説明

固体電解質複層フィルム及びその製造方法、設備、電極膜複合体、燃料電池

【課題】固体電解質を含み処方が互いに異なる複数のドープを連続的に流延し、一定品質かつイオン伝導性に優れた固体電解質複層フィルムを製造する。
【解決手段】固体電解質を含む第1〜第3ドープ114〜116を、フィードブロック119が備えられた流延ダイ81から走行する流延バンド82に流延する。3層構造の流延膜112を流延バンド82から固体電解質を含む3層フィルムとして剥がす。テンタ64を出て、まだ溶媒を含んでいるフィルム62を、溶媒より低沸点かつ固体電解質の貧溶媒である液に接触させてから、乾燥室69で乾燥する。次に、フィルムを乾燥室に送り、複数のローラで支持しながら乾燥を進める。この方法によると、連続的に安定して固体電解質フィルムを製造することができ、かつその品質は均一であり不純物を含まず、燃料電池に用いると優れたイオン伝導性を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質複層フィルム及びその製造方法、設備と、固体電解質複層フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池に関するものであり、特に、プロトン伝導性をもち燃料電池に用いられる固体電解質複層フィルム及びその製造方法、設備と、固体電解質複層フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源として利用できるリチウムイオン電池や燃料電池が活発に研究されており、その部材である固体電解質についても活発な研究が行われている。固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導材料やプロトン伝導材料である。
【0003】
一般に、プロトン伝導材料としてはフィルム状のものがあり、燃料電池等の電池の固体電解質層として用いるためのフィルム状固体電解質及びその製造方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を電解質と可塑剤との混合用液に浸漬する方法が提案されている。また、特許文献2では、スルホン酸基をもつ芳香族系高分子材料を含有した溶液中で、無機化合物を合成して、溶媒を除去することによりプロトン伝導膜を製造する方法が提案されている。この方法では細孔を改良するためにケイ素酸化物、リン酸誘導体等が添加されている。特許文献3では、イオン交換樹脂を含む溶液に金属酸化物前駆体を添加して、この前駆体を加水分解及び重縮合反応させて得られる液体をキャストし、これによりイオン交換膜を製造する方法が提案されている。そして、特許文献4では、溶液流延法、つまり溶液製膜法によりプロトン伝導性をもつポリマーフィルムを製造し、このフィルムを、水に可溶で沸点が100℃以上の有機化合物水溶液中に浸漬して平衡膨潤させ、加熱により水を蒸発させることによりプロトン伝導膜を製造する方法が提案されている。特許文献5では、アニオン性イオン性基を有するポリベンズイミダゾールを主成分とする化合物を、水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む沸点90℃以上のアルコール系溶媒に溶解してこれにより固体電解質膜を得る方法が提案されている。
【0004】
ところで、ポリマーをフィルム化する方法としては、周知のように溶融製膜方法と溶液製膜方法とがある。前者は、溶媒を使わずにフィルムを製造することができるが、加熱によるポリマーの変性や、原料ポリマー中の不純物がそのままフィルム中に残るという問題がある。一方、後者は、溶液の製造設備及び溶媒回収設備等の設備的な問題があるものの、加熱における温度が低くてもよく、また、溶液製造工程でポリマー中の不純物を除去することが可能という利点がある。さらに、後者では、前者によるフィルムよりも平面性及び平滑性に優れたフィルムを製造することができるという利点もある。
【特許文献1】特開平9−320617号公報
【特許文献2】特開2001−307752号公報
【特許文献3】特開2002−231270号公報
【特許文献4】特開2004−79378号公報
【特許文献5】特開2004−131530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、溶液製膜方法が否定され、原材料に含まれる不純物がフィルム中に残る問題は解消されていない。特許文献2〜5の方法はいずれも少規模スケールでの製造方法であり、大量生産を意識した方法とはされていない。そして、特許文献2の方法は、ポリマーと無機化合物とからなる複合体の分散が困難であるという問題がある。特許文献3の方法は、製膜工程が複雑という問題がある。特許文献4は、水に浸漬させることにより細孔がフィルムに発生してしまい、均一なフィルムを得ることができないという問題があり、これを解消する方法は記載されていない。また、溶液製膜方法で多種の固体電解質フィルムを製造できると記載されているものの、具体的な方法の記載もない。特許文献5は用いる原料を限定しており、他の優れた性能をもつ材料を用いて製造できるような記載はされていない。
【0006】
また、固体電解質フィルムに所定の機能を付与するために、固体電解質フィルムを複層とする方法については、上記特許文献1〜5のいずれにも記載されていない。
【0007】
そこで、本発明は、固体電解質を連続的にフィルム化して一定品質であってイオン伝導性に優れた固体電解質複層フィルム及びその製造方法、設備と、この固体電解質複層フィルムを用いた燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の固体電解質フィルムの製造方法は、固体電解質と有機溶媒とを含み互いに組成が異なる複数のドープを、走行する支持体上に流延ダイから流延して複数のドープが重ねられた流延膜を形成し、この流延膜を支持体からフィルムとして剥がす流延工程と、フィルムを乾燥して固体電解質複層フィルムとする乾燥工程と、を有し、乾燥工程中には、溶媒よりも沸点が低く固体電解質の貧溶媒である液にフィルムを接触させる貧溶媒接触工程があることを特徴として構成されている。
【0009】
上記製造方法では、固体電解質と有機溶媒との配合比が互いに異なる第1の前記ドープと第2の前記ドープとを流延することが好ましく、第1ドープは第1の前記流延ダイから流出され、第2ドープは前記第1の流延ダイの下流に備えられる第2の前記流延ダイから流出されること好ましい。固体電解質複層フィルムの厚みは10μm〜200μmであることが好ましい。
【0010】
固体電解質の貧溶媒である化合物を第1の有機溶媒、固体電解質の良溶媒である化合物を第2の前記有機溶媒とするが好ましく、第1及び第2の有機溶媒の重量の和に対する第1の有機溶媒の重量が10%以上100%未満であることがより好ましい。そして、第2の有機溶媒はジメチルスルホキシドを含み、前記第1の有機溶媒は炭素数が1〜5のアルコールを含むことが好ましい。
【0011】
固体電解質は、炭化水素系ポリマーであることが好ましく、この炭化水素系ポリマーは、スルホン酸基を有する芳香族系ポリマーであることが好ましく、この芳香族系ポリマーは、化3の一般式(I)〜(III)で示される各構造単位からなる共重合体であることが好ましい。
【0012】
【化3】

(ただし、XはH、YはSO2 、Zは化4の(I)または(II)に示す構造であり、nとmとは0.1≦n/(m+n)≦0.5を満たす。)
【0013】
【化4】

【0014】
さらに、本発明は、以上の製造方法により製造されたことを特徴とする固体電解質フィルムを含んで構成されている。
【0015】
また、本発明の固体電解質複層フィルムの製造設備は、固体電解質と有機溶媒とを含み互いに異なる組成とされた複数のドープを流延ダイから走行する支持体上に流延して複層の流延膜を形成し、複層のフィルムとして剥がす流延装置と、このフィルムを乾燥する乾燥装置と、このフィルム乾燥装置中に備えられて前記溶媒よりも沸点が低く前記固体電解質の貧溶媒である液に前記フィルムを接触させる貧溶媒接触部と、を有することを特徴として構成されている。
【0016】
本発明の電極膜複合体は、上記の固体電解質複層フィルムと、この固体電解質複層フィルムの一方の面に密着して備えられ、外部から供給される水素含有物質からプロトンを発生するためのアノード電極と、固体電解質複層フィルムの他方の面に密着して備えられ、固体電解質複層フィルムを通過したプロトンと外部から供給される気体とから水を合成するカソード電極と、を有することを特徴として構成されている。
【0017】
さらに、本発明は、上記の電極膜複合体と、この電極膜複合体の電極に接触して備えられ、アノード電極及びカソード電極と外部との電子の受け渡しをする集電体とを有することを特徴とする燃料電池を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、一定品質であってイオン伝導性に優れた固体電解質フィルムを連続的に製造することができる。そして、この固体電解質を用いた電極膜複合体が燃料電池に用いられると、この燃料電池は優れた起電力を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施様態について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施様態に限定されるものではない。まず、本発明の固体電解質フィルムについて説明し、その後、そのフィルムの製造方法について述べるものとする。
【0020】
[原料]
本発明は、後述の製造法によりフィルムとする固体電解質として、プロトン供与基をもつポリマーを用いている。プロトン供与基をもつポリマーは、特に限定されないが、酸残基をもち、プロトン伝導材料として公知であるものを用いることができる。中でも好ましいポリマーは、酸残基をもつものであり、例えば、側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したスルホ化ポリエーテルエーテルケトン、スルホ化ポリベンズイミダゾール、ポリスルホンをスルホン化したスルホ化ポリスルホン、耐熱性芳香族高分子化合物のスルホ化物などが挙げられる。側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物としては、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸や、スルホ化スチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンなどがあり、耐熱性芳香族高分子のスルホ化物としてはスルホ化ポリイミド等がある。
【0021】
パーフルオロスルホン酸の好ましい例としては、例えば特開平4−366137号公報、特開平6−231779号公報、特開平6−342665号公報に記載される物質が挙げられ、中でも、化5に示す物質が特に好ましい。ただし、化5において、mは100〜10000であり、200〜5000が好ましく、500〜2000がより好ましい。そして、nは0.5〜100であり、5〜13.5が特に好ましい。また、xはmに略同等であり、yはnと略同等である。
【0022】
【化5】

【0023】
スルホ化スチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンの好ましい例としては、特開平5−174856号公報、特開平6−111834号公報に記載される化合物や化6に示される物質が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
耐熱性芳香族高分子のスルホ化物の例としては、例えば、特開平6−49302号公報、特開2004−10677号公報、特開2004−345997号公報、特開2005−15541号公報、特開2002−110174号公報、特開2003−100317号公報、特開2003−55457号公報、特開平9345818号公報、特開2003−257451号公報、特表2000−510511号公報、特開2002−105200号公報に記載される物質が挙げられ、中でも前記化3と、以下の化7、化8に示される物質が特に好ましいものとして挙げられる。
【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
特に、化3に示す物質のフィルムは、吸湿膨張率とプロトン伝導度とを両立させる。n/(m+n)<0.1である場合には、スルホン酸基が少なすぎて、プロトン伝導路、いわゆるプロトンチャンネルを十分に形成することができないことがある。そのため、得られるフィルムは実用に十分なプロトン伝導性を発現しないことがある。また、n/(m+n)>0.5である場合には、フィルムの水分吸収性が高くなってしまうため、吸水による膨張率、つまり吸水膨張率が大きくなり、フィルムが劣化しやすくなる。
【0029】
上記化合物を得る過程におけるスルホン化反応は、公知文献の各種合成法に従って行うことができる。スルホン化剤としては、硫酸(濃硫酸)、発煙硫酸、三硫化硫黄(ガス状あるいは液状物)、三硫化硫黄錯体、アミド硫酸、クロロスルホン酸等を用いることができる。溶媒としては、炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジオキセタン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等)等を用いることができる。反応温度は、−20℃〜200℃の範囲でスルホン化剤の活性に応じて決定するとよい。また、別の方法として、モノマーにメルカプト基、ジスルフィド基、スルフィン酸基を予め導入しておいて、酸化剤による酸化反応によってスルホン化物を合成することもできる。このときには、酸化剤として、過酸化水素、硝酸、臭素水、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸等を用いることができ、溶媒としては、水、酢酸、プロピオン酸等を用いることができる。この方法における反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で酸化剤の活性に応じて決定するとよい。また、さらに別の方法として、モノマーにハロゲノアルキル基を予め導入しておいて、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等による置換反応をしてスルホン化物を合成してもよい。このときには溶媒として、水、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類等を用いることができる。反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で決定するとよい。なお、以上のスルホン化反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
【0030】
