土作業用のカッター及び方法
【課題】格別に信頼性が高く経済的で中心間距離を調整可能な土作業カッターを提供し、またその種の土作業カッターを用いて格別に信頼性が高く経済的な土作業方法を提供する。
【解決手段】土作業カッター20及び土作業方法を提供するに当たり、少なくとも2個の掘削車輪41,41’を掘削装置骨格22上に回転駆動可能に配置し支持させる。その際、掘削車輪41,41’の回転軸43,43’が互いに平行になるようにする。これら回転軸43,43’同士の中心間距離を、ニーレバー機構28,28’を備える調整装置によって調整する。
【解決手段】土作業カッター20及び土作業方法を提供するに当たり、少なくとも2個の掘削車輪41,41’を掘削装置骨格22上に回転駆動可能に配置し支持させる。その際、掘削車輪41,41’の回転軸43,43’が互いに平行になるようにする。これら回転軸43,43’同士の中心間距離を、ニーレバー機構28,28’を備える調整装置によって調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土作業用のカッター(soil cutter)に関し、特に、掘削装置骨格(cutting frame)と、この掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪(cutting wheel)と、これら掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を調整するための調整装置と、を備えるミリングカッターに関する。本発明は、また、土作業(soil working)を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカッターのうち特許文献1に記載されている公知のカッターは、掘削装置骨格上に、それぞれ上下2本の腕を有する2本のレバーを、回動可能に支持した構成を有している。各掘削車輪は対応するレバーの下腕に配置されており、各レバーの上端にはそのレバー専用の流体圧シリンダが配置されている。従って、各流体圧シリンダを動作させることにより個々のレバーを動かし各掘削車輪の位置を個別的に変化させることができる。
【0003】
特許文献2により開示されている土作業カッターもその掘削車輪の位置を揺動的に変化させ得るカッターであるが、この揺動の中心となる軸は掘削車輪毎に異なっている。即ち、互いに別体な2本の1本腕レバー上にそれぞれ掘削車輪を配置しそれによって両掘削車輪を掘削装置骨格に対し蝶番連結する一方、それら2本の1本腕レバーをそれぞれ別々の(合計で2個の)流体圧シリンダによって振らせるようにしている。
【0004】
特許文献3により開示されているカッターも、掘削車輪同士の中心間距離を調整可能なカッターである。
【0005】
特許文献4には、壕壁カッター(trench wall cutter)による壕壁形成方法が記載されている。この公知方法においては、まず壕壁面とこれに対向する壕壁面との間が土により埋まっている状態から、土の部分を壕壁カッターにより取り除く。壕壁カッターが所望の最終深さに達したら、その壕壁カッターにおける掘削車輪間隔を拡げて展開状態とする。この状態で壕壁カッターを引き揚げていくと、掘削車輪に面している壕壁面が掘削車輪により処置されることとなる。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−45831号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0496926号明細書(A1)
【特許文献3】独国特許出願公開第1634262号明細書(B)
【特許文献4】独国特許出願公開第3905463号明細書(A1)
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、格別に信頼性が高く経済的で中心間距離を調整可能な土作業カッターを提供すること、並びにそのような土作業カッターを用い格別に信頼性が高く経済的な土作業方法を提供することにある。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の構成を有するカッターや、請求項11記載の手順を有する土作業方法によって、達成できる。またその好適な実施形態は、各従属形式請求項に記載されている。
【0009】
本発明に係るカッターは、ニーレバー機構及びこのニーレバー機構を動作させるための1個又は複数個の流体圧シリンダを含む調整装置によって、複数個ある掘削車輪の回転軸同士を互いに平行に保ちながらそれら回転軸同士の中心間距離を調整すること、また掘削装置骨格上におけるこの流体圧シリンダの位置をそれら回転軸のほぼ中間としたことを、特徴としている。
【0010】
本発明に係るカッターの基本思想は、ニーレバー機構乃至トグルレバー機構を設けることによって、複数個の掘削車輪をその回転軸同士の平行関係を保ちながら互いに他に対して変位させられるようにしたこと、それも各掘削車輪を同時的、一括的且つ異方的に変位させることによりこの相互変位を実現していることにある。ニーレバー機構は、例えば、その一端が共通のヒンジ即ちニーにより互いに連結されている複数本のレバー(例えば少なくとも2本の1本腕レバー)により、実現することができる。このニーレバー機構を組み込むに当たっては、掘削装置骨格上に配置されておりその一端が掘削装置骨格に蝶番連結されている中央の流体圧シリンダの他端に、このニーレバー機構のうちニーの部分を蝶番連結する一方、それぞれ掘削装置骨格上に回動可能に支持されており掘削車輪を支持している複数個の掘削車輪担持体(例えば担持仕切(bearing shield)或いは担持腕板(bearing bracket))それぞれに、何れかのレバーの端部のうちニーから遠い側の端部を蝶番連結する。この状態で流体圧シリンダを動作させれば、ニーレバー機構のうちニーの部分を掘削装置骨格に対して変位させることができ、ひいてはレバーの端部のうちニーから遠い側の端部を変位させることができ、その帰結として各掘削車輪担持体を互いに他に対して同時的、一括的且つ異方的に変位させることができる。即ち、このような形態でニーレバー機構を使用すれば、掘削車輪担持体を介し掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されている全掘削車輪の位置を、単一の流体圧シリンダによって同時に調整することができるため、駆動装置の必要個数を減らして格別に経済的で且つ信頼性の高いカッターを得ることができる。また、流体圧シリンダに取り付けたニーレバー機構によって、流体圧シリンダから作用する力が著しく均等に分割されるため、カッターの信頼性を更に高めることができる。
【0011】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、ニーレバー機構を構成する複数本のレバーの長さを互いに等しくする。そのようにしておけば、調整装置を動作させたときに複数個の掘削車輪に対する調整が互いに全く同様に行われることとなるため、格別に信頼性が高い調整結果を確実に得ることができる。また、ニーの蝶番軸と、掘削車輪担持体及びレバーにより形成されている複数個の蝶番の軸とが、掘削車輪の回転軸に対して或いは互いに平行であれば、力の伝搬上、特に有利になる。なお、本願における「平行」とは、軸と軸とにより挟まれる角度が5°未満であること、好ましくは2°未満更には1°未満であることを、指している。好適なことに、掘削車輪の回転軸同士の平行度は、その中心間距離を調整する間、このレベルに保つことができる。
【0012】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、例えば、掘削車輪の個数ひいてはその担持体(担持仕切乃至担持腕板)の個数やニーレバー機構を構成するレバーの本数を2個乃至2本とし、掘削装置骨格上に回動可能に支持されている担持仕切それぞれの上に別々の掘削車輪を支持し、ニーレバー機構を構成するレバーそれぞれの一端を中央の流体圧シリンダにまた他端を別々の担持仕切にそれぞれ蝶番連結する。このようにすれば、本発明に係るカッターを構成的に見て最も単純な形態によって実施することができる。また、本実施形態によれば、単一の流体圧シリンダ、例えば好ましくはカッターに対して垂直な方向即ちカッターの進行方向に沿って延びている流体圧シリンダにより、ニーレバー機構を動作させることができる。このとき、2個の担持仕切乃至担持腕板の回動軸は同一の軸であってもよいし互いに他と間隔している別々の軸であってもよいが、何れにしても掘削車輪の回転軸に対して平行に且つ互いに平行に配置した方がよい。但し、掘削装置骨格上に2個の担持仕切を回動可能に担持するという着想に特にこだわる必要はなく、例えば担持レール等によっても、変位可能な担持体を実現できる。
【0013】
更に、本発明に係るカッターの格別に有益な実施形態においては、土壕内における案内のための案内部材(例えば案内要素)を掘削装置骨格に設ける。案内先の土壕は、本発明に係るカッターによって形成したもの或いは形成しつつあるものであってもよいし、他の壕壁形成装置(trench wall device)例えば壕壁つかみ装置(trench wall grab)により形成したものであってもよい。何れにせよ、本発明に係るカッターは既設壕をオーバーカッティングするのに使用することができ、また本実施形態における案内部材は、本発明に係るカッターによって既設壕をオーバカットしその側壁を拡張又は形状加工する際に、特に壕を挟んでいる壁面と壁面をカッティングするのに有用である。このような案内部材を有するカッターは、壕内の空間から所望の壕壁面まで掘り進めることができるものであることから、ミリングカッターとしてもとらえることができる。本実施形態によれば、その案内部材によって掘削車輪を既設壕内にて横方向に確実に案内できるため、掘削車輪によるカッティング断面を既設壕断面に対し格別に良好に位置決めでき、従って壕を格別に精密にカッティングすることが可能になる。
