説明

固形状油中水型乳化化粧料

【課題】使用時に充分なみずみずしさ及び清涼感が得られる固形状油中水型乳化化粧料の提供。
【解決手段】固形状油中水型乳化化粧料に、1)12−ヒドロキシステアリン酸、2)アシル化フィトステロールを含有させる。12−ヒドロキシステアリン酸を化粧料に対して0.5〜5.0質量%含有させ、アシル化フィトステロールを化粧料全体に対して0.5〜5.0質量%含有させることが好ましい。また、アシル化フィトステロールとしてはイソステアリン酸フィトステロールであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料、とりわけファンデーションとして有用な固形状油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ベースメーク、特にファンデーションはいわゆるパウダーファンデーションが主流であるが、乳化タイプのファンデーションは保湿性に優れるため、依然として重用されている。しかしながら、乳化タイプのファンデーションは、携帯性に劣り、また、化粧直しに手間取る等の課題を有している。このような課題を解決するため、油中水乳化型であり外相の油相をワックス等の固形油や油性ゲル化剤で固化し、全体を固形にした、いわゆる固形状油中水型乳化タイプのファンデーションが考案されてきた(例えば特許文献1、2、3,4参照)これらの、固形状油中水型乳化タイプのファンデーションは製品として中皿等に充填する工程が必要であり、その為には流動性を持たせるため、一度調製した固形状油中水型乳化タイプのファンデーションを再加熱するこことが必要である。ところが、再加熱によって、固形油相中に分散された水相が合一し、中皿中で固形の油相と水相が分離したり、粒径の大きな水滴が固形油相中に分散されるため、使用時のみずみずしさ、清涼感に欠けるという課題が生じる場合があった。すなわち、最終製品で固形油相中に水相が粒径の小さな水滴となって均一に分散することで、使用時のみずみずしさ、清涼感を実感できる固形状油中水型乳化化粧料が望まれていた。
【0003】
一方、油性ゲル化剤として12−ヒドロキシステアリン酸を用いて、アシル化フィトステロールを含有する油相を固化し固形状油中水型乳化化粧料を調製すると、水相が小さな粒径の水滴として油相中に均一に分散し、みずみずしさや清涼感を十分に得られる固形状油中水型乳化化粧料が調製できることは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−228343
【特許文献2】特開平9−268120
【特許文献3】特開2009−73752
【特許文献4】特開2009−73753
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用時に充分なみずみずしさ及び清涼感が得られる固形状油中水型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような状況下、使用時に充分なみずみずしさ及び清涼感が得られる固形状油中水型乳化化粧料を求めて、12−ヒドロキシステアリン酸を固化剤とする固形状油中水型乳化化粧料の油相に含有させる油剤の探求に鋭意努力した結果、固形油相中にアシル化フィトステロールを含有させることで、水相が微細な水滴で均一に分散し、使用時に充分なみずみずしさ及び清涼感を得られることを発見し、本発明に至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
(1)1)12−ヒドロキシステアリン酸及び2)アシル化フィトステロールを含有することを特徴と固形状油中水型乳化化粧料。
(2)12−ヒドロキシステアリン酸を化粧料全量に対して0.5〜5.0質量%含有する(1)記載の固形状油中水型乳化化粧料。
(3)アシル化フィトステロールを化粧料全量に対して0.5〜20.0質量%含有する(1)または(2)記載の固形状油中水型乳化化粧料。
(4)アシル化フィトステロールがイソステアリン酸フィトステロールであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用時に充分なみずみずしさ及び清涼感が得られる固形状油中水型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<1>本発明の固形状油中水型乳化化粧料の必須成分である12−ヒドロキシステアリン酸
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は必須成分として12−ヒドロキシステアリン酸を含有する。12−ヒドロキシステアリン酸は固形状油中水型乳化化粧料の外相である油相を固化させる役割を担っており、その含有量は固形状油中水型乳化化粧料全量に対して、好ましくは0.5〜5.0質量%、さらに好ましくは0.7〜4.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。5.0質量%以上の場合は、のびが重く、固形状油中水型乳化化粧料を肌上に均一に塗布しにくい場合があり好ましくない。0.5質量%以下の場合は固形とならない場合があり好ましくない。
【0010】
<2>本発明の本発明の固形状油中水型乳化化粧料の必須成分であるアシル化フィトステロール
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は必須成分として、更に、アシル化フィトステロールを含有する。アシル化されるフィトステロールとしては、具体的には、βーシトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール及びこれらの混合物が挙げられる。これらの混合物は、植物より抽出、精製して得ることができ、該フィトステロールをアシル化して用いることができる。フィトステロールをアシル化するアシル基としては炭素数2〜20の直鎖及び分岐のアシル基が好ましく、その内でもイソステアロイル基が特に好ましい。イソステアリン酸フィトステロールには、市販されているものも存し、かかる市販品を購入し利用することができる。このような市販品としては、例えば、タマ化学株式会社製の「イソステアリルフィトステロール」が挙げられる。アシル化フィトステロールは固形状油中水型乳化化粧料に水相を均一分散させる役割を担っており、その含有量は、固形状油中水型乳化化粧料全量に対して、好ましくは0.5〜20.0質量%、さらに好ましくは1.0〜10.0質量%、より好ましくは1.5〜5.0質量%である。含有量が0.5質量%以下では水相が小さな粒径で均一に分散されない場合があり、20.0質量%以上の場合は、外相の油相が固化しにくい場合があり好ましくない。
【0011】
<3>本発明の固形状油中水型乳化化粧料
本発明の固形状油中水型乳化化粧料に於いては前記必須成分以外に、発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サンフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;モノメチルポリシロキサン(メチコン)、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;ジメチルシクロポリシロキサン(シクロジメチコン)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸−2−エチルヘキシル等の桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエート、ビタミンB又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤;グリチルリチン酸ジカリウム等の抗炎症剤;アルブチン及びα−アルブチン等のアルブチン誘導体、アスコルビン酸、及びアスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4−アルキルレゾルシノール、セイヨウヤナギエキス、セイヨウノコギリソウエキス、クジンエキス、ユキノシタエキス、油溶性カモミラエキス、油溶性カンゾウエキス等の美白剤などが好ましく例示できる。
【0012】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は前記の成分を常法に従って処理することにより、製造することができる。
【0013】
以下、実施例を挙げて本発明について、さらに詳細な説明を加えるが。本発明が、かかる実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0014】
<実施例1〜5,比較例1〜4>
下記表1に従って本発明の固形状油中水型乳化化粧料、及び比較例としての固形状油中水型乳化化粧料を作成した。すなわち、表1の(イ)の成分を75℃に加熱溶解し、攪拌により均一とした、温度を75℃に保ちながら、(ロ)の成分を添加し、ディスパーを用いて(イ)中に(ロ)を均一に分散させた。ついで、(ハ)を75℃に加熱し、攪拌を続けながら、(イ)、(ロ)に徐々に(ハ)を添加して乳化し、静置下、冷却して固形状油中水型乳化化粧料を得た。
次に、得られた固形状油中水型乳化化粧料を75℃に再加熱し、撹拌しながら気密樹脂中皿に充填した後、静置下、冷却を行った。
(コメント;下線部確認してください。)
【0015】
【表1】


