説明

固定台および梱包容器

【課題】太陽電池の発電特性の劣化を抑制することができるようにする。
【解決手段】短絡トレイ201は、色素増感型太陽電池である太陽電池211を、短絡トレイ201の筺体に対して所定の位置に所定の姿勢で安定的に固定するための固定台である。短絡トレイ201は、戴置された太陽電池211を安定的に固定するように、その筺体が、太陽電池211の形状に合わせて整形されている。この短絡トレイ201は、その筺体の一部または全部が導電性の材料により構成されており、固定された状態の太陽電池211の集電部212Aおよび集電部212Bとを短絡させる短絡回路を有する。本発明は、例えば、固定台に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定台および梱包容器に関し、特に、太陽電池の発電特性の劣化を抑制することができるようにした固定台および梱包容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
【0003】
従来より、太陽電池としては、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池および非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池が主に用いられている。
【0004】
これに対して、1991年にグレッツェルらが提案した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を得ることができ、しかも従来のシリコン系太陽電池とは異なり製造の際に大掛かりな装置を必要とせず、低コストで製造することができることなどにより注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、この色素増感型太陽電池は、レドックス種を含む有機溶媒やイオン液体、ゲルなどをはじめとする電解質層(液体・固体)を使用するため、光照射環境下(発電環境下)にありながら、色素増感型太陽電池の集電部に接続される外部回路が開回路状態、あるいは、電力をあまり消費していない使用状況下にある場合(つまり、集電部間が解放状態にある場合)、色素増感型太陽電池の電解質層に分極現象が起こりやすい。そして、このような分極が起こると色素増感型太陽電池の発電特性低下を招く恐れがあった。
【0006】
より具体的に説明すると、光が色素増感型太陽電池に照射され、かつ、色素増感型太陽電池の外部回路が開回路状態の場合、半導体極の導電性透明電極(FTO、ITOなど)とTiO2界面に電子が蓄積することが知られている。
【0007】
太陽光下だけでなく、屋内の蛍光灯下でも電子供給源となる色素は励起するために電子は供給され続け、電子蓄積は起こりうる。
【0008】
このように、導電性透明電極の界面に電子が蓄積され続けると、電池内部で分極が発生する。具体的には、導電性透明電極とTiO2の界面から電子がリークし、電解質層レドックス成分の還元が起こりその酸化体と還元体の組成バランスが崩れる。
【0009】
逆電子移動の可能性としては、例えば、(1)色素が励起状態から失活する、(2)TiO2から色素あるいはTiO2からレドックス成分への電子移動、若しくは、(3)導電性透明電極からレドックス成分への電子移動が考えられる。この3種類の反応のうち、(3)の反応が最も速いため、上述した反応が優先的に起こりやすく分極現象が起こりやすい。
【0010】
特に大面積な色素増感型太陽電池(大電流を発生する色素増感型太陽電池)ほど、一度の色素励起で発生する電子量が多いため、この分極現象は発生し易い。
【0011】
このような分極現象は、レドックス種を含む有機溶媒やイオン液体、ゲルなどをはじめとする電解質層(液体・固体)を使用する色素増感型太陽電池特有の現象であり、従来のシリコン系太陽電池(単結晶・アモルファス等)では想定できなかった劣化モードである。
【0012】
そこで、色素増感型太陽電池に電流印加用の電極を別途設け、外部電源を用いてその電極から色素増感型太陽電池に逆電流を印加することにより、発生した分極現象を低減させ、劣化した発電特性を回復させる方法が考えられた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nature,353,p.737(1991)