【0014】
案内部材は、例えば、掘削装置骨格の外側に縦向きに配置された案内プレート(平板状案内部材)としても、また個別のグリッド支柱が案内機能を果たす格子状案内部材としても、好適に実現できる。掘削装置骨格がほぼ矩形断面となるよう構成されている場合は、案内部材を、掘削装置骨格上、少なくともその先端面上に配置するのが望ましい。
【0015】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削車輪を、その掘削車輪が案内部材より内側に退行している退行状態と、その掘削車輪が案内部材から見て横方向に突出している展開状態と、を随時採り得るよう、調整装置により調整する。本実施形態によれば、掘削車輪を退行状態としておくことによって、壕壁に対して実質的にカッティング処置を施すことなしに、カッターを壕内に降ろしまたカッターを壕内で引き揚げることができる。壕壁に対して処置を施すには、掘削車輪を展開状態とし、掘削装置骨格の断面から壕壁に向け横方向に掘削車輪を突出させればよい。このように掘削車輪を展開状態とすることにより、各掘削車輪を掘削装置骨格の先端面から突出させ、掘削車輪の回転軸同士が互いに平行であるという関係を保ちながら、各掘削車輪の先端面を同時に推し進めることができる。
【0016】
本発明に係るカッターの格別に有益な実施形態においては、退行状態及び展開状態において複数個(例えば2個)の担持仕切によりV字が形成されるようそれら担持仕切を設け、掘削装置骨格上における担持仕切の回動軸同士の距離を退行状態における掘削車輪の回転軸同士の距離より小さくしている。本実施形態におけるV字は、担持仕切の中心軸同士で形成するV字として定義でき、また、各担持仕切の中心軸は、その担持仕切の回動軸とその担持仕切上に支持されている掘削車輪の回転軸とに交差する線として定義できる。本実施形態におけるこのV字の角度は、退行状態において好ましくは3°〜50°の範囲内になるようにする。このように担持仕切によってV字を形成することにより、担持仕切の外向き移動を効率的に行うことができる。
【0017】
また、掘削車輪によるカッティング幅は掘削装置骨格の幅よりも狭い。ここでいうカッティング幅及び掘削装置骨格幅は、何れも、掘削車輪の回転軸方向に沿って計測した外形寸法値である。従って、本実施形態における掘削車輪を用いた場合、壕壁がその全幅に亘って切削されることはなく、結果として、壕を挟んでいる壕壁面がある形状に加工されることになる。但し、これに代え又はこれに加え、掘削車輪の周縁面の外形を適宜定めておき、この外形によって壁面を形状加工するようにしてもよい。
【0018】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、カッターを昇降させる手段として、支持ケーブルの一端をカッターに固定等して使用する。これに代え又はこれに加え、掘削装置骨格上に案内プーリ(例えば方向転換プーリ)を1個又は複数個設け、この案内プーリを介し支持ケーブルによる懸架を行うこともできる。このようにした場合、案内プーリにて折り返すように支持ケーブルがカッターに取り付けられることとなるため、支持ケーブルを引っ張る力が少なくともおよそ1/2になり得る。従って、本実施形態は、カッターを引き揚げながらカッティングを実行するとき、特に掘削車輪を退行させた状態でカッターを降ろした後掘削車輪を展開しその状態でカッターを引き揚げるときに、特に有益であることが、明らかである。なお、この場合、支持ケーブルは、カッターを引き揚げるときに、カッターの重量に加え、掘削車輪を土中に送り出すための力を、伝達できねばならない。
【0019】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削装置骨格上の中央に配置された流体圧送給シリンダを含む送給装置を設け、この送給装置の動作によって案内プーリを掘削装置骨格に対しカッターの進行方向に沿い変位させる。これにより、土中におけるカッターの昇降を格別に精密に制御できひいては格別に良好なカッティング結果を得ることができる。この送給装置によれば、カッターに対する案内プーリの垂直位置即ち支持ケーブルに対するカッターの垂直位置、ひいてはカッターの深さ方向位置を、支持ケーブルが動いていないときでも変化させることができる。また、流体圧シリンダを用いて送給装置が構成されているため、案内プーリを掘削装置骨格上で精密に、且つ単純なやり方で、変位させることができる。
【0020】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、更に有益なことに、支持ケーブルを懸架するための支持装置と、この支持ケーブルが連結される保持骨格と、を設け、このカッターを引っ張る力の一部を、少なくとも支持ケーブルがカッターを引っ張っている間、保持骨格から土中に作用させる。即ち、本実施形態によれば、カッターを引っ張る力の一部分が例えばクレーン等の支持装置から支持ケーブルに伝わる一方、カッターを引っ張る力の他の部分が支持ケーブルを介して保持骨格に伝達され保持骨格から土中へと伝達される。
【0021】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、特に有益なことに、掘削車輪をそれぞれ掘削車輪対により実現する。これら掘削車輪対は、それぞれ、対応する担持仕切の一方の側に配置された個別掘削車輪と、他方の側に配置されたもう1個の個別掘削車輪とを、対にしたものである。最適な形態で実施するには、対をなす2個の個別掘削車輪の回転軸を揃えるか、それらを同じ駆動装置によって駆動するか、或いはその双方の手法を採用するとよい。(個別)掘削車輪駆動用の駆動装置は例えば担持仕切上に配置するとよい。
【0022】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削装置骨格、掘削車輪、ニーレバー機構又はそれらの任意の組合せを鏡像対称に構成する。これにより、カッティング動作中に生じる力を伝達するのに最適なカッターを、得ることができる。その際の対称面を、掘削車輪の回転軸に対し平行としてもよい。
【0023】
また、本発明に係る土作業方法はカッターによる土作業方法であり、掘削装置骨格並びにこの掘削装置骨格上に回転可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪を備えるカッターを土壕内に入れるステップと、これら複数個の掘削車輪が掘削装置骨格から横方向に突出するようニーレバー機構によって掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を拡げるステップと、掘削車輪を回転させつつカッターを引き揚げていくことによって壕壁上の物質を削ぎ落とすステップと、を有するものである。本発明に係る方法を特に本発明に係るカッターにより実行すれば、本発明に係るカッターについて述べた各種の利点を実現することができる。
【0024】
本発明に係る方法は、基本的に、壕内にカッターを降ろしていく間は土壕壁が処置されず壕からカッターを引き揚げていくときにのみ土壕壁が処置される、という基本的着想に着眼して理解することができる。カッターを降ろしていくときにカッティング動作を実行する方法と比べると、本発明のようにカッターを引き揚げながらカッティング動作を実行する方法においては、カッター本体の重量が、掘削車輪を駆動するための力に影響しない。そのため、本発明に係る方法を実施するためのカッターは顕著に軽量な構成としても特に支障がなく、従って経済性に鑑み設計することができる。
【0025】
カッター引き揚げ時にのみ壁面カッティング効果が得られるようにするため、本発明に係る方法においては、掘削車輪をニーレバー機構により調整することによって、カッターを降ろしていく間は掘削車輪を壕の断面内に収め、またカッターを引き揚げていく間は掘削車輪を壕壁内に突出させるようにしている。ニーレバー機構をこのように用いることによって、格別に単純で信頼性の高いやり方にて、各掘削車輪の位置を確実に互いに同時に且つ同じ角度分だけ調整でき、それによって、壕内におけるカッターのブロッキングを大抵は防止することができる。
【0026】
本発明に係るカッターによりその壁面を処置する壕は、本発明に係るカッターによって形成したもの或いは形成しつつあるものでもよいし、より好ましくは他の壕壁形成装置例えば壕壁つかみ装置によって形成したものでもよい。本発明に係るカッターは、既設壕内に入れてその壕壁をオーバーカッティング即ちリカッティングする処置にも使用できる。本発明に係るカッターを用いて処置すれば、壕壁を形状加工することができる。即ち、壕壁に入れるカッティングの深さを、壕壁の幅方向(掘削車輪の軸方向)に沿って、場所毎に異なる深さにすることができる。本発明に係るカッターにより壕壁をカッティングする際は、壕内空間に面しているカッティング対象壕壁面を予め補強しておくのが望ましい。そのようにすれば、格別に高品質で流体に対して強い(流体が浸透しにくい又は浸透では劣化しにくい)連結ジョイント、即ち格別にタイトな壕壁を、得ることができる。
【0027】
また、掘削車輪が壁面から削ぎ落とした土中物質を、カッティング動作中に吸い上げ吐き出すようにすることも、基本的には可能である。とはいえ、削いだ土中物質をそのまま重力作用により壕の底部に落としてしまう方が、格別に有利であろう。即ち、本発明に係る方法によれば、カッティングが引き揚げ中に実行されるため、削ぎ落とされた土中物質は壕の底部に溜まることとなり、従ってこの土中物質はカッティング動作の邪魔にはなり得ないため壕のオーバーカッティングを一気呵成に実行することができる。壕の底部に溜まった土中物質は、壕からカッターを引き揚げた後に、つかみ装置によってそこから運び出せばよい。
