説明

土壌の殺菌装置並びにその方法

【課題】
オゾンガス雰囲気で処理土壌を攪拌しオゾンガスを効率よく吸収させると同時に、大気からシールしてオゾンの大気拡散を抑え、効率的に土壌を殺菌処理する。また、殺菌後の地面に被覆シートを被覆してオゾンガス殺菌作用の実効を確保する。
【解決手段】
上面から所定領域の地面を覆うように配置され下面が開口されて中空内部Nが地面と直接に接し、かつ内部にその地面部分を耕耘する耕耘装置14が配置されたケース体12を有し、ケース体の中空内部と外気を遮断した状態でスース体内にオゾンガスを供給して耕耘される土にオゾンガスを注入しつつケース体を走行させる。また、ケース体の後部に被覆シート展設装置60を付設し、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートSを被覆させながらケース体を移動させて殺菌処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農耕土壌の殺菌装置並びにその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農耕地の度重なる輪作による悪性土壌菌の繁殖や農薬汚染等が大きくクローズアップされている。農耕地の連作障害は、(1)土壌養分の消耗、(2)土壌pHの異常、(3)土壌物理性の悪化、(4)耕作由来の有害物質の蓄積、(5)有害土壌生物の集積などが原因とされている。中でも、(3)、(4)、(5)についての問題が相互に連関して障害の原因を形成しているといわれているが、野菜等の連作による最大の原因は土壌伝染性病害であり、これを引き起こす菌の多くはカビを含む糸状菌や一部の細菌、あるいは土壌生物である。すなわち、同一種の作物の連作により、その根に侵入する菌が根で増殖し、残根上で生き残り、そこから新しい根に感染して増殖するというサイクルを繰り返して病原菌が集積する。収穫から次の作付けまでの期間が短いほど残根上での病原菌の死滅は少なく、これによって連作に伴う病原菌の集積は加速される。また、作物に有害な動物、昆虫、病原菌、雑草の防除のための農薬は、ほとんどがその使用目的から残留毒性を有するものであり、それらの使用は厳しい規制の下にある。従来、臭化メチル(CHBr)が土壌消毒に多用されているが、この方法ではコストが高く、さらには臭化メチルそのものによる二次汚染のおそれがあった。一方、近時環境にやさしい殺菌法としてオゾンによる殺菌が多方面で利用されるようになり、これを農業分野に適用した植物の栽培方法及び装置が例えば特開平10−229752号において提案されている。
【特許文献1】特開平10−229752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1の装置は、例えばオゾンガスを溶解した加圧水を植物が栽培される土壌中に圧送して大気開放することにより加圧水の中のオゾンを土壌中に拡散させるものであり、これによって、植物の根部に十分な量の気体を供給するとともに、オゾン水により植物病害虫や病原菌などを殺菌させるようにしたものであるが、この装置では、オゾンガスは水に溶解して希釈されるから高濃度の殺菌ができず、加圧水の供給時間が長く、また多くの供給量を必要とする結果、作業効率及び処理コストが高いという問題があった。また、この装置では、液体圧送のために、ポンプ、コンプレッサ、薬液槽、気体溶解装置、加圧タンク等を必要としコンプレッサや加圧タンクが大型化する上に、予め処理すべき土壌の地中に多数の散水管を埋め込み配置させておく必要があるから、施工作業が大掛かりとなり材料及び作業コストが高いという問題があった。さらに、そのメンテナンスが容易でなく、実用に欠ける点の問題があった。また、単に地上から、オゾン水を散水することも考えられるが、結局、高濃度殺菌が行われず、液体の多大の供給量と供給時間が必要で、さらに、液体分の供給過多による土壌への影響も考慮する必要があった。