また、スルホン化物への反応工程では、アルキルスルホン化剤を用いてもよく、一般的な方法としてはスルトンとAlClを用いたフリーデルクラフツ反応がある(Journal of Applied Polymer Science,Vol.36,1753−1767,1988)。フリーデルクラフツ反応を行うためにアルキルスルホン化剤を用いた場合は、溶媒として炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、アセトフェノン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等、)等を用いることができる。反応温度は、室温から200℃の範囲で決定するとよい。なお、反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
【0031】
化3の構造を有する固体電解質フィルムを製造する場合には、化3のXがH以外のカチオン種であるポリマー(以降、前駆体と称する)を含むドープをつくり、これを支持体上に流延して前駆体を含むフィルム(以降、前駆体フィルムと称する)として剥ぎ取り、この前駆体フィルムをプロトン置換してXのカチオン種をHに置き換えることにより、化3の構造を有するポリマーからなる固体電解質フィルムを製造することができる。
【0032】
カチオン種とは、電離したときにカチオンを生成する原子または原子団を意味する。このカチオン種は1価である必要はない。プロトン以外のカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、カルシウムイオン、バリウムイオン、四級アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。なお、化3におけるXをHとせずにカチオン種のままとしてフィルムを製造してもそのフィルムは固体電解質としての機能をもつ。しかし、そのプロトン伝導性は、Xのカチオン種のうちHに置換された割合が多いほど高くなる。その意味では、XはHであることが特に好ましい。
【0033】
固体電解質としては、以下の諸性能をもつものが好ましい。イオン伝導度は、例えば25℃、相対湿度70%において、0.005S/cm以上であることが好ましく、0.01S/cm以上であるものがより好ましい。さらに、50%メタノール水溶液に18℃で一日浸漬した後のイオン伝導度が0.003S/cm以上であることが好ましく、0.008S/cm以上であるものがより好ましく、特に、浸漬前に対する浸漬後のイオン伝導度の低下率が20%以内であるものが好ましい。そして、メタノール拡散係数が4×10−7cm/s以下であることが好ましく、2×10−7cm/s以下であるものが特に好ましい。
【0034】
強度については、弾性率が10MPa以上であるものが好ましく、20MPa以上であるものが特に好ましい。なお、弾性率の測定方法については、特開2005−104148号公報の段落[0138]に詳細に記されており、弾性率の上記値は、東洋ボールドウィン社製の引っ張り試験機による値である。したがって、他の試験方法や試験機を用いて弾性率を求める場合には、上記試験方法や試験機による値との相関性を予め求めておくとよい。
【0035】
耐久性については、50%メタノール中に一定温度で浸漬する経時試験の前後で、重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が、それぞれ20%以下であるものが好ましく、15%以下であるものが特に好ましい。さらに過酸化水素中における経時試験の前後でも、同様に重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものが特に好ましい。また50%メタノール中、一定温度での体積膨潤率が10%以下であるものことが好ましく、5%以下であるものが特に好ましい。
【0036】
さらに、安定した吸水率および含水率をもつものが好ましい。また、アルコール類、水、アルコールと水との混合溶媒に対し、溶解度が実質的に無視できる程に小さいものであることが好ましい。また上記液に浸漬した時の重量減少、形態変化についても実質的に無視できる程小さいものであることが好ましい。
【0037】
固体電解質フィルムのイオン伝導性能は、イオン伝導度とメタノール透過係数との比であるいわゆる指数により表される。そして、ある方向における指数が大きいほど、その方向におけるイオン伝導性能が高いといえる。また、固体電解質フィルムの厚み方向においては、イオン伝導度は厚みに比例し、メタノール透過係数は厚みに反比例するので、厚みを変えることにより固体電解質フィルムのイオン伝導性能を制御することができる。燃料電池に用いる固体電解質フィルムでは、一方の面側にアノード電極、他方の面側にカソード電極が設けられることになるので、固体電解質フィルムの厚み方向における指数が他の方向における指数よりも大きいことが好ましい。固体電解質フィルムの厚みは10〜300μmが好ましい。例えば、イオン伝導度とメタノール拡散係数とが共に高い固体電解質の場合には、厚みが50〜200μmとなるようにフィルムを製造することが特に好ましく、イオン伝導度とメタノール拡散係数とが共に低い固体電解質の場合には、厚みが20〜100μmとなるようにフィルムをする製造することが特に好ましい。
【0038】
耐熱温度については、200℃以上であるものが好ましく、250℃以上のものがさらに好ましく、300℃以上のものが特に好ましい。ここでの耐熱温度は、1℃/分の測度で加熱していったときの重量減少5%に達した温度を意味する。なお、この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
【0039】
さらに、固体電解質をフィルムとしてこれを燃料電池に用いる場合には、その最大出力密度が10mW/cm以上である固体電解質であることが好ましい。
【0040】
以上の固体電解質を用いることにより、フィルムの製造に好適な溶液を製造することができるとともに、燃料電池として好適な固体電解質フィルムを製造することができる。フィルムの製造に好適な溶液とは、例えば、粘度が比較的低く、ろ過により異物を予め除去しやすい溶液である。なお、得られる溶液を、以下の説明ではドープと称することとする。
【0041】
ドープの溶媒としては、固体電解質としてのポリマーを溶解させることができる有機化合物であればよい。例としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)、及び窒素を含有する化合物(N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)など)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。なお、溶媒は、複数の物質を混合した混合物であってもよい。
【0042】
ドープの溶媒は、複数の物質を混合した混合物であってもよい。溶媒を混合物とする場合には、固体電解質の良溶媒と貧溶媒との混合物とすることが好ましい。化3の構造を有する固体電解質フィルムをつくる場合にプロトン化をフィルム製造工程で実施する場合には、前駆体の良溶媒と貧溶媒との混合物を溶媒として使うとよい。固体電解質が全重量の5重量%となるように溶剤と固体電解質とを混合して、不溶解物の有無により、使用した溶剤がその固体電解質の貧溶媒であるか良溶媒であるかを判断することができる。固体電解質の良溶媒、つまり固体電解質を溶解する物質は、溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的高い方であり、一方、貧溶媒は溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的低い方である。したがって、貧溶媒を良溶媒に混合することにより、フィルム製造工程における溶媒除去の効率及び効果を高めることができ、特に、流延膜の乾燥効率について大きく向上することができる。
【0043】
良溶媒と貧溶媒との混合物においては、貧溶媒の重量比率が大きいほど好ましく、具体的には10%以上100%未満であること好ましい。より好ましくは、(良溶媒の重量):(貧溶媒の重量)が90:10〜10:90であることが好ましい。これにより、全溶媒の重量における低沸点成分の割合が大きくなるので、固体電解質フィルムの製造工程における乾燥効率及び乾燥効果をより向上させることができる。
【0044】
良溶媒成分としてはDMF、DMAc、DMSO、NMPが好ましく、中でも、安全性や沸点が比較的低いという点からDMSOが特に好ましい。貧溶媒成分としては、炭素数が1以上5以下であるいわゆる低級アルコール、酢酸メチル、アセトンが好ましく、中でも炭素数が1以上3以下の低級アルコールがより好ましく、良溶媒としてDMSOを用いた場合にはこれとの相溶性が最も優れる点からメチルアルコールが特に好ましい。
【0045】
固体電解質をフィルムとしたときの各種フィルム特性を向上させるためには、添加剤をドープに加えることができる。添加剤としては、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等が挙げられる。これら添加剤の添加率は、ドープ中の固形分全体を100重量%としたときに1重量%以上30重量%以下の範囲とすることが好ましい。ただし、添加率及び物質の種類は、イオン伝導性に悪影響を与えないものとする。以下に添加剤について具体的に説明する。
【0046】
酸化防止剤としては、(ヒンダード)フェノール系、一価または二価のイオウ系、三価のリン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、サリチレート系、オキザリックアシッドアニリド系の各化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には特開平8−53614号公報、特開平10−101873号公報、特開平11−114430号公報、特開2003−151346号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0047】
繊維としては、パーフルオロカーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平10−312815号公報、特開2000−231938号公報、特開2001−307545号公報、特開2003−317748号公報、特開2004−63430号公報、特開2004−107461号の各公報に記載の繊維が挙げられる。
【0048】
微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−178777号、特開2004−217931号の各公報に記載の各種微粒子が挙げられる。
【0049】
吸水剤、つまり親水性物質としては、架橋ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩、ポバール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールジアルキルエーテル、ポリグリコールジアルキルエステル、合成ゼオライト、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルが好ましい例として挙げられ、具体的には特開平7−135003号、特開平8−20716号、特開平9351857号の各公報に記載の吸水剤が挙げられる。
【0050】
可塑剤としては、リン酸エステル系化合物、塩素化パラフィン、アルキルナフタレン系化合物、スルホンアルキルアミド系化合物、オリゴエーテル類、芳香族ニトリル類が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−288916号、特開2003−317539号の各公報に記載の可塑剤が挙げられる。
【0051】
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上の物が好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
【0052】
ドープにはさらに、(1)フィルムの機械的強度を高める目的、(2)膜中の酸濃度を高める目的で、種々のポリマーを含有させてもよい。
【0053】
上記の目的のうち(1)には、分子量が10000〜1000000程度であり、固体電解質と相溶性のよいポリマーが適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらのうち2以上のポリマーの繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。また、フィルムとしたときの全重量に対し1〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。なお、相溶剤を用いることにより固体電解質との相溶性を向上させてもよい。相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上であるものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
【0054】
上記目的のうち(2)には、プトロン酸部位を有するポリマー等が好ましい。このようなポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するスルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子化合物のスルホン化物等を例示することができる。また、フィルムとしたときの全重量に対し1〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。
【0055】
さらに、得られる固体電解質フィルムを燃料電池に用いる場合には、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒をドープに添加してもよい。これにより、固体電解質フィルムの中に一方の極から浸透した燃料が他方の極に到達することなく固体電解質中で消費されるので、クロスオーバー現象を防止することができる。活性金属触媒は、電極触媒として機能するものであれば特に限定されないが、白金または白金を基にした合金が特に適している。
【0056】
[ドープ製造]