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−192441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、一般的に、色素増感型太陽電池は、その製造時、保管時、および運搬時等、使用される(設置される)前の状態において、二次電池や負荷回路となる外部回路は接続されず、色素増感型太陽電池単体で管理されていた。そのため、色素増感型太陽電池は、製造直後から分極現象が起こり、使用される前に発電特性が劣化してしまう恐れがあった。つまり、使用時に色素増感型太陽電池の発電特性が十分に得られない恐れがあった。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、太陽電池の発電特性の劣化を抑制することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面は、色素増感型太陽電池を自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形される筺体と、前記筺体に固定された前記色素増感型太陽電池の両極を短絡させる短絡回路とを備える固定台である。
【0018】
前記固定台は、複数の前記色素増感型太陽電池を固定することができる。
【0019】
前記筺体は導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねることができる。
【0020】
前記短絡回路は、前記色素増感型太陽電池が破壊されない程度により大きな電流が流れるような所定の抵抗値の抵抗器を含むことができる。
【0021】
本発明の他の側面は、遮光性の部材により形成され、内部に色素増感型太陽電池を格納する筺体と、前記筺体内部に格納される前記色素増感型太陽電池の両極を短絡させる短絡回路とを備える梱包容器である。
【0022】
前記筺体は、前記色素増感型太陽電池を格納する中空を有することができる。
【0023】
前記筺体は、前記中空に格納される前記色素増感型太陽電池を所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形されていることができる。
【0024】
前記筺体は導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねることができる。
【0025】
前記中空に格納される前記色素増感型太陽電池を自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で固定する固定台をさらに備え、前記固定台は、導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねることができる。
【0026】
前記短絡回路は、前記色素増感型太陽電池が破壊されない程度により大きな電流が流れるような所定の抵抗値の抵抗器を含むことができる。
【0027】
前記筺体は、内部に複数の前記色素増感型太陽電池を格納することができる。
【0028】
本発明の一側面においては、筺体が、色素増感型太陽電池を自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形され、短絡回路により、その筺体に固定された色素増感型太陽電池の両極が短絡される。
【0029】
本発明の他の側面においては、筺体が、遮光性の部材により形成され、内部に色素増感型太陽電池が格納され、短絡回路により、その筺体内部に格納される色素増感型太陽電池の両極が短絡される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、太陽電池を固定若しくは梱包することができる。特に、太陽電池の発電特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】色素増感型太陽電池の外部回路のパターン例を示す図である。
【図2】色素増感型太陽電池の変換効率の時間的変化の例を示す図である。
【図3】本発明を適用した固定台の構成例を説明する図である。
【図4】本発明を適用した梱包箱の構成例を説明する図である。
【図5】本発明を適用した梱包容器の他の例を説明する図である。
【図6】本発明を適用した製造装置の構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(変換効率の時間的変化の説明)
2.第2の実施の形態(固定台)
3.第3の実施の形態(梱包容器)
4.第4の実施の形態(製造装置)
【0033】
<1.第1の実施の形態>