【0004】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的はオゾンガス雰囲気で処理土壌を攪拌しオゾンガスを効率よく吸収させると同時に、大気からシールしてオゾンの大気拡散を抑え、効率的に土壌を殺菌処理することのできる土壌の殺菌装置及びその方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、土壌の殺菌処理を行なうと同時に農業用のマルチシートを処理土壌表面に被覆し、地表面温度上昇抑制、雑草防除、地中養分の流出防止等を行って土質保持を行うことのできる土壌の殺菌装置を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、土壌の殺菌処理を行なうと同時に有機質微細片を加工して形成した可とう厚板シートを農業用のマルチシートとして処理土壌表面に被覆することにより、土壌殺菌と同時に土質の保持を行える土壌殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、処理すべき土壌Eの上面を摺動状に移動し、移動時にも内部の中空部Nと外気Uとを遮断状態に保持する下面を開口した中空閉鎖ケース体12と、ケース体内に配置されて該ケース体の内側の土壌を耕す耕耘装置14と、ケース体内に供給するオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置16と、を含み、ケース体内の耕耘された土壌にオゾンガスを注入させつつケース体12を移動させることを特徴とする土壌の殺菌装置から構成される。下面を開口した中空のケース体12の形状は任意でよい。耕耘装置14は厳密には耕耘作用を行わなくとも例えば、ケース体の走行と同時の土の攪拌等も含まれる。ケース体の移動は、実施形態のようにトラクタやトラック等の後方に連結してもよいし、車輪等の転動機構をケース体自体に組み込んで一体化して自走式としてもよい。
【0006】
その際、オゾンガス発生装置16からのオゾンガスはケース体12の閉鎖された中空Nに向けて噴出されるように供給されるとよい。
【0007】
また、ケース体12は、移動方向に対する両側壁18,18を含み、下面を開口した反転容器体からなり、移動時に両側壁の全部又は一部が土壌内に差し込まれた状態でケース体12が移動するとよい。土壌内への差込部を形成しない態様でも外気とのシールドを確保しうる構成であればよい。
【0008】
また、両側壁18,18は移動前端側から後端側にかけて下端が下がり傾斜状に形成させるとよく、ケース体の側壁の形状を簡単に構成しつつケース体の内外の気密保持をケース体の側面側において行える。該側壁は単に長方形状の部分を直状に延ばして構成してもよいし、その他の任意形状とすることも可能である。
【0009】
また、ケース体12は牽引駆動装置34に移動方向前部を支持された状態で接続され、同ケース体の前端接地部24を接地させるようにしてケース体12が移動するとよい。
【0010】
また、ケース体21の移動方向後端側に、オゾンガスを注入された直後の土壌上面を被覆する被覆シート展設装置60を付設するとよい。被覆シートはロール状にまとめたものを繰り出す方式であると連続敷設が実現できる点で優れる。
【0011】
また、被覆シート展設装置60は、シートロール62から繰り出されるシートSの移動方向両端寄り内側を上から押さえる押え腕機構66を有するとよい。
【0012】
また、被覆シートSが有機質微細片を積層して形成した可とう厚板シート621であるとなおよい。
【0013】
また、被覆シートSの敷設と同時にその上面に散水して液膜を形成させる散水装置76を設けるとよく、有機質微細片を積層した可とう厚板シートに液膜を張設してオゾンガスの放散を防止する。
【0014】
また、本発明は、上面から所定領域の地面を覆うように配置され下面が開口されて中空内部が地面と直接に接し、かつ内部にその地面部分を耕耘する耕耘装置が配置されたケース体12を有し、
ケース体の中空内部Nと外気Uを遮断した状態でケース体内にオゾンガスを供給して耕耘される土にオゾンガスを注入しつつケース体を走行させる土壌の殺菌方法から構成される。
【0015】