【0028】
原理的には、各掘削車輪の回転方向は任意に選択することができる。しかしながら、掘削車輪を2個設ける場合は、それらを逆方向に回転駆動するようにすることが、特に望ましいといえよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態に関し添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様に動作する部材については、各図において同一の参照符号を付すこととする。
【0030】
図1〜図5に第1実施形態に係る土作業設備を示す。この設備は、カッター20として構成されている土作業装置を2本のケーブル4,4’によって支持装置70に懸架した構成を有している。この支持装置70はクレーンジブ72を備えており、このクレーンジブ72は工事用トラック乃至支持用トラック73上に首振り可能に設置されている。支持用トラック73は、更に、支持ケーブル4,4’を操るためのウィンチ機構を装備している。このウィンチ機構は2個のケーブルウィンチ74,74’を有しているが、図中、ケーブルウィンチ74’についてはその一部のみを示してある。支持ケーブル4,4’は、対応するケーブルウィンチ74,74’からクレーンジブ72沿いにジブ72の頂部にある方向転換プーリ76へと案内されており、更に、方向転換プーリ76を巡ってクレーンジブ72沿いにカッター20へと導かれている。なお、支持ケーブル4,4’は、ウィンチ機構上にて支持装置70に連結されている。
【0031】
カッター20は掘削装置骨格22を備えている。掘削装置骨格22の下部には、案内プーリたる2個の方向転換プーリ24,24’が互いに同じ高さ位置となるよう実装されており、またそれらの回転軸は互いに平行になっている。支持装置70の方向転換プーリ76から概ね垂直下方に引き回されてきている支持ケーブル4,4’は、方向転換プーリ24,24’のうち対応するものを巡るよう導かれており、この掘削装置骨格22上の方向転換プーリ24,24’によって上向きへと方向転換され、保持骨格10にて終端固定されている。即ち、各支持ケーブル4,4’の端部にはそれぞれループ54が設けられており、このループ54を保持骨格10上部の対応するボルト55に架けることによって、各支持ケーブル4,4’の一端が保持骨格10に固定されている。
【0032】
図1及び図2から概括できるように、保持骨格10は、カッター20の掘削装置骨格22を地面から持ち上げるときに掘削装置骨格22に沿って動き同時にその掘削装置骨格22によって持ち上げられるよう、構成されている。即ち、掘削装置骨格22の下部に設けられているカッター20用の駆動装置は、保持骨格10上の制止部材に対応する制止部材を備えており、掘削装置骨格22を地面から持ち上げると両制止部材の係合によって保持骨格10が掘削装置骨格22と共に持ち上がることとなる。これに対して、カッター20が土壕80内に降ろされるのに伴い図3に示すように地面に着座するとこの係合が外れるため、カッター20が地中に降りている間は、保持骨格10は地面にあいた壕80の上縁近傍にとどまり続ける。このとき、支持ケーブル4,4’が支持装置70及び保持骨格10の双方に固定されているため、保持骨格10が地面に着座すると即座に、カッター20を引っ張る力のうち概ね半分が保持骨格10によって吸収される状態となる。これによって支持ケーブル4,4’における張力が軽減されるため、カッター20を降ろす際及び引き揚げる際に支持装置70特にそのケーブルウィンチ74,74’に加わる負荷が、軽減されることとなる。
【0033】
保持骨格10はケージ状の構成を有しており、またその中央には掘削装置骨格22を受け入れ可能な通り抜け開口11が設けられている。掘削装置骨格20及び通り抜け開口11は何れも矩形断面を有している。保持骨格10は、退行状態にあるカッター20を受け入れることができるよう設けられた何個かの個別グリッド支柱58を有している。更に、保持骨格10の上側には2個の突起59があり、これらの突起59には支持ケーブル4,4’の固定先たるボルト55が配置されている。通り抜け開口11を通って案内されている支持ケーブル4,4’が壕80の壁とこすれあうことを防ぐため、このボルト55付きの突起59は、壕80の断面内で内側に向かって突出するよう設けられている。
【0034】
掘削装置骨格22は逆U字形の外側フレーム36を備えている。この外側フレーム36の腕は水平支柱38,39及び筋交い支柱37によって支持されている。掘削装置骨格22上、筋交い支柱37の下部には水平支持体25が設けられている。この水平支持体25上には、2個の方向転換プーリ24,24’が固定実装されている。外側フレーム36を構成する腕の外側には、掘削装置骨格22の前方寄りに、平板状案内要素34が設けられている。この平板状案内要素34は、掘削装置骨格22を壕80の壁面により支えられるようにするため、掘削装置骨格22に沿って縦向きに配置されている。
【0035】
カッター20は2個の掘削車輪41,41’を備えている。これら掘削車輪41,41’は回転可能に実装されており、またその回転軸43,43’は互いに平行である。掘削車輪41,41’はそれぞれ掘削車輪対として構成されており、各掘削車輪対は何れも2個の掘削車輪48,49を有している。掘削車輪41’を構成する個別掘削車輪48,49は、それら個別掘削車輪48と個別掘削車輪49の間に位置している担持腕板46’上に、実装されている。掘削車輪41を構成する個別掘削車輪も、担持腕板46上に同様にして実装されている。また、掘削車輪41,41’を個別に回転駆動する手段として、担持腕板46,46’それぞれの上に1個ずつ流体圧駆動装置47が設けられている。これらの流体圧駆動装置47によって、掘削車輪41,41’は好ましくは互いに逆の方向D,D’に回転駆動される。例えば、前面図中左側に示されている掘削車輪41は時計回りに回転駆動され、右側に示されている掘削車輪41’は反時計回りに回転駆動される。勿論、回転方向をこれとは逆にすることも可能である。
【0036】
担持腕板46,46’は、掘削装置骨格22下部の水平支柱39上に回動可能に実装されている。これら2個の担持腕板46,46’の回動軸は、互いに他に対し少なくとも近似的には平行であり、また掘削車輪41,41’の回転軸43,43’及び方向転換プーリ24,24’の回転軸に対し少なくとも近似的には平行である。調整装置を動作させることによって、担持腕板46,46’をカッター20の掘削車輪41,41’と一体に回動させることができ、従って掘削車輪41と掘削車輪41’の間隔を拡げることができるため、掘削車輪41,41’によりカッティングされる断面積を変化させることができる。特に、掘削装置骨格22上における案内要素34の位置を越えて突出するよう掘削車輪41,41’の間隔を拡げることにより、壕80の壁面のうち案内要素34に面している壁面に対し、カッター引き揚げ時に処置を施すことができる。
【0037】
調整装置は、2個の同一長レバー28,28’を有するトグルレバー機構乃至ニーレバー機構を備えている。そのうちレバー28の一端は担持腕板46上に回動可能に実装されており、このレバー28の回動軸は掘削装置骨格22上における担持腕板46の回動軸に対し少なくとも近似的には平行になっている。レバー28’の一端も、担持腕板46’上に同様にして実装されている。また、レバー28,28’の他端は、ジョイント29によって互いに接続されている。このジョイント29の軸は、掘削装置骨格22上における担持腕板46,46’の回動軸に対し少なくとも近似的には平行である。
【0038】
調整装置は、更に、垂直に配置された流体圧シリンダ26を備えている。この流体圧シリンダ26の一端は掘削装置骨格22の支柱39上に実装されており、他端にはジョイント29が実装されている。流体圧シリンダ26を動作させて延ばすと、ジョイント29の下方移動によってレバー28,28’が動き、このレバー28,28’によって担持腕板46,46’同士の間隔が拡がる。
【0039】
カッター20及び保持骨格10は、図1中の引き揚げ面に直交する垂直対称面31について実質的に鏡像対称となるよう、構成されている。流体圧駆動装置47、流体圧シリンダ26、及びオプション的にカッター20上に配置される他の流体圧動作手段に対し流体を供給できるようにするため、この図の土作業設備は、クレーンジブ72の頂部からカッター20へと延びる供給ライン77を備えている。
【0040】
図6〜図10に他の実施形態に係る土作業設備を示す。これらの図に示す実施形態が図1〜図5に示した実施形態と相違している点の一つは、支持ケーブル4,4’が保持骨格10に対し直接固定されていない点である。図6〜図10においては、むしろ、保持骨格10の頂部上に第1のケーブルドラム14及び第2のケーブルドラム14’が設けられており、支持ケーブル4,4’はそれぞれこれらのうち対応するものに巻き付けられている。ケーブルドラム14,14’の回転軸は、方向転換プーリ24,24’の回転軸に対して少なくとも近似的には平行である。各ケーブルドラム14,14’は、図示しないモータによって駆動できる。従って、ケーブルドラム14,14’は、かなり深さがある壕内での施工のため長い支持ケーブル4,4’を用いねばならない場合等に、特に有益である。
【0041】
図6〜図10に示す実施形態に係る土作業設備が図1〜図5に示した実施形態に係る土作業設備と相違している点としては、更に、掘削装置骨格22上に送給装置たる流体圧供給シリンダ23が設けられており、支持ケーブル4,4’用の2個の方向転換プーリ24,24’をこの流体圧供給シリンダ23によって掘削装置骨格22上で垂直方向に変位させられるようにした点がある。この流体圧供給シリンダ23を動作させることによりカッター20上の方向転換プーリ24,24’の垂直位置を修正できるため、支持ケーブル4,4’を固定した状態でも掘削車輪41,41’によるカッティング深さを変化させることができる。