*1)タマ化学株式会社製「イソステアリルフィトステロール」
【0016】
<試験例1>
光学顕微鏡で観察し、油相中に乳化された水相の粒径を求めた。結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
<試験例2>
実施例1〜5、比較例2の固形状油中水型乳化化粧料を塗布した場合の使用感を評価した。すなわち、顔面に実施例1〜5及び比較例2の固形状油中水型乳化化粧料塗布し、その時の使用感を熟練評価者5名により、以下の観点で評価し、5名の平均点を評点とした。なお、評価は比較例2を比較対象3点とし、実施例1〜5の固形状油中水型乳化化粧料を評価した。結果を表3に示す。
評価項目
みずみずしさ、清涼感は、比較例2と比較し、かなり感じるを5点、やや感じるを4点、同等を3点、やや感じないを2点、ほとんど感じないを1点と評価した。結果を表3に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
表2,3から明らかなように本発明の固形状油中水型乳化化粧料においては、再加熱成形後も水相は固形油相中で微細で均一な水滴を形成し、結果として、使用時において、充分にみずみずしさ及び清涼感を感じることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明はファンデーション等の化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)12−ヒドロキシステアリン酸及び2)アシル化フィトステロールを含有することを特徴とする固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
12−ヒドロキシステアリン酸を化粧料全量に対して0.5〜5.0質量%含有する請求項1記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
アシル化フィトステロールを化粧料全量に対して0.5〜20質量%含有する請求項1または2記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
アシル化フィトステロールがイソステアリン酸フィトステロールであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の固形状油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2012−41319(P2012−41319A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185870(P2010−185870)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】