その場合、ケース体の後部に被覆シート展設装置を付設し、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させながらケース体を移動させて殺菌処理するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の土壌の殺菌装置は、処理すべき土壌の上面を摺動状に移動し、移動時にも内部の中空部と外気とを遮断状態に保持する下面を開口した中空閉鎖ケース体と、ケース体内に配置されて該ケース体の内側の土壌を耕す耕耘装置と、ケース体内に供給するオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置と、を含み、ケース体内の耕耘された土壌にオゾンガスを注入させつつケース体を移動させる構成であるから、大気シールド下の移動ケース体内で高濃度のオゾンガス気体を連続して耕耘される土に対して直接に注入する結果、処理土壌の殺菌を確実にかつ短時間でしかも高効率に行うことができる。さらに、該ケース体内に同時に土壌成分調整溶液を散布することにより、同時に土壌の改質をも行うことができる。
【0017】
また、オゾンガス発生装置からのオゾンガスはケース体の閉鎖された中空に向けて噴出されるように供給される構成とすることにより、オゾンガス発生装置から供給されるオゾンガスの吐出用ノズルをケース体の外壁に中空内部と連通状に取り付けるだけでよく、簡単な構成により高濃度のオゾンガスの土壌注入を確実に行える。
【0018】
ケース体は、移動方向に対する両側壁を含み、下面を開口した反転容器体からなり、移動時に両側壁の全部又は一部が土壌内に差し込まれた状態でケース体が移動する構成であるから、ケース体の少なくとも進行方向両側位置を大気からシールドした状態で走行させることができ、ケース体の形状設定のみにより簡単な構成で概略の中空内部の気密保持を実現し得る。
【0019】
また、両側壁は移動前端側から後端側にかけて下端が下がり傾斜状に形成された構成とすることにより、ケース体の少なくとも進行方向両側を大気からシールドした状態とし、その際、栽培植物の残根や切り株、その他の障害物等を切り開くように進むようにして抵抗を少なくしケース体の上下動を可能な限り少なくして走行時の中空内部のシールド効果の実効を保持させることができる。
【0020】
ケース体は牽引駆動装置に移動方向前部を支持された状態で接続され、同ケース体の前端接地部を接地させるようにしてケース体が移動する構成とすることにより、例えば、ケース体の移動方向前部を常時接地しある程度地面に荷重がかかる程度の支持力により支持しつつ移動する結果、ケース体の移動時にケース体の前端側が土中に突き刺さってケース体を破損あるいは破壊させるようなことがなく、安定したケース体の走行移動を実現し得る。
【0021】
また、ケース体の移動方向後端側に、オゾンガスを注入された直後の土壌上面を被覆する被覆シート展設装置が付設された構成とすることにより、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させてガスを閉じ込めた状態としてケース体を移動させて殺菌処理するから、オゾンガスが注入された後の数分間のライフタイム時間中も土内に確実にオゾンガスを残留させ、土に対する殺菌作用を確実に行うことが可能である。
【0022】
また、被覆シート展設装置は、シートロールから繰り出されるシートの移動方向両端寄り内側を上から押さえる押え腕機構を有する構成とすることにより、ケース体の移動時にその押さえ状態を保持して地面に確実にシートを被着保持させることができる。
【0023】
また、被覆シートが有機質微細片を積層して形成した可とう厚板シートである構成とすることにより、土壌殺菌と同時に、以下の効果を得ることができる。すなわち、植物栽培土の地表面温度上昇の抑制、雑草防除、地中の養分の雨による流出防止等の農業用マルチシートの機能を保持しうるとともに、使用後のシートをそのまま土中に鋤き込んでシートの剥ぎ取り作業、土壌からの選別作業等を不要とし、加えて天然植物由来の十分な量のミネラル分を土壌に補給して作物育成に適した土壌を保持することができる。また、これによって、土中に十分な空気を保持しうるので、微生物作用を介した土質改善も行える。さらには、植物廃材を利用して資源の有効利用を実現でき、また、低コストでの製造も可能である。
【0024】
また、被覆シートの敷設と同時にその上面に散水して液膜を形成させる散水装置を設けることにより、有機質微細片を積層した可とう厚板シートに液膜を張設してオゾンガスの放散を防止し、オゾンガス注入の実効を確保することができる。
