説明

固相−液相混合液の塗工方法およびそれを用いた反射防止フィルム、表示媒体フィルム並びに感圧複写紙

【課題】本発明は、固形分を含む塗工液を固体の偏りなく連続にウェブに塗工する塗工方法およびその方法を用いて製造した反射防止フィルム、マイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルム並びに感圧複写紙を提供することを目的とする。
【解決手段】固体相と液体相が混合している混合液をロール・ツー・ ロール方式でウェブに塗工する方法において、固体相と液体相が混合している混合液を溜めるダム(15)を有した塗工ヘッド(18)を用い、このダム(15)中の固体相と液体相が混合している混合液にウェブを連続して接触させることで固体相と液体相が混合している混合液をウェブ上に塗工すること、かつ、ウェブの搬送方向と異なる方向に固体相と液体相が混合している混合液の流れをダム(15)内に作ることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体を液体に混合した塗工液を連続でウェブに塗工する塗工方法およびその方法を用いて製造した反射防止フィルム、マイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルム並びに感圧複写紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工技術分野において、固体を液体に混合した塗工液を固体層の偏りなく塗工する技術的要求が高まっている。特に、ディスプレイ分野においては、前記の技術の要求は高い。その理由は、ディスプレイは文字や絵画を表示するため部材の機能の偏りは表示媒体の商品価値を著しく低下させるためである。例として、ディスプレイの反射防止フィルム、マイクロカプセルに性能的付加価値がある電子ペーパー用表示媒体フィルムが挙げられる。さらに、前記技術が求められている部材としては、感圧複写紙などが挙げられる。
【0003】
前記ディスプレイに用いられる反射防止フィルムは、明るい照明の反射によって対象の画面が見えにくくなるグレアという現象を防止するフィルムであり、ディスプレイの前面に貼り合わせられる部材である。これを防止する防眩処理は、ベース基材上に光散乱を起こさせることでその効果を得ることができる。一般的にベース基材となるTAC(トリアセチルセルロース)の表面に、シリカなどの透明樹脂を素材とした0.1μmから20μm程度のビーズを分散した透明な樹脂塗液を塗工して微細な凹凸を有する膜面を形成する。
【0004】
しかし、塗液に含まれるビーズの分布密度が塗工層において偏っていると、光の散乱に分布が発生し、ディスプレイとした際にムラがあるように見えてしまう問題がある。このような問題点を改善するため、様々な塗工方式が試されているが、十分な方法は確立されていない。
【0005】
次に、マイクロカプセル型電気泳動式表示装置に描写される文字や絵画の色合いや滑らかさは、パネル基板上に形成されたマイクロカプセル層内のマイクロカプセルの均一分散分布に依存している。パネル基板に対しマイクロカプセル層内のマイクロカプセルの分散分布が不均一である部材を用いた表示パネル装置を駆動すると、表示された文字や絵画に色合いムラが容易に観察される。さらに、表示画面の全面もしくは一部を白黒駆動すると、画面にマイクロカプセルの不均一な分布箇所にスジやムラが残像の様に観察され、使用者に不快感を与えてしまっている。
【0006】
パネル基板上に形成されたマイクロカプセル層内のマイクロカプセルの分散分布状態は、パネル基板の部材である透明電極を有する表示側である前面基板上にマイクロカプセルインキを塗工する工程で確認することができる。マイクロカプセルインキの塗工後の前面基板をパネルライト越しに透過観察すると、マイクロカプセルの分散分布に合せ透過光の量が異なるのである。
【0007】
分散分布が良いとはマイクロカプセルの粒径が整っている意味ではなく、前面基板上に満遍なく塗工されていることを指す。分散分布の判断基準としては、塗工基材に対しパネルライトを通して透過観察した際、任意に選んだ2点の直径20mmの領域の透過光量を測定した際に差が10%以内であることを示す。
【0008】
これを改善する為に、パネル基板上のマイクロカプセル層の形成に様々な塗工方式が試
されているが塗工の際にマイクロカプセル間に隙間が生じやすく、パネル基板上に不均一にマイクロカプセルが塗工されてしまっている。さらに、マイクロカプセルは凝集性が高くマイクロカプセルインキ内に凝集物が発生し易く、スロットダイのようなスリットの狭い塗工方式を試みるとスリットに詰まりが生じ、結果として良好なマイクロカプセル層を得ることができていない。