[分極現象による劣化]
最初に、色素増感型太陽電池の分極現象による発電特性の劣化の例について説明する。色素増感型太陽電池のパネルを8個直列に接続した色素増感型太陽電池モジュールの発電特性の時間的変化を、色素増感型太陽電池モジュールが接続される外部回路のパターン(集電部間の状態)毎に比較する。
【0034】
第1の状態は、図1Aに示されるように、色素増感型太陽電池モジュール101の集電部間が解放された状態(開回路状態)である。この場合、集電部間の抵抗値は無限大である。したがって、このときの集電部間の電流電圧特性は、図1Dに示されるグラフにおけるI-V特性曲線上の電流密度が0となる点(丸囲み数字「1」の近傍)に相当する。
【0035】
第2の状態は、図1Bに示されるように、色素増感型太陽電池モジュール101の集電部が閉回路102により短絡された状態(閉回路状態)である。閉回路102は抵抗値0の回路である。つまり、集電部間の抵抗値は0である。したがって、このときの集電部間の電流電圧特性は、図1Dに示されるグラフにおけるI-V特性曲線上の電圧が0となる点(丸囲み数字「2」の近傍)に相当する。
【0036】
第3の状態は、図1Cに示されるように、色素増感型太陽電池モジュール101の集電部が、抵抗器103Aを含む閉回路103により短絡された状態(閉回路状態)である。この抵抗器103Aの抵抗値は、電力が最大となるような値に設定されている。したがって、このときの集電部間の電流電圧特性は、図1Dに示されるグラフにおけるI-V特性曲線上の、集電部間の電圧(V)、および、集電部間を流れる電流(J)が、最大電力となるような値(Vmax,Jmax)をとる点(丸囲み数字「3」の近傍)に相当する。
【0037】
以上のような3状態の色素増感型太陽電池モジュールをハロゲン光照射環境下に長時間静置した場合の、色素増感型太陽電池モジュールの変換効率の経時変化(光劣化加速試験)の例を図2のグラフに示す。
【0038】
図2に示されるグラフにおいて、曲線111は、第1の状態(図1A)の色素増感型太陽電池モジュール101の変換効率の経時変化の例を示す。また、曲線112は、第2の状態(図1B)の色素増感型太陽電池モジュール101の変換効率の経時変化の例を示す。さらに、曲線113は、第3の状態(図1C)の色素増感型太陽電池モジュール101の変換効率の経時変化の例を示す。
【0039】
図2に示されるように、基本的にどの状態であっても、色素増感型太陽電池モジュール101の変換効率は、光劣化の影響により時間とともに低下する傾向を示すが、その減少量は、第1の状態(開回路)の場合が、他の状態と比べて最も大きい。
【0040】
色素増感型太陽電池は、増感色素を担持させたチタニア多孔質電極と対極との間に電解質層を介在させた構造を有している。例えば、電解質層としてレドックス対(IとI等)を含む電解液を使用した色素増感型太陽電池の場合、昼間などの発電時に光がチタニア多孔質電極に当たると、その光を増感色素が吸収してチタニア多孔質電極中に電子を放出する。このとき、増感色素に残されたホールは、ヨウ化物イオン(I)を酸化して三ヨウ化物イオン(I)へと変える。また、チタニア多孔質電極中に放出された電子は、回路を経て対極に移動するとともに、そこで三ヨウ化物イオン(I)を還元してヨウ化物イオン(I)へと変える。そして、このサイクルが連続して起こることにより、光エネルギーが電気エネルギーに変換されるようになっている。
【0041】
しかしながら、光が色素増感型太陽電池に照射され、かつ、色素増感型太陽電池の外部回路が開回路状態の場合、電解液中のレドックス対の比率に偏りが生じ、これが電池の特性劣化(即ち光電変換効率の低下)を引き起こす原因となる。その理由としては以下のことが考えられる。
【0042】
電解液中には三ヨウ化物イオン(I)とヨウ化物イオン(I)とがレドックス対として存在するが、チタニア多孔質電極に蓄積された電子のレドックス対への逆電子移動によりチタニア多孔質電極付近にヨウ化物イオン(I−)が偏在し、対極付近に三ヨウ化物イオン(I3−)が偏在するようになり、電解液の導電性が低下するからである。
【0043】
このように、色素増感型太陽電池モジュールの集電部間を解放状態にしておくと、分極化がより強く発生し、色素増感型太陽電池モジュールの発電特性がより大きく劣化してしまう恐れがあった。
【0044】
<2.第2の実施の形態>
[固定台]
