数に比例し、サンプル厚に反比例する。従ってサンプル厚を小さくすると、これに比例してイオン抵抗は小さくなるが、メタノール透過量も大きくなる。従ってサンプル間の差は同じメタノール透過量を示すサンプル厚でのイオン伝導度を比較することで初めて可能になるが、これを簡単に行なうためには、下記式2に従い、基準となる物質に対するイオン伝導度、メタノール透過係数の比を比較すればよい。基準となる物質はイオン伝導度および、メタノール透過係数が測定できる物であればよく、本発明ではナフィオン117(DuPont社)を用いる。
(性能指数)=[(イオン伝導度)/(基準物質のイオン伝導度)]/[(メタノール透過係数)/(基準物質のメタノール透過係数)]
性能指数が2であればメタノール透過性能が同じ場合、2倍のイオン伝導性能を示すことになる。この値は大きいほど高い性能を示す。
尚、本発明で述べる性能指数は、特記しない限り、上記式で表される値を意味する。
【0088】
[メタノール溶解性]
乾燥状態にあるプロトン伝導体を90%メタノール水溶液に浸漬し、25℃で24時間静置した。その後、取り出したプロトン伝導体を再度乾燥させた後、重量減少率を測定した。
【0089】
合成例1
1,1,1−トリス(ヒドロキシエチル)エタン100gと2,2−ジメトキシプロパン100gをクロロホルム750mlに溶解し、1gのp−トルエンスルホン酸水和物を加え、モレキュラーシーブス3Aを備えたソックスレイ抽出器を用いて7時間加熱還流した。反応混合物に炭酸カリウム4gを添加し、室温で20分攪拌した後、反応混合物をろ過し、濃縮、減圧下蒸留して2,2−ジメチル−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン125gを得た。この68gをテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解し、トリエチルアミン72mlおよびジメチルアミノピリジン3gを加え、室温で塩化パラトルエンスルホニル89gを添加した。反応混合物を6時間加熱還流した後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、濃縮後得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、2,2−ジメチル−5−エチル−5−(p−トリル)スルホシキメチル−1,3−ジオキサン113gを得た。この100gをアセトニトリル350mlに溶解し、ヨウ化ナトリウム145gを加え2時間加熱還流した。反応混合物をろ過し、無機物を除去した後水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を濃縮し、残渣を減圧蒸留し、0.5mmHg、75〜85℃の留分を捕集し、65gの2,2−ジメチル−5−エチル−5−ヨードメチル−1,3−ジオキサンを得た。
4,4'−ジヒドロキシビフェニル13.1gをN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解し、炭酸カリウム9.7gを加えたところに、2,2−ジメチル−5−エチル−5−ヨードメチル−1,3−ジオキサン10.0gを添加した。反応液を100℃で9時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水と酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、8.2gの4−(5−(2,2−ジメチル−5−エチル−1,3−ジオキサニル))メトキシビフェニルを得た。この6.0gに炭酸カリウム4.8g、N,N−ジメチルホルムアミド15mlを加え、10.7gの1,6−ジブロモヘキサンを滴下した。反応液を100℃で7時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水と酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、4.8gの4−(5−(2,2−ジメチル−5−エチル−1,3−ジオキサニル))メトキシ4'−(6−ブロモヘキシルオキシ)ビフェニルを得た。
4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジニトロビフェニル1.1gをN,N−ジメチルホルムアミド10mlに溶解し、炭酸カリウム1.8gを加えたところに、4−(5−(2,2−ジメチル−5−エチル−1,3−ジオキサニル))メトキシ4'−(6−ブロモヘキシルオキシ)ビフェニル4.4gを添加した。反応液を100℃で10時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水と酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、3.8gの4,4'−ビス(5−(2,2−ジメチル−5−エチル−1,3−ジオキサニル)メトキシビフェニルオキシヘキシルオキシ)−3,3'−ジニトロビフェニルを得た。この3.6gに鉄粉3.0gと塩化アンモニウム0.3gを加え、10mlのイソプロパノールと1mlの水との混合溶液中で3時間加熱還流した。反応後、セライト濾過により鉄粉を除き、水と酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.7gの D−1を得た。
【0090】
実施例1
水銀温度計、窒素導入口、還流管を付した100mlの四口フラスコに、237mg(0.67mmol)のC−8(2,2'−ベンジジン二スルホン酸(東京化成社製)を水酸化リチウムと反応させ、リチウム塩としたもの)、266mg(0.25mmol)のD−1と、15mg(0.084mmol)のB−4(Aldrich社製)と、0.3mlのトリエチルアミンと、8.0mlのm−クレゾールとを加えて、窒素気流下140℃で15分間加熱しながら攪拌し、均一溶液を得た。この混合液中に268mg(1.0mmol)のA−8(Aldrich社製)と、0.5gの安息香酸と、9mlのm−クレゾールを加えた。その後、窒素気流下175℃で攪拌しながら15時間加熱した。その後、反応液に大量のメタノールを加え、沈殿物を濾過、洗浄、乾燥し、ポリマー480mgを得た。このポリマー400mgにm−クレゾール5ml、10%塩酸水溶液5ml、臭化テトラブチルアンモニウム100mgを加え、超音波を照射しながら溶解した。反応液を濃縮後、大量のメタノールを加え、沈殿物を濾過、洗浄、乾燥し、ポリマー310mgを得た。このうち250mgを1mlのm−クレゾールに加熱しながら溶解し、溶解後の溶液を膜厚100μmとなるようにガラス板上に製膜した。次いで、得られた被膜を200℃で5時間加熱し、硬化させた。ガラス板から膜状に固化した塗布物を剥離し、濃塩酸、イオン交換水にて洗浄、乾燥して、透明、微褐色で厚さ100μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.6%、イオン伝導度は2.3x10-2S/cm、メタノール透過係数は1.3X10-7cm2/s、性能指数は10.3であった。
【0091】
実施例2
上記実施例1において、重合するモノマーの組成を(C−8):(D−1):(B−4):(A−8) =6:2:0:8にした他は同様にして、透明、微褐色で厚さ110μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.3%、イオン伝導度は2.5x10-2S/cm、メタノール透過係数は1.2X10-7cm2/s、性能指数は11.7であった。
【0092】
実施例3
上記実施例1において、A−8をA−1(Aldrich社製)に置き換え、重合するモノマーの組成を(C−8):(D−1):(B−4):(A−1) =6:2:0:8にした他は同様にして、透明、微褐色で厚さ112μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.4%、イオン伝導度は2.9x10-2S/cm、メタノール透過係数は1.3X10-7cm2/s、性能指数は13.0であった。
【0093】
実施例4
上記実施例3において、重合するモノマーの組成を(C−8):(D−1):(B−4):(A−1) =2:1:0:3にした他は同様にして透明、微褐色で厚さ121μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.2%、イオン伝導度は1.9x10-2S/cm、メタノール透過係数は0.8X10-7cm2/s、性能指数は13.9であった。
【0094】
実施例5
上記実施例1において、B−4をE−1に置き換え、重合するモノマーの組成を(C−8):(D−1):(E−1):(A−8)=6:2:0.08:8.16にした他は同様にして、透明、微褐色で厚さ126μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.2%、イオン伝導度は2.2×10-2S/cm、メタノール透過係数は0.7X10-7cm2/s、性能指数は18.3であった。
【0095】
実施例6
上記実施例5において、重合するモノマーの組成を(C−8):(D−1):(E−1):(A−8)=6:2:0.16:8.32にした他は同様にして、透明、微褐色で厚さ132μmの固体電解質を得た。このサンプルのメタノール溶解性は0.1%、イオン伝導度は1.6×10-2S/cm、メタノール透過係数は0.5X10-7cm2/s、性能指数は18.7であった。
【0096】
比較例1
ナフィオン117(DuPont社)のメタノール溶解性は4.2%、イオン伝導度は2.4x10-2S/cm、メタノール透過係数は1.4X10-6cm2/s、性能指数は1.0であった。
【0097】
実施例7
上記実施例1〜6で作製した固体電解質について、それぞれ薄膜切片を作製し、偏光顕微鏡で観察したところ、いずれの膜も、光学異方性のある微細なドメインが確認された。これによりメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることが分かった。
【0098】
実施例8 燃料電池の作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50wt%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子径は約500nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き、触媒膜を作製した。
【0099】
実施例1〜6で作製した固体電解質およびナフィオン117の両面に上記で得られた触媒膜を塗布面が固体電解質に接するように張り合わせ、100℃、2MPa、1分間で熱圧着しMEAを作製した。
【0100】
上記で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時カソード側開口部16は大気開放とした。アノード電極12とカソード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。結果を表1に示した。
【0101】
【表1】