【0042】
本実施形態では、方向転換プーリ24,24’を変位させられるようにするため、流体圧供給シリンダ23の端部に三角形状支持体63を設け、この支持体63上に方向転換プーリ24,24’を実装している。流体圧供給シリンダ23を保護するため、このシリンダ23は2個の入れ子式スリーブ64によってくるまれており、そのうち1個は三角形状支持体63に、もう1個は掘削装置骨格22に、それぞれ装着されている。
【0043】
図11〜図14に土作業方法の各工程を示す。図11に示す第1工程においては、2個の補強済壕主壁面(hardened trench wall primary panel)81,81’によって挟まれている壕80の内部に、カッター20を入れる。入れる先の壕80の実質部分は、例えば、カッター20の動作によって又は他の壕壁手段によって形成されたものである。カッター20が壕80内に入っている間は、保持骨格10は、地面に現れている壕80の上縁にとどまっている。支持ケーブル4,4’がカッター20に折り返しで架かっておりまたそれらケーブル4,4’の一端が保持骨格10上に実装されているため、カッター20に加わる引張方向の力のうち半分が保持骨格10により吸収される。なお、図面の簡易化のため、図12〜図14には保持骨格10は図示していない。
【0044】
カッター20を壕80内に降ろしていく間は、掘削車輪41,41’を退行状態としておく。退行状態においては、掘削車輪41,41’によるカッティング断面は壕80及び掘削装置骨格22の断面内に収まっている。従って、カッター20を降ろしていく間に掘削車輪41,41’により壕80の壁から物質が削ぎ落とされることはない。
【0045】
掘削車輪41,41’は、カッター20が壕80の底まで降りた後に、回転させる。このとき、併せてトグルレバー機構を含む調整装置を動作させることによって、掘削車輪41,41’を逆方向に移動させてその間隔を拡げる。すると、掘削車輪41,41’が壕80の2個の端壁79内に進入する。この状態を図12に示す。
【0046】
この時点から、図13に示されているようにカッター20を引き揚げていくと、壕80の端壁79がその下側から上側に向けてカッティングされていく。このようにその掘削車輪41,41’の間隔が拡がっているカッター20を引き揚げていく際には、比較的強い引張方向の力がカッター20に作用するが、その一部は保持骨格10によって吸収される。特に流体に対して強い(非浸透性のある又は浸透によっては劣化しにくい)壕壁を形成するには、掘削車輪41,41’による主壁面81,81’のカッティングを部分的なカッティングとする。
【0047】
カッティングによって削がれた土中物質は重力によってカッター20の下へと落ち壕80の底に到達するが、これらは後につかみ装置を用いてそこから回収することができるため、削ぎ落とされた土中物質を吸い上げ吐き出す処置は不要である。このことから、本カッター20は、削ぎ落とした土中物質を汲み上げる機構なしで構成されている。
【0048】
壕80の一部深さ範囲のみにて端壁をオーバーカッティングする場合は、図14に示すように、壕(スロット)80内で掘削車輪41,41’をたたんでから、壕80の壁に対して更なる処置を施すことなくカッター20を引き揚げればよい。
【0049】
図15及び図16に、本土作業方法によって得ることが可能な相異なるカッティング断面を示す。液体に対して格別に強い壕壁を形成するには、壕80の端壁79の全幅の一部だけカッティングし特定の外形を付与すればよい。そのためには、掘削車輪41,41’の幅を端壁79の幅より狭くするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係りカッターとして構成されている土作業装置を伴う土作業設備の前面図である。
【図2】図1に示した設備の側面図である。
【図3】図1に示した設備にてカッターを降ろした状態における保持骨格を示す前面図である。
【図4】図1に示した設備におけるカッターの前面図である。
【図5】図1に示した設備におけるカッターの側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係りカッターとして構成されている土作業装置を伴う土作業設備の前面図である。
【図7】図6に示した設備の側面図である。
【図8】図6に示した設備にてカッターを降ろした状態における保持骨格を示す前面図である。
【図9】図6に示したカッターの前面図である。
【図10】図6に示した設備の平面図である。
【図11】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図12】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図13】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図14】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図15】カッターとして構成されている土作業装置によりカッティングされた部分の断面図である。
【図16】カッターとして構成されている土作業装置によりカッティングされた部分の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
4,4’ 支持ケーブル、10 保持骨格、20 カッター、22 掘削装置骨格、23 流体圧送給シリンダ、24,24’,76 方向転換プーリ、26 垂直流体圧シリンダ、28,28’ レバー、31 垂直対称面、34 平板状案内要素、41,41’ 掘削車輪、43,43’ 平行回転軸、46,46’ 担持腕板、48,49 個別掘削車輪、70 支持装置、79 端壁、80 壕(スロット)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、土作業用のカッター(soil cutter)に関し、特に、掘削装置骨格(cutting frame)と、この掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪(cutting wheel)と、これら掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を調整するための調整装置と、を備えるミリングカッターに関する。本発明は、また、土作業(soil working)を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカッターのうち特許文献1に記載されている公知のカッターは、掘削装置骨格上に、それぞれ上下2本の腕を有する2本のレバーを、回動可能に支持した構成を有している。各掘削車輪は対応するレバーの下腕に配置されており、各レバーの上端にはそのレバー専用の流体圧シリンダが配置されている。従って、各流体圧シリンダを動作させることにより個々のレバーを動かし各掘削車輪の位置を個別的に変化させることができる。
【0003】
特許文献2により開示されている土作業カッターもその掘削車輪の位置を揺動的に変化させ得るカッターであるが、この揺動の中心となる軸は掘削車輪毎に異なっている。即ち、互いに別体な2本の1本腕レバー上にそれぞれ掘削車輪を配置しそれによって両掘削車輪を掘削装置骨格に対し蝶番連結する一方、それら2本の1本腕レバーをそれぞれ別々の(合計で2個の)流体圧シリンダによって振らせるようにしている。
【0004】
特許文献3により開示されているカッターも、掘削車輪同士の中心間距離を調整可能なカッターである。
【0005】
特許文献4には、壕壁カッター(trench wall cutter)による壕壁形成方法が記載されている。この公知方法においては、まず壕壁面とこれに対向する壕壁面との間が土により埋まっている状態から、土の部分を壕壁カッターにより取り除く。壕壁カッターが所望の最終深さに達したら、その壕壁カッターにおける掘削車輪間隔を拡げて展開状態とする。この状態で壕壁カッターを引き揚げていくと、掘削車輪に面している壕壁面が掘削車輪により処置されることとなる。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−45831号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0496926号明細書(A1)
【特許文献3】独国特許出願公開第1634262号明細書(B)
【特許文献4】独国特許出願公開第3905463号明細書(A1)
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、格別に信頼性が高く経済的で中心間距離を調整可能な土作業カッターを提供すること、並びにそのような土作業カッターを用い格別に信頼性が高く経済的な土作業方法を提供することにある。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の構成を有するカッターや、請求項11記載の手順を有する土作業方法によって、達成できる。またその好適な実施形態は、各従属形式請求項に記載されている。
【0009】
本発明に係るカッターは、ニーレバー機構及びこのニーレバー機構を動作させるための1個又は複数個の流体圧シリンダを含む調整装置によって、複数個ある掘削車輪の回転軸同士を互いに平行に保ちながらそれら回転軸同士の中心間距離を調整すること、また掘削装置骨格上におけるこの流体圧シリンダの位置をそれら回転軸のほぼ中間としたことを、特徴としている。