図3は、本発明を適用した固定台の構成例を説明する図である。図3に示される短絡トレイ201は、増感色素を担持させたチタニア多孔質電極と対極との間に電解液を介在させた構造を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部である色素増感型の太陽電池211を、自分自身(短絡トレイ201の筺体)に対して所定の位置に所定の姿勢で安定的に固定するための固定台である。短絡トレイ201は、戴置された太陽電池211を安定的に固定するように、その筺体が、太陽電池211の形状に合わせて整形されている。この短絡トレイ201は、太陽電池の保護を主な目的とし、太陽電池211の製造、検査、保管、および運搬等に使用される。
【0045】
また、この短絡トレイ201は、その筺体の一部または全部が導電性の材料により構成されており、短絡トレイ201の所定の位置に戴置された状態の(短絡トレイ201により固定された状態の)太陽電池211の両極の端子となる集電部212A(例えば正極)および集電部212B(例えば負極)との間を、その導電性材料により短絡させる。つまり、短絡トレイ201は、固定された状態の太陽電池211の集電部212Aおよび集電部212Bとを短絡させる短絡回路を有する。
【0046】
なお、集電部212Aおよび集電部212Bは、互いに異なる極であれば、どちらがどちらの極であってもよいが、以下においては説明の便宜上、集電部212Aが正極として集電部212Bが負極とする。
【0047】
導電性材料としては、鉄や銅等の金属の他、例えば、カーボン含有プラスティック、アルミ蒸着プラスティック、導電性塗料を塗布した木材や紙等が考えられる。
【0048】
この短絡回路(導電性材料)の抵抗値は、基本的に任意であるが、図2に示されるように、電流が流れやすい方が分極は起こりにくい。ただし、発電により大電流を発生させる太陽電池の場合、抵抗値0の閉回路状態では、電池崩壊を招く恐れがある。そこで、短絡トレイ201の短絡回路(導電性材料)の抵抗値は、発生電流により太陽電池211が破壊されない程度に、できるだけ小さくする(つまり、太陽電池211が破壊されない程度に、できるだけ大きな電流を流すようにする)のが望ましい。例えば1MΩ以下とし、太陽電池211および短絡トレイ201の導電性材料により形成される閉回路を流れる電流が1mA以上とするようにしてもよい。なお、短絡トレイ201に形成される短絡回路に抵抗器を設け、その抵抗器により上述したような抵抗値を得るようにしてもよい。
【0049】
この短絡回路(導電性材料)は、短絡トレイ201の筺体表面に形成されるようにしてもよいし、筺体内部に形成されるようにしてもよい。ただし、その場合も、集電部212Aや集電部212Bに接触させる部分は、筺体表面に露出させる必要がある。
【0050】
以上のように、短絡トレイ201は、固定対象の太陽電池211の互いに異なる極の集電部間を、短絡回路により短絡させるので、太陽電池211における分極現象の発生を抑制することができ、色素増感型である太陽電池211の発電特性の劣化を抑制することができる。
【0051】
なお、太陽電池211を所定の位置に所定の姿勢で安定的に固定し、太陽電池211の互いに異なる極の集電部間を短絡させることができる限り、短絡トレイ201の形状は、任意である。また、この閉回路の抵抗値を制御するための抵抗器を有するようにしてもよい。この抵抗器の抵抗値は、固定であっても可変であってもよい。この抵抗器によって、固定する太陽電池211の発電量に応じて抵抗値を調整することができるようにしてもよい。
【0052】
また、短絡トレイ201が、太陽電池211を2つ以上固定することができるようにしてもよい。その場合、各太陽電池211の両極の集電部をそれぞれ短絡させるようにしてもよいし、複数の太陽電池211の集電部をまとめて短絡させるようにしてもよい。
【0053】
さらに、短絡トレイ201全体が導電性材料により形成され、短絡トレイ201の筺体が、太陽電池211を固定するだけでなく、固定された太陽電池の両極の集電部に接触し、それらの集電部を短絡させる短絡回路を兼ねるようにしてもよい。このようにすることにより、短絡トレイ201の部品点数を低減させることができ、短絡トレイ201の製造を容易にするとともに、そのコストを低減させることができる。
【0054】
<3.第3の実施の形態>
[梱包箱]
以上においては、色素増感型太陽電池の発電特性の劣化を抑制することができるようにするために、色素増感型太陽電池の互いに異なる極の集電部間を短絡させるように説明したが、さらに、色素増感型太陽電池への光を遮るようにし、色素増感型太陽電池の発電量を抑制するようにしてもよい。