図1にドープ製造設備を示す。ただし、本発明はここに示すドープ製造装置及び方法に限定されない。ドープ製造設備10は、溶媒を貯留するための溶媒タンク11と、固体電解質を供給するためのホッパ12と、添加剤を貯留するための添加剤タンク15と、溶媒と固体電解質と添加剤とを混合して混合液16とする混合タンク17と、混合液16を加熱するための加熱装置18と、加熱された混合液16の温度を調整するための温度調整器21と、温度調整器21を出た混合液16をろ過するろ過装置22と、ろ過装置22からのドープ24の濃度を調整するためのフラッシュ装置26と、濃度調整されたドープ24をろ過するためのろ過装置27とを備える。そしてドープ製造設備10には、さらに、溶媒を回収するための回収装置28と、回収された溶媒を再生するための再生装置29とが備えられている。そして、このドープ製造設備10は、ストックタンク32を介してフィルム製造設備33に接続されている。なお、送液量を調節するためのバルブ36〜38と、送液用のポンプ41,42とがドープ製造設備10には設けられているが、これらが配される位置及び数の増減については適宜変更される。
【0057】
ドープ製造設備10を用いるときにはドープ24は以下の方法で製造される。バルブ37を開とすることにより、溶媒は溶媒タンク11から混合タンク17に送られる。次に、固体電解質がホッパ12から混合タンク17に送り込まれる。このとき、固体電解質は、計量と送出とを連続的に行う送出手段により混合タンク17に連続的に送りこまれてもよいし、計量して所定量を送出するような送出手段により混合タンク17に断続的に送り込まれてもよい。また、添加剤溶液は、バルブ36の開閉操作により必要量が添加剤タンク15から混合タンク17に送り込まれる。
【0058】
添加剤は、溶液として送り込む方法の他に、例えば添加剤が常温で液体である場合には、その液体状態のままで混合タンク17に送り込むことができる。また、添加剤が固体の場合には、ホッパ等を用いて混合タンク17に送り込む方法も可能である。添加剤を複数種類添加する場合には、添加剤タンク15の中に複数種類の添加剤を溶解させた溶液を入れておくこともできる。または、複数の添加剤タンクを用いて、それぞれに添加剤が溶解している溶液を入れ、それぞれ独立した配管により混合タンク17に送り込むこともできる。
【0059】
前述した説明においては、混合タンク17に入れる順番が、溶媒、固体電解質、添加剤であったが、この順番に限定されるものではない。例えば、固体電解質を混合タンク17に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することもできる。また、添加剤は必ずしも混合タンク17で固体電解質と溶媒と混合することに限定されず、後の工程で固体電解質と溶媒との混合物にインライン混合方式等で混合されてもよい。
【0060】
混合タンク17には、その外表を包み込み、混合タンク17との間に伝熱媒体が供給されるジャケット46と、モータ47により回転する第1攪拌機48と、モータ51により回転する第2攪拌機52が取り付けられていることが好ましい。混合タンク17は、ジャケット46の内側に流れ込む伝熱媒体により温度調整され、その好ましい温度範囲は−10℃〜55℃の範囲である。第1攪拌機48,第2攪拌機52のタイプを適宜選択して使用することにより、固体電解質が溶媒により膨潤した混合液16を得る。第1攪拌機48は、アンカー翼を有するものであることが好ましく、第2攪拌機52は、ディゾルバータイプの偏芯型攪拌機であることが好ましい。
【0061】
次に、混合液16は、ポンプ41により加熱装置18に送られる。加熱装置18は、管本体(図示せず)とこの管本体との間に伝熱媒体を通すためのジャケットとを有するジャケット付き管であることが好ましく、さらに、混合液16を加圧する加圧部(図示せず)を有することが好ましい。このような加熱装置18を用いることにより、加熱条件下または加圧加熱条件下で混合液16中の固形分を効果的かつ効率的に溶解させることができる。以下、このように加熱により固形成分を溶媒に溶解する方法を加熱溶解法と称する。加熱溶解法においては、混合液16を60℃〜250℃となるように加熱することが好ましい。
【0062】
なお、加熱溶解法に代えて冷却溶解法により固形成分を溶媒に溶解させてもよい。冷却溶解法とは、混合液16を温度保持した状態またはさらに低温となるように冷却しながら溶解を進める方法である。冷却溶解法では、混合液16を−100℃〜−10℃の温度に冷却することが好ましい。以上のような加熱溶解法または冷却溶解法により固体電解質を溶媒に十分溶解させることが可能となる。
【0063】
混合液16を温度調整器21により略室温とした後に、ろ過装置22によりろ過して不純物や凝集物等の異物を取り除きドープ24とする。ろ過装置22に使用されるフィルタは、その平均孔径が50μm以下であることが好ましい。
【0064】
ろ過後のドープ24は、バルブ38によりストックタンク32に送られて一旦貯留された後、フィルムの製造に用いられる。
【0065】
ところで、上記のように、固形成分を一旦膨潤させてから、溶解して溶液とする方法は、固体電解質の溶液における濃度を上昇させる場合ほど、ドープ製造に要する時間が長くなり、製造効率の点で問題となる場合がある。そのような場合には、目的とする濃度よりも低濃度のドープを一旦つくり、その後に目的の濃度とする濃縮工程を実施することが好ましい。例えば、バルブ38により、ろ過装置22でろ過されたドープ24をフラッシュ装置26に送り、このフラッシュ装置26でドープ24の溶媒の一部を蒸発させることによりドープ24を濃縮することができる。濃縮されたドープ24はポンプ42によりフラッシュ装置26から抜き出されてろ過装置27へ送られる。ろ過の際のドープ24の温度は、0℃〜200℃であることが好ましい。ろ過装置27で異物を除去されたドープ24は、ストックタンク32へ送られ一旦貯留されてからフィルム製造に用いられる。なお、濃縮されたドープ24には気泡が含まれていることがあるので、ろ過装置27に送る前に予め泡抜き処理を実施することが好ましい。泡抜き方法としては、例えばドープ24に超音波を照射する超音波照射法等の、公知の種々の方法が適用される。
【0066】
また、フラッシュ装置26でのフラッシュ蒸発により発生した溶媒ガスは、凝縮器(図示せず)を備える回収装置28により凝縮されて液体となり回収される。回収された溶媒は、再生装置29によりドープ製造用の溶媒として再生されて再利用される。このような回収及び再生利用により、製造コストの点での利点があるとともに、閉鎖系で実施されるために人体及び環境への悪影響を防ぐ効果がある。
【0067】
以上の製造方法により、固体電解質濃度または前駆体濃度が5重量%以上50重量%以下であるドープ24を製造することができる。固体電解質濃度または前駆体濃度は10重量%以上40重量%以下の範囲とすることがより好ましい。また、添加剤の濃度は、ドープ中の固形分全体を100重量%とすると1重量%以上30重量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0068】
[フィルム製造]
固体電解質フィルムを製造する方法を説明する。図2はフィルム製造設備33の概略図である。ただし、本発明は、ここに示すようなフィルム製造方法及び設備に限定されるものではない。フィルム製造設備33には、ストックタンク32から送られてくるドープ24から異物を除去するろ過装置61と、このろ過装置61でろ過されたドープ24を流延して固体電解質フィルム(以下、単にフィルムと称する)62とする流延室63と、フィルム62の両側端部を保持してフィルム62を搬送しながら乾燥するテンタ64と、フィルム62の両側端部を切り離す耳切装置67と、フィルム62を液に浸漬する第1液浴槽65、及び第2液浴槽66と、フィルム62を複数のローラ68に掛け渡して搬送しながら乾燥する乾燥室69と、フィルム62を冷却するための冷却室71と、フィルム62の帯電量を減らすための除電装置72と、側端部にエンボス加工を施すナーリング付与ローラ対73と、フィルム62を巻き取る巻取室76とが備えられる。
【0069】
ストックタンク32には、モータ77で回転する攪拌機78が取り付けられており、撹拌によりドープ24の固形分の析出や凝集が抑制される。そしてこのストックタンク32はポンプ80を介してろ過装置61と接続する。ろ過装置61に使用されるフィルタは、その平均孔径が10μm以下であるものが好ましい。これにより、プロトン伝導性の初期性能の悪化及びプロトン伝導性の経時劣化の要因となる不純物がフィルムに混入することを防ぐことができる。なお、不溶解物等の不純物の有無は、ストックタンク32からサンプリングしたドープに蛍光灯で光を照らすことにより目視で評価することができる。
【0070】
流延室63には、ドープ24を流出する流延ダイ81と、走行する支持体としての流延バンド82とを備える。流延ダイ81の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率は2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有し、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じないような耐腐食性を有するものが好ましい。なお、流延ダイ81は、鋳造後1ヶ月以上経過した素材を研削加工することにより作製されることが好ましく、これにより、流延ダイ81の内部をドープ24が一様に流れ、後述する流延膜24aにスジなどが生じることが防止される。流延ダイ81のドープ24と接するいわゆる接液面は、その仕上げ精度が表面粗さで1μm以下、真直度がいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ81のスリットのクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされている。流延ダイ81のリップ先端の接液部の角部分について、その面取り半径Rは、流延ダイ81の全巾にわたり一定かつ50μm以下とされている。流延ダイ81はコートハンガー型のダイが好ましい。
【0071】
流延ダイ81の幅は特に限定されるものではないが、最終製品となるフィルム62の幅の1.1倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、製膜の際のドープ24の温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ81の温度を制御する温度コントローラが流延ダイ81に取り付けられることが好ましい。さらに、流延ダイ81には、幅方向に所定の間隔で複数備えられた厚み調整ボルト(ヒートボルト)と、このヒートボルトによりスリットの隙間を調整する自動厚み調整機構が備えられることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)81の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。ドープの送り量を精緻に制御するために、ポンプ80は高精度ギアポンプであることが好ましい。また、フィルム製造設備33中には、例えば赤外線厚み計のような厚み測定機を設け、厚みプロファイルに基づく調整プログラムと厚み測定機による検知結果とにより、自動厚み調整機構へのフィードバック制御を行ってもよい。製品としてのフィルム62の両側端を除く任意の2つの位置での厚み差が1μm以内となるように、先端リップのスリット間隔を±50μm以下に調整できる流延ダイ81を用いることが好ましい。
【0072】
流延ダイ81のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムメッキ、窒化処理方法などが挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削することができ気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつドープ24との親和性や密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)、Al、TiN、Crなどが挙げられるが、中でも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
【0073】
ドープ24が流延ダイ81のリップ先端で局所的に乾燥固化することを防止するために、リップ先端に溶媒を供給するための溶媒供給装置(図示しない)をリップ先端近傍に取り付けることが好ましい。溶媒が供給される位置は、流延ビードの両端部とリップ先端の両端部と外気とにより形成される三相接触線の周辺部が好ましい。供給される溶媒の流量は、片側それぞれに対し0.1mL/分〜1.0mL/分とすることが好ましい。これにより、異物、例えばドープ24から析出した固形成分や外部から流延ビードに混入したものが流延膜24a中に混合してしまうことを防止することができる。なお、溶媒を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0074】
流延ダイ81の下方の流延バンド82は、回転ローラ85,86に掛け渡され、少なくともいずれか一方の回転ローラの駆動回転により連続的に搬送される。
【0075】
流延バンド82の幅は特に限定されるものではないが、ドープ24の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。
【0076】
流延バンド82としては、特に限定されるものでないが、ドープ中の有機溶媒に溶解しないプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの不織布のプラスチックフィルムが挙げられる。使用する溶剤、製膜温度に対応できるような化学的安定性と耐熱性とをもつ長尺物であることが好ましい。なお、流延バンド82として、ステンレスからなる長尺の支持体を用いても良い。
【0077】
回転ローラ85,86には、伝熱媒体を回転ローラ85,86に供給してローラの表面温度を制御する伝熱媒体循環装置87が取り付けられていることが好ましく、これにより流延バンド82の表面温度を所定の値にする。本実施形態では、回転ローラ85,86に伝熱媒体流路(図示せず)が形成されており、その流路中を、所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラ85,86の温度が所定の値に保持されるものとなっている。流延バンド82の表面温度は、溶媒の種類、固形成分の種類、ドープ24の濃度等に応じて適宜設定する。
【0078】
回転ローラ85,86、及び流延バンド82に代えて回転ドラム(図示せず)を支持体として用いることもできる。この場合には、回転速度ムラが0.2%以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。回転ドラムは、表面の平均粗さが0.01μm以下であることが好ましく、表面がハードクロムメッキ処理等を施されているものが好ましい。これにより、十分な硬度と耐久性とを向上させることができる。なお、回転ドラム、流延バンド82、回転ローラ85,86は、表面欠陥が最小限に抑制されていることが好ましい。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m以下であることが好ましい。
【0079】