【0010】
本発明に係るカッターの基本思想は、ニーレバー機構乃至トグルレバー機構を設けることによって、複数個の掘削車輪をその回転軸同士の平行関係を保ちながら互いに他に対して変位させられるようにしたこと、それも各掘削車輪を同時的、一括的且つ異方的に変位させることによりこの相互変位を実現していることにある。ニーレバー機構は、例えば、その一端が共通のヒンジ即ちニーにより互いに連結されている複数本のレバー(例えば少なくとも2本の1本腕レバー)により、実現することができる。このニーレバー機構を組み込むに当たっては、掘削装置骨格上に配置されておりその一端が掘削装置骨格に蝶番連結されている中央の流体圧シリンダの他端に、このニーレバー機構のうちニーの部分を蝶番連結する一方、それぞれ掘削装置骨格上に回動可能に支持されており掘削車輪を支持している複数個の掘削車輪担持体(例えば担持仕切(bearing shield)或いは担持腕板(bearing bracket))それぞれに、何れかのレバーの端部のうちニーから遠い側の端部を蝶番連結する。この状態で流体圧シリンダを動作させれば、ニーレバー機構のうちニーの部分を掘削装置骨格に対して変位させることができ、ひいてはレバーの端部のうちニーから遠い側の端部を変位させることができ、その帰結として各掘削車輪担持体を互いに他に対して同時的、一括的且つ異方的に変位させることができる。即ち、このような形態でニーレバー機構を使用すれば、掘削車輪担持体を介し掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されている全掘削車輪の位置を、単一の流体圧シリンダによって同時に調整することができるため、駆動装置の必要個数を減らして格別に経済的で且つ信頼性の高いカッターを得ることができる。また、流体圧シリンダに取り付けたニーレバー機構によって、流体圧シリンダから作用する力が著しく均等に分割されるため、カッターの信頼性を更に高めることができる。
【0011】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、ニーレバー機構を構成する複数本のレバーの長さを互いに等しくする。そのようにしておけば、調整装置を動作させたときに複数個の掘削車輪に対する調整が互いに全く同様に行われることとなるため、格別に信頼性が高い調整結果を確実に得ることができる。また、ニーの蝶番軸と、掘削車輪担持体及びレバーにより形成されている複数個の蝶番の軸とが、掘削車輪の回転軸に対して或いは互いに平行であれば、力の伝搬上、特に有利になる。なお、本願における「平行」とは、軸と軸とにより挟まれる角度が5°未満であること、好ましくは2°未満更には1°未満であることを、指している。好適なことに、掘削車輪の回転軸同士の平行度は、その中心間距離を調整する間、このレベルに保つことができる。
【0012】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、例えば、掘削車輪の個数ひいてはその担持体(担持仕切乃至担持腕板)の個数やニーレバー機構を構成するレバーの本数を2個乃至2本とし、掘削装置骨格上に回動可能に支持されている担持仕切それぞれの上に別々の掘削車輪を支持し、ニーレバー機構を構成するレバーそれぞれの一端を中央の流体圧シリンダにまた他端を別々の担持仕切にそれぞれ蝶番連結する。このようにすれば、本発明に係るカッターを構成的に見て最も単純な形態によって実施することができる。また、本実施形態によれば、単一の流体圧シリンダ、例えば好ましくはカッターに対して垂直な方向即ちカッターの進行方向に沿って延びている流体圧シリンダにより、ニーレバー機構を動作させることができる。このとき、2個の担持仕切乃至担持腕板の回動軸は同一の軸であってもよいし互いに他と間隔している別々の軸であってもよいが、何れにしても掘削車輪の回転軸に対して平行に且つ互いに平行に配置した方がよい。但し、掘削装置骨格上に2個の担持仕切を回動可能に担持するという着想に特にこだわる必要はなく、例えば担持レール等によっても、変位可能な担持体を実現できる。
【0013】
更に、本発明に係るカッターの格別に有益な実施形態においては、土壕内における案内のための案内部材(例えば案内要素)を掘削装置骨格に設ける。案内先の土壕は、本発明に係るカッターによって形成したもの或いは形成しつつあるものであってもよいし、他の壕壁形成装置(trench wall device)例えば壕壁つかみ装置(trench wall grab)により形成したものであってもよい。何れにせよ、本発明に係るカッターは既設壕をオーバーカッティングするのに使用することができ、また本実施形態における案内部材は、本発明に係るカッターによって既設壕をオーバカットしその側壁を拡張又は形状加工する際に、特に壕を挟んでいる壁面と壁面をカッティングするのに有用である。このような案内部材を有するカッターは、壕内の空間から所望の壕壁面まで掘り進めることができるものであることから、ミリングカッターとしてもとらえることができる。本実施形態によれば、その案内部材によって掘削車輪を既設壕内にて横方向に確実に案内できるため、掘削車輪によるカッティング断面を既設壕断面に対し格別に良好に位置決めでき、従って壕を格別に精密にカッティングすることが可能になる。
【0014】
案内部材は、例えば、掘削装置骨格の外側に縦向きに配置された案内プレート(平板状案内部材)としても、また個別のグリッド支柱が案内機能を果たす格子状案内部材としても、好適に実現できる。掘削装置骨格がほぼ矩形断面となるよう構成されている場合は、案内部材を、掘削装置骨格上、少なくともその先端面上に配置するのが望ましい。
【0015】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削車輪を、その掘削車輪が案内部材より内側に退行している退行状態と、その掘削車輪が案内部材から見て横方向に突出している展開状態と、を随時採り得るよう、調整装置により調整する。本実施形態によれば、掘削車輪を退行状態としておくことによって、壕壁に対して実質的にカッティング処置を施すことなしに、カッターを壕内に降ろしまたカッターを壕内で引き揚げることができる。壕壁に対して処置を施すには、掘削車輪を展開状態とし、掘削装置骨格の断面から壕壁に向け横方向に掘削車輪を突出させればよい。このように掘削車輪を展開状態とすることにより、各掘削車輪を掘削装置骨格の先端面から突出させ、掘削車輪の回転軸同士が互いに平行であるという関係を保ちながら、各掘削車輪の先端面を同時に推し進めることができる。
【0016】
本発明に係るカッターの格別に有益な実施形態においては、退行状態及び展開状態において複数個(例えば2個)の担持仕切によりV字が形成されるようそれら担持仕切を設け、掘削装置骨格上における担持仕切の回動軸同士の距離を退行状態における掘削車輪の回転軸同士の距離より小さくしている。本実施形態におけるV字は、担持仕切の中心軸同士で形成するV字として定義でき、また、各担持仕切の中心軸は、その担持仕切の回動軸とその担持仕切上に支持されている掘削車輪の回転軸とに交差する線として定義できる。本実施形態におけるこのV字の角度は、退行状態において好ましくは3°〜50°の範囲内になるようにする。このように担持仕切によってV字を形成することにより、担持仕切の外向き移動を効率的に行うことができる。
【0017】
また、掘削車輪によるカッティング幅は掘削装置骨格の幅よりも狭い。ここでいうカッティング幅及び掘削装置骨格幅は、何れも、掘削車輪の回転軸方向に沿って計測した外形寸法値である。従って、本実施形態における掘削車輪を用いた場合、壕壁がその全幅に亘って切削されることはなく、結果として、壕を挟んでいる壕壁面がある形状に加工されることになる。但し、これに代え又はこれに加え、掘削車輪の周縁面の外形を適宜定めておき、この外形によって壁面を形状加工するようにしてもよい。
【0018】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、カッターを昇降させる手段として、支持ケーブルの一端をカッターに固定等して使用する。これに代え又はこれに加え、掘削装置骨格上に案内プーリ(例えば方向転換プーリ)を1個又は複数個設け、この案内プーリを介し支持ケーブルによる懸架を行うこともできる。このようにした場合、案内プーリにて折り返すように支持ケーブルがカッターに取り付けられることとなるため、支持ケーブルを引っ張る力が少なくともおよそ1/2になり得る。従って、本実施形態は、カッターを引き揚げながらカッティングを実行するとき、特に掘削車輪を退行させた状態でカッターを降ろした後掘削車輪を展開しその状態でカッターを引き揚げるときに、特に有益であることが、明らかである。なお、この場合、支持ケーブルは、カッターを引き揚げるときに、カッターの重量に加え、掘削車輪を土中に送り出すための力を、伝達できねばならない。
【0019】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削装置骨格上の中央に配置された流体圧送給シリンダを含む送給装置を設け、この送給装置の動作によって案内プーリを掘削装置骨格に対しカッターの進行方向に沿い変位させる。これにより、土中におけるカッターの昇降を格別に精密に制御できひいては格別に良好なカッティング結果を得ることができる。この送給装置によれば、カッターに対する案内プーリの垂直位置即ち支持ケーブルに対するカッターの垂直位置、ひいてはカッターの深さ方向位置を、支持ケーブルが動いていないときでも変化させることができる。また、流体圧シリンダを用いて送給装置が構成されているため、案内プーリを掘削装置骨格上で精密に、且つ単純なやり方で、変位させることができる。