【0055】
図4は、色素増感型太陽電池を梱包する梱包容器の構成例を示す図である。図4Aは、その梱包箱の外観を説明するための斜視図である。
【0056】
図4Aに示されるように、梱包箱301は、色素増感型太陽電池を梱包するための容器であり、蓋部301Aおよび底部301Bにより構成される。図4Aに示されるように底部301Bに蓋部301Aが被せられ、略立方体若しくは略直方体の梱包箱301が形成される。
【0057】
図4Bは、梱包箱301の内部の構成を説明するための梱包箱301の断面図である。図4Bに示されるように、梱包箱301の内部は、色素増感型太陽電池を格納可能な中空構造となっている。蓋部301Aは、地面に対して略平行な上面と、地面に対して略垂直な側面により構成される。底部301Bは、地面に対して略平行な底面と地面に対して略垂直な側面により構成される。蓋部301Aは、底部301Bより少し大きい。蓋部301Aの下側に開放している部分で、底部301Bの上側に開放している部分を覆うように、蓋部301Aと底部301Bとを組み合わせることにより、梱包箱301が形成される。
【0058】
底部301Bの底面の、梱包箱301の内部となる面(底面の上側の面)には、上述した短絡トレイ201が形成される。第1の実施の形態において説明したように、この短絡トレイ201は、色素増感型太陽電池である太陽電池211を、自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で、その両極の集電部間を短絡させた状態で固定する。なお、説明の便宜上、図4においては、太陽電池211と短絡トレイ201とを離して示しているが、実際には、図3に示されるように、太陽電池211は短絡トレイ201に固定される(少なくとも集電部212Aおよび集電部212Bが短絡トレイ201に接触する)。
【0059】
図4Bに示されるように、この短絡トレイ201により固定された太陽電池211は、蓋部301Aが閉じられたときに、梱包箱301の内部に収まるように固定される。
【0060】
梱包箱301の蓋部301Aおよび底部301Bの材質は、例えば、紙、木材、ガラス、プラスティック、土、または金属等、どのようなものであってもよいが、光を通さないようになされている。このような不透明で光を通さない蓋部301Aおよび底部301Bにより、梱包箱301は、内側に固定される太陽電池211に入射する光を遮るようになされている。
【0061】
このように、梱包箱301は、正極の集電部と負極の集電部とを短絡させるだけでなく、さらに遮光した状態で太陽電池211を梱包することができる。このようにすることにより、梱包箱301は、半導体電極界面に蓄積した電子を太陽電池211外部に逃がすことができるだけでなく、電子供給源となる色素の励起を抑制させることができるので、分電現象の発生をより強く抑制し、太陽電池211の発電特性の劣化をさらに抑制することができる。
【0062】
なお、梱包箱301は、その筺体により、梱包される太陽電池211への光の入射を遮り、かつ、太陽電池211を梱包することができるものであれば、その形状は任意である。例えば、蓋部301Aと底部301Bとが一体として形成され、その一部の面として開閉可能な面が設けられるようにしてもよい。また、梱包箱301は、円錐、五角柱、若しくは球体等であってもよい。
【0063】
さらに、梱包箱301に2つ以上の太陽電池211が格納可能としても良い。その場合、短絡トレイ201の数は任意である。また、短絡トレイ201が、各太陽電池211の両局の集電部間をそれぞれ短絡させるようにしてもよいし、複数の太陽電池211の集電部をまとめて短絡させるようにしてもよい。
【0064】
なお、短絡トレイ201は、梱包箱301(例えば底部301B)と一体的に形成されるようにしてもよいし、梱包箱301から着脱可能としてもよい。例えば、梱包箱301(蓋部301Aおよび底部301B)が、遮光性および導電性の両方を有する部材により形成されるようにしてもよい。このとき、梱包箱301の内側が、太陽電池211をその内部の所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形されていても良い、さらにその状態において太陽電池211の両極の集電部間を短絡させるようにしてもよい。このようにすることにより梱包箱301の部品点数を少なくすることができ、梱包箱301の製造を容易にし、コストを低減させることができる。
【0065】