【0009】
このようなことから、外周面の軸方向に断続的にグラビアパターンが形成された塗工ロールを有するキス・リバースコート方式の塗工装置を用いて、電気泳動表示用マイクロカプセルを含有する塗工液を塗工する工程を含む電気泳動表示用シートの製造方法の提案がなされている。(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この場合は、塗工ロールに細工を施しており、塗工方法には全く工夫がなされていない。
【0010】
次に、感圧複写紙は電子供与性発色剤のある溶剤溶液を内包するマイクロカプセルを紙面に塗工し、他の紙面に酸性物質を塗工し、両紙面が接触するように向い合わせて重ね、鉛筆、タイプライター等の圧力で発色剤を酸性物質塗工面に転移させて、発色させて複写像を得ることができる。
【0011】
しかし、塗工液に含まれるマイクロカプセルが塗工層において偏りが発生すると、転写されるべき文字や絵画に描画されない箇所が発生し、転写された用紙側の文字や記号が読み取れない問題が発生している。このような問題点を改善する為、様々な塗工方式が試されているが、十分な方法は確立されていない。
【0012】
以上のように、塗工液の中の固形分を塗工対象ウェブに均一に分散塗工することは現在の技術では困難を極めている。
【0013】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2006−18235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、固形分を含む塗工液を固体の偏りなく連続にウェブに塗工する塗工方法およびその方法を用いて製造した反射防止フィルム、マイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルム並びに感圧複写紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、固体相と液体相が混合している混合液をロール・ツー・ ロール方式でウェブに塗工する方法において、固体相と液体相が混合している混合液を溜めるダム(15)を有した塗工ヘッド(18)を用い、このダム(15)中の固体相と液体相が混合している混合液にウェブを連続して接触させることで固体相と液体相が混合している混合液をウェブ上に塗工すること、かつ、ウェブの搬送方向と異なる方向に固体相と液体相が混合している混合液の流れをダム(15)内に作ることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法である。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の固相−液相混合液の塗工方法において、前記ウェブ幅以上の幅を有するダム(15)内にあるスリット(17)状のインキ供給口から固体相と液体相が混合している混合液が供給されることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法である。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の固相−液相混合液の塗工方法において、前記スリット(17)状のインキ供給口からダム(15)内に供給される固体相と液体相が混合している混合液は幅方向で異なる流量分布であることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法である。
【0018】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の固相−液相混合液の塗工方法において、前記ダム(15)内にウェブの幅方向に沿って固体相と液体相が混合している混合液が供給されることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法である。
【0019】
本発明の請求項5に係る発明は、樹脂層上に、透明ビーズを含む塗工液を塗工することによって防眩処理を施された反射防止フィルムにおいて、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、透明ビーズを含む塗工液をベース基板上に塗工した反射防止フィルムである。
【0020】