流延ダイ81の近傍には、流延ダイ81から流延バンド82にかけて形成される流延ビードの流延バンド82走行方向における上流側を圧力制御するために減圧チャンバ90が備えられることが好ましい。
【0080】
バンド53の近傍には、流延膜24aの溶媒を蒸発させるために風を吹き付ける送風ダクト91〜93と,流延膜24aの形状を乱すような風が流延膜24aにあたることを抑制するための遮風板94とが備えられる。
【0081】
流延室63には、その内部温度を所定の値に保つための温調装置97と、揮発している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)98とが設けられる。そして、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置99が流延室63の外部に設けられている。
【0082】
流延室63の下流から冷却室71まで、つまり図2における二点破線の範囲は、フィルム62を乾燥するため乾燥エリア100である。この乾燥エリア100の最上流部、つまり流延室63からテンタ64に至る渡り部101には、送風機102が備えられる。渡り部101を通過したフィルム62は、テンタ64で、テンタクリップ64aやピンなどの把持部材により両側端部が保持され、幅方向で延伸が行われる。また、テンタ64内には乾燥風が導入され、これにより、フィルム62は乾燥される。なお、テンタ64の内部を異なった温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。テンタ64を出たフィルム62は、耳切装置67に送られる。耳切装置67には、切り取られたフィルム62の側端部屑を細かく切断処理するためのクラッシャ103が備えられる。
【0083】
両側端部を切断除去されたフィルム62は、第1液浴槽65及び第2液浴槽66にガイドローラ65b,65c,66b,66cを介して順に送られる。第1液浴槽65には、第1液65aが入れられている。この第1液65aとしては、前記ドープ24の溶媒に可溶で、かつ、この溶媒よりも低沸点であり、さらにポリマーを溶かさない液が用いられる。この液は、他の液を含んだ混合液であってもよい。第1液浴槽65の液温は10〜150℃に調整可能であることが好ましい。
【0084】
第2液浴槽66には、第2液66aが入れられている。この第2液66aとしては、第1液65aと同様な液が用いられ、第1液65aと同様に混合液であってもよい。さらに、第2液66aとしては、第1液浴槽65で用いた液よりも低沸点のものを用いることが好ましい。第2液浴槽66の液温度は10〜150℃に調整可能であることが好ましい。なお、第1液浴槽65,第2液浴槽66の位置はこの位置に限定されない。乾燥エリア100のうち、乾燥室69の直前以外の場所に第1液浴槽65,第2液浴槽66を配したときには、例えば第2液浴槽66の直後に、乾燥手段としての乾燥室等を設けてもよい。
【0085】
乾燥室69には、フィルム62から蒸発して発生した溶媒ガスを吸着回収するための吸着回収装置106が取り付けられている。そして、図2においては乾燥室69の下流に冷却室71が設けられているが、乾燥室69と冷却室71との間にフィルム62の含水量を調整するための調湿室(図示しない)を設けてもよい。除電装置72は、除電バー等の強制除電装置であり、フィルム62の帯電圧を所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように調整できるものである。除電装置72については、冷却室71の下流側に配される例を図示しているが、この設置位置に限定されるものではない。ナーリング付与ローラ対73は、フィルム62の両側端部にエンボス加工でナーリングを付与するものである。巻取室76の内部には、フィルム62を巻き取るための巻取ロール107と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ108とが備えられている。
【0086】
次に、以上のようなフィルム製造設備33を使用してフィルム62を製造する方法の一例を以下に説明する。ドープ24は、攪拌機78の回転により常に均一化されている。ドープ24には、この攪拌の際にも各種添加剤を適宜混合させることもできる。
【0087】
ドープ24はストックタンク32に送られて、流延に供されるまで固形分の析出や凝集が撹拌により抑制される。そして、ろ過装置61でのろ過により、所定粒径以上のサイズの異物やゲル状の異物が取り除かれる。
【0088】
そしてドープ24は、流延ダイ81から流延バンド82に流延される。流延バンド82に生じるテンションが10N/m×10N/mとなるように、回転ローラ85と回転ローラ86との相対位置、及び少なくともいずれか一方の回転速度が調整される。また、流延バンド82と回転ローラ85,86との相対速度差は、0.01m/min以下となるようにされる。流延バンド82の速度変動を0.5%以下とし、流延バンド82が一周する際に生じる幅方向における蛇行は1.5mm以下とされることが好ましい。この蛇行を抑制するために、流延バンド82の両端の位置を検出する検出器(図示しない)とこの検出器による検出データに応じて流延バンド82の位置を調整する位置調整機(図示なし)とを設けて、流延バンド82の位置をフィードバック制御することがより好ましい。さらに、流延ダイ81直下における流延バンド82について、回転ローラ85の回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以内となるようにすることが好ましい。また、流延室63の温度は、温調装置97により−10℃〜57℃とされることが好ましい。なお、流延室63の内部で蒸発した溶媒は回収装置99により回収された後、再生させてドープ製造用の溶媒として再利用される。
【0089】
流延ダイ81から流延バンド82にかけては流延ビードが形成され、流延バンド82上には流延膜24aが形成される。流延ビードの様態を安定させるために、このビードに関し上流側のエリアが所定の圧力値となるように減圧チャンバ90で制御されることが好ましい。減圧値は、ビードに関し下流側のエリアよりも−2500Pa〜−10Paとすることが好ましい。なお、減圧チャンバ90にジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つようにすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために、流延ダイ81のエッジ部に吸引装置(図示せず)を取り付けてビードの両側を吸引することが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/min.〜100L/min.の範囲であることが好ましい。
【0090】
流延膜24aは、自己支持性をもつようになった後に、剥取ローラ109で支持されながら流延バンド82から剥ぎ取られる。剥ぎ取られたときのフィルム62は溶媒を含んだ状態となっている。このフィルム62は、複数のローラに支持されて渡り部101を搬送された後に、テンタ64に送られる。渡り部101では、下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度よりも速くすることにより、フィルム62にドローテンションを付与させることが可能である。また、渡り部101では、送風機102から所望の温度の乾燥風がフィルム62近傍に送られ、またはフィルム62に直接吹き付けられ、フィルム62の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。
【0091】
テンタ64に送られたフィルム62は、その両端部がクリップ64a等の保持手段により把持されて搬送されながら乾燥される。クリップに代えてピンとし、ピンによりフィルムを突き刺して保持してもよい。また、テンタ64の内部を異なった温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。なお、テンタ64では、フィルム62を幅方向に延伸させることが可能とされている。このように、渡り部101とテンタ64との少なくともいずれかひとつにおいては、フィルム62の流延方向と幅方向との少なくとも1方向を、延伸前の寸法に対し100.5%〜300%の寸法となるように延伸することが好ましい。
【0092】
フィルム62は、テンタ64で所定の残留溶媒量まで乾燥された後、その両側端部が耳切装置67により切断除去される。切り離された両側端部はカッターブロワ(図示なし)によりクラッシャ103に送られる。クラッシャ103により、側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ製造用に再利用されるので、原料の有効利用を図ることができる。なお、この両側端部の切断工程については省略することもできるが、前記流延工程から前記フィルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
【0093】
一方、両側端部を切断除去されたフィルム62は、乾燥室69に送られ、さらに乾燥される。乾燥室69の内部温度は、特に限定されるものではないが、固体電解質の耐熱性(ガラス転移点Tg、熱変形温度、融点Tm、連続使用温度等)に応じて決定され、Tg以下とすることが好ましい。フィルム62の残留溶媒量が5重量%未満になるまで乾燥することが好ましい。乾燥室69では、フィルム62はローラ68に巻き掛けられながら搬送され、ここで蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置106により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室69の内部に乾燥風として再度送られる。なお、乾燥室69は、送風温度を変えるために複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置67と乾燥室69との間に予備乾燥室(図示せず)を設けてフィルム62を予備乾燥すると、乾燥室69でフィルム温度が急激に上昇することが防止されるので、乾燥室69でのフィルム62の形状変化を抑制することができる。
【0094】
フィルム62は、冷却室71で略室温にまで冷却される。なお、乾燥室69と冷却室71との間に調湿室を設ける場合には、調湿室では所望の湿度及び温度に調整された空気をフィルム62に吹き付けることが好ましい。これにより、フィルム62のカールの発生や巻き取る際の巻き取り不良を抑制することができる。
【0095】
溶液製膜方法では、支持体から剥ぎ取られたフィルム(固体電解質フィルム)を巻き取るまでの間に、乾燥工程や側端部の切除除去工程などの様々な工程が行われている。これらの各工程内、あるいは各工程間では、フィルムは主にローラにより支持または搬送されている。これらのローラには、駆動ローラと非駆動ローラとがあり、非駆動ローラは、主に、フィルムの搬送路を決定するとともに搬送安定性を向上させるために使用される。
【0096】
除電装置72により、フィルム62が搬送されている間の帯電圧を所定の値とする。除電後の帯電圧は−3kV〜+3kVとされることが好ましい。さらに、フィルム62は、ナーリング付与ローラ対73によりナーリングが付与されることが好ましい。なお、ナーリングされた箇所の凹凸の高さが1μm〜200μmであることが好ましい。
【0097】
フィルム62は、巻取室76の巻取ロール107で巻き取られる。プレスローラ108で所望のテンションをフィルム62に付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましく、これによりフィルムロールにおける過度な巻き締めを防止することができる。巻き取られるフィルム62の幅は100mm以上であることが好ましい。また、本発明は、フィルムの厚みが5μm以上300μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用され、10μm〜200μmの厚みのフィルムを製造する場合に特に有効である。
【0098】
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。フィルム製造設備33aでは、前述の流延バンド82の代わりに、搬送ドラム110上に巻き掛けられて走行するプラスチックフィルム(以下、単に支持フィルムという)111を流延用の支持体とする。支持フィルム111は、ロール形態で送出機112に装填されており、この送出機112から支持フィルム111が搬送ドラム110に送り出される。搬送ドラム110の上方には、支持フィルム111に接近して流延ダイ81がセットされている。流延ダイ81からは走行中の支持フィルム111の表面上にドープ24が流延され、流延膜24aが形成される。なお、ドープ24及び流延ダイ81については第1実施形態のものと同じであり、同一符号を付してその説明を省略している。
【0099】
支持フィルム111の走行路に沿って、液膜乾燥装置113が設けられている。液膜乾燥装置113は乾燥部114から構成されている。乾燥部114は、吹き出し口116a及び排気口116bを有するダクト116に、送風機、ヒータ、外気導入口などを備えており、前記吹き出し口116aから乾燥風117を支持フィルム111の走行路に平行に、且つ支持フィルム111の走行方向に向けて、送り出す。このようにして、流延膜24aに乾燥風があてられることにより、溶媒の蒸発が促進される。乾燥風を使用する液膜乾燥装置113の場合には、流延ダイ81と吹き出し口116aとの間には遮風板118が必要となる。この遮風板118によって、乾燥風117の吹き付けによる流延膜24aの面状の変動が抑えられ、厚みムラの少ないフィルムが得られるようになる。これら流延ダイ81、搬送ドラム110、液膜乾燥装置113の吹き出し口116a、排気口116bなどは流延室119内に設けられる。
【0100】
流延膜24aから一定量の溶媒が蒸発し、一定量の非溶媒蒸気を吸収するように調整する方法としては、上記のような乾燥風の供給に代えて、例えば、流延ダイ81から第1液浴槽120までの支持フィルム111の走行路にカバーを設けて、流延後に第1液浴槽120に浸漬するまでの時間を調整したり、この雰囲気の溶媒蒸気圧、非溶媒蒸気圧、温度並びに送風、排風速度を調整したりするなどの方法を採用してもよい。また、乾燥方式は上記乾燥風に代えて、または加えて、赤外線照射、減圧乾燥、遠赤外線による乾燥、マイクロ波による乾燥等を使用してもよい。
【0101】
前記支持フィルム111としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの不織布のプラスチックフィルムが挙げられる。使用する溶剤、製膜温度に応じて、化学的安定性、耐熱性を有することが好ましい。なお、本実施形態では、支持フィルム111としてPETフィルムを用いている。
【0102】