【0025】
また、本発明の土壌の殺菌方法は、上面から所定領域の地面を覆うように配置され下面が開口されて中空内部が地面と直接に接し、かつ内部にその地面部分を耕耘する耕耘装置が配置されたケース体を有し、ケース体の中空内部と外気を遮断した状態でスース体内にオゾンガスを供給して耕耘される土にオゾンガスを注入しつつケース体を走行させるから、大気シールド下の移動ケース体内で高濃度のオゾンガス気体を連続して耕耘される土に対して直接に注入する結果、処理土壌の殺菌を確実にかつ短時間でしかも高効率に行うことができる。さらに、該ケース体内に同時に土壌成分調整溶液を散布することにより、同時に土壌の改質をも行うことができる。
【0026】
また、ケース体の後部に被覆シート展設装置を付設し、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させながらケース体を移動させて殺菌処理する構成とすることにより、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させてガスを閉じ込めた状態としてケース体を移動させて殺菌処理するから、オゾンガスが注入された後の数分間のライフタイム時間中も土内に確実にオゾンガスを残留させ、土に対する殺菌作用を確実に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1ないし図5は、本発明の土壌の殺菌装置の一実施形態を示す図であり、図1は、その全体構成を説明する一部切欠側面図である。図において、該土壌の殺菌装置10は、ケース体12と、耕耘装置14と、オゾンガス発生装置16と、を含む。
【0028】
ケース体12は、大気からシールしてオゾンの大気拡散を抑制しつつそのケース内部で耕耘される土壌にオゾンガスを直接に注入するオゾンガスの土壌ドープ用ケース手段であり、本実施形態において、処理すべき土壌Eの上面を摺動状に移動し、移動時にも内部の中空部Nと外気Uとを遮断状態に保持して地盤面に連続してオゾンガスを注入する連続オゾンガス注入ケース手段として構成されている。すなわち、ケース体12は、処理すべき土壌の上面の移動時にも内部の中空部Nと外気Uとを遮断状態に保持する下面を開口した中空閉鎖ケース体から構成されている。詳しくは、ケース体12は、移動方向に対する両側壁18を含み、下面を開口した反転容器体からなる。実施形態において、ケース体12は、例えば薄い金属板を短蒲鉾状に成形し移動前後部分と天面部分を一体的に覆う円弧状壁20と、円弧状壁20に気密接合されて移動方向に対して両側に設けられた半円状の側壁18と、により形成され、底面は開口して中空部Nの空間は処理すべき土壌地面に直接に臨んで形成されている。該ケース体12は、移動時にその両側壁の全部又は一部が土壌内に差し込まれた状態で移動する。すなわち、図において、両側壁18の下端側は移動前端側から後端側にかけて下がり傾斜状に形成された横長の略直角三角形状部分を有しており、この三角形状部分が土中差込部22を形成して移動時に両側壁の少なくとも下端部が土壌内に差し込まれた状態でケース体が移動するようにしており、これによって、ケース体の側面側の中空内部と大気とのシールを行っている。また、ケース体12の前端側は地面と接触する前端接地部24を形成するとともに、後端側は同様に地面に接触する後端接地部26を形成している。実施形態において、前端接地部24は、ケース内側に向けて曲面を形成するように曲げられた内曲げ部を有しており、これによって、ケース体が前進移動する際に地面との抵抗を大きくしないようにしつつ気密保持を行えるようにしている。また、後端接地部26も常時地面上に着地して後部壁側のシールを行う。この後端側についても同様に内側あるいは外側に曲げられた状態でできる限り移動時の抵抗を少なくするようにするとよい。
【0029】