本発明の請求項6に係る発明は、正に帯電する第一の色の着色粒子と負に帯電する第二の色の着色粒子とを有する分散液を封入したマイクロカプセルをウェブに均一に塗工したマイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルムにおいて、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、マイクロカプセルインキをパネル基板上に塗工した部材を含むマイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルムである。
【0021】
本発明の請求項7に係る発明は、2つの紙面が接触するように向い合わせて重ね、鉛筆、タイプライター等の圧力で片側に塗工されているマイクロカプセルを破壊することにより内包している物質が他方に転写され、それに伴い他方の表面に塗工されている物質と接触することにより化学反応を起こし、発色させて複写像を得る物理的複写方式の感圧複写紙において、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、マイクロカプセル塗工液を紙面に塗工した感圧複写紙である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法は、固体相と液体相が混合している混合液をロール・ツー・ ロール方式でウェブに塗工する方法において、固体相と液体相が混合している混合液を溜めるダムを有した塗工ヘッドを用い、このダム中の固体相と液体相が混合している混合液にウェブを連続して接触させることで固体相と液体相が混合している混合液をウェブ上に塗工すること、かつ、ウェブの搬送方向と異なる方向に固体相と液体相が混合している混合液の流れをダム内に作ることにより、固体相と液体相が混合している塗工液の成分、配合比を変えることなく、塗工ヘッド内のマイクロカプセルインキの流動方向を調整することで、固形分を含む塗工液を固体の偏りなく連続にウェブに塗工することが可能になる。これにより、防眩板、電子ペーパー、感圧複写紙など固形分を含む混合液の塗工技術を要する製品を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法により作製した表示媒体フィルムを用いたマイクロカプセル型電気泳動式表示装置の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造の1実施例を示す斜視図であり、図3は本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のその他の実施例を示す斜視図であり、図4は本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のまたその他の実施例を示す斜視図であり、図5は本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のさらにまたその他の実施例を示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように本発明による電気泳動表示パネルは、第一の色を有する白色粒子(5)と第二の色を有する着色粒子(3)及び透明分散媒(4)とを内包するマイクロカプセル(6)とバインダーを混合したインキを、透明基材(1)上に透明電極(2)を設けたディスプレイとして観察側(S)となる前面電極板(10)上に、均一に塗工することにより形成されたマイクロカプセル型電気泳動層(11)を重ね合わせ、当該カプセル型電気泳動層(11)上に透明接着剤層(7)を介して画素電極(8)を配した背面基材(9)からなる背面電極板(12)をラミネートすることにより成り立つ。尚、図1は模式図であるため、同図に描かれている各層の厚さは、実際の厚さを全く反映していない。実際には、マイクロカプセル含有層は通常、数十μm程度の非常に薄い膜を成すように形成され、一方、前面電極板(10)および背面電極板(12)はそれよりもはるかに厚い層を成す構造となっている。
【0026】
前記背面電極板(12)は、平行に配置された各々の画素電極(8)のスイッチング素子に接続されカプセル型電気泳動層(11)に電圧を印加できるようになっている。透明電極(2)を基準として画素電極(8)の電圧を変動させることで、マイクロカプセル(6)に電界を印加しマイクロカプセル(6)に内包されている多数の着色粒子(3)を移動させることができる。表示される文字や絵画は前面電極板(10)側へ移動した着色粒子(3)に依存している。
【0027】
塗工によって形成されるカプセル型電気泳動層(11)のマイクロカプセル(6)は、均一に分散分布しているのが好ましい。分散分布が良いとはマイクロカプセル(6)の粒径が整っている意味ではなく、前面電極板(10)上に満遍なく塗工されていることを指す。分散分布の判断基準としては、塗工基材に対しパネルライトを通して透過観察した際、任意に選んだ2点の直径20mmの領域の透過光量を測定した際に差が10%以内であることを示す。