なお、梱包箱301により太陽電池211の両極の集電部間を短絡させる場合、梱包箱301が、その短絡部分において、太陽電池211が破壊されない程度に大きな電流が流れるような抵抗値を有するようにしてもよい。また、その短絡部分に抵抗器を設け、両極の集電部間でそのような抵抗値が得られるようにしてもよい。
【0066】
[梱包材]
なお、太陽電池211への光を遮光することができればよく、例えば、図5Aに示されるように、梱包箱301の代わりに遮光性の部材からなる包装材401によって、上述したように短絡トレイ201に固定された太陽電池211を、その短絡トレイ201ごと(短絡トレイ201とともに)梱包するようにしてもよい。
【0067】
図5は、本発明を適用した梱包容器の他の例を示す図である。図5Aの例においては、色素増感型の太陽電池211は、導電性材料により形成される短絡トレイ201により、太陽電池211の互いに異なる極の集電部間を短絡させた状態で固定され、さらに、遮光性の包装材401によって、短絡トレイ201ごとラミネート梱包されている。
【0068】
このように、遮光性を有する包装材401と、導電性材料により形成される短絡トレイ201とを梱包容器とすることにより、太陽電池211を、より小さく梱包することができる。
【0069】
なお、包装材401の材質は、遮光性のものであればどのようなものであってもよい。また、説明の便宜上、図5Aにおいては、太陽電池211と短絡トレイ201とを離して示しているが、実際には、図3に示されるように、太陽電池211は短絡トレイ201に固定される(少なくとも集電部212Aおよび集電部212Bが短絡トレイ201に接触する)。
【0070】
また、図5Bに示されるように、遮光性と導電性の両方を有する部材により、太陽電池211を梱包するようにしてもよい。図5Bの例の場合、太陽電池211は、短絡トレイ201に固定されず、導電性と遮光性の両方を有する導電性包装材411により梱包されている。このとき、太陽電池211は、導電性包装材411が正極の集電部212Aと、負極の集電部212Bとの両方に接触するように梱包される。
【0071】
導電性包装材411は、例えばアルミホイルにより形成される。導電性包装材411は、一般的に、形状の自由度が高い方が梱包が容易である。例えば、導電性包装材411が、液状やゲル状の物質であってもよいし、可塑性を有するものであってもよい。
【0072】
このように、遮光性および導電性を有する包装材411を梱包容器とすることにより、部品点数を削減し、太陽電池211の梱包を容易にするとともに、そのコストを低減させることができる。
【0073】
なお、説明の便宜上、図5Bにおいては、太陽電池211と導電性包装材411とを離して示している。しかしながら実際には、図3に示される短絡トレイ201の場合と同様に、太陽電池211は、少なくともその集電部212Aおよび集電部212Bが導電性包装材411に接触するように梱包される。
【0074】
<4.第4の実施の形態>
[色素増感型太陽電池製造装置]
色素増感型太陽電池は、その製造工程において電解液注入後より発電可能状態となる。
【0075】
このため、製造工程内での搬送中も、光を照射されることで電解質層(有機溶媒やイオン液体、ゲルなどをはじめとする液体や固体)に含まれるレドックス成分の偏り、つまり分解現象は発生する。そこで、色素増感型太陽電池製造装置が、色素増感型の太陽電池パネルを搬送する際に、遮光、および太陽電池端子間を短絡する機構を有するようにしてもよい。
【0076】
図6は、色素増感型太陽電池を製造する太陽電池製造装置の構成の一部を説明するための模式図である。
【0077】
図6に示されるように太陽電池製造装置600は、電解液注入後の色素増感型の太陽電池611を搬送する搬送レール601を有している。この搬送レール601は、レール601Aおよびレール601Bにより構成される。太陽電池611は、その両極の集電部が、レール601A若しくはレール601Bに接触するように、搬送レール601に戴置される。つまり、レール601Aおよびレール601Bは、それぞれ、例えば金属等の導電性の部材により構成され、搬送される太陽電池611の互いに異なる極の集電部に接触している。
【0078】
このレール601Aおよびレール601Bは、短絡抵抗602を介して短絡されている。つまり、太陽電池611の両極の集電部は、この短絡抵抗602を介して短絡されている。短絡抵抗602の抵抗値は任意であるが、上述したように太陽電池が破壊されない程度に、より大きな電流が流れるような値とするのが望ましい。