図1、2において、ケース体12内に耕耘装置14が配置されている。耕耘装置14は、ケース体が位置しケース体により覆われた地面部分を耕耘あるいは攪拌する耕耘手段であり、ケース体が地面上を移動しながら地面を耕すようになっている。詳しくは、耕耘装置14は、ケース体12の両側壁18に回転自在に軸支された回転ロッド28と、回転ロッド28の長手方向に渡って所要の離隔間隔で該回転ロッドに複数個固定され、該回転ロッドから半径方向に突設して取り付けられた矢車状羽根体30と、を含む。回転ロッド28の一端側は後述する動力伝達機構32を介して回転駆動される。図に示すように、矢車状羽根体30はそれぞれ矢車状切歯からなり、ケース体の重量等によりケース体の静止状態で相当程度の部分が地中に穿刺状態にあるように配置される。そして、耕耘装置14の矢車状羽根体、すなわち矢車状切歯により例えば深さ数10cmまでの土壌を掘り起こして満遍なくオゾンと接触させ、吸収させる。これは、例えば通常の農作業の延長線上で耕した深さとすると、これらの部分の土壌までを均一にオゾン処理することとなる。
【0030】
本実施形態において、ケース体12は牽引駆動装置34に接続されて該装置34により牽引駆動されながら移動する。なお、ケース体12は、それ自体に駆動用車輪、クローラその他の搬送体を含む駆動機構を搭載して自走するようにしてもよい。また、その際、作業者が運転により運転走行してもよいし、有線あるいは無線による制御指示により自走運転させてもよい。また、牽引装置を有線あるいは無線により制御して走行させてもよい。本実施形態の牽引駆動装置34は、ケース体12と別体でケース体12の直前位置に配置された牽引駆動手段であり、例えばトラクタやトラック、ローダ等の動力運搬車等が用いられる。実施形態の牽引駆動装置34は、例えばクローラ形トラクタが用いられ、地面上を走行するクローラ36と、機体38と、図示しない走行駆動装置を有している。走行駆動装置を介してクローラを走行駆動させる。機体38の後端側から支持アーム40が後方に向けて突出しており、この支持アーム40の他端側がケース体12の前端側に連結接合されて、ケース体12の移動方向前部が牽引駆動装置34により支持されている。すなわち、ケース体12は牽引駆動装置34に移動方向前部を支持された状態で接続され、ケース体の前端接地部24を接地させるようにしてケース体12が移動するように構成されている。これによって、ケース体12の移動方向前部は常時接地しある程度地面に荷重がかかる程度の支持力により支持されつつ移動する。前記したケース体12内の耕耘装置14は牽引駆動装置34からの回転動力を受けて駆動するものであり、本実施形態において、牽引駆動装置34からの回転動力伝達機構32を介して矢車状羽根体30を回転駆動させる。詳しくは、回転動力伝達機構32は、牽引駆動装置34とケース体12とを連結するように接続され、トラクタ本体の回転出力を伝達する伝達軸42と、ケース体12に取り付けられて伝達軸42の回転動力をケースの進行方向に直交する軸の回転に変換する変換機構44と、直交軸46と、連動機構48と、を含む。連動機構48はチェーンケース50内に収容され直交軸46の端部と回転ロッド28の一端部とに調帯された連動チェーン52を含み、これによって、トラクタの回転出力により回転ロッド28に取り付けた各
切歯を回転駆動させる。牽引駆動装置34の機体38内には、オゾンガス発生装置16にそれぞれ接続された発電機54、コンプレッサ56、冷却水供給用ポンプ58が搭載されており、オゾンガス発生装置16にそれぞれ電力と圧縮作用並びに冷却水を供給する。
【0031】
一方、オゾンガス発生装置16は、ケース体12内に供給するガス状態のオゾンを発生させるオゾン発生手段であり、実施形態において、ケース体12の中空部Nにオゾン噴出口161を臨ませて配置された誘電体バリア放電法によるオゾナイザ装置が適用されている。この誘電体バリア放電法では、大気圧下でも一定条件のプラズマを生じさせることができて装置構成を簡単にでき、小型化できる。この発生装置では、例えば放電路に誘電体(ガラス等)を介在させることで、アーク放電(火花放電)に移行することを避け、短時間で発生・消滅を繰り返すストリーマ形式の微小放電を高い頻度で、ランダムに発生させることにより、大気圧下でのプラズマ発生を実現する。例えば、この誘電体バリア放電法によるオゾン発生装置により、2%(40g/m3)の高濃度オゾン生成を実現できることが実証されており、例えば2平方メートル程度の面積の地面部分を処理するケース体の大きさであっても瞬時に有害菌を死滅させるに十分な量のオゾンガス注入を実現し得る。周知のように、オゾンガスは強力な酸化力による塩素の7倍の滅菌作用を有している。原料は空気中の酸素と水だけでランニングコストが安く、残留毒性も一切無く、環境面で二次的な汚染のおそれがない。したがって、大気とシールドされた移動空間内で、耕耘される土壌に連続してオゾンガスを注入することにより高効率かつ有効に植物栽培に有効な土部分の殺菌を行える。