【0020】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、更に有益なことに、支持ケーブルを懸架するための支持装置と、この支持ケーブルが連結される保持骨格と、を設け、このカッターを引っ張る力の一部を、少なくとも支持ケーブルがカッターを引っ張っている間、保持骨格から土中に作用させる。即ち、本実施形態によれば、カッターを引っ張る力の一部分が例えばクレーン等の支持装置から支持ケーブルに伝わる一方、カッターを引っ張る力の他の部分が支持ケーブルを介して保持骨格に伝達され保持骨格から土中へと伝達される。
【0021】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、特に有益なことに、掘削車輪をそれぞれ掘削車輪対により実現する。これら掘削車輪対は、それぞれ、対応する担持仕切の一方の側に配置された個別掘削車輪と、他方の側に配置されたもう1個の個別掘削車輪とを、対にしたものである。最適な形態で実施するには、対をなす2個の個別掘削車輪の回転軸を揃えるか、それらを同じ駆動装置によって駆動するか、或いはその双方の手法を採用するとよい。(個別)掘削車輪駆動用の駆動装置は例えば担持仕切上に配置するとよい。
【0022】
本発明に係るカッターの好適な実施形態においては、掘削装置骨格、掘削車輪、ニーレバー機構又はそれらの任意の組合せを鏡像対称に構成する。これにより、カッティング動作中に生じる力を伝達するのに最適なカッターを、得ることができる。その際の対称面を、掘削車輪の回転軸に対し平行としてもよい。
【0023】
また、本発明に係る土作業方法はカッターによる土作業方法であり、掘削装置骨格並びにこの掘削装置骨格上に回転可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪を備えるカッターを土壕内に入れるステップと、これら複数個の掘削車輪が掘削装置骨格から横方向に突出するようニーレバー機構によって掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を拡げるステップと、掘削車輪を回転させつつカッターを引き揚げていくことによって壕壁上の物質を削ぎ落とすステップと、を有するものである。本発明に係る方法を特に本発明に係るカッターにより実行すれば、本発明に係るカッターについて述べた各種の利点を実現することができる。
【0024】
本発明に係る方法は、基本的に、壕内にカッターを降ろしていく間は土壕壁が処置されず壕からカッターを引き揚げていくときにのみ土壕壁が処置される、という基本的着想に着眼して理解することができる。カッターを降ろしていくときにカッティング動作を実行する方法と比べると、本発明のようにカッターを引き揚げながらカッティング動作を実行する方法においては、カッター本体の重量が、掘削車輪を駆動するための力に影響しない。そのため、本発明に係る方法を実施するためのカッターは顕著に軽量な構成としても特に支障がなく、従って経済性に鑑み設計することができる。
【0025】
カッター引き揚げ時にのみ壁面カッティング効果が得られるようにするため、本発明に係る方法においては、掘削車輪をニーレバー機構により調整することによって、カッターを降ろしていく間は掘削車輪を壕の断面内に収め、またカッターを引き揚げていく間は掘削車輪を壕壁内に突出させるようにしている。ニーレバー機構をこのように用いることによって、格別に単純で信頼性の高いやり方にて、各掘削車輪の位置を確実に互いに同時に且つ同じ角度分だけ調整でき、それによって、壕内におけるカッターのブロッキングを大抵は防止することができる。
【0026】
本発明に係るカッターによりその壁面を処置する壕は、本発明に係るカッターによって形成したもの或いは形成しつつあるものでもよいし、より好ましくは他の壕壁形成装置例えば壕壁つかみ装置によって形成したものでもよい。本発明に係るカッターは、既設壕内に入れてその壕壁をオーバーカッティング即ちリカッティングする処置にも使用できる。本発明に係るカッターを用いて処置すれば、壕壁を形状加工することができる。即ち、壕壁に入れるカッティングの深さを、壕壁の幅方向(掘削車輪の軸方向)に沿って、場所毎に異なる深さにすることができる。本発明に係るカッターにより壕壁をカッティングする際は、壕内空間に面しているカッティング対象壕壁面を予め補強しておくのが望ましい。そのようにすれば、格別に高品質で流体に対して強い(流体が浸透しにくい又は浸透では劣化しにくい)連結ジョイント、即ち格別にタイトな壕壁を、得ることができる。
【0027】
また、掘削車輪が壁面から削ぎ落とした土中物質を、カッティング動作中に吸い上げ吐き出すようにすることも、基本的には可能である。とはいえ、削いだ土中物質をそのまま重力作用により壕の底部に落としてしまう方が、格別に有利であろう。即ち、本発明に係る方法によれば、カッティングが引き揚げ中に実行されるため、削ぎ落とされた土中物質は壕の底部に溜まることとなり、従ってこの土中物質はカッティング動作の邪魔にはなり得ないため壕のオーバーカッティングを一気呵成に実行することができる。壕の底部に溜まった土中物質は、壕からカッターを引き揚げた後に、つかみ装置によってそこから運び出せばよい。
【0028】
原理的には、各掘削車輪の回転方向は任意に選択することができる。しかしながら、掘削車輪を2個設ける場合は、それらを逆方向に回転駆動するようにすることが、特に望ましいといえよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態に関し添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様に動作する部材については、各図において同一の参照符号を付すこととする。
【0030】
図1〜図5に第1実施形態に係る土作業設備を示す。この設備は、カッター20として構成されている土作業装置を2本のケーブル4,4’によって支持装置70に懸架した構成を有している。この支持装置70はクレーンジブ72を備えており、このクレーンジブ72は工事用トラック乃至支持用トラック73上に首振り可能に設置されている。支持用トラック73は、更に、支持ケーブル4,4’を操るためのウィンチ機構を装備している。このウィンチ機構は2個のケーブルウィンチ74,74’を有しているが、図中、ケーブルウィンチ74’についてはその一部のみを示してある。支持ケーブル4,4’は、対応するケーブルウィンチ74,74’からクレーンジブ72沿いにジブ72の頂部にある方向転換プーリ76へと案内されており、更に、方向転換プーリ76を巡ってクレーンジブ72沿いにカッター20へと導かれている。なお、支持ケーブル4,4’は、ウィンチ機構上にて支持装置70に連結されている。
【0031】
カッター20は掘削装置骨格22を備えている。掘削装置骨格22の下部には、案内プーリたる2個の方向転換プーリ24,24’が互いに同じ高さ位置となるよう実装されており、またそれらの回転軸は互いに平行になっている。支持装置70の方向転換プーリ76から概ね垂直下方に引き回されてきている支持ケーブル4,4’は、方向転換プーリ24,24’のうち対応するものを巡るよう導かれており、この掘削装置骨格22上の方向転換プーリ24,24’によって上向きへと方向転換され、保持骨格10にて終端固定されている。即ち、各支持ケーブル4,4’の端部にはそれぞれループ54が設けられており、このループ54を保持骨格10上部の対応するボルト55に架けることによって、各支持ケーブル4,4’の一端が保持骨格10に固定されている。
【0032】
図1及び図2から概括できるように、保持骨格10は、カッター20の掘削装置骨格22を地面から持ち上げるときに掘削装置骨格22に沿って動き同時にその掘削装置骨格22によって持ち上げられるよう、構成されている。即ち、掘削装置骨格22の下部に設けられているカッター20用の駆動装置は、保持骨格10上の制止部材に対応する制止部材を備えており、掘削装置骨格22を地面から持ち上げると両制止部材の係合によって保持骨格10が掘削装置骨格22と共に持ち上がることとなる。これに対して、カッター20が土壕80内に降ろされるのに伴い図3に示すように地面に着座するとこの係合が外れるため、カッター20が地中に降りている間は、保持骨格10は地面にあいた壕80の上縁近傍にとどまり続ける。このとき、支持ケーブル4,4’が支持装置70及び保持骨格10の双方に固定されているため、保持骨格10が地面に着座すると即座に、カッター20を引っ張る力のうち概ね半分が保持骨格10によって吸収される状態となる。これによって支持ケーブル4,4’における張力が軽減されるため、カッター20を降ろす際及び引き揚げる際に支持装置70特にそのケーブルウィンチ74,74’に加わる負荷が、軽減されることとなる。
【0033】
保持骨格10はケージ状の構成を有しており、またその中央には掘削装置骨格22を受け入れ可能な通り抜け開口11が設けられている。掘削装置骨格20及び通り抜け開口11は何れも矩形断面を有している。保持骨格10は、退行状態にあるカッター20を受け入れることができるよう設けられた何個かの個別グリッド支柱58を有している。更に、保持骨格10の上側には2個の突起59があり、これらの突起59には支持ケーブル4,4’の固定先たるボルト55が配置されている。通り抜け開口11を通って案内されている支持ケーブル4,4’が壕80の壁とこすれあうことを防ぐため、このボルト55付きの突起59は、壕80の断面内で内側に向かって突出するよう設けられている。
【0034】