前記支持フィルム111の移動速度、すなわち流延速度は、0.5m/分〜100m/分の範囲内が好ましい。なお、支持フィルム111の表面温度は用いる材質に応じて適宜決定され、その表面温度が−20℃〜100℃に調整される。表面温度を調節は、搬送ドラム110内に伝熱媒体流路(図示しない)を形成し、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体を通過させることにより行う。また、回転時、搬送ドラム110の偏芯による搬送ドラム110の上下変動量は、0.2mm以下に抑えられることが好ましい。また、支持フィルム111の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m以下であることが好ましい。
【0103】
第1及び第2液浴槽120,121は、上記第1実施形態と同様に構成され、それぞれ第1液65a及び第2液65bが貯留される。第1液浴槽120を出た支持フィルム111の流延膜は自己支持性を備えており、第1液浴槽120の出口に設けたガイドローラ122及び剥ぎ取りローラ123により、支持フィルム111から流延膜24aが剥ぎ取られ、フィルム124となる。このフィルム124はガイドローラ121bにより第2液浴槽121に浸漬される。この第1液浴槽120で溶媒置換を行うことで流延膜24a中の溶媒を低減させ、次工程での乾燥室69におけるフィルム乾燥を促進させることができる。また、第2液浴槽121で処理し、連続して溶媒置換を行うことで、より一層フィルム乾燥を促進することができる。第2液浴槽121を出たフィルム124は、乾燥室69により乾燥された後に、巻取機76でロール形態に巻き取られる。
【0104】
支持フィルム111から剥離するときのフィルム124の残留溶媒量は、固形分基準で200重量%〜950重量%であることが好ましい。なお、液浴槽121に浸漬させる前のプレ乾燥として、図2に示す第1実施形態でのテンタ64又はロール搬送による乾燥室69を用いてもよい。例えば、テンタ64により支持フィルム111と一緒に流延膜24aを乾燥させた後、ロール搬送による乾燥室69で乾燥させても良いし、本発明はこの順番に限定されるものではない。また、テンタ64の設置場所は上記実施形態のものに限定されない。例えば、支持体からフィルムを剥離した後に、フィルムを巻き取るまでの間で適宜変更してよい。
【0105】
フィルム124が剥離された後の支持フィルム111は支持フィルム巻取り機125によりロール状に巻き取られる。支持フィルムを連続的に供給するためには、ターレット方式のフィルム送出機及び巻取り機とすることが好ましい。なお、この第2実施形態において、フィルム送出機及び巻取り機に代えて、単にガイドローラを設けてもよく、この場合には支持フィルム111をエンドレス状にして、循環して使用してもよい。この場合には、ガイドローラの間に面検査機を設けて、支持フィルムの表面の荒れ具合を検査し、ピンホールの個数やサイズが所定値を超えたときに、新たな支持フィルム111を供給する。支持フィルム111の供給は、古い支持フィルム111を切断してこれに新しい支持フィルム111を接合し、新しい支持フィルム111が一巡した後に古い支持フィルム111を切り離して、新しい支持フィルム111同士を接合して、エンドレス状にする。また、フィルム124同士の接着防止、フィルム124の表面の保護のために、流延膜24aを剥離することなく、支持フィルム111上にあるままで、全工程を通し、そのままの状態で巻き取ってもよい。この場合には、後に説明するように、燃料電池などを製造する際に、支持フィルム111から流延膜24aを剥がすようにする。
【0106】
次に、最も好ましい実施形態である第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態であるフィルム製造設備33bの概略図である。フィルム製造設備33bは、図2における流延バンド82に代えて支持フィルム111を流延用の支持体として備える。このフィルム製造設備33bを用いた製造方法では、支持フィルム111上に形成された流延膜24aを第1液65aに接触させた後に、フィルムとして剥ぎ取る。なお、フィルム製造設備33bを構成する各装置及び部材について、図2及び図3と同じ装置及び部材については、図2及び図3と同じ符号を付し、説明は略す。
【0107】
第2実施形態と同様に、支持フィルム111はロール形態で送出機112に装填されている。流延室63には、支持フィルム111を支持するための支持バンド400が設けられる。この支持バンド400は、ドラム401a、401bに掛け渡され、支持フィルム111を流延室63で案内する。そして、支持フィルム111は、送出機112により支持バンド400に送り出されると、流延室63の内部を走行して、流延室63の外部へと案内される。なお、支持フィルム111を支持する手段としては、支持バンド400に代えて前述した搬送ドラム110を用いても良い。
【0108】
流延室63の搬送路の近傍には、流延ダイ81が配される。流延ダイ81からは走行中の支持フィルム111の表面上にドープ24が流延され、支持フィルム111の表面上に流延膜24aが形成される。搬送路の近傍、流延ダイ81の下流側には、第1実施形態と同様に、送風ダクト91〜93や遮風板94が順次設けられている。こうして、支持フィルム111により搬送される間の流延膜24aは、送風ダクト91〜93から乾燥風を供給することにより乾燥される。
【0109】
所定の残留溶媒量になるまで乾燥された流延膜24aは、支持フィルム111と共に、流延室63の外部へ案内される。流延室63の外部の下流側には、支持フィルム巻取り機125が配され、ガイドローラにより案内された支持フィルム111は支持フィルム巻取り機125に巻き取られる。
【0110】
流延室63と支持フィルム巻取り機125との間には、ガイドローラ405bが備えられるとともに第1液65aが貯留される第1液浴槽405と、第1水切り手段415と、剥取ローラ123とが順次配されている。巻き取り機125及びガイドローラ405bにより、流延室63から送り出された流延膜24aは、支持フィルム111に支持されたまま、第1液65aに接触し、この後に第1液65aから送り出されて、第1水切り手段415へと案内される。
【0111】
支持フィルム111の上の流延膜24aは、第1水切り手段415によって水切りされる。第1水切り手段415としては、例えば、ブレード、エアナイフ、或いはロール等が挙げられる。
【0112】
第1水切り手段415の中ではエアナイフが最も水切り効果が高いので好ましい。エアナイフを用いる場合には、流延膜24aに向かって送り出されるエアの風量と風圧とを調整することにより、流延膜24aの表面に残存する水分の量をゼロに近づけることができる。ただし、エアの風量が大きすぎると、流延膜24aにばたつきや寄り等が生じて、その搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、エアの風量は10〜500m/秒であることが好ましい。より好ましくは、風量が20〜300m/秒であり、特に好ましくは30〜200m/秒である。なお、上記のエアの風量は、特に限定されるものではなく、流延膜24a上に元々あった水分の量や流延膜24aの搬送速度等により適宜決定すれば良い。
【0113】
流延膜24aの水分を均一に除去するために、エアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気条件を調整することにより、流延膜24aの幅方向における風速のばらつきを、通常は10%以内、好ましくは5%以内とすることが好ましい。また、流延膜24aとエアナイフの吹出し口との間隙が狭い方ほど、水切り能は高くなるが、エアナイフの吹き出し口が流延膜24aと接触してその表面に傷を付ける可能性も高くなるために、その間隔を10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmとすることが好ましい。さらに、エアナイフと対向する様に、流延膜24aの洗浄面と反対側にバックアップロールを設置して流延膜24aを支持することにより、この距離の設定をしやすくなるとともに、流延膜24aのバタツキや、シワ、変形などの発生を抑制することができるために好ましい。
【0114】
第1水切り手段415を通過した流延膜24aは、剥取ローラ123へと案内される。剥取ローラ123は、流延膜24aを支持フィルム111からフィルム410として剥ぎ取り、フィルム410をテンタ64へ案内する。テンタ64では、所定の残留溶媒量になるまでフィルム410が乾燥される。テンタ64を通過したフィルム410は、耳切装置67に送られる。
【0115】
第2液66aが貯留される第2液浴槽420には、ガイドローラ420bが備えられる。耳切装置67により両側端部を切断除去されたフィルム410は、ガイドローラ420bにより第2液浴槽420に案内されて、第2液66aへ浸漬し、第2液66aから送り出される。このようにフィルム410を第2液66aに接触させることによりフィルム410の中の溶媒と第2液66aとを置換させる。第2液66aから送り出されたフィルム410は、第2水切り手段425へと案内される。この第2水切り手段425は第1水切り手段415と同様の構造を備え、フィルム410の水切りに利用される。第1水切り手段415を通過したフィルム410は、乾燥室69に案内される。乾燥室69には乾燥風が送り込まれており、この乾燥風によってフィルム410はロール搬送中に乾燥される。以上のように、フィルム410の中に含まれる溶媒を第1液65a及び第2液66aに置換することにより、テンタ64及び乾燥室69におけるフィルム410の乾燥、すなわち有機溶媒の除去に要する時間を短縮することが可能になる。また、第1液65a及び第2液66aに置換した後で、第1水切り手段415及び第2水切り手段425によりフィルム410の各水切りを行うことにより、フィルム410の乾燥を更に短い時間で実施ことができる。
【0116】
なお、上記のように本発明では、固体電解質の貧溶媒である液との接触による溶媒の置換を行う前に、流延膜或いはフィルムの乾燥を行っている。このように乾燥により溶媒含有量を少なくしてから流延膜或いはフィルムについて溶媒の置換を行うと、溶媒を他の液で置換するときに流延膜やフィルムにおける細孔が発生しにくくなるため、欠陥の少ない固体電解質フィルムを得ることが可能となる。
【0117】
なお、化3におけるXが水素原子を除くカチオン種であるポリマーつまり前駆体である場合には、さらに酸処理工程を実施しても良い。酸処理工程では、プロトン供与体である酸を含む溶液と前駆体フィルムとを接触させて、プロトン置換を行う。この前駆体フィルムにプロトン置換を施すことにより、前駆体から固体電解質が生成する。このようにして、固体電解質フィルムを製造することができる。なお、本明細書におけるプロトン置換とは、ポリマー中の水素原子以外のカチオン種を、水素原子に置換することである。
【0118】
前駆体フィルムについて高効率のプロトン置換を行うためには、前駆体フィルムの残留溶媒量が、乾量基準に対して1重量%以上100重量%以下であることが好ましい。残留溶媒量が乾量基準に対して1重量%以下まで乾燥を進めると乾燥時間が長くなり、好ましくなく、残留溶媒量が乾量基準に対して100重量%以上の前駆体フィルムに酸処理を行うと膜の空隙率が大きくなってしまい、好ましくない。
【0119】
また、プロトン置換後には、カチオン種と水素原子との置換に使用されずに残った酸を含む溶液をフィルムから除去するために、このフィルムを洗浄する洗浄工程を実施することが好ましい。洗浄工程を実施することにより、固体電解質フィルムを構成するポリマー等が酸により汚染されることを防止することができる。
【0120】
プロトン置換した後のフィルムを洗浄する方法としては、フィルムを水に浸漬させることが好ましい。ただし、必ずしも浸漬させる必要はなく、フィルムに水を接触させて酸を除去することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、固体電解質フィルムに対して水を塗布する方法や、フィルムの表面に向かって水を吹き付ける方法等が挙げられる。このように固体電解質フィルムに対して水を塗布したり、吹き付けたりする方法では、連続的にフィルムを搬送しながら実施することができるので、生産性を低下させることなく作業を行うことが可能となる。
【0121】
水を塗布する方法と吹き付ける方法との具体的例として、エクトルージョンコータあるいは、ファウンテンコータ、フロッグマウスコータ等の各種塗布ヘッドを用いる方法と、空気の加湿や塗装、タンクの自動洗浄などに利用されるスプレーノズルを用いる方法とが挙げられる。塗布方法に関しては、「コーティングのすべて」荒木正義編集、(株)加工技術研究会(1999年)にまとめられている。また、スプレーノズルを用いる場合には、(株)いけうち、スプレーイングシステムズ社の円錐状、扇状などのスプレーノズルをフィルムの幅方向に複数配することにより、フィルムの全幅に洗浄液をあてることができる。
【0122】
水を吹き付ける場合の吹き付け速度を大きくするほど高い乱流混合が得られるが、フィルムの搬送安定性を損なうこともあるので、その点で好ましい範囲がある。通常は、吹き付けるときの洗浄液の流速は50〜1000cm/秒とすることが好ましく、100〜700cm/秒とすることがより好ましく、100〜500cm/秒とすることがさらに好ましい。
【0123】
水の量は、少なくとも下記式(1)に定義される理論希釈率を上回る量を用いなければならない。すなわち、洗浄に使用される水の全てが酸溶液の希釈混合に寄与したという仮定の理論希釈率を定義する。実際には、完全混合は起こらないので、理論希釈率を上回る洗浄液121量を使用することとなる。用いた酸溶液の酸濃度や酸溶液の溶媒の種類にもよるが、少なくとも100〜1000倍、好ましくは500〜1万倍、さらに好ましくは1000〜十万倍の希釈が得られる程度の量の水を使用する。なお、下記の式(1)において、水及び酸溶液110の量は、フィルムの単位面積あたりに接触する各液量である。
理論希釈倍率=(洗浄液121の量[cc/m2 ])÷(酸溶液110の量[cc/m2]・・・(1)
【0124】
洗浄工程において、所定量の水をフィルムの所定面積に接触させる場合には、一度に全量の水を接触させるよりも、定量を数回に分けて接触させるいわゆる回分式洗浄が好ましい。すなわち、所定量の水を幾つかに分けて、フィルムの搬送路に沿って複数設置した洗浄手段に供給する。一の水洗手段と次の水洗手段との間には適当な距離を設けて、水を拡散させながら希釈を進行させる。さらに好ましくは、フィルムの搬送路を傾斜させて、フィルム上の水がフィルム上を流れる様にすれと、拡散に加えて、流動による希釈作用が得られる。洗浄手段と洗浄手段との間には、フィルム上の洗浄液を除去する液切り手段を設けることにより、さらに希釈効率を高めることができる。具体的な水切り手段としては、前述した第1水切り手段415、第2水切り手段425と同様のものを用いることができる。
【0125】