【0028】
カプセル型電気泳動層(11)は、前記のようにマイクロカプセルインキを前面電極板(10)上に塗工し形成するものである。塗工方法としては、前面電極板に対し幅方向のマイクロカプセルインキを溜めるダムを有し、このダム中のマイクロカプセルインキにパネル基板の塗工面を接触させ、パネル基板がダムを通過する際に設定したクリアランスを持ってマイクロカプセルインキをブレードで掻きとる。又は、ビードを形成し基板に転写する方式が最適である。類似する従来の方法としては、コンマコーター、カーテンコーター、ダイコーターなどが挙げられる。しかし、いずれの方法もマイクロカプセルインキの中のマイクロカプセルの分散分布に偏りが生じ、塗工面にマイクロカプセルの偏りが生じている。
【0029】
そこで本発明は、ダムにおいてマイクロカプセルインキ内の前面電極板の搬送方向と異なる方向にインキの流れを作ることで、本問題を解決する。但し、このインキの流れは、ダム内に置いて一方向でなくてはならない。複数の方向にインキの流れを強制的に生じさせると、ダム内においていたるところで乱流が発生し、結果としてマイクロカプセルインキ中にマイクロカプセルの偏りを形成してしまうからである。そこで、搬送方向と異なる一つの方向にダム内のマイクロカプセルインキの流れを作ることで、ダム内においてもマイクロカプセルが攪拌されマイクロカプセルの偏りを解消するのである。
【0030】
ダム内にてマイクロカプセルインキの流れを調整する方法として、ダム内に攪拌装置を設置し強制的に流動を起こす方法、前面電極板の搬送方向と垂直方向のダム内スリットからのインキ流量バランスを不均一にする方法、ダムに対し横からマイクロカプセルインキを投入するなどが挙げられる。
【0031】
ダム内に攪拌装置を設置し流動を起こす方法としては、図2に示すように、塗工ヘッド(18)のダム(15)の端側にプロペラのスクリュー(16)を設置する方法が挙げられる。スリット(17)流入口からマイクロカプセルインキがダム(15)へ注入され、スクリュー(16)を回すことでマイクロカプセルインキに幅方向の流れを作ることができるのである。このダム(15)中に塗工ロール(14)に抱かせながら前面電極板(13)からなるウェブを搬送することで、マイクロカプセルインキを均一に塗工するのである。スクリュー(16)以外にも脈動を起こさないような押し出しポンプをダム(15)の端に設置することでも、同様な効果を得ることができる。
【0032】
塗工搬送方向と垂直方向のダム内スリットからのインキ流量バランスを不均一にする方法としては、スリットの口形状を変える方法、スリット内部のインキ流入形状を変えることが挙げられる。
【0033】
前者は、図3に示すように、ダム(21)へのインキ流入口であるスリット口の形状(22)を三角にすることにより、スリット(23)の三角の底辺側から頂点側にかけてダム(21)へのインキの流入量分布がなだらかに減少することで、ダム(21)内に幅方向の流れを作ることができるのである。このダム(21)中に塗工ロール(20)に抱かせながら前面電極板(19)からなるウェブを搬送することで、マイクロカプセルインキを均一に塗工するのである。
【0034】
後者としては、図4に示すように、インキ流入経路であるスリット(27)へ端側のマイクロカプセルインキ注入口(28)からインキを注入し、スリット(27)内でインキが塗工幅に広がる構造をとることで、ダム(26)内へのスリット(27)口からのインキの流入量は前者と同じような状態となり、結果として同様の効果を得ることができるのである。このダム(26)中に塗工ロール(25)に抱かせながら前面電極板(24)からなるウェブを搬送することで、マイクロカプセルインキを均一に塗工するのである。この方法は、従来のリップダイヘッドのスリット部にブロック等を挟み込むことで、同様の構造を形成することが可能である。
【0035】
ダムに対し横からマイクロカプセルインキを投入する方法としては、図5に示すように、ダム(31)横側のインキ流入口(32)からマイクロカプセルインキを注入することで、ダム(31)内に幅方向の流れを作るのである。このダム(31)中に塗工ロール(30)に抱かせながら前面電極板(29)からなるウェブを搬送することで、マイクロカプセルインキを均一に塗工するのである。
【0036】
以上のように、各種のマイクロカプセルインキの流動を制御した塗工方法によりマイクロカプセルの分散分布の良い表示媒体フィルムを得ることができる。
【0037】