【0032】
本実施形態においては、さらに、ケース体12の移動方向後端側に、オゾンガスを注入された直後の土壌上面を被覆する被覆シート展設装置60が付設されている。被覆シート展設装置60は、大気からシールドされたケース体12内でオゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートSを連続して被覆させる土壌地面の被覆手段であり、オゾンを放出した後のオゾンガスのライフタイムの数分間の残留時間に土の表面を被覆シートにより覆うことにより殺菌効果を持続させ効果的な殺菌処理を実現させる。実施形態において、被覆シート展設装置60は、被覆シートを巻着したシートロール62と、シート押え64と、押え腕機構66と、を含む。農業用被覆シートは、いわゆる農業用マルチシートであり、植物栽培土の地表面温度上昇の抑制、雑草防除、地中の養分の雨による流出防止等を行う地表面被覆シートである。シートロール62のシート素材は、プラスチックビニルフィルムその他の合成樹脂素材、紙その他でもよいが、本実施形態においては、有機質微細片を積層して形成した可とう厚板シート621で構成されている。可とう厚板シート621は、例えば、建築木質廃材、製材所廃材、間伐材、その他の木質廃材等の植物性自然素材廃材を細片化するチップ化工程(S1)と、チップ化された植物性自然素材廃材を高圧下で加熱する高圧加熱工程(S2)と、高圧加熱後圧力開放による植物性自然素材廃材の繊維状細片化工程(S3)と、細片化された植物性自然素材廃材をさらに機械的に微細片化する工程(S4)と、生分解性粘着材を用いてバルクシート化する工程(S5)と、を含む処理工程により製造される天然植物素材の被覆シートであり、上記した農業用マルチシートの機能に加え、さらに、使用後のシートをそのまま土中に鋤き込んでシートの剥ぎ取り作業、土壌からの選別作業等を不要とし、加えて天然植物由来の十分な量のミネラル分を土壌に補給して作物育成に適した土壌を保持することができる。また、これによって、土中に十分な空気を保持しうるので、微生物作用を介した土質改善も行える。さらには、植物廃材を利用して資源の有効利用を実現でき、また、低コストでの製造も十分可能である。シートロール62はケース体の進行方向に略直交するように横長で配置されている。シートロール62は、そのロール中心部に軸棒68が挿嵌されており、ケース体12に支持された図示しない軸受部材により回転自在に軸支されている。
【0033】
シート押え64は、シートロール62から繰り出される被覆シートを上から押えてシートを地面に接地させる押え手段であり、特に、ケース体12の移動時にその押さえ状態を保持して地面に確実にシートを被着させるようにする。該シート押えは地面近くの低位置でケース体の進行方向について交差方向に配置される押えロールからなり、遊転自在に支持される。シートは繰り出し時に押えロールの下面に係合して引き出される。
【0034】
押え腕機構66は、シートロール62から繰り出されるシートの移動方向両端寄り内側を上から押さえて地面への被覆を確実にさせる被覆保持手段であり、本実施形態において、ケース体12から逆U字状に延びて下端を地面よりやや下位となる、一部を地中に没する程度の位置に存在させる押え腕70を有している。この押え腕70の地中側の押え端側にはローラ72が転動自在に支持されており、シートを破らないように押えるとともにシート上の円滑な移動を確保する。
【0035】
なお、展設された被覆シートの上から水及び/又は窒素含有液を散布させる散布装置(図示せず)を取り付けるとよく、有機質微細片素材により形成されたシート体の敷設と同時に水や、殺菌により失われた窒素系成分を補給してマルチシート機能を補強させることができる。
【0036】
さらに、オゾンガスセンサ74がケース体内に設置されており、オゾンガス濃度を検出してオゾンガス発生装置16に搭載した制御装置を介して中空部N内のオゾンガス濃度、量を適度に保持するように調整する。