搬送路に沿って複数配された洗浄手段の数は、多いほうが有利であるが、設置スペースならびに設備コストの観点より、通常は搬送方向に沿って2〜10箇所、好ましくは2〜5箇所が好ましい。
【0126】
上記の酸処理工程及び洗浄工程は、流延膜を形成した後からフィルム製品を得るまでの間であれば、どのタイミングで行なっても良い。例えば、流延室とテンタとの間に、酸を含む溶液が入れられた第1タンクと、水が入れられた第2タンクとを設けて、乾燥を進行させた流延膜を第1タンクに送り込んだ後、続けて第2タンクの中に送り込むことにより、酸処理と洗浄処理とを行う方法が挙げられる。この場合、流延膜を支持する支持体ごと各タンクへ送り込んでも良いし、流延膜を支持体から剥ぎ取って得られるフィルムを各タンクへ送り込んでも良い。なお、洗浄処理を行った後の流延膜或いはフィルムは、水切り手段により水切りすることが好ましい。ここで用いることができる水切り手段は、前述した形態と同様のものを用いればよく、特に限定されるものではない。
【0127】
なお、上記実施形態では液浴槽を2つ設けたが、この設置個数は1個以上であればよい。また、2つの液浴槽を連続して設置したが、これらの間に乾燥工程等の別工程を設けてもよい。また、溶液接触工程は、液浴槽を用いたフィルム浸漬によるものの他に、スプレーや塗布、その他の手段によってフィルムに溶液を接触させてもよい。また、接触溶液を、単一溶媒または2種類以上の混合溶媒とすることにより、用いる有機溶媒に合わせた最適な接触溶液とすることができる。しかも、溶液接触工程を複数回行うことにより、より一層確実にフィルムから有機溶媒を除去することができる。
【0128】
本発明では、2種類以上のドープを共流延して、複層の固体電解質フィルムを製造することができる。共流延は、同時共流延方式でもよいし逐次共流延方式でもよい。同時共流延を行う際には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。
【0129】
同時積層共流延について説明する。図5は、同時共流延装置の概略図である。なお、図5において、図2と同じ部材については図2と同じ符号を付す。同時共流延装置111は、3層構造の流延膜112を形成するためのものである。したがって、この同時共流延装置111を用いた場合には、3層構造の固体電解質フィルムが得られる。しかし、各ドープ114〜116の処方によっては、3層の境界は必ずしも明確に認められるものではなく、その場合には見かけ上1層または2層の固体電解質フィルムが得られる。ここで、流延膜の2つの表面層うち、流延バンド86と接する一方を第1の表面層112aとし、外部へ露出する他方を第2の表面層112bとし、第1表面層112aと第2表面層112bとに挟まれて表面に露出しない層を内層112cと称する。
【0130】
第1ドープ114は流延バンド82に接するように流出されて第1表面層112a、第2ドープ115は内層112c、第3ドープ116は第2表面層112bをそれぞれ形成するためのドープである。流延ダイ81に取り付けられるフィードブロック119は、それぞれ別の送液路L1〜L3により送られてきた第1〜第3ドープ114〜116を内部で合流させてリップ先端から同時に流出する。つまり、フィードブロック119には、流延バンド86の走行方向に関して中央に第2ドープ115の流路があり、第2ドープの上流側に第1ドープ114の流路、下流側に第3ドープ116の流路がある。
【0131】
第1,2表面層112a,112bとなる第1,第3ドープ114,116を、内層112cとなる第2ドープ115よりも低い粘度とすることにより、メルトフラクチャー(溶融破壊)などの異常特性が発生しにくいフィルムを製造することができる。なお、このように第1,第3ドープ114,116と第2ドープ115とを粘度調整した上で流延する場合には、流延ダイ81から流延バンド86へかけて形成されるビードに関しては、第2ドープ115が第1,第3ドープ114,116に囲まれていることもあり、このようなビードを意図的に形成させることが好ましいときもある。また、第1,第3ドープ114,116のみに貧溶媒を含ませる方法や、第1〜第3ドープ114〜116すべてに貧溶媒を含ませて、第1,第3ドープ114,116における貧溶媒比率を第2ドープ115における貧溶媒比率よりも高くする方法が好ましい場合がある。このような場合には、流延バンド86に接する第1表面層112aが未乾燥状態で5μm以上の厚みとなるように流延することが好ましい。
【0132】
このように、流延ダイ81はドープの流出口がひとつであり、フィードブロック119を併用することにより第1〜第3ドープ114〜116をひとつの流出口から同時に流出するものとされている。このフィードブロック119と流延ダイ81とに代えて、流出口を3つもち、第1〜第3ドープ114〜116を互いに異なる流出口から流出させる流延ダイを用いてもよい。この場合には、3つの流出口は、流延ダイ86の走行方向に沿って並ぶ。
【0133】
単層流延では、フィルムを所定の厚みとするために高濃度で高粘度の固体電解質溶液を押出すことが必要である場合があり、その場合には、ドープの安定性が悪くて固形物が発生して、その固形物が異物としてフィルムに混入してフィルムの平面性が損なわれてしまうことが多い。そこで、このような共流延を実施することにより、平面性が向上するばかりでなく、第2ドープ115は濃度が高いドープのまま流延することができるので乾燥効率が上がり生産スピードを高めることができる。
【0134】
各層112a〜112cの各厚みは特に限定されないが、乾燥して製品としての固体電解質フィルムとされた時に、表面層である第1表面層,第2表面層112a,112bが全厚みの1〜50%となるように流延されることが好ましく、2〜30%となるように流延されることがより好ましい。
【0135】
各ドープ114〜116は、互いに異なる濃度としてもよい。また、各ドープ114〜116には、互いに異なる添加剤を含有させてもよい。具体的には、前述の酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等の添加物の種類や添加濃度をドープ同士互いに異なるものとすることができる。例えば、酸化防止剤、微粒子(マット剤)は、内層112cよりも表面層である第1表面層112aと第2表面層112bとにより多く含有させる、あるいは第1表面層112aと第2表面層112bのみに入れることが出来る。吸水剤、相溶剤、可塑剤は表面層よりも内層112cにより多くいれる、あるいは内層112cのみにいれてもよい。また、表面層に低揮発性の酸化防止剤を含ませ、内層112cに可塑性に優れた可塑剤、吸水性に優れた吸水剤を添加する等の様態がある。また、流延ダイ86に接する第1表面層112aの第1ドープ114のみに剥離剤を添加するという様態も例示される。このように、各層毎に付与すべき機能を独立して付与することができる。さらの本発明の固体電解質溶液は、他の機能層(例えば、触媒層、酸化防止層、帯電防止層、滑り層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0136】
フィルムの滑り性を付与するために表面層には微粒子を添加することが好ましい。なお、微粒子添加は両表面層112a,112bの少なくとも一方であれば滑り性の効果は得られる。なお、微粒子のみかけ比重は、70g/リットル以上が好ましく、90〜200g/リットルがより好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。みかけ比重が大きい程、高濃度添加の分散液を作ることが可能となり、凝集を防ぐことができるために好ましい。微粒子が二酸化ケイ素であるときには、1次粒子の平均径が20nm以下、みかけ比重が70g/リットル以上であるものを用いることが好ましく、このような二酸化ケイ素微粒子は、例えば、気化させた四塩化ケイ素と水素とを混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができるし、このような製造方法により得られるものに代えてアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名の市販品とされてもよい。
【0137】
図6は、逐次共流延装置の概略図である。ここでは、図5と同じく第1〜第3ドープ114〜116を共流延する場合を例示する。逐次共流延装置121には、流延バンド86の走行路に沿って、3つの流延ダイ122〜124が順に配されている。流延ダイ122は第1ドープ114を、流延ダイ123は第2ドープ115を、流延ダイ124は第3ドープを流出する。
【0138】
第1〜第3ドープ114〜116を同じ組成として逐次流延すると、フィルム製造速度を単層流延のときの製造速度よりも向上させることができる。この場合には、2番目以降の流延ダイ123,124の各位置を、既に流延されている層の乾燥速度等を考慮して設定するとよい。例えば、最上流の流延ダイ122から流延膜が剥がされる位置までの距離のうち最上流の流延ダイ122からの距離の割合が30〜60%となるような位置に2番目の流延ダイ124を配することが好ましい。
【0139】
上記の共流延方法の他に、例えば以下のような共流延方法もある。まず第1の流延ダイから支持体上に第1のドープを流延して剥がす。そして、剥がされたフィルムをローラ等で搬送しながら、支持体からの剥離面に対し、第2の流延ダイから第2のドープを流延して、2層のフィルムを製造する。
【0140】
なお、単層流延、共流延にかかわらず、加圧ダイからドープを均一に押し出す方法、一旦支持体上に流延されたドープをブレードでならして厚みを調節するような方法(ドクターブレード法)、互いに逆の方向に回転するロールで流延すべきドープの表面を平滑化することにより流延量を調節するいわゆるリバースロールコーター法の適用等があるが、中でも、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイとしてはコートハンガータイプやTダイタイプ等があり、いずれも好ましく用いることができる。
【0141】
なお、固体電解質をフィルム化する上記方法に代えて、細孔が複数形成されているいわゆる多孔質基材の細孔に固体電解質を保持させて、固体電解質が細孔に入ったフィルムを製造しても、上記実施形態とは異なる固体電解質フィルムを製造することができる。このような固体電解質フィルムの製造方法としては、固体電解質が含まれるゾル−ゲル反応液を多孔質基材上に塗布して細孔に固体電解質を入れる方法、多孔質基材を固体電解質が含まれるゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内に固体電解質を満たす方法等がある。多孔質基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミドなどが挙げられる。また、固体電解質を繊維状に加工し、繊維中の空隙を他の高分子化合物等で満たし、その繊維を用いてフィルム状とすることにより固体電解質フィルムを形成することもできる。この場合には、空隙を満たすための他の高分子化合物の例としては、本明細書における添加剤として挙げた物質を挙げることができる。
【0142】
本発明の固体電解質フィルムは、燃料電池用、特に特に直接メタノール型燃料電池用のプロトン伝導膜として好適に利用することができる他に、燃料電池の2つの電極に挟まれる固体電解質フィルムとして用いることができる。さらに、各種電池(レドックスフロー電池、リチウム電池等)における電解質、表示素子、電気化学センサー、信号伝達媒体、コンデンサ、電気透析、電気分解用電解質膜、ゲルアクチュエーター、塩電解膜、プロトン交換樹脂としても本発明の固体電解質フィルムを用いることができる。
【0143】
(燃料電池)
以下に、固体電解質フィルムを電極膜複合体(Membrane and Electrode Assembly,以下、MEAと称する)に使用する例と、この電極膜複合体を燃料電池に用いる例とを説明する。ただし、ここに示すMEA及び燃料電池の様態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。図7は、MEAの断面概略図である。MEA131は、フィルム62と、このフィルム62を挟んで対向するアノード電極132及びカソード電極133とを備える。
【0144】
アノード電極132は多孔質導電シート132aとフィルム62に接する触媒層132bとを有し、カソード電極133は多孔質導電シート133aとフィルム62に接する触媒層133bとを有する。多孔質導電シート132a,133aとしては、カーボンペーパー等がある。触媒層132b,133bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子をプロトン伝導材料に分散させた分散物からなる。カーボン粒子としては、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等があり、プロトン伝導材料としては、例えばナフィオン等がある。
【0145】
MEA131の製造方法としては、次の4つの方法が好ましい。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を含む触媒ペースト(インク)をフィルム62の両面に直接塗布し、多孔質導電シート132a,133aを(熱)塗布層に圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒層132b,133bの材料を含んだ液、例えば触媒ペーストを、多孔質導電シート132a,133aの表面に塗布し、触媒層132b,133bを形成させた後、フィルム62と圧着し、5層構成のMEA131を作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層132b,133bを形成させた後、フィルム62に触媒層132b,133bのみをうつし、3層構造を形成し、これに多孔質導電シート132a,133aを圧着し、5層構成のMEA131を作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクをフィルム62、多孔質導電シート132a,133aあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを含む液にフィルム62を含浸させ、白金粒子をフィルム中で還元析出させて触媒層132b,133bを形成させる。触媒層132b,133bを形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEA131を作製する。
【0146】