同様に、透明ビーズを含む塗工液をベース基板上に塗工した反射防止フィルムやマイクロカプセル塗工液を紙面に塗工した感圧複写紙を得ることができる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法について、具体的に実施例を挙げて、さらに詳しく説明する。
【0039】
<実施例1>
平均粒径が55μm、45〜65μmの粒径の割合が75%以上のマイクロカプセルのマイクロカプセル溶液に、固形分40重量%のウレタン系バインダー、界面活性剤、増粘剤、純水を混合し、マイクロカプセルインキを作製した。
【0040】
ダム内にスクリューを有する塗工ヘッドを用い、マイクロカプセルインキが3m/minで流動するようにスクリューをまわした状態で3m/minの速度で酸化インジウムスズ/ポリエチレンテレフタレート基材の酸化インジウムスズ面に塗工を行った。
【0041】
得られた塗工ロール基材をパネル照明の前に置き、照明と逆側から透過光を観察したところ、透過光にムラは観察されなかった。また、任意に選んだ2箇所の直径20mmの領域の透過光量を測定した結果、その透過光量の差は10%以内であった。
【0042】
さらに得られた塗工ロール基材を200mm四方に金型を用いて断裁し、シートとした後、ポリエステルウレタン系接着剤により薄膜のトランジスタを有する188μm厚のフィルム基板に5kg/cm2の圧力で貼り合せ、表示デバイス装置を得た。
【0043】
作製した表示デバイス装置の表示画面は、従来の表示画面と比較すると、白画面においては反射率が2〜5%上昇した。
【0044】
<実施例2>
125μm厚のトリアセチルセルロースをベース基材とし、傷付き防止の為のハードコート層としてアクリル樹脂を塗工した。次に、このハードコート層上に塗工するための平均粒径3μmのガラスビーズをシリコン系塗工材料に混合した塗工液を作製した。
【0045】
50mm長スリット構造の700mm幅リップダイヘッドのスリット間隙を20mmに設定し、そこに20mmと800mmの辺を有する直角二等辺三角形のテフロン(登録商標)製の高さ50mmの三角柱を設置した。このリップダイヘッドを用い、5m/minの速度で先に作製したベース基材のアクリル樹脂層からなるハードコート層上に塗工を行い、硬化することで防眩板を得た。
【0046】
得られた防眩板をパネル照明の前に置き、照明と逆側から透過光を観察したところ、透過光にムラは観察されなかった。
【0047】
<実施例3>
平均粒径が50μm、40〜60μmの粒径の割合が75%以上のマイクロカプセルのマイクロカプセル溶液に、固形分40重量%のウレタン系バインダ、界面活性剤、増粘剤、純水を混合し、マイクロカプセルインキを作製した。
【0048】
50mm長スリット構造の700mm幅リップダイヘッドのスリット間隙を20mmに設定し、そこに50mmと750mmの辺を有する直角二等辺三角形のテフロン(登録商標)製の高さ20mm三角柱を750mmの辺がリップダイヘッドのマニホールドに接するように設置した。このリップダイヘッドを用い、5m/minの速度で酸化インジウムスズ/ポリエチレンテレフタレート基材の酸化インジウムスズ面に塗工を行った。
【0049】
得られた塗工ロール基材をパネル照明の前に置き、照明と逆側から透過光を観察したところ、透過光にムラは観察されなかった。また、任意に選んだ2箇所の直径20mmの領域の透過光量を測定した結果、その透過光量の差は10%以内であった。
【0050】
<実施例4>
発光剤であるクリスタルバイオレットラクトンを内包する平均粒径0.2μmのマイクロカプセルの分散液に デンプン、酸化デンプン水溶液およびスチレン−ブタジエン系ラテックスを混合、攪拌してカプセル含有塗工液を調製した。
【0051】
調整した塗液を、ダムの横側にインキ注入口を有する600mm幅塗工ダイヘッドを用
い、3m/minの速度で乾燥塗工量が4g/m2になるように支持体上に塗工を行い、感圧複写紙用カプセルシートを作製した。
【0052】
作製した感圧複写紙用カプセルシートを200mm四方に断裁し、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛とα−メチルスチレン・スチレン共重合体との混融物、ポリビニルアルコール水溶液及び水を粉砕して得た分散液に、カルボキシ変性スチレン・ブタジェン共重合体ラテックスを加えて調製した呈色剤塗液を支持体に塗工して得た感圧複写紙用呈色剤シートの上に重ねた。
【0053】