【0037】
また、被覆シートの敷設と同時にその上面に散水して液膜を形成させる散水装置76が設けられている。該散水装置76は、液体タンク78、供給管80、散水ノズル82を含み、オゾンガスを注入された土を被覆する有機質微細片を積層した可とう厚板シートの上面から散水して液膜を張設し、これによってオゾンガスの放散を防止し、オゾンガス注入の実効を確保する。可とう厚板シート621が圧着成形されておらず、 網目状の多孔空隙を有するシートとして構成されている場合には、この液膜形成は有効で効果的である。なお、図示しないが、別途に窒素その他の植物必須成分を含む液体タンクを牽引駆動装置等に搭載し、被覆シートの上から同時に散布するようにしてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る土壌の殺菌装置の作用についてその殺菌方法とともに説明すると、牽引駆動装置34を走行させながら、その出力軸から得られる回転力を動力伝達機構32を介して耕耘装置14に伝達し、矢車状羽根体30を回転駆動させる。これによって、大気からシールされたケース体12内の閉鎖空間で土が掘り起こされる。この矢車状切歯により土壌を耕すと矢車状切歯が達する深さまでの土壌が掘り起こされ攪拌される。このときこの矢車状切歯の地上部全体をその開口面が土壌面より沈みこんだ箱状容器すなわちケース体で覆う。この状態で牽引駆動装置34の運転席側からの操作により、オゾンガス発生装置16の生成及び吐出用スイッチをオンすることにより、高濃度のオゾンガスがオゾン噴出口161から噴出されて連続的に掘り起こされる土に対して直接に注入される。このとき、ケース体と地面により閉じられた空間内にオゾンガスを投入すると土壌とガスが均一に接した状態で攪拌され土壌にガスが吸収される。この際、オゾンガス濃度を適正な範囲に維持させるようにセンサ74を介して濃度値を検出し、設定範囲の濃度のオゾンガスを供給し、土壌へのガスの吸収量が制御されるこのような方法でオゾンガスを土壌に吸収させる方法で土壌を均一にオゾン処理する。このケース体と矢車状切歯を一体化させ、一定速度で移動させると移動した後に均一にオゾン処理した土壌が残される。これらの土壌内にはオゾンがライフタイムである数分間は残留したりあるいは大気中に発散する。したがって、その表面を軟質プラスチックシートで覆えば殺菌効果を持続させるだけでなく大気拡散による安全対策の機能を同時に具備することとなる。したがって、牽引駆動装置34の走行と同時にケース体12の直後部に配置された被覆シート展設装置60により、オゾンガスを注入した土の上面から被覆シートを被覆し、かつその進行方向についての幅方向両端部をシート押さえ64により押えるから注入されたオゾンガスを大気に放散させることなく、被覆して閉じ込めるからオゾンガスが注入された後の数分間のライフタイム時間中も土内に確実に残留し、土に対する殺菌作用を確実に行うこととなる。また、その表面を軟質プラスチックシートで覆ったり、あるいは有機質微細片積層の可とう厚板シート等を被覆後、液膜を張って土部分と大気との通気を遮断させることにより殺菌効果の持続だけでなく大気拡散による安全対策の機能を同時に行える。
【0039】
本発明の土壌の殺菌方法としては、上面から所定領域の地面を覆うように配置され下面が開口されて中空内部が地面と直接に接し、かつ内部にその地面部分を耕耘する耕耘装置が配置されたケース体を有し、ケース体の中空内部と外気を遮断した状態でケース体内にオゾンガスを供給して耕耘される土にオゾンガスを注入しつつケース体を走行させるものである。また、ケース体の後部に被覆シート展設装置を付設し、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させながらケース体を移動させて殺菌処理するものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の土壌の殺菌装置並びにその方法は、近年の農作物の栽培サイクルを加速させる、年数回もの輪作、あるいは連作時等に発生する伝染性病害菌を効率よく滅菌することができ、すべての農耕地の殺菌ならびにその改質処理において有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る土壌の殺菌装置の一部切欠概略構成側面説明図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】ケース体本体の一部切欠斜視図である。