ただし、MEAの作り方としては、上記の方法には限定されず、公知の各種方法を適用することができる。例えば、上記の(1)〜(4)の方法の他に次の方法がある。触媒層132b,133bの材料を含んだ塗布液を予めつくり、この塗布液を支持体に塗布して乾燥する。触媒層132b,133bが形成された支持体を、触媒層132b,133bがフィルム62に接するようにフィルム62の両面にそれぞれ重ねて圧着する。そして支持体を剥がしてから、触媒層132b,133bが両面に形成されたフィルム62を多孔質導電シート132a,133aで挟み込む。そして、多孔質導電シート132a,133aと触媒層132b,133bとを密着させてMEAを製造することができる。
【0147】
図8は、燃料電池の概略図である。燃料電池141は、MEA131と、MEA131を挟持する一対のセパレータ142,143と、これらのセパレータ142,143に取り付けられたステンレスネットからなる集電体146と、パッキン147とを有する。アノード極側のセパレータ142にはアノード極側開口部151が設けられ、カソード極側のセパレータ143にはカソード極側開口152設けられている。アノード極側開口部151からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部152からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0148】
アノード電極132およびカソード電極133には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子が担持された触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲である。ただし、粒子サイズが小さいほど単位重量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが小さすぎると凝集させることなく分散させることが難しくなるために、2nm程度が小ささの限度といわれている。
【0149】
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極、つまり水素極に比べ、カソード極、つまり空気極の方が大きい。これは、カソード極の反応、つまり酸素の還元反応の速度がアノード極に比べて遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制するために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を用いることができる。活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
【0150】
触媒層132b,133bは、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体146に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを固体電解質、つまりフィルム62に輸送すること、という機能をもつ。(1)のために触媒層132b,133bは、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性とされる。(2)についてはカーボン材料に担持される活性金属触媒が担い、(3)は同じくカーボン材料が担う。そして、(4)の機能を果たすために、触媒層132b,133bにプロトン伝導材料を混在させる。触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、フィルム62に用いられるような酸残基を有する高分子化合物、例えばナフィオンに代表されるパーフルオロスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物等が好ましく用いられる。フィルム62の材料とされる固体電解質を触媒層132b,133bに用いると、触媒層132b,133bとフィルム62とが同種の材料となるため、固体電解質と触媒層との電気化学的密着性が高まり、イオン伝導の点でより有利である。活性金属の使用量を0.03〜10mg/cmの範囲とすることが、電池出力と経済性との観点から適する。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の重量に対して1〜10倍であることが好ましい。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの重量に対して、0.1〜0.7倍が好ましい。
【0151】
触媒層132b,133bは、電極基材、透過層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理を施したものを使用することもできる。
【0152】
MEAは電池に組み込み、燃料を充填した状態での交流インピーダンス法による面積抵抗値が3Ωcm以下のものが好ましく、1Ωcm以下のものがさらに好ましく、0.5Ωcm以下のものが最も好ましい。面積抵抗値は実測の抵抗値とサンプルの面積の積から得られる。
【0153】
燃料電池の燃料として用いることのできるものを説明する。アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
【0154】
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64重量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CHOH+HO→CO+6H+6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64重量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の重量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールが固体電解質を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が顕著となり、出力が低下する傾向にある。そこで、用いる固体電解質のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2)O+6H+6e→HOであり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
【0155】
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層132b,133bに供給する方法としては、(1)ポンプ等の補助機器を用いて強制的に送りこむ方法(アクティブ型)と、(2)補助機器を用いない方法、例えば、燃料が液体である場合には毛管現象や自然落下により、気体である場合には大気に触媒層をさらして供給するパッシブ型との2通りの方法があり、また、(1)と(2)とを組み合わせることも可能である。(1)は、カソード側で生成する水を抜き出すことにより、燃料として高濃度のメタノールを使用することができ、空気供給による高出力化ができる等の利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。(2)は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
【0156】
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレータを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
【0157】
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能であり充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
【実施例1】
【0158】
次に、本発明の実施例を説明する。以下の各実施例では、詳細を実施例1で説明し、実施例2〜8については、実施例1と異なる条件のみを説明する。なお、実施例1,2,5〜8は本発明の実施様態の例でありそのうち実施例7,8が最も好ましい実施様態の例である。また、実施例3,4は実施例1,2に対する比較実験である。
【0159】
[ドープ製造]
固体電解質としてスルホン化度が35%であるスルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンを用い、これを原料Aとした。まず、原料Aを以下の合成方法で製造した。
(1)4−(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシメチル)スチレンの合成
下記の配合の物質を100℃、7時間反応させた後、得られた反応液を室温まで冷却して、これに水を加え晶析させた。晶析液をろ過した後、得られたろ液を、水/アセトニトリル=1/1とした水溶液で洗浄、風乾して、4−(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシメチル)スチレンを得た。
・4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール 14重量部
・4−クロロメチルスチレン 9重量部
・炭酸カリウム 11重量部
・N,N−ジメチルホルムアミド 66重量部
【0160】
2.グラフト共重合物の合成
下記配合の混合物を60℃まで加熱した。
・ポリブタジエンラテックス 100重量部
・ロジン酸カリウム 0.83重量部
・デキストローズ 0.50重量部
・ピロリン酸ナトリウム 0.17重量部
・硫酸第1鉄 0.08重量部
・水 250重量部
【0161】
その後上記混合物に対して、下記配合の混合物を60分かけて滴下し、重合反応を実施した。
・アクリロニトリル 21重量部
・4−(4−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシメチル)スチレン 62重量部
・t−ドデシルチオール 0.5重量部
・クメンヒドロパーオキシド 3.0重量部
【0162】
滴下終了後、これにクメンヒドロパーオキシド0.2重量部を加え、その後1時間冷却しラテックスを得た。得られたラテックスを、60℃、1%の硫酸中に入れて、90℃まで昇温し凝固させた。これを十分に水洗した後に乾燥し、グラフト共重合体を得た。
【0163】
3.グラフト共重合物のスルホン化による原料Aの合成
上記2で得られたグラフト共重合体100重量部を、塩化メチレン1300重量部に溶解し、得られた溶液を0℃以下に保ちながら、これに濃硫酸13重量部をゆっくり加えた。そしてこれを6時間攪拌して沈殿を生じさせた。溶媒を除去した後に沈殿物を乾燥し、原料A、つまり固体電解質としてのスルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンを得た。滴定によるスルホン酸基の導入率は35%であった。そして原料Aを固体電解質とし、溶媒をN,N−ジメチルホルムアミドとして、固体電解質濃度が20重量%であるドープAを製造した。
【0164】
[固体電解質複層フィルム62の製造]
同時共流延装置111により3層構造の固体電解質複層フィルム62を以下の方法で製造した。第2ドープ115はドープAである。第1ドープ114,第3ドープ116は、固体電解質濃度が18.0重量%となるように、ドープAにN,N−ジメチルホルムアミドをさらに加えたものである。具体的には、ドープAの流延ダイ89に至る送液路を3つとし、そのうち第1ドープ114をつくるべくひとつの送液路に静止型混合器を設け、この混合器の直前にN,N−ジメチルホルムアミドを送り込んでインライン混合し第1ドープ114とした。静止型混合器は、エレメント数が60のものである。また、3つの送液路のうち、第3ドープ116をつくるべくひとつの送液路にもN,N−ジメチルホルムアミドを送り込んでドープAとインライン混合し、第3ドープ116とした。
【0165】
そして、乾燥後の固体電解質複層フィルム62における第1表面層、第2表面層、内層がそれぞれ5μm、5μm、40μm、全厚みが50μmとなるように、流延幅を380mmとするとともに各ドープの流量を調整して、同時共流延を実施した。第1〜第3ドープ114〜116の温度をそれぞれ40℃とするために、流延ダイ89にジャケット(図示しない)を設けてジャケット内に供給する伝熱媒体の温度を40℃とした。
【0166】
流延ダイ89、フィードブロック119、第1〜第3ドープ114〜116の送液路はすべて40℃に保温された。流延ダイ89は、コートハンガータイプであり、幅が0.4m、厚み調整ボルトとしてのヒートボルトが20mmピッチに設けられている。流延ダイ89は、ヒートボルトにより先端リップの隙間間隔が調整できるいわゆる自動厚み調整機構を有する。ヒートボルトは、予め設定したプログラムにより、高精度ギアポンプによる第1〜第3ドープ114〜116の全送液量に応じたプロファイルを設定することができるものである。このプロファイルの設定にあたっては、フィルム製造設備33内に設置した赤外線厚み計(図示せず)の測定プロファイルに基づいた調整プログラムによってヒートボルトへフィードバック制御する。フィルム62のうち、両側端部分を除いた中央部分、具体的には両側縁から各20mm幅のエリアを除いた中央部分において、50mm離れた任意の2点における厚みの差が1μm以内、幅方向1m以内における厚みの差が3μm以下となるように、先端リップの隙間間隔が調整された。また、乾燥後のフィルム62において両表面層が±2%以内、内層が±1%以内、全厚みが±1.5%以下の厚み精度となるように、先端リップの隙間間隔を調整した。
【0167】
さらに、先端リップの両側端でドープが局所的に乾燥固化してしまわないように、ドープの溶媒として使用された液を流延ビードの両端部と先端リップと外気との気液固界面にそれぞれ0.5ml/minずつ供給した。この供給用ポンプは脈動率が5%以下のものである。
【0168】
流延バンド82は、十分な耐腐食性と強度とをもつSUS316製である。流延バンド82は、表面粗さが0.05μm以下となるように研磨されたものであり、厚み1.5mm、厚みムラ0.5%以下である。流延バンド82は、2つの回転ローラ85,86により駆動され、流延バンド82と回転ローラ85,86との相対速度差が0.01m/min以下とされた。流延バンド82の速度変動は0.5%以下であった。また、流延バンド82は、1回転する間の幅方向における蛇行が1.5mm以下となるように、流延バンド82の両端位置を検出しながら位置を制御された。リップ先端と流延バンド82とは、互いの距離変動が200μm以下となるようにされた。流延室63には、内部の風圧変動を抑制するための風圧変動抑制手段(図示せず)が内部に設置されている。
【0169】