掘削装置骨格22は逆U字形の外側フレーム36を備えている。この外側フレーム36の腕は水平支柱38,39及び筋交い支柱37によって支持されている。掘削装置骨格22上、筋交い支柱37の下部には水平支持体25が設けられている。この水平支持体25上には、2個の方向転換プーリ24,24’が固定実装されている。外側フレーム36を構成する腕の外側には、掘削装置骨格22の前方寄りに、平板状案内要素34が設けられている。この平板状案内要素34は、掘削装置骨格22を壕80の壁面により支えられるようにするため、掘削装置骨格22に沿って縦向きに配置されている。
【0035】
カッター20は2個の掘削車輪41,41’を備えている。これら掘削車輪41,41’は回転可能に実装されており、またその回転軸43,43’は互いに平行である。掘削車輪41,41’はそれぞれ掘削車輪対として構成されており、各掘削車輪対は何れも2個の掘削車輪48,49を有している。掘削車輪41’を構成する個別掘削車輪48,49は、それら個別掘削車輪48と個別掘削車輪49の間に位置している担持腕板46’上に、実装されている。掘削車輪41を構成する個別掘削車輪も、担持腕板46上に同様にして実装されている。また、掘削車輪41,41’を個別に回転駆動する手段として、担持腕板46,46’それぞれの上に1個ずつ流体圧駆動装置47が設けられている。これらの流体圧駆動装置47によって、掘削車輪41,41’は好ましくは互いに逆の方向D,D’に回転駆動される。例えば、前面図中左側に示されている掘削車輪41は時計回りに回転駆動され、右側に示されている掘削車輪41’は反時計回りに回転駆動される。勿論、回転方向をこれとは逆にすることも可能である。
【0036】
担持腕板46,46’は、掘削装置骨格22下部の水平支柱39上に回動可能に実装されている。これら2個の担持腕板46,46’の回動軸は、互いに他に対し少なくとも近似的には平行であり、また掘削車輪41,41’の回転軸43,43’及び方向転換プーリ24,24’の回転軸に対し少なくとも近似的には平行である。調整装置を動作させることによって、担持腕板46,46’をカッター20の掘削車輪41,41’と一体に回動させることができ、従って掘削車輪41と掘削車輪41’の間隔を拡げることができるため、掘削車輪41,41’によりカッティングされる断面積を変化させることができる。特に、掘削装置骨格22上における案内要素34の位置を越えて突出するよう掘削車輪41,41’の間隔を拡げることにより、壕80の壁面のうち案内要素34に面している壁面に対し、カッター引き揚げ時に処置を施すことができる。
【0037】
調整装置は、2個の同一長レバー28,28’を有するトグルレバー機構乃至ニーレバー機構を備えている。そのうちレバー28の一端は担持腕板46上に回動可能に実装されており、このレバー28の回動軸は掘削装置骨格22上における担持腕板46の回動軸に対し少なくとも近似的には平行になっている。レバー28’の一端も、担持腕板46’上に同様にして実装されている。また、レバー28,28’の他端は、ジョイント29によって互いに接続されている。このジョイント29の軸は、掘削装置骨格22上における担持腕板46,46’の回動軸に対し少なくとも近似的には平行である。
【0038】
調整装置は、更に、垂直に配置された流体圧シリンダ26を備えている。この流体圧シリンダ26の一端は掘削装置骨格22の支柱39上に実装されており、他端にはジョイント29が実装されている。流体圧シリンダ26を動作させて延ばすと、ジョイント29の下方移動によってレバー28,28’が動き、このレバー28,28’によって担持腕板46,46’同士の間隔が拡がる。
【0039】
カッター20及び保持骨格10は、図1中の引き揚げ面に直交する垂直対称面31について実質的に鏡像対称となるよう、構成されている。流体圧駆動装置47、流体圧シリンダ26、及びオプション的にカッター20上に配置される他の流体圧動作手段に対し流体を供給できるようにするため、この図の土作業設備は、クレーンジブ72の頂部からカッター20へと延びる供給ライン77を備えている。
【0040】
図6〜図10に他の実施形態に係る土作業設備を示す。これらの図に示す実施形態が図1〜図5に示した実施形態と相違している点の一つは、支持ケーブル4,4’が保持骨格10に対し直接固定されていない点である。図6〜図10においては、むしろ、保持骨格10の頂部上に第1のケーブルドラム14及び第2のケーブルドラム14’が設けられており、支持ケーブル4,4’はそれぞれこれらのうち対応するものに巻き付けられている。ケーブルドラム14,14’の回転軸は、方向転換プーリ24,24’の回転軸に対して少なくとも近似的には平行である。各ケーブルドラム14,14’は、図示しないモータによって駆動できる。従って、ケーブルドラム14,14’は、かなり深さがある壕内での施工のため長い支持ケーブル4,4’を用いねばならない場合等に、特に有益である。
【0041】
図6〜図10に示す実施形態に係る土作業設備が図1〜図5に示した実施形態に係る土作業設備と相違している点としては、更に、掘削装置骨格22上に送給装置たる流体圧供給シリンダ23が設けられており、支持ケーブル4,4’用の2個の方向転換プーリ24,24’をこの流体圧供給シリンダ23によって掘削装置骨格22上で垂直方向に変位させられるようにした点がある。この流体圧供給シリンダ23を動作させることによりカッター20上の方向転換プーリ24,24’の垂直位置を修正できるため、支持ケーブル4,4’を固定した状態でも掘削車輪41,41’によるカッティング深さを変化させることができる。
【0042】
本実施形態では、方向転換プーリ24,24’を変位させられるようにするため、流体圧供給シリンダ23の端部に三角形状支持体63を設け、この支持体63上に方向転換プーリ24,24’を実装している。流体圧供給シリンダ23を保護するため、このシリンダ23は2個の入れ子式スリーブ64によってくるまれており、そのうち1個は三角形状支持体63に、もう1個は掘削装置骨格22に、それぞれ装着されている。
【0043】
図11〜図14に土作業方法の各工程を示す。図11に示す第1工程においては、2個の補強済壕主壁面(hardened trench wall primary panel)81,81’によって挟まれている壕80の内部に、カッター20を入れる。入れる先の壕80の実質部分は、例えば、カッター20の動作によって又は他の壕壁手段によって形成されたものである。カッター20が壕80内に入っている間は、保持骨格10は、地面に現れている壕80の上縁にとどまっている。支持ケーブル4,4’がカッター20に折り返しで架かっておりまたそれらケーブル4,4’の一端が保持骨格10上に実装されているため、カッター20に加わる引張方向の力のうち半分が保持骨格10により吸収される。なお、図面の簡易化のため、図12〜図14には保持骨格10は図示していない。
【0044】
カッター20を壕80内に降ろしていく間は、掘削車輪41,41’を退行状態としておく。退行状態においては、掘削車輪41,41’によるカッティング断面は壕80及び掘削装置骨格22の断面内に収まっている。従って、カッター20を降ろしていく間に掘削車輪41,41’により壕80の壁から物質が削ぎ落とされることはない。
【0045】
掘削車輪41,41’は、カッター20が壕80の底まで降りた後に、回転させる。このとき、併せてトグルレバー機構を含む調整装置を動作させることによって、掘削車輪41,41’を逆方向に移動させてその間隔を拡げる。すると、掘削車輪41,41’が壕80の2個の端壁79内に進入する。この状態を図12に示す。
【0046】
この時点から、図13に示されているようにカッター20を引き揚げていくと、壕80の端壁79がその下側から上側に向けてカッティングされていく。このようにその掘削車輪41,41’の間隔が拡がっているカッター20を引き揚げていく際には、比較的強い引張方向の力がカッター20に作用するが、その一部は保持骨格10によって吸収される。特に流体に対して強い(非浸透性のある又は浸透によっては劣化しにくい)壕壁を形成するには、掘削車輪41,41’による主壁面81,81’のカッティングを部分的なカッティングとする。
【0047】
カッティングによって削がれた土中物質は重力によってカッター20の下へと落ち壕80の底に到達するが、これらは後につかみ装置を用いてそこから回収することができるため、削ぎ落とされた土中物質を吸い上げ吐き出す処置は不要である。このことから、本カッター20は、削ぎ落とした土中物質を汲み上げる機構なしで構成されている。
【0048】
壕80の一部深さ範囲のみにて端壁をオーバーカッティングする場合は、図14に示すように、壕(スロット)80内で掘削車輪41,41’をたたんでから、壕80の壁に対して更なる処置を施すことなくカッター20を引き揚げればよい。
【0049】
図15及び図16に、本土作業方法によって得ることが可能な相異なるカッティング断面を示す。液体に対して格別に強い壕壁を形成するには、壕80の端壁79の全幅の一部だけカッティングし特定の外形を付与すればよい。そのためには、掘削車輪41,41’の幅を端壁79の幅より狭くするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係りカッターとして構成されている土作業装置を伴う土作業設備の前面図である。
【図2】図1に示した設備の側面図である。
【図3】図1に示した設備にてカッターを降ろした状態における保持骨格を示す前面図である。
【図4】図1に示した設備におけるカッターの前面図である。
【図5】図1に示した設備におけるカッターの側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係りカッターとして構成されている土作業装置を伴う土作業設備の前面図である。
【図7】図6に示した設備の側面図である。
【図8】図6に示した設備にてカッターを降ろした状態における保持骨格を示す前面図である。