【図4】図1の土壌の殺菌装置の全体斜視説明図である。
【図5】図1のB−B線矢視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 土壌の殺菌装置
12 ケース体
14 耕耘装置
16 オゾンガス発生装置
18 側壁
60 被覆シート展設装置
64 シート押え
66 押え腕機構
E 土壌
N 中空部
U 外気


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき土壌の上面を摺動状に移動し、移動時にも内部の中空部と外気とを遮断状態に保持する下面を開口した中空閉鎖ケース体と、
ケース体内に配置されて該ケース体の内側の土壌を耕す耕耘装置と、
ケース体内に供給するオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置と、を含み、
ケース体内の耕耘された土壌にオゾンガスを注入させつつケース体を移動させることを特徴とする土壌の殺菌装置。
【請求項2】
オゾンガス発生装置からのオゾンガスはケース体の閉鎖された中空に向けて噴出されるように供給されることを特徴とする請求項1記載の土壌の殺菌装置。
【請求項3】
ケース体は、移動方向に対する両側壁を含み、下面を開口した反転容器体からなり、
移動時に両側壁の全部又は一部が土壌内に差し込まれた状態でケース体が移動することを特徴とする請求項1又は2記載の土壌の殺菌装置。
【請求項4】
両側壁は移動前端側から後端側にかけて下端が下がり傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項3記載の土壌の殺菌装置。
【請求項5】
ケースは牽引駆動装置に移動方向前部を支持された状態で接続され、
同ケース体の前端接地部を接地させるようにしてケース体が移動することを特徴とする請求項3又は4記載の土壌の殺菌装置。
【請求項6】
ケース体の移動方向後端側に、オゾンガスを注入された直後の土壌上面を被覆する被覆シート展設装置が付設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の土壌の殺菌装置。
【請求項7】
被覆シート展設装置は、シートロールから繰り出されるシートの移動方向両端寄り内側を上から押さえる押え腕機構を有することを特徴とする請求項6記載の土壌の殺菌装置。
【請求項8】
被覆シートが有機質微細片を積層して形成した可とう厚板シートである請求項6又は7記載の土壌の殺菌装置。
【請求項9】
被覆シートの敷設と同時にその上面に散水して液膜を形成させる散水装置が設けられていることを特徴とする請求項8記載の土壌の殺菌装置。
【請求項10】
上面から所定領域の地面を覆うように配置され下面が開口されて中空内部が地面と直接に接し、かつ内部にその地面部分を耕耘する耕耘装置が配置されたケース体を有し、
ケース体の中空内部と外気を遮断した状態でケース体内にオゾンガスを供給して耕耘される土にオゾンガスを注入しつつケース体を走行させることを特徴とする土壌の殺菌方法。
【請求項11】
ケース体の後部に被覆シート展設装置を付設し、オゾンガスを注入した直後の土に農業用被覆シートを被覆させながらケース体を移動させて殺菌処理することを特徴とする請求項10記載の土壌の殺菌方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−304638(P2006−304638A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128922(P2005−128922)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(501261920)財団法人くまもとテクノ産業財団 (13)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】