【0079】
このようにすることにより、太陽電池製造装置600は、電解液注入後の色素増感型の太陽電池611を、その両極の集電部を短絡させた状態で、搬送することができる。つまり、太陽電池製造装置600は、太陽電池611を、その発電特性の劣化を抑制しながら、搬送することができる。
【0080】
また、太陽電池製造装置600は、その搬送中の太陽電池611への光の照射を遮る遮光部603を有する。遮光部603は、遮光性の高い部材により、遮光性の高い形状に形成される。例えば、遮光部603は、搬送中の太陽電池611を覆うように形成される。太陽電池611の搬送路全体を覆うようにしても良いし、搬送中の太陽電池611の部分のみを覆うようにしてもよい。もちろん、遮光部603の形状は任意である。太陽電池611に照射される光をある程度以上遮ることができれば(実質的にその成果があるものであれば)、遮光部603がどの程度遮光するかは任意であるが、その遮光度は高いほど望ましい。
【0081】
このようにすることにより、太陽電池製造装置600は、電解液注入後の色素増感型の太陽電池611の発電特性の劣化をより強く抑制することができる。
【0082】
なお、太陽電池製造装置600が搬送する太陽電池611は、電解液注入後の工程であればどの工程であってもよく、完成後のものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
101 色素増感型太陽電池モジュール, 102 閉回路, 103 閉回路, 103A 抵抗器, 201 短絡トレイ, 211 太陽電池, 211Aおよび211B 集電部, 301 梱包箱, 301A 蓋部, 301B 底部, 401 包装材, 411 導電性包装材, 600 太陽電池製造装置, 601 搬送レール, 601Aおよび601B レール, 602 短絡抵抗, 603 遮光部, 611 太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素増感型太陽電池を自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形される筺体と、
前記筺体に固定された前記色素増感型太陽電池の両極を短絡させる短絡回路と
を備える固定台。
【請求項2】
前記固定台は、複数の前記色素増感型太陽電池を固定する
請求項1に記載の固定台。
【請求項3】
前記筺体は導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねる
請求項1に記載の固定台。
【請求項4】
前記短絡回路は、前記色素増感型太陽電池が破壊されない程度により大きな電流が流れるような所定の抵抗値の抵抗器を含む
請求項1に記載の固定台。
【請求項5】
遮光性の部材により形成され、内部に色素増感型太陽電池を格納する筺体と、
前記筺体内部に格納される前記色素増感型太陽電池の両極を短絡させる短絡回路と
を備える梱包容器。
【請求項6】
前記筺体は、前記色素増感型太陽電池を格納する中空を有する
請求項5に記載の梱包容器。
【請求項7】
前記筺体は、前記中空に格納される前記色素増感型太陽電池を所定の位置に所定の姿勢で固定するように整形されている
請求項6に記載の梱包容器。
【請求項8】
前記筺体は導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねる
請求項7に記載の梱包容器。
【請求項9】
前記中空に格納される前記色素増感型太陽電池を自分自身に対して所定の位置に所定の姿勢で固定する固定台をさらに備え、
前記固定台は、導電性材料により形成され、前記短絡回路を兼ねる
請求項6に記載の梱包容器。
【請求項10】
前記短絡回路は、前記色素増感型太陽電池が破壊されない程度により大きな電流が流れるような所定の抵抗値の抵抗器を含む
請求項6に記載の梱包容器。
【請求項11】
前記筺体は、内部に複数の前記色素増感型太陽電池を格納する
請求項5に記載の梱包容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−253767(P2011−253767A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128069(P2010−128069)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】