引続き、感圧複写紙用カプセルシート上から先端が丸まった棒を用い満遍なく4kg/m2の荷重で擦ると、感圧複写紙用呈色剤シート全面が発色することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法により作製した表示媒体フィルムを用いたマイクロカプセル型電気泳動式表示装置の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造の1実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のその他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のまたその他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る固相−液相混合液の塗工方法に用いる塗工ヘッド構造のさらにまたその他の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・透明基材
2・・・透明電極
3・・・着色粒子
4・・・透明分散媒
5・・・白色粒子
6・・・マイクロカプセル
7・・・透明接着剤層
8・・・画素電極
9・・・背面基材
10・・・前面電極板
11・・・マイクロカプセル型電気泳動層
12・・・背面電極板
13・・・前面電極板
14・・・塗工ロール
15・・・ダム
16・・・スクリュー
17・・・スリット
18・・・塗工ヘッド
19・・・前面電極板
20・・・塗工ロール
21・・・ダム
22・・・スリット形状
23・・・スリット
24・・・前面電極板
25・・・塗工ロール
26・・・ダム
27・・・スリット
28・・・マイクロカプセルインキ注入口
29・・・前面電極板
30・・・塗工ロール
31・・・ダム
32・・・マイクロカプセルインキ注入口
S・・・観察側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体相と液体相が混合している混合液をロール・ツー・ ロール方式でウェブに塗工する方法において、固体相と液体相が混合している混合液を溜めるダムを有した塗工ヘッドを用い、このダム中の固体相と液体相が混合している混合液にウェブを連続して接触させることで固体相と液体相が混合している混合液をウェブ上に塗工すること、かつ、ウェブの搬送方向と異なる方向に固体相と液体相が混合している混合液の流れをダム内に作ることを特徴とする固相−液相混合液の塗工方法。
【請求項2】
前記ウェブ幅以上の幅を有するダム内にあるスリット状のインキ供給口から固体相と液体相が混合している混合液が供給されることを特徴とする請求項1記載の固相−液相混合液の塗工方法。
【請求項3】
前記スリット状のインキ供給口からダム内に供給される固体相と液体相が混合している混合液は幅方向で異なる流量分布であることを特徴とする請求項1又は2記載の固相−液相混合液の塗工方法。
【請求項4】
前記ダム内にウェブの幅方向に沿って固体相と液体相が混合している混合液が供給されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固相−液相混合液の塗工方法。
【請求項5】
樹脂層上に、透明ビーズを含む塗工液を塗工することによって防眩処理を施された反射防止フィルムにおいて、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、透明ビーズを含む塗工液をベース基板上に塗工した反射防止フィルム。
【請求項6】
正に帯電する第一の色の着色粒子と負に帯電する第二の色の着色粒子とを有する分散液を封入したマイクロカプセルをウェブに均一に塗工したマイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルムにおいて、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、マイクロカプセルインキをパネル基板上に塗工した部材を含むマイクロカプセル型電気泳動式表示装置用の表示媒体フィルム。
【請求項7】
2つの紙面が接触するように向い合わせて重ね、鉛筆、タイプライター等の圧力で片側に塗工されているマイクロカプセルを破壊することにより内包している物質が他方に転写され、それに伴い他方の表面に塗工されている物質と接触することにより化学反応を起こし、発色させて複写像を得る物理的複写方式の感圧複写紙において、請求項1乃至4のいずれか1項記載の塗工方法を用いて、マイクロカプセル塗工液を紙面に塗工した感圧複写紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−66477(P2009−66477A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235201(P2007−235201)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】