【0102】
(結果)
ナフィオン117を用いた電池の初期電圧は高いものの、経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、アノード電極側に供給された燃料のメタノールが、ナフィオン膜を通過してカソード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対して、本発明の固体電解質を用いた電池は電圧が安定しており、より高い電圧を維持できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の固体電解質を用いた触媒電極膜接合体の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の燃料電池の構造の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のメタノール拡散性の測定に採用するステンレス製のセルの概略図を示す。
【符号の説明】
【0104】
10・・・燃料電池電極膜複合体(MEA)
11・・・固体電解質
12・・・アノード電極
12a・・・アノード極多孔質導電シート
12b・・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・・カソード極多孔質導電シート
13b・・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ
31 ・ ・ ・ 固体電解質
32 ・ ・ ・ テフロンテープ補強材
33 ・ ・ ・ メタノール水溶液注入部分
34 ・ ・ ・ キャリアガス導入口
35 ・ ・ ・ 検出口(ガスクロマトグラフィーに接続)
36 ・ ・ ・ ゴムパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドを主鎖とし、側鎖に、架橋性基と酸残基とを有している固体電解質。
【請求項2】
酸残基が、共有結合である単結合、または原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
メソゲンが、アルキレン基を含む原子団を介して共有結合により前記主鎖に結合している、請求項1または2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記架橋性基が、炭素−酸素結合および/または炭素−炭素結合を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質。
【請求項5】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する固体電解質。
一般式(2)
【化1】