【図9】図6に示したカッターの前面図である。
【図10】図6に示した設備の平面図である。
【図11】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図12】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図13】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図14】土作業方法の実施工程を示す図である。
【図15】カッターとして構成されている土作業装置によりカッティングされた部分の断面図である。
【図16】カッターとして構成されている土作業装置によりカッティングされた部分の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
4,4’ 支持ケーブル、10 保持骨格、20 カッター、22 掘削装置骨格、23 流体圧送給シリンダ、24,24’,76 方向転換プーリ、26 垂直流体圧シリンダ、28,28’ レバー、31 垂直対称面、34 平板状案内要素、41,41’ 掘削車輪、43,43’ 平行回転軸、46,46’ 担持腕板、48,49 個別掘削車輪、70 支持装置、79 端壁、80 壕(スロット)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削装置骨格と、この掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪と、これら掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を調整するための調整装置と、を備え、
この調整装置が、ニーレバー機構と、このニーレバー機構を動作させるための1個又は複数個の流体圧シリンダと、を備え、
この流体圧シリンダが、上記互いに平行な回転軸のほぼ中間に位置することとなるよう上記掘削装置骨格上に配置されている土作業用のカッター。
【請求項2】
請求項1記載のカッターにおいて、
更に、上記掘削装置骨格上に回動可能に支持されておりまたその上に上記掘削車輪が支持されている複数個の担持仕切を備え、
上記ニーレバー機構が複数本のレバーを備え、これらレバーそれぞれの一端が中央の上記流体圧シリンダに、他端が上記担持仕切の何れかに、それぞれ蝶番連結されているカッター。
【請求項3】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削装置骨格が、土壕内における案内のための案内部材を備えるカッター。
【請求項4】
請求項3記載のカッターにおいて、上記掘削車輪が、当該掘削車輪が上記案内部材より内側に退行している退行状態と、当該掘削車輪が当該案内部材から見て横方向に突出している展開状態と、を随時採り得るよう、上記調整装置により調整されるカッター。
【請求項5】
請求項4記載のカッターにおいて、
更に、上記掘削装置骨格上に軸動可能に支持されておりまたその上に上記掘削車輪が支持されている複数個の担持仕切であって退行状態及び展開状態においてV字を形成する複数個の担持仕切を備え、
上記掘削装置骨格上における上記担持仕切の回動軸同士の距離が、退行状態における上記掘削車輪の上記回転軸同士の距離より小さいカッター。
【請求項6】
請求項1記載のカッターにおいて、更に、支持ケーブルによる懸架のため上記掘削装置骨格上に1個又は複数個設けられた案内プーリを備えるカッター。
【請求項7】
請求項6記載のカッターにおいて、更に、上記掘削装置骨格上の中央に配置された流体圧送給シリンダを含む送給装置を備え、この送給装置の動作によって上記案内プーリを当該掘削装置骨格に対し上記カッターの進行方向に沿い変位させるカッター。
【請求項8】
請求項1記載のカッターにおいて、更に、支持ケーブルを懸架するための支持装置と、この支持ケーブルが連結される保持骨格と、を備え、少なくとも上記支持ケーブルが上記カッターを引っ張っている間、当該カッターを引っ張る力の一部を上記保持骨格から土中に作用させるカッター。
【請求項9】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削車輪がそれぞれ掘削車輪対により実現されており、各掘削車輪対が、対応する担持仕切の一方の側に配置された個別掘削車輪と、他方の側に配置されたもう1個の個別掘削車輪とを、対にしたものであるカッター。
【請求項10】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削装置骨格、上記掘削車輪、上記ニーレバー機構又はそれらの任意の組合せが、鏡像対称に構成されているカッター。
【請求項11】
掘削装置骨格並びにこの掘削装置骨格上に回転可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪を備える請求項1記載のカッターを土壕内に入れるステップと、
上記複数個の掘削車輪が上記掘削装置骨格から横方向に突出するようニーレバー機構によって上記互いに平行な回転軸同士の中心間距離を拡げるステップと、
上記掘削車輪を回転させつつ上記カッターを引き揚げていくことによって壕壁上の物質を削ぎ落とすステップと、
を有する土作業方法。
【請求項1】
掘削装置骨格と、この掘削装置骨格上に回転駆動可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪と、これら掘削車輪の互いに平行な回転軸同士の中心間距離を調整するための調整装置と、を備え、
この調整装置が、ニーレバー機構と、このニーレバー機構を動作させるための1個又は複数個の流体圧シリンダと、を備え、
この流体圧シリンダが、上記互いに平行な回転軸のほぼ中間に位置することとなるよう上記掘削装置骨格上に配置されている土作業用のカッター。
【請求項2】
請求項1記載のカッターにおいて、
更に、上記掘削装置骨格上に回動可能に支持されておりまたその上に上記掘削車輪が支持されている複数個の担持仕切を備え、
上記ニーレバー機構が複数本のレバーを備え、これらレバーそれぞれの一端が中央の上記流体圧シリンダに、他端が上記担持仕切の何れかに、それぞれ蝶番連結されているカッター。
【請求項3】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削装置骨格が、土壕内における案内のための案内部材を備えるカッター。
【請求項4】
請求項3記載のカッターにおいて、上記掘削車輪が、当該掘削車輪が上記案内部材より内側に退行している退行状態と、当該掘削車輪が当該案内部材から見て横方向に突出している展開状態と、を随時採り得るよう、上記調整装置により調整されるカッター。
【請求項5】
請求項4記載のカッターにおいて、
更に、上記掘削装置骨格上に軸動可能に支持されておりまたその上に上記掘削車輪が支持されている複数個の担持仕切であって退行状態及び展開状態においてV字を形成する複数個の担持仕切を備え、
上記掘削装置骨格上における上記担持仕切の回動軸同士の距離が、退行状態における上記掘削車輪の上記回転軸同士の距離より小さいカッター。
【請求項6】
請求項1記載のカッターにおいて、更に、支持ケーブルによる懸架のため上記掘削装置骨格上に1個又は複数個設けられた案内プーリを備えるカッター。
【請求項7】
請求項6記載のカッターにおいて、更に、上記掘削装置骨格上の中央に配置された流体圧送給シリンダを含む送給装置を備え、この送給装置の動作によって上記案内プーリを当該掘削装置骨格に対し上記カッターの進行方向に沿い変位させるカッター。
【請求項8】
請求項1記載のカッターにおいて、更に、支持ケーブルを懸架するための支持装置と、この支持ケーブルが連結される保持骨格と、を備え、少なくとも上記支持ケーブルが上記カッターを引っ張っている間、当該カッターを引っ張る力の一部を上記保持骨格から土中に作用させるカッター。
【請求項9】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削車輪がそれぞれ掘削車輪対により実現されており、各掘削車輪対が、対応する担持仕切の一方の側に配置された個別掘削車輪と、他方の側に配置されたもう1個の個別掘削車輪とを、対にしたものであるカッター。
【請求項10】
請求項1記載のカッターにおいて、上記掘削装置骨格、上記掘削車輪、上記ニーレバー機構又はそれらの任意の組合せが、鏡像対称に構成されているカッター。
【請求項11】
掘削装置骨格並びにこの掘削装置骨格上に回転可能に支持されておりその回転軸が互いに平行な複数個の掘削車輪を備える請求項1記載のカッターを土壕内に入れるステップと、
上記複数個の掘削車輪が上記掘削装置骨格から横方向に突出するようニーレバー機構によって上記互いに平行な回転軸同士の中心間距離を拡げるステップと、
上記掘削車輪を回転させつつ上記カッターを引き揚げていくことによって壕壁上の物質を削ぎ落とすステップと、
を有する土作業方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−52638(P2006−52638A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231499(P2005−231499)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(502407107)バウアー マシーネン ゲーエムベーハー (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(502407107)バウアー マシーネン ゲーエムベーハー (48)
【Fターム(参考)】
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