第1〜第3ドープ114〜116を流延して流延膜112を形成した。送風ダクト91〜93により80〜120℃の乾燥風を吹き付け、原料Aの固形分、つまり固体電解質に対して溶媒含有率が30重量%になるまで流延膜を乾燥した。流延膜が自己支持性をもったところで、この流延膜を流延バンド82からフィルム62として引き剥がした。このフィルム62は、テンタ64に送られて、クリップ64aでその両側端部を把持されながらテンタ64の内部を搬送された。テンタ64では、固形分に対して溶媒含有率が15重量%になるまで、140℃の乾燥風によりフィルム62を乾燥した。テンタ64の出口でクリップ64aから離脱されたフィルム62は、クリップ64aに把持された両側端部を、テンタ64の下流に備えられる耳切装置67により切断除去された。両側端部が除去されたフィルム62をメタノール:水=1:1の混合液浴に浸漬して溶媒置換をした。この混合液は60℃に保温されている。混合液浴を経たフィルム62を乾燥室69に送り、複数のローラ68で搬送しながら140〜160℃で乾燥した。そして、溶剤含有率が3重量%未満とされた固体電解質複層フィルム62を得た。
【0170】
得られたフィルム62について、以下の各評価を実施した。評価結果については表1に示す。なお、表1における評価項目の番号は、以下の各評価項目に付した番号に対応する。
【0171】
1.厚み
アンリツ電気社製の電子マイクロメーターを用いて600mm/分の速度にて連続的にフィルム62の厚みを測定した。測定により得られたデータは、縮尺1/20、チャート速度30mm/分にてチャート紙上に記録された。そして定規によりデータ曲線に関して計測を実施したのちに、その計測値を基に厚みの平均値とこの平均値に対する厚みのばらつきとを求めた。表1においては、(a)は厚みの平均値(単位;μm)、(b)は(a)に対する厚みのばらつき(単位;μm)を表す。
【0172】
2.欠陥箇所数
フィルム62の全幅×1mのエリアに光をあてて反射させ、その反射光により変形等の欠陥箇所を目視にて検出した。その後、目視で検出された欠陥箇所を偏光顕微鏡で確認し、1mm当たりの欠陥箇所数をカウントした。なお、サンプリング後につけられた変形、例えばキズ等はカウントから除外した。
【0173】
3.イオン導電率測定
得られた固体電解質フィルム62について、長手方向に沿って1mおきに10個の測定箇所を選んだ。その10箇所を直径13mmの円形サンプルとして打ち抜いた。各サンプルを2枚のステンレス板で挟み、ソーラトロン社1470および1255Bを用いて交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定した。測定は80℃、相対湿度95%の条件下で実施した。イオン伝導度は、表1に示すように交流インピーダンスの値(単位;S/cm)として示される。
【0174】
4.燃料電池141の出力密度
フィルム62を用いて燃料電池141を作製し、その燃料電池141の出力を測定した。燃料電池141の作製方法及び出力密度の測定方法は、下記の方法による。
【0175】
(1)触媒層132b,133bとされる触媒シートAの作製
白金担持カーボン2gと固体電解質15g(5%DMF溶液)とを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子径は約500nmであった。得られた分散物を、厚さ350μmのカーボンペーパー上に塗布して乾燥した後、このカーボンペーパーを直径9mmの円形に打ち抜き、触媒シートAを作製した。なお、上記白金担持カーボンは、VulcanXC72に白金50wt%が担持されたものであり、固体電解質は、フィルム62を製造するためのものと同じものとした。
【0176】
(2)MEA131の作製
固体電解質フィルム62の両面に、塗膜がフィルム62に接するように触媒シートAを張り合わせ、80℃、3MPa、2分間で熱圧着し、MEAを作製した。
【0177】
(3)燃料電池141の出力密度
(2)で得られたMEAを図8に示す燃料電池にセットし、アノード極側の開口部151に15重量%のメタノール水溶液を注入した。このとき、カソード極側の開口部152は大気と接するようにした。アノード電極132とカソード電極133とを、マルチチャンネルバッテリ評価システム(ソーラトロン社1470)で接続させて、出力密度(単位;W/cm)を測定した。
【実施例2】
【0178】
固体電解質としてスルホン化度が35%であるスルホプロピル化ポリエーテルスルホンを用い、これを原料Bとした。まず、原料Bを特開2002−110174号公報に記されている合成方法に基づいて合成した。乾燥後の原料Bと溶媒とを下記の配合で混合して原料Bを溶媒に溶解し、20重量%の固体電解質ドープ24を製造した。その他の条件は実施例1と同じとした。得られたドープ24を以下の説明においてドープBと称する。
・原料B; 100重量部
・溶媒;N−メチルピロリドン 400重量部
【0179】
[固体電解質複層フィルム62の製造]
実施例1のドープAをドープBに代えた。送風ダクト91〜93からの風の温度を80〜140℃とした。テンタ64における乾燥風の温度を160℃とした。耳切装置67により側端部が除去されたフィルム62を、実施例1と同様に両側端部が除去されたフィルム62を60℃に保温されたメタノール:水=1:1の混合液浴に浸漬して溶媒置換をした後、乾燥室62で160〜180℃の温度下で乾燥し、溶媒含有率が3%未満である固体電解質フィルム62を得た。得られたフィルム62についての評価結果は、表1に示す。
【実施例3】
【0180】
[固体電解質フィルムの製造]
第1ドープ114と第3ドープ116を用いずにドープAのみを流延して、50μm厚みの単層フィルムを製造した。その他の条件については実施例1と同じである。得られたフィルムについての評価結果は、表1に示す。
【実施例4】
【0181】
[固体電解質フィルムの製造]
第1ドープ114と第3ドープ116を用いずにドープBのみを流延して、50μm厚みの単層フィルムを製造した。その他の条件については実施例1と同じである。得られたフィルムについての評価結果は、表1に示す。
【実施例5】
【0182】
化3に示す化合物を固体電解質として用いた。ただし、化3の化合物を得るためのプロトン化、つまり酸処理は、ドープ製造前ではなく、下記のようにフィルム製造工程にて実施した。化3の未プロトン化物、つまり固体電解質の前駆体を原料Cとする。また、この原料Cを溶媒に溶解して、流延に供するドープとした。このドープのつくり方は実施例1におけるドープ24のつくり方と同じである。溶媒は、溶媒成分1と溶媒成分2との混合物である。溶媒成分1は原料Cの良溶媒であり、溶媒成分2は原料Cの貧溶媒である。また、本実施例5では化3におけるXはNa、YはSO2 、Zは化4の(I)、nは0.33、mは0.67、数平均分子量Mnは61000、量平均分子量Mwは159000である。
・原料C; 100重量部
・溶媒成分1;ジメチルスルホキシド 256重量部
・溶媒成分2;メタノール 171重量部
【0183】
ドープを流延して流延バンド82から剥がしたものは原料Cよりなるので前駆体フィルムと称するものとする。実施例1と同様の条件を経て耳切装置67で両側端部が除去された前駆体フィルムは、酸処理によりプロトン化された後、洗浄工程に供された。酸処理とは、前駆体フィルムを酸の水溶液に接触させる工程であり、この酸処理により、前駆体の構造は化3の一般式に示す構造、つまり固体電解質となる。接触は、液槽に酸の水溶液を連続供給してこの水溶液に固体電解質よりなるフィルムを浸積させる方法によって行った。酸処理の後の洗浄は、水により実施した。洗浄工程を終えたフィルム62を乾燥室69に送った。得られたフィルム62についての評価結果については表1に示す。
【実施例6】
【0184】
化3に示す化合物であり、実施例5とは異なる化合物を固体電解質として用いた。ただし、化3の化合物を得るためのプロトン化は、実施例5と同様に、ドープ製造前ではなくフィルム製造工程にて実施した。ドープ成分として用いた前駆体を原料Dとする。溶媒は、下記に示すように、溶媒成分1と溶媒成分2との混合物である。溶媒成分1は原料Dの良溶媒であり、溶媒成分2は原料Dの貧溶媒である。また、本実施例6では、化3におけるXはNa、YはSO2 、Zは化4の(I)及び(II)、nは0.33、mは0.67、数平均分子量Mnは68000、量平均分子量Mwは200000である。なお、化4において(I)は0.7モル%、(II)は0.3モル%である。その他の条件は実施例5と同じである。
・原料D; 100重量部
・溶媒成分1;ジメチルスルホキシド 200重量部
・溶媒成分2;メタノール 135重量部
【実施例7】
【0185】
本実施例7では、水から送り出した後に流延膜24aをPETフィルムから剥がすことで前駆体フィルムを得たこと、また、洗浄工程後に30℃の水にフィルム410を5分間浸漬した後、フィルム410の水切りを行った。その他の条件は実施例5と同じである。
【実施例8】
【0186】
固体電解質の前駆体の原料Cを、原料Dに代えたこと以外は、実施例7と同じ条件でフィルム410を製造した。
【0187】
【表1】

【0188】
以上の実施例の結果より、本発明によると、平面性に優れ、欠陥が抑制された固体電解質フィルムを連続的に製造することができ、得られる固体電解質フィルムは、燃料電池の固体電解質層として好適に使用することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】ドープ製造設備の概略図である。
【図2】フィルム製造設備の概略図である。
【図3】別の実施形態におけるフィルム製造設備の概略図である。
【図4】別の実施形態におけるフィルム製造設備の概略図である。
【図5】同時共流延装置の断面図である。
【図6】逐次共流延装置の概略図である。
【図7】電極膜複合体の断面図である。
【図8】燃料電池の断面図である。
【符号の説明】
【0190】
10 ドープ製造設備
24 ドープ
33 フィルム製造設備
62 固体電解質フィルム
64 テンタ
64a クリップ
65 第1液浴槽
65a 第1液
66 第2液浴槽
66a 第2液
69 乾燥室
111 同時共流延装置
114〜116 第1〜第3ドープ
112 流延膜
112a 第1表面層
112b 第2表面層
112c 内層
121 逐次共流延装置
131 電極膜複合体(MEA)
132 アノード電極
133 カソード電極
141 燃料電池
146 集電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質と有機溶媒とを含み、互いに組成が異なる複数のドープを、走行する支持体上に流延ダイから流延して前記複数のドープが重ねられた流延膜を形成し、この流延膜を前記支持体からフィルムとして剥がす流延工程と、
前記フィルムを乾燥して固体電解質複層フィルムとする乾燥工程と、
を有し、
前記乾燥工程中には、前記有機溶媒よりも沸点が低く前記固体電解質の貧溶媒である液に前記フィルムを接触させる貧溶媒接触工程があることを特徴とする固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記固体電解質と前記有機溶媒との配合比が互いに異なる第1の前記ドープと第2の前記ドープとを流延することを特徴とする請求項1記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1ドープは第1の前記流延ダイから流出され、前記第2ドープは前記第1の流延ダイの下流に備えられる第2の前記流延ダイから流出されることを特徴とする請求項2記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記固体電解質複層フィルムの厚みが10μm〜200μmであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記固体電解質の貧溶媒である化合物を第1の前記有機溶媒、前記固体電解質の良溶媒である化合物を第2の前記有機溶媒とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の有機溶媒の重量の和に対する前記第1の有機溶媒の重量が10%以上100%未満であることを特徴とする請求項5記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第2の有機溶媒はジメチルスルホキシドを含み、前記第1の有機溶媒は炭素数が1〜5のアルコールを含むことを特徴とする請求項5または6記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記固体電解質は、炭化水素系ポリマーであることを特徴とする請求項1ないし7いずれかひとつ記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記炭化水素系ポリマーは、スルホン酸基を有する芳香族系ポリマーであることを特徴とする請求項8記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記芳香族系ポリマーは、化1の一般式(I)〜(III)で示される各構造単位からなる共重合体であることを特徴とする請求項9記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
【化1】

(ただし、XはH、YはSO2 、Zは化2の(I)または(II)に示す構造であり、nとmとは0.1≦n/(m+n)≦0.5を満たす。)
【化2】

【請求項11】
固体電解質と有機溶媒とを含み互いに異なる組成とされた複数のドープを流延ダイから走行する支持体上に流延して複層の流延膜を形成し、複層のフィルムとして剥がす流延装置と、
前記フィルムを乾燥する乾燥装置と、
前記フィルム乾燥装置中に備えられ、前記溶媒よりも沸点が低く前記固体電解質の貧溶媒である液に前記フィルムを接触させる貧溶媒接触部と、
を有することを特徴とする固体電解質複層フィルムの製造設備。
【請求項12】
請求項1ないし10いずれか1項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする固体電解質複層フィルム。
【請求項13】
請求項12記載の固体電解質複層フィルムと、
前記固体電解質複層フィルムの一方の面に密着して備えられ、外部から供給される水素含有物質からプロトンを発生するためのアノード電極と、
前記固体電解質複層フィルムの他方の面に密着して備えられ、前記固体電解質複層フィルムを通過した前記プロトンと外部から供給される気体とから水を合成するカソード電極と、
を有することを特徴とする電極膜複合体。
【請求項14】
請求項13記載の電極膜複合体と、
前記電極膜複合体の電極に接触して備えられ、前記アノード電極及び前記カソード電極と外部との電子の受け渡しをする集電体と、
を有することを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−42587(P2007−42587A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89811(P2006−89811)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】