(一般式(2)中、Ar21は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar22は、少なくとも1つの芳香環を有するn2+2価の基である。R21は2価の連結基であり、R22は酸残基である。n2は1〜4の整数である。)
一般式(3)
【化2】

(一般式(3)中、Ar31は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar32は少なくとも1つの芳香環を有するn3+2価の基である。R31は2価の連結基を表し、R32は炭素原子、酸素原子および水素原子の少なくとも1種以上のみから構成される3価の連結基を表す。n3は1〜4の整数である。)
【請求項6】
さらに、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する請求項5に記載の固体電解質。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、Ar11は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar12は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。)
【請求項7】
さらに、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有する請求項5に記載の固体電解質。
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、Ar41は少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成し、Ar42は少なくとも1つの芳香環を有する2価の連結基を表し、n4は3〜6の整数である。)
【請求項8】
メソゲンを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の固体電解質。
【請求項9】
膜状である、請求項1〜8のいずれかに記載の固体電解質。
【請求項10】
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物誘導体を脱水縮合する工程を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(5)、(6)および(7)で表される化合物を用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
一般式(5)
【化5】

(一般式(5)中、Ar51は、少なくとも1つの芳香族炭化水素を有し、かつ、隣接する2つのイミド基とそれぞれ5員環または6員環を形成する。)
一般式(6)
【化6】

(一般式(6)中、Ar61は、少なくとも1つの芳香環を有するn6+2価の基であり、R61は2価の連結基であり、R62は酸残基またはその塩である。n6は1〜4の整数である。)
一般式(7)
【化7】

(一般式(7)中、Ar71は少なくとも1つの芳香環を有するn7+2価の基である。R71は2価の連結基を表し、R72は炭素−酸素結合を形成できる重合性基またはその前駆体である基である。n7は1〜4の整数である。)
【請求項12】
さらに、下記一般式(8)で表される化合物を用いることを特徴とする、請求項10または11に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(8)
【化8】

(一般式(8)中、Ar81は少なくとも1つの芳香環を有する2価の基を表す。)
【請求項13】
さらに、下記一般式(9)で表される化合物を用いることを特徴とする、請求項10または11に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(9)
【化9】

(一般式(9)中、Ar91は少なくとも1つの芳香環を有するn9価の基を表し、n9は3〜6の整数を表す。)
【請求項14】
膜状で架橋反応が進行する、請求項10〜13のいずれかに記載の固体電解質の製造方法。
【請求項15】
一対の電極と、該電極の間に設けられた請求項1〜9のいずれかに記載の固体電解質を有する、電極膜接合体。
【請求項16】
請求項15に記載の電極膜接合体を有する燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−236703(P2006−236703A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47984(P2005−47984)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】